説明

プリンタおよびインクリボンユニット

【課題】インクリボンの供給側ボビンと巻取側ボビンの取付位置および取付方向を誤ることがないプリンタを提供する。
【解決手段】インクリボンが巻かれた供給側ボビン21と、供給側ボビン21より繰り出されたインクリボンを巻き取る巻取側ボビン22とを各々装着するための装着部8a、8bを具備し、装着部8a、8bが供給側ボビン21または巻取側ボビン22を回転可能に各々支持する一対の軸受81a〜84aを備えており、装着部8a、8bが有する4つの軸受81a〜84aのうちひとつの軸受81aが凹部として形成されるとともに他の3つの軸受82a〜84aが凸部として形成されよう構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラテンローラと印刷ヘッドとの間に用紙とインクリボンとを重合して送り込みつつ印刷を行うプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、印刷ヘッドをプラテンローラに対して弾接させて、これらの間にインクリボンと用紙とを重合させて送り込みつつ印刷を行うプリンタについて多数のものが知られている。
【0003】
このようなプリンタの多くはインクリボンをロール状の形態として内部に収納しており、新品のインクリボンを外周に巻き付けた形態で保持する供給側ボビンと、印刷に使用されたインクリボンを巻き取るための巻取側ボビンとをプリンタ内部の所定の軸体にセットするようになっている。
【0004】
そして、インクリボンに使用可能な部分がなくなった場合には、ボビンごと新品のインクリボンに交換するようにされている。供給側ボビンと巻取側ボビンとは対で用いることが一般的であり、初期の段階から供給側ボビンに巻かれているインクリボンの先端は巻取側ボビンの表面に固定されているため、巻取側ボビンを回転させることで供給側ボビンより新品のインクリボンを引き出して印刷に使用し、その後に巻取を行うことが可能となっている。
【0005】
こうしたプリンタに用いられるインクリボンユニットとしては、特許文献1のものが知られている。このものは、供給側ボビンと巻取側ボビンは同じ形状をしているとともに、それぞれのボビンは両端の形状が異なるように形成されている。このように両端で異なる形状を有するボビンを取り付けるため、ボビン取付部としてプリンタ側に形成される軸受もボビンに対応して各々形状が異なるように形成される。
【0006】
このようにボビンの両端部の形状を互いに異ならせ、かつ、これに対応する形状にプリンタ側の軸受を形成することによって、当該軸受に対して逆向きにボビンを取り付けることが不能となり、インクリボンを交換する者は取付方向を間違うことなく作業を行うことができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平08−2075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のようにボビンの両端部を異なる形状にして、これと対応する形にプリンタ側の軸受を形成するのみでは、必ずしも取付方向の誤りが生じないとは言い切れない。
【0009】
なぜならば、供給側ボビンと巻取側ボビンの形状が同一である限り、本来供給側ボビンを取り付けるべき軸受に巻取側ボビンを取り付け、巻取側ボビンを取り付けるべき軸受に供給側ボビンを取り付ける恐れがあり、供給側と巻取側が逆になるとともに、インクリボンの表裏を異ならせることになりかねない。
【0010】
このような状態ではプリンタは正常な動作を行うことができず、通常はエラー信号が発せられるように構成されているが、交換時間が増加するとともに、インクリボンが予期せぬ箇所に接触して汚れや擦れによる損傷などの不具合が生じる可能性もある。
【0011】
こうした不具合を生じさせないようにするために、供給側ボビンと巻取側ボビンを内蔵するカセットとして構成しておき、当該カセットを特定の方向でしかプリンタ内に設置できない形状とすることも考えられるが、製造コストが増大する上にプリンタが大型化することになり好ましくない。
【0012】
