説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】アドレス電極22の断線を抑制しつつ放電空間の気密性を確保可能なプラズマディスプレイパネル(PDP)100を提供することを目的とする。
【解決手段】PDP100は、前面板10と、前面板10と対向配置された背面板20と、前面板10と背面板20とを封着する封着層27と、を備える。背面板20は、アドレス電極22と、アドレス電極22を被覆する下地誘電体層23と、を有する。封着層27は、複数のビーズ材30と、ガラス部材と、を有する。封着層27は、下地誘電体層23の端部を被覆し、または、下地誘電体層23の端部より外側に形成されている。複数のビーズ材30の少なくとも一部は、前面板10およびアドレス電極22の間にある。前面板10およびアドレス電極22の間にあるビーズ材30とアドレス電極22との間には、下地誘電体層23が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示技術は、表示デバイスなどに用いられるプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと称する)は、前面板と背面板とで構成される。前面板と背面板との周縁部は封着材で封着され、前面板と背面板との間には放電空間が形成されている。背面板は、ガラス基板と、ガラス基板上に形成された金属電極と、金属電極上に形成された下地誘電体層と、放電空間を区画するために下地誘電体層上に形成された隔壁と、隔壁間に形成された蛍光体層とで構成されている。
【0003】
しかし、ガラス成分を含む封着材は、製造工程時に収縮するため、封着材が形成された領域の前面板と背面板との間隔が、パネルの中央部における前面板と背面板との間隔よりも狭くなることがあった。そのため、封着材にガラス成分よりも高い融点を有する部材(以下、ビーズ材とする)がスペーサとして混在されることがあった。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−236896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、封着排気工程時に封着材が収縮すると、封着材に含まれるビーズ材が前面板と背面板の間で圧迫される。そのため、ビーズ材が金属電極を圧迫し、金属電極に亀裂が生じたり、金属電極が断線したりすることがあった。
【0006】
一方、金属電極の断線を抑制するため、下地誘電体層上に封着材を塗布することが考えられた。しかしながら、下地誘電体層は気密性に欠けているため、放電空間外部に下地誘電体層が露出すると、放電空間の気密性が保てなくなることがあった。
【0007】
そこで、本開示技術は、金属電極の断線を抑制しつつ放電空間の気密性を確保可能なPDPを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のPDPは、前面板と、前面板と対向配置された背面板と、前面板と背面板とを封着する封着層と、を備える。背面板は、金属電極と、金属電極を被覆する下地誘電体層と、を有する。封着層は、複数のビーズ材と、ガラス部材と、を有する。封着層は、下地誘電体層の端部を被覆し、または、下地誘電体層の端部より外側に形成されている。複数のビーズ材の少なくとも一部は、前面板および金属電極の間にある。前面板および金属電極の間にあるビーズ材と金属電極との間には、下地誘電体層が形成されている。
【発明の効果】
【0009】
上記の構成よれば、金属電極の断線を抑制しつつ放電空間の気密性を確保可能なPDPを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態におけるPDPの概略構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態における背面板の概略構造を示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態におけるPDPの概略構造を示す平面図である。
【図4】本発明の実施形態におけるPDPのアドレス電極延伸方向の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、PDP100の構成について説明する。図1に示すように、PDP100は、前面板10と背面板20とを対向配置している。
【0012】
前面板10は、長方形でガラス製の前面ガラス基板11上に、平行に配置された走査電極12と維持電極13とで対をなす表示電極14が複数形成されている。本実施の形態では、走査電極12および維持電極13は、走査電極12、維持電極13、維持電極13、走査電極12の順で配列されている。走査電極12は、幅の広い透明電極12aの上に幅の狭いバス電極12bが積層されている。維持電極13も同様に、幅の広い透明電極13aの上に幅の狭いバス電極13bが積層されている。透明電極12a、13aは、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性の金属酸化物を含む。バス電極12b、13bは、導電性を高めるために形成され、銀(Ag)などの金属を含む。
