説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】1/10残光が1.0msec以下の残光時間の短い発光特性を有し、クロストークの無い立体画像表示装置に好適なプラズマディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】放電により発光する蛍光体層35を備えたプラズマディスプレイパネルを有し、青色光と緑色光と赤色光の各々の出力光を放つプラズマディスプレイ装置であって、緑色光と赤色光のうち少なくとも一方は、第1の蛍光体の発光を第2の蛍光体によって波長変換した波長変換光であり、かつ第1の蛍光体は、200nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する複数の蛍光体の中から選択される蛍光体であり、第2の蛍光体は、緑色光の場合は500nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色蛍光体で、赤色光の場合は600nm以上780nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色蛍光体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ装置に関し、特には、立体画像表示に好適な短残光で高輝度の蛍光体を備えるプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)を用いたプラズマディスプレイ装置は、高精細化、大画面化の実現が可能であることから、100インチクラスのテレビジョン受像機などの製品化が進んでいる。
【0003】
PDPは、一般的に、表示電極に映像信号電圧を選択的に印加させて放電ガスを放電させ、その放電によって発生した紫外線が各色蛍光体を励起して赤色(以下、Rと呼ぶ)、緑色(以下、Gと呼ぶ)、青色(以下、Bと呼ぶ)に波長変換されてカラー画像表示している。
【0004】
各色の蛍光体層には各色の蛍光体粒子が積層されている。蛍光体粒子の蛍光体材料としては、例えば、赤色蛍光体として(Y,Gd)BO3:Eu3+(以下、YGB蛍光体と呼ぶ)やY(P,V)O4:Eu3+(以下、YPV蛍光体と呼ぶ)やY23:Eu3+(以下、YOX蛍光体と呼ぶ)、緑色蛍光体としてはZn2SiO4:Mn2+(以下、ZSM蛍光体と呼ぶ)やYBO3:Tb3+(以下、YBT蛍光体と呼ぶ)や、(Y,Gd)Al3(BO34:Tb3+(以下、YAB蛍光体と呼ぶ)、青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Eu2+(以下、BAM蛍光体と呼ぶ)などが一般的に用いられている。
【0005】
近年、PDPを用いたテレビなどの大画面化とともに、フルスペックハイビジョンなどの高精細化や立体画像表示への応用などが進んでいる。特に、PDPは液晶パネルに較べて高速駆動が容易である。そのためにPDPと液晶シャッター眼鏡とを組み合わせた立体画像表示装置などの開発が活発化している。
【0006】
これらの蛍光体の残光時間に関して、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3には蛍光体とPDP構造に関する内容が開示されている。また、特許文献1と非特許文献1には、液晶シャッター眼鏡を用いた立体画像表示における残光時間について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−45343号公報
【特許文献2】特開2006−193712号公報
【特許文献3】特開2009−185275号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】浜田宏一他、NHK技研R&D、No.71(2002年)pp.26−35.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PDPと液晶シャッター眼鏡とを組み合わせた立体画像表示装置ではPDPを高速で駆動させる必要があり、画像の輝度やR/G/Bの各単色光の色調やコントラスト、寿命特性を満たすと同時に、PDP製造工程の簡略化や製造の容易性を短残光化が求められている。
【0010】
特に、液晶シャッター眼鏡の応答時間から画像が二重に見えるクロストークの発生を完全に無くすためには、蛍光体の残光時間である1/10残光(以下、断りがない限り、残光時間は1/10残光時間を指す)が2.3msec未満、特に1.0msec以下であることが必要とされる。
【0011】
しかし、上記特許文献1および特許文献2と非特許文献1とでは、立体画像表示装置において残光時間が2.3msecを超え、かつ、画像の輝度が低い。このため、立体画像表示装置は、少なからずクロストークを含み立体画像の画質が劣る。
【0012】
プラズマディスプレイ装置から出力する出力光の残光時間を短くするには、パリティー許容型の発光遷移に起因して超短残光性の波長変換光を放つ蛍光体だけを利用すれば実現できる。しかし、真空紫外線励起下で所望の色調の波長変換光を放つ高効率蛍光体は限られ、特に2.3msec以下の高効率高色純度の赤色蛍光体は無いに等しい。
【0013】
