説明

プリンタ

【課題】給紙部を回転して姿勢変更させるあたり、機構部品や制御を簡素化して製造コストの低減を図る。
【解決手段】記録媒体を保持する給紙部と、給紙部を回転可能に支持する支持部と、給紙部を回転させる電動部と、給紙部の姿勢の予め定めた基準姿勢を検出する姿勢センサと、給紙部1を停止目標姿勢に位置決め停止させる位置決め手段とを有し、姿勢センサの検出に基づき基準姿勢に関連付けられた停止目標姿勢へ給紙部を回転して姿勢変更する。電動部の出力量を検出する出力量検出部を設け、出力量の計測を姿勢センサにより基準姿勢であることが検出される時点から開始し、出力量が給紙部を停止目標姿勢に姿勢変更するために必要な目標出力量になるように電動部を駆動制御するように構成し、単一の基準姿勢を複数の停止目標姿勢に関連付け、単一の姿勢センサで複数の停止目標姿勢に給紙部を姿勢変更させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷を行うヘッド部に対して記録媒体を供給する給紙部を備えるプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記のプリンタの一例としてサーマルプリンタは、印刷を行うヘッド部に対して供給可能な状態で記録媒体を保持する給紙部と、給紙部に保持される記録媒体をヘッド部に搬送する搬送路とを有し、この搬送路を通じて記録媒体をヘッド部に供給し、ヘッド部の加熱を通じて染料又は顔料を記録媒体に転写させることにより、若しくは、熱を感知すると色が変化する感熱紙等の記録媒体をヘッド部で加熱することにより、記録媒体に印刷する印刷装置である。
【0003】
従来のサーマルプリンタとして例えば特許文献1には、給紙部として巻回された記録媒体を保持するローラを備えるプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−314295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のプリンタでは、給紙部と搬送路との位置関係が固定であり、給紙部から記録媒体が繰り出される位置が必然的に定まってしまうので、例えば記録媒体の表裏を反転させたり、複数の搬送路を介して単一又は複数のヘッド部に記録媒体を供給したりする等の記録媒体の新たな態様を実現するためには、記録媒体の繰り出し位置から反転機構や複数の搬送路等に対して搬送路を取り回して配置しなければならず、装置の大型化を招いてしまう。
【0006】
このような不具合を伴うことなく上記のような記録媒体の新たな態様を実現するためには、給紙部を回転可能に支持する支持部と、支持部に対して給紙部を回転させるモータ等の電動部と、電動部により回転する給紙部を所定の停止目標姿勢に位置決め状態で停止させる位置決め手段とを備え、停止目標姿勢を複数設定して給紙部を所望の停止目標姿勢に回転により姿勢変更させるように構成することが一つの有効な手段として考えられる。この給紙部を回転により姿勢変更するための制御は、一つの停止目標姿勢に対してインタラプタセンサ等の給紙部の姿勢を検出する二つの姿勢センサを減速用センサ及び停止用センサとして設けておき、停止目標姿勢に向けて給紙部を回転させ、減速用センサにより減速すべき姿勢であることが検知されたときに減速を開始し、停止用センサにより停止すべき姿勢であることが検出されたときに電動部の駆動を停止させることで、給紙部を所望の停止目標姿勢に姿勢変更させるように構成することが一般的に考えられる。
【0007】
しかしながら、かかる構成では、各々の停止目標姿勢毎に少なくとも一つの姿勢センサを関連付けて設置しなければならないので、停止目標姿勢の設定数以上の姿勢センサが必要となり、製造コストの増大を招く。
【0008】
一方、給紙部を回転させるモータ等の電動部にステッピングモータなどの位置決め機能を有するものを採用することが考えられるが、この場合、かかる部品は高価であるので製造コストが増大してしまい、量産に好ましいものではない。
