説明

プリテンショナ

【課題】高精度の組み付けや慎重な取り扱いをしなくてもピストンと引張手段との間の封止性能を確保並びに向上できるプリテンショナを得る。
【解決手段】本プリテンショナ10では、ピストン14のピース30側の端部で開口した嵌挿孔116にシール部材110の嵌挿部114が嵌挿されており、嵌挿孔116の内周部と嵌挿部114の外周部とが接することで貫通孔26の内周部とワイヤ28の外周部との間を通過してピストン14のピース30側へガスが抜けることを防止又は抑制している。このため、ピストン14からシール部材110が離間しても、嵌挿部114が嵌挿孔116から抜け切るまでは封止性能が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両急減速状態等に車両のシートベルト装置を構成するウエビングベルトの張力を増加させるプリテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されたプリテンショナでは、シリンダの内側に設けられたピストンの側方にはワイヤエンドが設けられており、このワイヤエンドにワイヤの一端が係止されている。このワイヤの他端側はピストンに形成された貫通孔を通過してピストンのワイヤエンドとは反対側に抜け、更に、ハウジングの外側へ伸びてシートベルトのバックルに係止されている。
【0003】
ガスジェネレータが作動することでシリンダにガスが供給されると、このガスの圧力でシリンダ内を摺動するピストンがワイヤエンドを押してピストンの摺動方向にワイヤエンドを移動させる。これにより、ワイヤが引っ張られてバックルが引っ張られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−62600の公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、この特許文献1に開示された構成では、ピストンを押圧するガスはピストンの貫通孔とこの貫通孔を通過しているワイヤとの間を通ってワイヤエンドの側へ抜け出ようとする。このようにワイヤエンドの側へ抜け出ようとするガスは、シリンダの軸方向にピストンとワイヤエンドが接することで封止されるが、例えば、僅かでもピストンからワイヤエンドが離間するように動いてしまわないように高精度の組み付けや、慎重な取り扱いが必要であった。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、高精度の組み付けや慎重な取り扱いをしなくてもピストンと引張手段との間の封止性能を確保並びに向上できるプリテンショナを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の本発明に係るプリテンショナは、作動することでガスを発生させるガス発生手段と、少なくとも一端が開口し、前記ガス発生手段にて発生した前記ガスが一端側から内側に供給されるシリンダと、シートベルト装置を構成する所定の部材に先端側が連結されると共に、基端側が前記シリンダの一端側から前記シリンダの内側に入り込み、基端側へ引っ張られることにより前記所定の部材を介して前記シートベルト装置を構成するウエビングベルトの張力を増加させる連結手段と、前記シリンダの内側で摺動可能に前記シリンダに収容されて前記シリンダに供給されたガスの圧力で前記シリンダの他端側へ摺動すると共に、前記シリンダの軸方向に沿って貫通する貫通孔が形成されて当該貫通孔を前記連結手段が通過するピストンと、前記ピストンよりも前記シリンダの他端側に配置されると共に前記ピストンを貫通した前記連結手段の基端側が一体的に連結され、前記ガスの圧力で前記シリンダの他端側へ摺動する前記ピストンに押圧されて前記シリンダの他端側へ移動して前記連結手段を引っ張る引張手段と、前記ピストンの前記引張手段側で前記引張手段又は前記連結手段に対して一体的に設けられて前記連結手段の内側を通過すると共に、前記ピストンの前記引張手段側から前記ピストンに嵌め込まれ、前記ピストンに嵌め込まれた状態では前記シリンダの径方向に前記ピストンと対向する面が前記ピストンに接し、前記ピストンと前記連結手段との間を前記ガスが通過することを規制又は抑制する封止手段と、を備えている。
【0008】
請求項1に記載の本発明に係るプリテンショナでは、ガス発生手段が作動してガス発生手段においてガスが発生すると、このガスがシリンダの一端側からシリンダの内部に供給され、このガスの圧力でシリンダ内のピストンがシリンダの他端側へ摺動する。ピストンがシリンダの他端側へ摺動すると、ピストンが引張手段を直接又は間接的に押圧してピストンと共に引張手段がシリンダの他端側へ移動する。
【0009】
この引張手段には連結手段の基端側が一体的に連結され、更に、この連結手段は封止手段及びピストンを貫通し、その先端側にはシートベルト装置を構成する所定の部材に連結されている。このため、連結手段が引っ張られると、連結手段が連結されたシートベルト装置を構成する所定の部材を介してシートベルト装置を構成するウエビングベルトが引っ張られ、ウエビングベルトの張力が増加する。このようにウエビングベルトが引っ張られることでウエビングベルトを装着している乗員の身体がウエビングベルトにより強く拘束される。
【0010】