本発明は、このような課題を有効に解決することを目的としており、インクリボンの供給側ボビンと巻取側ボビンの取付位置や取付方向を誤ることがないインクリボンの交換が容易なプリンタと、インクリボンユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0014】
すなわち、本発明のプリンタは、インクリボンが巻かれた供給側ボビンと、当該供給側ボビンより繰り出されたインクリボンを巻き取る巻取側ボビンとを各々装着するための装着部を具備し、前記装着部が前記供給側ボビンまたは前記巻取側ボビンを回転可能に各々支持する一対の軸受を備えており、前記装着部が有する4つの軸受のうちいずれかひとつの軸受が凹部として形成されるとともに他の3つの軸受が凸部として形成され、または、いずれかひとつの軸受が凸部として形成されるとともに他の3つの軸受が凹部として形成されていることを特徴とする。
【0015】
このように構成すると、取り付ける供給側ボビンおよび巻取側ボビンの端部をプリンタ側の軸受と対応した形とすることが必要となり、プリンタ装着部の軸受とボビンの端部とが凹凸の組み合わせとなる箇所でしか嵌め合わせることができなくなるため、インクリボンの交換の際にボビンを特定の位置及び方向でしか取り付けることができなくなり、取付位置や方向を誤ることがなく作業が行いやすいプリンタを提供することができる。また、カセット方式とする必要がないことからプリンタのコンパクト化およびコストダウンを行うこともできる。
【0016】
さらに、ボビンの取付けを容易にするためには、前記一対の軸受のうち少なくともいずれか一方を軸方向に移動させる付勢手段を前記装着部に設けるように構成することが好適である。
【0017】
また、ボビンを取り付けるための軸受を軸方向に移動させるだけで、ボビンの脱着を容易に行うことができるようにするためには、前記軸受を形成する凹部の内周面がテーパ状に形成されているように構成することが好適である。
【0018】
さらに、ボビンを取り付けるための軸受を軸方向に移動させるだけで、ボビンの脱着を容易に行うことができるとする効果を高めるためには、前記軸受を形成する凸部の外周面がテーパ状に形成されているように構成することがなお好適である。
【0019】
さらに、インクリボンを交換する作業者が戸惑うことなくより円滑に作業を進められるようにするためには、インクリボンを交換する際に開放可能な開放部を備えており、前記2つの装着部のうち、一対の軸受を凹部および凸部として異なるように形成した装着部を前記開放部内の奥側に配置し、他方の装着部を前記開放部内の手前側に配置するようにして構成することが好適である。
【0020】
また、本発明に係るインクリボンユニットは、上記のプリンタに装着するものであって、インクリボンが巻かれた供給側ボビンと、当該供給側ボビンより繰り出されるインクリボンの端部を外周に固定された巻取側ボビンとを備えており、前記供給側ボビンおよび前記巻取側ボビンが円筒状に形成されているとともに、前記供給側ボビンの両端部および前記巻取側ボビンの両端部のいずれか1箇所、またはいずれか3箇所に軸状突出部を有するコアを嵌挿していることを特徴とするものである。
【0021】
このように構成すると、上記のプリンタに好適に使用でき、取り付け位置および取り付け方向を誤ることのないインクリボンユニットを提供することが可能となる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明した本発明によれば、インクリボンの供給側ボビンと巻取側ボビンの取付位置および取付方向を誤ることがなくインクリボンの交換を容易に行うことができるプリンタと、これに好適に用いることのできるインクリボンユニットを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの側断面図。
【図2】図1の状態よりカバーを開放した際の側断面図。
【図3】同プリンタに取り付けるインクリボンユニットの平面図および側面図。
【図4】同プリンタ内のインクリボンユニットの装着部を示す模式図。
【図5】図4の状態よりインクリボンユニットを装着した際の模式図。
【図6】プリンタの変形例を示す側断面図。
【図7】図6の状態より内部装置を引き出した状態を示す側断面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0025】
