説明

プラネタリウム投影装置

【課題】 簡単な構成で小型化に有利なプラネタリウム投影装置を提供する。
【解決手段】 ドームスクリーン12にプラネタリウム投影装置14から全天映像を投影する。プラネタリウム投影装置14は、凸面鏡16とプロジェクタ17とからなり、プロジェクタ17からの投影光を凸面鏡16で反射させてドームスクリーン12に投影する。凸面鏡16の反射面16aは、投影レンズ19の光軸に対して軸対称の自由曲面であり、投影レンズ19から射出されてドームスクリーン12の各位置に向かう投影光の各光路長を等しくする形状になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、恒星や惑星などを投影するプラネタリウム投影装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
恒星や惑星、太陽、月、惑星の衛星、彗星などの天体を投影して表示し、星空を再現するプラネタリウムが知られている。プラネタリウムは、ドーム、そのドーム内に配したプラネタリウム投影装置、プラネタリウム投影装置を制御する制御装置など構成されており、プラネタリウム投影装置により、ドームの内面に形成されたドームスクリーンに天体を投影している。
【0003】
プラネタリウム投影装置は、大別して光学式とデジタル式とがある。光学式のプラネタリウム投影装置は、電球を収容した恒星球の表面に恒星に相当する孔が設けられ、その孔からの光をドームスクリーンに照射するピンホールタイプや、恒星に相当する多数の孔が設けられた恒星原板からの光を投影レンズでドームスクリーンに投影するレンズ投影タイプなどがある。このような光学式のプラネタリウム投影装置は、シャープでコントラストの高い星を表示することができる反面、例えば日周運動を再現するための恒星球の回転機構など、各種天体の運動を再現するための機構が多く必要となるという欠点があった。
【0004】
一方、デジタル式のプラネタリウム投影装置では、プロジェクタにより星空を投影するようになっている。プロジェクタは、例えば星空の映像を表示する液晶などの表示パネル、表示パネルを背後から照明する光源、表示パネルから映像をドームスクリーンに投影する投影レンズなどで構成される。このようなデジタル式のプラネタリウム投影装置では、映像上で天体の運動を再現すればよいので、機械的な可動部が不要であり構成が簡単である。
【0005】
上記のデジタル式のプラネタリウム投影装置では、全天をいくつかに分割して複数のプロジェクタを用いて星空を投影するタイプと、1台のプロジェクタで全天に星空を投影する単眼タイプとがある。このうち単眼タイプのプラネタリウム投影装置は、特許文献1のように、投影レンズとして1個の魚眼レンズを用いたプロジェクタをドームの中心に配し、ドームスクリーンに全天の星空の映像を投影すればよいので、構成がより簡単であり、導入が比較的に容易であるという利点がある。
【0006】
球体の内面に形成された球面スクリーンに映像を投影する技術として、プロジェクタからの投影光を凸面鏡で反射させて球面スクリーンに投影するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−309275号公報
【特許文献2】特許第2916142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のように魚眼レンズを用いた単眼タイプのプラネタリウム投影装置では、魚眼レンズが比較的に大型であり、また高価であるという欠点があった。また、周辺部までシャープな映像を投影しようとすると、魚眼レンズの光学性能を高くしなければならず、部品点数の増加やさらなる投影レンズの大型化、製造コストの上昇を招くという問題があった。
【0009】
また、ドームの下方よりドームスクリーンに投影される星空を観察することを考慮すると、特許文献1のように、投影レンズを、できるだけドームの中心から下方にずらして配置することが好ましい。しかし、このように投影レンズをドームの中心からずらして配置すると、投影レンズからドームスクリーンまでの距離が一定でなくなるための、ピントが合わない部分が発生し良好な映像が得られないという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、簡単な構成で小型化に有利であり、また配置の制約を緩くすることができるプラネタリウム投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために請求項1記載のプラネタリウム投影装置では、ドームの中央部に向けて、投影すべき映像の投影光を投影レンズから照射するプロジェクタと、ドームのほぼ中央部に配され、投影レンズからドームスクリーンまでの光路長が等しくなるように、投影レンズの光軸に対して軸対称な自由曲面で形成された反射面を有し、プロジェクタからの投影光を反射面で反射させてドームスクリーンに投影する凸面鏡とを備えるものである。
【0012】
請求項2記載のプラネタリウム投影装置では、投影レンズを、焦点距離が可変なズームタイプとしたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、投影レンズからドームスクリーンまでの光路長が等しくするように軸対称な自由曲面で形成された反射面を有する凸面鏡に投影すべき映像の投影光をプロジェクタから照射して、ドームスクリーンに映像を投影するようにしたから、簡単な構成で小型化に有利にして良好な映像を投影することができ、また凸面鏡の配置がドームの中心に制約されないようにすることできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明を実施したプラネタリウム投影装置を含むプラネタリウムの構成を示す概略図である。
