説明

プリンタ変換装置およびプリンタ変換方法

【課題】計算機システムでのプリンタ更新時における更新プリンタと既存プリンタの互換性問題を有効に解消することを可能とするプリンタ変換装置の提供。
【解決手段】プリンタ変換装置100は、コントローラCa、Cb、Ccにより複数種類の印刷要求を出力するようになっている計算機システムに用いられ、計算機システムからの印刷要求を受信する複数の入力端子1a、1b、1cを備えるとともに、これら入力端子のそれぞれに対応させて設けられた複数の変換処理ユニット2a、2b、2cを備え、この変換処理ユニットには、複数種類の印刷要求における各印刷コマンドをプリンタ固有の印刷コマンド形式に変換するコマンド変換部13x、13y、13zが、各印刷コマンドの種類に応じた数で設けられるとともに、入力端子を複数のコマンド変換部へ選択的に接続して変換処理ユニットにおける機能の切替をなすための機能切替手段12が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計算機システムから出力される複数種類の印刷要求を1台のプリンタで処理できるようにするためのプリンタ変換技術に関する。
【背景技術】
【0002】
計算機システムにおいては、そこで使用されるプリンタの消耗度が比較的高いことから、計算機システムの運用中にプリンタの更新を必要とするのが一般的である。しかしプリンタを更新する際には、そのプリンタのメーカやバージョンにより互換性に問題を生じる。すなわち更新プリンタに既存プリンタとの互換性がないと、更新プリンタが正常に動作しないという問題である。この問題は、近年の情報機器分野における急速な技術革新の影響を受けてさらに大きくなってきている。従来では、こうした問題を生じた場合に、計算機システムにおけるホスト計算機のアプリケーションソフトに変更を加えることで対応するのが一般的であった。
【0003】
しかし、計算機システムによっては、ホスト計算機のアプリケーションソフトを変更することができない場合もある。そのような場合に対処する技術の一つが特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、各種のコンピュータから出力されるプリンタ制御コードがプリンタで正しく受け取れるようにそのプリンタに適合したプリンタ制御コードに変換して正しい印字を行えるようにするプリンタ制御コード変換装置システムを用いることで対処している。なお、特許文献1の技術に類似した技術は、特許文献2や特許文献3にも開示されている。
【0004】
また計算機システムにおいては、プリンタの動作に伴う消費電力をできるだけ節減できるようにすることが望まれる。計算機システムでは、一般に、24時間、何時印刷要求が発生するか不定であり、また印刷結果が即座に必要となることもまれである。そのため、計算機システムから随時出力される各印刷要求をある時間にまとめて印刷するようにしてプリンタにおける省電力化を図ることができる。そのような技術としては例えば特許文献4に開示の例が知られている。
【0005】
【特許文献1】特開平6−19645号公報
【特許文献2】特開平7−276742号公報
【特許文献3】特開平6−149499号公報
【特許文献4】特開2003−308182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プリンタの互換性問題に対処するのに、特許文献1におけるプリンタ制御コード変換装置システムを用いるような手法は有効である。しかし特許文献1のプリンタ制御コード変換装置システムは、プリンタと1対1となり、プリンタごとに個別に設置する必要がある。このため、更新対象とする既存プリンタの台数だけ変換装置システムと新たなプリンタを整える必要があることになり、プリンタの更新に要するコストが増大してしまうという問題を残している。
【0007】
また計算機システムにおけるプリンタの省電力化を図るのに、計算機システムから随時出力される各印刷要求をある時間にまとめて印刷できるようにする特許文献2に開示の技術は有効である。しかし特許文献4に開示の技術は、これを適用するのに計算機システムのアプリケーションソフトを書き換える必要性があり、アプリケーションソフトの書換えが不可能な計算機システムには導入することができないという問題を抱えている。
【0008】
