説明

プリテンショナ装置及びシートベルト装置

【課題】シリンダ内からのガス漏れを抑制する弾性シール部材が、シリンダ内に供給されたガスによって過度な変形を抑制して、保圧性の向上を図ること。
【解決手段】プリテンショナ本体22には、筒状空間26と筒状空間26の一端に連続するガス導入空間33が形成され、第1通過孔部42を有する閉塞端部41がガス導入空間33を閉塞するように設けられている。ピストン50は、筒状空間26内を移動可能であり、ピストン50に連結された連結部材60が、ガス導入空間33から第1通過孔部42を通って外部に導出されている。弾性シール部材70は、閉塞端部41の内面側に設けられており、連結部材60が通過可能な第2通過孔部72を有する。ガス緩衝部材80は、閉塞端部41との間で弾性シール部材70を挟込む位置に設けられ、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの第3通過孔部86が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗物の急減速時等に、シートベルトに張力を付与する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプリ・テンショナとして、特許文献1に開示のものがある。
【0003】
特許文献1に開示のプリ・テンショナは、ボアを形成するシリンダと、ボアにガスを供給する構造と、ボアへのガスの供給に応答してボア内を移動できるピストンとを備えている。ピストンは、安全ベルトの一部に連結された細長要素に連結されており、細長要素はシリンダの端壁の出口通路を通って外部に導出されている。また、シリンダの端壁の出口通路でのガス漏れを抑制するため、ボアの一端内には弾性ある材料で形成されたシールが配設され、細長要素はシールを通って外部に導出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−528288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されたプリ・テンショナでは、ボア内には、ガス発生器による高温高圧ガスが供給される。また、特許文献1において、シールとして用いられる弾性ある材料は、一般的に熱に弱く、また、強度も小さい傾向にある。
【0006】
特許文献1においては、ボア内に供給された高温高圧ガスが、シールに直接的に吹付けられる構成であるため、仮に、張力を上げる為に、ガス発生器の出力を上げた場合等において、シールが過度に変形し保圧性が低下する恐れがある。
【0007】
そこで、本発明は、プリテンショナ装置の保圧性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1の態様は、内部に筒状空間及び前記筒状空間の一端に連続するガス導入空間が形成され、前記ガス導入空間にガスを供給するためのガス供給口が形成されると共に、第1通過孔部を有する閉塞端部が、前記筒状空間の反対側で前記ガス導入空間を閉塞するように設けられたプリテンショナ本体と、前記ガス供給口を通じて前記ガス導入空間にガスを供給可能なガス発生装置と、前記筒状空間内を移動可能に配設されたピストンと、一端部が前記ピストンに連結されると共に、前記ガス導入空間から前記第1通過孔部を通って外部に導出された連結部材と、前記閉塞端部の内面側に設けられ、前記連結部材が通過可能な第2通過孔部を有する弾性シール部材と、前記閉塞端部との間で前記弾性シール部材を挟込む位置に設けられ、前記連結部材の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの第3通過孔部を有するガス緩衝部材とを備える。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係るプリテンショナ装置であって、前記連結部材は、束ねられた複数本のワイヤーを有し、前記第3通過孔部は、前記複数のワイヤーがそれぞれ通過可能な複数の孔が、互いに連なって或は別々な状態で形成されたものである。
【0010】
第3の態様は、第1又は第2の態様に係るプリテンショナ装置であって、前記ガス緩衝部材は、前記ガス導入空間内で前記連結部材が移動自在に挿通された管状部分と、前記管状部分の一端部より外周に張出すように形成され、前記弾性シール部材の前記ガス導入空間側に設けられる鍔状部分とを有する。
【0011】
第4の態様は、第1又は第2の態様に係るプリテンショナ装置であって、前記ガス緩衝部材は、前記弾性シール部材の前記ガス導入空間側に設けられた板部材とされている。
【0012】
第5の態様は、第4の態様に係るプリテンショナ装置であって、前記ガス導入空間内で前記連結部材が移動自在に挿通された管状部材をさらに備える。
【0013】
第6の態様は、第1〜第5のいずれか1つに記載のプリテンショナ装置であって、前記閉塞端部と前記弾性シール部材との間に、前記第1通過孔部よりも小さくかつ前記連結部材が通過可能な第4通過孔部を有する介在板が設けられている。
【0014】
第7の態様は、第1〜第6のいずれか1つの記載のプリテンショナ装置であって、前記連結部材は、束ねられた複数本のワイヤーを有し、前記閉塞端部と接触して設けられる前記閉塞端部又は前記介在板の前記第1通過孔部又は前記第4通過孔部は、前記連結部材の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさに形成されている。
【0015】
第8の態様は、乗物の乗員席に組込まれるシートベルト装置であって、乗物の乗員を拘束するためのウエビングと、前記ウエビングに取付けられたタングプレートと、前記タングプレートと連結及び解除可能なバックルと、前記連結部材の他端部が前記ウエビングの固定側端部又は前記バックルに連結された、第1〜第7のいずれか1つの態様に係るプリテンショナ装置とを備える。
【発明の効果】
【0016】