【0013】
前面ガラス基板11上には、表示電極14を覆う誘電体層15が形成されている。誘電体層15は、膜厚が約40μmである。誘電体層15は、酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。
【0014】
誘電体層15上には、酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層16が形成されている。保護層16は、膜厚が約0.8μmである。保護層16は、酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層である。保護層16は、誘電体層15をイオンスパッタから保護するために形成される。また、保護層16は、放電開始電圧などの放電特性を安定させるために形成される。
【0015】
背面板20は、長方形でガラス製の背面ガラス基板21上に、平行に配置された複数のアドレス電極22が形成されている。背面ガラス基板21の短辺は、前面ガラス基板11の短辺と平行でかつ前面ガラス基板11の短辺より長く、背面ガラス基板21の長辺は、前面ガラス基板11の長辺より短い。アドレス電極22は、銀(Ag)などを主成分とする導電性の高い材料を含む金属電極である。前面ガラス基板11と背面ガラス基板21との基板の形状が異なるのは、基板の端部に電極端子が形成されるためである。これらの電極端子より、それぞれの電極に画像表示のための電圧が印加される。
【0016】
アドレス電極22上には、アドレス電極22を被覆するように下地誘電体層23が形成されている。下地誘電体層23は、酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスなどである。下地誘電体層23には、可視光を反射させるために酸化チタン(TiO2)粒子が混合されてもよい。
【0017】
下地誘電体層23上には隔壁24が形成されている。隔壁24は、縦隔壁24aと縦隔壁24aに直交する横隔壁24bとにより井桁状に構成されている。隔壁24には、低融点ガラス材料などが含まれる。画面サイズが42インチのフルハイビジョンテレビに合わせると、例えば、隔壁24の高さは0.1mm〜0.15mm、隣接する縦隔壁24aのピッチは0.15mmである。
【0018】
下地誘電体層23の表面と隔壁24の側面とには、蛍光体層25が形成されている。蛍光体層25は、赤色に発光する赤色蛍光体層25a、緑色に発光する緑色蛍光体層25bおよび青色に発光する青色蛍光体層25cを含む。赤色蛍光体層25a、緑色蛍光体層25bおよび青色蛍光体層25cは、縦隔壁24aを介して、順に形成されている。
【0019】
前面板10と背面板20とは、表示電極14とアドレス電極22とが交差するように対向配置されている。前面板10と背面板20との外周部は、フリットなどの封着層27によって封着されている。封着層27の詳細は、後述される。封着された前面板10と背面板20との間には、放電空間が形成されている。放電空間には、例えば、キセノン(Xe)などを含む放電ガスが約6×104Paの圧力で封入されている。放電空間は隔壁24によって複数の区画に仕切られている。表示電極14とアドレス電極22とが交差する部分に放電セル26が形成されている。各色の蛍光体層25を有する放電セル26内で放電を発生させることより、各色の蛍光体層25が発光する。これによりPDP100が画像を表示することができる。なお、PDP100の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えば、隔壁24の形状がストライプ状であってもよい。
【0020】
次に、PDP100の製造方法について説明する。PDP100の製造方法は、前面ガラス基板11上に表示電極14などを形成する前面板形成工程と、背面ガラス基板21上にアドレス電極22などを形成する背面板形成工程と、前面板10と背面板20とを組み立てる封着工程と、がある。
【0021】
前面板形成工程では、前面ガラス基板11上に、表示電極14、誘電体層15および保護層16が形成される。
【0022】
まず、前面ガラス基板11上に、走査電極12および維持電極13が形成される。例えば、スパッタ法などによって、ITO薄膜が前面ガラス基板11に形成される。そして、リソグラフィ法によって所定のパターンの透明電極12a、13aが形成される。バス電極12b、13bの材料には、Ag、Agを結着させるためのガラスフリット、感光性樹脂および溶剤等を含むペーストが用いられる。バス電極ペーストは、スクリーン印刷法などによって、透明電極12a、13aを覆うように前面ガラス基板11上に塗布される。次に乾燥炉によって、バス電極ペースト中の溶剤が除去される。次に所定のパターンのフォトマスクを介して、バス電極ペーストが露光される。次にバス電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。次に焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。これにより、バス電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、バス電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。
