説明

プリズムシート及びこれを用いたバックライト

【課題】正面方向への輝度の低下を抑えつつ耐擦傷性に優れ光学欠陥が見え難いプリズムシート及びこれを用いたバックライトを提供する。
【解決手段】本発明のプリズムシート1は、断面台形状の構造列aが複数並列されてなるレンズ層2を有してなるものであって、前記構造列2の上底部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをTRa、側面部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをSRaとするとき、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示装置のバックライトに用いられるプリズムシートに関し、正面方向への輝度の低下を抑えつつ耐擦傷性に優れ、光学欠陥を視認し難くさせるプリズムシート及びこれを用いたバックライトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー液晶表示装置が、ノート型パソコンもしくはデスクトップ型パソコンなどのモニターまたは液晶テレビなどの様々な分野で用いられている。この種の液晶表示装置は、液晶セルとバックライトとを備えており、当該バックライトの構造としては、光源を拡散板を介して液晶セルの直下に設けた直下型の構造、あるいは光源を導光板の側面に設けたエッジライト方式の構造などが知られている。
【0003】
カラー液晶表示装置は、PDP、CRTに比べて、消費電力が小さいという点において優れている。しかしながら、カラー液晶表示装置では、正面輝度が低くなりがちであった。そこで、上述のバックライトを用いて光学的な効率を高めることにより、小さな消費電力で正面輝度を高くすることが求められている。
【0004】
このようなバックライトとしては、一般的に、光源、拡散板や導光板、複数枚の光学シート等により構成される。
【0005】
前記光学シートとしては、反射偏光シート、プリズムシート及び拡散シート等が挙げられ、このうちプリズムシートは、拡散板や導光板の光出射面上に配置され、拡散板や導光板から出射された光を屈折作用により正面に集光させ、正面輝度を向上させる機能を果たす。
【0006】
一般に、プリズムシートは、断面が三角形状の構造列が複数規則的に配列されたレンズ部を備えており、当該断面三角形状の構造列の頂角、即ち、斜辺同士で形成される角度を90°としたものが、正面輝度を高める上で最適であると考えられている。なお、レンズ単位の頂部の曲率半径は0であること、すなわち先端は先鋭な形状とされていることが望ましいと考えられている。
【0007】
このようなプリズムシートは、構造列の先端が先鋭な形状であるため、取扱時の傷付き、使用時の振動による構造列の先端部の傷付き等が発生し易く、傷付きが発生すると光学欠陥が発生してしまうため、当該プリズムシートの取扱いには多大な注意を要するものであった。
【0008】
そこで、傷付きによる光学欠陥が発生しないよう、当該構造列の頂部を先鋭な形状ではなく円弧形状、或いは、当該構造列を断面三角形状ではなく断面台形状のものとすることにより耐擦傷性を向上させる方法が提案されている(特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−305011号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2001−343507号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、当該手法であると、従来のプリズムシートに比べ耐擦傷性が向上し光学欠陥が見え難いものとなるが、一方で正面輝度が大幅に低下してしまい、プリズムシートとしての本来の機能が大きく損なわれるものとなってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、正面方向への輝度の低下を抑えつつ耐擦傷性に優れ光学欠陥が見え難いプリズムシートとすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、断面台形状の構造列を複数並列してなるレンズ層を有してなるプリズムシートであって、前記構造列の上底部と側面部の算術平均粗さを特定値とすることで、耐擦傷性に優れ光学欠陥が見え難いプリズムシートとすることができることを見出し、本発明に至ったものである。
【0013】
即ち、本発明のプリズムシートは、断面台形状の構造列が複数並列されてなるレンズ層を有してなることを特徴とするものであって、構造列の上底部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをTRa、側面部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをSRaとするとき、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすことを特徴とするものである。
