説明

プリンタ

【課題】低コストで耐摩耗性に優れたキャリアストッパが取り付けられた印字ヘッドを有するプリンタを提供する。
【解決手段】印字ヘッド1に、リボンマスク2よりも印字用紙Pに近い位置となるように、キャリアストッパ3を設ける。キャリアストッパ3は、アルミ合金の本体部にセラミック板が貼り付けられて構成されている。印字ヘッド1が印字用紙Pを支持するプラテンに向かう方向に移動すると、キャリアストッパ3のセラミック板が印字用紙Pに押し付けられる。これにより、印字用紙Pの位置及び印字ヘッド1と印字用紙Pとの間隔を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印字ヘッドと印字用紙又はプラテンとの間隔を検出可能なプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印字ヘッドをプラテン上の印字用紙に押し付け、その位置を基準として上記印字ヘッドを上記プラテンに押し付ける方向とは反対の方向に所定量移動させて、上記印字ヘッドと上記プラテンとの間隔を調整する技術が提案されている。このような技術は、例えば特許文献1に記載されている。特許文献1に開示されたプリンタは、印字ヘッドを印字用紙に押し付けることにより発生する駆動用モータの入力パルスと出力パルスとの周期のずれを演算する。そして、このずれ量が予め定められた2つの設定値を超えるときの夫々のパルス数から周期のずれの開始位置を算出することにより、印字ヘッドとプラテンとの間隔を調整する。
【特許文献1】特開2005−262807号公報
【0003】
ところで、例えばワイヤドット式のプリンタにおいて上記の技術を適用した場合、印字ヘッドを印字用紙に押し付けると、印字用紙にワイヤ又は印字部の開口等の圧迫痕が残ってしまうことがあった。そこで、印字ヘッドに、この印字ヘッドよりも印字用紙側に位置するキャリアストッパと呼ばれる部材を設けることにより、キャリアストッパを印字用紙に当接させることが行われている。
【0004】
図10(a)は、従来のキャリアストッパを示す斜視図であり、図10(b)は、従来のキャリアストッパを印字用紙に当接させた状態を示す模式図である。図10(a)に示すように、キャリアストッパ21は、平坦な当接面22を有している。そして、図10(b)に示すように、この当接面22が印字用紙Pに対向するように、印字ヘッドに取り付けられている。キャリアストッパ21は、アルミ合金から形成されており、少なくとも当接面22にニッケル(Ni)メッキが施されている。
【0005】
キャリアストッパ21の当接面22が印字用紙Pに押し付けられた後、その位置を基準として上記印字ヘッドを上記プラテンに押し付ける方向とは反対の方向に所定量移動させて上記印字ヘッドと上記プラテンとの間隔を調整する。キャリアストッパ21の当接面22は平坦であるため、印字用紙Pに上述したような圧迫痕が残ることがない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
キャリアストッパ21の当接面22は、印字用紙Pに当接することにより徐々に摩耗していく。また、上記印字ヘッドと上記プラテンの間の間隔は非常に小さなものであるので、印字を行う際に紙送りが行われると上記印字ヘッドよりも印字用紙側に位置するキャリアストッパ21に印字用紙Pが当接してしまうことがあり、このことによってもキャリアストッパ21の当接面22は摩耗していく。摩耗が進行すると、印字ヘッドに設けられたインクリボンが印字用紙Pに近づくこととなる。その結果、リボンマスク及びインクリボンと印字用紙Pとが接触して印字用紙Pが汚れたり、インクリボンが隙間に挟まったりしてしまう可能性がある。また、このようなことを防ぐためにキャリアストッパ21を新品に交換することは、高コストの原因ともなる。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたもので、低コストで耐摩耗性に優れたキャリアストッパが取り付けられた印字ヘッドを有するプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のプリンタは、