ところで、ガス発生手段にて発生したガスはピストンをシリンダの他端側へ押圧するが、ピストンに形成された貫通孔を連結手段が通過しているため、ピストンと連結手段との間をガスが通過しようとする。しかしながら、ピストンの引張手段側からは封止手段が嵌め込まれており、封止手段におけるシリンダの径方向側の面がピストンに接していることでピストンと連結手段との間を通過してピストンや封止手段よりもシリンダの他端側へガスが抜けることを防止又は抑制する。
【0011】
しかも、封止手段はそのシリンダの径方向側の面がピストンに接していることでガスの通過を防止又は抑制する構成であるため、ピストンに対して封止手段がシリンダの他端側へ移動しても、シリンダの径方向に沿った封止手段とピストンとの接触が解消されるまではガスの通過を防止又は抑制する性能、すなわち、封止性能が保たれる。これにより、シリンダの他端側へのピストンの摺動が停止した際に、惰性で封止手段が移動しても、ガスがピストンと連結手段との間を通過してピストンや封止手段よりもシリンダの他端側へガスが抜けることを防止又は抑制できる。
【0012】
なお、本発明において連結手段に連結されているシートベルト装置の所定の部材とは、連結手段とウエビングベルトとの間に機械的に介在して、連結手段が引っ張られることによって結果的にウエビングベルトの張力が増加する構成であればその具体的な構成に限定されるものではない。また、本発明では、引張手段によって連結手段が引っ張られる構成であるが、このようにして引張手段から連結手段に付与された張力がウエビングベルトを引っ張る構成であってもよいし、引張手段から連結手段に付与された張力が回転力等の他の力に変換され、この変換された力がウエビングベルトを引っ張る構成であってもよい。
【0013】
したがって、例えば、ウエビングベルトの先端が係止されたアンカ部材を上記のシートベルト装置を構成する所定の部材としてもよいし、ウエビングベルトを装着する際にウエビングベルトに設けられたタングが装着されるバックルを上記のシートベルト装置を構成する所定の部材としてもよい。
【0014】
更には、所定の方向へ回転することでウエビングベルトを巻き取る向きにウエビングベルトの長手方向基端側が係止されたスプール(巻取軸)を回転させる回転力伝達部手段と、連結手段がその基端側へ引っ張られることで回転伝達部材を上記の所定の方向へ回転させる回転力付与手段とを含めてシートベルト装置を構成し、この回転力付与手段を上記のシートベルト装置の所定の部材としてもよい。
【0015】
さらに、本発明は、引張手段と封止手段とを備える構成であるが、引張手段と封止手段とは別体で構成してもよいし、引張手段の一部を封止手段として構成したり、また、封止手段の一部を引張手段として構成したりしてもよい。
【0016】
請求項2に記載の本発明に係るプリテンショナは、請求項1に記載の本発明において、前記貫通孔における前記シリンダ他端側の端部から前記貫通孔に嵌挿されて外周面が前記貫通孔の内周面と接することで前記ピストンと前記連結手段との間を前記ガスが通過することを規制又は抑制する嵌挿部を含めて前記封止手段を構成している。
【0017】
請求項2に記載の本発明に係るプリテンショナでは、封止手段を構成する嵌挿部がピストンに形成された貫通孔のシリンダ他端側の端部(すなわち、貫通孔の引張手段側の端部)から嵌挿される。このように嵌挿部が貫通孔に嵌挿された状態では嵌挿部の外周面と貫通孔の内周面とが接し、これにより、ピストンと連結手段との間を通過してピストンや封止手段よりもシリンダの他端側へガスが抜けることを防止又は抑制する。
【0018】
請求項3に記載の本発明に係るプリテンショナは、請求項2に記載の本発明において、外径寸法が前記嵌挿部の外径寸法よりも大きく形成されて前記嵌挿部の前記引張手段側に設けられ、前記シリンダの軸方向に前記ピストンと対向して前記ピストンに接する大径部を含めて前記封止手段を構成している。
【0019】
請求項3に記載の本発明に係るプリテンショナでは、封止手段を構成する嵌挿部の引張手段側に嵌挿部と共に封止手段を構成する大径部が設けられる。この大径部は外径寸法が嵌挿部よりも大きく、シリンダの軸方向にピストンと対向した状態でピストンと接している。このように、嵌挿部のみならず大径部がピストンと接していることで封止性能が向上する。
【0020】
請求項4に記載の本発明に係るプリテンショナは、請求項3に記載の本発明において、前記シリンダの軸方向に前記シリンダに対して摺動可能に前記大径部の外径寸法を設定している。
【0021】
請求項4に記載の本発明に係るプリテンショナでは、大径部の外径寸法が、例えば、シリンダの内径寸法に略等しく、これにより、シリンダの軸方向にシリンダに対して摺動可能に大径部の外径寸法が設定される。このため、ピストンよりも大径部側での封止性能が高くなる。
【0022】
請求項5に記載の本発明に係るプリテンショナは、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の本発明において、前記封止手段の前記ピストンと対向する面に形成されて前記ピストンと前記連結手段との間から前記シリンダの径方向に沿った前記封止手段の外側とを連通し、前記ガスの一部が前記ピストンと前記連結手段との間を通過して前記封止手段の外側へ抜け出ることを許容して前記シリンダの内圧を調整するガス圧調整部を備えている。
【0023】