第1の態様によると、連結部材はガス緩衝部材の第3通過孔部、弾性シール部材の第2通過孔部及び閉塞端部の第1通過孔部を通って外部に引出されるため、ガス導入空間内に導入されたガスが連結部材の通過孔を通って外部に漏れることが抑制される。また、ガス緩衝部材と閉塞端部との間で弾性シール部材が挟込まれており、ガス緩衝部材には連結部材の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの第3通過孔部が形成された構成であるため、ガス導入空間内に導入されたガスが直接的に弾性シール部材に吹付けられ難くなる。このため、弾性シール部材の過度な変形が抑制され、保圧性を向上させることができる。
【0017】
第2の態様によると、第3通過孔部をなるべく小さくすることができる。これにより、弾性シール部材の過度な変形をより確実に抑制して、より保圧性を向上させることができる。
【0018】
第3の態様によると、ガス緩衝部材によって、弾性シール部材の過度な変形を抑制しつつ、ガス導入空間内に導入されたガスが、連結部材に直接吹付けられることを抑制できる。
【0019】
第4の態様によると、板部材を用いた簡易な構成によって、弾性シール部材の過度な変形を抑制できる。
【0020】
第5の態様によると、ガス導入空間内に導入されたガスが、連結部材に直接吹付けられることを抑制できる。
【0021】
第6の態様によると、ガスによって押された弾性シール部材が閉塞端部側に当接する際の力を介在板で分散して受止めることができ、弾性シール部材の過度な変形をより確実に抑制できる。
【0022】
第7の態様によると、閉塞端部と弾性シール部材との接触面積をも大きくして、弾性シール部材の過度な変形をより確実に抑制できる。
【0023】
第8の態様によると、弾性シール部材の過度な変形が抑制され,保圧性が向上したプリテンショナ装置を有するシートベルト装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】シートベルト装置が乗員席に組込まれた状態の一例を示す概略側面図である。
【図2】シートベルト装置が乗員席に組込まれた状態の他の例を示す概略側面図である。
【図3】プリテンショナ装置を示す側面図である。
【図4】プリテンショナ装置20を示す平面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】プリテンショナ装置の分解斜視図である。
【図7】図6の部分拡大図である。
【図8】プリテンショナ装置の全体動作を説明する図である。
【図9】プリテンショナ装置の全体動作を説明する図である。
【図10】ガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図11】ガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図12】ガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図13】比較例を示す図である。
【図14】比較例においてガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図15】比較例においてガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図16】比較例においてガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図17】変形例を示す図である。
【図18】他の変形例を示す図である。
【図19】さらに他の変形例を示す図である。
【図20】変形例においてガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図21】他の変形例においてガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【図22】さらに他の変形例においてガス導入空間内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施形態に係るプリテンショナ装置及びそのプリテンショナ装置を備えたシートベルト装置について説明する。
【0026】
<シートベルト装置の全体構成>
まず、シートベルト装置の全体構成について説明する。図1はシートベルト装置10が乗員席18に組込まれた状態を示す概略側面図である。
【0027】
乗員席18は、車両等の乗物に搭載されるものであり、座部18aと背部18bとを有している。そして、乗員19が背中を背部18bにもたれかけるようにして座部18aに着座できるようになっている。かかる乗員席18の一般的な例は、乗用車の運転席、助手席、後部座席等である。
【0028】
シートベルト装置10は、上記乗員席18に着座した乗員19を着座姿勢に拘束するように構成されている。
【0029】
すなわち、シートベルト装置10は、ウエビング11と、タングプレート15と、バックル16と、プリテンショナ装置20とを備えている。
【0030】
ウエビング11は、柔軟な織物等による長尺の帯状部材に形成されている。ウエビング11の一端部はアンカー12を介して乗物フロア等に固定されている。また、ウエビング11の他端側部分は、乗員19の肩部近傍に固定されたウエビングガイド13を通って、背部18bの一側部に固定されたリトラクタ装置14に連結されている。リトラクタ装置14は、ウエビング11の他端側部分を巻取及び引出可能に巻回収容可能に構成されている。
【0031】
タングプレート15とバックル16とは、バックル16側に組込まれたロック機構がタングプレート15に係脱可能に係合することで、相互に連結及び解除可能に構成されている。通常、タングプレート15をバックル16に差込むことで、タングプレート15とバックル16とが連結状態にロックされ、バックル16に設けられたリリースボタンを押すことで、そのロックが解除される。このようなタングプレート15とバックル16との構成自体は、周知構造を含む種々の構成によって実現される。
【0032】