本発明は、赤色光、緑色光、青色光の全ての残光時間が2.3msec未満の短残光の発光特性を有し、かつ、色純度に優れた立体画像表示装置などに好適なプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のプラズマディスプレイ装置は、放電により発光する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルを有し、青色光と緑色光と赤色光の各々の出力光を放つプラズマディスプレイ装置であって、緑色光と赤色光のうち少なくとも一方は、第1の蛍光体の発光を第2の蛍光体によって波長変換した波長変換光であり、かつ前記第1の蛍光体は、200nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する複数の蛍光体の中から選択される蛍光体であり、前記第2の蛍光体は、緑色光の場合は500nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色蛍光体で、赤色光の場合は600nm以上780nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色蛍光体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高出力で短残光性のプラズマディスプレイ装置を提供できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置のPDPの構成を示す断面斜視図
【図2A】一実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置を用いた立体画像表示装置の一例を示す斜視図
【図2B】立体画像表示装置が表示した映像を視聴する際に用いる映像視聴用眼鏡の外観を示す斜視図
【図3】PDPを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動回路構成を示す図
【図4】Eu2+付活窒化物系赤色蛍光体の発光特性を示す図
【図5】実施の形態1のPDPの構成を示す断面図
【図6】実施の形態1のPDPの赤色光、緑色光、青色光の残光特性の一例を示す図
【図7】実施の形態2のPDPの構成を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下一実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、一実施の形態の一例におけるプラズマディスプレイ装置のPDPの構成を示す断面斜視図である。
【0019】
図1において、プラズマディスプレイ装置は放電光発生部10Bを有し、この放電光発生部10Bは前面板20と背面板30とで構成されている。
【0020】
前面板20は前面ガラス基板21を有し、前面ガラス基板21上には平行に配置された走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。
【0021】
そして、走査電極22と維持電極23とを覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。
【0022】
一方、背面板30は背面ガラス基板31を有し、背面ガラス基板31上には、平行に配列されたアドレス電極32が複数形成されている。さらに、アドレス電極32を覆うように下地誘電体層33が形成され、その上に隔壁34が形成されている。これらの前面板20と背面板30とは、放電空間を挟んで表示電極対24とアドレス電極32とが交差するように対向配置される。その外周部がガラスフリットなどの封着部材によって封着されている。
【0023】
また、放電空間は、隔壁34の側面および下地誘電体層33で囲われる微小な空間である。放電空間には、アドレス電極32に対応して順次、赤色、緑色および青色の各画素に対応する蛍光体層35が、放電空間の壁面に接するように、それぞれ設けられている。
【0024】
さらに、放電空間には、放電ガスが封入されている。放電ガスは、例えばネオン(Ne)とキセノン(Xe)などの混合ガスである。この混合ガスは、55kPa〜80kPaの圧力で封入されている。放電ガスは、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)などの混合ガス以外に、アルゴン(Ar)ガスや窒素ガス(N2)なども利用可能である。
【0025】
放電空間は、隔壁34によって、複数の区画に仕切られている。そして、表示電極対24とアドレス電極32とが交差する部分に放電セル36が形成される。そして、上記の電極間に放電電圧を印加すると、これらの放電セル36内で放電が起こる。その放電により発生した放電光(図示せず。例えば紫外線である。)によって、画素を構成するそれぞれの蛍光体層35の蛍光体が励起されて波長変換された光が発光する。なお、放電光発生部10Bの構造は上述したものに限られるわけではない。隔壁34の構造としては、井桁状の構造であってもよい。
【0026】
次に、このようなプラズマディスプレイ装置を立体画像表示装置100に適用する場合について説明する。
【0027】
図2Aは、プラズマディスプレイ装置を用いた立体画像表示装置100の一例を示す斜視図である。図2Bは立体画像表示装置100が表示した映像を視聴する際に用いる映像視聴用眼鏡120の外観を示す斜視図である。
【0028】
例えば、立体画像表示装置100の表示面に表示する映像を、視聴者が、映像視聴用眼鏡120を通して見ることで、立体映像として視聴できる。すなわち、立体画像表示装置100が、その表示面に左目用の映像と右目用の映像を交互に表示する。
映像視聴用眼鏡120は、立体画像表示装置100の表示面に出力される映像と同期して、映像視聴用眼鏡120の左目に入射する光と右目に入射する光を光学フィルターとしての液晶シャッターで制御している。
【0029】
立体画像表示装置100の表示面からは、立体映像(3D映像)の所定の処理を施された映像が表示される。左目用の映像と右目用の映像で視差の分だけ映像が異なる内容である。視聴者は、左目と右目で視聴する映像から視差を感知して、立体画像表示装置100が表示する映像が立体的な映像であることを知覚することができる。