印刷媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンに接離する方向に移動可能となるように配置され、前記印刷媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに固定され、前記印字ヘッドが前記プラテンに向かう方向に移動したときに前記印刷媒体と当接することにより、前記印刷媒体と前記印字ヘッドとを所定の距離に離隔する離隔部材と、
を備え、
前記離隔部材は、前記印字ヘッドに固定される本体部と、耐摩耗性材料から形成され、前記本体部に固定されており、前記印刷媒体と当接する当接部材と、から構成されている、
ことを特徴とする。
【0009】
前記当接部材は、前記プラテン側から見て矩形形状をなしており、前記矩形形状の各辺が前記印刷媒体の搬送方向に対して斜めとなるように前記本体部に取り付けられていることとしてもよい。
【0010】
前記当接部材の前記印刷媒体と対向する面が、前記本体部の前記印刷媒体側の端面よりも窪んだ位置にあることとしてもよい。
【0011】
前記離隔部材を前記プラテンの回転中心側から見たときには、前記当接部材を構成する面の少なくとも一部が前記本体部から露出していることとしてもよい。
【0012】
前記当接部材はセラミック板であるように構成することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、耐磨耗性に優れた当接部材を、例えば安価で加工性に優れた材料から形成された本体部に貼り付けて離隔部材(キャリアストッパ)を構成することにより、低コストで耐磨耗性に優れたキャリアストッパを有するプリンタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について添付の図面を参照して具体的に説明する。図1(a)は本実施形態に係るプリンタのうち、印字ヘッドの一側面を示す側面図であり、図1(b)は、図1(a)に示す印字ヘッドの正面図(プラテン側から見た図)である。
【0015】
図1(a)に示す印字ヘッド1は、ワイヤドット式の印字ヘッドである。印字ヘッド1は、プリンタ本体のキャリア(図示せず)に取り付けられており、両矢印で示す移動方向10aの方向に移動可能である。
【0016】
印字ヘッド1は、印字用紙Pと対向する側にリボンガイド16を備えている。そして、リボンガイド16よりも印字用紙P側に凸となるように、リボンマスク2及びキャリアストッパ3が設けられている。これらのリボンマスク2及びキャリアストッパ3は、印字用紙Pを介してプラテン13と対向するような位置に設けられている。なお、本実施形態のプリンタを構成するプラテン13について、図1(a)においては、便宜上二点鎖線で示している。
【0017】
リボンマスク2は、略ひし形の開口2aを有している。複数本配置された印字ワイヤ4は、この開口2aから印字用紙Pに向けて突出するようになっている。
【0018】
キャリアストッパ3は、図1(b)に示すように、印字ヘッド1にねじ固定されている。この状態で、印字ヘッド1は、両矢印で示す移動方向10bの方向に移動可能である。なお、この移動方向10bは、印字用紙Pの紙送り方向と直交する方向である。
【0019】
図2に、キャリアストッパ3の斜視図を示す。図2に示すように、キャリアストッパ3はキャリアストッパ本体5とセラミック板6とから構成されている。
【0020】
キャリアストッパ本体5は、アルミ合金から形成されている。キャリアストッパ本体5の印字用紙と対向する面には窪み17が設けられており、この窪み17にセラミック板6が固定されている。なお、図2においては、図示の便宜上キャリアストッパ本体5とセラミック板6とを分離して表示している。
【0021】
セラミック板6は、材料としてAlが使用されており、矩形の板状に形成されている。このセラミック板6は、ビッカース硬さでHv1500程度の硬さを有しており、印字用紙Pに当接する側の表面は滑らかな面となっている。
【0022】
図3(a)はキャリアストッパ本体5にセラミック板6を取り付けた状態のキャリアストッパ3を印字用紙側(プラテン側)から見た正面図であり、図3(b)はキャリアストッパ3の側面図である。図3(a)に示すように、窪み17は、矩形のセラミック板6がほとんどガタ無くはめ込まれるような形状となるように設けられている。この窪み17のうちセラミック板6の4つの角部に対応する位置には逃げ加工が施されている。また、セラミック板6を取り付けたときに正面から見て略半円形となる接着剤用穴8が加工されている。
