説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】高画質、高輝度、広い色再現範囲を実現することが可能なPDPを提供する。
【解決手段】前面側が透明な一対の基板101、102を基板間に放電空間122が形成されるように対向配置するとともに放電空間122を複数に仕切るための隔壁109を少なくとも一方の基板に配置し、かつ隔壁109により仕切られた放電空間122で放電が発生するように基板に電極群103、104、107を配置するとともに、放電により発光する蛍光体層を設け、この蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnにより構成される緑色蛍光体層を備え、Zn2SiO4:Mnの粒子表面10nm以下におけるMn元素に対するZn元素とMn元素の和との比が0.05〜0.08であり、かつZn元素とMn元素の和に対するSi元素との比が1.97〜2.02である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、テレビなどの画像表示に用いられるプラズマディスプレイパネルに関し、特に、紫外線により励起されて発光する蛍光体層の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、50インチクラスから100インチを越えるクラスのフルスペックのハイビジョンテレビや大型公衆表示装置なども製品化が進んでいる。
【0003】
PDPは前面板と背面板とで構成されている。前面板は、フロート法による硼硅酸ナトリウム系ガラスのガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状の透明電極と金属バス電極とで構成される表示電極と、この表示電極を覆ってコンデンサとしての働きをする誘電体層と、この誘電体層上に形成された酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層と、を備える。
【0004】
一方、背面板は、排気および放電ガスを封入(導入ともいう)するための細孔を設けたガラス基板と、その一方の主面上に形成されたストライプ状のアドレス電極(データ電極ともいう)と、アドレス電極を覆う下地誘電体層と、下地誘電体層上に形成された隔壁と、各隔壁間に形成された赤色、緑色および青色それぞれに発光する蛍光体層と、を備える。
【0005】
そして、前面板と背面板とは、その電極形成面側を対向させてその周囲を封着材によって封着され、隔壁で仕切られた放電空間にNe−Xeの混合ガスが放電ガスとして400Torr〜600Torrの圧力で封入されている。
【0006】
PDPは、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加することによって放電ガスを放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体層を励起して赤色、緑色、青色の発光をさせてカラー画像表示を実現している。
【0007】
PDPは、いわゆる3原色(赤、緑、青)を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、PDPには光の3原色である赤色、緑色、青色の各色を発光する蛍光体層を備えている。各色の蛍光体層は各色の蛍光体粒子が積層されて構成され、例えば、赤色蛍光体粒子としては(Y,Gd)BO3:Eu3+やY23:Eu3+、緑色蛍光体粒子としてはZn2SiO4:Mn2+、青色蛍光体粒子としてはBaMgAl1017:Eu2+が知られている。
【0008】
これらの各蛍光体は、所定の原材料を混ぜ合わせた後、1000℃以上の高温で焼成する固相反応法などで作製される。
【0009】
また、Zn2SiO4:Mnからなる緑色蛍光体は、その表面が負極性に帯電し易いため、PDPに用いた場合に、放電特性を悪化させることが知られている。そこで、このような課題を解決するために、負帯電のZn2SiO4:Mnの表面に正帯電の酸化物を極性が正になるまで緻密に積層コーティングする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、負帯電のZn2SiO4:Mnと正帯電の緑色蛍光体とを混合して使用する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0010】
また、Zn2SiO4:Mnからなる緑色蛍光体は、一般に青色蛍光体として使用されるBaMgAl1017:Euや赤色蛍光体として使用されるY23:Euよりも長い残光特性を有することが知られており、PDPに用いた場合の動画表示品質の低下の一因となっている。Zn2SiO4:Mnの残光特性の改善方法としては、Mnの組成比率を増加させることで、残光を短く出来ることが知られているが、Mn組成比率の増加に伴い発光効率が大幅に低下してしまうという課題がある。
【0011】
そこで、この課題を解決する方法として、蛍光体粒子全体でのZnとSiの組成比を最適化する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【特許文献1】特開平11−86735号公報
【特許文献2】特開2001−236893号公報