請求項5に記載の本発明に係るプリテンショナでは、封止手段のピストンと対向する面にガス圧調整部が形成されており、例えば、シリンダの内圧が必要以上に上昇すると、ガスはピストンと連結手段との間からガス圧調整部を通過してシリンダの径方向に沿った封止手段の外側へ抜け出る。これにより、シリンダの内圧の上昇を抑制できる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明に係るプリテンショナは、高精度の組み付けや慎重な取り扱いをしなくてもピストンと引張手段との間の封止性能を確保並びに向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナの構成の概略を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナの封止手段の構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナの初期状態を示す部分的な断面図である。
【図4】封止手段がピストンから離間するように移動した状態を示す図3に対応した部分的な断面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係るプリテンショナの封止手段の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係るプリテンショナの要部の構成の概略を示す図3に対応した断面図である。
【図7】封止手段がピストンから離間するように移動した状態を示す図6に対応した部分的な断面図である。
【図8】封止手段の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1の実施の形態の構成>
図1には本発明の第1の実施の形態に係るプリテンショナ10の構成が断面図により示されている。
【0027】
この図に示されるようにプリテンショナ10はシリンダ12を備えている。シリンダ12は少なくとも一端が開口した筒形状(一例として円筒形状)に形成されている。シリンダ12の内側には、金属を鍛造成形することにより形成されたピストン14が収容されている。ピストン14はピストン本体16を備えている。ピストン本体16はシリンダ12の先端(一端)側(図1の矢印A方向の側)へ向けて漸次外径寸法が大きくなり、少なくとも、シリンダ12の先端側におけるピストン本体16の端部の外周形状は、鍛造成形されたワークを切削加工することでシリンダ12の内周形状に略等しい錐台形状とされている。
【0028】
シリンダ12の基端(他端)側(図1の矢印B方向の側)におけるピストン本体16の端部には外周形状がシリンダ12の内周形状に略等しいフランジ部18が、シリンダ12の先端側におけるピストン本体16の端部に対して略同軸的に形成されている。このフランジ部18とシリンダ12の先端側におけるピストン本体16の端部とがシリンダ12の内周部に摺接しており、ピストン14はシリンダ12の先端と他端との間を摺動できる。シリンダ12の基端側におけるフランジ部18の端部には、外径寸法がフランジ部18よりも小さな小径部20がフランジ部18に対して略同軸的に形成されている。
【0029】
小径部20の外周部にはゴム材やゴム材程度の弾性を有する合成樹脂材により環状に形成されたOリング(オーリング)22が装着されている。Oリング22は小径部20の外周方向に沿った全域が小径部20に密着していると共に、シリンダ12の内周部に密着しており、Oリング22を境とするシリンダ12の先端側と他端側との間がOリング22により封止されている。
【0030】
一方、シリンダ12の先端側におけるフランジ部18の側方には複数のクラッチ球24がピストン本体16の外周方向に適宜な間隔をおいて配置されている。シリンダ12の基端側からシリンダ12の先端側へピストン14が移動した際(すなわち、シリンダ12内を図1の矢印A方向にピストン14が摺動した際)に、各クラッチ球24が慣性でピストン本体16の外周面(斜面)を移動すると、ピストン本体16の外周部とシリンダ12の内周部とにクラッチ球24が挟まれる。
【0031】
この状態で更にピストン14がシリンダ12の先端側へ移動すると、ピストン14に伴われてシリンダ12の基端側へ移動するクラッチ球24がシリンダ12の内周側から変形させる。このクラッチ球24によるシリンダ12の変形又は切削の際の摩擦がシリンダ12の基端側へのピストン14の摺動を規制する。
【0032】
一方、ピストン14には貫通孔26が形成されている。貫通孔26は一端がピストン本体16のフランジ部18とは反対側の面で開口しており、他端が小径部20のフランジ部18とは反対側の面で開口している。プリテンショナ10は連結手段としてのワイヤ28を備えており、貫通孔26をワイヤ28が通過している。シリンダ12の基端側におけるピストン14の側方には引張手段としてのピース30が設けられている。
【0033】
ピース30には貫通孔32が形成されており、この貫通孔32をワイヤ28が通過している。ピース30のピストン14とは反対側まで貫通孔32を通過したワイヤ28に対しては抜け止めが施されており、ワイヤ28は貫通孔32を通過してピース30のピストン14側へ抜け出ることができない。したがって、ワイヤ28が貫通孔26を通過してピストン14のピース30とは反対側へ抜け出ることが規制されている。
【0034】
このワイヤ28のピース30が設けられた側とは反対側の端部は、例えば、車両のシートベルト装置の一態様である三点式シートベルト装置を構成するアンカとしてのアンカ34に係止されている。詳細な図示は省略するが、アンカ34は車両室内に設置された座席の幅方向一方の側で車両の床部近傍に設けられている。このアンカ34には三点式シートベルト装置を構成する長尺帯状のウエビングベルト36の先端部が係止されている。ウエビングベルト36の基端側は座席の幅方向一方の側で車両の天井部近傍に設けられたスルーアンカを通過した状態で下方へ折り返されており、座席の幅方向一方の側で車両の床部近傍に設けられたウエビング巻取装置のスプールに基端側が係止されている。