【0009】
また、制御方式として、制御対象たる給紙部の回転角度を検出するエンコーダやレゾルバ等の角度検出部を設けて、検出した回転角度を電動部(モータ)の制御に戻すフィードバック制御を採用することも考えられるが、上記オープン制御に比べて制御が複雑となり、これに伴い製造コストが増大してしまう。
【0010】
なお、上記の問題はサーマルプリンタに限らず、インクジェットプリンタ等のサーマルプリンタ以外のプリンタでも同様である。
【0011】
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、給紙部を回転により姿勢変更させる新たなプリンタを実現するにあたり、機構部品や制御を極力簡素化して製造コストを低減させたプリンタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
【0013】
すなわち、本発明のプリンタは、印刷を行うヘッド部に記録媒体を搬送する搬送路に対して供給可能な状態で記録媒体を保持する給紙部と、給紙部を回転可能に支持する支持部と、支持部に対して給紙部を回転させる電動部と、給紙部の姿勢が予め定めた基準姿勢であることを検出する姿勢センサと、姿勢センサでの検出に基づいて電動部の駆動を制御することにより基準姿勢に関連付けられた停止目標姿勢へ給紙部を回転により姿勢変更させる姿勢制御部と、電動部により回転する給紙部を停止目標姿勢に位置決め状態で停止させる位置決め手段とを具備してなり、電動部の出力量を検出する出力量検出部を設けるとともに、前記姿勢制御部を、前記出力量検出部により検出される出力量の計測を前記姿勢センサにより基準姿勢であることが検出される時点から開始し、計測した出力量が給紙部を停止目標姿勢に姿勢変更させるために必要な目標出力量になるように電動部に対する駆動制御を行うように構成し、単一の基準姿勢を複数の停止目標姿勢に関連付けることにより、単一の姿勢センサで複数の停止目標姿勢に給紙部を姿勢変更させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
単一の姿勢センサで複数の停止目標姿勢に給紙部を姿勢変更させるとは、姿勢センサの数が一つであることを意味するものではない。例えば、一つの姿勢センサが複数の停止目標姿勢に関連付けられていれば、姿勢センサが複数設けられていてもよい。
【0015】
このように、電動部の出力量を検出する出力量検出部を設けるとともに、姿勢制御部を、出力量検出部により検出される出力量の計測を姿勢センサにより基準姿勢であることが検出される時点から開始し、計測した出力量が給紙部を停止目標姿勢に姿勢変更させるために必要な目標出力量になるように電動部を駆動するオープン制御を行うように構成し、単一の基準姿勢を複数の停止目標姿勢に関連付けることにより、単一の姿勢センサで複数の停止目標姿勢に給紙部を姿勢変更させるようにしたので、フィードバック制御等の複雑な制御やステッピングモータ等の高精度の電動部等を要さずに、姿勢センサの必要設置数を減らすことができ、機構部品や制御を極力簡素化して製造コストを低減させることが可能となる。
【0016】
減速用の姿勢センサを不要として製造コストを更に低減させるためには、前記姿勢制御部は、前記計測した出力量が前記目標出力量よりも小さい所定値を超えた場合に給紙部の減速を開始することが好ましい。
【0017】
停止目標姿勢からズレた姿勢に給紙部が停止した場合でも正確な位置決めを可能とするためには、前記電動部は、給紙部又は支持部のいずれか一方に設けられ、噛み合い構造の伝達部を介して動力を給紙部又は支持部のいずれか他方に伝達することにより、給紙部を回転させるように構成されており、前記位置決め手段は、前記給紙部又は前記支持部のいずれか一方に設けられる被係合部と、前記給紙部又は前記支持部のいずれか他方に設けられ被係合部に係合する係合部とを有し、被係合部に対して所定の領域内に係合部が進入した場合に係合部を被係合部と係合する位置に引き込んで給紙部の姿勢を停止目標姿勢とした状態で給紙部の回転を禁止するように構成されていることが効果的である。
