説明

プリズムシート型の製造方法、及び帯状の偏光子一体型プリズムシート

【課題】プリズムの延在方向を帯状のプリズムシートの流れ方向に平行にではなく幅方向に略平行乃至は平行にした帯状のプリズムシートを製造可能なプリズムシート型を、精度良く製造する。プリズムの延在方向と偏光子の透過時の方向が共に幅方向の帯状の偏光子一体型プリズムシートを提供する。
【解決手段】切削バイト2が円筒状基材10Aの回転軸方向Daに移動して外周面内の型面3の一端3sから他端3eまで切削して溝1を切削加工している間と、他端3eから一端3sまで復帰している間は、円筒状基材は円周方向Drに常に一定の角速度でわずかに回転している状態にして、回転軸方向に実質的に平行乃至は略平行な溝を切削加工して、プリズムシート型10を製造する。帯状の偏光子一体型プリズムシートは、こうして製造した帯状のプリズムシートと、帯状で透過軸が幅方向の偏光子とが積層された構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムシートを成形する為のプリズムシート型の製造方法と、プリズムシートに偏光子を一体化した帯状の偏光子一体型プリズムシートに関する。
特に、プリズムの延在方向を、帯状のプリズムシートの流れ方向に平行ではなく、幅方向に平行に成形して製造するのに好適なプリズムシート型を製造できる方法と、帯状の偏光子一体型プリズムシートと、幅方向が透過軸の帯状の偏光子とを一体化した、帯状の偏光子一体型プリズムシートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルなどのディスプレイパネルを組み込んだ各種画像表示装置が普及しており、こうしたディスプレイパネルには各種光学シートが使用されている。例えば、透過型の液晶表示パネルの背面側には、LEDや蛍光管からの光源光を、液晶セル面に均一に導くために、導光板を通した後、拡散シート、プリズムシートなどが使用されている。
【0003】
プリズムシートは、柱状の単位プリズムが多数互いにその延在方向を平行に配列したプリズム群からなる光学構造を有する。以下、この柱状の単位プリズムを単に「プリズム」とも呼称することにする。
【0004】
プリズムシートは、プリズムシート型として円筒状の成形型を用いて、連続的に帯状シートの形態で製造することで、高精度にかつ生産性よく製造できる(特許文献1)。
図5の斜視図は、従来のプリズムシート型40を示す。円筒状のプリズムシート型40の外周面の型面には、成形しようとするプリズムとは逆凹凸形状の溝41を有する。この溝41は、プリズムシート型40の回転方向でもある円周方向に、平行乃至は略平行に設けられている。溝41が円周方向に完全に平行にリング状に設けられる場合は、プリズムの数と同じ本数の溝41が設けられる。溝41が円周方向に略平行に設けられる場合は、1本乃至は複数本の溝41がネジ溝のように螺旋状に設けられる。
なお、同図では、型面上の溝41は全数ではなくそのうちの一部のみを図示してある。
【0005】
溝41を、プリズムシート型40の円周方向に平行乃至は略平行に設ける理由は、プリズムシート型40の製造を、旋盤を用いて円筒状のプリズムシート型40の元になる円筒状基材を、円筒の中心軸を回転軸として円周方向に一定の角速度で回転させながら、(a)螺旋の溝41を形成時は切削バイトを円筒状基材の回転軸方向に連続的に移動させて切削し、(b)リング状の溝41を形成時は切削バイトを回転軸方向に断続的に移動させて切削することで、容易に製造できるからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000−334838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、溝が円筒状のプリズムシート型の円周方向に平行乃至は略平行にではなく、図1の様に、溝1が回転軸方向に平行乃至は略平行に設けられたプリズムシート型が望まれることがある。
【0008】
