説明

プリンタ装置

【課題】 媒体出入口に挿入セットされた通帳を詰まらせたり、損傷させたりすることなく、良好に取込搬送できるようにする。
【解決手段】 媒体出入口32に挿入セットされて取込搬送される通帳をその搬送方向に対して交差する方向に送ってその一側面部を当接フレーム26に当接させることにより、ドットヘッド9aの印字領域に対して位置決めし、ステイトメント用紙の搬送時には搬送路6bから当接フレーム26を退避させる横整合機構24と、媒体出入口32に挿入セットされた通帳の一側面部が当接フレーム26よりも内側に位置するか否かを判断し、その判断結果に基づいて通帳の取込搬送を制御する制御部とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、銀行等に設置されるATM装置に用いられるプリンタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプリンタ装置には、通帳(第1の印字媒体)に印字を行うドット印字部とステートメント用紙(第2の印字媒体)に印字を行なうサーマル印字部の異なる2つの印字機構を有するものがある。
【0003】
このプリンタ装置では、異なる2つの印字機構に対しそれぞれ異なる搬送路及び媒体出入口を有している(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、上記したプリンタ装置はそれぞれ異なる搬送路及び媒体出入口を有するため、構成的に複雑化しコスト高になるという不都合があった。
【0005】
そこで、異なる2つの印字機構に対し、共通の搬送路及び媒体出入口を用いて印字できるようにしたプリンタ装置が考えられている。
【0006】
このプリンタ装置では、媒体出入口から挿入される通帳を搬送路に沿って第1の方向に搬送してドット印字で印字したのち、逆方向に搬送して媒体出入口から放出している。また、ステートメント用紙はプリンタ内で搬送路に沿って第1の方向とは逆の第2の方向に搬送してサーマル印字部により印字して媒体出入口から放出している。
【0007】
ところで、このプリンタ装置では、搬送路中に進退自在に位置決め用の突当フレームを設け、ドット印字部に向かって搬送される通帳をその搬送方向と直交する方向に送ることにより、突当フレームに当接させてドット印字部の印字領域に対する位置決めを行なうようになっている。突当フレームはステートメント用紙の搬送時にはステートメント用紙が衝突することがないように搬送路から退避されるようになっている。
【0008】
また、媒体出入口の幅寸法はステートメント用紙の幅寸法に対応して通帳の幅寸法よりも大きくされているため、通帳を所定の正しい位置、即ち、通帳を取込んで搬送しても突当フレームに衝突しない位置に挿入セットできるように媒体出入口には通帳の挿入位置を規制するガイド部が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来においては、通帳が媒体出入口のガイド部を乗り越えた状態で挿入セットされた場合でも、通帳を取り込んで搬送していたため、プリンタ内で通帳が突当フレームに衝突して搬送ジャムが発生したり、損傷させてしまうという不都合があった。
【0010】
本発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、媒体出入口に挿入セットされた印字媒体を詰まらせたり、損傷させたりすることなく、良好に取込搬送できるようにしたプリンタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、請求項1記載の発明は、媒体出入口と、この媒体出入口に連通される搬送路を有し、前記媒体出入口に挿入セットされた第1の印字媒体を搬送路に沿って第1の方向に取込搬送したのち、前記第1の方向とは逆の第2の方向に搬送して前記媒体出入口から搬出させ、前記第1の印字媒体よりも幅寸法を大とする第2の印字媒体を前記搬送路に沿って前記第2の方向に搬送して前記媒体出入口から搬出させる搬送手段と、前記搬送路中に前記印字媒体の搬送方向に沿って配設され、前記第1の印字媒体に対し印字するシリアルヘッド及び前記第2の印字媒体に対し印字するラインヘッドと、前記媒体出入口に挿入セットされて取込搬送される前記第1の印字媒体をその搬送方向に対して交差する方向に送ってその一側面部を当接フレームに当接させることにより、前記シリアルヘッドの印字領域に対して位置決めし、前記第2の印字媒体の搬送時には前記搬送路から前記当接フレームを退避させる位置決め手段と、前記媒体出入口に挿入セットされた前記第1の印字媒体の一側面部が前記当接フレームよりも内側に位置するか否かを判断し、その判断結果に基づいて前記挿入セットされた第1の印字媒体の取込搬送を制御する制御手段とを具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、媒体出入口に挿入セットされた印字媒体を詰まらせたり、損傷させたりすることなく、良好に取込搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態であるプリンタ装置を示す側面図。