【0018】
位置決め手段による位置決めができない事態を回避するためには、前記姿勢センサは、停止目標姿勢以外の姿勢を基準姿勢として設定していることが望ましい。
【0019】
好適な適用例としては、前記給紙部は、前記支持部に回転可能に支持される板状のターンテーブル部を有し、前記支持部は、少なくとも一部がターンテーブル部と対向する板状に形成されており、前記姿勢センサは、ターンテーブル部及び支持部の板状部位のうち互いに対向する部位に配置しなければならない制約条件の下で設けられていることが挙げられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、以上説明したように、電動部の出力量を検出する出力量検出部を設けるとともに、姿勢制御部を、出力量検出部により検出される出力量の計測を姿勢センサにより基準姿勢であることが検出される時点から開始し、計測した出力量が給紙部を停止目標姿勢に姿勢変更させるために必要な目標出力量になるように電動部を駆動するオープン制御を行うように構成し、単一の基準姿勢を複数の停止目標姿勢に関連付けることにより、単一の姿勢センサで複数の停止目標姿勢に給紙部を姿勢変更させるようにしたので、フィードバック制御等の複雑な制御やステッピングモータ等の高精度の電動部等を要さずに、姿勢センサの必要設置数を減らすことができ、機構部品や制御を極力簡素化して製造コストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタを模式的に示す構成図。
【図2】記録媒体を保持する給紙部を回動させる反転手段を模式的に示す斜視図。
【図3】ターンテーブル部及びベースの周辺構成を模式的に示す斜視図。
【図4】第一の停止目標姿勢にある給紙部を模式的に示す底面図。
【図5】第二及び第三の停止目標姿勢にある給紙部をそれぞれ模式的に示す底面図。
【図6】第一及び第二の停止目標姿勢にある給紙部をそれぞれ模式的に示す底面図。
【図7】電動部及び出力量検出部の周辺構成を模式的に示す図。
【図8】位置決め手段の係合部及び被係合部を模式的に示す斜視図。
【図9】基準姿勢と停止目標姿勢との関連付けに関する説明図。
【図10】姿勢制御における給紙部の回転速度に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0023】
本実施形態のサーマルプリンタは、図1に示すように、巻回されたロール用紙等の記録媒体Paを保持する給紙部1と、記録媒体Paに印刷を行うヘッド部2と、給紙部1から供給される記録媒体Paを搬送ローラ部3を経由してヘッド部2に搬送する搬送路Liと、一対のローラで記録媒体Paを挟持しつつローラの少なくとも一方を回転させることにより搬送路Liにある記録媒体Paを搬送する搬送ローラ部3と、記録媒体Paの搬送制御やヘッド部2の印刷制御を行う制御部5とを有し、給紙部1に保持される記録媒体Paを搬送ローラ部3によりヘッド部2へ搬送しつつヘッド部2で記録媒体Paへの印刷を行うものである。
【0024】
給紙部1は、図1及び図2に示すように、ロール状に巻回された記録媒体Paを回転軸C1を中心に回転可能に支持する軸支部11と、記録媒体Paを挟持してテンションを付与しつつ記録媒体Paの繰り出し位置を決定するための補助送りローラ12とを有し、図示しないモータ等の動力部によりロール状の記録媒体Paを回転軸C1を中心に正逆回転させて記録媒体Paの繰り出し及び巻き戻しを行い得るように構成されている。
【0025】
搬送路Liは、周知の搬送路と同様にガイド等により構成され、給紙部1に保持される記録媒体Paを搬送ローラ部3を介してヘッド部2へ案内する。
【0026】