上記タングプレート15には、ウエビング11が挿通自在な挿通孔15hが形成されており、ウエビング11を当該挿通孔15hに挿通させることで、タングプレート15がウエビング11に対して移動可能に取付けられる。また、バックル16は、プリテンショナ装置20を介して乗物フロア等に連結固定されている。
【0033】
そして、乗員席18に乗員19が着座した状態で、タングプレート15をバックル16に連結するように、ウエビング11をリトラクタ装置14から引出すことで、当該ウエビング11を、乗員19の一方側肩部から胸部前方を斜めに通って腰部一側に至る経路、及び、腰部一側から腰部前方を通って腰部他側に至る経路に沿って配設できるようになっている。このように配設されたウエビング11によって、乗員19が着座状態に拘束されることになる。また、タングプレート15とバックル16との連結状態を解除すると、リトラクタ装置14によってウエビング11が巻取られ、乗員が乗員席18に対して円滑に座ったり立上がったりできるようになっている。
【0034】
プリテンショナ装置20は、乗物フロア等に固定され、上記バックル16に連結されている。このプリテンショナ装置20は、車両の急減速時等には、バックル16を引込むことでウエビング11を引張り、もって、ウエビング11の弛みを除去し、乗員19を効果的に拘束するように構成されている。
【0035】
もっとも、図2に示す変形例のように、バックル16がアンカー12Bを介して乗物フロア等に固定され、ウエビング11の固定端部である一端部が、乗物フロア等に固定されたプリテンショナ装置20Bを介して乗物フロア等に固定されていてもよい。
【0036】
この場合でも、プリテンショナ装置20Bが、車両の急減速時等に、ウエビング11の一端部を引込むことでウエビング11を引張り、もって、ウエビング11の弛みを除去し、乗員19を効果的に拘束することができる。この場合のプリテンショナ装置20Bとしては、プリテンショナ装置20と同様構成のものを用いることができる。
【0037】
<プリテンショナ装置の構成>
プリテンショナ装置20について説明する。図3はプリテンショナ装置20を示す側面図であり、図4はプリテンショナ装置20を示す平面図であり、図5は図3のV−V線断面図であり、図6はプリテンショナ装置20の分解斜視図であり、図7は図6の部分拡大図である。
【0038】
このプリテンショナ装置20は、プリテンショナ本体22と、ピストン50と、連結部材60と、弾性シール部材70とガス緩衝部材80と、ガス発生装置90とを備えている。
【0039】
プリテンショナ本体22は、シリンダ部材24と、ガス供給用ハウジング部材30と、蓋部材40とを備えており、全体として長尺棒状形状の外観形状を有している。
【0040】
シリンダ部材24は、金属等によって筒状部材に形成されている。シリンダ部材24の内部には、その長手方向に沿って円筒状の筒状空間26が形成されている。シリンダ部材24の一端部は外方に開口しており、また、シリンダ部材24の一端部の外周には、ガス供給用ハウジング部材30との連結固定用のネジ溝24aが形成されている。また、シリンダ部材24の他端部は先端側に向けて若干狭まりつつ外方に開口している。
【0041】
ガス供給用ハウジング部材30は、金属等によって形成された部材であり、ハウジング本体部32とガス供給部38とを有している。
【0042】
ハウジング本体部32は、シリンダ部材24と略同径の筒状に形成されており、その内部にはその長手方向に沿って円筒状のガス導入空間33が形成されている。ここでは、ガス導入空間33は、上記筒状空間26よりも(僅かに)小さい内径に形成されており、後述するガス発生装置90からのガスが本ガス導入空間33内に導入される。なお、ガス導入空間33は、必ずしも筒状である必要はない。
【0043】
また、ガス導入空間33の一端部、即ち、ハウジング本体部32の一端部内には円筒状の封止空間35が形成されている。封止空間35は、ガス導入空間33内において筒状空間26の反対側部分に設けられている。封止空間35のガス導入空間33側部分の内周部には、内側に向けて環状に突出する環状突出部34に形成されている。そして、封止空間35内に配設された弾性シール部材70によって、ガス導入空間からのガス漏れが抑制される。
【0044】
また、ハウジング本体部32の他端内周部には上記ネジ溝24aと螺合可能なネジ溝32aが形成されている。そして、シリンダ部材24のネジ溝24aとハウジング本体部32のネジ溝32aとの螺合によって、シリンダ部材24とガス供給用ハウジング部材30とが直線状に合体されることによって、筒状空間26の一端部に直線状に連続してガス導入空間33が配設されることになる。
【0045】
また、ガス供給部38は、ハウジング本体部32の一側部から突出するように形成されている。ガス供給部38には、ガス導入空間33内に連なるガス供給口39が形成されており、ガス発生装置90が本ガス供給部38に組込まれる。そして、当該ガス発生装置90によって発生されたガスがガス供給口39からガス導入空間33に供給されるようになっている。
【0046】
蓋部材40は、金属板をプレス加工等することによって形成された部材であり、蓋本体部41と、取付支持部44とを有している。
【0047】
蓋本体部41は、ハウジング本体部32の一端側開口を閉塞できる程度の広がりを有する板状、ここでは、長方形板状に形成されている。そして、ネジSを用いた固定構造等によって、ハウジング本体部32の一端面に固定されている。この固定状態で、蓋本体部41は、筒状空間26の反対側でガス導入空間33を閉塞する閉塞端部として用いられる。また、蓋本体部41には、第1通過孔部42が形成されている。第1通過孔部42は、連結部材60が通過可能な孔形状に形成されている。第1通過孔部42は、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの穴形状に形成されていることが好ましい。換言すると、プリテンショナ装置20としての動作上特に支障なく連結部材60が第1通過孔部42を通過できる範囲で、連結部材60の外周と第1通過孔部42との間の隙間がなるべく小さくなるように形成されていることが好ましい。ここでは、後述するように、連結部材60として複数本(2本)のワイヤー62を用いることを想定しているため、第1通過孔部42は、当該複数本(2本)のワイヤー62がそれぞれ通過可能な複数の孔42aが別々な状態で(より具体的には、互いに独立する孔として近接状態で)形成された構成とされている(図7参照)。第1通過孔部42は、ワイヤー62が通過可能な複数の孔が互いに連なった形状、つまり、楕円の中央部がくびれた形状に形成されていてもよい。連結部材60が1本のワイヤー62である場合には、第1通過孔部42を、当該ワイヤー62に合わせてなるべく小さな孔形状とするとよい。もっとも、第1通過孔部42が、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの穴形状に形成されていることは必須ではなく、連結部材60よりも十分に大きな穴形状に形成されていてもよい。
