説明

プラズマ溶融分解炉及びプラズマ溶融分解方法

【課題】プラズマ溶融分解炉において処理対象物の投入による急激な揮発と熱分解を抑制するプラズマ溶融分解炉及びプラズマ溶融分解方法を提供する。
【解決手段】処理対象物2を装入する装入室3、装入室3から送られてきた処理対象物2を100℃以下に予熱する第1予熱室4及び、第1予熱室4で予熱された処理対象物2を600℃以下に予熱し且つプラズマ溶融分解炉内に通じる第2予熱室5が連続して順次配置され、装入室3、第1予熱室4、第2予熱室5、プラズマ溶融分解炉1のそれぞれの境界に開閉可能なゲート6,7,8が配設され、第1予熱室4と第2予熱室5の境界のゲート7は発生したガスが流出するガス流出用隙間7aが形成され、第2予熱室5とプラズマ溶融分解炉の境界のゲート8は発生したガスが流出するガス流出用隙間8aを形成するとともに、開度が調節可能である廃棄物のプラズマ溶融分解炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮発性可燃物を含む処理対象物をプラズマ溶融分解処理するプラズマ溶融分解炉及びプラズマ溶融分解方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマを熱源としたプラズマ溶融分解炉に、一般廃棄物、医療系廃棄物等の産業廃棄物、PCB油およびPCB汚染物等の処理対象物を投入すると、プラズマアークおよび溶融スラグ浴の相乗効果により効率よくプラズマ溶融分解処理できる。なお、廃棄物のプラズマ溶融処理法は、例えば、特許文献1、2に開示されている。
【0003】
プラズマ溶融分解処理として、処理対象物をドラム缶などの容器に密封して、容器ごとプラズマ溶融分解炉に投入する方法がある。投入した処理対象物の上部は、直接プラズマを照射して溶融分解する。処理対象物の下部は、溶融スラグに浸かり、1400℃以上の高温により、溶融分解する。プラズマ溶融分解炉内では、処理対象物中の可燃分はCO、HOまで完全に分解され、不燃物はスラグとなる。排気は、減温塔で水噴霧により200℃まで温度を下げ、バグフィルタで消石灰を吹き込み、HCl、SOXを除去する。その後、触媒反応塔でアンモニアを吹き込み、NOXを除去する。再合成したダイオキシン類は、バグフィルタで粉末活性炭を吹き込み吸着除去するとともに、触媒反応等の触媒により分解除去する。溶融スラグは、プラズマ溶融分解炉から払い出し、リサイクルもしくは最終処分する。
【特許文献1】特開2000−288510号公報
【特許文献2】特開2004−121801号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマ溶融分解炉に揮発性の高い可燃物を含む処理対象物を投入すると、炉内で急激な揮発と熱分解が起こり、一時的にガス量が増大する。これにより、充分な分解時間が得られずに処理対象物が完全に分解されないまま後段へ漏洩してしまう。また、ガス量の負荷変動が非常に大きくなることから、排気処理設備の容量も大きくなり、制御の追従性も高くする必要があるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、プラズマ溶融分解炉において処理対象物の投入による急激な揮発と熱分解を抑制するプラズマ溶融分解炉及びプラズマ溶融分解方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の廃棄物のプラズマ溶融分解炉は、処理対象物を装入する装入室、装入室から送られてきた処理対象物を100℃以下に予熱する第1予熱室及び、第1予熱室で予熱された処理対象物を600℃以下に予熱し且つプラズマ溶融分解炉内に通じる第2予熱室が連続して順次配置され、装入室、第1予熱室、第2予熱室、プラズマ溶融分解炉のそれぞれの境界に開閉可能なゲートが配設され、第1予熱室と第2予熱室の境界のゲートは発生したガスが流出するガス流出用隙間が形成され、第2予熱室とプラズマ溶融分解炉の境界のゲートは発生したガスが流出するガス流出用隙間を形成するとともに、開度が調節可能であることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