【0035】
上記のスルーアンカとアンカ34との間でウエビングベルト36はタングプレートを通過している。座席に着座した乗員がウエビング巻取装置のスプールからウエビングベルト36を引き出しつつ身体の前方にウエビングベルト36を掛け回し、この状態で座席の幅方向他方の側で車両の床部近傍に設けられたバックル38にタングプレートを装着することで乗員の身体に対するウエビングベルト36の装着状態になる。
【0036】
なお、上記の説明では、ワイヤ28のピース30が設けられた側とは反対側の端部はアンカ34に係止される構成であったが、ワイヤ28のピース30が設けられた側とは反対側の端部がバックル38に係止される構成としてもよい。
【0037】
また、図1に示されるように、プリテンショナ10はプリテンショナ本体としてのベースカートリッジ40を備えている。ベースカートリッジ40は本体部42を備えている。本体部42にはシリンダ装着部44が形成されている。シリンダ装着部44には装着孔46が形成されている。装着孔46は一端がシリンダ装着部44の外面にて開口している。シリンダ装着部44の開口端での内径寸法はシリンダ12の先端側の外径寸法よりも極僅かに大きく、装着孔46の開口端からシリンダ12をその先端から嵌挿できる。
【0038】
また、例えば、装着孔46の内周部には図示しない雌ねじが形成されており、この雌ねじに対応してシリンダ12の先端側の外周部には図示しない雄ねじが形成されている。この装着孔46の雌ねじにシリンダ12の雄ねじが螺合することでベースカートリッジ40にシリンダ12が連結される。
【0039】
一方、本体部42にはガス発生手段装着部としてのガスジェネレータ装着部48が形成されている。ガスジェネレータ装着部48はシリンダ装着部44における装着孔46の開口方向に対して交差する向きに沿った本体部42の側方に形成されている。ガスジェネレータ装着部48にはガスジェネレータ装着孔50が形成されている。ガスジェネレータ装着孔50はその一端がガスジェネレータ装着部48の外面にて開口している。
【0040】
ガスジェネレータ装着部48にはガス発生手段としてのガスジェネレータ52が取り付けられている。ガスジェネレータ52は嵌挿部54を備えている。嵌挿部54は外周形状がガスジェネレータ装着孔50の内周形状に略等しく、ガスジェネレータ装着孔50の開口端からガスジェネレータ52を嵌挿できる。ガスジェネレータ52の一端(図1における上側端部)には外周形状がガスジェネレータ52の外周形状よりも大きなフランジ部56が形成されている。嵌挿部54をガスジェネレータ装着孔50に挿し込むと、ガスジェネレータ装着孔50の開口端側のガスジェネレータ装着部48の端部にフランジ部56が干渉される。
【0041】
フランジ部56の嵌挿部54とは反対側には頭部58が形成されている。頭部58のフランジ部56とは反対側からはキャップ60がガスジェネレータ装着部48に装着され、キャップ60によりガスジェネレータ装着部48からのガスジェネレータ52の抜け止めが成される。ガスジェネレータ装着部48に装着されたガスジェネレータ52は、作動することで瞬時にガスを発生して嵌挿部54のフランジ部56とは反対側の端部からガスを噴出する。
【0042】
また、ベースカートリッジ40にはガス通過部62が形成されており、ガスジェネレータ52の嵌挿部54が嵌挿される側とは反対側のガスジェネレータ装着孔50の端部ではガス通過部62の一端が開口している。ガス通過部62はその中間部から装着孔46の開口端の側へ屈曲しており、ガス通過部62の他端は装着孔46の底部64にて開口している。このため、ガスジェネレータ52から噴出されたガスがガス通過部62に案内されて嵌挿部54へ向うと、このガスの圧力がピストン14をシリンダ12の基端側へ向けて押圧する。
【0043】
一方、ベースカートリッジ40はガイド部68を備えている。ガイド部68は本体部42のシリンダ装着部44とは反対側に形成されている。ガイド部68には特許請求の範囲で言うところの貫通孔としてのワイヤ通過部70が形成されている。ワイヤ通過部70は、その一端がガス通過部62の内周部で開口している。これに対し、ワイヤ通過部70の他端はガイド部68の本体部42とは反対側の外面にて開口している。また、ワイヤ通過部70の内周形状は、ワイヤ28の外周形状と略同じ形状(厳密にはワイヤ28の外周形状よりも極僅かに大きい形状)に設定されており、図1に示されるように、ワイヤ通過部70にはワイヤ28が通過する。
【0044】
図1に示されるように、ワイヤ通過部70の貫通方向はシリンダ装着部44に形成されている装着孔46の貫通方向に沿ってガス通過部62側の装着孔46の貫通方向に対して略同方向とされ、しかも、ワイヤ通過部70の一端(すなわち、ガス通過部62の内周部におけるワイヤ通過部70の開口端)は、シリンダ装着部44に形成されている装着孔46の貫通方向に沿ってガス通過部62側の装着孔46の端部に対し同軸的に対向している。このため、ワイヤ28はベースカートリッジ40内を直線的に通過できる。
【0045】