【図2】図1のプリンタ装置を示す平面図。
【図3】図2のプリンタ装置を示す正面図。
【図4】図3の媒体出入口部を示す斜視図。
【図5】図1のプリンタ装置内の当接フレームが通帳をドット印字部の印字領域に位置するように位置決めする状態を示す図。
【図6】図1のプリンタ装置内の当接フレームが通帳の印字領域がドット印字の印字領域に位置するように位置決めする状態を示す図。
【図7】図1のプリンタ装置の駆動制御系を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態であるプリンタ装置の内部構成を示す側面図である。
【0015】
プリンタ装置は装置本体1を有し、この装置本体1の先端部側には通帳(第1の印字媒体)の出入口とステイトメント用紙(第2の印字媒体)の出口を兼用する媒体出入口(図2、図4に示す)32を有する口体部2が設けられている。
【0016】
装置本体1内の後部側には用紙装填部3が設けられ、この用紙装填部3にはロール状のサーマル用紙4が装填されている。サーマル用紙4の先端部は用紙装填部3から引き出されて搬送路6aに沿って搬送される。搬送路6a中にはサーマル用紙4の搬送方向に沿って順次、ラインヘッドとしてのサーマル印字部7、切断部(図示しない)が配設されている。
【0017】
また、装置本体1内には、通帳を搬送路6bに沿って搬送する通帳用搬送機構10が設けられている。搬送路6bは上記したサーマル用紙4の搬送路6aに接続され、通帳用搬送機構10は搬送路6aから送り出されてくるサーマル用紙4を搬送路6bに沿って搬送する搬送手段としても兼用されるようになっている。
【0018】
通帳用搬送機構10は搬送路6bに所定間隔を存して配設される複数個の搬送ローラ対11a〜11e、出入用ローラ対12、フィードローラ対15によって構成されている。通帳の搬送路6bにはシリアルヘッドとしてのドットヘッド9aを有するドット印字部9が配置され、搬送路6bは口体部2に連通されている。
【0019】
図2は、プリンタ装置の内部構成を示す平面図で、図3はその先端部の口体部2を示す正面図である。
【0020】
装置本体1内の搬送路6b中には、通帳の取込搬送方向に沿って順次、検知部21、通帳の先端検知センサ22、シャッタ23、及び位置決め手段としての横整合機構24が配設されている。横整合機構24の側方部には当接フレーム26が設けられている。
【0021】
検知部21は口体部2の近傍に位置して設けられ、口体部2の媒体出入口32の幅方向に沿って配設される第1乃至第4の検知センサ27〜30を有している。第1乃至第4の検知センサ27〜30は発光素子27a〜30aと、この発光素子27a〜30aに搬送路6bを介して対向する受光素子27b〜30bとから構成される。
【0022】
通帳の先端検知センサ22も発光素子と、この発光素子に搬送路を介して対向する受光素子とから構成されている。
【0023】
シャッタ23は開閉自在に設けられ、通帳が後述するように媒体出入口32の所定位置に正しく挿入セットされたと判別されと開放されるようになっている。
【0024】
横整合機構24は、回転することにより通帳をその搬送方向に対し直交する方向に送る整合ローラ24aを有している。
【0025】
当接フレーム26は整合ローラ24aの回転により送られてくる通帳の一側面部を図5に示すように当接させてドット印字部9の印字領域(定速領域)に対して位置決めするようになっている。
【0026】
なお、当接フレーム26は、通帳の搬送方向に対し直交する方向に移動自在に設けられ、図5に示す状態からさらに図6に示すように所定量外側に移動されて通帳Tの印字領域Taをドット印字部9の印字領域(定速領域)に対して位置決めするようにしても良い。
【0027】
また、当接フレーム26は、通帳よりも幅広のステートメント用紙が搬送されてくるときには搬送路6bの外部に退避されてステートメント用紙を衝突させることのないようになっている。