搬送ローラ部3は、搬送路Liに沿って給紙部1の下流(排出側)に配置され、給紙部1に保持されるロール状の記録媒体Paをフィードローラ31とピンチローラ32とで挟持しながらフィードローラ31を図示しないモータ等の動力部を通じて回転駆動させることにより記録媒体Paを搬送する。
【0027】
ヘッド部2は、搬送路Liに沿って配置され、顔料や染料等のインクを塗布したインクリボンPbを繰り出すインクリボンローラ22と、搬送ローラ部3の下流にあって発熱抵抗体が配置されたサーマルヘッド21と、このサーマルヘッド21に対向配置されインクリボンPb及び記録媒体Paをサーマルヘッド21と共に挟持するプラテンローラ23とを備え、サーマルヘッド21の加熱によりインクリボンPbのインクを記録媒体Paに転写させて印刷を行う。
【0028】
制御部5は、周知のサーマルプリンタと同様にCPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されて、メモリ内に搬送制御ルーチンや印刷制御ルーチン等の所要のプログラムが書き込まれており、CPUは適宜必要なプログラムを呼び出して実行することにより、周辺ハードリソースと協働して、所期の搬送動作や印刷動作が実現される。
【0029】
本実施形態では、上記構成にさらに以下の構成を加えている。
【0030】
すなわち、図1に示すように、給紙部1を回転軸Cnを中心に回転可能にし、給紙部1を第一の停止目標姿勢ro1(回転位置)に停止させた状態で記録媒体Paを供給可能にするとともに、給紙部1を第一の停止目標姿勢ro1から180度回転させた第二の停止目標姿勢ro2(回転位置)に停止させた状態(図1、図4及び図5(b)参照)で記録媒体Paを供給可能にすることによりヘッド部2に臨む記録媒体Paの表裏を反転させる反転手段4を設けている。なお、反転手段4は、給紙部1に記録媒体Paを着脱するなどの給紙部1に対するメンテナンスに適した第三の停止目標姿勢ro3(回転位置)に給紙部1を停止可能に構成されている(図5(a)参照)。
【0031】
具体的には、図2及び図3に示すように、反転手段4は、記録媒体Paを搬送路に対して供給可能に保持する給紙部1と、給紙部1を回転軸Cnの回りに回転可能に支持する支持部41と、支持部41に対して給紙部1を回転させるDCモータを用いた電動部42と、給紙部1の姿勢を検出する姿勢センサ43と、姿勢センサ43での検出に基づいて電動部42の駆動を制御することにより所望の停止目標姿勢ro1,ro2,ro3へ給紙部1を回転により姿勢変更させる姿勢制御部40と、電動部42により回転する給紙部1を停止目標姿勢ro1,ro2に位置決め状態で停止させる位置決め手段44とを有している。
【0032】
給紙部1は、図2に示すように、ロール状に巻回された記録媒体Paがロールの軸心C1を中心に回転可能になるように記録媒体Paの幅方向両側を着脱可能に支持する保持部11と、この保持部11を上面13aに設けた板状のターンテーブル部13とを備えている。
【0033】
給紙部1を支持する支持部41は、図3に示すように、給紙部1のターンテーブル部13をベアリング41aを介して回転軸Cnを中心に回転可能に支持する板状のベース41bを主体として構成されている。
【0034】
給紙部1を支持部41に対して回転させる電動部42は、図3及び図7に示すように、ターンテーブル部13に設けられた停止精度に乏しいDCモータ等の回転力(動力)を出力する出力部42aと、出力部42aの出力を支持部41であるベース41bに形成される周回路41rに伝達する噛み合い構造の伝達部42bとを有し、出力部42aにより出力される回転力を伝達部42b及び周回路41rを介して支持部41に伝達することにより支持部41に対して給紙部1を回転させる。この伝達部42bは、出力部42aの出力軸42a1に設けられるウォームギア42b1と、周回路41rに形成されたギア部42b2と、ウォームギア42b1及びギア部42b2を連絡するハスバギア42b3及び平歯車42b4等により構成された噛み合い構造をなしている。この伝達部42bにはその構造上幾分かのバックラッシュがある。勿論、電動部42の出力部42aを支持部41を構成するベース41bに設け、伝達部42bを介して回転力を給紙部1を構成するターンテーブル部13に伝達するように構成してもよい。