【0023】
この接着剤用穴8を使用したセラミック板6のキャリアストッパ本体5に対する取り付けは、例えば以下に示すような方法で行われる。先ず、セラミック板6を窪み17にはめ込み、接着剤用穴8に熱硬化型のエポキシ樹脂系接着剤を塗布する。その後、例えば90℃で1時間加熱処理する。これにより、接着剤を硬化させてセラミック板6をキャリアストッパ本体5に固定させる。
【0024】
ここで、図3(a)に示すように、セラミック板6は、矩形形状の4辺(6b1,6b2)共が印字用紙Pの紙送り方向およびヘッドの移動方向10bに対して斜めになるように、キャリアストッパ本体5に取り付けられている。その理由については後述する。
【0025】
また、キャリアストッパ本体5のうち、印字用紙Pと対向する第1の面5aの周囲は、滑らかに面取り加工(図中に細い実線で表示)されている。そして、セラミック板6の中央部に相当する位置に、第1の面5aよりもやや窪んだ第2の面5bが形成されている。
【0026】
更に、キャリアストッパ3は、印字ヘッド1にねじ固定するための取付穴7、及び、図3(b)に示すように、位置決めピン9を備えている。
【0027】
図4は、図3(b)に示す側面図のうちセラミック板6の取付部を部分的に拡大した図である。上述したように、第1の面5aの間に、それよりやや凹んだ第2の面5bが形成されている。第1の面5aと第2の面5bとの間には、緩やかな傾斜の斜面が形成されている。
【0028】
一方、図2に示すセラミック板6の印字用紙Pと対抗する面の周囲の辺6b1、辺6b2には面取り加工が施されておらずエッジ形状となっている。これは、セラミック板6を形成する場合に、一枚の大きなセラミック板をダイシング加工して複数のセラミック板6を切り出すためである。もちろん2次加工によって面取り加工を施したり、そうした形状の金型を用意してセラミック板6を面取りされた形状に成形することは可能であるが、コスト的には高いものになる。
【0029】
また、図2に示すセラミック板6のエッジ部6a及び辺6b1は図4に示すように、キャリアストッパ本体5を側面方向、すなわちプラテン13の回転軸方向から見た場合に露出することがないようにキャリアストッパ本体5に取り付けられている。その理由については後述する。
【0030】
セラミック板6は、その露出面、即ち印字用紙Pと対向する面が、第1の面5aと第2の面5bとの中間の位置になるようにキャリアストッパ本体5に取り付けられている。なお、本図においては、上述した窪み17の逃げ加工及び接着剤用穴8の表示は省略している。
【0031】
以上のように構成された印字ヘッド1を有する本実施形態のプリンタの動作について、図5(a),(b)を参照して説明する。図5(a)は印字時を示す模式図であり、図5(b)はセラミック板6と印字用紙Pとの当接時を示す模式図である。なお、図5(a),(b)においては、印字用紙Pの紙送り方向と直交する方向から見た図として図示しており、図示の便宜上印字ヘッド本体1a側とキャリアストッパ3側とを並べて表示している。
【0032】
図5(a)に示す印字時においては、印字ヘッド本体1aから印字ワイヤ4が印字用紙P側へ突出する。これにより、印字ワイヤ4が、リボンマスク2をプラテン13上の印字用紙Pに接触させることにより印字を行う。なお、その際、図1に示したように、印字ワイヤ4及びリボンマスク2は、リボンマスク2に設けられた開口2aを挿通する。また、このとき、キャリアストッパ3に設けられたセラミック板6は印字用紙Pと当接していない。
【0033】
また、本実施形態において、図5(b)に示すセラミック板6と印字用紙Pとの当接状態は、印字ヘッド1と印字用紙Pとの間隔を検出する場合のものである。このような動作は、例えば、印字用紙Pの厚さが異なる場合にも印字品質を均一にするため、印字ヘッド1と印字用紙Pとの間隔を一定に保つ目的で行われる。例えば、セラミック板6を印字用紙Pに押し付けた際の、印字ヘッド1が取り付けられたキャリアを駆動するモータの入力パルス数と出力パルス数との関係から、印字ヘッド1と印字用紙Pとの間隔を算出することができる。セラミック板6の当接面が印字用紙Pに押し付けられた後、その位置を基準として上記印字ヘッド1を上記プラテン13に押し付ける方向とは反対の方向に所定量移動させて上記印字ヘッド1と上記プラテン13との間隔が調整される。
