説明

プリズム装置及びプリズム保持方法

【課題】画像光の入射面と出射面とが互いに平行に精度良く組み立てられる。
【解決手段】プリズム14を枠状支持部材19と棒状支持部材21との間に落とし込む。出射・再入射面14cが内壁面19cに当接されるとともに入射面14aの一部が補助支持部材20の縁20aに当接される。接着剤18が入射面15a上に矩形の枠状に塗布されたプリズム15をプリズム14と棒状支持部材21との間に落とし込むと、出射面15bの縁近傍部分が棒状支持部材21の周面に線状に当接される。ベース部材22の表面22aの成形精度に関わらず、プリズム14が内壁面19cに位置決めされ、プリズム15が外壁面14dの法線周りに回転して傾きが修正される。外壁面14dと入射面15aとが接着され、これらの間に薄い空気層17が形成されるとともに出射・再入射面14cと出射面15bとは互いに平行になる。この後、プリズム14は枠状支持部材19に固着される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明はプリズム装置及びプリズム保持方法に関し、例えば内部全反射プリズムに適用するもの若しくは、内部全反射プリズムを用いたプロジエクタ装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光学系において入射光をその入射角に応じて選択的に透過又は反射するための光学装置として、例えばプリズムが用いられているが、その内の一つとして内部全反射(TIR:Total Internal Reflection) プリズムが知られている。TIRプリズムは、内部の空気とガラスの境界面に臨界角より大きい角度で入射された光が入射前の偏向状態に係わらず100%反射される作用を有するので、この特性を利用して入射光と反射光を分離することができる。
【0003】
TIRプリズムは、例えば、空間光変調素子であるDMD(Digital Micromirror Device,登録商標)を用いたプロジエクタ装置等に用いられる。TIRプリズムは、プロジエクタ装置においてDMDに照射光を導くと共にDMDによって反射される画像光をプリズムに対する入射角に応じて分離し、有効光を選択するのに用いられる。DMDは、半導体基板に二次元的に配列された複数のメモリセルと、各メモリセルに傾斜自在に取り付けられたマイクロミラーとからなるデバイスであり、各メモリセルにデータを書き込むことで生じる静電気力によって、マイクロミラーの反射面の角度を変化させるように構成されている。
【0004】
TIRプリズムは、2個の三角プリズムと、これらを保持する保持部材とから構成される。2個の三角プリズム間には、非点収差を避けるために薄い空気層(0以上、好ましくは2〜20μm以下)が形成されている。また、DMDによって反射される画像光がTIRプリズムに入射する一方の三角プリズムの入射面と、前記空気層及び他方の三角プリズム内を通過して投映光学系へ出射される他方の三角プリズムの出射面とは、互いに平行である必要がある。
【0005】
このような条件で2個の三角プリズムを保持する保持部材としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この保持部材は、2個の三角プリズム(2A,2B)をそれぞれ個別に保持する2個のホルダ(4A,4B)からなり、これらをネジ止めして一体化することにより、この内部に2個の三角プリズム(2A,2B)が薄い空気層を挟んで対面した状態で保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−327808
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1記載のTIRプリズム(プリズム装置)では、2個の三角プリズムが別々のホルダによって保持されているので、たとえ2個の三角プリズム各々の製造精度が高くても、各ホルダの製造精度や2個のホルダ同士の嵌合精度によっては、2個の三角プリズムの入射面と出射面とが互いに平行にならない場合があり得る。