また、ワイヤ通過部70の他端側(ガス通過部62とは反対側)では、ワイヤ通過部70の内周面の一部がワイヤ通過部70の開口径方向一方の側を曲率の中心として湾曲しており、ワイヤ通過部70の他端からベースカートリッジ40の外部へ引き出されたワイヤ28は、このワイヤ通過部70の他端側におけるワイヤ通過部70の内周面に倣って湾曲している。これにより、ワイヤ28に無理な屈曲や湾曲が生じることなくアンカ34又はバックル38の側へ湾曲してアンカ34又はバックル38に係止される。
【0046】
さらに、ワイヤ通過部70の一端部に対応してガス通過部62にはガード手段としてのワイヤ保護筒72が設けられている。ワイヤ保護筒72は内周形状がワイヤ通過部70の内周形状に略等しい筒形状に形成されている。ワイヤ保護筒72はワイヤ通過部70の一端に対して同軸となるようにガス通過部62の内壁から突出形成されており、ワイヤ保護筒72を通過したワイヤ28がワイヤ通過部70に入り込んでいる。
【0047】
一方、ガイド部68にはパッキン収容部74が形成されている。パッキン収容部74はワイヤ通過部70の中間部(すなわち、ガス通過部62の一端と他端との間)に形成されている。また、パッキン収容部74は、ベースカートリッジ40の正面視で互いに対向する一対の辺がワイヤ通過部70のパッキン収容部74の形成位置近傍部分と平行で、互いに対向する他の一対の辺がワイヤ通過部70のパッキン収容部74の形成位置近傍部分と直交する矩形状とされている。
【0048】
このパッキン収容部74の内側にはパッキン80が嵌挿されている。パッキン80はゴムやゴム程度の弾性を有する弾性部材や、このような弾性部材よりも剛性が高い合成樹脂材により、外周形状がパッキン収容部74の内周形状に概ね等しいブロック状に形成されている。このパッキン80はパッキン収容部74の内壁に圧接することでパッキン80はパッキン収容部74の内壁との間を封止している。
【0049】
また、パッキン80には貫通孔82が形成されている。貫通孔82は内径寸法がワイヤ28の外径寸法に略等しくパッキン収容部74にパッキン80が収容された状態では、一端がパッキン収容部74よりも一端側のワイヤ通過部70と連通し、他端がパッキン収容部74よりも他端側のワイヤ通過部70と連通する。したがって、ワイヤ通過部70を通過するワイヤ28は、パッキン収容部74内においてパッキン80の貫通孔82を通過している。しかも、上記のように、貫通孔82の内径寸法はワイヤ28の外径寸法に略等しいので、貫通孔82にワイヤ28が通過した状態では、貫通孔82の内周部とワイヤ28の外周部との間に隙間がほぼ形成されることはない。
【0050】
さらに、ベースカートリッジ40には円孔90が形成されている。この円孔90には固定ボルト等の締結手段が通過する。円孔90を通過した固定ボルト等の締結手段は座席の骨格部分や車体に固定され、これにより、本プリテンショナ10が車両に取り付けられる。
【0051】
ところで、図1に示されるように、本プリテンショナ10では、上記のピース30のピストン14側に封止手段としてのシール部材110が設けられている。ここで、図2にはシール部材110を拡大した斜視図が示されている。この図に示されるように、シール部材110は大径部112を備えている。大径部112は外径寸法がシリンダ12の内径寸法よりも小さくワイヤ28の外径寸法よりも充分に大きな円柱形状又は円板状に形成されており、ピース30と対向する側の端部はピース30に接している。
【0052】
この大径部112のピストン14側には嵌挿部114が大径部112から連続して形成されている。嵌挿部114は外径寸法が大径部112よりも充分に小さくワイヤ28の外径寸法よりも大きな円柱形状又は円板状で、大径部112に対して同軸的に形成されている。この嵌挿部114に対応して、ピストン14に形成された貫通孔26の中間部よりもピース30側は嵌挿孔116とされている。この嵌挿孔116の内径寸法は、嵌挿孔116のピース30とは反対側における貫通孔26の内径寸法よりも大きく、しかも、上記の嵌挿部114の外径寸法よりも僅かに大きく形成されている。
【0053】
このため、シール部材110の嵌挿部114を、嵌挿孔116のピース30側の開口端から嵌挿できる。また、貫通孔26の貫通方向に沿った嵌挿孔116の形成範囲は嵌挿部114の軸方向寸法と同じか、又は、嵌挿部114の軸方向寸法よりも短く設定されており、嵌挿孔116に嵌挿部114を嵌挿した状態でシリンダ12の軸方向に大径部112とピストン14との互いに対向する端面を接触させることができる。
【0054】
また、このように大径部112と嵌挿部114とを有するシール部材110には貫通孔118が形成されている。貫通孔118は大径部112及び嵌挿部114に対して同軸的に形成されており、その一端は大径部112の嵌挿部114とは反対側の端面で開口し、他端は嵌挿部114の大径部112とは反対側の端面にて開口している。シール部材110が成形された状態での貫通孔118の内径寸法はワイヤ28の外径寸法と同じか、ワイヤ28の外径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0055】
さらに、貫通孔118の内周部からは1乃至複数(本実施の形態では4つ)の潰しリブ120が突出形成されている。貫通孔118にワイヤ28を貫通させた状態で潰しリブ120がワイヤ28の外周部に圧接して塑性変形させられるようにシール部材110がワイヤ28に装着されることで、ワイヤ28にシール部材110が一体的に固定されると共に、ワイヤ28の外周部と貫通孔118の内周部との間が、少なくともワイヤ28の外周部とピストン14の貫通孔26の内周部との間以上に封止される。
