説明

プラズマGMA溶接方法

【課題】ハンピングピードおよび蛇行ビードといった不当な溶接ビードの発生を抑制する。
【解決手段】本発明のプラズマGMA溶接方法は、溶接トーチ2を通して溶接母材Pに向けて送給されるワイヤWと溶接母材Pとの間にパルス波形のGMA溶接電流Iwmを流すことによりGMAアーク13を発生させるとともに、ワイヤWを囲むように供給されるガスGcを介して溶接トーチ2と溶接母材Pとの間にプラズマ溶接電流Iwpを流すことによりプラズマアーク32を発生させる方法であり、GMA溶接電流Iwmのピーク電流値Impおよびベース電流値Imbを、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaが変化されるときに変化する変化区間を有し、かつ平均電流値Imaがある値に設定されるときのピーク電流値Impおよびベース電流値Imbが、平均電流値Imaより小さい値が設定されるときのピーク電流値Impおよびベース電流値Imb以上であるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマアークとGMAアークとを同時に発生させるプラズマGMA溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラズマ溶接方法とGMA溶接方法とを組み合わせたプラズマGMA溶接方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。このプラズマGMA溶接方法においては、溶接トーチを通して送給されるワイヤと溶接母材との間にGMA溶接電流を流すことによりGMAアークを発生させる。これと同時に、ワイヤを囲むようにArなどのガスを供給し、このガスを介して溶接トーチと溶接母材との間にプラズマ溶接電流を流すことによりプラズマアークを発生させる。ワイヤは、GMAアークを発生させる電極として機能するとともに、その先端が溶融することにより溶滴となって溶接母材の接合を補助する。
【0003】
上記GMA溶接電流は、上記溶滴を安定して供給することを目的として、一般的に直流のパルス波形とされている。図5(a)に示すように、GMA溶接電流Iwmは、ピーク電流値Impとベース電流値Imbとを交互に出力する。一方、図5(b)に示すように、プラズマ溶接電流Iwpは、ほぼ一定の直流電流とされている。GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaは、ピーク電流値Impが出力される期間Tpとベース電流値Imbが出力される期間Tbとの割合によって、その大きさが決定される。平均電流値Imaを大きくするには、期間Tpの時間率を高める一方、平均電流値Imaを小さくするには、期間Tbの時間率を高める。
【0004】
平均電流値Imaは、図6に示すように、たとえばワイヤの送給速度Fwに比例するように設定されている。送給速度Fwは、溶接母材の厚みや溶接速度などの溶接条件に基づいてとりうる値の範囲が決定され、これに応じて平均電流値Imaの範囲が決定される。ピーク電流値Impは、この範囲の平均電流値Imaよりも大きい値に設定され、ベース電流値Imbは、この範囲の平均電流値Imaよりも小さい値に設定される。
【0005】
しかしながら、送給速度Fwがとりうる範囲は、上記溶接条件が多岐にわたるほど大きくなる。これに応じて平均電流値Imaがとりうる範囲も大きくなるため、ピーク電流値Impとベース電流値Imbとの差が大きくなる。すると、GMAアークが溶接母材に与える圧力の変動幅は大きくなる。溶接母材が溶融することによって形成される溶融池の液面は、この圧力変動によって大きく変動しながら凝固することとなる。これにより、図7に示すようなハンピングビード90が形成されたり、図8に示すような蛇行ビード91が形成されたりしてしまうといった問題点があった。なお、図7および図8に示す符号Pは、溶接母材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭63−168283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、たとえばハンピングピードおよび蛇行ビードといった不当な溶接ビードの発生を抑制することのできるプラズマGMA溶接方法を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によって提供されるプラズマGMA溶接方法は、溶接トーチを通して溶接母材に向けて送給されるワイヤと上記溶接母材との間にパルス波形のGMA溶接電流を流すことによりGMAアークを発生させるとともに、上記ワイヤを囲むように供給されるガスを介して上記溶接トーチと上記溶接母材との間にプラズマ溶接電流を流すことによりプラズマアークを発生させる、プラズマGMA溶接方法であって、上記GMA溶接電流のハイ状態であるときのピーク電流値、およびロー状態であるときのベース電流値を、上記