この実施形態のプリンタは、いわゆるライン式昇華型熱転写プリンタとして構成されており、図1に示すように、筐体91の内部にほぼ全ての機器が収められた形態とされている。
【0026】
筐体91の内部では、給紙ロール11より繰り出された用紙1に対して、インクリボン2を重合させた状態で印刷ヘッド4により熱を与えて、インクリボン2の表面の染料を用紙1に定着させることによって印刷が行われ、印刷後の用紙1が排出口93より筐体91の外部に排出されるようになっている。
【0027】
具体的には、新品の用紙1をロール状に巻いた給紙ロール11が回転自在な状態で筐体91の内部で支持されるようになっており、この給紙ロール11より引き出される形態で用紙1は使用されていく。用紙1は、給紙ロール11より引き出された後、互いに対向して配置された搬送ローラ61a、61bの間で挟まれるようにして把持され、搬送ローラ61aの回転によって搬送が行われる。また、用紙1はこれらよりも下流に設置された搬送ローラ62a、62bの間でも挟まれるようにして搬送がなされるようになっている。
【0028】
なお、本実施形態の説明においては、用紙1またはインクリボン2と接触してこれらのパスラインを決定しつつ搬送に関与するローラは、従動駆動を問わず全て搬送ローラと称することとする。さらに、給紙ロール11より用紙1がパスラインに沿って引き出される方向を、印刷時の動作方向とは無関係に下流側と称することとする。
【0029】
搬送ローラ62a、62bによって位置規制がなされた用紙1は、その後、プラテンローラ3と印刷ヘッド4との間で形成される印刷位置Pに送り込まれて印刷が行われ、その後、送ローラ63および搬送ローラ64a、64bによって位置規制されつつ、図示しないカッターユニットによって切断された後、排出口93より外部に排出される。
【0030】
なお、用紙1の搬送を行うことができる限り、搬送ローラの配置は本図のものに限らず、必要に応じて本数を増減させても良い。
【0031】
本実施形態のプリンタでは、上記のような用紙1が給紙ロール11から排出口93に向かう排出方向とは逆に走行させた状態で印刷を行うようにしており、こうした印刷時に用紙1が走行する方向を印刷方向と称する。このように用紙1に対して印刷を行うために、一旦印刷位置Pよりも下流側に用紙1の印刷対象部分を搬送しておき、プラテンローラ3および搬送ローラ61a〜62bの回転によって用紙1を上流側に搬送しつつ印刷を行うようにされている。
【0032】
こうした印刷方向に対応して、インクリボン2は同じ方向に搬送されるようになっている。そのため、新品のインクリボン2をロール状に外周に巻き付けてある供給側ボビン21は図中の左側に設けられており、印刷位置Pを通過した使用後のインクリボン2が巻き取られる巻取側ボビンは図中の右側に設けられている。
【0033】
インクリボン2は、上述の印刷中の用紙1の印刷方向への動作と併せて、同じ速度で同方向に移動することが必要であるため、インクリボン2は供給側ボビン21より引き出されて、搬送ローラ51〜53に位置規制されつつ巻取側ボビン22に巻き取られるように構成されている。インクリボン2は消耗品であるために、交換できるように供給側ボビン21および巻取側ボビン22は脱着可能に構成されており、それぞれボビン装着部8a、8bに装着されて回転可能に支持されるようになっている。
【0034】
印刷ヘッド4は図示しないヘッド駆動機構によってプラテンローラ4に対して弾接または退避可能とされ、プラテンローラ3に対して弾接した部分が印刷位置Pとして設定される。プラテンローラ3と印刷ヘッド4との間には、プラテンローラ3側に用紙2、印刷ヘッド4側にインクリボン2が位置する関係で重合して挿通され、印刷ヘッド4がプラテンローラ3側に押圧した状態で印刷が実行されて、インクリボン2の染料を用紙1に転写する。
【0035】
供給側ボビン21に巻かれた新品のインクリボン2がなくなり、巻取側ボビン22に使用済みのインクリボン2が全て巻き取られた状態となった場合、新品のインクリボン2に交換することが必要となる。そのために、本実施形態のプリンタでは図示しないセンサによって、インクリボン切れを検知して、その信号を基にしてインクリボン切れエラーが外部に発せられて交換作業を促すようにされている。