本発明は、以上のような従来の事情を背景になされたものであり、計算機システムでのプリンタ更新時における更新プリンタと既存プリンタの互換性問題を有効に解消することを可能とし、しかも複数台の更新対象プリンタに対して新たなプリンタを1台で済ませることを可能とし、さらにどのような計算機システムであっても印刷における省電力化などを可能とするプリンタ変換装置とプリンタ変換方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるプリンタ変換装置は、複数種類の印刷要求を出力するようになっている計算機システムに用いられ、前記複数種類の印刷要求を前記1台のプリンタで処理させることができるようにされ、前記印刷要求を受信する複数の入力端子を備えるとともに、前記複数の入力端子のそれぞれに対応させて設けられた複数の変換処理ユニットを備え、前記変換処理ユニットには、前記複数種類の印刷要求における各印刷コマンドを前記プリンタ固有の印刷コマンド形式に変換するコマンド変換部が、前記各印刷コマンドの種類に応じた数で設けられるとともに、前記入力端子を前記複数のコマンド変換部へ選択的に接続して前記変換処理ユニットにおける機能の切替をなすための機能切替手段が設けられていることを特徴としている。
【0010】
また本発明では上記のようなプリンタ変換装置について、前記コマンド変換部で変換生成した前記プリンタ固有印刷コマンドを印刷データとともに蓄積するデータ蓄積手段を設けるとともに、印刷スケジュールに関する設定を可能とする仕様設定部を設け、前記仕様設定部では、タイマ起動時刻から予め設定の単位時間が経過するまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記タイマ起動時刻から前記単位時間が経過するごとに前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行するタイムアップ印刷、予め設定してある定刻印刷設定時刻になるまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記定刻印刷設定時刻になった時点で前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行する定刻印刷、および前記計算機システムからの印刷要求の出力と同時的に印刷を実行する即時印刷を選択的に設定できるようにしている。
【0011】
本発明によるプリンタ変換方法は、複数種類の印刷要求を出力するようになっている計算機システムで用いられ、前記複数種類の印刷要求を前記1台のプリンタで処理できるようにされ、複数で設けられている入力端子のいずれかで前記印刷要求を受信する処理、前記複数の入力端子のそれぞれに対応させて設けられている変換処理ユニットが有するコマンド変換部により、前記複数種類の印刷要求における各印刷コマンドを前記プリンタに固有の印刷コマンド形式に変換する処理、および前記変換処理ユニットが有する機能切替手段により、前記入力端子を前記複数のコマンド変換部へ選択的に接続して前記変換処理ユニットにおける機能の切替をなす処理を含んでいることを特徴としている。
【0012】
また本発明では上記のようなプリンタ変換方法について、前記コマンド変換部で変換生成した前記プリンタ固有印刷コマンドを印刷データとともにデータ蓄積手段に蓄積する処理をさらに含み、印刷スケジュールに関する設定を可能とする仕様設定部により、タイマ起動時刻から予め設定の単位時間が経過するまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記タイマ起動時刻から前記単位時間が経過するごとに前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行するタイムアップ印刷、予め設定してある定刻印刷設定時刻になるまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記定刻印刷設定時刻になった時点で前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行する定刻印刷、および前記計算機システムからの印刷要求の出力と同時的に印刷を実行する即時印刷を選択的に設定できるようにしている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるプリンタ変換装置は、複数の変換処理ユニットを備え、計算機システムからの複数種類の印刷要求のそれぞれにおける印刷コマンドを1台のプリンタに固有な印刷コマンドに変換できるようにされている。このため本発明によれば、プリンタ更新時に互換性の問題を招かずに済む。また更新対象プリンタが複数台である場合でも新たなプリンタを1台ないし更新対象プリンタの台数より少ない台数で済ませることができる。さらに複数の印刷要求を1台のプリンタに集約させて処理できることから、複数の印刷要求を所望の時間帯にまとめて処理するスケジュール印刷が可能となり、このスケジュール印刷により、どのような計算機システムであっても印刷における省電力化などが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施する上で好ましい形態について説明する。図1に一実施形態によるプリンタ変換方法を実行させるプリンタ変換装置の構成を示す。図1では、プリンタ変換装置の計算機システムへの接続関係も併せて示してある。なお計算機システムは、1台または複数台の計算機(コンピュータ)で構成されるシステムであるが、その構成計算機の図示は省略してある。
【0015】
本実施形態のプリンタ変換装置100は、シリアルプリンタコントローラCa、ハードコピーコントローラCbおよびページプリンタコントローラCcという3種類のコントローラを有する計算機システムに適用する場合の例として構成とされている。3種のコントローラCa、Cb、Ccからはそれぞれ種類の異なる印刷要求が出力される。具体的には、シリアルプリンタコントローラCaからはシリアルプリンタ印刷要求が出力され、ハードコピーコントローラCbからはハードコピー印刷要求が出力され、ページプリンタコントローラCcからはページプリンタ印刷要求が出力される。また各印刷要求は、それぞれデータ形式が異なる印刷コマンドを伴っている。プリンタ変換装置100は、それらの印刷要求における印刷コマンド(以下、適宜に入力印刷コマンドと称す)をプリンタPに固有の印刷コマンド(以下、適宜にプリンタ固有印刷コマンドと称す)の形式に変換し、1台のプリンタPで集約的に処理できるようにする。ここで、プリンタPは、計算機システムに設けられるプリンタであり、プリンタ更新で新たに設置されたプリンタである。
【0016】
プリンタ変換装置100は、入力端子1、変換処理ユニット2、印刷要求スプーラ3、仕様設定部4、出力端子5、および入力出力端子6を備え、入力出力端子6を介して設定用のコンピュータ(パソコン)7を接続できるようにされている。
【0017】
入力端子1は、計算機システムからの印刷要求を受信するためのものであり、計算機システムから3種類の印刷要求が出力されるのに対応して入力端子1a、1b、1cの3個が設けられている。すなわち入力端子1は、計算機システムから出力される複数種類の印刷要求を個々に受信することができるようにする数で設けられることになる。入力端子1には、例えばセントロニクス仕様やRS−232Cなどのインターフェース規格を用いることができる。
【0018】
変換処理ユニット2は、入力端子1に対応して設けられるものであり、本実施形態では入力端子1a、1b、1cのそれぞれに対応させて3個の変換処理ユニット2a、2b、2cが設けられている。変換処理ユニット2(2a、2b、2c)は、計算機システムから出力される印刷要求の種類数に応じた数ないしそれ以上の数の処理経路11を設けるとともに、これらの処理経路11に入力端子1からの入力を選択的に接続することで変換処理ユニット2における機能の切替をなすための機能切替手段12を設けて構成される。ここで、変換処理ユニット2の機能には、後述するように、シリアルプリンタ印刷要求における印刷コマンドのプリンタ固有印刷コマンドへの変換、ページプリンタ印刷要求における印刷コマンドのプリンタ固有印刷コマンドへの変換およびハードコピー印刷要求における印刷コマンドのプリンタ固有印刷コマンドへの変換という3種類がある。本実施形態では、このように計算機システムからの印刷要求とそれに伴う印刷コマンドが3種類であることから、3個の処理経路11x、11y、11zを設け、これに対応して処理経路11x、11y、11zの何れかに入力端子1からの入力を選択的に接続できるように機能切替手段12を構成している。
【0019】
処理経路11xは、シリアルプリンタ印刷要求用であり、シリアルプリンタ印刷要求における印刷コマンドをプリンタ固有印刷コマンドに変換するコマンド変換部13xとコマンド変換部13xで変換した印刷コマンドデータを印刷データ(印刷オブジェクトデータ)とともに一時的に蓄積する個別スプーラ14xで構成される。処理経路11yは、ページプリンタ印刷要求用であり、ページプリンタ印刷要求における印刷コマンドをプリンタ固有印刷コマンドに変換するコマンド変換部13yとコマンド変換部13yで変換した印刷コマンドデータを印刷データとともに一時的に蓄積する個別スプーラ14yで構成される。処理経路11zは、ハードコピー印刷要求用であり、ハードコピー印刷要求における印刷コマンドをプリンタ固有印刷コマンドに変換し、また必要に応じて印刷データをプリンタPに適合するデータ形式に変換する処理も行うコマンド変換部13zとコマンド変換部13zで変換した印刷コマンドデータを印刷データとともに一時的に蓄積する個別スプーラ14zで構成される。ここで、シリアルプリンタ印刷要求やページプリンタ印刷要求の場合は、印刷データについてはデータ形式の変換を必要としない。一方、ハードコピー印刷要求については、計算機システムからの印刷データに写真や画像といったイメージデータが含まれ、そのイメージデータが例えばYMC形式であり、プリンタPで扱えるイメージデータの形式がRGBであるといった場合があり、このような場合には印刷データについても変換を必要とする。本実施形態では、上記のように、この印刷データの変換もコマンド変換部13zで行わせるようにしている。