の廃棄物のプラズマ溶融分解方法は、前記プラズマ溶融分解炉で処理対象物をプラズマ溶融分解処理する方法において、第1予熱室で処理対象物を100℃以下に予熱し、第1予熱室で予熱された処理対象物を第2予熱室とプラズマ溶融分解炉の境界のゲートの開度を調節しながら600℃以下に予熱し、第2予熱室で予熱された処理対象物をプラズマ溶融分解炉内に投入してプラズマ溶融分解することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、処理対象物を投入するプラズマ溶融分解炉の前に輻射熱を熱源とした予熱室を設けることで、揮発性の高い可燃物のガス化速度を抑制し、プラズマ溶融分解炉での処理対象物の急激な揮発と熱分解が抑制され、未分解ガスの後段への漏洩がなくなる。
【0009】
また、処理対象物投入直後の急激な揮発と熱分解が抑制され、排ガス処理設備に対する負荷が減少し、設備容量を縮小でき、さらに、排ガス量の負荷変動幅が小さくなり、設備全体の制御性が向上する。
【0010】
また、本発明では、予熱室を2つに分けることで雰囲気温度を変えて、揮発対象物を限定することができ、また、第2予熱室は予熱ゲートの開度、開速度により室内の温度制御ができる。
【0011】
また、予熱室ゲートを完全に仕切らずガス流出用隙間を形成しているので、発生したガスは滞留することなくプラズマ溶融分解炉へ流れて無害化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明のプラズマ溶融分解炉における挿入物の投入過程を示す図である。
【0013】
図1(a)において、プラズマ溶融分解炉1はプラズマトーチ1aを備え、炉内で発生した排ガスを排出するための排気ダクト1bに接続されている。
【0014】
プラズマ溶融分解炉1と処理対象物2を装入する装入室3との間に第1予熱室4、第2予熱室5からなる予熱室が配置され、処理対象物が予熱される。第1予熱室4にはプラズマ溶融分解炉1の排ガスを導入する排ガス導入ダクト4aが接続されている。排ガス導入ダクト4aの排ガスは、放射温度計で処理対象物の温度を検出して温度指示調節計TICにより適宜加熱あるいは冷却されて所定温度に調節される。
【0015】
装入室3、第1予熱室4、第2予熱室5、プラズマ溶融分解炉1のそれぞれの境界には上下動により開閉する投入ゲート6、第1予熱室ゲート7、第2室予熱ゲート8が配置されている。第1予熱室4と第2予熱室5の間の第1予熱室ゲート7、第2予熱室5とプラズマ溶融分解炉1の間の第2予熱室ゲート8は、予備室の壁及び床との間を完全に仕切らずにガスが流出するガス流出用隙間7a,8aが形成されている。ガス流出用隙間7a,8aを形成することにより、発生したガスは滞留することなくプラズマ溶融分解炉1へ流れて無害化される。
【0016】
装入室3には処理対象物を装入室3からプラズマ溶融分解炉1へ移動させるプッシャー9が設けられている。なお、装入室3、予熱室4,5の床を斜めにすることで自重により移動させることもできる。
【0017】
次に、本発明のプラズマ溶融分解炉の操業方法について説明する。
【0018】
図1(a)に示すように、ドラム缶などの容器に密封したPCB等の処理対象物2を装入室3にセットする。
【0019】
次いで、図1(b)に示すように装入室3と第1予熱室4の間の投入ゲート6を開けてプッシャー9により処理対象物2を第1予熱室4へ押し出し、投入ゲート6を閉じる。
【0020】
第1予熱室4に置かれた処理対象物2は、プラズマアークやスラグ浴の輻射熱、冷却空気や循環排ガスの導入やバーナによって第1予熱室4内の処理対象物を100℃以下にして、揮発速度や熱分解速度を抑制しながら水、ヘキサン、灯油等の高揮発成分をガス化させる。発生したガスは第1予熱室ゲート7のガス流出用隙間7aを通って第2予熱室5へ流れ、第2予熱室5から第2予熱室ゲート8のガス流出用隙間8aを通ってプラズマ溶融分解炉1へ流れていくので、滞留することはない。
【0021】
