プリンタ
【課題】記録紙の先端の余白部を切り落とした後、その切り屑が搬送経路上に残らないようにする。
【解決手段】カッター40は、記録紙Pの幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃40bの刃先を連続的に押し当てることで記録紙Pを切断するように構成されている。また、下側ガイド板65における下側水平面部65aの搬送上流側の端縁部は、その幅方向の終端側から中央位置にかけて可動刃40bと平行な直線形状とされ、中央位置から基端側にかけて搬送下流側に傾斜した形状とされている。
【解決手段】カッター40は、記録紙Pの幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃40bの刃先を連続的に押し当てることで記録紙Pを切断するように構成されている。また、下側ガイド板65における下側水平面部65aの搬送上流側の端縁部は、その幅方向の終端側から中央位置にかけて可動刃40bと平行な直線形状とされ、中央位置から基端側にかけて搬送下流側に傾斜した形状とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、写真プリントシステム等に用いられるプリンタでは、マガジンに収容された記録紙が印刷部へ供給されて、記録紙に対しインクジェット等のプリントヘッドにより画像が印刷される。この画像印刷後の記録紙は、カッターにより先端及び後端が切り落とされるとともに、排出トレイ等が設けられた排出位置へ搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなプリンタでは、単票状の記録紙全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、記録紙の先端及び後端に余白部を設けるようにしている。これは、プリントヘッドより吐出したインクの一部が記録紙の先端及び後端から外側にはみ出し、その外側に外れたインクによりプラテンが汚れるのを防止するためである。
【0004】
さらに、印刷時に、記録紙を吸着する吸着孔をこの余白部で閉塞することで、プリントヘッドから記録紙の先端及び後端近傍に向けてインクを吐出している際に、記録紙の先端よりも下流側又は後端よりも上流側にある吸着孔内へ空気が流れ込まなくなり、インクの着弾精度が低下するのを抑制できる。その結果、記録紙の先端及び後端近傍に高画質の画像を印刷することが可能となる。
【0005】
ここで、記録紙の余白部を切断するためのカッターとして、記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有し、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃を連続的に押し当てることで、せん断力により記録紙を切断する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−226846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のプリンタでは、記録紙の先端の余白部を切り落としたときの切り屑が搬送経路上に残ってしまうおそれがあった。
【0008】
具体的に、カッターの搬送下流側には、上側ガイド板及び下側ガイド板が互いに対向して配設され、両ガイド板間に記録紙の搬送経路が形成されている。そして、記録紙の先端の余白部をカッターで切断するために、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃を連続的に押し当てると、余白部が全て切り落とされる前にその余白部の基端側が下側ガイド板に向かって移動して乗り上げてしまうことがある。
【0009】
このように、搬送経路上に切り屑が残ってしまうと、順次搬送される後続の記録紙の進行を妨げることとなり、切り屑と後続の記録紙とが搬送経路上で詰まってしまうおそれがあった。
【0010】
さらに、別の課題として、記録紙の後端の余白部を切り落とす際に、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されることで、切断ラインが曲線状になってしまうおそれがあった。
【0011】
具体的に、記録紙の後端の余白部をカッターで切断する際には、記録紙の後端が可動刃によって上方に持ち上げられる。このとき、記録紙の後端は、上側ガイド板の搬送上流側の端縁を支点として上方に湾曲するが、可動刃と上側ガイド板との間隔が大きいと記録紙の撓み量も大きくなるため、切断ラインが直線状とならずに切断精度が悪化するおそれがあった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録紙の先端の余白部を切り落とした後、その切り屑が搬送経路上に残らないようにすることにある。また、別の目的は、記録紙の後端を精度良く切断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、記録紙を所定の搬送経路に沿って搬送しながら該記録紙に対して画像を印刷し、画像印刷後の該記録紙を所定の長さに切断して所定位置へ搬送するプリンタを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0014】
すなわち、第1の発明は、前記記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有し、該可動刃を該固定刃に対して移動させて該記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって該可動刃の刃先を連続的に押し当てることで該記録紙を切断する切断手段と、
前記切断手段の搬送下流側に設けられ、前記記録紙を受け止める下側ガイド板とを備え、
前記下側ガイド板の搬送上流側の端縁部は、その幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第1の発明では、切断手段は、記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有している。この可動刃を固定刃に対して移動させると、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃の刃先が連続的に押し当てられて記録紙が切断される。また、切断手段の搬送下流側には、記録紙を受け止める下側ガイド板が設けられる。下側ガイド板の搬送上流側の端縁部は、幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置している。
【0016】
このような構成とすれば、記録紙の先端の余白部を切断したときの切り屑が下側ガイド板に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0017】
具体的に、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃を連続的に押し当てると、記録紙の先端の余白部は、基端側から終端側に向かって徐々に切断されていくこととなる。そのため、下側ガイド板の搬送上流側の端縁部が直線状に形成され且つ可動刃に対して所定の隙間をあけて平行に配置されている場合には、余白部が全て切り落とされる前に、その切り屑の基端側が搬送下流側に移動して下側ガイド板に乗り上げてしまうおそれがある。ここで、切り屑を確実に回収するためには、下側ガイド板と可動刃との隙間を大きくすることが考えられるが、装置内のスペースを十分に確保できなかったり、搬送ミスが生じるおそれがあるため好ましくない。
【0018】
これに対し、本発明では、下側ガイド板の搬送上流側の端縁部を、幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成したから、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間を、下側ガイド板の終端側と可動刃との隙間よりも大きくすることができる。そのため、余白部が全て切り落とされる前にその切り屑の基端側が搬送下流側に移動したとしても、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間に切り屑の基端側が落下することとなり、切り屑が下側ガイド板に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0019】
なお、下側ガイド板の端縁部の形状としては、例えば、下側ガイド板の幅方向の終端側から中央位置にかけて可動刃と平行な直線形状とし、中央位置から基端側にかけて搬送下流側に傾斜した形状とすればよい。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、
前記可動刃の搬送下流側の近傍位置で前記記録紙の上面に近接するように配設され且つ該記録紙の後端の切断時に該可動刃により該記録紙が持ち上がるのを抑制する押圧部材を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
第2の発明では、可動刃の搬送下流側の近傍位置には押圧部材が配設されている。この押圧部材は、記録紙の上面に近接され、記録紙の後端の切断時に可動刃により記録紙が持ち上がるのを抑制している。
【0022】
このような構成とすれば、記録紙の後端の余白部を切り落とす際に、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されることが抑えられ、記録紙の後端を精度良く切断することができる。
【0023】
具体的に、記録紙の後端の余白部を切断する際には、記録紙の後端が可動刃によって上方に持ち上げられる。このとき、記録紙は、上側ガイド板の搬送上流側の端縁を支点として上方に湾曲するが、可動刃と上側ガイド板との間隔が大きいと記録紙の撓み量も大きくなるため、切断ラインが直線状とならずに切断精度が悪化するおそれがあった。
【0024】
これに対し、本発明では、可動刃の搬送下流側の近傍位置に押圧部材を配設して、記録紙の後端の切断時に可動刃により記録紙が持ち上がるのを抑制しているから、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されるのを抑えることができる。これにより、切断ラインが曲線状となることが抑えられ、記録紙の後端を精度良く切断することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、下側ガイド板の搬送上流側の端縁部を、幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成したから、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間を、下側ガイド板の終端側と可動刃との隙間よりも大きくすることができる。そのため、余白部が全て切り落とされる前にその切り屑の基端側が搬送下流側に移動したとしても、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間に切り屑の基端側が落下することとなり、切り屑が下側ガイド板に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0026】
さらに、可動刃の搬送下流側の近傍位置に押圧部材を配設して、記録紙の後端の切断時に可動刃により記録紙が持ち上がるのを抑制しているから、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されるのを抑えることができる。これにより、切断ラインが曲線状となることが抑えられ、記録紙の後端を精度良く切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】カセットの内部の詳細を示す断面図である。
【図4】印刷部及びUターン部の詳細を示す側面図である。