【0056】
さらに、上記のシール部材110にはガス圧調整部としての1本乃至複数本(本実施の形態では2本)のガス抜き溝122が形成されている。ガス抜き溝122は嵌挿部側溝部124と大径部側溝部126とにより構成されている。嵌挿部側溝部124は嵌挿部114の中心軸線に対して平行に嵌挿部114の外周部に形成されており、その一端は嵌挿部114の大径部112とは反対側の端部にて大径部112とは反対方向へ向けて開口している。これに対して大径部側溝部126は大径部112のピストン14と対向する側の面に形成されており、その一端は大径部112の外周部にて開口している。この大径部側溝部126の他端と上記の嵌挿部側溝部124の他端とは繋がっており、嵌挿部側溝部124の一端から大径部側溝部126の一端へ向けてガスが通過できるようになっている。
【0057】
<第1の実施の形態の作用、効果>
次に、本実施の形態の作用並びに効果について説明する。
【0058】
乗員が座席に着座してシートベルト装置のウエビングベルトを装着した状態で、例えば、車両が急減速状態になったことを車両に設けられた加速度センサ等の検知手段が検出すると、ECUが着火信号を出力する。この着火信号がガスジェネレータ52に入力されると、ガスジェネレータ52内のガス発生剤が着火される。着火されたガス発生剤は短時間で燃焼して、急激にガスを発生させる。
【0059】
このように発生したガスはガス通過部62に送り込まれる。ガス通過部62に送り込まれたガスは、シリンダ12の先端(シリンダ12のガス通過部62側の端部)近傍に位置しているピストン14を、シリンダ12の基端側(シリンダ12のガス通過部62とは反対側)へ押圧する。このようにしてピストン14に付与されたガスの圧力でピストン14はシール部材110をシリンダ12の基端側へ押圧し、更に、シール部材110を介してピース30をシリンダ12の基端側へ押圧しながらシリンダ12の基端側へスライドする(図3参照)。
【0060】
このようにスライドするピース30やシール部材110によりワイヤ28が引っ張られると、ワイヤ28の端部に係止されたアンカ34又はバックル38が引っ張られ、これにより、車両の乗員の身体に装着されているウエビングベルト36に張力が付与される。このように、ウエビングベルト36に張力が付与されることでウエビングベルト36の僅かな弛み、所謂「スラック」が解消されると共に、ウエビングベルト36が乗員の身体を拘束する拘束力が増し、より強く乗員の身体を拘束できる。
【0061】
また、このようにガス通過部62から更にシリンダ12に送り込まれたガスの一部は、貫通孔26の内周部とワイヤ28の外周部との間に入り込む。貫通孔26の内周部とワイヤ28の外周部との間に入り込んだガスは、シール部材110に形成されたガス抜き溝122を構成する嵌挿部側溝部124の一端からガス抜き溝122に流れ込み、ガス抜き溝122を構成する大径部側溝部126の一端からシール部材110の外側、すなわち、ピストン14よりもピース30側に流れ出る。これにより、シリンダ12内の内圧が不要に大きくなることを防止又は抑制できる。
【0062】
ところで、本実施の形態では、ガス通過部62を通過するワイヤ28が、ガス通過部62の内周から突出形成されたワイヤ保護筒72の内部を通過していることで、実質的にはガスジェネレータ装着孔50とワイヤ28との間にワイヤ保護筒72が介在した状態になっている。このため、ガスがガス通過部62を通過する際にガスはワイヤ保護筒72に噴き付けられ、ワイヤ28に直接噴き付けられることはない。このように本実施の形態では、高温で高圧のガスからワイヤ28を保護できる。
【0063】
一方、上記のように、ガスの一部はガス抜き溝122からシール部材110の外側に抜け出るものの、その大部分の圧力はピストン14の摺動に寄与する。ここで、摺動するピストン14の速度が遅くなったり、また、ガスジェネレータ52が作動する前の状態で本プリテンショナ10に付与された外力(例えば、異常な荷姿での本プリテンショナ10の運搬や車両走行時における想定外の振動)等が作用したりすることで、図4に示されるように、ピストン14からシール部材110の大径部112が離間することがある。
【0064】
ここで、本プリテンショナ10ではシール部材110を構成する嵌挿部114がピストン14の貫通孔26を構成する嵌挿孔116に嵌挿されており、嵌挿部114の外周部と嵌挿孔116の内周部とが接していることでシール部材110とピストン14との間が封止されている。
【0065】
このため、図4に示されるように、大径部112がピストン14から離間しても、嵌挿部114が嵌挿孔116から抜け出ていない限りはシール部材110とピストン14との間の封止性能が維持される。これにより、本プリテンショナ10では、高精度の組み付けや慎重な取り扱いをしなくてもピストン14よりもピース30側への不要で大きなガス漏れを効果的に防止又は抑制でき、ガス抜き溝122の嵌挿部側溝部124により安定してガスを排出できる。
【0066】
<第2の実施の形態の構成>
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、本実施の形態を説明するに際して前記第1の実施の形態と基本的に同一の部位に関しては、同一の符号を付与してその詳細な説明を省略する。
【0067】