【0036】
インクリボン2の交換のため、本実施形態のプリンタは、筐体91の上部にカバー92が設けられており、図2のように、基部を中心に回転することでプリンタの上部が開放して開放部9が形成される。そして、この開放部9を通じてインクリボン2が確認でき、上方よりインクリボン2の交換作業を行うことができるようになっている。
【0037】
交換作業時には、印刷ヘッド4および搬送ローラ51、52は、カバー92と同様に上方に退避するようになっており、インクリボン2の交換の妨げにならないように配慮されている。
【0038】
交換を行うインクリボン2は、図3に示すように、供給側ボビン21と巻取側ボビン22と合わせたインクリボンユニット20として構成されている。供給側ボビン21および巻取側ボビン22は、同じ大きさの円筒形状に形成されている。そして、供給側ボビン21の外周には、新品のインクリボン2が巻かれており、そこから引き出されたインクリボン2の先端は巻取側ボビン22の外周に接着されることで固定されている。なお、この固定方法は両面テープ等による別の手段を用いることも可能である。
【0039】
供給側ボビン21および巻取側ボビン22は、各々インクリボン2の幅よりも長くなる寸法関係に設定されており、インクリボン2の幅方向より両側に端部が突出するようになっている。
【0040】
さらに、巻取側ボビン22の片側端部にはコア23が嵌挿されている。コア23は、巻取側ボビン22と同軸に形成されており、巻取側ボビン22の外径よりも大きな鍔部23bを有するとともに、鍔部23bより軸方向に張り出した嵌挿部23cを巻取側ボビン22の内周に緊密に挿入することで、一体化されるようになっている。鍔部23bから上記嵌挿部23cとは逆方向に軸状突出部としての軸部23aが張り出しており、巻取側ボビン22と同軸をなし、後述するように巻取側ボビン22をプリンタ内部に取り付けるための軸体として機能する。
【0041】
このように、各ボビン端部の計4箇所のうち1箇所のみが軸体として構成されているため、供給側ボビン21と巻取側ボビン22の取付位置を取り違えることがなく、さらにインクリボン2の裏表を誤るような取付方向の間違いを生じることもなくなる。
【0042】
上記のようなインクリボンユニット20のプリンタ内部への取付けは図4および図5のようにして行う。
【0043】
本実施形態のプリンタは、内部で一対のフレーム95、96を有しており、これらのフレーム95、96によって、上述した搬送ロール等は各々軸端を支持されるようにして位置が決定され、図1のようなロール配置がなされるようになっている。
【0044】
図4のようにインクリボンユニット20に対応して、これを装着するための装着部8a、8bが上記一対のフレーム95、96に設けられている。
【0045】
装着部8aは供給側ボビン21を装着するためのものであり、回転自在に設けられた一対の取付軸83、84から構成されている。それぞれの取付軸83、84の供給側ボビン21と対向する側の端部は供給側ボビン21を支持するための凸状の軸受83a、84aとされており、大径に構成されるとともに、その先端の外周がテーパ面を形成するように構成されている。
【0046】
装着部8bは巻取側ボビン22を装着するためのものであり、回転自在に設けられた一対の取付軸81、82から構成されている。取付軸82は供給側ボビンを取り付けるための取付軸83と同じ形状をしており、先端が凸状の軸受82aとして外周にテーパ面を有するようにして構成されている。反対側の取付軸81の一端部には、巻取側ボビン22を支持するための凹状の軸受81aが形成されている。軸受81aは内周がテーパ面として形成されており、当該テーパ面によって上述したコア23の軸部23aを支持することができるようにされている。
【0047】
取付軸81〜84は各々図示しない付勢手段によって軸方向に進出することができるようになっており、インクリボンユニット20側に進出した状態とすることによって、図5のようにして、供給側ボビン21および巻取側ボビン22を支持できるようになっている。
【0048】