【0023】
透明電極12aと透明電極13aとの間の相対的に狭い領域は、放電が発生するメインギャップである。透明電極12aと透明電極13aとの間の相対的に広い領域は、放電が発生しないインターピクセルギャップである。
【0024】
次に、表示電極14を覆う誘電体層15が形成される。誘電体層15の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。例えば、ダイコート法によって、所定の厚みで走査電極12および維持電極13を覆うように、誘電体ペーストが前面ガラス基板11上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。これにより、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法などが用いられてもよい。また、CVD(Chemical Vapor Deposition)法などによって、誘電体層15となる膜が形成されてもよい。
【0025】
次に、誘電体層15上に保護層16が形成される。保護層16は、MgOのペレットを用いて真空蒸着法によって形成される。真空蒸着法の他にも、電子ビーム蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることができる。
【0026】
以上の前面板形成工程により、前面ガラス基板11上に表示電極14、誘電体層15および保護層16が形成される。
【0027】
背面板形成工程では、背面ガラス基板21上に、アドレス電極22、下地誘電体層23、隔壁24、蛍光体層25および封着材31が形成される。
【0028】
まず、図2に示すように、背面ガラス基板21上に、アドレス電極22が形成される。アドレス電極22の材料には、少なくとも銀(Ag)粒子と、ガラス成分と、感光性有機バインダ成分と、からなる感光性ペーストが用いられる。銀(Ag)粒子の含有量は、70重量%〜90重量%である。ガラス成分の含有量は、1重量%〜15重量%である。感光性有機バインダ成分の含有量は、8重量%〜15重量%である。ガラス成分には、少なくとも酸化ビスマス(Bi23)が20重量%〜50重量%含まれる。ガラス成分は、結着ガラスの軟化点が550℃を超えるように構成されている。感光性有機バインダ成分には、感光性ポリマー、感光性モノマー、光重合開始剤、溶剤などが含まれる。この感光性ペーストが、例えば、スクリーン印刷法によって、厚み5μm、幅100μmで背面ガラス基板21上に塗布される。次に、乾燥炉によって、感光性ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、感光性ペーストが露光される。次に、感光性ペーストが現像され、アドレス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、アドレス電極パターンが550℃〜570℃で焼成される。これにより、アドレス電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、アドレス電極パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。ここで、スクリーン印刷する方法以外に、スパッタ法、蒸着法などを用いてアドレス電極22が形成されてもよい。
【0029】
次に、アドレス電極22上に下地誘電体層23が形成される。下地誘電体層23の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む下地誘電体ペーストが用いられる。下地誘電体ペーストには、ガラス成分が25重量%〜35重量%、フィラーが25重量%〜35重量%、バインダが10重量%〜20重量%、溶剤が20重量%〜30重量%の比率で配合されたものが用いられている。ガラス成分には実質的に鉛成分が含まれていない。ガラス成分は、酸化ビスマス(Bi23)を0.1モル%〜25モル%、酸化亜鉛(ZnO)を10モル%〜30モル%、酸化チタン(TiO2)を0.1モル%〜25モル%で含む。また、ガラス成分は、酸化タングステン(WO3)、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、バリウム(Ba)を0.1モル%以下で含む。この下地誘電体ペーストが、例えば、スクリーン印刷法によって、背面ガラス基板21上にアドレス電極22を覆うように所定の厚みで塗布される。次に、乾燥炉によって、下地誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、下地誘電体ペーストが570℃〜630℃程度で焼成される。これにより、下地誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。下地誘電体層23の膜厚は焼成工程後で8μm〜15μmである。なお、下地誘電体ペーストが、ダイコート法、スピンコート法などを用いて塗布されてもよい。また、CVD法などによって、下地誘電体層23となる膜が形成されてもよい。