図6には本実施の形態に係るプリテンショナ200の構成の概略が前記第1の実施の形態を説明するうえで用いた図3に対応する断面図により示されている。
【0068】
この図に示されるように、本プリテンショナ200はピストン202を備えている。ピストン202は、フランジ部18や小径部20、Oリング22、クラッチ球24を備えている点で前記第1の実施の形態におけるピストン14と同じであるが、ピストン202はピストン本体16を備えておらず、ピストン本体204を備えている点で前記第1の実施の形態におけるピストン14とは構成が異なる。
【0069】
ピストン本体204はシリンダ12の先端(一端)側(図1の矢印A方向の側)へ向けて漸次外径寸法が大きくなる構造である点に関しては前記第1の実施の形態におけるピストン本体16と同じであるが、シリンダ12の先端側におけるピストン本体16の端部の外周形状(すなわち、ピース30側におけるピストン本体16の端部の外周形状)がシリンダ12の内周形状に略等しい錐台形状とされているのに対し、ピストン本体204のピース30側の端部の外周形状(外径寸法)はシリンダ12の内周形状(内径寸法)よりも短く設定されている。
【0070】
また、図6に示されるように、本プリテンショナ200はシール部材110を備えておらず、代わりに封止手段としてのシール部材210を備えている。ここで、図5にはシール部材210を拡大した斜視図が示されている。この図に示されるように、シール部材210は大径部112を備えておらず、代わりに大径部212を備えている。この大径部212は円柱形状又は円板形状である点で前記第1の実施の形態にける大径部112と同じであるが、大径部112の外径寸法がシリンダ12の内径寸法よりも充分に小さかったのに対し、大径部212の外径寸法はシリンダ12の内径寸法に略等しい(厳密にはシリンダ12の内部で摺動可能な程度にシリンダ12の内径寸法よりも僅かに小さい)。
【0071】
また、シール部材210はシール部材110とは異なり1乃至複数(本実施の形態では、2つ)の鍔部214を備えている。鍔部214は大径部212のピストン202側の端面における外周部近傍からピストン202側へ向けて延出されている。鍔部214は大径部212の中心軸線を曲率の中心として湾曲しており、その外周部の曲率半径は大径部212の曲率半径に略等しい。これに対して、鍔部214の内周部の曲率半径は、上述したピストン本体204のピース30側の端部におけるピストン本体204の半径寸法(ピストン本体204の中心軸線からピストン本体204の外周部までの寸法)よりも僅かに大きく設定されている。
【0072】
さらに、本実施の形態では、大径部212からの鍔部214の延出寸法は、嵌挿部114の軸方向寸法に略等しく、したがって、本実施の形態では嵌挿部114の大径部212とは反対側の端部と鍔部214の先端とはシール部材210の中心軸線に対して直交する同一平面上に位置する。
【0073】
また、このシール部材210はガス抜き溝122を備えておらず、代わりにガス抜き溝216を備えている。このガス抜き溝216は、前記第1の実施の形態におけるガス抜き溝122と同様に嵌挿部側溝部124を備えており、更に、大径部側溝部126を備えている。但し、ガス抜き溝216は、上述した一方の鍔部214の周方向端部と他方の鍔部214の周方向端部との間で大径部側溝部126の一端が大径部212の外周部にて開口している。
【0074】
また、ガス抜き溝216はガス抜き溝122とは異なる大径部側外周溝部218を備えている。この大径部側外周溝部218は、長手方向が大径部212の軸方向に沿うように大径部212の外周部に形成されている。大径部側外周溝部218の一端は大径部側溝部126の一端(すなわち、大径部側溝部126における大径部212の外周側の端部)に繋がっており、他端は大径部212における嵌挿部114とは反対側の端部にて開口している。
【0075】
このように形成されたシール部材210は、嵌挿部114が嵌挿孔116に入り込むと、嵌挿部114と鍔部214との間にピストン本体204が嵌り込む。上記のように、シール部材210を構成する大径部212の外径寸法はシリンダ12の内側で摺動可能な程度にシリンダ12の内径寸法よりも僅かに小さく、しかも、鍔部214の外周部における曲率半径は大径部212の外周部の曲率半径に等しい。このため、ガスジェネレータ52にて発生したガスの圧力でピストン202が摺動すると、シール部材210の大径部212及び鍔部214が摺動する。
【0076】
このように、本プリテンショナ200では、ピストン202のみならずシール部材210の鍔部214や大径部212がピストン202の外周側からガスが漏れることを防止又は抑制する。このため、ガスの圧力を効率よくピストン202の摺動に寄与させることができる。
【0077】
しかも、鍔部214や大径部212がシリンダ12の内周部に摺接しているものの、互いに連通した嵌挿部側溝部124、大径部側溝部126、及び大径部側外周溝部218により構成されたガス抜き溝216は、嵌挿部側溝部124の大径部側溝部126とは反対側の端部が嵌挿部114における大径部212とは反対側の端部で開口し、大径部側外周溝部218の大径部側溝部126とは反対側の端部が大径部212における嵌挿部114とは反対側の端部にて開口している。このため、ガス抜き溝216により安定してガスを排出できる。
【0078】