【0030】
より具体的に説明すると、立体画像表示装置100の同期信号送信部110から、プラズマディスプレイ装置の表示面に出力される映像と同期した信号が送信され、映像視聴用眼鏡120の同期信号受信部130で受信する。映像視聴用眼鏡120は、この同期信号に基づいて、左右の目へ入射する光に所定の光学処理を施す。これにより、映像視聴用眼鏡120をつけた視聴者が、立体画像表示装置100が表示する映像を立体映像として視聴することができる。
【0031】
なお、映像視聴用眼鏡120が液晶シャッターを備える場合には、立体画像表示装置100の同期信号送信部110として、赤外線エミッターを用いることができる。そして、映像視聴用眼鏡120の同期信号受信部130として、赤外線センサーを用いることができる。
【0032】
すなわち、本実施の形態における立体画像表示装置100は、プラズマディスプレイ装置と、120Hzの周波数で開閉する液晶シャッターを用いた映像視聴用眼鏡120とを組み合わせて構成している。従って、液晶シャッターを周波数120Hzで開閉しても、立体画像表示装置100の画像が二重に見えるクロストークが発生しないようにする必要がある。そのために、PDP10Aの各色蛍光体から発光される波長変換光の残光時間が3.5msec以下であれば目に優しい立体画像表示が可能になる。さらに、いっそうの迫力を伴う立体映像を視聴することもできる。
【0033】
図3は、PDP10Aを用いたプラズマディスプレイ装置の駆動回路を示す図である。プラズマディスプレイ装置を立体画像表示装置100に適用する場合も、図3に示す駆動回路40と同様の回路で放電が行われる。プラズマディスプレイ装置は、PDP10Aと、それに接続された駆動回路40とから構成される。駆動回路40は、表示ドライバ回路41、表示スキャンドライバ回路42、アドレスドライバ回路43と、を備えている。そして、それらの回路は、それぞれPDP10Aの維持電極23、走査電極22およびアドレス電極32に接続されている。また、コントローラ44はこれらの各種電極に印加する駆動電圧を制御している。
【0034】
次に、PDP10Aにおける放電の動作について説明する。
まず、点灯させるべき放電セル36(例えば、図5に示している)に対応する走査電極22とアドレス電極32とに所定電圧を印加することでアドレス放電を行う。これにより、表示データに対応する放電セル36に壁電荷が形成される。その後、維持電極23と走査電極22間に維持放電電圧を印加すると、壁電荷が形成された放電セル36で維持放電が起こり紫外線を発生する。この紫外線によって励起された蛍光体層35中の蛍光体が波長変換光を発光することで放電セル36が点灯する。各色の放電セル36の点灯、非点灯の組み合わせによって画像が表示される。
【0035】
次に、本実施の形態におけるPDP10Aに共通する放電光発生部10Bの製造方法について図1を参照しながら説明する。
【0036】
まず、前面板20の製造方法を説明する。
【0037】
前面ガラス基板21上に、平行に配置した走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24を複数形成する。
表示電極対24を構成する走査電極22および維持電極23は、前面ガラス基板21上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し焼成する。あるいは、In−Sn−Oなどの透明電極材料をスパッタ法や蒸着法によって製膜することによって形成される。なお、必要に応じて、配線抵抗を下げるためのバス電極(図示せず)を走査電極22や維持電極23に接触して設けても良い。
【0038】
走査電極22と維持電極23とを覆うようにガラス材料を含むペーストをダイコータ法またはスクリーン印刷法で塗布、焼成して誘電体層25を形成し、その誘電体層25上に保護層26を形成する。
【0039】
保護層26は、アルカリ土類金属酸化物(例えばMgOや(Sr,Ca)O)などをスパッタ法や電子ビーム蒸着法で製膜するなどして形成する。
【0040】
次に、背面板30の製造方法を説明する。
【0041】
背面ガラス基板31上に、複数のアドレス電極32をストライプ状に形成する。アドレス電極32は、背面ガラス基板31上に、電極用の銀ペーストをスクリーン印刷し焼成する。または、In−Sn−Oなどの透明電極材料をスパッタ法や蒸着法によって製膜することによって形成される。
【0042】
これらのアドレス電極32を覆うようにガラス材料を含むペーストをダイコータ法またはスクリーン印刷法で塗布、焼成して下地誘電体層33が形成される。形成された下地誘電体層33上に隔壁34が形成される。隔壁34の形成方法としては、ガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法によりアドレス電極32を挟んでストライプ状に繰り返し塗布して焼成する方法がある。また、アドレス電極32を覆って下地誘電体層33上にペーストを塗布してパターンニングして焼成する方法などもある。この隔壁34によって放電空間が区画され、放電セル36が形成される。隔壁34の間隙は42インチ〜50インチのフルHDテレビやHDテレビに合わせて130μm〜240μmに設定する。
【0043】
隣接する2本の隔壁34間の溝に、それぞれの蛍光体材料の粒子を含むペーストをスクリーン印刷法やインクジェット法などによって塗布し、焼成することによって蛍光体層35を形成し、背面板30とする。
【0044】
最後に、プラズマディスプレイ装置の製造を説明する。
【0045】
前面板20と背面板30とを、それぞれ前面板20の走査電極22と背面板30のアドレス電極32とが直交するように対向させて重ね合わせる。