【0014】
好ましくは、本発明のプリズムシートは、構造列の上底部のTRaが0.4〜0.7μm、側面部のSRaが0.2μmを超え0.5μm以下であることを特徴とするものである。
【0015】
好ましくは、本発明のプリズムシートは、構造列の上底部の幅が、1〜5μmであることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明のバックライトは、少なくとも光源と、光源に隣接して配置され、導光又は拡散のための光学板と、光学板の光出射側に配置されたプリズムシートとを備えたものにおいて、前記プリズムシートが本発明のプリズムシートであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明のプリズムシートは、断面台形状の構造列を複数並列してなるレンズ層を有してなるものであって、前記構造列の上底部と側面部の算術平均粗さを特定の関係としたものであるため、耐擦傷性に優れ光学欠陥が見え難いものとなる。
【0018】
また、本発明のバックライトは、このような本発明のプリズムシートを備えたものであるため、正面輝度の低下を抑えつつ光学欠陥が見え難いため、取扱い性に優れたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のプリズムシートの一実施形態を示す断面図
【図2】本発明のプリズムシートの一実施形態を示す断面拡大図
【図3】本発明のバックライトの一実施形態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のプリズムシートは、断面台形状の構造列が複数並列されてなるレンズ層を有してなるものであって、前記構造列の上底部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さ(以下、単に「算術平均粗さ」という場合もある)をTRa、側面部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをSRaとするとき、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすものである。また、本発明のバックライトは、本発明のプリズムシートが用いられたものである。以下、本発明のプリズムシートの実施の形態について説明する。
【0021】
本発明のプリズムシートについて、一つの実施形態を示す断面図を図1に示す。図1に示す本発明のプリズムシート1は、断面台形状の構造列aが複数並列されてなるレンズ層2を有してなるものである。
【0022】
また、本発明のプリズムシートは、レンズ層表面に有する断面台形状の構造列につき、前記構造列の上底部の算術平均粗さをTRa、側面部の算術平均粗さをSRaとするとき、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすものである。
【0023】
本発明のプリズムシートは、このように構造列の上底部の算術平均粗さTRaが0.2μmを超えるものであることから、従来のプリズムシートのような断面台形状の構造列の先端部が平坦なものに比べ、正面方向への集光性を向上させることができる。また、本発明のプリズムシートは、構造列の上底部にこのような算術平均粗さTRaを備えているため、プリズムシート表面に微細な傷等が付着したとしても、傷等による表面の粗さ変化を視認させ難くし、光学欠陥を視認し難くさせることができる。さらには、このような算術平均粗さTRaを備えたものであるため、当該プリズムシートの前記構造列が形成されたレンズ層表面に対向する部材と密着することを防止することができ、例えばニュートンリングやウェットアウトと呼ばれる視認性の不良を改善することもできる。なお、ここでいう「光学欠陥」とは、直径10〜100μm程度の傷や異物等が存在することにより生じる輝度低下等の欠陥を指す。
【0024】
なお、前記構造列の上底部の算術平均粗さTRaは、0.4〜0.7μmであることがより好ましく、0.5〜0.6μmであることがさらに好ましい。
【0025】
また、本発明のプリズムシートは、構造列の側面部の算術平均粗さSRaが上述したように少なくとも0.2μmを超えるものである。前記構造列の側面部がかかる算術平均粗さSRaを備えることで、構造列製造時に側面部に付着しうる微細な傷等や、構造列間の谷部を切削加工する際に入り易い欠陥等を視認させ難くすることができ、光学欠陥を視認し難くすることができる。
【0026】