また、鍔部214及び大径部212以外のシール部材210の構成は前記第1の実施の形態におけるシール部材110と同じである。このため、図7に示されるように、シール部材210の大径部212がピストン204から離間しても嵌挿部114が嵌挿孔116から全て抜け出ない限りシール部材210とピストン202との間の封止性能を維持できる等、本実施の形態でもシール部材110を設けることにより奏する作用と同等の作用を本プリテンショナ200でも奏し、したがって、シール部材110を設けることにより得られる効果と同等の効果を本プリテンショナ200でも得ることができる。
【0079】
なお、本実施の形態では、上記のように大径部212から鍔部214を延出したが、図8に示されるように、大径部212から鍔部214を延出しない構成、換言すると、前記第1の実施の形態におけるシール部材110の大径部112の外径寸法をシリンダ12に対して摺動可能な大きさとした構成にしてもよい。
【0080】
また、上記の各実施の形態では、シール部材110、210側に嵌挿部114を設けてピストン14、204側の嵌挿孔116に嵌挿する構成であったが、例えば、シール部材110、210側に貫通孔118のピストン14、204側を嵌挿孔116として、ピストン14、204側に設けられた嵌挿部114に対応する部位を設けて嵌挿孔116に嵌挿する構成としてもよい。
【0081】
また、上記の各実施の形態は、何れも、アンカ34やバックル38を引っ張るためのプリテンショナ10、200であったが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、車両急減速時にガスジェネレータ52のようなガス発生手段にて発生したガスの圧力で、ウエビング巻取装置のスプールを強制的に巻取方向に回転させ、これにより、ウエビングベルト36をスプールに巻き取らせることでウエビングベルト36の張力を増加させるプリテンショナに本発明を適用してもよい。
【符号の説明】
【0082】
10 プリテンショナ
12 シリンダ
14 ピストン
26 貫通孔
28 ワイヤ(連結手段)
30 ピース(引張手段)
32 貫通孔
36 ウエビングベルト
52 ガスジェネレータ(ガス発生手段)
110 シール部材(封止手段)
112 大径部
114 嵌挿部
116 嵌挿孔
118 貫通孔
120 リブ
122 ガス抜き溝(ガス圧調整部)
202 ピストン
210 シール部材(封止手段)
212 大径部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動することでガスを発生させるガス発生手段と、
少なくとも一端が開口し、前記ガス発生手段にて発生した前記ガスが一端側から内側に供給されるシリンダと、
シートベルト装置を構成する所定の部材に先端側が連結されると共に、基端側が前記シリンダの一端側から前記シリンダの内側に入り込み、基端側へ引っ張られることにより前記所定の部材を介して前記シートベルト装置を構成するウエビングベルトの張力を増加させる連結手段と、
前記シリンダの内側で摺動可能に前記シリンダに収容されて前記シリンダに供給されたガスの圧力で前記シリンダの他端側へ摺動すると共に、前記シリンダの軸方向に沿って貫通する貫通孔が形成されて当該貫通孔を前記連結手段が通過するピストンと、
前記ピストンよりも前記シリンダの他端側に配置されると共に前記ピストンを貫通した前記連結手段の基端側が一体的に連結され、前記ガスの圧力で前記シリンダの他端側へ摺動する前記ピストンに押圧されて前記シリンダの他端側へ移動して前記連結手段を引っ張る引張手段と、
前記ピストンの前記引張手段側で前記引張手段又は前記連結手段に対して一体的に設けられて前記連結手段の内側を通過すると共に、前記ピストンの前記引張手段側から前記ピストンに嵌め込まれ、前記ピストンに嵌め込まれた状態では前記シリンダの径方向に前記ピストンと対向する面が前記ピストンに接し、前記ピストンと前記連結手段との間を前記ガスが通過することを規制又は抑制する封止手段と、
を備えるプリテンショナ。
【請求項2】
前記貫通孔における前記シリンダ他端側の端部から前記貫通孔に嵌挿されて外周面が前記貫通孔の内周面と接することで前記ピストンと前記連結手段との間を前記ガスが通過することを規制又は抑制する嵌挿部を含めて前記封止手段を構成した請求項1に記載のプリテンショナ。
【請求項3】
外径寸法が前記嵌挿部の外径寸法よりも大きく形成されて前記嵌挿部の前記引張手段側に設けられ、前記シリンダの軸方向に前記ピストンと対向して前記ピストンに接する大径部を含めて前記封止手段を構成した請求項2に記載のプリテンショナ。
【請求項4】
前記シリンダの軸方向に前記シリンダに対して摺動可能に前記大径部の外径寸法を設定した請求項3に記載のプリテンショナ。
【請求項5】
前記封止手段の前記ピストンと対向する面に形成されて前記ピストンと前記連結手段との間から前記シリンダの径方向に沿った前記封止手段の外側とを連通し、前記ガスの一部が前記ピストンと前記連結手段との間を通過して前記封止手段の外側へ抜け出ることを許容して前記シリンダの内圧を調整するガス圧調整部を備える請求項1から請求項4の何れか1項に記載のプリテンショナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−63177(P2011−63177A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217288(P2009−217288)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】