この場合、DMDから反射してTIRプリズムに入射する画像光の入射光軸とTIRプリズムから射出される画像光の出射光軸とが一致せず、スクリーン上に投映される投映画像の解像度が劣化するという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、画像光の入射面と出射面とが互いに平行となるように精度良く組み立てることができるプリズム装置及びプリズム保持方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のプリズム装置は、照射された照明光を変調して反射することにより画像光を投射する空間光変調素子と画像光をスクリーンに投映する投映光学系との間に設けられ、前記照明光を空間光変調素子に照射するとともに、空間光変調素子からの画像光を投映光学系へ向けて出射するプロジェクタ用のプリズム装置において、前記照明光が入射される照明光入射面と、この照明光入射面から内部に入射した照明光を全反射して空間光変調素子に向けて出射するとともに空間光変調素子からの画像光を入射する出射・再入射面と、前記画像光を出射する第1画像光出射面とを有する第1三角プリズムと、第1三角プリズムの第1画像光出射面から出射された画像光を入射する画像光入射面と、前記画像光を投映光学系へ向けて出射する第2画像光出射面とを有する第2三角プリズムとからなるTIRプリズムと、裏面にプロジェクタ内での位置決めを行なうベース部材位置決め手段が設けられた板状のベース部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第1三角プリズムの出射・再入射面の位置決めを行なう出射・再入射面位置決め部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第2三角プリズムの第2画像光出射面の一部に線接触することにより、前記出射・再入射面位置決め部材との間に第1,第2三角プリズムを一体的に挟み込み、互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とを平行に保持する棒状部材とからなる保持部材とを備えたことを特徴とする。
【0010】
前記出射・再入射面位置決め部材は、前記照明光及び画像光が通過する開口が形成され、内壁面に第1三角プリズムの出射・再入射面が当接される第1位置決め部材と、第1三角プリズムの照明光入射面の照明光の入射を妨げない位置に当接される第2位置決め部材とからなることが好ましい。
【0011】
前記互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面とは、前記画像光が通過する少なくとも中央部の領域に空気層が形成されるように、前記中央部の領域を除く縁近傍部が所定の接着手段によって接着されることが好ましい。
【0012】
前記第1三角プリズムの出射・再入射面は、前記出射・再入射面位置決め部材の内壁面に接着されることが好ましい。
【0013】
本発明のプリズム保持方法は、照射された照明光を変調して反射することにより画像光を投射する空間光変調素子と画像光をスクリーンに投映する投映光学系との間に設けられ、前記照明光が入射される照明光入射面と、この照明光入射面から内部に入射した照明光を全反射して空間光変調素子に向けて出射するとともに空間光変調素子からの画像光を入射する出射・再入射面と、前記画像光を出射する第1画像光出射面とを有する第1三角プリズムと、第1三角プリズムの第1画像光出射面から出射された画像光を入射する画像光入射面と、前記画像光を投映光学系へ向けて出射する第2画像光出射面とを有する第2三角プリズムとからなるTIRプリズムを、裏面にプロジェクタ内での位置決めを行なうベース部材位置決め手段が設けられた板状のベース部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第1三角プリズムの出射・再入射面の位置決めを行なう出射・再入射面位置決め部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第2三角プリズムの第2画像光出射面の一部に線接触することにより、前記出射・再入射面位置決め部材との間に第1,第2三角プリズムを一体的に挟み込み、互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とを平行に保持する棒状部材とからなる保持部材に、保持させるプリズム保持方法において、前記第1三角プリズムを出射・再入射面位置決め部材と棒状部材との間から挿入してベース部材の表面上に載置し、前記第1三角プリズムの出射・再入射面を出射・再入射面位置決め部材で位置決めする第1ステップと、前記第2三角プリズムを第1三角プリズムと棒状部材との間から挿入してベース部材の表面上に載置し、前記第2三角プリズムの画像光入射面の縁近傍部を第1三角プリズムの第1画像光出射面に接着することにより第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、前記画像光が通過する範囲を除く第2三角プリズムの第2画像光出射面の一部を棒状部材に線接触させることにより、前記第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とが互いに平行となる第2ステップと、前記第1三角プリズムを出射・再入射面位置決め部材に接着する第3ステップとからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、第1,第2三角プリズムからなるTIRプリズムを保持する保持部材を、裏面にプロジェクタ内での位置決めを行なうベース部材位置決め手段が設けられた板状のベース部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第1三角プリズムの出射・再入射面の位置決めを行なう出射・再入射面位置決め部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第2三角プリズムの第2画像光出射面の一部に線接触することにより、前記出射・再入射面位置決め部材との間に第1,第2三角プリズムを一体的に挟み込み、互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とを平行に保持する棒状部材とから構成したので、第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層が形成されるとともに、画像光の入射面である第1三角プリズムの出射・再入射面と、画像光の出射面である第2三角プリズムの第2画像光出射面とを平行に保持できる。
【0015】
前記出射・再入射面位置決め部材を、第1三角プリズムの出射・再入射面が当接される第1位置決め部材と、第1三角プリズムの照明光入射面に当接される第2位置決め部材とから構成したので、第1三角プリズムの出射・再入射面が確実に位置決めされる。
【0016】
第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面とを中央部の領域を除く縁近傍部で所定の接着手段によって接着されるようにしたので、第1三角プリズムと第2三角プリズムとが確実に固定される。
【0017】
第1三角プリズムの出射・再入射面を出射・再入射面位置決め部材の内壁面に接着するので、第1三角プリズムが保持部材に確実に固定され、プリズム装置をプロジェクタに組み込む際等に、保持部材に対する第1三角プリズムがズレるようなおそれがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プリズム装置とDMD,投映光学系との関係を示す説明図である。
【図2】保持部材の構成を示す斜視図である。
【図3】ベース部材の裏面を示す説明図である。
【図4】プリズム装置を反射型プロジェクタの基板に取り付ける様子を示す説明図である。
【図5】プリズム装置の組立手順を示すフローチャートである。
【図6】第1三角プリズムを枠状支持部材と棒状支持部材との間に落とし込む状態を示す説明図である。
【図7】第2三角プリズムを第1三角プリズムと棒状支持部材との間に落とし込む状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施例であるプリズム装置10は、図1に示すように、反射型プロジェクタのDMD11(空間光変調素子)と投映光学系12との間に配置して用いられる。DMD11は、二次元的に配列された複数のマイクロミラーからなり、各マイクロミラーは、それぞれ入射した照明光を1画素分の画素光として投映光学系12に向けて反射するオン状態と、照明光を光吸収体(図示省略)に向けて反射するオフ状態とに傾斜自在になっている。投映光学系12は、ズームレンズからなりプリズム装置10から出射された画像光をスクリーン(図示せず)上に投映する。
【0020】
プリズム装置10は、それぞれ3つの光学面によって形成された三角プリズムである2個のプリズム14,15(第1,第2三角プリズム)と、これらを保持する保持部材16とからなる内部全反射(TIR:Total Internal Reflection) プリズムである。三角プリズムは、光学ガラスから形成され、一対の側面が三角形の柱状部材である。側面はすり面をしており、側面を除く他の3面は、それぞれ透明な面をしている。なお、3面のうち光が通過する必要がない面は、すり面であってもよい。
【0021】