【0020】
機能切替手段12は、本実施形態におけるようにディップスイッチを用いて構成することができ、また必要に応じてプログラムで構成することもできる。
【0021】
印刷要求スプーラ3は、後述するようなスケジュール印刷を可能とするためのデータ蓄積にも機能するデータ蓄積手段であり、変換処理ユニット2a、2b、2cのそれぞれで生成された印刷コマンドデータを印刷データとともにまとめて印刷待ち状態にして蓄積しておくのに用いられる。印刷要求スプーラ3に蓄積された印刷待ち状態にあるデータは、仕様設定部4においてスケジュール印刷機能として設定される印刷開始時間になるまで蓄積し続けられる。そしてその時間になると、プリンタ変換装置100はプリンタPに対して印刷要求を出し、印刷要求スプーラ3に蓄積されたデータの印刷処理を開始する。
【0022】
仕様設定部4は、印刷に関するスケジュールなどの仕様をプリンタ変換装置100において設定するための機能部であり、図2にその構成を示すように、集約ページ・行数設定部21、即時印刷設定部22(シリアルプリンタ印刷要求用即時印刷設定部22x、ページプリンタ印刷要求用即時印刷設定部22y、ハードコピー印刷要求用即時印刷設定部22z)、印刷タイマ作動時間設定部23、および印刷時刻設定部24を有している。
【0023】
出力端子5は、プリンタ変換装置100をプリンタPに接続するための端子である。出力端子5には、例えばセントロニクス仕様やRS−232CあるいはUSBなどのインターフェース規格を用いることができる。
【0024】
入力出力端子6は、設定用のパソコン7を接続するための端子であり、例えばセントロニクス仕様やRS−232CあるいはUSBなどのインターフェース規格で形成される。
【0025】
設定用のパソコン7は、必要に応じて接続されるものであり、仕様設定部4における設定の内容をユーザが適宜に変更する場合などに使用される。また設定用のパソコン7は、プリンタPでプリントアウトされたデータに対応する電子データを必要に応じて保存しておくのにも用いることができる。
【0026】
以下では、プリンタ変換装置100によるプリンタ変換方法の実行における処理の概要について説明する。プリンタ変換装置100を計算機システムに接続するには、計算機システムの各コントローラCa、Cb、Ccを入力端子1a、1b、1cに適宜に接続する。図1の例では、シリアルプリンタコントローラCaを入力端子1aに接続し、ハードコピーコントローラCbを入力端子1bに接続し、ページプリンタコントローラCcを入力端子1cに接続している。それから変換処理ユニット2a、2b、2cのそれぞれについて機能切替手段12を操作し、入力端子1a、1b、1cへのコントローラCa、Cb、Ccの接続状態に応じて、入力端子1からの入力を処理経路11x、11y、11zの何れかに選択的に接続する。図1の例では、シリアルプリンタコントローラCaが接続された入力端子1aに対応する変換処理ユニット2aでは入力端子1aからの入力をシリアルプリンタ印刷要求用の処理経路11xに接続し、ハードコピーコントローラCbが接続された入力端子1bに対応する変換処理ユニット2bでは入力端子1bからの入力をハードコピー印刷要求用の処理経路11zに接続し、ページプリンタコントローラCcが接続された入力端子1cに対応する変換処理ユニット2cでは入力端子1cからの入力をページプリンタは印刷要求用の処理経路11yに接続している。
【0027】
により、計算機システムのシリアルプリンタコントローラCaから出力される印刷要求は、入力端子1aから変換処理ユニット2aの処理経路11xに入力する。そしてその印刷要求における印刷コマンドは、コマンド変換部13xでプリンタ固有印刷コマンドに変換される。コマンド変換部13xで変換生成されたプリンタ固有印刷コマンドは、個別スプーラ14xに印刷データとともに一時的に蓄積された後、印刷要求スプーラ3へ送られる。個別スプーラ14xにおけるデータの蓄積では、印刷データの集約もなされる。すなわち、図3に示すように、個別スプーラ14xにおいて1行ごとの印刷データ31を1ページ分で集約した集約印刷データ32とし、この集約が完了した時点でデータを印刷要求スプーラ3へ送る。こうした印刷データの集約の仕方は、仕様設定部4における集約ページ・行数設定部21に設定されており、その内容は、設定用のパソコン7によりユーザが適宜に変更することができる。