【0048】
取付支持部44は、蓋本体部41に対して略直交姿勢で外部に延出している。取付支持部44には、円盤状のガイド体46が取付けられている。第1通過孔部42を通って外部に導出された連結部材60が、本ガイド体46で曲がるようにガイドされる。また、取付支持部44には、連結部材60を挿通可能なガイド孔47hを有するストッパ部材47が取付けられる。前記ガイド体46で曲げられた連結部材60は、さらに本ストッパ部材47のガイド孔47hを通って外部に引出される。このストッパ部材47は、連結部材60がプリテンショナ本体22内に引込まれる際に、連結部材60の端部の連結環状部63と干渉することで、必要長以上の連結部材60の引込動作を抑制する役割を有している。
【0049】
なお、蓋部材40は、上記閉塞端部として用いられる部分のみを有する構成であってもよい。また、本実施形態では、プリテンショナ本体22が、シリンダ部材24と、ガス供給用ハウジング部材30と、蓋部材40とに分割された構成で説明したが、これらの一部又は全体が1つの部材として構成され、或は、さらに多数の部分に分割された構成であってもよい。
【0050】
ガス発生装置90は、点火装置及びガス発生剤等を有しており、上記ガス供給部38内に配設された状態で、キャップ92等によって固定されている。そして、乗物自体に設置された衝撃検知部等からの点火命令信号等を受けて前記点火装置によりガス発生剤を点火燃焼させ、これによりガスを発生可能に構成されている。このガス発生装置90により発生されたガスは、ガス供給口39からガス導入空間33内に供給される。
【0051】
ピストン50は、上記筒状空間26内を移動可能に配設され、ガス導入空間33内にガスが供給されるとそのガス圧によって、筒状空間の一端部から他端部に向けて押されて移動するように構成されている。
【0052】
より具体的には、ピストン50は、ピストン本体部52と、2つの弾性リング56と、ストッパとしての球体57とを有している(図5,図6,図10参照)。
【0053】
ピストン本体部52は、金属等によって形成された部材であり、内部に連結部材60を配設可能な筒部材に形成されている。ピストン本体部52の一端部には、鍔状部53が形成されている。この鍔状部53の外径は、その外周と筒状空間26の内周面との隙を、ピストン50の移動に支障ない範囲でできるだけ小さくできる大きさに設定されている。また、ピストン本体部52の長手方向中間部には、中間太径部54が形成されている。中間太径部54は、その外周と筒状空間26の内周面との隙を、ピストン50の移動に支障のない範囲でできるだけ小さくできる大きさに設定されている。また、鍔状部53と中間太径部54との間の部分は、中間太径部54から鍔状部に向けて徐々に細径となるテーパ状周面55に形成されている。そして、1つの弾性リング56が、テーパ状周面55のうち鍔状部53側の最も細くなった部分に外嵌めされている。また、もう一つの弾性リング56が中間太径部54に形成された環状溝54gに外嵌めされている。これらの弾性リング56は、弾性変形可能な弾性材料によって形成されており、ピストン本体部52の外周面と筒状空間26の内周面との間のガス漏れを抑制している。また、複数の球体57が、テーパ状周面55回りに環状に配設されている。そして、ピストン50が筒状空間26内に配設された状態で、導入されたガス圧によってピストン50が筒状空間26内を他端側(図5の左方)に移動する際には、球体57はテーパ状周面55周りで最も凹んだ場所(図5では右方の場所)に位置し、ピストン50の移動を妨げないようになっている。一方、ピストン50が筒状空間26内を一端側(図5の右方)に移動する際には、球体57が筒状空間26の内周面に当接することによってテーパ状周面55周りで比較的凹みの小さい場所(図5では左方の場所)に相対移動する。これにより、球体57が筒状空間26の内周面とテーパ状周面55との間に挟込まれ、ピストン50の移動を抑制するようになっている。つまり、球体57は、ピストン50がプリテンショナ本体22の他端側へのみ移動すること許容する方向性ストッパとして機能する。
【0054】
連結部材60は、曲げ変形可能な長尺部材である。ここでは、連結部材60は、2本の金属製のワイヤー62を束ねることによって形成されている。ここでは、加工前の状態では1本であるワイヤーを折返すことによって、加工後には2本のワイヤー62が束ねられた構成となるようにしている。もっとも、連結部材60は、加工後においても1本のワイヤーであってもよいし、或は、より多数のワイヤーが束ねられた構成であってもよい。もっとも、連結部材60が複数のワイヤー62を束ねた構成とされることによって、しなやかさと強度とを両立させ易い。この連結部材60の一端部は、上記ピストン本体部52内に挿通されてカシメ固定等されることによって、ピストン50に連結固定されている。また、連結部材60は、ピストン50のガス導入空間33側に延出しており、ガス導入空間33(封止空間35を含む)及び第1通過孔部42を通ってプリテンショナ本体22の一端部外に導出され、ガイド体46で曲げられてウエビング11又はバックル16側へ方向転換され、さらにガイド孔47hを通って斜め上方に引出される。また、連結部材60の他端部では、ワイヤー62の折返し部分が連結環状部63をなしている。連結環状部63の内周部には、嵌め輪64が設けられており、連結環状部63が嵌め輪64の外周溝に嵌め込まれた状態で、連結環状部63の付け根部分に金属製のスリーブ部材65がカシメ固定されている。これにより、連結環状部63の環状形状がより確実に維持されるようになっている。