また、本発明のプリズムシートは、構造列の上底部の算術平均粗さTRaと構造列の側面部の算術平均粗さSRaとを対比すると、SRaに比べ、TRaが高いものである。このような関係を備えることにより、上述したように構造列の上底部のTRaによる正面方向への集光性を向上させつつ、SRaがTRaよりも低いため、構造列の側面部の表面形状による正面方向への集光性を大きく阻害することもなく、プリズムシート全体として正面輝度に優れたプリズムシートとすることができる。よって、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすことにより、正面方向への輝度の低下を抑えつつ耐擦傷性に優れ、光学欠陥を視認し難くさせるものという本発明の特有の効果が発揮される。
【0027】
なお、前記構造列の側面部の算術平均粗さSRaは、0.2μmを超え0.5μm以下であることがより好ましく、好適には0.3〜0.4μmである。
【0028】
ここで、仮に、このような少なくとも0.2μmを超える前記構造列の側面部のSRaと上底部のTRaとが、SRa>TRaの関係にあると、上底部の算術平均粗さが低く上底部の表面形状に起因して正面方向への集光性に乏しくなり、正面輝度が低い使用に耐えないプリズムシートとなってしまう。
【0029】
本発明のプリズムシートの構成としては、レンズ層単層からなるものだけでなく、支持体上に当該レンズ層が積層されたものであってもよい。
【0030】
支持体としては、ガラス板やプラスチックフィルム等の透明性の高いものを用いることができる。ガラス板としては、例えばケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、ホウ酸塩ガラス等の酸化ガラスを板ガラス化したものを使用することができ、特にケイ酸ガラス、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラス等のケイ酸塩ガラスを板ガラス化したものが好ましい。プラスチックフィルムとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、トリアセチルセルロース、アクリル、ポリ塩化ビニル、ノルボルネン化合物等が使用でき、延伸加工、特に二軸延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムが機械的強度、寸法安定性に優れているために好適に使用される。このような支持体はプラズマ処理、コロナ放電処理、遠紫外線照射処理、下引き易接着層の形成等の易接着処理が施されたものを用いることが好ましい。
【0031】
支持体の厚みとしては特に限定されず、適用される材料に対して適宜選択することができるが、一般に25〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。
【0032】
本発明のレンズ層は、高分子樹脂により構成されてなる。高分子樹脂としては、電離放射線硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0033】
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線(紫外線または電子線)の照射によって架橋硬化することができる光重合性プレポリマーを用いることができ、この光重合性プレポリマーとしては、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマーが特に好ましく使用される。このアクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が使用できる。さらにこれらのアクリル系プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性を向上させレンズ層の硬度をより向上させるために、光重合性モノマーを加えることが好ましい。
【0034】
光重合性モノマーとしては、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等の単官能アクリルモノマー、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等の2官能アクリルモノマー、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能アクリルモノマー等の1種若しくは2種以上が使用される。
【0035】
上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの他、紫外線照射によって硬化させる場合には、光重合開始剤や光重合促進剤等の添加剤を用いることが好ましい。
【0036】