【0034】
図5(b)に示すように、プラテン13上の印字用紙Pとキャリアストッパ3のセラミック板6とが当接している。ここで、キャリアストッパ3は、セラミック板6がリボンマスク2よりも印字用紙Pに近い側となるように印字ヘッド1に取り付けられている。このように、図5(b)に示す動作においては、セラミック板6のみが印字用紙Pに当接する。
【0035】
なお、上述したようにセラミック板6は、その露出面、即ち印字用紙Pと対向する面が、キャリアストッパ本体5の第1の面5aと第2の面5bとの中間の位置になるようにキャリアストッパ本体5に取り付けられている。このため上述したようにセラミック板6の各エッジ部6aは露出することがない。その代わり、第1の面5aはセラミック板6よりも印字用紙P側に近い位置にあるので、セラミック板6と印字用紙Pが当接した場合に、高さ的には干渉する位置関係にある。しかし図5(b)に示すように、第1の面5aはプラテン13と干渉する範囲から外れるように配置されているので、実際には干渉することはない。
【0036】
上述したように、キャリアストッパ3が摩耗すると印字ヘッド1と印字用紙Pとが近づくため、インクリボン11による印字用紙Pの汚れ等が起こりやすくなる。そのため、キャリアストッパ3の印字用紙Pに対する当接面は耐摩耗性に優れていることが好ましい。この耐摩耗性は、例えばビッカース硬さ(Hv)が大きい方が高くなる傾向にある。
【0037】
従来、キャリアストッパの印字用紙Pとの当接面には、例えばNiメッキが施されていた。このNiメッキのビッカース硬さは、処理条件によっても異なるが、おおむねHv500前後である。これに対して、本実施形態のキャリアストッパ3には、当接面にセラミック板6を用いている。上述したように、本実施形態におけるセラミック板6のビッカース硬さは、およそHv1500である。
【0038】
このように、本実施形態においては、従来に比べてより硬さが大きい材料、即ちより耐摩耗性に優れた材料を印字用紙Pに対する当接面に使用することにより、キャリアストッパの摩耗量を低減させることができる。これにより、長期間にわたる印字ヘッドの使用に対しても、キャリアストッパの摩耗に起因する印字用紙の汚れ等を抑制することができる。
【0039】
なお、セラミック板6の材料でキャリアストッパを一体成形することとしてもよい。この場合には、従来のキャリアストッパと同様に平坦な当接面とすることができる。しかし、アルミ合金のような安価で加工性に優れた材料から形成された本体に耐摩耗性に優れたセラミック板を取り付けることで、セラミック材料で一体成形する場合に比べて低コストで同等の耐摩耗性を有するキャリアストッパを製造することができる。
【0040】
次に、図4の説明において述べたように、エッジ部6a及び辺6b1が、キャリアストッパ本体5を側面方向から見た場合に露出することがないようにキャリアストッパ本体5に取り付けられている理由について説明する。上述の本実施形態における印字用紙Pは例えば連続紙と呼ばれる、所定の大きさの用紙がミシン目部を介して連続するように構成されている用紙が用いられる。連続紙は通常ミシン目部で折り返された状態でプリンタに収納され、印字を行う際には、これを展開しながら必要分を引き出して用いられる。ところで連続紙はミシン目部で折り返されているために、折り返しを展開すると、ミシン目部を頂点として、印字用紙Pの厚さよりも突出する山部または谷部が形成され、印字用紙Pの厚さよりなる一様な平面には展開することができない。なお、ミシン目部は通常紙送り方向と直交する方向に設けられている。従って上述した山部または谷部も紙送り方向と直交する方向に形成される。
【0041】
図6(a),(b)は、セラミック板6が印字用紙Pの紙送り方向に対して平行となるように取り付けられ、かつセラミック板6のエッジ部6aおよび辺6b1,6b2が露出している場合を示す模式図である。図6(a)はプリンタの上方から見た図であり、図6(b)は印字用紙Pの紙送り方向と直交する方向から見た図である。なお、図6(a)において、プラテン等の他の部材については図示を省略している。また、図6(a)中の一点鎖線は連続紙に設けられたミシン目部である。