そして、その周辺部に封着用ガラス(図示せず。)を塗布して前面板20と背面板30を封着する。さらに、放電空間内を高真空に排気した後、ネオン(Ne)とキセノン(Xe)などの混合ガスを55kPa〜80kPaの圧力で封入して、放電光発生部10Bを製造する。
【0046】
このようにして製造した放電光発生部10Bに、必要に応じて波長変換部350や光学フィルター500を設けて、本実施の形態のPDP10Aを製造する。
【0047】
なお、蛍光体層35を、例えば赤色蛍光体層35R、緑色蛍光体層35G、青色蛍光体層35Bのように分けることによって、波長変換部350として利用することもできる。
【0048】
このようにして製造したPDP10Aに駆動回路40を接続し、さらに筐体などを配置することによってプラズマディスプレイ装置が作製される。
【0049】
次に、本実施の形態のPDP10Aが放つ出力光と、放電光発生部10Bで用いる蛍光体(第1の蛍光体135)および波長変換部350で用いる蛍光体(第2の蛍光体235)の構成とを表1を用いて説明する。
【0050】
【表1】

【0051】
本実施の形態のPDP10Aの技術思想は、出力光の発光色を特に限定するものではない。しかし、フルカラー表示が可能で需要の多いプラズマディスプレイ装置を提供するためには、光の3原色となる赤色光501Rと緑色光501Gと青色光501Bを出力光として放つように第1の蛍光体135と第2の蛍光体235とを選択することが好ましい。
【0052】
赤色光501Rと緑色光501Gと青色光501Bの出力光を得るための第1の蛍光体135と第2の蛍光体235の技術選択肢を上の表1にまとめた。
【0053】
表1では、出力光として、赤色光501R、緑色光501G、青色光501Bを得るための第1の蛍光体135を、各々、蛍光体R、蛍光体G、蛍光体Bとして定義している。
【0054】
以下、この具体的手段を説明するが、本実施の形態は、表1に示す技術選択肢の中で、緑色光501Gと赤色光501Rの少なくとも一方は、第1の蛍光体135の発光が、第2の蛍光体235によって波長変換された波長変換光であることを特徴とする。
【0055】
まず、第2の蛍光体235の選択肢を説明する。
【0056】
赤色光501Rは、第2の蛍光体235となる赤色蛍光体が波長変換された光を最終的に利用するか、または、第1の蛍光体135となる赤色蛍光体が発光する光をそのまま利用するようにすれば足りる。
【0057】
緑色光501Gも、第2の蛍光体235となる緑色蛍光体が波長変換された光を最終的に利用するか、または、第1の蛍光体135となる緑色蛍光体が発光する光をそのまま利用するようにすれば足りる。
【0058】
青色光501Bも、第2の蛍光体235となる青色蛍光体が波長変換された光を最終的に利用するか、または、第1の蛍光体135となる青色蛍光体が波長変換された光をそのまま利用するようにすれば足りる。
【0059】
次に、第1の蛍光体135の技術選択肢を説明する。
【0060】
赤色光501Rを得るための第1の蛍光体135(蛍光体R)としては、第2の蛍光体235となる赤色蛍光体を励起し得る光を放つ蛍光体(蛍光体R1)、および、赤色光501Rを発光する蛍光体(蛍光体R0)から選択できる。
【0061】
蛍光体Rとして機能させ得る具体的な第1の蛍光体135は、放電光によって励起可能で、放電光のピーク波長よりも長波長側に発光ピークを有する。
さらに、赤色蛍光体が発光する赤色光501Rよりも短波長側に発光ピークを有する光を発光する蛍光体(蛍光体R1)、または、放電光によって励起可能な赤色蛍光体(蛍光体R0)のいずれかである。蛍光体R1としては、具体的には、紫外蛍光体、紫色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体および黄色蛍光体から選ばれる少なくとも一つの蛍光体である。
【0062】
緑色光501Gを得るための第1の蛍光体135(蛍光体G)としては、第2の蛍光体235となる緑色蛍光体を励起し得る光を発光する蛍光体(蛍光体G1)、および、緑色光501Gを発光する蛍光体(蛍光体G0)から選択できる。
【0063】
蛍光体Gとして機能させ得る具体的な第1の蛍光体135は、放電光によって励起可能で、放電光のピーク波長よりも長波長側に発光ピークを有し、かつ、緑色蛍光体が発光する緑色光501Gよりも短波長側に発光ピークを有する光を放つ蛍光体(蛍光体G1)、または、放電光によって励起可能な緑色蛍光体(蛍光体G0)のいずれかである。
蛍光体G1としては、具体的には、紫外蛍光体、紫色蛍光体、および、青色蛍光体から選ばれる少なくとも1つの蛍光体である。
【0064】
青色光501Bを得るための第1の蛍光体135(蛍光体B)としては、第2の蛍光体235となる青色蛍光体を励起し得る光を発光する蛍光体(蛍光体B1)、および、青色光501Bを放つ蛍光体(蛍光体B0)から選択できる。蛍光体Bとして機能させ得る具体的な第1の蛍光体135は、放電光によって励起可能で、放電光のピーク波長よりも長波長側に発光ピークを有する。
【0065】
かつ、青色蛍光体が発光する青色光501Bよりも短波長側に発光ピークを有する光を発光する蛍光体(蛍光体B1)、または、放電光によって励起可能な青色蛍光体(蛍光体B0)のいずれかである。蛍光体B1としては、具体的には、紫外蛍光体、および、紫色蛍光体から選ばれる少なくとも一つの蛍光体である。
【0066】
なお、紫外蛍光体、紫色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、および赤色蛍光体は、各々、200nm以上380nm未満の遠紫外〜近紫外、380nm以上420nm未満の紫色、420nm以上500nm未満の青色、500nm以上560nm未満の緑色、560nm以上600nm未満の黄〜橙色、および600nm以上780nm未満の赤色の波長領域に発光ピークを有する光を発光する蛍光体と定義している。