この際、取付軸82〜84は先端の外周にテーパ面を有する凸部として形成された軸受82a〜83aによって、各ボビン21、22の端部内周面21a、21b、22aを内側より支持する状態としつつ、自動的にボビン21、22の心出しを行うことができる。同様に、取付軸81によっても先端の内周にテーパ面を有する凹部として形成された軸受81aによって、巻取側ボビン22の端部をコア23を介して支持する状態としつつ、自動的にボビン22の心出しを行うことができる。
【0049】
各ボビン21、22の取外しを行う際には、取付軸81〜84を各々図示しない付勢手段に抗って軸方向に退避させることによって、図4の状態として作業を行うことができる。取付軸81〜84の先端の各軸受81a〜84aが各々テーパ面によってボビン21、22を支持しているため、軸方向に退避するのみで即座に係合状態は解除され、速やかに取外しが行えるようになっている。軸受81a〜84aをテーパ面ではなく、単なる凹状または凸状の円筒面として構成していた場合には、ボビン21、22を支持するための接触面が大きくなり摩擦抵抗が増加することで、取外しが困難になる恐れが生じる。また、ボビン21、22の自重によって作用するモーメントによって軸受部が損傷することも考えられる。
【0050】
なお、本実施形態では、全ての軸受81a〜84aが取り付け軸81〜84とともに軸方向に進退可能に構成したが、ボビン21、22の脱着を行うことができる限り、一対の軸受81a・82a、83a・84aのうち片方のみを進退するように構成しても良い。
【0051】
上述したように、こうしたインクリボンユニット20の交換作業は、図2に示すようにカバー92を開けた開放部9より行われる。本実施形態におけるプリンタでは、開放部9の奥側に巻取側ボビン22が配置され、手前側に供給側ボビン21が配置されている。このように配置されているため、作業スペースの点から新規のインクリボンユニット20を取り付ける際には、手前側の供給側ボビン21を奥側の巻取側ボビン22よりも先に取り付けることは困難なレイアウトとなっている。そのため、通常インクリボンユニット20を交換する作業者は、自ずと奥側の巻取側ボビン22を先に取り付けるように誘導されることになる。
【0052】
なお、上記の手前側とはプリンタの外部に近い方の側を指し、奥側とはよりプリンタ内部よりの側を指す。
【0053】
上述したように、各ボビン端部の計4箇所のうち1箇所のみを軸部21aとして構成したインクリボンユニット20に対応するように、計4箇所に設けた軸受81a〜84aのうち1箇所を上記軸部21aに対応する凹部として構成しているため、供給側ボビン21と巻取側ボビン22の取付位置を取り違えることがなく、さらにインクリボン2の裏表を誤るような取付方向の間違いを生じることもなくなる。
【0054】
さらに、本実施形態のプリンタでは、巻取側ボビン22を取り付けるための軸受81a、82aの一方が凹部として、かつ、他方が凸部として形成されているため、この部分にはこれに対応する形状を有する巻取側ボビン22のみしか装着することができず、誤って供給側ボビン21を取り付ける恐れがない。また、巻取側ボビン22を取り付ける際にも、両端を取り違えて取り付けるおそれがないことから、インクリボン2の裏表を誤ることもない。
【0055】
このようにして、正しく巻取側ボビン22を装着した後には、インクリボン2の捻れが生じないように注意さえすれば、正しく供給側ボビン21も装着することが可能となる。
【0056】
本実施形態とは逆に、巻取側ボビン22を取り付けるための軸受81a、82aが同じ形状とされており、供給側ボビン21を取り付けるための軸受83a、84aが異なる形状とされていた場合には、装着する巻取側ボビン22と供給側ボビン21とを取り違えるおそれはないものの、先に取り付ける巻取側ボビン22を装着する段階で、両端の軸を取り違えインクリボン2の裏表を誤って取り付ける場合が生じ得る。この場合でも、作業者は供給側ボビン21を取り付けようとした段階で誤りに気がつくが、再度巻取側ボビン22を取り外して装着し直す必要が生じるため作業時間が増加してしまう。これに対して、本実施形態のように構成すれば、巻取側ボビン22の装着段階で取り付け方向の誤りさえ生じることがない。
【0057】