【図5】印刷部の詳細を示す平面図である。
【図6】カッターの構成を示す側面図である。
【図7】カッターの構成を示す平面図である。
【図8】カッターの構成を示す正面図である。
【図9】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、リバース搬送部より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図10】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図9相当図である。
【図11】スイッチバックローラ対が記録紙を供給ローラ対のところまでスイッチバックさせた状態を示す図9相当図である。
【図12】記録紙が手差し挿入用開口部より手差し挿入されている状態を示す図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
−全体構造−
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタAの外観を示し、図2は、インクジェットプリンタAの内部の構成を概略的に示す。このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロックから通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいて記録紙P(図3等参照)に印刷を行うものである。この記録紙Pは、所定の大きさに裁断された単票紙である。
【0030】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1と、このプリンタ本体部1の筐体2の一側面の上部に着脱自在に取り付けられ且つ複数枚の記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態で収容可能なカセット5と、筐体2の上面に着脱自在に取り付けられた両面印刷ユニット7とを備えている。なお、本実施形態では、カセット5が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、カセット5に収容され且つプリンタ本体部1及び両面印刷ユニット7において搬送される記録紙Pの幅方向と一致している。
【0031】
図2に示すように、前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態で、後に詳細に説明するように記録紙Pの表裏両面に印刷することが可能になる。一方、記録紙Pの片面のみに印刷し、両面印刷が必要でない場合には、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1から外しておくことができる。ただし、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態であっても、記録紙Pの片面のみに印刷することは可能である。両面印刷した記録紙Pを複数枚束ねることで、フォトアルバムやフォトブックを作成することができる。
【0032】
図3に詳細に示すように、前記カセット5内には、記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態でセットするためのセットトレイ11が配設されている。セットトレイ11の幅方向両端部には幅規制ガイド12が立設しており、セットトレイ11にセットされた記録紙Pが幅方向に移動しないように規制している。このセットトレイ11は、カセット5内において、セットトレイ11のプリンタ前後方向の略中央にてプリンタ左右方向に延びる軸11a回りに回動可能に支持されている。セットトレイ11は、そのプリンタ後側端が上昇する側に回動するようにバネで付勢されている。これにより、セットトレイ11上にセットされた複数枚の記録紙Pのうち最上部の記録紙Pが、カセット5内のプリンタ後側端部の上部に配設された送出しローラ14に当接することになる。
【0033】
前記送出しローラ14は、プリンタ本体部1の側に配設されたモータ(図示省略)により図3で反時計回り方向に駆動されるようになっており、このモータにより送出しローラ14が回転駆動されると、最上部の記録紙Pが1枚だけプリンタ後側へ移動してカセット5の外側へ送り出される。このとき、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られて複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されないようにするために、送出しローラ14が所定量だけ回転すると、トレイ押下げ機構16によって、セットトレイ11のプリンタ後側端が下降するようになされている。
【0034】
前記トレイ押下げ機構16は、プリンタ本体部1に、プリンタ左右方向に延びる軸17a回りに回動可能に支持されたトレイ押下げレバー17と、このトレイ押下げレバーを軸17a回りに回動させるためのレバー回動カム18とを有している。このレバー回動カム18は、モータ(図示省略)により軸18a回りに回動する。また、トレイ押下げレバー17の一端部は、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、カセット5内に、セットトレイ11のプリンタ後側端部の上側に位置するように進入する。一方、トレイ押下げレバー17の他端部は、レバー回動カム18のカム面に当接している。この当接状態を常に維持するためにトレイ押下げレバー17は、前記他端部がレバー回動カム18の側へ移動するように(つまり一端部が上側に移動するように)バネで付勢されている。
【0035】
そして、前記送出しローラ14が所定量だけ回転したときに、レバー回動カム18が回転し、これにより、トレイ押下げレバー17の前記一端部がセットトレイ11のプリンタ後側端部に当接してこれを押し下げる。これにより、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られるのが防止され、複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されなくなる。なお、レバー回動カム18が半回転すると、トレイ押下げレバー17の前記一端部が上昇し始め、これに伴って、セットトレイ11のプリンタ後側端が前記バネにより上昇して、次に最上部となる記録紙Pが送出しローラ14に当接する。レバー回動カム18が1回転したとき、レバー回動カム18の回転が停止し、トレイ押下げレバー17は初期の状態に戻る。
【0036】
前記送出しローラ14によりカセット5の外側に送り出された記録紙Pは、プリンタ本体部1における後述の印刷部21へ供給されるようになっている。このことで、カセット5の送出しローラ14は、印刷部21へ記録紙Pを供給する記録紙供給部を構成する。
【0037】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部におけるカセット5の取付部近傍には、画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。この印刷部21は、図4及び図5に詳細に示すように、記録紙Pの片側面(上側面)に印刷するプリントヘッドHと、送出しローラ14より供給された記録紙Pを、記録紙Pへの印刷時に送出しローラ14とは反対側(プリンタ後側)へ搬送する印刷搬送部22と、この印刷搬送部22より搬送される記録紙Pを支持するプラテン23とを備えている。
【0038】
前記印刷搬送部22の上流側端部(プリンタ前側端部)には圧着型の上流側ローラ対24が、また印刷搬送部22の下流側端部(プリンタ後側端部)には圧着型の下流側ローラ対25がそれぞれ配設されている。上流側ローラ対24は、下側に位置する駆動ローラ24aと、上側に位置する従動ローラ24bとで構成されている。また、下流側ローラ対25は、下側に位置する駆動ローラ25aと、上側に位置する従動ローラ25bとで構成されている。上流側ローラ対24を挟んでその上流側及び下流側には、記録紙Pを検出する第1及び第2センサ27,28(共に投光部と受光部とからなる)がそれぞれ配設されている。
【0039】
なお、印刷搬送部22等のこれらの詳細については別途後述する。
【0040】
前記プリントヘッドHは、記録紙Pの上側位置において記録紙Pの幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向X(図5参照)に延びる2本のガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であって記録紙Pの移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Y(図5参照)に並ぶ2つのヘッドユニット32を有しており、これら2つのヘッドユニット32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、記録紙Pの上側面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0041】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、記録紙Pは、上流側ローラ対24又は下流側ローラ対25により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクが記録紙Pの上側面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0042】
ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0043】
前記プラテン23は板状の部材からなり、その上面が記録紙Pを支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引用孔23b(図5参照)が設けられている。
【0044】
各吸引用孔23bは、プリンタの左右方向及び前後方向に沿ってそれぞれ一列に並ぶように配列されている。詳しくは、記録紙の搬送方向に沿って見たときには、プラテンの支持面上に、一群の吸引用孔23b,23b,・・・(吸引孔群)が記録紙Pの搬送方向に略直交するプリンタ左右方向に一列に並んでいて、これら個々の吸引孔群がプリンタ前後方向に所定の間隔で複数配置されている。
【0045】
前記プラテン23の下側には、プラテン23と共に空間を形成するケース体35が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36が配設されている。そして、吸引用孔23bは、ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引用孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、記録紙Pがプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時の記録紙Pの平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0046】
また、前記プラテン23の支持面23aには、インク吸収材38を収容するための、副走査方向Yに延びる凹部23c(図5参照)が形成されている。このインク吸収材38は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が前記支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部23cは、支持面23aにおいて支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、5種類の幅の記録紙Pに対応可能にするべく、片側5個ずつの合計10個の凹部23cが設けられている。インク吸収材38は、インク吸収性に優れた、例えばスポンジ状のものが好ましい。
【0047】