プリズム14は、図示しない光源から照射される光軸αの照明光が入射される入射面14a(照明光入射面)と、この入射面14aから内部に入射した照明光を全反射する全反射面14bと、この全反射面14bで反射された照明光をDMD11に向けて出射するとともにオン状態のDMD11から出射される光軸βの画像光を入射する出射・再入射面14cと、全反射面14bの外壁面14d(第1画像光出射面)とを備えている。なお、オフ状態のDMD11から出射された光軸γの画像光は、光吸収体(図示省略)に向けられる。
【0022】
プリズム15は、プリズム14の外壁面14dと薄い空気層17を介して対面され、出射・再入射面14cから入射された画像光がプリズム14の内部及び空気層17を通過して入射される入射面15a(画像光入射面)と、この入射面15aから内部に入射した画像光を投映光学系へ向けて出射する出射面15b(第2画像光出射面)とを備えている。なお、入射面15a及び出射面15bを除く面15cは、光が通過しないため、すり面になっている。
【0023】
全反射面14bと出射・再入射面14cとのなす角度θ1と、入射面15aと出射面15bとのなす角度θ2とは同じであり、空気層17の厚みDが、例えば、5〜10μmと極めて薄いため、プリズム14,15を互い違いになるように、外壁面14dと入射面15aとを対面させると、出射・再入射面14cと出射面15bとは互いに平行になる。
【0024】
外壁面14dと入射面15aとは、空気層17を囲むように矩形の枠状に塗布された接着剤18(接着手段)によって接着される。空気層17の厚みDは、接着剤18の供給量によって決められる。接着剤18としては、完全に硬化するまでに時間的余裕がある、例えばエポキシ樹脂等が使用するのが好ましい。また、接着剤18としては、予め所定の形状に成形されたシート状の接着剤を用いてもよい。
【0025】
保持部材16は、図1及び図2に示すように、照明光及び画像光が通過する矩形状の開口19aが形成され、外壁面19bがDMD11に向かい合う矩形状の枠状支持部材19(第1位置決め部材)と、枠状支持部材19の一辺端部19d(破線で示す)に沿って細長くかつ枠状支持部材19の内壁面19cに対してほぼ直角に内壁面19cから僅かに突出されるように一辺端部19dに連設された補助支持部材20(第2位置決め部材)と、補助支持部材20の長手方向に細長く平行で、かつ枠状支持部材19の内壁面19cに対峙される範囲内で補助支持部材20から遠い側に設けられた棒状支持部材21(棒状部材)と、枠状支持部材19及び棒状支持部材21が同じ一方の表面22aに垂直に立設される板状のベース部材22とからなり、これらは一体に樹脂成形されている。
【0026】
図2に示す枠状支持部材19の内壁面19cの高さ方向と補助支持部材20の縁20aの長手方向とは、互いに平行(図1の紙面に対して垂直方向)であるから、プリズム14の出射・再入射面14cが内壁面19cに当接されるとともに入射面14aが縁20aに当接されると、入射面14aと出射・再入射面14cとからなる稜線14eの長手方向は内壁面19cの高さ方向及び縁20aの長手方向に平行となり、プリズム14は光軸βの周りに回転することなく枠状支持部材19に対して位置決めされる。これにより、ベース部材22の表面22aの平面精度に拠らず、プリズム14は枠状支持部材19に対して正確に位置決めされる。なお、補助支持部材20の内壁面19cからの突出量は、入射面14aに入射される照明光を妨げない範囲である。
【0027】
枠状支持部材19の内壁面19cと棒状支持部材21との間隔は、内壁面19cと棒状支持部材21の周面との間にプリズム14,15を挟んだ状態で、出射・再入射面14cと出射面15bとが互いに平行になる出射・再入射面14cと出射面15bとの距離に設定されている。
【0028】
ベース部材22の裏面22bには、図3及び図4に示すように、2個の異なる形状の穴22c,22dが形成されている。穴22cは画像光の光軸β方向に延びた長穴形状をしており、穴22dは、円形をしている。一方、反射型プロジェクタの基板24には、穴22c,22dにそれぞれ対応した円柱状をした突起25,26が形成され、穴22c,22dを突起25,26に嵌め込むことにより、ベース部材22が基板24上に容易かつ正確に位置決めされる。これにより、プリズム装置10がDMD11と投映光学系12との間の所定位置に正確に取り付けられるから、DMD11の中心から投映光学系12の中心光軸を貫く画像光の光軸βに対するプリズム装置10の正確な位置が決まる。プリズム装置10は、照射光の光軸αに対しても、ほぼ正確な位置に位置決めされるが、プリズム14の入射面14aと光軸αとの正確な関係は、照明光学系側で調整される。
【0029】