【0067】
本実施の形態では、放電光が放つ例えば真空紫外線を、必要に応じて、第1の蛍光体135を利用し、第2の蛍光体235(少なくとも緑色蛍光体または赤色蛍光体の一方)が効率良く励起される光へと、一旦、波長変換した後、第1の蛍光体135が放つ光を用いて第2の蛍光体235を励起する。 そのため、高出力の赤、緑、青の短残光性出力光を得るための第2の蛍光体235の選択の幅を広げることができる。
【0068】
このため、既存の実用蛍光体だけを用いて容易に、高出力と超短残光性とを兼ね備える出力光、特に赤色光501Rを得ることができるようになる。この結果、1/10残光が2.3msec未満、好ましくは1.0msec未満の短残光性蛍光体だけを用いてプラズマディスプレイ装置を構成することができる。これによって、クロストークの無い立体画像表示装置100を提供できることとなる。
【0069】
以下、本実施の形態で利用する短残光性蛍光体をさらに詳しく説明する。
【0070】
本実施の形態のプラズマディスプレイ装置で用いる短残光性蛍光体は、10%残光時間の記号として、一般に、MS、S、およびVSで区分される蛍光体の中から広く選択することができる。
【0071】
この具体例として、許容遷移を示す蛍光体、ドナーまたはアクセプターを介在する発光遷移を示す蛍光体、および錯イオン形発光中心を持つ蛍光体などを挙げることができる。すなわち、表1において、第1の蛍光体135あるいは第2の蛍光体235として示した、紫外蛍光体、紫色蛍光体、青色蛍光体、緑色蛍光体、黄色蛍光体、赤色蛍光体としては、以下の蛍光体を用いることができる。
【0072】
(1)パリティー許容遷移またはスピン許容遷移を示す希土類蛍光体
Ce3+付活蛍光体(パリティー許容遷移)としては、次のものが用いることができる。
紫外線放射の蛍光体として、YAlO3:Ce3+、CeMgAl1119、YPO4:Ce3+、LaPO4:Ce3+、LaMgB510:Ce3+、LaB36:Ce3+を用いる。紫色発光の蛍光体として、Ca2MgSi27、Y2SiO4:Ce3+を用いる。緑色発光の蛍光体として、Y3Al512:Ce3+を用いる。
【0073】
Eu2+付活蛍光体(パリティー許容遷移)としては、次のものが用いることができる。
紫外線放射の蛍光体として、SrB47:Eu2+、紫色発光の蛍光体として、(Sr,Ba)Al2Si28:Eu2+、青色発光の蛍光体として、BaMgAl1017:Eu2+、CaMgSi26:Eu2+、Sr10(PO46Cl2:Eu2+、Sr4Si38Cl4:Eu2+、Ba3MgSi28:Eu2+、緑色発光の蛍光体として、Ba3Si6122:Eu2+、Si34:Eu2+、黄色発光の蛍光体として、Ca−α−SiAlON:Eu2+、赤色発光の蛍光体として、Sr2Si58:Eu2+、SrAlSi47:Eu2+、CaAlSiN3:Eu2+を用いる。
【0074】
Yb2+付活蛍光体(パリティー許容遷移)としては、緑色発光の蛍光体として、Ca−α−SiAlON:Yb2+を用いる。
【0075】
その他にPr3+付活蛍光体(スピン許容遷移(パリティー禁制))などの蛍光体を用いることができる。
【0076】
(2)パリティー許容遷移のns2形イオンを発光中心とする蛍光体
Sn2+付活蛍光体としては、紫色発光の蛍光体として、SrMgP27:Sn2+、赤色発光の蛍光体として、(Sr,Mg)3(PO42:Sn2+を用いることができる。
【0077】
Sb3+付活蛍光体としては、青色発光の蛍光体として、3Ca3(PO42・Ca(F,Cl)2:Sb3+を用いることができる。
【0078】
Tl+付活蛍光体としては、紫外線放射の蛍光体として、Ca3(PO42:Tl+、紫色発光の蛍光体として、Zn2SiO4:Tl+、緑色発光の蛍光体として、(Ca,Mg)SiO3:Tl+を用いることができる。
【0079】
Pb2+付活蛍光体としては、紫外線放射の蛍光体として、BaSi25:Pb2+、青色発光の蛍光体として、CaWO4:Pb2+を用いることができる。
【0080】
その他に、Cu+付活蛍光体やBi3+付活蛍光体などの蛍光体を用いることができる。
【0081】
(3)ドナーまたはアクセプターを介在する発光遷移を示す蛍光体
青色発光の蛍光体として、ZnS:Ag、ZnS:Ag,Cl、緑色発光の蛍光体として、ZnS:Cu,Alを用いることができる。
【0082】
(4)錯イオン形発光中心を持つ蛍光体
紫色発光の蛍光体として、CaWO4、青色発光の蛍光体として、Y(P,V)O4を用いることができる。
【0083】
なお、第2の蛍光体235として好ましい赤色蛍光体は、窒化物系のEu2+付活蛍光体である。
【0084】
このような窒化物系のEu2+付活蛍光体は、近紫外線、紫色光、青色光501Bのいずれの光であっても、効率良く吸収して、理論限界の100%に近い高い光子変換効率で、これら光を色純度の良好な赤色光501R(620〜660nm付近に発光ピークを有する。)に波長変換することができる。このため、高効率、高色純度、短残光性の面で好ましいものである。
【0085】
参考のために、図4に、代表的な窒化物系のEu2+付活赤色蛍光体(以後、Eu2+付活赤色窒化物蛍光体と記載する。)の、励起スペクトル、発光スペクトル、内部量子効率(光子変換効率)の励起波長依存性の一例を示した。
【0086】