【0035】
図7に示すように、DCモータ等の出力部42aの回転角度(出力量)を検出する出力量検出部6が設けられている。出力量検出部6は、既知のロータリーエンコーダをDCモータたる出力部42aの出力軸42a1に設けたもので、径方向に複数のスリットが形成され出力部42aの出力軸42a1とともに回転する回転板61と、この回転板61を挟む位置に配置される発光素子62及び受光素子63とで構成され、出力部42aの出力軸の回転に伴って回転板61が回転することで、発光素子62で発光された光がスリットを通って受光素子63で受光される受光状態と、回転板61のうちスリットが形成されていない部位で光が遮断されて受光素子63で受光されない遮蔽状態とが切り替わり、受光状態及び遮蔽状態が切り替わる毎に、出力部42aが単位量の出力を行ったこと(出力軸42a1が単位角度、回転したこと)を示す検知信号Psを出力する。この検知信号Psは制御部5に入力される。
【0036】
給紙部1の姿勢を検出する姿勢センサ43として、図3〜図6に示すように、給紙部1の姿勢が第一の基準姿勢bs1であることを検出する第一の姿勢センサ43aと、給紙部1の姿勢が第二の基準姿勢bs2であることを検出する第二の姿勢センサ43bとが設けられている(図6参照)。図4に示す第一の停止目標姿勢ro1を回転角度0度とし、図5(a)に示す第三の停止目標姿勢ro3を回転角度90度とし、図5(b)に示す第二の停止目標姿勢ro2を回転角度180度とした場合に、第一の基準姿勢bs1は、図6(a)に示すように、第一の停止目標姿勢ro1及び第三の停止目標姿勢ro3の間にある姿勢(回転角度45度)であり、第二の基準姿勢bs2は、図6(b)に示すように、第三の停止目標姿勢ro3及び第二の停止目標姿勢ro2の間にある姿勢(回転角度135度)である。各々の停止目標姿勢ro1,ro2,ro3では、給紙部1が停止状態となり、停止目標姿勢以外の姿勢(各基準姿勢bs1,bs2を含む)では、給紙部1が回転状態となる。これら第一及び第二の姿勢センサ43a,43bは、支持部41を構成するベース41bに設けられたセンサプレートたる二つの遮光部43xと、遮光部43xによる遮光を検出する一つの遮光センサ43yとから構成される遮光型センサであり、ターンテーブル部13の回転に伴って遮光センサ43yが遮光部43xにより遮光される位置に移動することで、給紙部1の姿勢が第一又は第二の基準姿勢bs1,bs2であることを検出するように遮光センサ43y及び遮光部43xの位置関係が規定されたものである。ターンテーブル部13の反支持部側(給紙部側)を開放するために、これら姿勢センサ43a,43bを、ターンテーブル部及び支持部41の板状部位(ベース41b)のうち互いに対向する部位に配置しなければならない制約条件が課せられている。勿論、遮光部43xを給紙部1に取り付け、遮光センサ43yを支持部41に取り付けてもよい。
【0037】
給紙部1を第一〜第三の停止目標姿勢ro1,ro2,ro3(回転位置)のうち所望の停止目標姿勢に位置決め状態で停止させるための位置決め手段44は、図3、図4,図5及び図8に示すように、給紙部1を構成するターンテーブル部13の支持部側である下面13bに設けられた三つの被係合部45と、支持部41を構成するベース41bに設けられ制御部5からの指令信号に基づいて被係合部45に係合する係合位置又は係合位置から退避する退避位置のいずれかに移動可能な係合部46a(図3及び図8参照)とを有し、ターンテーブル部13の回転に伴って三つ被係合部45が係合部46aに対向する位置に移動し、係合部46aを被係合部45に係合させることで給紙部1の回転を禁止して給紙部1を所望の停止目標姿勢に停止させるものである。
【0038】