【図2】プロジェクタと映像制御装置の構成を示すブロック図である。
【図3】2台のプラネタリウム投影装置よって全天映像を分割して投影する例を示す概略図である。
【図4】プロジェクタをドームの外側に配置した例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施したプラネタリウムを図1に示す。プラネタリム10は、天体や風景などの映像(以下、全天映像という)をドームスクリーン12にプラネタリウム投影装置14から投影して観察できるようにしたものである。なお、図1では、説明の便宜上、ドームに対してプラネタリウム投影装置14の大きさを誇張して描いてある。
【0016】
ドーム15は、半球形状になっており、その内面にドームスクリーン12が形成されている。プラネタリウム投影装置14は、半球状の凸面鏡16とプロジェクタ17とから構成されている。このプラネタリウム投影装置14は、映像制御装置18からの映像信号に基づいた全天映像をドームスクリーン12に投影する。ドーム15の下方には、観客席などが設けられ、観察者は、ドーム15の下方よりドームスクリーン12に投影される全天映像を観察する。
【0017】
凸面鏡16は、その反射面16aがプロジェクタ17の投影レンズ19の光軸に対して軸対称の自由曲面となっており、頂点を上方に向けた姿勢でドーム15の中央に配されている。反射面16aは、投影レンズ19から射出されてドームスクリーン12の各位置に向かう投影光の各光路長を等しくする形状の自由曲面となっている。これにより、ドームスクリーン12上に投影され全天映像の各部分のピントを良好に合致させる。
【0018】
凸面鏡16は、上述のように反射面16aの形状により、投影レンズ19からドームスクリーン12の各位置までの投影光の光路長を等しくするから、ドーム15の中心に配する必要はなく、中心から上方あるいは下方にずらした位置に配置することができ、この例でも下方にずらして配置してある。
【0019】
プロジェクタ17は、ドーム15内の天頂付近に凸面鏡16の真上に設けられており、投影レンズ19を下に向けた姿勢で配されている。プロジェクタ17は、投影光を凸面鏡16で反射させてドームスクリーン12に投影する。これにより、ドームスクリーン12に全天映像が投影される。
【0020】
投影レンズ19としては、望遠端と広角端との間で焦点距離を変化させることができるズームタイプのものが用いられている。この投影レンズ19の焦点距離を変化させることにより、ドームスクリーン12に対する全天映像の投影範囲を調整することができる。投影レンズ19の焦点距離の増減により、天頂を中心にして全天映像の投影範囲は拡縮される。これにより、ドームスクリーン12上で地平線とする位置を調整することができ、また観察者の目に直接に凸面鏡16で反射された投影光が入らないように調整することができる。
【0021】
図2に示すように、投影レンズ19には、ズームリング19aと、フォーカスリング19bとが設けられている。ズームリング19aを回動操作することにより、投影レンズ19の焦点距離が望遠端と広角端との間で変化し、フォーカスリング19bを回動操作することによりピントを調整することができる。
【0022】
投影レンズ19の背後に表示パネル21が配され、この表示パネル21の背後に光源部22が配されている。表示パネル21は、例えばLCD(液晶表示パネル)などで構成されており、ドームスクリーン12に表示すべき全天映像の原画像を表示する。光源部22は、高輝度のランプや熱線カットフィルタなどで構成されている。光源部22によって表示パネル21が背後から照明され、表示パネル21を透過した光が投影レンズ19に入射する。なお、表示パネル21に変えて、DMD(デジタルマイクロミラーデバイス)などを用いて原画像の表示を行ってもよい。
【0023】
映像制御装置18は、例えばコンピュータで構成されており、全天映像の原画像を生成し表示パネル21に表示させる。演算部25は、データベースに記憶した各種天体の座標や軌道要素などの情報に基づいて、操作部(図示省略)で設定される観測点から観察される天体の座標や満ち欠けなど演算し、表示すべき全天映像の情報を生成する。画像変換部26は、演算部25で生成される全天映像の情報を原画像に変換する。ドライバ27は、表示パネル21を駆動し、画像変換部26で得られる原画像を表示パネル21に表示する。
【0024】
原画像は、プラネタリウム投影装置14を通してドームスクリーン12に全天映像として投影されたときに、各天体の位置や位置関係などが正しく再現されるように、全天映像を平面上に展開(座標変換)したものであり、周縁が地平線に相当し中心が天頂となる円形の画像になっている。画像変換部26では、自由曲面である反射面16aの形状に応じた座標変換を行う。
【0025】
次に上記構成の作用について説明する。全天映像を観察する際には、観測点や観測年月日、時刻など設定した後に、映像制御装置18に投影を指示する。この指示により、設定内容に基づいた原画像の生成が演算部25、画像変換部26によって行われ、その原画像が表示パネル21に表示される。また、光源部22が点灯して表示パネル21が照明される。
【0026】
表示パネル21を透過した原画像に応じた透過光は、投影レンズ19に入射して、その投影レンズ19から投影光として凸面鏡16に向けて照射される。投影光は、凸面鏡16で反射され、ドームスクリーン12に投影される。これにより、ドームスクリーン12のほぼ全面に全天映像が投影される。そして、映像制御装置18では、例えば現実時間に合わせて観測時間を進行させ、その時間の進行にあわせて原画像を順次に更新する。これにより、投影されている全天映像も更新され、例えば恒星の日周運動などが再現される。