【特許文献3】特開2002−309248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
近年のテレビの大型化に伴い、PDPでは、より高速での画素の点灯及び消灯が必要とされる。その為、緑色蛍光体の長い残光特性に起因する表示品質の悪化は、より顕著化してきている。
【0013】
更に高精細フルスペックのハイビジョンテレビでは画素は1920(水平)×1080(垂直)であり、従来のNTSCの画素数である852(水平)×480(垂直)と比較して約6倍に増加する。したがって、1画素あたりのアドレス放電に有する時間が短くなるため、放電特性の許容範囲が狭くなり、表示画像の画質低下を招くという課題が発生する場合がある。
【0014】
これらの課題をZn2SiO4:Mn以外の蛍光体を混合する方法によって改善する場合には、発光効率の低下を伴う上、残光特性の改善も十分ではない。
【0015】
また、Zn2SiO4:Mnの表面を正帯電の酸化物でコーティングする方法では、発光効率の低下が生じる。その為、良好な残光特性が得られるような従来よりも高いMn組成比率では、更に輝度低下が生じるため、実用上、問題が生じる。
【0016】
また、Zn2SiO4:MnのMn組成比率に応じて、蛍光体粒子全体でのZnとSiの組成比率を制御する方法では、Mn濃度増加に伴う発光効率低下の抑制が十分ではない上、粒子表面が負に帯電し易いため、アドレス放電特性が改善できない。
【0017】
本発明はこのような現状に鑑みなされたもので、残光特性と放電特性を改善すると同時に発光効率の低下と色再現範囲の縮小が極めて少ない緑色蛍光体層を備えた、フルスペックハイビジョンの画像表示においても高画質、高輝度、広い色再現範囲を実現することが可能なPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を実現するために本発明のPDPは、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに、放電により発光する蛍光体層を設けたPDPであって、前記蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnにより構成される緑色蛍光体層を備え、前記Zn2SiO4:Mnの粒子表面10nm以下におけるMn元素に対するZn元素とMn元素の和との比(Mn/(Zn+Mn))が0.05〜0.08であり、かつZn元素とMn元素の和に対するSi元素との比((Zn+Mn)/Si)が1.97〜2.02であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、残光特性と放電特性を改善すると同時に発光効率の低下と色再現範囲の縮小が極めて少ない緑色蛍光体層を備えることで、フルスペックハイビジョンの画像表示においても高画質、高輝度、広い色再現範囲を実現することが可能なPDPを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPについて図面を用いて詳しく説明する。
【0021】
図1はPDPの電極配列の概略構成を示す平面図である。PDP100は、前面ガラス基板(図示せず)と、背面ガラス基板102と、維持電極103と、走査電極104と、アドレス電極107と、気密シール層121とを備える。維持電極103と走査電極104とはそれぞれN本が平行に配置されている。アドレス電極107はM本が平行に配置されている。維持電極103と走査電極104とアドレス電極107とは3電極構造の電極マトリックスを有しており、走査電極104とアドレス電極107との交点に放電セルが形成されている。
【0022】
図2はPDPの画像表示領域における概略構成を示す部分断面斜視図である。PDP100は、前面パネル130と背面パネル140とで構成されている。前面パネル130の前面ガラス基板101上には維持電極103と走査電極104と誘電体ガラス層105とMgO保護層106とが形成されている。背面パネル140の背面ガラス基板102上にはアドレス電極107と下地誘電体ガラス層108と隔壁109と蛍光体層110R、110G、110Bとが形成されている。
【0023】
前面パネル130と背面パネル140とを貼り合わせ、前面パネル130と背面パネル140との間に形成される放電空間122内に放電ガスを封入してPDP100が完成する。
【0024】
図3は、PDP100を用いたプラズマディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図である。PDP100は駆動装置150と接続されることでプラズマディスプレイ装置を構成している。PDP100には、表示ドライバ回路153、表示スキャンドライバ回路154、アドレスドライバ回路155が接続されている。コントローラ152はこれらの電圧印加を制御する。点灯させる放電セルに対応する走査電極104とアドレス電極107へ所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。コントローラ152はこの電圧印加を制御する。その後、維持電極103と走査電極104との間にパルス電圧を印加して維持放電を行う。この維持放電によって、アドレス放電が行われた放電セルにおいて紫外線が発生する。この紫外線で励起された蛍光体層が発光することで放電セルが点灯する。各色セルの点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0025】