【0042】
図6(a)に示すように、印字用紙Pは、図中の矢印の方向に送られる。セラミック板6の矩形をなす各辺のうち2辺は、印字用紙Pの端部と平行である。また、印字用紙Pに形成された山部P1または谷部P2と印字用紙Pの端部とは平行である。印字ヘッド1が印字をする際には、図5(a)に示すようにセラミック板6は印字用紙Pとは当接していないが、極めて近接した位置にある。従って、キャリアストッパ本体5も印字用紙Pに極めて近接した位置にある。そのため、印字用紙Pが紙送りされて山部P1がキャリアストッパ本体5の位置に来た場合に、山部P1とキャリアストッパ本体5とは高さ方向で干渉する関係にある。ただし、キャリアストッパ本体5自体は上述したように印字用紙Pと対向する第1の面5aの周囲が滑らかに面取り加工されているため、印字用紙Pに形成された山部P1は面取り部に倣って変形しながら当接状態を保持し続けるので、紙送りはスムーズに続行され、印字に不具合は生じない。
【0043】
ところが、セラミック板6には上述したように面取り加工が施されていない。従って、印字用紙Pが紙送りされて、山部P1がセラミック板6のエッジ部に到達すると、印字用紙Pの山部P1は変形することができず、セラミック板6のエッジ部に引っ掛かってしまう。そして、この状態のまま紙送りが続行されると、印字用紙Pが破損するなどして、プリンタ内部で紙詰まり等が起こる原因となる。
【0044】
これに対して、図7(a),(b)は、本実施形態におけるセラミック板6と印字用紙Pとの関係を示す模式図である。図7(a)はプリンタの上方から見た図であり、図7(b)は印字用紙Pの紙送り方向と直交する方向から見た図である。なお、プラテン等の他の部材については、図6(a),(b)と同様である。図7(a),(b)に示すように本実施形態は図6(a),(b)と異なり、セラミック板6の矩形をなす各辺が印字用紙Pの紙送り方向に対して斜めになるように取り付けられ、かつセラミック板6のエッジ部6aおよび辺6b1が露出していない。
【0045】
図7(a)に示すように、印字用紙Pは、図中の矢印の方向に送られる。そして、いずれ図7(b)に示すように印字用紙Pの山部P1がセラミック板6に到達する、しかし、本実施形態においてはセラミック板6のエッジ部6aおよび辺6b1は露出することがないようにキャリアストッパ本体5に取り付けられている。従って、印字用紙Pは山部P1で引っ掛かることなくスムーズに紙送りが続行される。
【0046】
ところで、エッジ部6aおよび辺6b1が露出しないようにキャリアストッパ本体5にセラミック板6を取り付けるのであれば、紙送り方向に対して直交するように取り付けられている方が設計上の制約も少なく、加工方法的にも効率がよい。ところが、本実施形態におけるセラミック板6は矩形形状の各辺が印字ヘッド1の紙送り方向に対して斜めになるように取り付けられている。
【0047】
このように斜めに取り付けようとすると、図4に示すように、キャリアストッパ本体5における第1の面5aと第2の面5bとの間には、緩やかな傾斜の斜面が形成されているが、この斜面部においてもエッジ部6aや辺6b1が露出しないようにセラミック板6を配置しなければならず設計的には制約が多くなるし、加工も工数が増えるので効率が悪い。そこで次に、上述したような不利な点があるにも係らず本実施形態において、何故セラミック板6の矩形形状の各辺が印字用紙Pの紙送り方向に対して斜めに取り付けられているのか、その理由について説明する。
【0048】
図8(a)は、セラミック板6の辺6b2が印字用紙Pの紙送り方向と直交するように取り付けられ、かつセラミック板6の辺6b2が露出している場合を示す模式図である。図8(a)はプリンタの上方から見た図であり、図8(b)は印字用紙Pの紙送り方向と直交する方向から見た図である。なお、図8(a)は、セラミック板6が印字用紙P上からいったん外れて、図中の矢印方向に移動して再び印字用紙P上に位置しようとしている状態を示している。なお、プラテン等の他の部材については図示を省略している。また、このとき山部P1は図8(b)に示すようにセラミック板6と干渉する位置にあるものとする。
【0049】