光重合開始剤としては、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、α−アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられる。
【0037】
また、光重合促進剤は、硬化時の空気による重合障害を軽減させ硬化速度を速めることができるものであり、例えば、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル等が挙げられる。
【0038】
熱硬化性樹脂としては、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、フラン系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、グアナミン系樹脂、ケトン系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。これらは単独でも使用可能であるが、架橋性、架橋硬化塗膜の硬度をより向上させるためには、硬化剤を加えることが望ましい。
【0039】
硬化剤としては、ポリイソシアネート、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、カルボン酸などの化合物を、適合する樹脂に合わせて適宜使用することができる。
【0040】
熱可塑性樹脂としては、ABS樹脂、ノルボルネン樹脂、シリコーン系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、スルフォン系樹脂、イミド系樹脂、フッ素系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ナイロン系樹脂、ゴム系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0041】
なお、これら熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂のうち、レンズ層とした際の塗膜強度や、良好な透明性が得られる観点から、アクリル系樹脂の熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。また、これら熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂は、それぞれ熱硬化性樹脂どうし或いは熱可塑性樹脂どうしを複数種組み合わせた複合樹脂として用いることもできる。
【0042】
高分子樹脂としては、上述した樹脂以外の樹脂を併用することもできるが、上述した高分子樹脂とそれ以外の樹脂との含有割合としては、本発明の構造列を精度良く製造する観点から、後述するようにPhoto−Polymer法(2P法)によりプリズムシートを製造する場合には、電離放射線硬化性樹脂が全高分子樹脂成分中30〜90重量%程度含まれることが好ましい。一方、Thermal−Transformation法(2T法)やエンボス加工法によりプリズムシートを製造する場合では、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂が全高分子樹脂成分中30〜90重量%程度含まれることが好ましい。
【0043】
なお、レンズ層には、上述した高分子樹脂の他、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、微粒子、滑剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、離型剤、架橋剤等の種々の添加剤を含ませることもできる。
【0044】
本発明のレンズ層は、表面に断面台形状の構造列が複数並列されて構成されてなる。
【0045】
前記構造列の下底部の面(下底面)と側面との傾斜角(図2でいうα)は、40〜55°の範囲内であることが好ましく、好適には45°であり、さらには当該構造列の両端の傾斜角がそれぞれ等しいことが好ましい。
【0046】
前記構造列の上底部の幅は、1〜5μmであることが好ましく、2〜4μmであることがさらに好ましい。上底部の幅を1μm以上とすることにより、耐擦傷性に優れ光学欠陥の見え難いものとすることができる。また、5μm以下とすることにより、正面輝度が低下することを防止することができる。
【0047】
また、前記構造列の下底部の幅は、22〜65μmであることが好ましく、33〜55μmであることがさらに好ましい。また、前記構造列の高さ(図2のq)は、11〜30μmとすることが好ましく、16〜25μmとすることがより好ましい。
【0048】