具体的には、給紙部1の姿勢が第一の停止目標姿勢ro1にある状態を示す図4を用いて説明すると、3つの被係合部45のうちの一つの被係合部45(sa)は、給紙部1が第一の停止目標姿勢ro1にあるときに係合部46aに係合可能な位置に配置され、他の一つの被係合部45(sm)は、図5(a)に示すように、図中の矢印のようにターンテーブル部13が90度回転して給紙部1が第一の停止目標姿勢ro1から第三の停止目標姿勢ro3へ回転による姿勢変更したときに係合部46aに係合可能な位置に配置され、残りの被係合部45(sb)は、図5(a)に示すように、図中の矢印のようにターンテーブル部13が180度回転して給紙部1が第一の停止目標姿勢ro1から第二の停止目標姿勢ro2へ回転による姿勢変更したときに係合部46aに係合可能な位置に配置されている。このように、係合部46a及び各被係合部45(sa、sm、sb)の位置関係が規定されている。
【0039】
より詳細には、係合部46aは、図8に示すように、回転する回転シャフト46bに設けられ給紙部1の回転方向の接線と直交する方向に延びる軸状の突起部であり、係合部46aと、動力部たるモータからの動力をギア46cを介して受ける回転シャフト46bとにより係合機構46を構成している。係合機構46は、回転シャフト46bを給紙部1の回転方向の接線に平行な軸C4を中心に回転させることで、係合部46aを給紙部1の回転方向と直交する方向に沿って移動させて係合部46aを上記の係合位置又は退避位置のいずれかに移動させる。
【0040】
被係合部45は、図8に示すように、回転方向と直交する方向に沿って形成され係合部46aと係合することにより給紙部1やターンテーブル部13の回動を禁止する禁止面45cと、係合部46aを禁止面45c同士の間に呼び込む呼び込み部45dとが形成されており、電動部42による給紙部1の回動停止位置が多少ずれたとしても係合部46aを呼び込み部45dで禁止面45c同士の間に案内して給紙部1の正確な姿勢決めを行う。係合部46aは円滑な係合動作を行うために回転自在に軸着されていることが望ましい。
【0041】
すなわち、位置決め手段44は、給紙部1に設けられる被係合部45と、支持部41に設けられ被係合部45に係合する係合部46aとを有し、被係合部45に対して所定の領域Ar内に係合部46aが進入した場合に係合部46aを被係合部45と係合する位置に引き込んで給紙部1の姿勢を停止目標姿勢ro1とした状態で給紙部1の回転を禁止するように構成されている。なお、被係合部45を支持部41に設け、係合部46aを給紙部1に設けてもよい。また、呼び込み部45dは、被係合部45に設けているが、係合部46aにのみに設けてもよく、被係合部45及び係合部46aの双方に設けてもよい。
【0042】
給紙部1と搬送ローラ部3との間には、図1に示すように、補助送りローラ12に挟持され先端が自由となっている記録媒体Paを受けて搬送ローラ部3へガイドするガイド機構7が設けられている。ガイド機構7は、給紙部1の姿勢が第一の停止目標姿勢ro1であるときの補助送りローラ12から記録媒体Paを受けて搬送ローラ部3へガイドする第1のガイド部71と、給紙部1の姿勢が第二の停止目標姿勢ro2であるときの補助送りローラ12から記録媒体Paを受け止めて搬送ローラ部3へガイドする第2のガイド部72とを有している。第1のガイド部71及び第2のガイド部72の給紙部1側端部は、ガイド面同士の間隔がラッパ状に広げられて巻き癖がついている記録媒体Paを円滑に受けるように形成されている。勿論、記録媒体Paと両ガイド部71、72とが当たる位置が明確であれば、対向するガイド面の双方を傾斜させてラッパ状に形成する必要はなく、対向する両ガイド面のうちの一方のガイド面のみを傾斜させて受け面としてもよい。
【0043】