ここで、前記縁なし印刷を行う場合、記録紙Pの幅方向については端縁ぎりぎりにインクを吐出し、その端縁からはみ出したインクをインク吸収材38により吸収するようにしているが、記録紙Pの先端及び後端ぎりぎりにはインクを吐出せず、所定量(例えば2mm)だけ余白部を設けて印刷を行う。そして、この余白部を後述のカッター40(切断手段)により切断することで、縁なしに仕上げる。このようにするのは、記録紙Pの先端又は後端に向けてインクを吐出すると、そのインクが吸引用孔23bによる吸い込み作用により吸引用孔23bへ引き込まれて印刷品質が低下するとともに、支持面23aがインクで汚れるからである。
【0048】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における印刷搬送部22の下流側には、印刷搬送部22の下流側端部(下流側ローラ対25)より送り出された記録紙Pを、表裏反転し且つ搬送の向きが逆向きになるようにUターンさせるUターン部45が設けられている。
【0049】
前記Uターン部45と印刷搬送部22との間には、縁なし印刷を行う場合において記録紙Pの先端及び後端における余白部を切断するカッター40が配設されている。
【0050】
図6はカッターの構成を示す側面図、図7は平面図、図8は正面図である。図6〜図8に示すように、このカッター40は、記録紙Pの搬送経路の上側に配置された固定刃40aと、記録紙Pの搬送経路の下側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃40aに対して上下方向に移動する可動刃40bとで構成され、可動刃40bが記録紙Pの下側から上側に移動することで記録紙Pを切断する。
【0051】
具体的に、前記可動刃40bは、支点軸40cを中心に図8で反時計回りに回動することで上側の切断位置に移動する一方、時計回りに回動することで下側の待機位置に移動するようになっている。このとき、可動刃40bを上側に移動させると、可動刃40bの刃先が記録紙Pの幅方向の基端側(図7で左側)から終端側(図7で右側)に向かって連続的に押し当てられる。これにより、記録紙Pの先端の余白部は、基端側から終端側に向かって徐々に切断されていくこととなる。
【0052】
図6に示すように、前記カッター40の搬送下流側には、上側ガイド板64及び下側ガイド板65が互いに対向して配設され、両ガイド板64,65間に記録紙Pの搬送経路が形成されている。
【0053】
前記上側ガイド板64は、上側水平面部64aと、上側水平面部64aの搬送上流側の端縁部から斜め上方に折れ曲がって傾斜した上側傾斜面部64bとを有している。下側ガイド板65は、記録紙Pを受け止める下側水平面部65aと、下側水平面部65aの搬送上流側の端縁部から斜め下方に折れ曲がって傾斜した下側傾斜面部65bとを有している。そして、上側ガイド板64と下側ガイド板65との間に形成される搬送経路の記録紙挿入口は、上側傾斜面部64b及び下側傾斜面部65bの傾斜によりテーパー状に開口している。
【0054】
ここで、前記下側ガイド板65の搬送上流側の端縁部(より正確には下側水平面部65aと下側傾斜面部65bとの境界部)は、その幅方向の終端側(図7で右側)から中央位置(図7では幅方向の中央よりもやや左寄りの位置)にかけて可動刃40bと平行な直線形状とされる一方、中央位置から基端側(図7で左側)にかけて搬送下流側に傾斜した形状とされている。すなわち、下側ガイド板65の搬送上流側の端縁部における幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置している。
【0055】
このような構成とすれば、記録紙Pの先端の余白部を切断したときの切り屑が下側ガイド板65に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0056】
具体的に、記録紙Pの幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃40bを連続的に押し当てると、記録紙Pの先端の余白部は、基端側から終端側に向かって徐々に切断されていくこととなる。そのため、余白部が全て切り落とされる前に、その切り屑の基端側が搬送下流側に移動して下側ガイド板65に乗り上げてしまうおそれがある。
【0057】
これに対し、本発明では、下側ガイド板65の搬送上流側の端縁部を、その幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成したから、下側ガイド板65の基端側と可動刃40bとの隙間を、下側ガイド板65の終端側と可動刃40bとの隙間よりも大きくすることができる。そのため、余白部が全て切り落とされる前にその切り屑の基端側が搬送下流側に移動したとしても、下側ガイド板65の基端側と可動刃40bとの隙間に切り屑の基端側が落下することとなり、切り屑を確実に回収することができる。
【0058】
図8に示すように、可動刃40bの刃先は、切断前の待機位置において水平方向に対して所定角度傾斜している。そのため、可動刃40bの刃先に残った切り屑が滑り落ちやすくなり、可動刃40bの刃先を待機位置において水平にした場合に比べて刃先に切り屑が残ることが少なくなるため、切り屑の落下が促進される。
【0059】
図6に示すように、前記固定刃40aは、可動刃40bよりも搬送上流側に配設されている。そして、固定刃40aの搬送上流側には、記録紙Pの搬送経路から見て固定刃40aの刃先とオーバーラップするように保護部材43が配設されている。
【0060】
前記保護部材43は、固定刃40aの搬送上流側の外周面を覆う保護板で構成され、搬送中の記録紙Pの印刷面と固定刃40aの刃先との接触を防止するものである。そのため、例えば、記録紙Pが上向きにカールしている場合でも、記録紙Pの搬送中に記録紙Pの印刷面と固定刃40aの刃先とが互いに擦れ合って印刷面に傷が付くことがない。
【0061】
前記可動刃40bの上方位置には、記録紙Pの切断時に可動刃40bにより上方へ突き上げられた切り屑の飛散を防止する閉塞部材44が配設されている。この閉塞部材44は、可動刃40bの上方を覆う閉塞板44aを有しており、可動刃40bで突き上げられて飛散した切り屑がこの閉塞板44aに接触して落下するため、切り屑が上方に飛び散って回収不能となったり、搬送経路上で詰まることを防止できる。
【0062】
また、前記閉塞部材44は、記録紙Pの後端を切断する際に、可動刃40bの移動に合わせて記録紙Pが持ち上がるのを抑制する押圧板44b(押圧部材)を有している。この押圧板44bは、閉塞板44aの右側壁の下端から水平方向右側に延びるように閉塞板44aと一体に形成されており、可動刃40bの搬送下流側の近傍位置で記録紙Pの上面に近接するように配設されている。
【0063】
このような構成とすれば、記録紙Pの後端の余白部を切り落とす際に、記録紙Pの後端が上方に撓んだ状態で切断されることが抑えられ、記録紙Pの後端を精度良く切断することができる。
【0064】
具体的に、前記押圧板44bを設けることなく記録紙Pの後端の余白部を切断した場合には、記録紙Pの後端が可動刃40bによって持ち上げられ、上側ガイド板64の上側水平面部64aと上側傾斜面部64bとの境界位置を支点として上方に湾曲する。このとき、可動刃40bと上側ガイド板64との間隔が大きいと記録紙Pの撓み量も大きくなるため、切断ラインが直線状とならずに切断精度が悪化するおそれがあった。
【0065】
これに対し、本発明では、可動刃40bの搬送下流側の近傍位置に押圧板44bを配設して、記録紙Pの後端の切断時に可動刃40bにより記録紙Pが持ち上がるのを抑制しているから、記録紙Pの後端が上方に撓んだ状態で切断されるのを抑えることができる。
【0066】
前記カッター40の下方には、切断による記録紙Pの切り屑を回収するための回収経路42が設けられ、回収経路42を通って落下した切り屑は、回収経路42の下部に配設された屑箱41に収容される。
【0067】
前記Uターン部45には、Uターン部45の上流側部分に配設され且つ印刷搬送部22からの記録紙Pを挟持してさらにプリンタ後側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対46と、該搬送ローラ対46により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きを上側へ変更する第1向き変更部材47と、この第1向き変更部材47の下流側に配設され且つ記録紙Pを挟持して上側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対48と、搬送ローラ対48により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きをプリンタ前側へ変更する第2向き変更部材49と、Uターン部45の下流側端部に配設され、記録紙Pを挟持してUターン部45から排出する圧着型の搬送ローラ対50と、この搬送ローラ対50の近傍位置に配設され且つ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第3センサ51(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。なお、2組の搬送ローラ対48の間には、下側の搬送ローラ対48から送り出された記録紙Pの先端を上側の搬送ローラ対48へと導く一対のガイド板52が、搬送路を挟むように配設されている。
【0068】
前記Uターン部45の上流側部分における2組の搬送ローラ対46の間には、印刷部21において記録紙Pの上側面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風Wを記録紙Pの上側面に吹き付ける乾燥装置53が設けられている。この乾燥装置53は、乾燥装置53内に空気を取り込むための吸入ファン54と、この吸入ファン54で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ55と、乾燥装置53の下端部に開口して、加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥風Wとして記録紙Pの上側面に吹き付ける排気ノズル部56と、乾燥装置53内の温度を検出して加熱ヒータ55を緊急停止させる安全サーモ57とを備えている。
【0069】
前記Uターン部45の全搬送ローラ対46,48,50において、記録紙Pにおける印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上流側部分における2組の搬送ローラ対46では下側のローラであり、その下流側の2組の搬送ローラ対48ではプリンタ後側のローラであり、搬送ローラ対50では、上側のローラである)は、それぞれ駆動ローラ46a,48a,50aとされ、印刷面に接触するローラ(搬送ローラ対46では上側のローラであり、搬送ローラ対48ではプリンタ前側のローラであり、搬送ローラ対50では、下側のローラである)は、それぞれ従動ローラ46b,48b,50bとされている。
【0070】
前記第3センサ51は、記録紙Pの後端を検出して、記録紙PのUターン部45からの排出を検出するものである。両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合には、記録紙Pの筐体2外側への排出を検出することになる。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、両面印刷ユニット7での記録紙Pの搬送速度を変更(アップ)する。
【0071】
前記両面印刷ユニット7は、筐体2の上面を覆う第1ユニット8と、カセット5の上方に位置する第2ユニット9との2分割構造になっている。そして、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている状態で、第1ユニット8のみを筐体2から取り外すことが可能になっている。この第1ユニット8が取り外された状態で、筐体2の上面に設けたメンテナンス開口(通常時は蓋で塞がれる)を介して印刷部21(特にプリントヘッドH等)のメンテナンス作業を行うことができる。
【0072】
前記両面印刷ユニット7の第1ユニット8内には、Uターン部45から送り出された記録紙Pを、印刷部21を超えてカセット5の側(印刷部21に対してプリンタ前側)へ搬送するリバース搬送部61が設けられている。このリバース搬送部61には、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する圧着型の3組の搬送ローラ対62と、リバース搬送部61の下流側端部(第1ユニット8のプリンタ前側端部)の位置に配設され且つ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第4センサ63(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。
【0073】
前記リバース搬送部61の全搬送ローラ対62において、記録紙Pにおける印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上側のローラ)は、駆動ローラ62aとされ、印刷面に接触するローラ(下側のローラ)は、従動ローラ62bとされている。全ての駆動ローラ62aは同じモータ(図示省略)により駆動される。そして、この駆動ローラ62aの回転速度、つまり搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度は可変に構成されている。
【0074】
前記第2ユニット9内には、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせて記録紙Pの後端側から印刷搬送部22の上流側端部へ供給するスイッチバック部66が設けられている。このスイッチバック部66には、下側の駆動ローラ67aと上側の従動ローラ67bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対67と、このスイッチバックローラ対67の上流側において搬送路を挟むように設けられ、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対67へ導く一対の第1ガイド部材68と、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する圧着型の供給ローラ対69と、スイッチバックローラ対67と供給ローラ対69との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対69へ導く一対の第2ガイド部材70とが設けられている。
【0075】
前記スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aは、モータ(図示省略)により、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0076】
前記スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68は、モータ(図示省略)により、スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aの回転軸回りに一体的に回動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが、駆動ローラ67aに対してほぼ真上に位置する第1の位置(図9参照)と、駆動ローラ67aに対してプリンタ後側に位置する第2の位置(図10参照)とに切り換えられるようになっている。また、第1ガイド部材68は、従動ローラ67bが第1の位置にあるときには、リバース搬送部61における搬送路の延長上に位置し(図9参照)、従動ローラ67bが第2の位置にあるときには、第2ガイド部材70の延長上に位置する(図10参照)。
【0077】
ここで、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせる方法を説明する。スイッチバックローラ対67が、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ67aは正回転しており、従動ローラ67bは第1の位置にある。そして、第4センサ63が記録紙Pの後端を検出してから、該後端が第1ガイド部材68に位置するような量だけスイッチバックローラ対67により記録紙Pをプリンタ前側へ搬送したところで(図9参照)、駆動ローラ67aの正回転を停止する。このとき、記録紙Pの少なくとも先端部は、後述の載置トレイ74上に位置する。
【0078】
続いて、スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68を図9で時計回り方向に回動させて従動ローラ67bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの先端側(プリンタ前側)が持ち上げられて、スイッチバックローラ対67に対して上側でかつプリンタ前側に配設された2つの補助ローラ72に当接した状態で湾曲する(図10参照)。
【0079】
その後、駆動ローラ67aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側から供給ローラ対69の側へ向けて搬送する。このとき、記録紙Pの搬送に伴って補助ローラ72が回転し、これにより、スイッチバックする記録紙Pの後端側部分(駆動ローラ67aの正回転時の先端側部分に相当)がスムーズに移動するとともに、第2ユニット9の内壁面等に擦れて傷が付くようなこともない。スイッチバックローラ対67によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材68及び第2ガイド部材70を通って、供給ローラ対69のところに達する(図11参照)。
【0080】
前記供給ローラ対69は、モータ(図示省略)により駆動される駆動ローラ69aと、この駆動ローラ69aに対して圧着される従動ローラ69bとからなる。この従動ローラ69bの駆動ローラ69aに対する圧着状態は、後述の如く解除することが可能になっている(スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bも同様)。
【0081】
前記供給ローラ対69の下側には、プリンタ本体部1の筐体2におけるプリンタ前側面の上部に設けられた一対の第3ガイド部材73が、搬送路を挟むように配設されており、この第3ガイド部材73を介して記録紙Pが印刷搬送部22の上流側端部へ供給されることになる。このように両面印刷ユニット7を介して印刷搬送部22に供給された記録紙Pの上側面は、記録紙Pに対して印刷部21にて最初に印刷された面(以下、表側面という)とは反対側の面(以下、裏側面という)であり、未だ印刷されていない面である。そして、最初の印刷時と同様に裏側面に印刷することで、記録紙Pの両面に印刷されることになる。
【0082】
前記スイッチバックローラ対67は、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせないで第2ユニット9の外側へ排出する役目もしている。すなわち、スイッチバックローラ対67は、記録紙Pを第2ユニット9の外側へ排出する際には、駆動ローラ67aの正回転を途中で停止しないで回転し続ける。そして、第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面には、スイッチバックローラ対67により送り出された記録紙Pを受け止めて載置する載置トレイ74が設けられている。前記のように両面に印刷された記録紙Pや、表側面のみの印刷で済ませる記録紙Pは、スイッチバックローラ対67によって第2ユニット9の外側へ排出されて載置トレイ74上に載置されることになる。
【0083】
前記第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面における載置トレイ74の上側には、載置トレイ74に載置された記録紙Pに埃等が付着するのを防止するカバー部材75が、載置トレイ74の上側を覆うように片持ち状に支持されている。このカバー部材75は、その基端部(プリンタ後側端部)にてプリンタ左右方向に延びる軸75a回りに回動可能に支持されており、カバー部材75を軸75a回りに回動させて基端部から上側へ延びるように立てた状態にすることも可能である。
【0084】
前記第2ユニット9の外壁の上面における前記スイッチバックローラ対67の近傍には、記録紙Pを手差し挿入することが可能な手差し挿入用開口部77が形成されている。この手差し挿入用開口部77には、一対の手差し用ガイド部材78が、手差し挿入される記録紙Pを厚み方向に挟むように配設され、この手差し用ガイド部材78により、手差し挿入された記録紙Pの先端をスイッチバックローラ対67の側へ導く。また、手差し挿入用開口部77は、蓋部材79(図1参照)により覆われており、オペレータは、記録紙Pを手差し挿入する際には、この蓋部材79を開けるとともに、モードスイッチ(図示省略)を操作して、手差しモードに切り換える。これにより、図12に示すように、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが第2の位置に切り換えられるとともに、駆動ローラ67aが逆回転する。そして、オペレータが記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入する。このとき、前記カバー部材75を立てた状態にしておけば、カバー部材75が記録紙Pを支持する受け皿の役目を果たし、記録紙Pの挿入が容易になる。こうして記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入すると、その記録紙Pがスイッチバックローラ対67によって供給ローラ対69の側へ向けて搬送され、スイッチバックして搬送される記録紙Pと同様に、供給ローラ対69によって、印刷搬送部22(印刷部21)へ供給される。
【0085】
前記Uターン部45、リバース搬送部61及びスイッチバック部66は、印刷搬送部22の下流側端部と上流側端部とを接続して印刷搬送部22と共にプリントヘッドHを囲むような周回搬送路を形成し且つ印刷搬送部22の下流側端部より送り出された、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷搬送部22の上流側端部へ供給する記録紙再供給部88を構成する。この記録紙再供給部88により、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷部21へ再供給することができ、この記録紙Pの裏側面にも印刷することで、記録紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0086】
前記裏側面に印刷された記録紙Pは、Uターン部45及びリバース搬送部61により、表側面に印刷された後の搬送時(記録紙Pの1回目の搬送時)と同様に、スイッチバック部66へと搬送される。このとき、スイッチバック部66のスイッチバックローラ対67は正回転し続けて、記録紙Pを載置トレイ74上に排出する。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明は、記録紙の先端の余白部を切り落とした後、その切り屑が搬送経路上に残らないようにするとともに、記録紙の後端を精度良く切断できるようにすることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0088】
A インクジェットプリンタ
P 記録紙
40a 固定刃
40b 可動刃
40 カッター(切断手段)
44b 押圧板(押圧部材)
65 下側ガイド板