前記レンズ層のうち、構造列が形成されていない樹脂層の厚み(図2のp)は、本発明のプリズムシートをレンズ層単層で形成する場合には、当該層の十分な塗膜強度や平滑性を得る観点から、25〜300μmとすることが好ましい。一方、レンズ層を支持体上に形成してプリズムシートとする場合では、3〜15μmとすることが好ましい。
【0049】
本発明のレンズ層を備えたプリズムシートを製造する方法としては、2P法、2T法やエンボス加工法等のような転写賦形技術により形成することができる。例えば、上述したようなレンズ層を構成する高分子樹脂等を、要求するレンズ層の表面形状とは相補的な形状を有する型内に充填し、形状パターンを転写賦形させた後、当該高分子樹脂等を硬化させ、型から剥離することで、構造列が賦形されたレンズ層を備えたプリズムシートが得られる。一方、支持体を用いる場合には、型内に高分子樹脂等を充填し、その上に支持体を重ね合わせた後、当該高分子樹脂等を硬化させ、型から剥離することで、支持体上に構造列が賦形されたレンズ層を備えたプリズムシートが得られる。なお、2P法によりレンズ層の構造列を形成する場合には、電離放射線硬化性樹脂を用い、2T法やエンボス加工法によりレンズ層の構造列を形成する場合には、熱硬化性樹脂或いは熱可塑性樹脂を用いる。
【0050】
上述した転写賦形技術のうちプリズムシートを比較的短時間で作製でき、加熱冷却が不要であるため構成部材の熱による変形を少なく抑えられる観点からは、2P法を採用することが好ましい。一方、構成部材の材料選択性の自由度が高く、プロセスコストを削減可能な観点からは、2T法を採用することが好ましい。
【0051】
なお、高分子樹脂を硬化させる方法としては、高分子樹脂が電離放射線硬化性樹脂の場合には電離放射線を照射することで硬化させることができる。また、高分子樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、熱を加えることで硬化させることができる。また、高分子樹脂が熱可塑性樹脂の場合には、冷却することで硬化させることができる。ここで、電離放射線としては、例えば超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、メタルハライドランプなどから発せられる100〜400nm、好ましくは200〜400nmの波長領域の紫外線や、走査型・カーテン型の電子線加速器から発せられる100nm以下の波長領域の電子線を利用することができる。
【0052】
本発明のプリズムシートは、このように、断面台形状の構造列を複数並列してなるレンズ層を有してなるものであって、前記構造列の上底部と側面部の算術平均粗さが特定値であることから、従来ではなしえなかった不当に正面方向への輝度を損なうことなく耐擦傷性に優れたものとすることができ、微細欠陥による光学欠陥を視認し難くさせる作用を発揮しうるプリズムシートとすることができる。
【0053】
次いで、本発明のバックライトの実施の形態について説明する。本発明のバックライトの一つの実施形態を示す断面図を図3に示す。図3の本発明のバックライト30は、エッジライト方式のバックライトで、光源31と、導光板32と、その上に置かれた本発明のプリズムシート33とを備えている。なお、図示するように、必要に応じ、プリズムシート33に隣接して光拡散シート34等を備えていても良い。
【0054】
また、本発明のバックライトとして、図3ではエッジライト方式のバックライトを説明したが、本発明のバックライトは、拡散板の下側に光源を配置し、その上側に下用光拡散シート、プリズムシート、上用拡散シート等が備えられた直下型のバックライトにおいても適用することができる。
【0055】
このように、本発明のバックライトは、従来ではなしえなかった正面輝度が低下することなく光学欠陥の見え難いプリズムシートを備えたものであるため、取扱い性に優れたものとなる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により本発明を更に説明する。なお、「部」、「%」は特に示さない限り、重量基準とする。
【0057】
1.プリズムシートの作製
[実施例1]
滑らかな表面を有する厚み4mmの銅板に対し、ダイヤモンド製の彫刻用バイトを用いて切削し、金型を作製した。作製した金型へ、アクリルモノマー(メタクリル酸メチル:和光純薬社)50部、多官能性アクリルモノマー(NKエステルA-TMPT-3EO:新中村化学工業社)45部、光重合開始剤(イルガキュア184:チバ・ジャパン社)5部からなる混合液を滴下し、厚み100μmのポリエステルフィルム(コスモシャインA4300:東洋紡績社)をかぶせ、気泡が残らないようにローラーで樹脂を均一に押し広げて樹脂とポリエステルフィルムを密着させた。
【0058】
この状態のままポリエステルフィルム側からメタルハライドランプにより1500mJ/cm2の紫外線を照射し、紫外線硬化型樹脂を硬化させたのちポリエステルフィルム及び樹脂(レンズ層)を金型から剥離し、金型の形状を忠実に転写し、以下の実施例1のプリズムシートを作製した。