【0028】
計算機システムのページプリンタコントローラCcから出力される印刷要求は、入力端子1cから変換処理ユニット2cの処理経路11yに入力する。そしてその印刷要求における印刷コマンドは、コマンド変換部13yでプリンタ固有印刷コマンドに変換される。コマンド変換部13yで変換生成されたプリンタ固有印刷コマンドは、個別スプーラ14yに印刷データとともに一時的に蓄積された後、印刷要求スプーラ3へ送られる。
【0029】
計算機システムのハードコピーコントローラCbから出力される印刷要求は、入力端子1bから変換処理ユニット2bの処理経路11zに入力する。そしてその印刷要求における印刷コマンドは、コマンド変換部13zでプリンタ固有印刷コマンドに変換される。また本実施形態では、計算機システムからの印刷データにおけるイメージデータがYMC形式であり、プリンタPで扱えるイメージデータの形式がRGBであることから、ハードコピー印刷要求におけるイメージデータ形式の印刷データについてもコマンド変換部13zで変換を行う。コマンド変換部13zで変換生成されたプリンタ固有印刷コマンドと印刷データは、個別スプーラ14zに一時的に蓄積された後、印刷要求スプーラ3へ送られる。
【0030】
次に、コマンド変換部におけるデータ形式の変換処理の例について説明する。コマンド変換部13xとコマンド変換部13yにおける変換処理方式は基本的に共通である。その変換処理の概念を図4に示す。この例の方式では、入力印刷コマンド用テーブル31とプリンタ固有印刷コマンド用テーブル32の両方を対応させた書き換え可能な変換テーブルを設け、この変換テーブルにより入力印刷コマンド(コントローラ入力側印刷コマンド)をプリンタ固有印刷コマンド(プリンタ出力側印刷コマンド)に置換えることで変換を行うようにしている。入力印刷コマンド用テーブル31やプリンタ固有印刷コマンド用テーブル32には、各メーカの代表的な印刷コマンドに対応したものが用意される。また必要ならば、設定用パソコン7で変換テーブルを書き換えることで印刷コマンドの種類に応じることも可能である。このため計算機システムやプリンタPの種類に対する適合性を高いものとなる。
【0031】
コマンド変換部13zにおける変換処理の概念を図5と図6に示す。この例では、ハードコピー印刷要求における印刷コマンドをプリンタ固有印刷コマンドに変換するとともに、ハードコピー印刷要求におけるYMC形式のイメージデータをRGB形式に変換する。印刷コマンドの変換は、上述のコマンド変換部13xやコマンド変換部13yにおけるそれと同様である。イメージデータの変換は、変換元のデータにおける「0」、「1」をY、M、Cのそれぞれごとに読み取って1つに合成する。そしてその合成データから図6に示すように、YMCカラーテーブル41とRGBカラーテーブル42の対応関係から信号を読み取り、R、G、Bのそれぞれに振り分けることで変換する。
【0032】
次に、印刷スケジュール機能について説明する。印刷スケジュールには、時間指定の印刷方式(タイマ印刷)であるタイムアップ印刷と定刻印刷があり、また印刷要求の出力と同時的に印刷する方式である即時印刷がある。
【0033】
タイムアップ印刷は、印刷タイマ作動時間設定部23に予め設定してある単位時間が経過するごとに印刷を実行する方式である。タイムアップ印刷における処理の時間的な流れを図7に示す。タイムアップ印刷では、ある時刻t1でタイマ(タイマは仕様設定部4などに設けられることになるが、その図示は省略してある)を起動させ、そのタイマ起動時刻t1から予め設定の単位時間Tだけタイマがカウントを続ける。この間は、計算機システムからの印刷要求の入力に応じて上述のような変換処理などを行いながら個別スプーラ14x、14y、14zからデータ(印刷コマンドデータと印刷データ)を印刷要求スプーラ3に蓄積し続ける。そして時刻t2でタイマカウントアップになると、その時点から印刷を開始し、印刷要求スプーラ3に蓄積されている印刷データの全てについて印刷を実行する。この印刷が終了したらその時刻t3で再びタイマを起動させ、以上のような処理を繰り返す。このようなタイムアップ印刷により、計算機システムから不定時で出力される印刷要求をまとめて処理することで、プリンタPの動作時間を集中させるができ、省電力化を図ることができる。
【0034】