例えば、透過型の液晶表示パネルが背面側に有する偏光板と、この偏光板の背面側に設置するプリズムシートとを一体化して、偏光板を兼用するプリズムシートが出来れば、部品点数を減らせて低コスト化が図れ、また厚みを薄くして薄型化も可能となる。この為には、偏光板とプリズムシートとを、それぞれ帯状シートの形態で貼り合わせて一体化した後、所定の枚葉シートに切断するのが、生産性が良く、より低コスト化が図れる。
この際、帯状の偏光板と帯状のプリズムシートとを、それぞれ完成品のシートを貼り合わせるのではなく、偏光板は、通常、延伸したポリビニルアルコールフィルムからなる偏光子の両面に保護フィルムを貼り合わせた層構成である為、この保護フィルムとしてプリズムシートを用いれば、さらに低コスト化と薄型化とが図れることになる。
【0009】
ところで、市販の偏光サングラスは、水面からの反射光は光の振動方向が水平方向で、これを遮断できるように、吸収軸は地面に対して水平に、透過軸は地面に対して垂直になるように設定されている。このため、図6のように、テレビ100に用いる液晶表示パネル50では、その液晶セル51の前面側の偏光板52fは、地面Eに立ってテレビ100を見る視聴者Vが偏光サングラスを着用していても見えるように、偏光サングラスと同様に透過軸Dtを垂直に設定してある。同図では、透過軸Dtは紙面に平行で図面上下方向の両矢印の方向である。したがって、液晶表示パネル50に於いては、一般に、前面側の偏光板52fと背面側の偏光板52rとでその透過軸Dtが直交するように配置される為、この液晶表示パネル50の背面側の偏光板52rは、透過軸Dtを水平に、吸収軸は垂直に設定してある。
【0010】
一方、プリズムシート60のプリズムの延在方向Dvは、プリズムシート60に入射させる光源光を発する光源70の配置に関係する。光源70を、横長のテレビ画面の長辺と短辺のうち照射距離が短くなる方の長辺側にエッジライト型として配置した場合は、水平方向となる(同図では紙面に垂直)。
【0011】
したがって、こうした光源の配置に対応させて、液晶表示パネルの背面側の偏光板と、その背面側に設けるプリズムシートとを積層一体化した帯状シートとして製造するには、背面側に用いていた偏光板中の偏光子の透過軸が水平方向であるから、偏光子の透過軸の水平方向に対しては、プリズムシートのプリズムの延在方向(水平方向であった)を平行にして貼り合わせれば良い。
延伸させて製造される偏光子の透過軸は延伸軸に垂直となるから、延伸軸を流れ方向とした帯状の偏光子5の透過軸は流れ方向に直交する幅方向である。この偏光子に貼り合せる帯状のプリズムシートはプリズムの延在方向を幅方向としたものを使えばよいことになる。
【0012】
しかし、従来のプリズムシートは、前記したようにプリズムシート型の製造の容易さの観点から、プリズムの延在方向は流れ方向であり、プリズムの延在方向を幅方向としたプリズムシートを製造できなくては、前記したような、プリズムシートと偏光板乃至は偏光子との積層一体化による低コスト化、薄型化は実現しない。
【0013】
すなわち、本発明の課題は、プリズムの延在方向を帯状のプリズムシートの流れ方向に平行にではなく幅方向に略平行乃至は平行にした帯状のプリズムシートを製造可能なプリズムシート型を、精度良く製造できる方法を提供することである。
また、本発明の課題は、プリズムの延在方向を幅方向に平行乃至は略平行とした帯状のプリズムシートと、透過軸の方向を幅方向に平行乃至は略平行とした帯状の偏光子とを、積層一体化した、帯状の偏光子一体型プリズムシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明では、次の様な構成のプリズムシート型の製造方法と、帯状の偏光子一体型プリズムシートとした。
(1)外周面に成形しようとするプリズムに対応する溝を多数有し、この溝が円筒状のプリズムシート型の回転軸方向に実質的に平行乃至は略平行である、プリズムシート型の製造方法であって、