GMA溶接電流の平均電流値を変化させるときに上記ピーク電流値および上記ベース電流値が変化する変化区間を有し、かつ上記平均電流値がある値に設定されるときの上記ピーク電流値および上記ベース電流値が、上記平均電流値より小さい値が設定されるときの上記ピーク電流値および上記ベース電流値以上であるように設定するとともに、上記平均電流値を変化させる期間は、上記ピーク電流値の最小値が上記平均電流値の最大値以下である期間を含み、かつ上記ベース電流値の最大値が上記平均電流値の最小値以上である期間を含むことを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記平均電流値を、上記ワイヤの送給速度に比例するように設定する。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ピーク電流値およびベース電流値の少なくともいずれかを、上記平均電流値に比例させる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記ピーク電流値およびベース電流値の少なくともいずれかを、上記平均電流値の変化に伴って段階的に変化させる。
【0012】
このようなプラズマGMA溶接方法によれば、GMA溶接電流のピーク電流値およびベース電流値は、たとえば溶接条件に応じて変化される平均電流値に対して変化するように設定される。そのため、ピーク電流値およびベース電流値を、平均電流値の増減にかかわらずほぼ一定としていた従来のプラズマGMA溶接方法に比べ、上記ピーク電流値とベース電流値との電流幅を小さくすることができる。これにより、ピーク電流値およびベース電流値が出力されたときの溶接母材に対するGMAアークの圧力変動を小さくすることができる。したがって、溶融池における振動を抑制でき、ハンピングピードおよび蛇行ビードの発生を抑制することができる。
【0013】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明にかかるプラズマGMA溶接方法が適用される溶接装置を示す構成図である。
【図2】GMAアーク溶接電流とワイヤの送給速度との関係を示す図である。
【図3】本実施形態のプラズマGMA溶接方法におけるビード外観図である。
【図4】変形例のプラズマGMA溶接方法を適用した場合のGMAアーク溶接電流とワイヤの送給速度との関係を示す図である。
【図5】従来のプラズマGMA溶接方法で用いられるGMA溶接電流とプラズマ溶接電流とを示す図である。
【図6】従来のGMAアーク溶接電流とワイヤの送給速度との関係を示す図である。
【図7】従来のプラズマGMA溶接方法におけるハンピングビードの外観を示し、(a)は上面図、(b)は側面図である。
【図8】従来のプラズマGMA溶接方法における蛇行ビードの外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0016】
図1は、本発明にかかるプラズマGMA溶接方法が適用される溶接装置を示す構成図である。この溶接装置Aは、溶接母材Pに対してプラズマGMA溶接を施すための装置である。溶接装置Aは、GMAアーク溶接電源PSM、プラズマアーク溶接電源PSP、ワイヤ送給機構1、および溶接トーチ2などを備えている。
【0017】
GMAアーク溶接電源PSMは、溶接母材PをGMA溶接するための電力を発生させるものである。GMAアーク溶接電源PSMは、溶接トーチ2のコンタクトチップ24(後述)を介してワイヤWと溶接母材Pとの間に、GMAアーク溶接電圧Vwmを印加することにより、溶接トーチ2にGMA溶接電流Iwmを供給する。GMAアーク溶接電源PSMは、正極(符号「+」参照)と負極(符号「−」参照)の2つの電極が設けられており、正極が溶接トーチ2のコンタクトチップ24に導通しており、負極が溶接母材Pに導通している。
【0018】
プラズマアーク溶接電源PSPは、溶接母材Pをプラズマ溶接するための電力を発生させるものである。プラズマアーク溶接電源PSPは、プラズマ電極23(後述)と溶接母材Pとの間に、プラズマアーク溶接電圧Vwpを印加することにより、プラズマ電極23にプラズマ溶接電流Iwpを供給する。プラズマアーク溶接電源PSPは、正極(符号「+」参照)と負極(符号「−」参照)の2つの電極が設けられており、正極がプラズマ電極23に導通しており、負極が溶接母材Pに導通している。
【0019】
ワイヤ送給機構1は、ワイヤWを溶接トーチ2に送給するための機構であり、図示しないワイヤリール、ワイヤWを溶接トーチ2に対して送り出す一対の送給ローラ11、および送給ローラ11を回転させるモータ12などによって構成されている。モータ12は、GMAアーク溶接電源PSMから伝達される送給制御信号Fcによって回転駆動される。
【0020】