定刻印刷は、印刷時刻設定部24で印刷の開始時刻(定刻印刷設定時刻)を予め指定し、その指定印刷開始時刻になると印刷要求スプーラ3に蓄積されている印刷データの全てについて印刷を実行する方式である。定刻印刷における処理の時間的な流れを図8に示す。定刻印刷では、定刻印刷設定時刻tsを予め指定しておき、この定刻印刷設定時刻tsになるまでは、計算機システムからの印刷要求の入力に応じて上述のような変換処理などを行いながら個別スプーラ14x、14y、14zからデータを印刷要求スプーラ3に蓄積し続ける。そして定刻印刷設定時刻tsになったらその時点から印刷を開始し、印刷要求スプーラ3に蓄積されている印刷データの全てについて印刷を実行する。この印刷が終了したら、再び印刷要求スプーラ3へのデータの蓄積を開始し、それを定刻印刷設定時刻tsになるまで続ける。このような定刻印刷は、タイムアップ印刷と同様に、計算機システムからの印刷要求をまとめて処理することによるプリンタPの省電力化という効果に加えて、印刷コストの低減を図れるという効果がある。すなわち定刻印刷設定時刻tsを夜間に設定することで、電気料金の安い時間帯にまとめて印刷処理を行わせることができ、これにより印刷コストの低減を図ることができる。
【0035】
ここで、タイムアップ印刷や定刻印刷については、印刷開始時刻までに印刷要求スプーラ3がオーバーフローしてしまう場合が考えられる。そのような事態を生じた場合には、その時点で蓄積されているデータの全てについて印刷処理を実行し、それが終了した時点でタイマの起動を行い、あるいは印刷要求スプーラ3へのデータの蓄積を新たに開始し、それを定刻印刷設定時刻tsまで続ける。
【0036】
即時印刷は、計算機システムからの印刷要求の入力と同時的に印刷を行う必要のある印刷要求に対応するための方式である。即時印刷における処理の時間的な流れを図9に示す。即時印刷では、即時の印刷を必要とする印刷要求ごとに即時印刷設定部22(シリアルプリンタ印刷要求用即時印刷設定部22x、ページプリンタ印刷要求用即時印刷設定部22y、ハードコピー印刷要求用即時印刷設定部22z)で即時印刷の設定を行う。即時印刷が設定された印刷要求が計算機システムから入力すると、上述のような処理を経てデータが印刷要求スプーラ3に蓄積される。そして当該印刷要求におけるデータの印刷要求スプーラ3への蓄積が完了した時刻txで印刷を開始する。この場合、既にプリンタPが作動していることになるので、即時印刷設定の印刷要求分の印刷データだけでなく、時刻txまでに印刷要求スプーラ3に蓄積されている印刷データの全てについて印刷を実行するようにするのが合理的である。ただし、即時印刷に伴ってタイムアップ印刷分の印刷データも印刷した場合には、その印刷の終了時点tyでタイマを起動させる。また即時印刷に伴って定刻印刷分の印刷データも印刷した場合には、その印刷の終了時点以降いついて図8の定刻印刷設定時刻tsまで印刷要求スプーラ3へのデータの蓄積を続ける。
【0037】
以上のように、プリンタ変換装置100は、計算機システムからの複数種類の印刷要求のそれぞれにおける印刷コマンドを1台のプリンタに固有な印刷コマンドに変換することができる。このためプリンタ変換装置100を計算機システムとプリンタの間に介在させることにより、プリンタ更新時に互換性の問題を招かずに済む。また更新対象プリンタが複数台である場合でも新たなプリンタを1台ないし更新対象プリンタの台数より少ない台数で済ませることができる。また上記のような複数のスケジュール印刷機能を適宜に組み合わせることで、ユーザの要望に応えつつプリンタにおける省電力化や印刷コストの低減を図ることができる。またこのようなスケジュール印刷機能を、計算機システムとプリンタの間に介在するプリンタ変換装置で設定できるようにしたことにより、計算機システムのアプリケーションソフトを書き換えなくともスケジュール印刷が可能となり、アプリケーションソフトの書換えが不可能な計算機システムでもスケジュール印刷によるプリンタの省電力化や印刷コストの低減を図ることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、計算機システムにおけるプリンタの更新時におけるプリンタの互換性問題を有効に解消し、またプリンタの省電力化などを可能とするものであり、情報処理分野に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】一実施形態によるプリンタ変換装置の構成を示す図である。
【図2】仕様設定部の構成を示す図である。
【図3】個別スプーラにおける印刷データの集約を説明する図である。
【図4】シリアルプリンタ印刷要求用やページプリンタ印刷要求用のコマンド変換部における変換処理を説明する図である。
【図5】ハードコピー印刷要求用のコマンド変換部における変換処理を説明する図である。
【図6】イメージデータのYMC形式からRGB形式への処理を説明する図である。