【0027】
投影される全天映像は、投影レンズ19から射出されてドームスクリーン12の各位置に向かう投影光の各光路長を等しくするように自由曲面で反射面16aを構成してあるので、ドームスクリ−ン12の全面で良好にピントが合致したシャープなものになっている。
【0028】
全天映像の投影の際に、全天映像の地平線の位置が所望とする位置よりも上にあるときには、ズームリング19aを回動操作して投影レンズ19の焦点距離を短くする。焦点距離を短くすると、投影レンズ19の投影画角が大きくなることにより、全天映像が天頂の位置を中心に拡大される。これにより、地平線の位置を下にずらすことができる。
【0029】
逆に全天映像の地平線の位置が所望とする位置よりも下にあるときには、ズームリング19aを回動操作して投影レンズ19の焦点距離を長くする。投影レンズ19の投影画角が小さくなり、全天映像が天頂の位置を中心に縮小して地平線の位置を上げることができる。観察者の目に直接に、凸面鏡16で反射されたプロジェクタ17からの光が入るような場合には、やはり投影レンズ19の焦点距離を長くするようにすればよい。
【0030】
なお、上記のように投影レンズ19の焦点距離を変化させて全天映像を拡大あるいは縮小すると、天体の投影位置が本来の投影位置からずれが生じる。焦点距離を僅かに変える場合では、投影位置のずれも大きくならないので肉眼で観察するには特に問題にならない。天体の位置を本来の位置に表示させるために、投影レンズ19の焦点距離の変化に応じて、焦点距離の変化に応じて原画像を拡大・縮小してもよい。
【0031】
図3に示す例は、2台のプラネタリウム投影装置41,42を設け、全天映像を2分割して投影するように構成したものである。プラネタリウム投影装置41は、プロジェクタ43と凸面鏡44とから構成され、全天映像を2分割した左半分の映像をドームスクリーン12の左側半分に投影する。プロジェクタ43は、全天映像の左半分の原画像に基づいて全天映像の左半分の映像を投影レンズ43aで投影する。このプロジェクタ43は、投影レンズ43aがドーム15の中心方向に向けられた姿勢で、天頂より反時計方向に傾けられた位置に配されている。
【0032】
また、凸面鏡44は、その反射面44aが投影レンズ43aの光軸に対して軸対称の自由曲面となっており、頂点が投影レンズ43aに向くように傾けた向けた姿勢でドーム15の中央に配されている。反射面44aは、投影レンズ43aから射出されてドームスクリーン12の各位置に向かう投影光の各光路長を等しくする形状の自由曲面となっている。
【0033】
プラネタリウム投影装置42は、上記プラネタリウム投影装置41と同様な構成であり、プロジェクタ45と凸面鏡46とから構成され、全天映像を2分割した右半分の映像をドームスクリーン12の右側半分に投影する。プロジェクタ45は、全天映像の右半分の映像を投影レンズ45aで投影する。このプロジェクタ45は、投影レンズ45aをドーム15の中心方向に向けた姿勢で、天頂より時計方向に傾けられた位置に配されている。
【0034】
また、凸面鏡46は、その反射面46aが投影レンズ45aの光軸に対して軸対称の自由曲面となっており、頂点が投影レンズ45aに向くように傾けた向けた姿勢でドーム15の中央に配されている。反射面46aは、投影レンズ45aから射出されてドームスクリーン12の各位置に向かう投影光の各光路長を等しくする形状の自由曲面となっている。
【0035】
なお、図3では、各プラネタリウム投影装置41,42による投影範囲の一部が重なっているが、実際には各原画像を調整することにより二重に映像を表示しないようにしてある。また、この例では、2台のプラネタリウム投影装置を用いているが3台以上であってもよい。
【0036】
上記各実施形態では、プロジェクタをドームの内側に配しているが、図4に一例を示すように、プロジェクタ17をドーム15の外側に配し、ドーム15に設けた孔15aから投影光を凸面鏡16に向けて照射するようにしてもよい。また、必ずしも全天の映像を投影する必要はなく、全天の一部を投影してもよい。さらには、水平式ドームの場合を例に説明したが、傾斜式ドームにも利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 プラネタリウム
12 ドームスクリーン
14,41,42 プラネタリウム投影機
16,44,46 凸面鏡
17,43,45 プロジェクタ
19 投影レンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドームの内面に形成されたドームスクリーンに映像を投影するプラネタリウム投影装置において、
ドームの中央部に向けて、投影すべき映像の投影光を投影レンズから照射するプロジェクタと、
ドームのほぼ中央部に配され、投影レンズからドームスクリーンまでの光路長が等しくなるように、前記投影レンズの光軸に対して軸対称な自由曲面で形成された反射面を有し、プロジェクタからの投影光を前記反射面で反射させてドームスクリーンに投影する凸面鏡とを備えることを特徴とするプラネタリウム投影装置。
【請求項2】
前記投影レンズは、焦点距離が可変なズームタイプであることを特徴とする請求項1記載のプラネタリウム投影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−248061(P2011−248061A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120580(P2010−120580)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】