次いで、図1(c)に示すように第1予熱室4と第2予熱室5の間の第1予熱室ゲート7を開けてプッシャー9により処理対象物2を第2予熱室5へ押し出し、第1予熱室ゲート7を閉じる。第2予熱室は600℃以下に制御して、重油成分、プラスチック等の可燃物を揮発させる。
【0022】
第2予熱室5とプラズマ溶融分解炉1の間の第2予熱室ゲート8は、プラズマ溶融分解炉1と第2予熱室5を完全に仕切っておらず、発生したガスは、滞留することなく第2予熱室ゲート8のガス流出用隙間8aを通ってプラズマ溶融分解炉1へ流れて完全に分解されて無害化される。
【0023】
図1(d)に示すように、第2予熱室ゲート8の開度を調節することにより第2予熱室5の温度を制御することができる。
【0024】
図2は第2予熱室ゲートの開度と昇温速度の関係を示すグラフで、スラグ浴温度1400℃、第2予熱室ゲート8の寸法幅1000mm、高さ1000mm、投入ドラム缶150kgの一例である。
【0025】
第2予熱室ゲート8の開度とスラグ浴からの輻射量は図2のAに示すように正比例すると考えられるが、実際は対流による温度上昇により図2のBに示すようになる。したがって、第2予熱室ゲート8の開度を調整して処理対象物2の昇温温度を容易に制御することができる。
【0026】
次いで、図1(e)に示すように、第2予熱室ゲート8を開いて第2ゲート予熱室5に残った処理対象物2をプラズマ溶融分解炉3のスラグ浴1cに落とし、溶融処理する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のプラズマ溶融分解炉における挿入物の投入過程を示す図である。
【図2】第2予熱室ゲートの開度と昇温速度の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0028】
1:プラズマ溶融分解炉
1a:プラズマトーチ
1b:排気ダクト
1c:スラグ浴
2:処理対象物
3:装入室
4:第1予熱室
4a:排ガス導入ダクト
5:第2予熱室
6:投入ゲート
7:第1予熱室ゲート
7a:ガス流出用隙間
8:第2室予熱
8a:ガス流出用隙間
9:プッシャー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象物を装入する装入室、装入室から送られてきた処理対象物を100℃以下に予熱する第1予熱室及び、第1予熱室で予熱された処理対象物を600℃以下に予熱し且つプラズマ溶融分解炉内に通じる第2予熱室が連続して順次配置され、装入室、第1予熱室、第2予熱室、プラズマ溶融分解炉のそれぞれの境界に開閉可能なゲートが配設され、第1予熱室と第2予熱室の境界のゲートは発生したガスが流出するガス流出用隙間が形成され、第2予熱室とプラズマ溶融分解炉の境界のゲートは発生したガスが流出するガス流出用隙間が形成されるとともに、開度が調節可能であることを特徴とする廃棄物のプラズマ溶融分解炉。
【請求項2】
第1予熱室にはプラズマ溶融分解炉の排ガスが導入される排ガス導入ダクトが接続されていることを特徴とする求項1記載の廃棄物のプラズマ溶融分解炉。
【請求項3】
第1予熱室の排ガス導入ダクトに排ガスを加熱する加熱バーナが設けられていることを特徴とする請求項2記載の廃棄物のプラズマ溶融分解炉。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載されたプラズマ溶融分解炉で処理対象物をプラズマ溶融分解処理する方法において、第1予熱室で処理対象物を100℃以下に予熱し、第1予熱室で予熱された処理対象物を第2予熱室とプラズマ溶融分解炉の境界のゲートの開度を調節しながら600℃以下に予熱し、第2予熱室で予熱された処理対象物をプラズマ溶融分解炉内に投入してプラズマ溶融分解することを特徴とする廃棄物のプラズマ溶融分解方法。
【請求項5】
第1予熱室に排ガス導入ダクトから導入される排ガスの温度を第2予熱室の処理対象物の温度を検出して調節することを特徴とする請求項4記載の廃棄物のプラズマ溶融分解方法。

【図1】
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【図2】
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