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、写真プリントシステム等に用いられるプリンタでは、マガジンに収容された記録紙が印刷部へ供給されて、記録紙に対しインクジェット等のプリントヘッドにより画像が印刷される。この画像印刷後の記録紙は、カッターにより先端及び後端が切り落とされるとともに、排出トレイ等が設けられた排出位置へ搬送される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなプリンタでは、単票状の記録紙全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、記録紙の先端及び後端に余白部を設けるようにしている。これは、プリントヘッドより吐出したインクの一部が記録紙の先端及び後端から外側にはみ出し、その外側に外れたインクによりプラテンが汚れるのを防止するためである。
【0004】
さらに、印刷時に、記録紙を吸着する吸着孔をこの余白部で閉塞することで、プリントヘッドから記録紙の先端及び後端近傍に向けてインクを吐出している際に、記録紙の先端よりも下流側又は後端よりも上流側にある吸着孔内へ空気が流れ込まなくなり、インクの着弾精度が低下するのを抑制できる。その結果、記録紙の先端及び後端近傍に高画質の画像を印刷することが可能となる。
【0005】
ここで、記録紙の余白部を切断するためのカッターとして、記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有し、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃を連続的に押し当てることで、せん断力により記録紙を切断する構成が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−226846号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来のプリンタでは、記録紙の先端の余白部を切り落としたときの切り屑が搬送経路上に残ってしまうおそれがあった。
【0008】
具体的に、カッターの搬送下流側には、上側ガイド板及び下側ガイド板が互いに対向して配設され、両ガイド板間に記録紙の搬送経路が形成されている。そして、記録紙の先端の余白部をカッターで切断するために、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃を連続的に押し当てると、余白部が全て切り落とされる前にその余白部の基端側が下側ガイド板に向かって移動して乗り上げてしまうことがある。
【0009】
このように、搬送経路上に切り屑が残ってしまうと、順次搬送される後続の記録紙の進行を妨げることとなり、切り屑と後続の記録紙とが搬送経路上で詰まってしまうおそれがあった。
【0010】
さらに、別の課題として、記録紙の後端の余白部を切り落とす際に、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されることで、切断ラインが曲線状になってしまうおそれがあった。
【0011】
具体的に、記録紙の後端の余白部をカッターで切断する際には、記録紙の後端が可動刃によって上方に持ち上げられる。このとき、記録紙の後端は、上側ガイド板の搬送上流側の端縁を支点として上方に湾曲するが、可動刃と上側ガイド板との間隔が大きいと記録紙の撓み量も大きくなるため、切断ラインが直線状とならずに切断精度が悪化するおそれがあった。
【0012】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、記録紙の先端の余白部を切り落とした後、その切り屑が搬送経路上に残らないようにすることにある。また、別の目的は、記録紙の後端を精度良く切断できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、記録紙を所定の搬送経路に沿って搬送しながら該記録紙に対して画像を印刷し、画像印刷後の該記録紙を所定の長さに切断して所定位置へ搬送するプリンタを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0014】
すなわち、第1の発明は、前記記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有し、該可動刃を該固定刃に対して移動させて該記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって該可動刃の刃先を連続的に押し当てることで該記録紙を切断する切断手段と、
前記切断手段の搬送下流側に設けられ、前記記録紙を受け止める下側ガイド板とを備え、
前記下側ガイド板の搬送上流側の端縁部は、その幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成されていることを特徴とするものである。
【0015】
第1の発明では、切断手段は、記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有している。この可動刃を固定刃に対して移動させると、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃の刃先が連続的に押し当てられて記録紙が切断される。また、切断手段の搬送下流側には、記録紙を受け止める下側ガイド板が設けられる。下側ガイド板の搬送上流側の端縁部は、幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置している。
【0016】
このような構成とすれば、記録紙の先端の余白部を切断したときの切り屑が下側ガイド板に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0017】
具体的に、記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃を連続的に押し当てると、記録紙の先端の余白部は、基端側から終端側に向かって徐々に切断されていくこととなる。そのため、下側ガイド板の搬送上流側の端縁部が直線状に形成され且つ可動刃に対して所定の隙間をあけて平行に配置されている場合には、余白部が全て切り落とされる前に、その切り屑の基端側が搬送下流側に移動して下側ガイド板に乗り上げてしまうおそれがある。ここで、切り屑を確実に回収するためには、下側ガイド板と可動刃との隙間を大きくすることが考えられるが、装置内のスペースを十分に確保できなかったり、搬送ミスが生じるおそれがあるため好ましくない。
【0018】
これに対し、本発明では、下側ガイド板の搬送上流側の端縁部を、幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成したから、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間を、下側ガイド板の終端側と可動刃との隙間よりも大きくすることができる。そのため、余白部が全て切り落とされる前にその切り屑の基端側が搬送下流側に移動したとしても、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間に切り屑の基端側が落下することとなり、切り屑が下側ガイド板に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0019】
なお、下側ガイド板の端縁部の形状としては、例えば、下側ガイド板の幅方向の終端側から中央位置にかけて可動刃と平行な直線形状とし、中央位置から基端側にかけて搬送下流側に傾斜した形状とすればよい。
【0020】
第2の発明は、第1の発明において、
前記可動刃の搬送下流側の近傍位置で前記記録紙の上面に近接するように配設され且つ該記録紙の後端の切断時に該可動刃により該記録紙が持ち上がるのを抑制する押圧部材を備えたことを特徴とするものである。
【0021】
第2の発明では、可動刃の搬送下流側の近傍位置には押圧部材が配設されている。この押圧部材は、記録紙の上面に近接され、記録紙の後端の切断時に可動刃により記録紙が持ち上がるのを抑制している。
【0022】
このような構成とすれば、記録紙の後端の余白部を切り落とす際に、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されることが抑えられ、記録紙の後端を精度良く切断することができる。
【0023】
具体的に、記録紙の後端の余白部を切断する際には、記録紙の後端が可動刃によって上方に持ち上げられる。このとき、記録紙は、上側ガイド板の搬送上流側の端縁を支点として上方に湾曲するが、可動刃と上側ガイド板との間隔が大きいと記録紙の撓み量も大きくなるため、切断ラインが直線状とならずに切断精度が悪化するおそれがあった。
【0024】
これに対し、本発明では、可動刃の搬送下流側の近傍位置に押圧部材を配設して、記録紙の後端の切断時に可動刃により記録紙が持ち上がるのを抑制しているから、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されるのを抑えることができる。これにより、切断ラインが曲線状となることが抑えられ、記録紙の後端を精度良く切断することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、下側ガイド板の搬送上流側の端縁部を、幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成したから、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間を、下側ガイド板の終端側と可動刃との隙間よりも大きくすることができる。そのため、余白部が全て切り落とされる前にその切り屑の基端側が搬送下流側に移動したとしても、下側ガイド板の基端側と可動刃との隙間に切り屑の基端側が落下することとなり、切り屑が下側ガイド板に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0026】
さらに、可動刃の搬送下流側の近傍位置に押圧部材を配設して、記録紙の後端の切断時に可動刃により記録紙が持ち上がるのを抑制しているから、記録紙の後端が上方に撓んだ状態で切断されるのを抑えることができる。これにより、切断ラインが曲線状となることが抑えられ、記録紙の後端を精度良く切断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタの外観を示す斜視図である。
【図2】インクジェットプリンタの内部の構成を示す、側方から見た概略図である。
【図3】カセットの内部の詳細を示す断面図である。
【図4】印刷部及びUターン部の詳細を示す側面図である。
【図5】印刷部の詳細を示す平面図である。
【図6】カッターの構成を示す側面図である。
【図7】カッターの構成を示す平面図である。
【図8】カッターの構成を示す正面図である。
【図9】スイッチバック部のスイッチバックローラ対が、リバース搬送部より搬送されてきた記録紙を受け取っている状態を示す概略図である。
【図10】スイッチバックローラ対の従動ローラが第2の位置に切り換えられた状態を示す図9相当図である。
【図11】スイッチバックローラ対が記録紙を供給ローラ対のところまでスイッチバックさせた状態を示す図9相当図である。
【図12】記録紙が手差し挿入用開口部より手差し挿入されている状態を示す図9相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0029】
−全体構造−
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタAの外観を示し、図2は、インクジェットプリンタAの内部の構成を概略的に示す。このインクジェットプリンタAは、写真プリントシステムに用いられるものであって、例えば、画像データを取得して必要な補正処理等を行う受付ブロックから通信ケーブルを介して伝送される画像データに基づいて記録紙P(図3等参照)に印刷を行うものである。この記録紙Pは、所定の大きさに裁断された単票紙である。