【0030】
また、下地誘電体層23を形成するのと同時に、図2に示すように、アドレス電極側引出部28が形成される。アドレス電極側引出部28は、下地誘電体層23で被覆されない領域に形成される。アドレス電極側引出部28には、アドレス電極22に回路基板からの信号を伝達する複数のアドレス電極端子29が形成されている。なお、前面ガラス基板11には、表示電極端子が形成される。これらの電極端子より、それぞれの電極に画像表示のための電圧が印加される。
【0031】
なお、本実施の形態の下地誘電体層23は、アドレス電極側引出部28側の端部が、前面板10と背面板20とが重なる領域における長辺側の端部とほぼ同一の位置となるように形成される。すなわち、アドレス電極側引出部28側の下地誘電体層23の端部と、前面板10の長辺側の端部とが対向するように、下地誘電体層23が形成される。上記の構成にすることにより、ビーズ材30が、前面板10とアドレス電極22との間において、アドレス電極22に直接接触することが低減される。よって、アドレス電極22の断線が抑制される。ここで、ほぼ同一とは、アドレス電極22の延伸方向において、前面板10と背面板20とが重なる領域におけるアドレス電極側引出部28側の端部より内側へ、後述されるビーズ材30の平均粒子径程度の長さまでの範囲をいう。また、アドレス電極22の延伸方向において、前面板10と背面板20とが重なる領域におけるアドレス電極側引出部28側の端部より外側へ、0.5mm程度までの範囲をいう。下地誘電体層23の端部が、前面板10と背面板20とが重なる領域の端部より、ビーズ材30の平均粒子径より内側に形成されると、ビーズ材30が、前面板10とアドレス電極22との間において、アドレス電極22に直接接触するおそれが生じるからである。また、下地誘電体層23の端部が、前面板10と背面板20とが重なる領域の端部より、0.5mm以上の長さ外側に形成されると、下地誘電体層23が露出することにより、放電空間の気密性が保持できなくなるおそれが生じるからである。このように、下地誘電体層23は、アドレス電極22が外側に延伸している前面板10の長辺側の端部とほぼ同一の位置まで形成されることが好ましい。それにより、アドレス電極22の断線が抑制される。
【0032】
次に、フォトリソグラフィ法によって、下地誘電体層23上に隔壁24が形成される。隔壁24の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。例えば、ダイコート法によって、隔壁ペーストが所定の厚みで下地誘電体層23上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。これにより、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。溶融したガラスフリットは、焼成後に再びガラス化する。隔壁の高さは、例えば、120μmである。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法などが用いられてもよい。なお、本実施の形態では、隔壁の高さは、約120μmである。また、前面板10の長辺側の端部から最も外側の隔壁24までの距離は、約10mmである。
【0033】
次に、下地誘電体層23上および隔壁24の側面上に蛍光体層25が形成される。蛍光体層25の材料には、蛍光体材料とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。例えば、ディスペンス法によって、蛍光体ペーストが隣接する隔壁24間に所定の厚みで塗布される。つまり、隔壁24間の下地誘電体層23上および隔壁24の側面に蛍光体ペーストが塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。これにより、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法、インクジェット法などが用いられてもよい。
【0034】
最後に、図2に示すように、ディスペンス法によって、背面ガラス基板21上に封着材31が形成される。封着材31は、完成したPDP100における封着層27となる。封着材31には、ガラス成分と、耐熱性のフィラーと、有機バインダ成分と、ビーズ材30とを含む封着ペーストが用いられる。ガラス成分は、例えば、酸化ビスマス(Bi23)を20モル%〜50モル%、酸化亜鉛(ZnO)を20モル%〜40モル%、酸化硼素(B23)を10モル%〜30モル%、酸化アルミニウム(Al23)を0.5モル%〜2.5モル%の配合比で含む。また、ガラス成分は、酸化モリブデン(MoO3)または酸化タングステン(WO3)を含む。