このように構成されたプリズム装置10の組み立てについて、図5のフローチャートに従い、図6,図7を参照して説明する。まず、図示しない治具等を用いて、図6に示すように、図示しない作業テーブルの上面に対して補助支持部材20が下側になるように保持部材16を立てるとともに、ベース部材22の裏面22b(図3参照)が作業テーブルの上面に近づく方向にやや寝かせ、かつ内壁面19cが作業テーブルの上面に対して斜めになるように、保持部材16の姿勢を決めて設置する(st1)。なお、括弧内のst(ステップの意)1等は、図5に示すst1等に対応する。
【0030】
次に、プリズム14(第1三角プリズム)を入射面14a側を先にして枠状支持部材19の内壁面19cと棒状支持部材21との間に落とし込む(st2)。プリズム14は、出射・再入射面14cが枠状支持部材19の内壁面19cに沿うようにして案内され、入射面14aの一部が補助支持部材20の縁20aに当接されるとともに、出射・再入射面14cが枠状支持部材19の内壁面19cに当接される。
【0031】
次に、予め接着剤18が入射面15a上に細い幅で矩形の枠状に塗布されたプリズム15(第2三角プリズム)を、図7に示すように、入射面15aが外壁面14dに対面される向きで、プリズム14と棒状支持部材21との間に落とし込む(st3)。これにより、入射面15aが空気層17及び接着剤18を間に挟んで外壁面14dに対面するとともに、出射面15bの図面上方側の縁近傍部分が棒状支持部材21の周面の一部に線状に当接される。この線状当接によりプリズム15はある程度自由に外壁面14dの法線δ周りに回転可能である。なお、接着剤18は、矩形の枠状に限らず、入射面15aの角の4点塗布でもよく、また、入射面15aの対向する2つの縁に沿った2直線状に塗布してもよい。
【0032】
プリズム14と棒状支持部材21との間へのプリズム15の落とし込みにより、プリズム15が外壁面14dの法線δ周りに回転して、外壁面14dに対するプリズム15の傾きが修正される。この結果、ベース部材22の表面22aの成形精度に関わらず、外壁面14dと入射面15aとが平行に対面されるとともに、出射・再入射面14cと出射面15bとは互いに平行になる。接着剤18が硬化されると、外壁面14dと入射面15aとが接着される(st4)とともに、接着剤18によってほぼ矩形状に囲まれた外壁面14dと入射面15aとの間には、薄い空気層17が所定の厚みDで形成される。
【0033】
次に、プリズム14の出射・再入射面14cに接する枠状支持部材19の縁部にUV硬化接着剤を塗布してから、高圧水銀ランプ等のUV発生装置を用いて、UV硬化接着剤に紫外線を照射する。UV硬化接着剤が完全に硬化すると、プリズム14が枠状支持部材19に固定される(st5)。これにより、プリズム14,15が保持部材16に正確に位置決め固定され、プリズム装置10が完成する。
【0034】
以上説明した実施形態では、保持部材の枠状支持部材,棒状支持部材,及びベース部材を一体成形するようにしたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、枠状支持部材,棒状支持部材,及びベース部材を別々の部品として成形しておき、これらを後から組み立てて一体化することにより保持部材を得るようにしてもよい。
【0035】
上記実施形態では、補助支持部材を枠状支持部材と一体に設けたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、補助支持部材を枠状支持部材とは別体に設けてもよい。この場合、補助支持部材は、図2等に図示した形状ではなく、例えば、棒状でもよい。
【0036】
上記実施形態では、棒状支持部材を円柱形状としたが、本発明はこれに限定されることなく、例えば、プリズムの出射面に当接する側だけが周面をした断面が半月状をした棒状支持部材でもよい。
【符号の説明】
【0037】
10 プリズム装置
14,15 プリズム
16 保持部材
19 枠状支持部材
20 補助支持部材
21 棒状支持部材
22 ベース部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された照明光を変調して反射することにより画像光を投射する空間光変調素子と画像光をスクリーンに投映する投映光学系との間に設けられ、前記照明光を空間光変調素子に照射するとともに、空間光変調素子からの画像光を投映光学系へ向けて出射するプロジェクタ用のプリズム装置において、