【0055】
弾性シール部材70は、上記閉塞端部である蓋本体部41の内面側に設けられている。ここでは、弾性シール部材70が、ガス導入空間33の封止空間35内に配設されることで、蓋本体部41の内面側に設けられている。弾性シール部材70は、周辺のガス供給用ハウジング部材30、蓋部材40等より弾性変形容易な弾性材料によって形成されている。かかる弾性材料としては、例えば、EPDM(Ethylene Propylene Diene Monomer)、シリコンゴム等のエラストマーを用いることができる。また、弾性シール部材70としては、例えば、EPDM硬度80HS(ショア硬さ)のものを用いることができる。また、弾性シール部材70は、厚みが均一な板状に形成されている。ここでは、弾性シール部材70は、封止空間35の形状及び大きさに合わせた円板状に形成されている。封止空間をより確実に封止するという点では、弾性シール部材70が、封止空間35全体を塞ぐ形状及び大きさに形成されていることが好ましいが、必ずしも必須ではない。また、封止空間が楕円孔状或は角穴状等である場合には、弾性シール部材70は、当該形状に合わせて楕円板状或は角板状に形成されていてもよい。また、弾性シール部材70には、連結部材60が通可能な第2通過孔部72が形成されている。第2通過孔部72も、上記第1通過孔部42と同様に、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさに形成されている。つまり、本実施形態では、第2通過孔部72は、複数本(2本)のワイヤー62がそれぞれ通過可能な複数の孔72aが別々な状態で(より具体的には、互いに独立する孔として近接状態で)形成された構成とされている(図7参照)。連結部材60が1本のワイヤー62である場合には、第2通過孔部72を、当該ワイヤー62に合わせてなるべく小さな孔形状とするとよい。この第2通過孔部72は、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの穴形状に形成されていることは好ましいが、必須ではないことは、上記第1通過孔部42の場合と同様である。第1通過孔部42と第2通過孔部72とは、同じ形状、大きさにしてもよい。
【0056】
なお、弾性シール部材70の外周には、少なくとも1つ(ここでは2つ)の凸部70aが形成されており、この凸部70aが封止空間35の外周に形成された凹溝35a(図7参照)に嵌り込むことで、封止空間35内での回転規制が図られている。
【0057】
ガス緩衝部材80は、上記蓋本体部41との間で弾性シール部材70を挟込む位置に設けられている。ここでは、ガス緩衝部材80は、管状部分82と、鍔状部分84とを有している(特に,図7参照)。このように全体がある程度の長さを有する管状のガス緩衝部材80は、カラーと呼ばれることもある。
【0058】
管状部分82は、ガス導入空間33内を通る連結部材60を移動可能に覆う筒形状に形成されている。より具体的には、管状部分82は、ガス導入空間33の封止空間35からガス供給用ハウジング部材30に連結されたシリンダ部材24の一端部に達する程度の長さ寸法を有する管形状に形成されている。
【0059】
鍔状部分84は、管状部分82の一端部から外周全体に張出す形状に形成されている。鍔状部分84は、封止空間35の内周部に合わせた円環状に形成されている。そして、鍔状部分84が、管状部分82の外周囲で、弾性シール部材70の外周部ほぼ全体を覆うようになっている。
【0060】
また、ガス緩衝部材80には、管状部分82及び鍔状部分84を貫通する第3通過孔部86が形成されている。第3通過孔部86は、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさに形成されている。換言すると、プリテンショナ装置20としての動作上問題なく連結部材60が第3通過孔部86を通過できる範囲で、連結部材60の外周と第3通過孔部86との間の隙間がなるべく小さくなるように、第3通過孔部86が形成されていることが好ましい。ここでは、第3通過孔部86は、複数本(2本)のワイヤー62がそれぞれ通過可能な複数(2つの)の孔86aが互いに連なって形成された形状、つまり、楕円の長手方向中央部がくびれた形状に形成されている。もっとも、上記第1通過孔部42、第2通過孔部72と同様に、複数のワイヤー62がそれぞれ通過可能な複数の孔が別々な状態で(より具体的には、互いに独立する孔として近接状態で)形成されていてもよい。連結部材60が1本のワイヤー62である場合には、第3通過孔部86を、当該ワイヤー62に合わせてなるべく小さな孔形状とするとよい。また、ガス緩衝部材80に形成された孔のうちの少なくとも一部が、上記孔形状を有する第3通過孔部として形成されていてもよい。この第3通過孔部86も上記第2通過孔部72と同じ形状、大きさにしてもよい。
【0061】
そして、上記鍔状部分84を、封止空間35内で弾性シール部材70のガス導入空間33を向く面に面接触させると共に、管状部分82を、環状突出部34内を通ってガス導入空間33の他端側(つまり、シリンダ部材24側)に向けた状態で、ガス緩衝部材80がガス導入空間33内に配設される。
【0062】
そして、ガス導入空間33内においては、連結部材60は、ガス緩衝部材80の第3通過孔部86及び弾性シール部材70の第2通過孔部72を通るように案内される。特に、ガス導入空間33内において、ガス供給口39が形成された部分近傍では、連結部材60は、ガス緩衝部材80の管状部分82によって覆われている。
【0063】
このようなガス緩衝部材80は、弾性シール部材70よりも、耐熱性に優れかつ高い剛性の材料によって形成されている。より具体的には、ガス緩衝部材80は、鉄等の金属、セラミックス等によって形成されるとよい。