ところで、本実施形態におけるセラミック板6は矩形形状をなしている。従って、セラミック板6の辺6b2が印字用紙Pの紙送り方向を直交するように取り付けられている場合ということは、印字ヘッド1の移動方向10bに対しても直交かつ印字用紙Pの紙送り方向と平行な側の端部に平行になるように取り付けられていることになる。
【0050】
印字ヘッド1が図8(a)図中の矢印方向に移動すると、やがてセラミック板6と印字用紙Pの端部とが当接する。当接した状態を図8(c)に示す。図8(c)に示すように、印字用紙Pの端部とセラミック板6とが当接したとき、山部P1の頂点部を含めた印字用紙Pの山部P1の端部がセラミック板6と当接している。セラミック板6の辺6b2には上述したように面取り加工が施されていないので、印字ヘッド1が移動を続けると、印字用紙Pは印字ヘッド1との当接状態を解除することが困難であり、最悪の場合には印字ヘッド1の移動に伴って一緒に移動させられてしまうので、最終的には印字用紙Pが破損するなどしてしまいプリンタ内部で紙詰まり等が起こる原因となる。
【0051】
これに対して図9(a),(b)は、本実施形態におけるセラミック板6との関係を示す模式図である。図9(a)は、セラミック板6の辺6b1が紙送り方向に対して斜めに取り付けられ、かつセラミック板6の辺6b2が露出している場合を示す模式図である。
【0052】
ところで、本実施形態のセラミック板6は矩形形状をなしている。従って、紙送り方向に対してセラミック板6の辺6b1が印字用紙Pの紙送り方向に対して斜めになるようにキャリアストッパ本体5に取り付けられている場合は、セラミック板6の辺6b2は印字ヘッド1の移動方向10bに対して斜めであり、かつ紙送り方向と平行な側の印字用紙Pの端部に対して斜めに取り付けられている。
【0053】
図9(a)はプリンタの上方から見た図であり、図9(b)は印字用紙Pの紙送り方向と直交する方向から見た図である。なお、図9(a)は、印字ヘッド1が印字用紙Pの印字範囲からいったん外れて、図中の矢印方向に移動して再び印字範囲に戻ろうとしている状態を示し、プラテン等の他の部材については図示を省略している。なお、このとき山部P1は図9(b)に示すようにセラミック板6と干渉する位置にあるものとする。
【0054】
印字ヘッド1が図9(a)図中の矢印方向に移動すると、やがてセラミック板6と印字用紙Pの端部とが当接する。当接した状態を図9(c)に示す。なお、図9(c)は、セラミック板6と印字用紙Pとの当接部の一部を拡大したものである。図9(c)に示すように、本実施形態においては印字用紙Pとセラミック板6とが当接したとき、辺6b2が印字用紙Pの端部に対して斜めになるように取り付けられているので、通常山部P1の頂点部はセラミック板6とは当接しておらず、山裾部がセラミック板6の辺6b2と当接している。そのため、印字ヘッド1が移動を続けると山裾部に誘導されて山部P1は辺6b2との当接状態を解除する方向に移動していき(図中の移動方向Pz)、やがて山部P1はセラミック板6の辺6b2を乗り越えて、当接状態は解除される。また、山部P1の頂点部でセラミック板6と当接した場合にも、1点で当接するため容易に山部P1はセラミック板6の辺6b2を乗り越えることができる。
【0055】
このように、本実施形態に示すように紙送り方向にはセラミック板の辺6b1およびエッジ部6aが露出せず、一方、印字ヘッド1の移動方向にはセラミック板の辺6b2が斜めになるようにセラミック板6をキャリアストッパ本体5に対して配置することによって、印字ヘッド1の移動時および印字用紙Pの紙送り時における紙詰まり等を起こしにくくすることができる。なお、本実施形態においては、図4に示すように、セラミック板6の露出面が、キャリアストッパ本体5の第1の面5aに比べて印字用紙Pからやや遠くなるような位置となるようにセラミック板6が取り付けられている。このことによっても、セラミック板6と印字用紙Pとが干渉しにくくなる効果が得られる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計の変更が可能である。例えば、以下に示すような変形例により本発明を実施することとしてもよい。
【0057】