【0030】
前記インクジェットプリンタAは、下面にキャスター3が設けられた筐体2を有するプリンタ本体部1と、このプリンタ本体部1の筐体2の一側面の上部に着脱自在に取り付けられ且つ複数枚の記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態で収容可能なカセット5と、筐体2の上面に着脱自在に取り付けられた両面印刷ユニット7とを備えている。なお、本実施形態では、カセット5が取り付けられる側(図2の左側)をプリンタ前側といい、その反対側(図2の右側)をプリンタ後側という。また、図2の紙面と垂直な方向は、プリンタ左右方向であって、カセット5に収容され且つプリンタ本体部1及び両面印刷ユニット7において搬送される記録紙Pの幅方向と一致している。
【0031】
図2に示すように、前記両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態で、後に詳細に説明するように記録紙Pの表裏両面に印刷することが可能になる。一方、記録紙Pの片面のみに印刷し、両面印刷が必要でない場合には、両面印刷ユニット7をプリンタ本体部1から外しておくことができる。ただし、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられた状態であっても、記録紙Pの片面のみに印刷することは可能である。両面印刷した記録紙Pを複数枚束ねることで、フォトアルバムやフォトブックを作成することができる。
【0032】
図3に詳細に示すように、前記カセット5内には、記録紙Pをその厚み方向に重ねた状態でセットするためのセットトレイ11が配設されている。セットトレイ11の幅方向両端部には幅規制ガイド12が立設しており、セットトレイ11にセットされた記録紙Pが幅方向に移動しないように規制している。このセットトレイ11は、カセット5内において、セットトレイ11のプリンタ前後方向の略中央にてプリンタ左右方向に延びる軸11a回りに回動可能に支持されている。セットトレイ11は、そのプリンタ後側端が上昇する側に回動するようにバネで付勢されている。これにより、セットトレイ11上にセットされた複数枚の記録紙Pのうち最上部の記録紙Pが、カセット5内のプリンタ後側端部の上部に配設された送出しローラ14に当接することになる。
【0033】
前記送出しローラ14は、プリンタ本体部1の側に配設されたモータ(図示省略)により図3で反時計回り方向に駆動されるようになっており、このモータにより送出しローラ14が回転駆動されると、最上部の記録紙Pが1枚だけプリンタ後側へ移動してカセット5の外側へ送り出される。このとき、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られて複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されないようにするために、送出しローラ14が所定量だけ回転すると、トレイ押下げ機構16によって、セットトレイ11のプリンタ後側端が下降するようになされている。
【0034】
前記トレイ押下げ機構16は、プリンタ本体部1に、プリンタ左右方向に延びる軸17a回りに回動可能に支持されたトレイ押下げレバー17と、このトレイ押下げレバーを軸17a回りに回動させるためのレバー回動カム18とを有している。このレバー回動カム18は、モータ(図示省略)により軸18a回りに回動する。また、トレイ押下げレバー17の一端部は、カセット5をプリンタ本体部1に取り付けたときに、カセット5内に、セットトレイ11のプリンタ後側端部の上側に位置するように進入する。一方、トレイ押下げレバー17の他端部は、レバー回動カム18のカム面に当接している。この当接状態を常に維持するためにトレイ押下げレバー17は、前記他端部がレバー回動カム18の側へ移動するように(つまり一端部が上側に移動するように)バネで付勢されている。
【0035】
そして、前記送出しローラ14が所定量だけ回転したときに、レバー回動カム18が回転し、これにより、トレイ押下げレバー17の前記一端部がセットトレイ11のプリンタ後側端部に当接してこれを押し下げる。これにより、最上部の記録紙Pの下側に位置する記録紙Pが最上部の記録紙Pに引き摺られるのが防止され、複数枚の記録紙Pがカセット5の外側へ同時に送り出されなくなる。なお、レバー回動カム18が半回転すると、トレイ押下げレバー17の前記一端部が上昇し始め、これに伴って、セットトレイ11のプリンタ後側端が前記バネにより上昇して、次に最上部となる記録紙Pが送出しローラ14に当接する。レバー回動カム18が1回転したとき、レバー回動カム18の回転が停止し、トレイ押下げレバー17は初期の状態に戻る。
【0036】
前記送出しローラ14によりカセット5の外側に送り出された記録紙Pは、プリンタ本体部1における後述の印刷部21へ供給されるようになっている。このことで、カセット5の送出しローラ14は、印刷部21へ記録紙Pを供給する記録紙供給部を構成する。
【0037】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部におけるカセット5の取付部近傍には、画像データに基づいて印刷を行う印刷部21が設けられている。この印刷部21は、図4及び図5に詳細に示すように、記録紙Pの片側面(上側面)に印刷するプリントヘッドHと、送出しローラ14より供給された記録紙Pを、記録紙Pへの印刷時に送出しローラ14とは反対側(プリンタ後側)へ搬送する印刷搬送部22と、この印刷搬送部22より搬送される記録紙Pを支持するプラテン23とを備えている。
【0038】
前記印刷搬送部22の上流側端部(プリンタ前側端部)には圧着型の上流側ローラ対24が、また印刷搬送部22の下流側端部(プリンタ後側端部)には圧着型の下流側ローラ対25がそれぞれ配設されている。上流側ローラ対24は、下側に位置する駆動ローラ24aと、上側に位置する従動ローラ24bとで構成されている。また、下流側ローラ対25は、下側に位置する駆動ローラ25aと、上側に位置する従動ローラ25bとで構成されている。上流側ローラ対24を挟んでその上流側及び下流側には、記録紙Pを検出する第1及び第2センサ27,28(共に投光部と受光部とからなる)がそれぞれ配設されている。
【0039】
なお、印刷搬送部22等のこれらの詳細については別途後述する。
【0040】
前記プリントヘッドHは、記録紙Pの上側位置において記録紙Pの幅方向(プリンタ左右方向)と一致する主走査方向X(図5参照)に延びる2本のガイドレール31に沿って移動可能に構成されている。また、プリントヘッドHは、主走査方向Xと垂直であって記録紙Pの移動方向(プリンタ前後方向)と一致する副走査方向Y(図5参照)に並ぶ2つのヘッドユニット32を有しており、これら2つのヘッドユニット32の下面に設けられている多数のインク吐出ノズル(図示省略)から複数色のインクを下側へ向けて吐出することで、記録紙Pの上側面に対して所定の画像を印刷できるようになっている。本実施形態では、ヘッドユニット32が副走査方向Yに2段に並んで配設されているが、ヘッドユニット32は2段である必要はなく、1段や3段以上であってもよい。
【0041】
前記両ヘッドユニット32は同一構成であり、各々、主走査方向Xに配設された、各色のインクを吐出するための複数のノズルアレイを有している。この各ノズルアレイにおいて、インク吐出ノズルが副走査方向Yに列状に配設されている。これにより、各ヘッドユニット32は、単体でカラー画像を形成可能な構成とされている。そして、記録紙Pは、上流側ローラ対24又は下流側ローラ対25により一定の単位搬送量で間欠的に(ステップ状に)副走査方向Yに搬送され、この間欠搬送時における記録紙Pの各停止時に、プリントヘッドHが主走査方向Xに一走査(一往動作又は一復動作)されて、この走査時に、主走査方向Xの各位置で、各ヘッドユニット32の各色のインク吐出ノズルからインクが記録紙Pの上側面に対して同時に吐出される。つまり、プリントヘッドHの一走査後に、記録紙Pが単位搬送量だけ搬送され、その後、再びプリントヘッドHが一走査され、この動作が繰り返し行われて、所望の画像が印刷されることになる。
【0042】
ここで、本実施形態におけるプリントヘッドHのインク吐出のための構成としては、インクが充填された圧力室内の容積がピエゾ素子によって変化することで、圧力室に連通するインク吐出ノズルからインクを吐出する一般的なピエゾ方式のものを採用している。
【0043】
前記プラテン23は板状の部材からなり、その上面が記録紙Pを支持する支持面23aとされている。このプラテン23には、厚み方向(上下方向)に貫通して支持面23aに開口する多数の吸引用孔23b(図5参照)が設けられている。
【0044】
各吸引用孔23bは、プリンタの左右方向及び前後方向に沿ってそれぞれ一列に並ぶように配列されている。詳しくは、記録紙の搬送方向に沿って見たときには、プラテンの支持面上に、一群の吸引用孔23b,23b,・・・(吸引孔群)が記録紙Pの搬送方向に略直交するプリンタ左右方向に一列に並んでいて、これら個々の吸引孔群がプリンタ前後方向に所定の間隔で複数配置されている。
【0045】
前記プラテン23の下側には、プラテン23と共に空間を形成するケース体35が配設され、このケース体35の下側に、ファン等を含む吸引装置36が配設されている。そして、吸引用孔23bは、ケース体35内の空間と連通し、この空間は、吸引装置36の吸込み口と連通しており、吸引装置36の作動により吸引用孔23bを介してプラテン23の支持面23a側に負圧が生じ、このことで、記録紙Pがプラテン23の支持面23a上に吸着保持されることになる。これにより、印刷時の記録紙Pの平面性を確保して印刷品質を向上させることが可能になる。
【0046】
また、前記プラテン23の支持面23aには、インク吸収材38を収容するための、副走査方向Yに延びる凹部23c(図5参照)が形成されている。このインク吸収材38は、記録紙P全体に画像を印刷する縁なし印刷を行う際に、プリントヘッドH(ヘッドユニット32)より吐出したインクの一部が前記支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁から外側に外れてはみ出したとしても、その外側に外れたインクによりプラテン23の支持面23aが汚れるのを防止するために設けられたものである。このため、凹部23cは、支持面23aにおいて支持面23a上の記録紙Pの幅方向の端縁に対応する位置で且つ副走査方向YにおけるプリントヘッドHに対応する位置において、端縁に沿って延びる(つまり副走査方向Yに延びる)ように形成されている。図5の例では、5種類の幅の記録紙Pに対応可能にするべく、片側5個ずつの合計10個の凹部23cが設けられている。インク吸収材38は、インク吸収性に優れた、例えばスポンジ状のものが好ましい。
【0047】
ここで、前記縁なし印刷を行う場合、記録紙Pの幅方向については端縁ぎりぎりにインクを吐出し、その端縁からはみ出したインクをインク吸収材38により吸収するようにしているが、記録紙Pの先端及び後端ぎりぎりにはインクを吐出せず、所定量(例えば2mm)だけ余白部を設けて印刷を行う。そして、この余白部を後述のカッター40(切断手段)により切断することで、縁なしに仕上げる。このようにするのは、記録紙Pの先端又は後端に向けてインクを吐出すると、そのインクが吸引用孔23bによる吸い込み作用により吸引用孔23bへ引き込まれて印刷品質が低下するとともに、支持面23aがインクで汚れるからである。
【0048】
前記プリンタ本体部1の筐体2内の上部における印刷搬送部22の下流側には、印刷搬送部22の下流側端部(下流側ローラ対25)より送り出された記録紙Pを、表裏反転し且つ搬送の向きが逆向きになるようにUターンさせるUターン部45が設けられている。
【0049】
前記Uターン部45と印刷搬送部22との間には、縁なし印刷を行う場合において記録紙Pの先端及び後端における余白部を切断するカッター40が配設されている。