図4に示すグラフの横軸は波長(nm)を示し、縦軸はEu2+付活赤色窒化物蛍光体の発光強度(a.u.)および内部量子効率(%)を示している。なお、内部量子効率とは、蛍光体が吸収した光子数に対する蛍光体が放つ光子数をパーセントで示したもので、図4では、その値を絶対値で示している。図4に示すように黒丸の分布は、Eu2+付活赤色窒化物蛍光体の内部量子効率を示している。また、細線はEu2+付活赤色窒化物蛍光体の励起スペクトルを示している。そして、太線はEu2+付活赤色窒化物蛍光体の発光スペクトルを示している。
【0087】
図4に示すように、窒化物系のEu2+付活赤色蛍光体が、近紫外線、紫色光、青色光501Bを効率良く吸収するだけでなく、緑色光501Gや黄色光も吸収するとともに、近紫外〜黄色波長領域に亘る広い範囲の光を、85%を超える高い内部量子効率で、650nm付近に発光ピークを有する赤色光501Rに波長変換している。
【0088】
図5はPDP10Aの実施の形態1の構造を示す断面図である。図5は、第1の蛍光体135を含む蛍光体層35が、背面板30の隔壁34と下地誘電体層33とで囲われた放電セル36内に配置されるとともに、第1の蛍光体135が放つ光が、放電空間を通過した後、第2の蛍光体235を励起するように構成した構造の一例を示している。
【0089】
なお、本実施の形態では、放電セル36から発生した放電光は、第1の蛍光体135によって、少なくとも紫外、紫、青、緑、黄色のいずれかの光に波長変換され、第1の蛍光体135が放つ波長変換光は、第2の蛍光体235によって、少なくとも青、緑、黄、赤色のいずれかの光に波長変換される。また、出力光はPDP10Aの前面板20を備える側の面から放たれる。
【0090】
図5において、波長変換部350は、第2の蛍光体235を備える蛍光体層35である。少なくとも、第2の蛍光体235として、少なくとも緑色蛍光体または赤色蛍光体のいずれかを備える。なお、図5では、実施の形態1として、第1の蛍光体135を含む蛍光体層35が全て青色蛍光体層35Bである。第2の蛍光体235を含む波長変換部350が、赤色と緑色の光を各々発光する赤色蛍光体層35Rと緑色蛍光体層35Gを備えている。一方、青色蛍光体層35Bを備えていない。
【0091】
第1の蛍光体135は、第1の蛍光体135として、蛍光体R0と蛍光体G0とを同時に使用しない限り、先に、表1に示した第1の蛍光体135の選択肢の中から任意に選ぶことができる。また、第1の蛍光体135を含む蛍光体層35は、紫外線、紫色光、青色光501B、緑色光501G、黄色光の少なくとも一つの光を発光するものとして構成することもできる。第1の蛍光体135を含む蛍光体層35は、蛍光体R、蛍光体G、蛍光体Bの全てを同じものとして構成することもできる。または、第1の蛍光体135を含む蛍光体層35は、全てを異なるものとして構成することもできる。第1の蛍光体135を含む蛍光体層35を、蛍光体R、蛍光体G、蛍光体Bの全てを同じものとして構成する場合、紫外線、紫色光、青色光501Bのいずれかの光を放つものとして構成することができる。
【0092】
第2の蛍光体235を含む蛍光体層35は、少なくとも緑色光501Gまたは赤色光501Rのいずれかを発光するものとして構成したものであれば良い。例えば、第2の蛍光体235は、第1の蛍光体135として、蛍光体R0と蛍光体G0とを同時に使用する。
そして、第2の蛍光体235として、赤色蛍光体と緑色蛍光体を使用しない限り、表1に示した第2の蛍光体235の選択肢の中から任意に選ぶことができる。そのため、第2の蛍光体235として、緑色蛍光体を用いないようにして構成することもできる。
さらに、青色蛍光体を用いて構成することもできる。
【0093】
第1実施の形態では、一般的な製造工程を利用してPDP10Aを作製し、これに、少なくとも波長変換部350を付け加えた。
そのため、比較的容易に、1/10残光時間が2.3msec未満の短残光性を持ち、出力の大きな出力光、特に、R/G/Bの各光成分を少なくとも放つ発光装置を製造できる。なお、波長変換部350に用いることができる第2の蛍光体235は、外光を吸収してそれよりも長波長の可視光に波長変換する特性を持つものが多い。そのため、プラズマディスプレイ装置のコントラスト低下を誘引しやすいものとなる。コントラスト低下を抑制するために、外光による第2の蛍光体235の励起を抑制する構造物を、第2の蛍光体235を含む蛍光体層35の光出射面の側に配置する。例えば、第2の蛍光体235が放つ光よりも短波長の光を吸収する光学フィルター500(500R、500G、500B)を、第2の蛍光体235を含む少なくとも1つの蛍光体層35からの光出射面の側に備えることが好ましい。
【0094】
すなわち、本実施の形態のプラズマディスプレイ装置は、青色光501B、緑色光501G、および赤色光501Rのうちの少なくとも一つの光は、各々、青色光501B、緑色光501G、および赤色光501Rのピーク波長よりも短波長側の光を吸収する光学フィルター500を通過して出力することが好ましい。
【0095】
これによって、第2の蛍光体235が外光で励起されにくくなり、外光で照射されても第2の蛍光体235が発光しなくなる。そのため、プラズマディスプレイ装置のコントラスト低下を抑制することになる。
【0096】
なお、第2の蛍光体235を含む蛍光体層35(波長変換部350)を配置する場所については、図5に示す前面板20の光出射面上に限定されるものではない。
【0097】
図6に、実施の形態1のPDP構造における出力光の残光特性の一例を示す。図6の横軸はPDPの放電OFF後の時間(msec)、縦軸はPDPのRGB各画素の発光強度(a.u.)を示している。
【0098】
図6は、第1の蛍光体135を、Eu2+付活アルミン酸塩蛍光体(青色発光BaMgAl1017:Eu2+)とし、第2の蛍光体235を、Eu2+付活アルミノ珪酸塩蛍光体(赤色発光CaAlSiN3:Eu2+)、およびCe3+付活イットリウムアルミニウムガーネット蛍光体(緑色発光Y3Al512:Ce2+)とし、赤色光501R、緑色光501G、青色光501Bの各々を、CaAlSiN3:Eu2+による赤色光501R、Y3Al512:Ce2+による緑色光501G、BaMgAl1017:Eu2+による青色光501Bとした場合の、各出力光の残光特性である。