溶接トーチ2は、溶接母材Pに対してGMAアーク31およびプラズマアーク32を発生させるためのものである。溶接トーチ2は、シールドガスノズル21と、プラズマノズル22と、非消耗電極としてのプラズマ電極23と、コンタクトチップ24とを備え、それらが同心軸上に配置された構成とされている。溶接トーチ2は、図示しない多関節ロボットなどによって保持された状態で溶接母材Pに沿って所定の速度で移動される。
【0021】
シールドガスノズル21は、たとえばCuからなる筒状部材である。プラズマノズル22は、たとえばCuまたはCu合金からなり、冷却水を通すチャネル22aが形成されていることにより直接的に水冷されている。プラズマ電極23は、たとえばCuまたはCu合金からなり、図略の経路を通る冷却水によって間接的に水冷されている。コンタクトチップ24には貫通孔が形成され、この貫通孔には消耗電極としてのワイヤWが供給される。コンタクトチップ24は、ワイヤWと導通している。
【0022】
この溶接トーチ2では、シールドガスノズル21とプラズマノズル22との隙間から溶接母材Pに対して、たとえばArなどのシールドガスGsが供給される。シールドガスGsは、GMAアーク31およびプラズマアーク32を大気から遮蔽するものである。また、プラズマノズル22とプラズマ電極23との隙間からは、たとえばArなどのプラズマガスGpが供給される。プラズマガスGpは、プラズマアーク32を絞るためのものである。さらに、プラズマ電極23とコンタクトチップ24との隙間からは、たとえばArなどのセンターガスGcが供給される。センターガスGcは、プラズマ状態となることによりプラズマアーク32を発生させるためのものである。
【0023】
溶接トーチ2のコンタクトチップ24には、GMAアーク溶接電源PSMからGMA溶接電流Iwmが供給され、このGMA溶接電流Iwmの供給により、ワイヤWから溶接母材Pに対してGMAアーク31が発生される。GMA溶接電流Iwmは、図5(a)に示したように、パルスピーク電流Impとパルスベース電流Imbとが交互に出力されるパルス状の電流である。本実施形態では、詳細は後述するように、GMAアーク溶接電源PSMから供給されるGMA溶接電流Iwmのパルスピーク電流Impとパルスベース電流Imbとが適切な値に設定されることにより、良好な外観を有する溶接ビードを得ることができる。
【0024】
溶接トーチ2のプラズマ電極23には、プラズマアーク溶接電源PSPからプラズマ溶接電流Iwpが供給され、このプラズマ溶接電流Iwpの供給により、プラズマ電極23から溶接母材Pに対してプラズマアーク32が発生される。プラズマ溶接電流Iwpは、図5(b)に示したように、ほぼ一定の直流の電流である。なお、図1の符号33は溶融池を示し、符号34は溶接金属を示す。
【0025】
次に、本実施形態のプラズマGMA溶接方法について説明する。
【0026】
本実施形態におけるプラズマGMA溶接方法においては、プラズマGMA溶接が行われる前に、溶接母材Pの種類および厚み、溶接母材Pの継手の形態、および溶接速度などの溶接条件に応じて、ワイヤWの供給速度が設定される。また、ワイヤWの供給速度に応じてワイヤWを適切に溶融させる必要があるため、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaも設定される。なお、平均電流値Imaは、ワイヤWの送給速度Fwとほぼ比例関係にある。また、ワイヤWの送給速度Fwや平均電流値Imaは、溶接母材Pの種類などの溶接条件に応じた所望の速度および電流値に一旦設定されると、プラズマGMA溶接が行われる際には、設定された送給速度および電流値がほぼ維持される。
【0027】
本実施形態では、図2に示すように、GMA溶接電流Iwmのパルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとを、溶接母材Pの種類などの溶接条件に応じて変化される平均電流値Imaに対して比例させるように設定されている。したがって、平均電流値Imaが決定されれば、それに応じたパルスピーク電流値Impおよびパルスベース電流値Imbが決定される。
【0028】
より具体的には、たとえばワイヤWの送給速度Fwがa0(m/分)に設定されると、平均電流値ImaがI0(A)に設定される。これにより、パルスピーク電流値Impは、平均電流値I0に対して所定の電流幅Iaを有する電流値(I0+Ia)に設定される。一方、パルスベース電流値Imbは、平均電流値I0に対して所定の電流幅Ibを有する電流値(I0−Ib)に設定される。ここで、電流幅Iaは、50〜80(A)程度とされ、電流幅Ibは、電流幅Iaと同様に50〜80(A)程度とされる。すなわち、パルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとの電流差(Ia+Ib)は、100〜160(A)程度となるように、パルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとが設定される。
【0029】