【0028】
一方、上記した口体部2は、図3及び図4に示すように、幅寸法Wの媒体出入口32を有し、この媒体出入口32の幅方向一端部側には第1のガイド体33が固定的に設けられ、幅方向他端部側には第2のガイド体34が幅方向に移動可能に設けられている。
【0029】
媒体出入口32の幅寸法Wは、適用される最大幅のステートメント用紙に対応されている。第1のガイド体33と第2のガイド体34の離間幅wは、適用される通帳の最大幅寸法に対応されている。
【0030】
第1及び第2のガイド体33,34の互いに対向する側面部がガイド面33a,34aとなっている。通帳は第1及び第2のガイド体33,34のガイド面33a,34aに沿ってガイドされて媒体出入口32に挿入セットされるようになっている。第1のガイド体33のガイド面33aは、上記した当接フレーム26の内側に位置されている。
【0031】
ところで、上記した検知部21を構成する第1乃至第4の検知センサ27〜30のうち、第1の検知センサ27は図2及び図3に示すように、第1のガイド体33のガイド面33aの外側に位置し、第2の検知センサ28は第1のガイド体33のガイド面33aの内側に位置し、それぞれ固定的に設けられている。また、第1の検知センサ27は、上記した当接フレーム26の先端部側に対向するように設けられている。
【0032】
第3の検知センサ29は第2のガイド体34のガイド面34aの内側に位置し、第4の検知センサ30は第2のガイド体34のガイド面34aの外側に位置し、それぞれ媒体出入口32の幅方向に移動自在に設けられている。
【0033】
図7は、通帳搬送機構10の駆動制御系を示すものである。
【0034】
上記した第1乃至第4の検知センサ27〜30及び通帳の先端検知センサ22は、信号回路を介して制御手段としての制御部36に接続され、制御部36には制御回路を介して通帳搬送機構10が接続されている。
【0035】
制御部36は通帳の挿入セット時に第1乃至第4の検知センサ27〜30のうち、第1及び第2のガイド体33,34間に配置される第2及び第3の検知センサ28,29が通帳の先端部を検知するのに基づいて通帳が所定の位置に正しく挿入セットされたものと判断して通帳搬送機構10を駆動させるようになっている。
【0036】
また、制御部36は通帳の挿入セット時に第1乃至第4の検知センサ27〜30のうち、第1及び第2のガイド体33,34の外側に配置される第1及び第4の検知センサ27,30が通帳の先端部を検知するのに基づいて通帳が所定の位置から外れて挿入セットされたものと判断して通帳搬送機構10の駆動を停止させるようになっている。
【0037】
次に、上記した通帳の取込動作について説明する。
【0038】
通帳が媒体出入口32から挿入されてその先端部がシャッタ23に当接されると、検知部21及び先端検知センサ22によって検知される。このとき、通帳が検知部21の第1及び第4の検知センサ27,30によって検知されることなく、第2及び第3の検知センサ28,29のみによって検知されると、制御部36により通帳は所定の位置に正しく挿入セットされたと判断される。
【0039】
この判断により、シャッタ23が開放されるとともに、通帳搬送機構10が駆動されて通帳が取り込み搬送される。この搬送により通帳が横整合機構24に至ると、整合ローラ24aの回転により横方向に送られて当接フレーム26に当接されて図5或いは図6に示すようにドット印字部9の印字領域に対して位置決めされる。位置決められた通帳はドット印字位置に送られてドットヘッド9aの動作により印字が行なわれる。印字が終了すると、通帳搬送機構10が逆駆動されて通帳が逆送りされて媒体出入口32から放出される。
【0040】
ところで、上記した通帳の挿入セット時において、通帳が第2及び第3の検知センサ28,29ではなく、第1の検知センサ27によって検知された場合には、制御部36は、異なる幅の通帳が第1のガイド体33を乗り越えてセットされたものと判断し、シャッタ23を開放することなく、通帳の取り込みを停止する。
【0041】
また、上記したように、通帳が媒体出入口32の所定位置に正しく挿入セットされたと判断されて取り込まれた場合であっても、その取り込みの途中で第1の検知センサ27によって通帳が検知された場合には通帳が斜めの状態で取り込まれていると判断され通帳の取り込みが停止される。
【0042】