【0099】
参考のために、図6には、赤色蛍光体としてY(P,V)O4:Eu3+、緑色蛍光体としてY3Al512:Ce2+とZn2SiO4:Mn2+の混合蛍光体、青色蛍光体として、BaMgAl1017:Eu2+を利用した従来のPDP構造における出力光の残光特性の一例も示した。
【0100】
図6に示す(a)と(b)は、本実施の形態のPDPの構造における、赤色光501Rと緑色光501Gの残光特性を各々示し、図6の(c)と(d)は、従来のPDP構造における、赤色光501Rと緑色光501Gの残光特性を各々示している。なお、図6の(e)は、本願と従来の両方のPDP構造における青色光501Bの残光特性を示している。より具体的に説明すると、縦軸は、発光強度を示し、横軸は、放電光を消灯した後に経過する時間を示す。なお、発光強度が100から10に低下するまでの時間は、一般的に1/10残光時間と定義されている。
【0101】
従来のPDP構造では、青色光501Bにおいて1.0msec未満となるものの、赤色光501Rと緑色光501Gにおいて、(c)と(d)が示すように1.0msecを超え、3.0〜3.5msecの範囲内になっている。
一方、本実施の形態のPDP構造では、赤色光501Rと緑色光501Gにおいても、(a)と(b)が示すように、1.0msec未満である。従って、本実施の形態によれば、特に赤色光501Rと緑色光501Gを大幅に短残光化でき、残光時間が1.0msec未満であることがわかる。
【0102】
なお、蛍光体は、無機蛍光体だけでなく有機蛍光体とすることもできる。第1の蛍光体135または第2の蛍光体235の少なくとも一方、特に第2の蛍光体235を、蛍光染料を含む蛍光顔料などを利用することも可能である。そして、低コスト化の面で有利なものとなる。
【0103】
なお、有機蛍光体を利用する場合も、好ましい1/10残光時間は、2.3msec未満、好ましくは1.0msec未満である。このような短残光性有機蛍光体を用いることによって、クロストークを大幅に抑制した立体画像表示装置100を提供できる。
【0104】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2におけるPDPの発光特性について説明する。なお、実施の形態1と同様の内容は省略する。
【0105】
図7は、PDP10Aの実施の形態2の構造を示す断面図であり、第1の蛍光体135を含む蛍光体層35が、背面板30の隔壁34と下地誘電体層33とで囲われた放電セル36内に配置される。そして、第1の蛍光体135が発光する光が、放電空間を通過することなく、第2の蛍光体235を励起するように構成した構造の一例である。
【0106】
図7は、一例として、第2の蛍光体235を含む蛍光体層35が第1の蛍光体135を含む蛍光体層35と、背面板30の隔壁34と下地誘電体層33とで囲われた放電セル36内に配置した構造を一例として示したものである。また、図7は、図5において波長変換部350を、放電セル36内に配置したものである。
【0107】
なお、本実施の形態でも、発生した放電光は、第1の蛍光体135によって、少なくとも紫外、紫、青、緑、黄色のいずれかの光に波長変換される。そして、第1の蛍光体135が発光する波長変換光は、第2の蛍光体235によって、少なくとも青、緑、黄、赤色のいずれかの光に波長変換される。また、本実施の形態では、出力光はPDP10Aの背面板30を備える側の面から出光する。
【0108】
なお、図7では、一例として、(1)第1の蛍光体135を含む蛍光体層35が全て青色蛍光体層35Bであり、(2)第2の蛍光体235を含む蛍光体層35が緑色蛍光体層35Gと赤色蛍光体層35Rであり、(3)PDP10Aが放つ光は、青色蛍光体層35Bが発光する青色光501Bと、緑色蛍光体層35Gが発光する緑色光501Gと、赤色蛍光体層35Rが発光する赤色光501Rである場合を示した。しかし、本実施の形態はこれに限定されるものではない。
【0109】
先に説明したPDP構造と同様に、第1の蛍光体135および第2の蛍光体235は、表1に示した第1の蛍光体135の選択肢の中から任意に選ぶことができる。
【0110】
第1の蛍光体135を含む蛍光体層35および第2の蛍光体235を含む蛍光体層35について、いずれも、先にPDP構造で説明した通りであるのでここでは説明を省略する。
【0111】
なお、第2の蛍光体235を含む蛍光体層35を配置する場所について、図7に示すように、背面板30の隔壁34と下地誘電体層33とで囲われた放電セル36内に限定されるものではない。
【0112】
第1の蛍光体135が発光する光が、放電空間を通過することなく、第2の蛍光体235を励起するように構成した構造になっておればよい。
【0113】
PDP構造の場合と同様に、このようにしても、一般的なPDPの製造工程を利用して、比較的容易に、1/10残光時間が2.3msec未満の短残光性を持ち出力の大きな出力光、特に、R/G/B光を出光するPDPを作製できる。
【0114】
なお、本実施の形態においても、実施の形態1と同様の理由で、第2の蛍光体235が放つ光よりも短波長の光を吸収する光学フィルター500(500R、500G、500B)などの、外光による第2の蛍光体235の励起を抑制する構造物を、第2の蛍光体235を含む少なくとも一つの蛍光体層35からの光出射面上に備えることが好ましい。
【0115】
なお、図7において、蛍光体支持体300は、蛍光体層35を放電セル36内に均一に形成しやすくするためのものであり、例えば、透明ガラス材である。