上述の実施形態においては、セラミック板6をキャリアストッパ本体5に固定する接着剤として、熱硬化型のエポキシ樹脂系接着剤を使用している。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。熱硬化型又は常温硬化型を問わず、種々の接着剤を使用することができる。例えば、常温硬化型のシリコン接着剤を使用することとしてもよい。また、この他に、瞬間接着剤を使用することとしてもよい。
【0058】
また、本実施形態において用いられる印字用紙Pとして連続紙を例に挙げて説明したが、印字用紙Pはこれに限られない。たとえば一枚の単独の用紙であっても、その端部が持ち上がったりしていることがあり、そのような場合にも本発明の効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)は本発明の実施形態に係るプリンタに使用される印字ヘッドの一側面を示す側面図であり、(b)は(a)に示す印字ヘッドの正面図である。
【図2】本実施形態におけるキャリアストッパの斜視図である。
【図3】(a)は本実施形態におけるキャリアストッパをプラテン側から見た正面図であり、(b)は(a)に示すキャリアストッパの側面図である。
【図4】図3(b)に示すセラミック板の取付部の部分拡大図である。
【図5】本実施形態のプリンタの動作を示す模式図であり、(a)は印字時を示し、(b)はセラミック板と印字用紙との当接時を示す。
【図6】(a),(b)は、紙送り時におけるセラミック板と印字用紙との関係の例を示す模式図である。
【図7】(a),(b)は、紙送り時における本発明の実施形態のセラミック板と印字用紙との関係を示す模式図である。
【図8】(a)〜(c)は、印字ヘッド移動時におけるセラミック板と印字用紙との関係の例を示す模式図である。
【図9】(a)〜(c)は、印字ヘッド移動時における本発明の実施形態のセラミック板と印字用紙との関係を示す模式図である。
【図10】(a)は従来のキャリアストッパを示す斜視図であり、(b)は(a)に示すキャリアストッパが印字用紙と当接した状態を(a)のB方向から見た図である。
【符号の説明】
【0060】
1;印字ヘッド
2;リボンマスク
3;キャリアストッパ
4;印字ワイヤ
5;キャリアストッパ本体
6;セラミック板
7;取付穴
8;接着剤用穴
9;位置決めピン
11;インクリボン
13;プラテン
14;角部
15;干渉部
21;キャリアストッパ
22;当接面
P;印字用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体を支持するプラテンと、
前記プラテンに接離する方向に移動可能となるように配置され、前記印刷媒体に印字する印字ヘッドと、
前記印字ヘッドに固定され、前記印字ヘッドが前記プラテンに向かう方向に移動したときに前記印刷媒体と当接することにより、前記印刷媒体と前記印字ヘッドとを所定の距離に離隔する離隔部材と、
を備え、
前記離隔部材は、前記印字ヘッドに固定される本体部と、耐摩耗性材料から形成され、前記本体部に固定されており、前記印刷媒体と当接する当接部材と、から構成されている、
ことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記当接部材は、前記プラテン側から見て矩形形状をなしており、前記矩形形状の各辺が前記印刷媒体の搬送方向に対して斜めとなるように前記本体部に取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記当接部材の前記印刷媒体と対向する面が、前記本体部の前記印刷媒体側の端面よりも窪んだ位置にある、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記離隔部材を前記プラテンの回転中心側から見たときには、前記当接部材を構成する面の少なくとも一部が前記本体部から露出している、
ことを特徴とする請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記当接部材はセラミック板である、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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