【0050】
図6はカッターの構成を示す側面図、図7は平面図、図8は正面図である。図6〜図8に示すように、このカッター40は、記録紙Pの搬送経路の上側に配置された固定刃40aと、記録紙Pの搬送経路の下側に配置され、モータ(図示省略)により固定刃40aに対して上下方向に移動する可動刃40bとで構成され、可動刃40bが記録紙Pの下側から上側に移動することで記録紙Pを切断する。
【0051】
具体的に、前記可動刃40bは、支点軸40cを中心に図8で反時計回りに回動することで上側の切断位置に移動する一方、時計回りに回動することで下側の待機位置に移動するようになっている。このとき、可動刃40bを上側に移動させると、可動刃40bの刃先が記録紙Pの幅方向の基端側(図7で左側)から終端側(図7で右側)に向かって連続的に押し当てられる。これにより、記録紙Pの先端の余白部は、基端側から終端側に向かって徐々に切断されていくこととなる。
【0052】
図6に示すように、前記カッター40の搬送下流側には、上側ガイド板64及び下側ガイド板65が互いに対向して配設され、両ガイド板64,65間に記録紙Pの搬送経路が形成されている。
【0053】
前記上側ガイド板64は、上側水平面部64aと、上側水平面部64aの搬送上流側の端縁部から斜め上方に折れ曲がって傾斜した上側傾斜面部64bとを有している。下側ガイド板65は、記録紙Pを受け止める下側水平面部65aと、下側水平面部65aの搬送上流側の端縁部から斜め下方に折れ曲がって傾斜した下側傾斜面部65bとを有している。そして、上側ガイド板64と下側ガイド板65との間に形成される搬送経路の記録紙挿入口は、上側傾斜面部64b及び下側傾斜面部65bの傾斜によりテーパー状に開口している。
【0054】
ここで、前記下側ガイド板65の搬送上流側の端縁部(より正確には下側水平面部65aと下側傾斜面部65bとの境界部)は、その幅方向の終端側(図7で右側)から中央位置(図7では幅方向の中央よりもやや左寄りの位置)にかけて可動刃40bと平行な直線形状とされる一方、中央位置から基端側(図7で左側)にかけて搬送下流側に傾斜した形状とされている。すなわち、下側ガイド板65の搬送上流側の端縁部における幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置している。
【0055】
このような構成とすれば、記録紙Pの先端の余白部を切断したときの切り屑が下側ガイド板65に乗り上げて搬送経路上に残ってしまうのを防止することができる。
【0056】
具体的に、記録紙Pの幅方向の基端側から終端側に向かって可動刃40bを連続的に押し当てると、記録紙Pの先端の余白部は、基端側から終端側に向かって徐々に切断されていくこととなる。そのため、余白部が全て切り落とされる前に、その切り屑の基端側が搬送下流側に移動して下側ガイド板65に乗り上げてしまうおそれがある。
【0057】
これに対し、本発明では、下側ガイド板65の搬送上流側の端縁部を、その幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成したから、下側ガイド板65の基端側と可動刃40bとの隙間を、下側ガイド板65の終端側と可動刃40bとの隙間よりも大きくすることができる。そのため、余白部が全て切り落とされる前にその切り屑の基端側が搬送下流側に移動したとしても、下側ガイド板65の基端側と可動刃40bとの隙間に切り屑の基端側が落下することとなり、切り屑を確実に回収することができる。
【0058】
図8に示すように、可動刃40bの刃先は、切断前の待機位置において水平方向に対して所定角度傾斜している。そのため、可動刃40bの刃先に残った切り屑が滑り落ちやすくなり、可動刃40bの刃先を待機位置において水平にした場合に比べて刃先に切り屑が残ることが少なくなるため、切り屑の落下が促進される。
【0059】
図6に示すように、前記固定刃40aは、可動刃40bよりも搬送上流側に配設されている。そして、固定刃40aの搬送上流側には、記録紙Pの搬送経路から見て固定刃40aの刃先とオーバーラップするように保護部材43が配設されている。
【0060】
前記保護部材43は、固定刃40aの搬送上流側の外周面を覆う保護板で構成され、搬送中の記録紙Pの印刷面と固定刃40aの刃先との接触を防止するものである。そのため、例えば、記録紙Pが上向きにカールしている場合でも、記録紙Pの搬送中に記録紙Pの印刷面と固定刃40aの刃先とが互いに擦れ合って印刷面に傷が付くことがない。
【0061】
前記可動刃40bの上方位置には、記録紙Pの切断時に可動刃40bにより上方へ突き上げられた切り屑の飛散を防止する閉塞部材44が配設されている。この閉塞部材44は、可動刃40bの上方を覆う閉塞板44aを有しており、可動刃40bで突き上げられて飛散した切り屑がこの閉塞板44aに接触して落下するため、切り屑が上方に飛び散って回収不能となったり、搬送経路上で詰まることを防止できる。
【0062】
また、前記閉塞部材44は、記録紙Pの後端を切断する際に、可動刃40bの移動に合わせて記録紙Pが持ち上がるのを抑制する押圧板44b(押圧部材)を有している。この押圧板44bは、閉塞板44aの右側壁の下端から水平方向右側に延びるように閉塞板44aと一体に形成されており、可動刃40bの搬送下流側の近傍位置で記録紙Pの上面に近接するように配設されている。
【0063】
このような構成とすれば、記録紙Pの後端の余白部を切り落とす際に、記録紙Pの後端が上方に撓んだ状態で切断されることが抑えられ、記録紙Pの後端を精度良く切断することができる。
【0064】
具体的に、前記押圧板44bを設けることなく記録紙Pの後端の余白部を切断した場合には、記録紙Pの後端が可動刃40bによって持ち上げられ、上側ガイド板64の上側水平面部64aと上側傾斜面部64bとの境界位置を支点として上方に湾曲する。このとき、可動刃40bと上側ガイド板64との間隔が大きいと記録紙Pの撓み量も大きくなるため、切断ラインが直線状とならずに切断精度が悪化するおそれがあった。
【0065】
これに対し、本発明では、可動刃40bの搬送下流側の近傍位置に押圧板44bを配設して、記録紙Pの後端の切断時に可動刃40bにより記録紙Pが持ち上がるのを抑制しているから、記録紙Pの後端が上方に撓んだ状態で切断されるのを抑えることができる。
【0066】
前記カッター40の下方には、切断による記録紙Pの切り屑を回収するための回収経路42が設けられ、回収経路42を通って落下した切り屑は、回収経路42の下部に配設された屑箱41に収容される。
【0067】
前記Uターン部45には、Uターン部45の上流側部分に配設され且つ印刷搬送部22からの記録紙Pを挟持してさらにプリンタ後側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対46と、該搬送ローラ対46により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きを上側へ変更する第1向き変更部材47と、この第1向き変更部材47の下流側に配設され且つ記録紙Pを挟持して上側へ搬送する圧着型の2組の搬送ローラ対48と、搬送ローラ対48により搬送されてきた記録紙Pの搬送の向きをプリンタ前側へ変更する第2向き変更部材49と、Uターン部45の下流側端部に配設され、記録紙Pを挟持してUターン部45から排出する圧着型の搬送ローラ対50と、この搬送ローラ対50の近傍位置に配設され且つ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第3センサ51(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。なお、2組の搬送ローラ対48の間には、下側の搬送ローラ対48から送り出された記録紙Pの先端を上側の搬送ローラ対48へと導く一対のガイド板52が、搬送路を挟むように配設されている。
【0068】
前記Uターン部45の上流側部分における2組の搬送ローラ対46の間には、印刷部21において記録紙Pの上側面に付着したインクを乾燥させるための乾燥風Wを記録紙Pの上側面に吹き付ける乾燥装置53が設けられている。この乾燥装置53は、乾燥装置53内に空気を取り込むための吸入ファン54と、この吸入ファン54で取り込んだ空気を加熱する加熱ヒータ55と、乾燥装置53の下端部に開口して、加熱ヒータ55で加熱された空気を乾燥風Wとして記録紙Pの上側面に吹き付ける排気ノズル部56と、乾燥装置53内の温度を検出して加熱ヒータ55を緊急停止させる安全サーモ57とを備えている。
【0069】
前記Uターン部45の全搬送ローラ対46,48,50において、記録紙Pにおける印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上流側部分における2組の搬送ローラ対46では下側のローラであり、その下流側の2組の搬送ローラ対48ではプリンタ後側のローラであり、搬送ローラ対50では、上側のローラである)は、それぞれ駆動ローラ46a,48a,50aとされ、印刷面に接触するローラ(搬送ローラ対46では上側のローラであり、搬送ローラ対48ではプリンタ前側のローラであり、搬送ローラ対50では、下側のローラである)は、それぞれ従動ローラ46b,48b,50bとされている。
【0070】
前記第3センサ51は、記録紙Pの後端を検出して、記録紙PのUターン部45からの排出を検出するものである。両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられていない場合には、記録紙Pの筐体2外側への排出を検出することになる。一方、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている場合には、記録紙Pの後端の検出から、該後端が搬送ローラ対50から外れる量だけ記録紙Pが搬送されたときに、両面印刷ユニット7での記録紙Pの搬送速度を変更(アップ)する。
【0071】
前記両面印刷ユニット7は、筐体2の上面を覆う第1ユニット8と、カセット5の上方に位置する第2ユニット9との2分割構造になっている。そして、両面印刷ユニット7がプリンタ本体部1に取り付けられている状態で、第1ユニット8のみを筐体2から取り外すことが可能になっている。この第1ユニット8が取り外された状態で、筐体2の上面に設けたメンテナンス開口(通常時は蓋で塞がれる)を介して印刷部21(特にプリントヘッドH等)のメンテナンス作業を行うことができる。
【0072】
前記両面印刷ユニット7の第1ユニット8内には、Uターン部45から送り出された記録紙Pを、印刷部21を超えてカセット5の側(印刷部21に対してプリンタ前側)へ搬送するリバース搬送部61が設けられている。このリバース搬送部61には、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する圧着型の3組の搬送ローラ対62と、リバース搬送部61の下流側端部(第1ユニット8のプリンタ前側端部)の位置に配設され且つ記録紙Pが当該位置にあることを検出する第4センサ63(投光部と受光部とからなる)とが設けられている。
【0073】
前記リバース搬送部61の全搬送ローラ対62において、記録紙Pにおける印刷部21による印刷面とは反対側の面に接触するローラ(上側のローラ)は、駆動ローラ62aとされ、印刷面に接触するローラ(下側のローラ)は、従動ローラ62bとされている。全ての駆動ローラ62aは同じモータ(図示省略)により駆動される。そして、この駆動ローラ62aの回転速度、つまり搬送ローラ対62による記録紙Pの搬送速度は可変に構成されている。
【0074】