次に、PDP100の製造方法を図1と図2を参照しながら説明する。まず、前面パネル130の製造方法を説明する。前面ガラス基板101上に、各N本の維持電極103と走査電極104をストライプ状に形成する。その後維持電極103と走査電極104を誘電体ガラス層105でコートする。さらに誘電体ガラス層105の表面にMgO保護層106を形成する。
【0026】
維持電極103と走査電極104は、銀を主成分とする電極用の銀ペーストをスクリーン印刷により塗布した後、焼成することによって形成する。誘電体ガラス層105は、酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷で塗布した後、焼成して形成する。上記ガラス材料を含むペーストは、例えば、30重量%の酸化ビスマス(Bi23)と28重量%の酸化亜鉛(ZnO)と23重量%の酸化硼素(B23)と2.4重量%の酸化硅素(SiO2)と2.6重量%の酸化アルミニウムを含む。さらに、10重量%の酸化カルシウム(CaO)と4重量%の酸化タングステン(WO3)と有機バインダ(α−ターピネオールに10%のエチルセルロースを溶解したもの)とを混合して形成する。ここで、有機バインダとは樹脂を有機溶媒に溶解したものであり、樹脂としてエチルセルロース以外にアクリル樹脂、有機溶媒としてブチルカービトールなども使用することができる。さらに、こうした有機バインダに分散剤(例えば、グリセルトリオレエート)を混入させてもよい。
【0027】
誘電体ガラス層105は所定の厚み(約40μm)となるように塗布厚みを調整する。MgO保護層106は酸化マグネシウム(MgO)から成るものであり、例えばスパッタリング法やイオンプレーティング法によって所定の厚み(約0.5μm)となるように形成する。
【0028】
次に、背面パネル140の製造方法を説明する。背面ガラス基板102上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し、焼成することによってM本のアドレス電極107をストライプ状に形成する。アドレス電極107の上に酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法で塗布した後、焼成して下地誘電体ガラス層108を形成する。同じく酸化ビスマス系のガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法により所定のピッチで繰り返し塗布した後に焼成して隔壁109を形成する。放電空間122はこの隔壁109によって区画され、放電セルが形成される。隔壁109の間隔寸法は42インチ〜50インチのフルHDテレビやHDテレビに合わせて130μm〜240μm程度に規定されている。
【0029】
隣接する2本の隔壁109の間の溝に、赤色蛍光体層110R、緑色蛍光体層110G、青色蛍光体層110Bを形成する。赤色蛍光体層110Rは、例えば、(Y,Gd)BO3:Euの赤色蛍光体材料により構成される。青色蛍光体層110Bは、例えば、BaMgAl1017:Euの青色蛍光体材料により構成される。緑色蛍光体層110Gは、例えば、Zn2SiO4:Mnの緑色蛍光体材料により構成される。
【0030】
このようにして作製された前面パネル130と背面パネル140を、前面パネル130の走査電極104と背面パネル140のアドレス電極107とが交差するように対向して重ね合わせる。封着用ガラスを周辺部に塗布し、450℃程度で10分〜20分間焼成する。図1に示すように、気密シール層121の形成により、前面パネル130と背面パネル140とを封着する。そして、一旦、放電空間122内を高真空に排気したのち、放電ガス(例えば、ヘリウム−キセノン系、ネオン−キセノン系の不活性ガス)を所定の圧力で封入することによってPDP100が完成する。
【0031】
次に、各色の蛍光体材料の製造方法について説明する。以下の説明においては、蛍光体材料は、固相反応法により製造されたものを用いている。
【0032】
青色蛍光体材料であるBaMgAl1017:Euは以下の方法で作製する。炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウムと酸化ユーロピウム(Eu23)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0033】
赤色蛍光体材料(Y,Gd)BO3:Euは以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y23)と酸化ガドリミウム(Gd23)とホウ酸(H3BO3)と酸化ユーロピウム(EuO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中にて600℃〜800℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1100℃〜1300℃で焼成して作製する。
【0034】