少なくとも、切削バイトが円筒状基材の回転軸方向に移動して外周面内の型面の一端から他端まで切削している間は、円筒状基材は円周方向に常に回転している状態にして、回転軸方向に実質的に平行乃至は略平行な溝を切削加工する、プリズムシート型の製造方法。
(2)帯状のプリズムシートと帯状の偏光子とが、前記帯状のプリズムシートのプリズム面を外側にして積層され、前記プリズムシートのプリズムの延在方向が幅方向に実質的に平行乃至は略平行であると共に、前記偏光子の透過軸方向が幅方向に平行である、帯状の偏光子一体型プリズムシート。
【発明の効果】
【0015】
(1)本発明のプリズムシート型の製造方法によれば、転軸方向に実質的に平行乃至は略平行な溝を、切削バイトを円筒状基材の回転軸方向に移動させて形成するときでも、円筒状基材は常にわずかだが回転している状態で溝を形成するために、円筒状基材の回転を停止させて形成する際の円周方向での微妙な円筒状基材のブレによる溝の不本意な蛇行が回避される。その結果、本発明によれば、延在方向が回転軸方向に実質的に平行乃至は略平行な溝が形成されたプリズムシート型を精度よく製造できる。このため、延在方向が幅方向に実質的に平行乃至は略平行なプリズムを有するプリズムシートを精度よく成形できる。
(2)本発明の帯状の偏光子一体型プリズムシートによれば、偏光子の透過軸とプリズムの延在方向とを互いに平行乃至は略平行にできるので、偏光子の透過軸とプリズムシートのプリズムの延在方向とが互いに平行乃至は略平行な関係が必要な用途に使用することができる。特に、液晶表示パネルの背面側偏光板としての用途に好適である。この結果、本発明によれば、例えば、液晶表示パネルの背面側の偏光板とプリズムシートとを代替して、低コスト化及び薄型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明によるプリズムシート型の製造方法の一実施形態を説明する斜視図。
【図2】平面に展開された型面で溝が順次形成されていく様子を説明する平面図。
【図3】本発明による帯状の偏光子一体型プリズムシートの一実施形態を示す平面図(A)と断面図(B)。
【図4】本発明による帯状の偏光子一体型プリズムシートの別の実施形態を示す断面図。
【図5】従来のプリズムシート型を説明する斜視図。
【図6】テレビにおける液晶表示パネルの偏光板の透過軸の関係を説明する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は概念図であり、説明上の都合に応じて適宜、構成要素の縮尺関係、縦横比等は誇張されていることがある。
【0018】
《プリズムシート型の製造方法》
本発明によるプリズムシート型の製造方法の一実施形態を図1を参照して説明する。
図1では、プリズムの延在方向が帯状のプリズムシートの幅方向と完全に平行ではないが、実質的に平行乃至は略平行となるプリズムシートを製造するためのプリズムシート型を製造する場合である。
【0019】
ここで、本発明にて、プリズムシート型10、円筒状基材10A、及びプリズムシート20に於いて、「略平行」、「実質的に平行」とは、以下の意味である。
「実質的に平行」とは、完全に平行は含まず、完全平行ではないが、完全平行からの傾斜角θがプリズムシート使用時に許容される回転角度以下に収まる角度となることを言う。具体的には、前記許容される回転角度が±0.2°、好ましくは±0.1°とされるから、傾斜角θが−0.2°〜+0.2°の範囲(±0.2°)、より厳しくすれば、−0.1°〜+0.1°の範囲(±0.1°)、さらに厳しくすればこの10倍の安全率をとって、−0.01°〜+0.01°の範囲(±0.01°)、の範囲で完全平行は除いた範囲を意味する。
「略平行」とは、意識的にある程度平行からずらした角度などがこの範疇に入り、前記傾斜角θが−5°〜+5°の範囲内(±5°)であって、上記実質的に平行(最大で±0.2°)は除いた範囲のことを意味する。
【0020】