【0035】
フィラーは、封着材31の熱膨張係数を調整する。また、フィラーは、ガラスの流動状態を制御する。フィラーには、例えば、コージライト、フォルステライト、β−ユークリプタイト、ジルコン、ムライト、チタン酸バリウム、チタン酸アルミニウム、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化スズ、酸化アルミニウム、石英ガラスなどが用いられる。
【0036】
ビーズ材30には、例えば、酸化硼素(B23)、酸化アルミニウム(Al23)などからなる球形のガラスビーズ材が用いられる。ビーズ材30の平均粒径(D50)は、例えば42インチサイズのPDP100では、110μm〜180μmである。ビーズ材30の平均粒径の標準偏差は、5μm程度である。なお、ビーズ材30の平均粒径は、下限値が隔壁24の高さより5μm小さい値であり、上限値が隔壁24の高さより30μm大きい値であることが好ましい。それは、PDP100の前面板10および背面板20の湾曲が低減されることにより、前面板10と隔壁24との接触によるノイズが低減されるからである。後述されるようにPDP100の放電空間は、減圧された状態で封着される。そのため、前面板10および背面板20が湾曲した状態で前面板10と隔壁24とが接触することがある。前面板10における湾曲した領域と隔壁24とが接触すると、PDP100の動作時における振動等により、ノイズが発生することがある。しかし、上記の構成にすることにより、前面板10と隔壁24との接触によるノイズが低減される。なお、本実施の形態では、ビーズの平均粒径は、130μmである。
【0037】
上記の封着ペーストが、背面ガラス基板21における前面板10と背面板20とが重なる領域の周縁部に、例えば、ディスペンサー法で塗布される。封着ペーストは、アドレス電極22の延伸方向において、下地誘電体層23におけるアドレス電極側引出部28側の端部より1mm程度外側に塗布される。その後、封着ペーストが塗布された背面ガラス基板21が、乾燥炉などにより、約120℃程度で一定時間乾燥させられることにより、有機溶剤が除去される。その後、背面ガラス基板21が、400℃程度で仮焼成されることにより、有機バインダ成分が焼失除去される。本実施の形態では、この焼成工程において、背面ガラス基板21に形成した蛍光体層25も同時に焼成されている。封着ペーストは、印刷法やインクジェット法で塗布されてもよい。
【0038】
なお、封着材ペーストは、アドレス電極22の延伸方向において、0.5mm以上1.5mm以下の範囲で、前面板10と背面板20とが重なる領域の端部より外側になるように形成されることが好ましい。後述される封着工程において、封着材31が溶融している際に放電空間が減圧されるため、封着材31は放電空間内部方向へ引き込まれる。そのため、上記の構成にすることにより、完成したPDP100の封着層27は、前面板10と背面板20とが重なる領域の端部より外側に1mm程度までの範囲で形成されるからである。PDP100の封着層27が、この範囲で形成されると、アドレス電極側引出部28の長さが十分に確保される。そのため、アドレス電極端子29と回路基板との接触不良等の不具合の発生が抑制される。本実施の形態では、封着工程において、放電空間が大気圧以下に減圧された際に、封着材31が放電空間内部へ0.5mm程度引き込まれることが確認されている。そのため、上記の構成にすることにより、封着材31が引き込まれても前面板10の外側に封着層27が残存する。
【0039】
以上の背面板形成工程により、背面ガラス基板21上に、アドレス電極22、下地誘電体層23、隔壁24、蛍光体層25および封着材31が形成される。
【0040】
封着工程では、前面板10と、背面板20と、が組み立てられる。
【0041】
まず、図3に示すように、前面板10と背面板20とが、表示電極14とアドレス電極22とが直交するように、対向配置される。ここで、前面板10と背面板20とは、アドレス電極側引出部28側における前面板10の長辺側の端部が、下地誘電体層23の端部と対向するように配置される。そのため、前面板10と背面板20とは、封着材31が背面板20の長辺側の端部より1mm程度外側になるように、配置される。そして、前面板10と背面板20とは、例えばクリップなどで固定される。固定された前面板10と背面板20とは、封着炉内に搬送される。図示されていないが、背面板20には、排気孔が形成されている。図示されていないが、排気孔には排気管が配置されている。排気管は排気孔を通じて放電空間と導通している。排気管は、PDP100内排気装置および放電ガス導入装置に接続されている。封着材31の軟化点温度は、例えば、380℃である。前面板10と背面板20とは、封着材31の軟化点温度を超える温度、例えば420℃程度、になるまで昇温される。前面板10と背面板20とは、その温度で10分間程度保持される。これにより、封着材31が十分に溶融する。そして、封着材31の軟化点温度以下の例えば300℃まで降温させることによって、前面板10と背面板20とが封着される。次に、放電空間内が1×10-4Pa程度となるまで排気される。その後、放電ガス導入装置によって放電空間に放電ガスが導入される。放電ガスとしては、例えばNeとXeの混合ガスが約6×104Paの圧力で封入される。最後に、排気管が封止される。そして、前面板10と背面板20とが封着炉から取り出される。