【0064】
このように構成されたプリテンショナ装置20の動作について説明する。
【0065】
まず、プリテンショナ装置20の全体動作について説明する。初期状態では、図8に示すように、ピストン50は筒状空間26内のガス導入空間33近傍に配設されている。この状態では、ピストン50は、筒状空間26とガス導入空間33との間の段部に当接し、また、球体57によってガス導入空間33側への移動が抑制されるため、連結部材60に引張り力を加えても、連結部材60はプリテンショナ装置20からは引出されない。
【0066】
この状態で、図9に示すように、ガス発生装置90がガスを発生させると、高温高圧ガスがガス供給口39を通じてガス導入空間33内に供給される。すると、このガス圧によってピストン50が筒状空間26内の他端部に向けて押される。ピストン50が筒状空間26内を他端部に向けて移動するのに伴い、連結部材60がプリテンショナ本体22内に引込まれる。これにより、ウエビング11又はバックル16がプリテンショナ装置20側に引張られ、ウエビング11の弛みが除去され、乗員19が効果的に拘束されるようになる。
【0067】
図10〜図12は、ガス導入空間33内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。すなわち、ガス導入前の図10に示す状態から、ガスが導入されると、図11さらに図12に示す状態となる。図11及び図12では、ガス供給口39からガス導入空間33内に導入されたガスは、ガス緩衝部材80の管状部分82部分近傍に流れ込み、ガス圧によってピストン50の一端部を押す。これにより、ピストン50が上記のように移動する。
【0068】
ガスの一部は、ピストン50の反対側にも流れ込むが、このガスは、ガス緩衝部材80の鍔状部分84によって受止められる。また、ガスの一部は、管状部分82の先端部と連結部材60との隙間にも流れ込もうとする。しかしながら、第3通過孔部86は、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさに形成されているため、第3通過孔部86と連結部材60との隙間は小さい。従って、ガスは、管状部分82の先端部と連結部材60との隙間には流れ込み難い。このため、高温高圧ガスによる弾性シール部材70への影響が緩和される。つまり、ガスの熱的影響は、ガス緩衝部材80を介して緩和して弾性シール部材70に伝達される。また、ガスの瞬時的な流入による押圧力は、一旦ガス緩衝部材80で受止められ、ガス緩衝部材80と弾性シール部材70との面接触領域に分散して弾性シール部材70に伝達され、局所的にガス圧が加わることが抑制される。このため、弾性シール部材70が過度に変形し難くなる。
【0069】
なお、連結部材60は、第1通過孔部42、第2通過孔部72、第3通過孔部86を移動するため、それらの間は完全には封止されていない。このため、それらの隙間を通ったガス漏れは皆無ではない。しかしながら、ガス圧によってガス緩衝部材80が押されると、弾性シール部材70は、ガス緩衝部材80と蓋本体部41との間で圧縮され、封止空間35内で面状に広がる。これにより、弾性シール部材70と封止空間35の内周面間がより確実にシールされる。また、第2通過孔部72が小さくなり、第2通過孔部72の内周面が連結部材60に押付けられる方向に変形する。このため、ピストン50の移動動作に支障無い程度には、十分にガスは封止されている。なお、この際、連結部材60が第2通過孔72を通る際、連結部材60と第2通過孔72の内周面とが擦れ合っても、第2通過孔72の周縁部がガス緩衝部材80と蓋本体部41との間に挟込まれているため、弾性シール部材70の過度な変形等は抑制されている。
【0070】
なお、比較例として、図13に示すように、ガス緩衝部材80を、次に説明する管状部材180に変更した場合の動作について説明する。
【0071】
この管状部材180は、管状部分182と鍔状部分184とを有している。
【0072】
管状部分182は、ガス導入空間33内を通る連結部材60を移動可能に覆う筒形状に形成されている。換言すると、連結部材60は、ガス導入空間33内で管状部分182内に移動可能に挿通される。
【0073】
鍔状部分184は、管状部分182の一端部から外周全体に張出す形状に形成されている。鍔状部分184は、封止空間35の内周部に合わせた円環状に形成さている。そして、鍔状部分184が、管状部分82の外周囲で、弾性シール部材70の外周部ほぼ全体を覆うようになっている。
【0074】
この管状部材180には、上記第3通過孔部86に代えて、通過孔186が形成されている。通過孔186は、連結部材60の断面の大きさ、形状等に拘らない比較的大きな通過孔186であり、ここでは、円孔状に形成されている。
【0075】
また、蓋本体部41に対応する蓋本体部141には、第1通過孔部42に代えて、長円状の第1通過孔部142が形成されている。その他の構成は、上記第1実施形態の場合と同様である。
【0076】
図14〜図16は、比較例の場合において、ガス導入空間33内に導入されたガスの流路を概念的に示す図である。
【0077】
すなわち、ガス導入前の図14に示す状態から、ガスが導入されると、図15さらに図16に示す状態となる。図15及び図16に示すように、ガス供給口39からガス導入空間33内に導入されたガスの一部は、管状部材180の先端側の開口に流れ込み、通過孔186と連結部材60との隙間に流れ込む。通過孔186内に流れ込んだガスは、さらに、弾性シール部材70に流れ込んでしまう。これにより、弾性シール部材70が高温高圧ガスにより直接的に曝されることになり、弾性シール部材70における連結部材60周囲を中心とする限定的な部分が、直接的に熱的影響を受けながらガス圧による力を受けることになる。
【0078】