図1に示す、製造中のプリズムシート型10は、その外周面に成形するプリズムに対応する溝1を多数有する。本実施形態では、この溝1は円筒状のプリズムシート型10の回転軸Arの回転軸方向Daに対して、完全に平行ではないが、実質的に平行乃至は略平行である。
プリズムシート型10の原型となる円筒状基材10Aの寸法は、幅1600mm、円周長930mm、外周面のうち溝1を形成する領域である型面3の回転軸方向Daに於ける寸法は1350mmである。
形成する溝1の寸法は、溝1とは逆凹凸形状のプリズムの寸法で、このプリズムの主切断面形状が二等辺三角形で、頂角66°、高さ38μm、底辺50μmである。なお、上記「主切断面形状」とは、プリズムの延在方向(稜線方向でもある)に垂直な面における形状である。
このプリズムシート型10では、プリズム同士が間隔を空けずに多数隣接配列されたプリズム群を有するプリズムシートを成形することができる。
このため、溝1は円筒状基材10Aの外周面の円周方向Drに、溝1同士の間に間隔を空けずに切削加工するので、溝1の円周方向Drでの配列ピッチは50μmである。
【0021】
本実施形態では、旋盤によって、少なくとも、切削バイト2が円筒状基材10Aの回転軸方向Daに移動して外周面内の型面3の一端3sから他端3eまで切削している間は、円筒状基材10Aは円周方向Drに常に一定の角速度(周速度)で回転している状態にして、回転軸方向Daに実質的に平行乃至は略平行な溝1を切削加工する。
本実施形態では、切削バイト2が切削開始位置である型面3の一端3sから切削終了位置である他端3eまで移動して切削している最中と、次に切削バイト2が前記切削終了位置である型面3の他端3eから、次の切削開始位置である一端3sまで移動して復帰している間は、円筒状基材10Aは円周方向Drに一定の角速度で常に回転している。
回転の向きはどちらでも良いが、図1に示す本実施形態では、円筒状基材10Aの紙面手前側の外周面が、図面で下から上に移動する向きである。
切削バイト2は、回転軸方向Daに外周面内の型面3の一端3sから他端3eまで移動して切削している間、円周方向Drには移動しない。こうして、プリズムシート型10が製造される。
この実施形態に於いては、各溝1を、順次、1本目、2本目、3本目、4本目、5本目、・・と切削するのではなく、円筒状基材10Aの第1回転目で、1本目、3本目、5本目、・・と奇数本目の溝を切削し、次いで第2回転目で、2本目、4本目、6本目、・・と偶数本目の溝を切削する。即ち、各溝1を、間の1本分の溝1を飛び越えて、切削し、2回転で全ての溝1の切削を完了する。
【0022】
図2は、円筒状基材10Aの外周面中の型面3の全領域を、二次元曲面から平面に展開し、多数の溝1が順次形成されていく様子を説明する平面図である。溝1の円周方向Drでの配列ピッチPは、図面では上下方向で実際に比べて誇張して大きく誇張して描いてある。
【0023】
最初に、切削加工する溝1の第1本目はN=1として、次に切削加工する2番目をN=2、以降、m番目をN=m、m+1番目をN=m+1、m+2番目をN=m+2、としてある。切削バイト2の切削動作中の軌跡乃至は溝1は実線矢印で示し、切削バイト2の復帰動作中の軌跡は点線矢印で示し、型面3を一周完了後のm+1番目以降は、これらを細い線で示してある。
切削バイト2(不図示)が、多数の溝1を順次切削して外周面を一周する直前の、N=m番目の溝1を型面3内での図面左側の切削開始位置3s(回転軸方向Daでの一端3sでもある)から、図面右側の切削終了位置3e(回転軸方向Daでの他端3eでもある)まで切削加工した後、型面3内で回転軸方向Daの切削開始位置3sに復帰すると、切削済みのN=1番目の溝1を円周方向Drで追い越した位置に到達する。この切削開始位置3sから、N=m+1番目の溝1を切削加工すると、この溝1は追い越したN=1番目の溝1から配列ピッチPと同じ50μmだけ離れて形成される。前記円周長は正確には前記配列ピッチPとこのような関係となる様に設定してある。こうして、多数の溝1が、円周方向Drの全長で隙間や詰まりなく一定の配列ピッチP=50μmで配列した、プリズムシート型10が製造される。