【図7】タイムアップ印刷における処理の時間的な流れを示す図である。
【図8】定刻印刷における処理の時間的な流れを示す図である。
【図9】即時印刷における処理の時間的な流れを示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 入力端子
2 変換処理ユニット
3 データ蓄積手段
4 仕様設定部
13 コマンド変換部
12 機能切替手段
P プリンタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数種類の印刷要求を出力するようになっている計算機システムに用いられ、前記複数種類の印刷要求を前記1台のプリンタで処理できるようにするためのプリンタ変換装置であって、
前記印刷要求を受信する複数の入力端子を備えるとともに、前記複数の入力端子のそれぞれに対応させて設けられた複数の変換処理ユニットを備え、前記変換処理ユニットには、前記複数種類の印刷要求における各印刷コマンドを前記プリンタに固有の印刷コマンド形式に変換するコマンド変換部が、前記各印刷コマンドの種類に応じた数で設けられるとともに、前記入力端子を前記複数のコマンド変換部へ選択的に接続して前記変換処理ユニットにおける機能の切替をなすための機能切替手段が設けられていることを特徴とするプリンタ変換装置。
【請求項2】
前記コマンド変換部で変換生成した前記プリンタ固有印刷コマンドを印刷データとともに蓄積するデータ蓄積手段を備えるとともに、印刷スケジュールに関する設定を可能とする仕様設定部を備えており、前記仕様設定部では、タイマ起動時刻から予め設定の単位時間が経過するまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記タイマ起動時刻から前記単位時間が経過するごとに前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行するタイムアップ印刷、予め設定してある定刻印刷設定時刻になるまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記定刻印刷設定時刻になった時点で前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行する定刻印刷、および前記計算機システムからの印刷要求の出力と同時的に印刷を実行する即時印刷を選択的に設定できるようにされている請求項1に記載のプリンタ変換装置。
【請求項3】
複数種類の印刷要求を出力するようになっている計算機システムで用いられ、前記複数種類の印刷要求を前記1台のプリンタで処理できるようにするためのプリンタ変換方法であって、
複数で設けられている入力端子のいずれかで前記印刷要求を受信する処理、前記複数の入力端子のそれぞれに対応させて設けられている変換処理ユニットが有するコマンド変換部により、前記複数種類の印刷要求における各印刷コマンドを前記プリンタに固有の印刷コマンド形式に変換する処理、および前記変換処理ユニットが有する機能切替手段により、前記入力端子を前記複数のコマンド変換部へ選択的に接続して前記変換処理ユニットにおける機能の切替をなす処理を含んでいることを特徴とするプリンタ変換方法。
【請求項4】
前記コマンド変換部で変換生成した前記プリンタ固有印刷コマンドを印刷データとともにデータ蓄積手段に蓄積する処理をさらに含み、印刷スケジュールに関する設定を可能とする仕様設定部により、タイマ起動時刻から予め設定の単位時間が経過するまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記タイマ起動時刻から前記単位時間が経過するごとに前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行するタイムアップ印刷、予め設定してある定刻印刷設定時刻になるまでは前記データ蓄積手段にデータを蓄積し、前記定刻印刷設定時刻になった時点で前記データ蓄積手段に蓄積の印刷データの印刷を実行する定刻印刷、および前記計算機システムからの印刷要求の出力と同時的に印刷を実行する即時印刷を選択的に設定できるようにされている請求項3に記載のプリンタ変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−85212(P2006−85212A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266224(P2004−266224)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000153443)株式会社 日立ハイコス (359)
【Fターム(参考)】