以上のように、本実施形態に係るプリンタは、インクリボン2が巻かれた供給側ボビン21と、当該供給側ボビン21より繰り出されたインクリボン2を巻き取る巻取側ボビン22とを各々装着するための装着部8a、8bを具備し、前記装着部8a、8bが前記供給側ボビン21または前記巻取側ボビン22を回転可能に各々支持する一対の軸受81a〜84aを備えており、前記装着部8a、8bが有する4つの軸受81a〜84aのうちひとつの軸受81aが凹部として形成されるとともに他の3つの軸受82a〜84aが凸部として形成されるようにして構成したものである。
【0058】
このように構成しているため、供給側ボビン21および巻取側ボビン22の端部をプリンタ側の軸受81a〜84a対応した形とすることが必要となり、取り付けるプリンタ装着部8a、8bの軸受81a〜84aとボビン21、22の端部とが凹凸の組み合わせとなる箇所でしか嵌め合わせることができなくなる。これにより、インクリボン21の交換の際にボビン21、22を特定の位置及び方向でしか取り付けることができなくなるため、インクリボン2の交換の際に各ボビン21、22の取付位置や方向を誤ることがなく作業が行いやすいプリンタを提供することができる。また、インクリボンユニット20をカセット方式とする必要がないことからプリンタのコンパクト化およびコストダウンを行うこともできる。
【0059】
また、前記一対の軸受81a・82a、83a・84aのうち少なくともいずれか一方を軸方向に移動させる付勢手段を前記装着部8a、8bに設けるようにして構成しているため、付勢手段によって軸方向に軸受を移動させて容易にボビン21、22の脱着を行うことができる。
【0060】
また、前記軸受81aを形成する凹部の内周面がテーパ状に形成されるようにして構成されているため、軸受81aを軸方向に移動させる過程で、相手側ボビン21の端部の軸状突出部23aを介して自動的にボビン21の心出しを行わせることが可能となるとともに、ボビン22の交換の際にも容易に取り外すことが可能となる。
【0061】
また、前記軸受82a〜84aを形成する凸部の外周面がテーパ状に形成されるようにして構成されているため、軸受82a〜84aを軸方向に移動させる過程で、相手側ボビンの端部内周面21a、21b、22aを介して自動的にボビン21、22の心出しを行わせることが可能となるとともに、ボビン21、22の交換の際にも容易に取り外すことが可能となる。
【0062】
また、インクリボン2を交換する際に開放可能な開放部9を備えており、前記2つの装着部8a、8bのうち、一対の軸受81a、82aを凹部および凸部として異なるように形成した装着部8bを前記開放部9内の奥側に配置し、他方の装着部8aを前記開放部9内の手前側に配置するようにして構成しているため、インクリボン2の交換時に先にボビン21、22を取り付ける装着部8bの軸受8a、8bを凹部と凸部の組合わせとして構成しておくことで、ボビン21、22の取付方向を誤ることなく、より短時間で確実にインクリボン2の交換作業を行うことができる。
【0063】
さらに、本実施形態に係るインクリボンユニット20は、上記のいずれかに記載のプリンタに装着するものであって、インクリボン2が巻かれた供給側ボビン21と、当該供給側ボビン21より繰り出されるインクリボン2の端部を外周に固定された巻取側ボビン22とを備えており、前記供給側ボビン21および前記巻取側ボビン22が円筒状に形成されているとともに、前記供給側ボビン21の両端部および前記巻取側ボビン22の両端部のうち1箇所に軸状突出部23aを有するコア23を嵌挿しているように構成したものである。
【0064】
このように構成しているため、上記プリンタとともにボビン21、22の取り付け位置および取り付け方向を誤ることがなく、短時間に交換作業を行うことができるようになる。
【0065】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0066】
例えば、上述の実施形態では、供給側ボビン21の両端部および前記巻取側ボビン22の両端部のうち1箇所に軸状突出部23aを有するコア23を嵌挿するようにして構成していたが、3箇所に軸状突出部23aを有するコア23を嵌挿する構成として、対応する軸受も4箇所のうち3箇所を凹部として形成し、他の1箇所を凸部として形成することでも上記と同様の効果を得ることが可能である。すなわち、端部の4箇所のうち1箇所を他の3箇所と異なる形状にしておくことが肝要であり、こうすることで各ボビン21、22の取り付け位置および取り付け方向を誤ることはない。