図3に示す姿勢制御部40は、制御部5が予め記憶された姿勢制御処理ルーチンを実行することにより実現されるもので、図9に給紙部1の各姿勢を直線上に模式的に示すように、第一の基準姿勢bs1を、第一及び第三の停止目標姿勢ro1、ro3に予め関連付けておき、第二の基準姿勢bs2を、第二及び第三の停止目標姿勢ro2,ro3に予め関連付けておき、姿勢センサ43での検出に基づいて電動部42の駆動を制御することにより基準姿勢bs1(bs2)に関連付けられた停止目標姿勢ro1,ro3(ro2,ro3)へ給紙部1を回転により姿勢変更させる。
【0044】
具体的には、図5(a)及び図6(a)に示すように、第一の停止目標姿勢ro1から第三の停止目標姿勢ro3に姿勢変更する場合を例として説明すると、第一の基準姿勢bs1から第三の停止目標姿勢ro3まで給紙部1の姿勢を変更するために給紙部1を回転させる回転角度は45度であり、給紙部1を45度回転させるために必要な電動部42の出力量(出力軸42a1の回転角度や検知信号Psの数で表すことができる)は既知であるので、図9に示すように、この出力量を事前に計測する等により求めて目標出力量N2として予め記憶している。そして、図6(a)及び図10に示すように、第一の姿勢センサ43aにより第一の基準姿勢bs1であることが検出される時点で出力量検出部6により検出される出力量(検知信号Ps)の計測(カウント)を開始し、図5(a)及び図10に示すように、計測した出力量(検知信号のカウント数)が給紙部1を第三の停止目標姿勢ro3に姿勢変更するために必要な目標出力量N2になるように電動部42の駆動を制御し、給紙部1の回転を第三の停止目標姿勢ro3で停止する。この場合、図9及び図10に示すように、計測した出力量(検知信号のカウント数)が目標出力量N2よりも小さい所定値M2を超えた場合に回転中の給紙部1の減速を開始するように構成している。この所定値M2は、停止目標姿勢ro3に給紙部1を適切に停止するために適宜設定されるものである。給紙部1の減速の度合は図10に示すように常に一定でもよいし、変化させてもよい。そして、姿勢制御部40は、計測した出力量(検知信号のカウント数)が目標出力量N2又はこれに近い値になるとき、すなわち給紙部1の姿勢が第三の停止目標姿勢ro3又はこの姿勢ro3に近い姿勢になったときに、係合部46aを係合位置に向けて移動させ、呼び込み部45dで係合部46aを被係合部45と係合する位置に呼び込んで給紙部1の姿勢を第三の停止目標姿勢ro3とした状態で給紙部1の回転を禁止する。
【0045】
第一の停止目標姿勢ro1への姿勢変更も上記とほぼ同様であり、図9に示すように、第一の基準姿勢bs1から第一の停止目標姿勢ro1までの目標出力量をN1として予め設定し、第一の基準姿勢bs1を第一及び第三の停止目標姿勢ro1,ro3に関連付けることにより、単一の姿勢センサ(第一の姿勢センサ43a)で複数の停止目標姿勢(第一及び第三の停止目標姿勢ro1,ro3)に給紙部1を姿勢変更させるように構成している。第二の基準姿勢bs2も上記と同様に、第二の基準姿勢bs2から第三の停止目標姿勢ro3までの目標出力量をN3に、第二の基準姿勢bs2から第二の停止目標姿勢ro2までの目標出力量をN4に設定しており、第二の姿勢センサ43bで複数の停止目標姿勢(第二及び第三の停止目標姿勢ro2,ro3)に給紙部1を姿勢変更させるように構成している。
【0046】
以上のように本実施形態に係るプリンタは、印刷を行うヘッド部2に記録媒体Paを搬送する搬送路Liに対して供給可能な状態で記録媒体Paを保持する給紙部1と、給紙部1を回転可能に支持する支持部41と、支持部41に対して給紙部1を回転させる電動部42と、給紙部1の姿勢が予め定めた基準姿勢bs1であることを検出する姿勢センサ43と、姿勢センサ43での検出に基づいて電動部42の駆動を制御することにより基準姿勢bs1に関連付けられた停止目標姿勢ro3へ給紙部1を回転により姿勢変更させる姿勢制御部40と、電動部42により回転する給紙部1を停止目標姿勢ro3に位置決め状態で停止させる位置決め手段44とを具備してなり、電動部42の出力量を検出する出力量検出部6を設けるとともに、姿勢制御部40を、出力量検出部6により検出される出力量の計測を姿勢センサ43により基準姿勢bs1であることが検出される時点から開始し、計測した出力量が給紙部1を停止目標姿勢ro3に姿勢変更させるために必要な目標出力量N2になるように電動部42に対する駆動制御を行うように構成し、単一の基準姿勢bs1を複数の停止目標姿勢ro1,ro3に関連付けることにより、単一の姿勢センサ43で複数の停止目標姿勢ro1,ro3に給紙部1を姿勢変更させるようにしている。