上記電流幅Ia,Ibは、溶接母材Pの種類などの溶接条件が変更されて、ワイヤWの送給速度、すなわち平均電流値Imaが変化されても、変化される平均電流値Imaに対して連続してほぼ同じ電流差が維持される。つまり、パルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとの電流差(Ia+Ib)は、ほぼ一定とされる。
【0030】
図2に示すグラフによれば、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaを変化させるときにピーク電流値Impおよびベース電流値Imbが変化する変化区間を有している。また、平均電流値Imaがある値に設定されるときのピーク電流値Impおよびベース電流値Imbが、当該平均電流値Imaより小さい値が設定されるときのピーク電流値Impおよびベース電流値Imb以上であるように、ピーク電流値Impおよびベース電流値Imbがそれぞれ設定されるようになっている。さらに、図2に示すグラフによれば、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaを変化させる期間は、ピーク電流値Impの最小値Imp1が平均電流値Imaの最大値Ima1以下である期間Spを含んでいる。また、平均電流値Imaを変化させる期間は、ベース電流値Imbの最大値Imb1が平均電流値Imaの最小値Ima2以上である期間Sbを含んでいる。
【0031】
なお、上記実施形態では、パルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとは、平均電流値Imaの変化に対して比例するように変化したが、いずれか一方が平均電流値Imaの変化に対して比例するように変化してもよい。
【0032】
次に、本実施形態のプラズマGMA溶接方法の作用について説明する。
【0033】
本実施形態では、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaが変化されても、パルスピーク電流Impとパルスベース電流Imbとの電流差(Ia+Ib)は、常にほぼ一定とされるため、その電流差を従来のプラズマGMA溶接方法に比べ小さくすることができる。パルスピーク電流Impとパルスベース電流Imbとの電流差が小さいと、パルスピーク電流Impおよびパルスベース電流Imbの出力時における溶接母材Pが受けるGMAアーク31の圧力変動が小さくなる。そのため、プラズマGMA溶接時において溶接母材Pの溶融池33の液面における振動を抑制することができ、図3に示すように、良好な溶接ビード35を形成することができる。
【0034】
また、電流幅Ia,Ibは、溶接条件が変更されてワイヤWの送給速度Fwや平均電流値Imaが変化されても、平均電流値Imaの変化される値に対して連続してほぼ同じ値に維持されるので、ワイヤWの送給速度Fwや平均電流値Imaが変化されてもそれらの値にかかわらず、溶融池33の液面における振動を抑制することができる。
【0035】
従来のプラズマGMA溶接方法におけるパルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとの電流差は、たとえば400(A)とされていたが、本実施形態のプラズマGMA溶接方法においては、パルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとの電流差は、上述したように、100〜160(A)程度となった。また、従来のプラズマGMA溶接方法においては、平均電流値Imaが230(A)程度以上、あるいはワイヤWの送給速度が12(m/分)程度以上になると、溶接ビードに不具合が見られた。しかし、本実施形態のプラズマGMA溶接方法においては、平均電流値Imaが300(A)程度、あるいはワイヤWの送給速度が16(m/分)程度であっても、良好な溶接ビード35を形成することができた。
【0036】
図4は、変形例のプラズマGMA溶接方法を適用した場合のGMA溶接電流とワイヤの送給速度との関係を示す図である。GMA溶接電流Iwmのパルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとは、図4に示すように、平均電流値Imaに対してテーブル化されて段階的に設定されるようにしてもよい。すなわち、パルスピーク電流値Impおよびパルスベース電流値Imbは、ワイヤWの送給速度Fwに応じてたとえば3つの領域ごとにそれぞれ設定されている。
【0037】
たとえば、ワイヤWの送給速度Fw(m/分)がFw<a1の場合には(領域「I」参照)、パルスピーク電流値ImpはIp1に設定され、パルスベース電流値ImbはIb1に設定される。また、ワイヤWの送給速度Fwがa1≦Fw<a2(a1<a2)の場合には(領域「II」参照)、パルスピーク電流値ImpはIp2(Ip2>Ip1)に設定され、パルスベース電流値ImbはIb2(Ib2>Ib1)に設定される。さらに、ワイヤWの送給速度Fwがa2≦Fwの場合には(領域「III」参照)、パルスピーク電流値ImpはIp3(Ip3>Ip2)に設定され、パルスベース電流値ImbはIb3(Ib3>Ib2)に設定される。