次に緑色蛍光体材料について説明する。本発明の一実施の形態によるPDPにおいては、で緑色蛍光体材料として用いているZn2SiO4:Mnは、粒子表面10nm以下におけるMn元素に対するZn元素とMn元素の和との比、すなわち、(Mn/(Zn+Mn))が0.05〜0.08であり、かつZn元素とMn元素の和に対するSi元素との比、すなわち、((Zn+Mn)/Si)が1.97〜2.02となる構成をしている。
【0035】
ここで、Zn2SiO4:Mnの粒子表面10nm以下におけるMn/(Zn+Mn)及び(Zn+Mn)/Siは、XPS装置で測定することができる。XPSとは、X−ray Photoelectron Spectroscopyの略で、X線光電子分光分析と呼ばれ、物質の表面近傍10nmまでの元素の様子を調べる方法である。Mn/(Zn+Mn)及び(Zn+Mn)/Siは、XPS装置により、Zn、Si、Mn各々の分析を行い、それらより算出した値である。
【0036】
以下、本発明の一実施の形態によるPDPにおける緑色蛍光体材料の製造方法について詳しく説明する。Zn2SiO4:Mnは、従来の固相反応法や液相法や液体噴霧法を用いて作製する。固相反応法は酸化物や炭酸化物原料とフラックスを焼成して作製する方法である。液相法は、有機金属塩や硝酸塩を水溶液中で加水分解し、必要に応じてアルカリなどを加えて沈殿させて生成した蛍光体材料の前駆体を熱処理して作製する方法である。また液体噴霧法は、蛍光体材料の原料が入った水溶液を加熱された炉中に噴霧して作製する方法である。
【0037】
使用するZn2SiO4:Mnとしては、特に作製方法による影響を受けるものではなく、そこで、ここでは一例として固相反応法による製法について述べる。
【0038】
はじめに原料混合であるが、原料としては酸化亜鉛、酸化珪素、炭酸マンガン(MnCO3)を用いる。
【0039】
また、上述のように、炭酸マンガンを用いる方法と同様に水酸化マンガン、硝酸マンガン、ハロゲン化マンガン、シュウ酸マンガン等を初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程を経ることにより、間接的に酸化マンガンを得る方法がある。また、直接的に酸化マンガンを使用しても構わない。
【0040】
Zn2SiO4:Mnにおける亜鉛供給源となる材料として(以下、「Zn材」という。)、直接高純度の(純度99%以上)の酸化亜鉛を用いる。
【0041】
また、上述のように、酸化亜鉛を直接用いる方法以外に、高純度(純度99%以上)の水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛、シュウ酸亜鉛等を初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程を経ることにより、間接的に上記酸化亜鉛を得る方法であっても構わない。
【0042】
Zn2SiO4:Mnにおける珪素供給源となる材料(以下、「Si材」という。)としては、高純度(純度99%以上)の二酸化珪素を用いることができる。
【0043】
また、珪酸エチルなどの珪素アルコキシド化合物を加水分解して得られる珪素の水酸化物を用いてもよい。
【0044】
従来の方法では、上記材料のうちSi材の組成比率を、化学量論比よりも過剰に混合することで高輝度の蛍光体を得ることを特徴としている。
【0045】
しかしながら、本実施の形態での製造方法では、従来の方法とは異なり、Zn材の組成比率を、化学量論比よりも過剰に混合することを特徴としている。具体的な各蛍光体の材料の配合の一例は以下の通りである。
【0046】
MnCO3 0.14mol
ZnO 1.88mol
SiO2 1.00mol
Mn材、Zn材およびSi材の混合には、工業的に通常用いられるV型混合機、攪拌機等を用いることができ、また、粉砕機能を有したボールミル、振動ミル、ジェットミル等も用いることができる。
【0047】
以上のようにして、蛍光体材料の混合粉が得られる。
【0048】
次に焼成工程について説明する。蛍光体材料の混合粉を大気雰囲気中において、焼成開始後6時間程度で最高温度1200℃にし、この最高温度を維持して4時間焼成を行い、その後、通常行なわれる大気雰囲気中で約12時間かけて降温させる。
【0049】
焼成時の雰囲気は、大気雰囲気に限るものではなく、窒素雰囲気中、窒素と水素の混合雰囲気中でもよい。また最高温度は、1100℃〜1350℃の間が好ましいが、最高温度維持時間や昇温時間や降温時間などは適宜変更しても問題ない。
【0050】
次に、以上のようにして作製した緑色蛍光体に対して行う特性評価について説明する。
【0051】
まず、輝度評価についてであるが、緑色蛍光体を積層して緑色蛍光体層110Gを形成し、PDP100を作製する。このPDP100に駆動装置150を接続し、PDP装置を作製する。このPDP装置において緑色の蛍光体層のみを発光させ、輝度を測定する。
【0052】
各輝度は、従来品である比較品1の輝度を100とした時の相対値で表し、この相対的な輝度は90以上であることが実用上必要である。
【0053】
次に、緑色残光特性評価についてであるが、残光特性は、上記、PDP装置において、維持放電終了時の発光量が最大値となる時点を0とし、発光量が最大値の十分の一になる時間を測定する。
【0054】