なお、ステイトメント用紙に印字する場合には、サーマル用紙4がプラテンローラの回転により搬送されるとともに、サーマルヘッドの発熱によりサーマル用紙4に情報が印字される。この印字後、サーマル用紙4は切断部を通過してサーマル側フィードローラ対14によって挟持搬送され、所定量搬送されるとサーマル用紙4が所定寸法に切断されてステイトメント用紙が形成される。このステイトメント用紙は、フィードローラ対15、搬送ローラ対11a〜11e、及び出入用ローラ対12の逆回転によって搬送路6bに沿って搬送されて媒体出入口32から放出される。
【0043】
上記したように、この実施の形態によれば、通帳が正しい位置にセットされない場合、また、正しい位置にセットされて取り込まれてもその途中で斜めの状態になった場合には、通帳の取り込みを停止させるため、搬送ジャムや通帳の損傷を未然に防止できる利点がある。
【0044】
なお、この発明は、上述した実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上述した実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、上述した実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良い。
【符号の説明】
【0045】
6b…搬送路、7…サーマル印字部(ラインヘッド)、9…ドット印字部(シリアルヘッド)、10…搬送機構(搬送手段)、T…通帳(第1の印字媒体)、24…横整合機構(位置決め手段)、26…当接フレーム、27〜30…第1乃至第4の検知センサ、32…媒体出入口、33,34…第1及び第2のガイド体、36…制御部(制御手段)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】実開平2−15366号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体出入口と、
この媒体出入口に連通される搬送路を有し、前記媒体出入口に挿入セットされた第1の印字媒体を搬送路に沿って第1の方向に取込搬送したのち、前記第1の方向とは逆の第2の方向に搬送して前記媒体出入口から搬出させ、前記第1の印字媒体よりも幅寸法を大とする第2の印字媒体を前記搬送路に沿って前記第2の方向に搬送して前記媒体出入口から搬出させる搬送手段と、
前記搬送路中に前記印字媒体の搬送方向に沿って配設され、前記第1の印字媒体に対し印字するシリアルヘッド及び前記第2の印字媒体に対し印字するラインヘッドと、
前記媒体出入口に挿入セットされて取込搬送される前記第1の印字媒体をその搬送方向に対して交差する方向に送ってその一側面部を当接フレームに当接させることにより、前記シリアルヘッドの印字領域に対して位置決めし、前記第2の印字媒体の搬送時には前記搬送路から前記当接フレームを退避させる位置決め手段と、
前記媒体出入口に挿入セットされた前記第1の印字媒体の一側面部が前記当接フレームよりも内側に位置するか否かを判断し、その判断結果に基づいて前記挿入セットされた第1の印字媒体の取込搬送を制御する制御手段と
を具備することを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記媒体出入口の近傍にその幅方向に所定間隔を存して配設される複数個の検知センサを備え、
前記制御手段は、前記複数個の検知センサの検出結果に基づいて前記第1の印字媒体の取込搬送を制御することを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記媒体出入口には、その幅方向に所定間隔を存して配設される第1及び第2のガイド体を配設し、これら第1及び第2のガイド体間に前記第1の印字媒体を挿入セットさせることを特徴とする請求項1または2記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記シリアルヘッドはドットヘッドで、前記ラインヘッドはサーマルヘッドであることを特徴とする請求項1乃至3何れか一項記載のプリンタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−56785(P2011−56785A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−208795(P2009−208795)
【出願日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】