【0042】
以上の工程によって、PDP100が完成する。
【0043】
次に、本実施の形態における封着層27の詳細について説明する。図4に示すように、封着層27は、アドレス電極22の延伸方向において、下地誘電体層23におけるアドレス電極側引出部28側の端部より、0.5mm程度外側まで形成される。すなわち、前面板10の長辺側の端部より外側の封着層27の幅W1は、アドレス電極22の延伸方向において、約0.5mmである。このように、封着層27は、前面板10と背面板20とが重なる領域の端部より外側になるように形成される。前面板10の長辺側の端部より外側の封着層27の幅W1は、前面板10の短辺方向において、1mm以内であることが好ましい。それは、アドレス電極側引出部28の長さが十分に確保されるため、アドレス電極端子29と回路基板との接触不良等の不具合の発生が抑制されるからである。
【0044】
よって、下地誘電体層23の露出が抑制される。
【0045】
また、封着層27が、前面板10の長辺側の端部を被覆しているとさらに好ましい。封着工程において、溶融した封着材31が放電空間内部方向に引き込まれることを抑制できるからである。それにより、溶融した封着材31の引き込みを抑制することにより、下地誘電体層23が外部へ露出することがより抑制される。よって、放電空間の気密性がより確実に確保される。さらに、表示電極14およびアドレス電極22が腐食することが抑制される。封着材31の引き込みよって、前面板10と背面板20との端部間に窪みが形成されることがある。その窪みにパネル洗浄時の水が入り込むと、アドレス電極22が腐食し、アドレス電極22が断線することがある。しかし、本実施の形態では、前面板10の長辺側の端部が被覆されることにより、窪みの形成を抑制できるため、アドレス電極22の腐食が抑制される。前面板10の端部は、溶融した封着材31が表面張力によって被覆することにより、封着層27で被覆される。
【0046】
封着層27は、アドレス電極22が外側に延伸している前面板10の長辺側の端部より内側に形成された領域が、前面板10の短辺方向において、前面板10の長辺側の端部から2mm以上9mm以内であることが好ましい。すなわち、前面板10の長辺側の端部より内側の封着層27の幅W2は、アドレス電極22の延伸方向において、2mm以上9mm以下であることが好ましい。それは、封着工程で溶融した封着材31の放電空間内部への引き込みがより抑制されるからである。封着材31の引き込みが抑制されると、下地誘電体層23が外部へ露出することがより抑制される。よって、放電空間の気密性がより確実に確保される。なお、本実施の形態では、前面板10の長辺側の端部より内側の封着層27の幅W2は、アドレス電極22の延伸方向において、約5mmである。
【0047】
このように、本実施の形態のPDP100では、下地誘電体層23の形成領域が、前面板10と背面板20とが対向配置された時の前面板10の長辺側の基板端部とほぼ同一の位置までである。すなわち、前面板10およびアドレス電極22の間にあるビーズ材30と、アドレス電極22と、の間には、下地誘電体層23が形成されている。また、封着層27は、下地誘電体層23の端部を被覆している。このような構成とすることにより、前面板10と背面板20とに挟まれたビーズ材30が、アドレス電極22に直接接触することがなくなる。また、下地誘電体層23が外部へ露出されないため、放電空間の気密性が確保される。よって、本実施の形態のPDP100は、アドレス電極の断線を抑制しつつ放電空間の気密性を確保することができる。
【0048】
なお、本発明の実施形態では、断線対策としてアドレス電極22について説明したが、前面板10側の表示電極14についても、上記の技術を実施することによって本発明の効果を奏する。
【0049】
以上のように、本実施の形態のPDP100は、前面板10と、前面板10と対向配置された背面板20と、前面板10と背面板20とを封着する封着層27と、を備える。背面板20は、金属電極であるアドレス電極22と、アドレス電極22を被覆する下地誘電体層23と、を有する。封着層27は、複数のビーズ材30と、ガラス部材と、を有する。また、封着層27は、下地誘電体層23の端部を被覆し、または、下地誘電体層23の端部より外側に形成されている。複数のビーズ材30の少なくとも一部は、前面板およびアドレス電極22の間にある。前面板およびアドレス電極22の間にあるビーズ材30とアドレス電極22との間には、下地誘電体層23が形成されている。