以上のように構成されたプリテンショナ装置20及びシートベルト装置10によると、連結部材60はガス緩衝部材80の第3通過孔部86、弾性シール部材70の第2通過孔部72及び蓋本体部41の第1通過孔部42を通って、プリテンショナ本体22の外部に引出されるため、ガス導入空間33内に導入されたガスが連結部材60用の各通過孔を通って外部に漏れることが抑制される。特に、弾性シール部材70の第2通過孔部72によってガスの漏れが抑制される。また、ガス緩衝部材80と蓋本体部41との間で弾性シール部材70が挟込まれており、ガス緩衝部材80には連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの第3通過孔部86が形成された構成であるため、弾性シール部材70はガス導入空間33側でガス緩衝部材80によって可及的に全体的に覆われて保護された構成となっている。このため、ガス導入空間33に導入されたガスが直接的に弾性シール部材70に吹付けられ難くなる。これにより、弾性シール部材70の過度な変形が抑制される。また、これにより、弾性シール部材70として十分に弾性変形容易な材質を用いることができ、シール性(保圧性)の向上を図ることができる。
【0079】
しかも、第3通過孔部86は、それぞれワイヤー62を挿通可能な複数の孔86aを、互いに連ねて或は別々な状態で形成したものであるため、ワイヤー62を通過可能な範囲で、第3通過孔部86をなるべく小さくすることができる。これにより、弾性シール部材70を、より高温高圧ガスに曝され難くすることができ、弾性シール部材70の過度な変形をより確実に抑制できる。
【0080】
また、ガス緩衝部材80は、ガス導入空間33内で連結部材60を覆う管状部分82を有しているため、ガス導入空間33内に供給されたガスが直接的に連結部材60に吹付けられ難くなる。これにより、比較的少ない部品点数で、弾性シール部材70の過度な変形の抑制、及び、連結部材60へのガスの直接的な吹付け抑制を図ることができる。
【0081】
また、第1通過孔部42も、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさに形成されているため、蓋本体部41と弾性シール部材70とを比較的大きな面積で面接触させることができる。これにより、ガス圧によって弾性シール部材70が押された状態(つまり、弾性シール部材70が蓋本体部41とガス緩衝部材80との間で挟込まれた状態)で、蓋本体部41が弾性シール部材70を受ける力を分散させて、局所的な力の集中を抑制できる。この点からも、弾性シール部材70の過度な変形の抑制を抑制できる。
【0082】
特に、第1通過孔部42を、それぞれワイヤー62を挿通可能な複数の孔42aを、互いに連ねて或は別々な状態で形成した構成とすることによって、上記効果はより顕著となる。もっとも、第1通過孔部42が当該形状に形成されていることは必須ではなく、単なる長孔であってもよい。
【0083】
なお、第3通過孔部86を形成したガス緩衝部材80を用いること、及び、第1通過孔部42を形成した蓋本体部41を用いることは必須ではない。
【0084】
例えば、図17に示す変形例のように、上記実施形態において、ガス緩衝部材80の代りに、板状のガス緩衝部材280及び上記管状部材180を用いると共に、蓋本体部41の代りに、介在板241及び蓋本体部141を用いた構成としてもよい。
【0085】
すなわち、上記ガス緩衝部材280は、厚みが均一な板状に形成されている。ここでは、ガス緩衝部材280は、封止空間35の形状及び大きさに合わせた円板状に形成されている。弾性シール部材70をより確実に覆いかつなるべく大きな面積で面接触するためには、ガス緩衝部材280は、弾性シール部材70と同じ形状、大きさに形成されていることが好ましい。また、封止空間が楕円孔状或は角穴状等である場合には、ガス緩衝部材280は、当該形状に合わせて楕円板状或は角板状に形成されていてもよい。また、ガス緩衝部材280には、上記第3通過孔部86と同様に、連結部材60の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの第3通過孔部286が形成されている。本実施形態では、第3通過孔部286は、複数本(2本)のワイヤー62がそれぞれ通過可能な複数の孔286aが別々な状態で(より具体的には、互いに独立する孔として近接状態で)形成された構成とされている。この第3通過孔部286は、上記第3通過孔部86と同様に、ワイヤー62が通過可能な複数の孔が互いに連なった形状、つまり、楕円の中央部がくびれた形状に形成されていてもよい。また、連結部材60が1本のワイヤー62である場合には、第3通過孔部286を、当該ワイヤー62に合わせてなるべく小さな孔形状とするとよい。このガス緩衝部材280は、弾性シール部材70よりも、耐熱性に優れかつ高い剛性の材料によって形成されている。より具体的には、ガス緩衝部材280は、鉄等の金属、セラミックス等によって形成されるとよい。
【0086】
管状部材180は、上記比較例で説明したものと同様構成であり、また、蓋本体部141は、上記比較例で説明したものと同様構成である。
【0087】
介在板241は、閉塞端部としての蓋本体部141と弾性シール部材70との間に設けられた板部材である。介在板241は、上記ガス緩衝部材280と同構成を有しており、上記第3通過孔部286と同じ構成の第4通過孔部242が形成されている。この第4通過孔部242は、蓋本体部141に形成された長円状の第1通過孔部142よりも小さい。
【0088】
そして、封止空間35内で、弾性シール部材70がガス緩衝部材280と介在板241との間に挟込まれ、また、その積層体が管状部材180の鍔状部分184と蓋本体部141との間で挟込まれている。
【0089】
また、図18に示す変形例のように、上記実施形態において、蓋本体部41の代りに、介在板241及び蓋本体部141を用い、ガス緩衝部材80はそのままとした構成としてもよい。
【0090】
さらに、図19に示す変形例のように、上記実施形態において、ガス緩衝部材80の代りに、板状のガス緩衝部材280及び上記管状部材180を用い、蓋本体部41はそのままとした構成としてもよい。
【0091】