【0059】
<実施例1のプリズムシート>
・レンズ層の構成:断面台形状の構造列が複数並列されてなる
・断面台形状の構造列の上底部の算術平均粗さTRa:0.52μm
・断面台形状の構造列の上底部の幅:3μm
・断面台形状の構造列の下底部の算術平均粗さSRa:0.31μm
・断面台形状の構造列の下底部の幅:43μm
・断面台形状の構造列の高さ:20μm
・断面台形状の構造列の側面と下底面との間の傾斜角:45°
【0060】
[実施例2]
実施例1とは異なる切削条件により銅板を切削した以外は実施例1と同様にして、以下の実施例2のプリズムシートを作製した。
【0061】
<実施例2のプリズムシート>
・レンズ層の構成:断面台形状の構造列が複数並列されてなる
・断面台形状の構造列の上底部の算術平均粗さTRa:0.42μm
・断面台形状の構造列の上底部の幅:3μm
・断面台形状の構造列の下底部の算術平均粗さSRa:0.21μm
・断面台形状の構造列の下底部の幅:43μm
・断面台形状の構造列の高さ:20μm
・断面台形状の構造列の側面と下底面との間の傾斜角:45°
【0062】
[実施例3]
実施例1とは異なる切削条件により銅板を切削した以外は実施例1と同様にして、以下の実施例3のプリズムシートを作製した。
【0063】
<実施例3のプリズムシート>
・レンズ層の構成:断面台形状の構造列が複数並列されてなる
・断面台形状の構造列の上底部の算術平均粗さTRa:0.68μm
・断面台形状の構造列の上底部の幅:3μm
・断面台形状の構造列の下底部の算術平均粗さSRa:0.48μm
・断面台形状の構造列の下底部の幅:43μm
・断面台形状の構造列の高さ:20μm
・断面台形状の構造列の側面と下底面との間の傾斜角:45°
【0064】
[比較例1]
実施例1とは異なる切削条件により銅板を切削した以外は実施例1と同様にして、以下の比較例1のプリズムシートを作製した。
【0065】
<比較例1のプリズムシート>
・レンズ層の構成:断面三角形状の構造列が複数並列されてなる
・断面三角形状の構造列の基底部の幅:40μm
・断面三角形状の構造列の高さ:20μm
・断面三角形状の構造列の頂角:90°
【0066】
[比較例2]
実施例1とは異なる切削条件により銅板を切削した以外は実施例1と同様にして、以下の比較例2のプリズムシートを作製した。
【0067】
<比較例2のプリズムシート>
・レンズ層の構成:断面台形状の構造列が複数並列されてなる
・断面台形状の構造列の上底部の算術平均粗さTRa:0.10μm
・断面台形状の構造列の上底部の幅:3μm
・断面台形状の構造列の下底部の算術平均粗さSRa:0.18μm
・断面台形状の構造列の下底部の幅:43μm
・断面台形状の構造列の高さ:20μm
・断面台形状の構造列の側面と下底面との間の傾斜角:45°
【0068】
[比較例3]
実施例1とは異なる切削条件により銅板を切削した以外は実施例1と同様にして、以下の比較例3のプリズムシートを作製した。
【0069】
<比較例3のプリズムシート>
・レンズ層の構成:断面三角形状(先端が円弧形状)の構造列が複数並列されてなる
・断面三角形状の構造列の先端曲部の曲率半径:8μm
・断面三角形状の構造列の基底部の幅:50μm
・断面三角形状の構造列の高さ:22μm
・断面三角形状の構造列の頂角:90°
【0070】
2.評価
(1)正面輝度
厚み0.7mmの付型導光板上に、厚み100μmの拡散フィルム(ライトアップMXE:きもと社)、実施例1〜3及び比較例1〜3で作製したプリズムシート及び厚み100μmの拡散フィルム(ライトアップTL2:きもと社)を順次備えてなる7インチのエッジライト型のバックライト(実施例1〜3及び比較例1〜3のバックライト、線状ランプ一本)を作製した。そして、実施例1〜3及び比較例1〜3のバックライトの正面輝度について測定した。評価結果を表1に示す。なお、表1では、比較例1で作製したプリズムシートを備えたバックライトの正面輝度を100%とし、その他の正面輝度については、比較例1の正面輝度に対する相対値により示す。
【0071】
(2)傷(光学欠陥)の見え難さ
実施例1〜3及び比較例1〜3で作製したプリズムシートのレンズ層表面に対し、綿棒を用いて2gの加重をかけ、レンズ層表面の構造列の流れ方向に平行な方向及び垂直な方向にそれぞれ綿棒を5往復させ、レンズ層表面の傷付き性を目視にて観察した。前記レンズ層表面を正面から観察した際に、目視にて傷をまったく認識することができなかったものを「◎」、目視では傷をほとんど認識することができず、ルーペにて確認できる程度のものであったものを「○」、目視にて傷を認識することができたものを「×」、傷の付着が多く明らかに使用に堪えないものを「××」とした。評価結果を表1に示す。