【0050】
上記の構成よれば、アドレス電極22の断線を抑制しつつ放電空間の気密性を確保可能なPDP100を提供することが可能となる。
【0051】
本実施の形態のPDP100では、前面板10は、長方形であり、背面板20は、前面板10の短辺より長い短辺と、前面板10の長辺より短い長辺と、を有する長方形である。前面板10と背面板20とは、それぞれの長辺が平行となるように配置されている。アドレス電極22は、背面板20の短辺と平行に配置され、かつ、少なくとも一端が前面板10の長辺側の端部より外側に延伸している。
【0052】
ここで、下地誘電体層23は、アドレス電極22が外側に延伸している前面板10の長辺側の端部とほぼ同一の位置まで形成されることが好ましい。それは、アドレス電極22の断線がより抑制されるからである。
【0053】
封着層27は、アドレス電極22が外側に延伸している前面板10の長辺側の端部より外側に形成された領域が、前面板10の短辺方向において、前面板10の長辺側の端部から1mm以内であることが好ましい。それは、下地誘電体層23が外部へ露出することを抑制できるため、放電空間の気密性がより確実に確保されるからである。
【0054】
ビーズ材30の平均粒径(D50)は、下限値が隔壁24の高さより5μm小さい値であり、上限値が隔壁24の高さより30μm大きい値であることが好ましい。それは、PDP100における前面板10および背面板20の湾曲が低減され、前面板10と隔壁24との接触によるノイズが低減されるからである。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本開示技術は、電極を有する基板間のスペースをビーズ材で一定に保つ画像表示装置等に有用である。
【符号の説明】
【0056】
10 前面板
11 前面ガラス基板
12 走査電極
13 維持電極
12a,13a 透明電極
12b,13b バス電極
14 表示電極
15 誘電体層
16 保護層
20 背面板
21 背面ガラス基板
22 アドレス電極
23 下地誘電体層
24 隔壁
24a 縦隔壁
24b 横隔壁
25 蛍光体層
25a 赤色蛍光体層
25b 緑色蛍光体層
25c 青色蛍光体層
26 放電セル
27 封着層
28 アドレス電極側引出部
29 アドレス電極端子
30 ビーズ材
31 封着材
100 PDP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面板と、前記前面板と対向配置された背面板と、前記前面板と前記背面板とを封着する封着層と、を備え、
前記背面板は、金属電極と、前記金属電極を被覆する下地誘電体層と、を有し、
前記封着層は、複数のビーズ材と、ガラス部材と、を有し、かつ、前記下地誘電体層の端部を被覆し、または、前記下地誘電体層の端部より外側に形成され、
前記複数のビーズ材の少なくとも一部は、前記前面板および前記金属電極の間にあり、
前記前面板および前記金属電極の間にあるビーズ材と前記金属電極との間には、前記下地誘電体層が形成されている、
プラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記前面板は、長方形であり、
前記背面板は、前記前面板の短辺より長い短辺と、前記前面板の長辺より短い長辺と、を有する長方形であり、
前記前面板と前記背面板とは、それぞれの長辺が平行となるように配置され、
前記金属電極は、前記背面板の短辺と平行に配置され、かつ、少なくとも一端が前記前面板の長辺側の端部より外側に延伸している、
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記下地誘電体層は、前記金属電極が外側に延伸している前記前面板の長辺側の端部とほぼ同一の位置まで形成されている、
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記封着層は、前記金属電極が外側に延伸している前記前面板の長辺側の端部より外側に形成された領域が、前記前面板の短辺方向において、前記前面板の長辺側の端部から1mm以内である、
請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
さらに、前記背面板は、前記下地誘電体層上に隔壁を有し、
前記ビーズ材の平均粒径は、下限値が前記隔壁の高さより5μm小さい値であり、上限値が前記隔壁の高さより30μm大きい値である、
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−227084(P2012−227084A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95775(P2011−95775)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】