前記照明光が入射される照明光入射面と、この照明光入射面から内部に入射した照明光を全反射して空間光変調素子に向けて出射するとともに空間光変調素子からの画像光を入射する出射・再入射面と、前記画像光を出射する第1画像光出射面とを有する第1三角プリズムと、第1画像光出射面から出射された画像光を入射する画像光入射面と、前記画像光を投映光学系へ向けて出射する第2画像光出射面とを有する第2三角プリズムとからなるTIRプリズムと、
裏面にプロジェクタ内での位置決めを行なうベース部材位置決め手段が設けられた板状のベース部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第1三角プリズムの出射・再入射面の位置決めを行なう出射・再入射面位置決め部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第2画像光出射面の一部に線接触することにより、前記出射・再入射面位置決め部材との間に第1,第2三角プリズムを一体的に挟み込み、互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とを平行に保持する棒状部材とからなる保持部材と
を備えたことを特徴とするプリズム装置。
【請求項2】
前記出射・再入射面位置決め部材は、前記照明光及び画像光が通過する開口が形成され、内壁面に第1三角プリズムの出射・再入射面が当接される第1位置決め部材と、第1三角プリズムの照明光入射面の照明光の入射を妨げない位置に当接される第2位置決め部材とからなることを特徴とする請求項1記載のプリズム装置。
【請求項3】
前記互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面とは、前記画像光が通過する少なくとも中央部の領域に空気層が形成されるように、前記中央部の領域を除く縁近傍部が所定の接着手段によって接着されることを特徴とする請求項1または2記載のプリズム装置。
【請求項4】
前記第1三角プリズムの出射・再入射面は、前記出射・再入射面位置決め部材の内壁面に接着されることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載のプリズム装置。
【請求項5】
照射された照明光を変調して反射することにより画像光を投射する空間光変調素子と画像光をスクリーンに投映する投映光学系との間に設けられ、前記照明光が入射される照明光入射面と、この照明光入射面から内部に入射した照明光を全反射して空間光変調素子に向けて出射するとともに空間光変調素子からの画像光を入射する出射・再入射面と、前記画像光を出射する第1画像光出射面とを有する第1三角プリズムと、第1三角プリズムの第1画像光出射面から出射された画像光を入射する画像光入射面と、前記画像光を投映光学系へ向けて出射する第2画像光出射面とを有する第2三角プリズムとからなるTIRプリズムを、
裏面にプロジェクタ内での位置決めを行なうベース部材位置決め手段が設けられた板状のベース部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第1三角プリズムの出射・再入射面の位置決めを行なう出射・再入射面位置決め部材と、ベース部材の表面に垂直に設けられ、第2画像光出射面の一部に線接触することにより、前記出射・再入射面位置決め部材との間に第1,第2三角プリズムを一体的に挟み込み、互いに対面される第1三角プリズムの第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とを平行に保持する棒状部材とからなる保持部材に、保持させるプリズム保持方法において、
前記第1三角プリズムを出射・再入射面位置決め部材と棒状部材との間から挿入してベース部材の表面上に載置し、前記第1三角プリズムの出射・再入射面を出射・再入射面位置決め部材で位置決めする第1ステップと、
前記第2三角プリズムを第1三角プリズムと棒状部材との間から挿入してベース部材の表面上に載置し、前記第2三角プリズムの画像光入射面の縁近傍部を第1三角プリズムの第1画像光出射面に接着することにより第1画像光出射面と第2三角プリズムの画像光入射面との間に空気層を形成するとともに、前記画像光が通過する範囲を除く第2画像光出射面の一部を棒状部材に線接触させることにより、前記第1三角プリズムの出射・再入射面と第2三角プリズムの第2画像光出射面とが互いに平行となる第2ステップと、
前記第1三角プリズムを出射・再入射面位置決め部材に接着する第3ステップと
からなることを特徴とするプリズム保持方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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