【0072】
【表1】

【0073】
3.考察
表1に示すように、実施例1〜3のプリズムシートは、断面台形状の構造列が複数並列されてなるレンズ層を有してなるものであって、構造列の上底部の算術平均粗さTRaと側面部の算術平均粗さSRaとが、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすものであることから、耐擦傷性に優れ傷(光学欠陥)が見え難いものとなり、当該プリズムシートを組み込んだ実施例1〜3のバックライトは、正面輝度の低下を防止しつつ、取扱い性に優れたものであった。なお、実施例1〜3のプリズムシートは、構造列の上底部の算術平均粗さTRaが0.4μmを超え高いものであることから、当該実施例1〜3のプリズムシートを組み込んだ実施例1〜3のバックライトは、ニュートンリングやウェットアウトと呼ばれる視認性の不良も特に生じなかった。
【0074】
特に、実施例1のプリズムシートは、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たしつつ、TRaが0.5〜0.6μmの範囲内であり、SRaが0.3〜0.4μmの範囲内であったことから、他の実施例に比べ耐擦傷性に優れ傷が見え難いものとなり、当該プリズムシートを組み込んだ実施例1のバックライトは、正面輝度と傷の見え難さとのバランスに特に優れたものとなった。
【0075】
一方、比較例1のプリズムシートは、従来のプリズムシートの形状である断面三角形状の構造列が並列してなるものであったため、耐擦傷性に乏しく傷が見え易いものとなり、当該プリズムシートを組み込んだ比較例1のバックライトは、正面輝度は高いものの使用に堪えないものとなった。
【0076】
また、比較例2のプリズムシートは、断面台形状の構造列が並列してなるものであったため、耐擦傷性に優れ傷が見え難いものとなったが、当該プリズムシートの表面凹凸形状では光の集光性に乏しく、当該プリズムシートを組み込んだ比較例2のバックライトは、正面輝度に乏しいものとなった。なお、比較例2のプリズムシートは、構造列の上底部の算術平均粗さTRaが0.10μmと低いものであることから、当該比較例2のプリズムシートを組み込んだ比較例2のバックライトは、ニュートンリングやウェットアウトと呼ばれる視認性の不良が生じるものであった。
【0077】
また、比較例3のプリズムシートは、断面三角形状様のものでその先端が円弧形状の構造列が並列してなるものであったため、耐擦傷性に若干乏しく傷が見え易いものとなり、さらに当該プリズムシートの表面凹凸形状により光の集光性にも乏しいものとなったため、当該プリズムシートを組み込んだ比較例3のバックライトは、正面輝度及び耐擦傷性の両方に乏しいものとなった。
【符号の説明】
【0078】
1・・・・本発明のプリズムシート
2・・・・レンズ層
a・・・・断面台形状の構造列
30・・・本発明のバックライト
31・・・光源
32・・・導光板
33・・・本発明のプリズムシート
34・・・光拡散シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面台形状の構造列が複数並列されてなるレンズ層を有してなることを特徴とするプリズムシートであって、
前記構造列の上底部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをTRa、側面部のJIS B0601:01で規定される算術平均粗さをSRaとするとき、0.2μm<SRa<TRaの関係を満たすことを特徴とするプリズムシート。
【請求項2】
前記構造列の上底部のTRaが0.4〜0.7μm、側面部のSRaが0.2μmを超え0.5μm以下であることを特徴とする請求項1記載のプリズムシート。
【請求項3】
前記構造列の上底部の幅が、1〜5μmであることを特徴とする請求項1又は2記載のプリズムシート。
【請求項4】
少なくとも光源と、前記光源に隣接して配置され、導光又は拡散のための光学板と、前記光学板の光出射側に配置されたプリズムシートとを備えたバックライトにおいて、前記プリズムシートが請求項1〜3何れか一項記載のプリズムシートであることを特徴とするバックライト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−237398(P2010−237398A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−84613(P2009−84613)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000125978)株式会社きもと (167)
【Fターム(参考)】