【0024】
以上の結果、溝1の回転軸方向Daとの平行関係については、溝1が外周面内の型面3の回転軸方向Daでの一端3sから延びて他端3eまで到達した位置では、配列ピッチPの50μmだけ、つまり溝1の一本分だけ円周方向Drでずれた位置となる。このため、溝1は回転軸方向Daとは完全平行(傾斜角θ=0°)とは言えないが、実質的に平行であると言える。溝1の延在方向Dvの回転軸方向Daに対する傾斜角θは、arctan(0.05mm/1350mm)であるから、傾斜角θ=0.0022°である。従って、溝1は回転軸方向Daに対して充分に平行である。つまり、回転軸方向Daに実質的に平行な溝1が形成される。
なお、各溝1同士は互いに完全に平行となる。
【0025】
こうして製造されたプリズムシート型10を用いてプリズムシートを製造すれば、プリズムの延在方向がシートの幅方向に実質的に平行な帯状のプリズムシートを連続的に容易に製造できる。
【0026】
なお、円筒状基材10A、切削バイト2などは、従来公知のものでよい。
【0027】
[完全平行な溝形成]
ところで、切削バイト2が回転軸方向Daに移動して溝1を切削加工するとき、具体的には、切削バイト2が回転軸方向Daに外周面の型面3の一端3sから他端3eまで移動する間、円筒状基材10Aは角速度ゼロの回転を停止した状態とすれば、回転軸方向Daに完全平行な溝1を切削加工できることになる。
しかし、旋盤上で、その主軸にチャックで固定された円筒状基材10Aは、制御機構上、回転を停止した状態にしても、実際には微妙に前進と後退を繰り返しており、見かけ上停止しているに過ぎないことが判明した。このため、円周方向での微妙な円筒状基材10Aのブレによる溝の不本意な蛇行が生じて、精度よく形成できない。
ブレを解消する為に、回転の停止は、円筒状基材10A自体、又は、円筒状基材10Aを旋盤の主軸に保持するチャック等の保持具或いは主軸自体を、一対のブレーキパッドによる対向する押圧力を加えて摩擦力により、一時的に回転を確実に停止させることも可能である。切削バイト2が他端3eから一端3sまで復帰動作する間は、回転の停止を解除して、次の切削の位置まで、所定角度分だけ円筒状基材10Aを回転させる。
【0028】
しかし、いずれにしろ、円筒状基材10Aの回転と停止とを交互に繰り返す必要がある。質量が大きく慣性モーメントが大きい円筒状基材10Aに対して、回転と停止を交互に繰り返すのでは、円滑な切削加工は難しい。
一方、本実施形態では、円筒状基材10Aは常に一定の角速度で回転させている為に、円滑な切削加工が可能であり、しかも実質的に平行乃至は略平行でブレのない精度の良い溝1の形成が可能である。
【0029】
《帯状の偏光子一体型プリズムシート》
図3は、本発明による帯状の偏光子一体型プリズムシート30の一実施形態を説明する平面図(A)と断面図(B)である。本実施形態の偏光子一体型プリズムシート30は、プリズム4の延在方向Dvが帯状のプリズムシート20の幅方向TDと完全に平行ではないが、実質的に平行となる場合である。
【0030】
なお、本発明の偏光子一体型プリズムシート30を構成するプリズムシート20においても、「略平行」及び「実質的に平行」の意味は、前述したプリズムシート型の製造方法で述べた意味と同一である。
「略平行」として、例えば、傾斜角ψが1〜5°の間に設定したプリズムシート20も要求されることがあるので、こうした要求仕様に対しては、「実質的に平行」ではなく「略平行」にしたものが良い。
ここで、傾斜角ψは、プリズム4の延在方向Dvと、帯状の偏光子一体型プリズムシート30の幅方向TDとの角度である。
【0031】
帯状のプリズムシート20は上述したプリズムシート型10を用いて製造されたものである。
したがって、この帯状のプリズムシート20におけるプリズム4の延在方向Dvは幅方向TDに対する傾斜角ψが、前記したプリズムシート型10上での溝1の回転軸方向Daとの傾斜角θと同じ角度で、傾斜角ψ=0.0022°である。