各緑色残光特性は、従来品である比較品1の残光特性である11.5msよりも短い場合に残光特性の改善効果があるものと判定した。
【0055】
次に、アドレス放電特性評価についてであるが、アドレス放電特性は、上記、PDP装置において、安定したアドレス放電が生じるために必要なアドレス電極への印加電圧(以下、アドレス電圧)を測定した。
【0056】
このアドレス電圧が、従来品である比較品1のアドレス電圧よりも小さければ(比較品1差ΔV<0)、アドレス放電特性の改善に効果があるものと判定した。
【0057】
以上の特性評価の結果をまとめて表1に示す。
【0058】
表1に、実施例品1〜5および比較品1〜4の蛍光体の組成および性能評価結果を示す。
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示す各試験対象品、即ち、比較品および実施例品は、Zn2SiO4:MnのMn/(Zn+Mn)を異ならせたものである。
【0061】
実施例品1は、以上説明した、本発明の一実施の形態によるPDPにおける緑色蛍光体と同様の構成であり、比較品1は、従来の蛍光体(従来品)と同様の構成である。
【0062】
表1に示すように、実施例品1〜5は、いずれもZn2SiO4:Mnの表面Mn/(Zn+Mn)比が0.050以上0.080以下であり、かつ、表面(Zn+Mn)/Si比が1.97以上2.02以下であり、これら実施例品1〜5は、いずれも残光特性が、従来品である比較品1よりも短く、しかもアドレス電圧が比較品1よりも低いうえ、比較品1に対する相対輝度が90%以上であることから、実用上の問題が生じない。
【0063】
一方、比較品2および3は、表面Mn/(Zn+Mn)比が0.050以上0.080以下であるが、比較品2は、表面(Zn+Mn)/Si比が1.96であり、また、比較品3は、表面(Zn+Mn)/Si比が2.03であるため、残光特性は、従来品である比較品1よりも短いが、比較品1に対する相対輝度が90%未満であり、実用上問題が生じる。更に、比較品2に関しては、アドレス電圧が比較品1よりも高くなっており、この点でも実用上問題が生じる。
【0064】
また、比較品4は、表面(Zn+Mn)/Si比は、2.00であるが、表面Mn/(Zn+Mn)比が0.085であり、残光特性は、従来品である比較品1よりも短いが、比較品1に対する相対輝度が90%未満であり、実用上問題が生じる。
【0065】
したがって、Zn2SiO4:Mnの表面Mn/(Zn+Mn)比が0.050以上0.080以下であり、かつ、表面(Zn+Mn)/Si比が1.97以上2.02以下であることによって、残光特性の短縮とアドレス電圧の低減を実現し、尚且つ、実用上問題のない輝度特性を有するPDPの実現が可能となることがわかる。
【0066】
以上、本発明の一実施の形態によるPDPによれば、発光効率低下、色再現範囲の縮小、アドレス電圧特性の悪化を伴わず、残光特性を改善したPDPを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
以上のように本発明は、大画面、高精細のPDPを提供する上で有用な発明である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】PDPの電極配列の概略構成を示す平面図
【図2】PDPの画像表示領域における概略構成を示す部分断面斜視図
【図3】PDPを用いたプラズマディスプレイ装置の概略構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0069】
100 PDP
101 前面ガラス基板
102 背面ガラス基板
103 維持電極
104 走査電極
105 誘電体ガラス層
106 MgO保護層
107 アドレス電極
108 下地誘電体ガラス層
109 隔壁
110R 蛍光体層(赤色蛍光体層)
110G 蛍光体層(緑色蛍光体層)
110B 蛍光体層(青色蛍光体層)
121 気密シール層
122 放電空間
130 前面パネル
140 背面パネル
150 駆動装置
152 コントローラ
153 表示ドライバ回路
154 表示スキャンドライバ回路
155 アドレスドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに、放電により発光する蛍光体層を設けたプラズマディスプレイパネルであって、
前記蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnにより構成される緑色蛍光体層を備え、
前記Zn2SiO4:Mnの粒子表面10nm以下におけるMn元素に対するZn元素とMn元素の和との比(Mn/(Zn+Mn))が0.05〜0.08であり、かつZn元素とMn元素の和に対するSi元素との比((Zn+Mn)/Si)が1.97〜2.02であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−177072(P2010−177072A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−19155(P2009−19155)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】