【0067】
また、本発明の効果は、インクリボンユニット20を用いるプリンタであれば、どのようなロール配置のものにでも適用可能であり、例えば図6のようなものであっても差し支えない。図6は、外側の筐体191から、内部筐体192を排出口193の側に引き出すことが可能となっており、図7のようにして内部筐体192とともにインクリボン2引き出され、上方に形成される開放部9よりインクリボン2の交換が可能となっている。
【0068】
この場合においても、上述した実施形態の場合と同様に、開放部9より奥側に巻取側ボビン22の装着部8bが形成され、手前側に供給側ボビン21の装着部8aが形成されており、巻取側ボビン22の装着部8aに形成する一対の軸受のうち片方を凹部として、他方を凸部として形成することによって、上記と同様に先に取り付けるボビン22を装着する際の段階より、ボビン21、22の取り違えや取り付け方向の誤りを防止することが可能である。
【0069】
その他の構成も、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…用紙
2…インクリボン
3…プラテンローラ
4…印刷ヘッド
8a、8b…ボビン装着部
9…開放部
11…給紙ロール
20…インクリボンユニット
21…供給側ボビン
22…巻取側ボビン
23…コア
51〜53…インクリボン搬送ローラ
61a〜64b…用紙搬送ローラ
81〜84…ボビン取付軸
91…筐体
92…カバー
93…排出口
95、96…フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクリボンが巻かれた供給側ボビンと、当該供給側ボビンより繰り出されたインクリボンを巻き取る巻取側ボビンとを各々装着するための装着部を具備し、
前記装着部が前記供給側ボビンまたは前記巻取側ボビンを回転可能に各々支持する一対の軸受を備えており、
前記装着部が有する4つの軸受のうちいずれかひとつの軸受が凹部として形成されるとともに他の3つの軸受が凸部として形成され、または、いずれかひとつの軸受が凸部として形成されるとともに他の3つの軸受が凹部として形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記一対の軸受のうち少なくともいずれか一方を軸方向に移動させる付勢手段を前記装着部に設けたことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記軸受の一部を構成する凹部の内周面がテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記軸受の一部を構成する凸部の外周面がテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項5】
インクリボンを交換する際に開放可能な開放部を備えており、
前記2つの装着部のうち、一対の軸受を凹部および凸部として異なるように構成した装着部を前記開放部内の奥側に配置し、他方の装着部を前記開放部内の手前側に配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプリンタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のプリンタに装着するものであって、
インクリボンが巻かれた供給側ボビンと、当該供給側ボビンより繰り出されるインクリボンの端部を外周に固定された巻取側ボビンとを備えており、
前記供給側ボビンおよび前記巻取側ボビンが円筒状に形成されているとともに、前記供給側ボビンの両端部および前記巻取側ボビンの両端部のいずれか1箇所、またはいずれか3箇所に軸状突出部を有するコアを嵌挿していることを特徴とするインクリボンユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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