本実施の形態では、蛍光体支持体300は備えていても備えていなくても構わない。蛍光体支持体300は、例えば、ガラス材料を含むペーストをスクリーン印刷法で形成するなどして形成可能である。
【0116】
以上のように本実施の形態は、放電により発光する蛍光体層35を備えたプラズマディスプレイパネルを有し、青色光501Bと緑色光501Gと赤色光501Rの各々の出力光を放つプラズマディスプレイ装置であって、緑色光501Gと赤色光501Rのうち少なくとも一方は、第1の蛍光体135の発光を第2の蛍光体235によって波長変換した波長変換光であり、かつ第1の蛍光体135は、200nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する複数の蛍光体の中から選択される蛍光体であり、第2の蛍光体235は、緑色光501Gの場合は500nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色蛍光体で、赤色光501Rの場合は600nm以上780nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色蛍光体であることを特徴とするもので、既存の緑色蛍光体または赤色蛍光体を利用しても、放電光を高い光子変換効率で波長変換し、高出力で短残光性の緑色光501Gや赤色光501Rを放つプラズマディスプレイ装置を提供できるようになる。
【0117】
また、第1の蛍光体135および第2の蛍光体235は、パリティー許容遷移に基づく発光を示す発光中心イオンで付活された蛍光体であることにより、1/10残光時間が1.0msec未満の超短残光性のプラズマディスプレイ装置を実現することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0118】
以上説明したように、本発明によれば、短残光特性を有し、高輝度かつ高色域表示が可能なプラズマディスプレイ装置を実現でき、立体画像表示装置などに有用である。
【符号の説明】
【0119】
10A PDP
10B 放電光発生部
20 前面板
21 前面ガラス基板
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
25 誘電体層
26 保護層
30 背面板
31 背面ガラス基板
32 アドレス電極
33 下地誘電体層
34 隔壁
35 蛍光体層
35R 赤色蛍光体層
35G 緑色蛍光体層
35B 青色蛍光体層
36 放電セル
40 駆動回路
41 表示ドライバ回路
42 表示スキャンドライバ回路
43 アドレスドライバ回路
44 コントローラ
100 立体画像表示装置
110 同期信号送信部
120 映像視聴用眼鏡
130 同期信号受信部
135 第1の蛍光体
235 第2の蛍光体
350 波長変換部
500 光学フィルター
501B 青色光
501G 緑色光
501R 赤色光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電により発光する蛍光体層を備えたプラズマディスプレイパネルを有し、青色光と緑色光と赤色光の各々の出力光を放つプラズマディスプレイ装置であって、
緑色光と赤色光のうち少なくとも一方は、第1の蛍光体の発光を第2の蛍光体によって波長変換した波長変換光であり、かつ前記第1の蛍光体は、200nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する複数の蛍光体の中から選択される蛍光体であり、前記第2の蛍光体は、緑色光の場合は500nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色蛍光体で、赤色光の場合は600nm以上780nm未満の波長領域に発光ピークを有する赤色蛍光体であるプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第1の蛍光体は、200nm以上380nm未満の波長領域に発光ピークを有する紫外蛍光体、380nm以上420nm未満の波長領域に発光ピークを有する紫色蛍光体、420nm以上500nm未満の波長領域に発光ピークを有する青色蛍光体、500nm以上560nm未満の波長領域に発光ピークを有する緑色蛍光体、560nm以上600nm未満の波長領域に発光ピークを有する黄色蛍光体の中から選択される蛍光体である請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
前記第1の蛍光体および前記第2の蛍光体は、パリティー許容遷移に基づく発光を示す発光中心イオンで付活された蛍光体である請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記第1の蛍光体および前記第2の蛍光体は、Ce3+付活蛍光体、Eu2+付活蛍光体、Yb2+付活蛍光体、Sn2+付活蛍光体、Sb3+付活蛍光体、Tl+付活蛍光体およびPb2+付活蛍光体の中から選ばれる蛍光体である請求項3に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
青色光と緑色光と赤色光の出力光の1/10残光は、1.0msec未満である請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−216474(P2011−216474A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54111(P2011−54111)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】