図17に示す変形例の場合、図20に示すように、ガス緩衝部材280によって、弾性シール部材70が高温高圧ガスに直接的に曝されることを抑制できる。このため、上記実施形態と同様に、弾性シール部材70の過度な変形を抑制して、保圧性の向上を図ることができる。なお、この点では、図19に示す変形例の場合でも、図22に示すように、同様に、ガス緩衝部材280によって、弾性シール部材70の過度な変形を抑制できる。
【0092】
つまり、弾性シール部材70に対してガス導入空間33側に設けられるガス緩衝部材は、上記実施形態のように管状の全体形状を有していても、上記変形例のように板状であってもよい。
【0093】
また、ガスによって押された弾性シール部材70が蓋本体部141に当接する際の力を介在板241で分散して受止めることができ、弾性シール部材70の過度な変形をより確実に抑制できる。なお、この点では、図18に示す変形例の場合で、図21に示すように、同様に、介在板241によって弾性シール部材70の過度な変形をより確実に抑制できる。
【0094】
つまり、弾性シール部材70に対して閉塞端部側でその過度な変形を抑制する構成は、閉塞端部自体に形成した構成であってもよりし、別途設けた介在板に形成した構成であってもよい。
【0095】
以上のようにこの発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0096】
10 シートベルト装置
11 ウエビング
16 バックル
20 プリテンショナ装置
22 プリテンショナ本体
26 筒状空間
33 ガス導入空間
35 封止空間
39 ガス供給口
41 蓋本体部(閉塞端部)
42 第1通過孔部
50 ピストン
60 連結部材
62 ワイヤー
70 弾性シール部材
72 第2通過孔部
72a 孔
80 ガス緩衝部材
82 管状部分
84 鍔状部分
86 第3通過孔部
86a 孔
90 ガス発生装置
141 蓋本体部
142 第1通過孔部
180 管状部材
186 通過孔
241 介在板
242 第4通過孔部
280 ガス緩衝部材
286 第3通過孔部
286a 孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に筒状空間及び前記筒状空間の一端に連続するガス導入空間が形成され、前記ガス導入空間にガスを供給するためのガス供給口が形成されると共に、第1通過孔部を有する閉塞端部が、前記筒状空間の反対側で前記ガス導入空間を閉塞するように設けられたプリテンショナ本体と、
前記ガス供給口を通じて前記ガス導入空間にガスを供給可能なガス発生装置と、
前記筒状空間内を移動可能に配設されたピストンと、
一端部が前記ピストンに連結されると共に、前記ガス導入空間から前記第1通過孔部を通って外部に導出された連結部材と、
前記閉塞端部の内面側に設けられ、前記連結部材が通過可能な第2通過孔部を有する弾性シール部材と、
前記閉塞端部との間で前記弾性シール部材を挟込む位置に設けられ、前記連結部材の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさの第3通過孔部を有するガス緩衝部材と、
を備えるプリテンショナ装置。
【請求項2】
請求項1記載のプリテンショナ装置であって、
前記連結部材は、束ねられた複数本のワイヤーを有し、
前記第3通過孔部は、前記複数のワイヤーがそれぞれ通過可能な複数の孔が、互いに連なって或は別々な状態で形成されたものである、プリテンショナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のプリテンショナ装置であって、
前記ガス緩衝部材は、
前記ガス導入空間内で前記連結部材が移動自在に挿通された管状部分と、前記管状部分の一端部より外周に張出すように形成され、前記弾性シール部材の前記ガス導入空間側に設けられる鍔状部分とを有する、プリテンショナ装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2記載のプリテンショナ装置であって、
前記ガス緩衝部材は、前記弾性シール部材の前記ガス導入空間側に設けられた板部材である、プリテンショナ装置。
【請求項5】
請求項4記載のプリテンショナ装置であって、
前記ガス導入空間内で前記連結部材が移動自在に挿通された管状部材をさらに備える、プリテンショナ装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか1つに記載のプリテンショナ装置であって、
前記閉塞端部と前記弾性シール部材との間に、前記第1通過孔部よりも小さくかつ前記連結部材が通過可能な第4通過孔部を有する介在板が設けられた、プリテンショナ装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1つに記載のプリテンショナ装置であって、
前記連結部材は、束ねられた複数本のワイヤーを有し、
前記閉塞端部と接触して設けられる前記閉塞端部又は前記介在板の前記第1通過孔部又は前記第4通過孔部は、前記連結部材の断面の形状及び大きさに応じた形状及び大きさに形成されている、プリテンショナ装置。
【請求項8】
乗物の乗員席に組込まれるシートベルト装置であって、
乗物の乗員を拘束するためのウエビングと、
前記ウエビングに取付けられたタングプレートと、
前記タングプレートと連結及び解除可能なバックルと、
前記連結部材の他端部が前記ウエビングの固定側端部又は前記バックルに連結された、請求項1〜請求項7のいずれか1つに記載のプリテンショナ装置と、
を備えるシートベルト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2012−158259(P2012−158259A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19701(P2011−19701)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000117135)芦森工業株式会社 (447)
【Fターム(参考)】