帯状のプリズムシート20は、上述したプリズムシート型10を利用して製造されたものであること以外は、公知の形成法及び材料によって製造されたものである。
【0032】
図3(B)の断面図で示す様に、本実施形態の帯状のプリズムシート20は、透明樹脂フィルム21上に電離放射線硬化性樹脂の硬化物からなるプリズム層22として多数のプリズム4を有する。透明樹脂フィルム21の樹脂は、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等である。電離放射線硬化性樹脂はアクリレート系で紫外線で硬化させたものである。
【0033】
帯状の偏光子5の透過軸方向Dtは幅方向TDに平行である。帯状の偏光子5は、公知のものを使用することができる。通常、偏光子5はポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて延伸したものである。したがって、この平行とは、市販の偏光板において許容される誤差を含んでいる。
【0034】
このような偏光子一体型プリズムシート30は、帯状のプリズムシート20と帯状の偏光子5とを、各々ロールから巻き出して、各々の幅方向TDを互いに平行にして同一方向に搬送しながら貼り合せることで容易に製造できる。そして、再度ロールに巻き取る事で、いわゆる、ロール・ツー・ロール方式で連続的に生産性よく製造できる。
【0035】
本実施形態によれば、偏光子5の透過軸の方向Dtとプリズム4の延在方向Dvとを互いに平行乃至は略平行にできるので、偏光子5の透過軸とプリズムシート20のプリズム4の延在方向Dvとが互いに平行乃至は略平行な関係が必要な用途に使用することができる。この結果、例えば、偏光子一体型プリズムシート30で、液晶表示パネルの背面側の偏光板とプリズムシートとを代替して、低コスト化及び薄型化を図ることができる。
【0036】
《変形例》
本発明は、上記した実施形態以外のその他の形態をとり得る。以下、その一部を説明する。
【0037】
[レンズ要素の包含]
本発明では、プリズムに代えてレンズを有する光学シートも「プリズムシート」と呼ぶことにし、そのレンズも含めてプリズムと呼ぶことにする。
ここで、「プリズム」とは、本来、主切断面形状において、光が出入りする外面を成す部分が直線からなる単位光学要素を意味する。「レンズ」とは、本来、主切断面形状において、光が出入りする外面を成す部分が曲線からなる単位光学要素を意味する。ただし、製造上の誤差によりプリズムでもその頂角に丸みを帯びた形状、またその頂角を意識的に若干の丸みを帯びさせた形状(例えば曲率半径5μm程度の部分
円弧)は「レンズ」に含めない。
また、プリズムとレンズが複合化した単位光学要素も「プリズム」に含める。
以上、レンズ要素も包含することにより、レンズ機能に対応した製造方法及びシートとなる。
【0038】
[回転と停止の交互繰り返し]
上記した製造方法の実施形態では、円筒状基材10Aは切削バイト2が移動して溝1を切削加工時も、切削開始位置3sに復帰動作時も、常に一定の角速度で回転している例であった。
しかし、切削バイト2が切削終了位置3eから切削開始位置3sに復帰動作しているときは、回転を一時的に停止させてもよい。
この結果、切削終了位置3eと次の切削開始位置3sとの円周方向Drでの位置を同じにして、切削加工できる。
この形態では、型面3上に於ける切削バイト2の軌跡が図2とは異なり、1本目の溝1を型面3上の3sから3e迄切削した後、直接、2本目の溝の切削開始位置3sに復帰する。
この結果、各溝1を、順次、1本目、2本目、3本目、4本目、5本目、・・と切削し、1回転で全ての溝1の切削を完了する。
【0039】
[同時複数本の溝形成]
上記した製造方法の実施形態では、切削バイト2が溝1を一本ずつ切削加工する例であった。
しかし、切削バイト2で、同時に複数本の溝1を切削加工してもよい。例えば、第1の切削チップと第2の切削チップとを同一のシャンクに装着した切削バイト2を用いて、同時に2本の溝1を切削加工してもよい。