前記第2ユニット9内には、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせて記録紙Pの後端側から印刷搬送部22の上流側端部へ供給するスイッチバック部66が設けられている。このスイッチバック部66には、下側の駆動ローラ67aと上側の従動ローラ67bとからなる圧着型のスイッチバックローラ対67と、このスイッチバックローラ対67の上流側において搬送路を挟むように設けられ、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックローラ対67へ導く一対の第1ガイド部材68と、スイッチバックした記録紙Pを印刷搬送部22の上流側端部へ供給する圧着型の供給ローラ対69と、スイッチバックローラ対67と供給ローラ対69との間において搬送路を挟むように設けられ、スイッチバックした記録紙Pを供給ローラ対69へ導く一対の第2ガイド部材70とが設けられている。
【0075】
前記スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aは、モータ(図示省略)により、記録紙Pを挟持してプリンタ前側へ搬送する正回転と、記録紙Pを挟持してプリンタ後側へ搬送する逆回転とが可能に構成されている。
【0076】
前記スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68は、モータ(図示省略)により、スイッチバックローラ対67の駆動ローラ67aの回転軸回りに一体的に回動可能になっており、これにより、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが、駆動ローラ67aに対してほぼ真上に位置する第1の位置(図9参照)と、駆動ローラ67aに対してプリンタ後側に位置する第2の位置(図10参照)とに切り換えられるようになっている。また、第1ガイド部材68は、従動ローラ67bが第1の位置にあるときには、リバース搬送部61における搬送路の延長上に位置し(図9参照)、従動ローラ67bが第2の位置にあるときには、第2ガイド部材70の延長上に位置する(図10参照)。
【0077】
ここで、前記リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pをスイッチバックさせる方法を説明する。スイッチバックローラ対67が、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを受け取る際には、駆動ローラ67aは正回転しており、従動ローラ67bは第1の位置にある。そして、第4センサ63が記録紙Pの後端を検出してから、該後端が第1ガイド部材68に位置するような量だけスイッチバックローラ対67により記録紙Pをプリンタ前側へ搬送したところで(図9参照)、駆動ローラ67aの正回転を停止する。このとき、記録紙Pの少なくとも先端部は、後述の載置トレイ74上に位置する。
【0078】
続いて、スイッチバックローラ対67及び第1ガイド部材68を図9で時計回り方向に回動させて従動ローラ67bを第1の位置から第2の位置へ切り換える。これにより、記録紙Pの先端側(プリンタ前側)が持ち上げられて、スイッチバックローラ対67に対して上側でかつプリンタ前側に配設された2つの補助ローラ72に当接した状態で湾曲する(図10参照)。
【0079】
その後、駆動ローラ67aを逆回転させて、記録紙Pをその後端側から供給ローラ対69の側へ向けて搬送する。このとき、記録紙Pの搬送に伴って補助ローラ72が回転し、これにより、スイッチバックする記録紙Pの後端側部分(駆動ローラ67aの正回転時の先端側部分に相当)がスムーズに移動するとともに、第2ユニット9の内壁面等に擦れて傷が付くようなこともない。スイッチバックローラ対67によりスイッチバックする記録紙Pは、第1ガイド部材68及び第2ガイド部材70を通って、供給ローラ対69のところに達する(図11参照)。
【0080】
前記供給ローラ対69は、モータ(図示省略)により駆動される駆動ローラ69aと、この駆動ローラ69aに対して圧着される従動ローラ69bとからなる。この従動ローラ69bの駆動ローラ69aに対する圧着状態は、後述の如く解除することが可能になっている(スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bも同様)。
【0081】
前記供給ローラ対69の下側には、プリンタ本体部1の筐体2におけるプリンタ前側面の上部に設けられた一対の第3ガイド部材73が、搬送路を挟むように配設されており、この第3ガイド部材73を介して記録紙Pが印刷搬送部22の上流側端部へ供給されることになる。このように両面印刷ユニット7を介して印刷搬送部22に供給された記録紙Pの上側面は、記録紙Pに対して印刷部21にて最初に印刷された面(以下、表側面という)とは反対側の面(以下、裏側面という)であり、未だ印刷されていない面である。そして、最初の印刷時と同様に裏側面に印刷することで、記録紙Pの両面に印刷されることになる。
【0082】
前記スイッチバックローラ対67は、リバース搬送部61より搬送されてきた記録紙Pを、スイッチバックさせないで第2ユニット9の外側へ排出する役目もしている。すなわち、スイッチバックローラ対67は、記録紙Pを第2ユニット9の外側へ排出する際には、駆動ローラ67aの正回転を途中で停止しないで回転し続ける。そして、第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面には、スイッチバックローラ対67により送り出された記録紙Pを受け止めて載置する載置トレイ74が設けられている。前記のように両面に印刷された記録紙Pや、表側面のみの印刷で済ませる記録紙Pは、スイッチバックローラ対67によって第2ユニット9の外側へ排出されて載置トレイ74上に載置されることになる。
【0083】
前記第2ユニット9の外壁のプリンタ前側面における載置トレイ74の上側には、載置トレイ74に載置された記録紙Pに埃等が付着するのを防止するカバー部材75が、載置トレイ74の上側を覆うように片持ち状に支持されている。このカバー部材75は、その基端部(プリンタ後側端部)にてプリンタ左右方向に延びる軸75a回りに回動可能に支持されており、カバー部材75を軸75a回りに回動させて基端部から上側へ延びるように立てた状態にすることも可能である。
【0084】
前記第2ユニット9の外壁の上面における前記スイッチバックローラ対67の近傍には、記録紙Pを手差し挿入することが可能な手差し挿入用開口部77が形成されている。この手差し挿入用開口部77には、一対の手差し用ガイド部材78が、手差し挿入される記録紙Pを厚み方向に挟むように配設され、この手差し用ガイド部材78により、手差し挿入された記録紙Pの先端をスイッチバックローラ対67の側へ導く。また、手差し挿入用開口部77は、蓋部材79(図1参照)により覆われており、オペレータは、記録紙Pを手差し挿入する際には、この蓋部材79を開けるとともに、モードスイッチ(図示省略)を操作して、手差しモードに切り換える。これにより、図12に示すように、スイッチバックローラ対67の従動ローラ67bが第2の位置に切り換えられるとともに、駆動ローラ67aが逆回転する。そして、オペレータが記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入する。このとき、前記カバー部材75を立てた状態にしておけば、カバー部材75が記録紙Pを支持する受け皿の役目を果たし、記録紙Pの挿入が容易になる。こうして記録紙Pを手差し挿入用開口部77から挿入すると、その記録紙Pがスイッチバックローラ対67によって供給ローラ対69の側へ向けて搬送され、スイッチバックして搬送される記録紙Pと同様に、供給ローラ対69によって、印刷搬送部22(印刷部21)へ供給される。
【0085】
前記Uターン部45、リバース搬送部61及びスイッチバック部66は、印刷搬送部22の下流側端部と上流側端部とを接続して印刷搬送部22と共にプリントヘッドHを囲むような周回搬送路を形成し且つ印刷搬送部22の下流側端部より送り出された、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷搬送部22の上流側端部へ供給する記録紙再供給部88を構成する。この記録紙再供給部88により、表側面に印刷された記録紙Pを、表裏反転させて印刷部21へ再供給することができ、この記録紙Pの裏側面にも印刷することで、記録紙Pの両面に印刷を行うことができる。
【0086】
前記裏側面に印刷された記録紙Pは、Uターン部45及びリバース搬送部61により、表側面に印刷された後の搬送時(記録紙Pの1回目の搬送時)と同様に、スイッチバック部66へと搬送される。このとき、スイッチバック部66のスイッチバックローラ対67は正回転し続けて、記録紙Pを載置トレイ74上に排出する。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明は、記録紙の先端の余白部を切り落とした後、その切り屑が搬送経路上に残らないようにするとともに、記録紙の後端を精度良く切断できるようにすることができるという実用性の高い効果が得られることから、きわめて有用で産業上の利用可能性は高い。
【符号の説明】
【0088】
A インクジェットプリンタ
P 記録紙
40a 固定刃
40b 可動刃
40 カッター(切断手段)
44b 押圧板(押圧部材)
65 下側ガイド板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙を所定の搬送経路に沿って搬送しながら該記録紙に対して画像を印刷し、画像印刷後の該記録紙を所定の長さに切断して所定位置へ搬送するプリンタであって、
前記記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有し、該可動刃を該固定刃に対して移動させて該記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって該可動刃の刃先を連続的に押し当てることで該記録紙を切断する切断手段と、
前記切断手段の搬送下流側に設けられ、前記記録紙を受け止める下側ガイド板とを備え、
前記下側ガイド板の搬送上流側の端縁部は、その幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記可動刃の搬送下流側の近傍位置で前記記録紙の上面に近接するように配設され且つ該記録紙の後端の切断時に該可動刃により該記録紙が持ち上がるのを抑制する押圧部材を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項1】
記録紙を所定の搬送経路に沿って搬送しながら該記録紙に対して画像を印刷し、画像印刷後の該記録紙を所定の長さに切断して所定位置へ搬送するプリンタであって、
前記記録紙の搬送経路の上側及び下側に配置された固定刃及び可動刃を有し、該可動刃を該固定刃に対して移動させて該記録紙の幅方向の基端側から終端側に向かって該可動刃の刃先を連続的に押し当てることで該記録紙を切断する切断手段と、
前記切断手段の搬送下流側に設けられ、前記記録紙を受け止める下側ガイド板とを備え、
前記下側ガイド板の搬送上流側の端縁部は、その幅方向の基端側が終端側よりも搬送下流側に位置するように形成されていることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記可動刃の搬送下流側の近傍位置で前記記録紙の上面に近接するように配設され且つ該記録紙の後端の切断時に該可動刃により該記録紙が持ち上がるのを抑制する押圧部材を備えたことを特徴とするプリンタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−178007(P2011−178007A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−43709(P2010−43709)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(311001347)NKワークス株式会社 (96)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]