【0038】
図4に示すグラフによれば、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaを変化させるときにピーク電流値Impおよびベース電流値Imbが変化する変化区間を有している。また、平均電流値Imaがある値に設定されるときのピーク電流値Impおよびベース電流値Imbが、当該平均電流値Imaより小さい値が設定されるときのピーク電流値Impおよびベース電流値Imb以上であるように、ピーク電流値Impおよびベース電流値Imbがそれぞれ設定されるようになっている。さらに、図4に示すグラフによれば、GMA溶接電流Iwmの平均電流値Imaを変化させる期間は、ピーク電流値Impの最小値Imp1が平均電流値Imaの最大値Ima1以下である期間Spを含んでいる。また、平均電流値Imaを変化させる期間は、ベース電流値Imbの最大値Imb1が平均電流値Imaの最小値Ima2以上である期間Sbを含んでいる。
【0039】
このように、ワイヤWの送給速度Fwに応じてパルスピーク電流値Impおよびパルスベース電流値Imbを段階的に変化させて設定する場合にも、パルスピーク電流値Impとパルスベース電流値Imbとの電流差は、従来のプラズマGMA溶接方法に比べ小さくされるので、溶接母材Pに対するGMAアークの圧力変動を小さくすることができる。そのため、溶融池33の液面における振動を抑制することができ、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0040】
また、パルスピーク電流値Impおよびパルスベース電流値Imbを段階的に設定する場合、図2に示したように、パルスピーク電流値Impおよびパルスベース電流値Imbが連続的に変化する場合に比べ、パルスピーク電流値Impおよびパルスベース電流値Imbの設定が容易となるので、制御が簡素化できる。
【0041】
本発明に係るプラズマGMA溶接方法は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係るプラズマGMA溶接方法の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0042】
A 溶接装置
Gc センターガス
Gs シールドガス
Gp プラズマガス
Iwm GMAアーク溶接電流
Iwp プラズマアーク溶接電流
P 溶接母材
PSM GMAアーク溶接電源
PSP プラズマアーク溶接電源
1 ワイヤ送給機構
11 送給ローラ
12 モータ
2 溶接トーチ
21 シールドガスノズル
22 プラズマノズル
22a チャネル
23 プラズマ電極(非消耗電極)
24 コンタクトチップ
31 GMAアーク
32 プラズマアーク
33 溶融池
34 溶接金属
35 ビード
90 ハンピングビード
91 蛇行ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接トーチを通して溶接母材に向けて送給されるワイヤと上記溶接母材との間にパルス波形のGMA溶接電流を流すことによりGMAアークを発生させるとともに、
上記ワイヤを囲むように供給されるガスを介して上記溶接トーチと上記溶接母材との間にプラズマ溶接電流を流すことによりプラズマアークを発生させる、プラズマGMA溶接方法であって、
上記GMA溶接電流のハイ状態であるときのピーク電流値、およびロー状態であるときのベース電流値を、上記GMA溶接電流の平均電流値を変化させるときに上記ピーク電流値および上記ベース電流値が変化する変化区間を有し、かつ上記平均電流値がある値に設定されるときの上記ピーク電流値および上記ベース電流値が、上記平均電流値より小さい値が設定されるときの上記ピーク電流値および上記ベース電流値以上であるように設定するとともに、
上記平均電流値を変化させる期間は、上記ピーク電流値の最小値が上記平均電流値の最大値以下である期間を含み、かつ上記ベース電流値の最大値が上記平均電流値の最小値以上である期間を含むことを特徴とする、プラズマGMA溶接方法。
【請求項2】
上記平均電流値を、上記ワイヤの送給速度に比例するように設定する、請求項1に記載のプラズマGMA溶接方法。
【請求項3】
上記ピーク電流値およびベース電流値の少なくともいずれかを、上記平均電流値に比例させる、請求項1または2に記載のプラズマGMA溶接方法。
【請求項4】
上記ピーク電流値およびベース電流値の少なくともいずれかを、上記平均電流値の変化に伴って段階的に変化させる、請求項1または2に記載のプラズマGMA溶接方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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