同時に2本の溝1を切削加工する場合では、全ての溝1を切削加工するに必要な時間を1/2に短縮することができる。
同時に2本以上の溝1を切削加工すれば、切削バイト2の切削動作中及び復帰動作中も、円筒状基材10Aの回転を一定の角速度で常に回転させた状態としても、復帰動作中に切削加工していない無駄な時間を埋め合わせることができる。
【0040】
[非直線の溝]
上記した製造方法の実施形態では、切削バイト2が回転軸方向Daに、円筒状基材10Aの一端3sから他端3eまで移動して溝1を切削加工する間、切削バイト2は円周方向Drには移動していなかった。
しかし、切削バイト2を、回転軸方向Daに、円筒状基材10Aの一端3sから他端3eまで移動して溝1を切削加工する間、切削バイト2を円周方向Drに振動させても良い。
こうすることによって、波型など直線が変調された非直線状の溝1を形成することができる。
【0041】
[大きな傾斜角θ]
なお、切削バイト2が回転軸方向Daに一端3sから他端3eまで移動する間に、円筒状基材10Aを円周方向Drに一定の角速度で回転させながら、且つ円筒状基材10Aを1回転させない範囲内で、溝1を切削加工すれば、略平行よりも傾斜角θが大きい溝1を有するプリズムシート型も製造可能である。ただし、円筒状基材10Aを1回転以上、回転させると、溝1はネジ溝の様に螺旋状となる。最大でも1回転させない範囲内、つまり、1回転未満とすれば、非螺旋の溝1を形成したプリズムシート型を製造することができる。
【0042】
[保護フィルムの積層]
上記した帯状の偏光子一体型プリズムシート30の実施形態では、偏光子5は片面にプリズムシート20が積層され、他方の面は何も積層されていなかった。
しかし、図5に示す様に、他方の面に保護フィルム6が積層された構成としても良い。保護フィルム5は公知のもの、例えば、トリアセチルセルロース、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などからなるフィルムである。
保護フィルム5が積層された構成とすることによって、偏光子5の面を傷付きなどから保護することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 溝
2 切削バイト
3 型面
4 (単位)プリズム
5 偏光子
5 保護フィルム
10 プリズムシート型
10A 円筒状基材
20 プリズムシート
21 透明樹脂フィルム
22 プリズム層
30 偏光子一体型プリズムシート
40 従来のプリズムシート型
41 溝
Ar 回転軸
Da 回転軸方向
Db 切削加工時の切削バイトの移動方向
Dr 円周方向(回転方向に平行な方向)
Dt 偏光子の透過軸方向
Dv 溝或いはプリズムの延在方向
TD 帯状シートでの幅方向
ψ 傾斜角(プリズムと幅方向TD)
θ 傾斜角(溝と回転軸方向)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に成形しようとするプリズムに対応する溝を多数有し、この溝が円筒状のプリズムシート型の回転軸方向に実質的に平行乃至は略平行である、プリズムシート型の製造方法であって、
少なくとも、切削バイトが円筒状基材の回転軸方向に移動して外周面内の型面の一端から他端まで切削している間は、円筒状基材は円周方向に常に回転している状態にして、回転軸方向に実質的に平行乃至は略平行な溝を切削加工する、プリズムシート型の製造方法。
【請求項2】
帯状のプリズムシートと帯状の偏光子とが、前記帯状のプリズムシートのプリズム面を外側にして積層され、前記プリズムシートのプリズムの延在方向が幅方向に実質的に平行乃至は略平行であると共に、前記偏光子の透過軸方向が幅方向に平行である、帯状の偏光子一体型プリズムシート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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