【0047】
このように、電動部42の出力量を検出する出力量検出部6を設けるとともに、姿勢制御部40を、出力量検出部6により検出される出力量の計測を姿勢センサ43により基準姿勢bs1であることが検出される時点から開始し、計測した出力量が給紙部1を停止目標姿勢ro3に姿勢変更させるために必要な目標出力量N2になるように電動部42を駆動するオープン制御を行うように構成し、単一の基準姿勢bs1を複数の停止目標姿勢ro1,ro3に関連付けることにより、単一の姿勢センサ43で複数の停止目標姿勢ro1,ro3に給紙部を姿勢変更させるようにしたので、フィードバック制御等の複雑な制御やステッピングモータ等の高精度の電動部等を要さずに、姿勢センサ43の必要設置数を減らすことができ、機構部品や制御を極力簡素化して製造コストを低減させることが可能となる。
【0048】
また、本実施形態では、姿勢制御部40は、計測した出力量が目標出力量N2よりも小さい所定値M2を超えた場合に給紙部1の減速を開始するので、停止目標姿勢ro1,ro3に関連付けられる停止用の姿勢センサ43aとは別個に設けられる減速用の停止センサが不要となり、姿勢センサの数を更に低減して製造コストを低減させることが可能となる。
【0049】
さらに、本実施形態では、電動部42は、給紙部1に設けられ、噛み合い構造の伝達部42bを介して動力を支持部41に伝達することにより、給紙部1を回転させるように構成されており、位置決め手段44は、給紙部1に設けられる被係合部45と、支持部41に設けられ被係合部45に係合する係合部46aとを有し、被係合部45に対して所定の領域Ar内に係合部46aが進入した場合に係合部46aを被係合部45と係合する位置に引き込んで給紙部1の姿勢を停止目標姿勢ro3とした状態で給紙部1の回転を禁止するように構成されているので、上記のように姿勢センサ43を減らした簡易な制御により、万一、電動部42の動力を伝達する伝達部42b等の噛み合い構造に起因したバックラッシュによって、給紙部1が停止目標姿勢ro3からズレた姿勢で停止した場合でも、位置決め手段が被係合部45に対する所定の領域Ar内に進入した係合部46aを被係合部45と係合する位置に引き込んで給紙部1の姿勢を停止目標姿勢とした状態で給紙部1の回転を禁止するため、正確な位置決めが可能となる。
【0050】
また、基準姿勢bs1が停止目標姿勢ro3に設定されている場合は、給紙部1の停止中に検出することになり、電動部42の動力を伝達する伝達部42b等の噛み合い構造に起因するバックラッシュが、電動部42の出力量の計測値(本実施形態では、検知信号Psのカウント数)に含まれて誤差となり、この誤差によって係合部46aを被係合部45と係合する位置に引き込み可能な所定の領域Ar外に係合部46aがズレてしまうと、位置決め手段44による位置決めができない状態となる。しかし、本実施形態では、姿勢センサ43は、停止目標姿勢ro3以外の姿勢を基準姿勢bs1として設定しているので、給紙部1の回転中に検出することになり、上記バックラッシュが電動部42の出力量の計測値に含まれることを回避し、位置決め手段44による位置決めができない事態を回避することが可能となる。
【0051】
上記構成及び作用効果は、第一の基準姿勢bs1の検出に基づいて第一の停止目標姿勢ro1に姿勢変更する場合や、第二の基準姿勢bs2の検出に基づいて第二又は第三の停止目標姿勢ro2,ro3に姿勢変更する場合も全く同様である。
【0052】
その他、本実施形態では、給紙部1は、支持部41に回転可能に支持される板状のターンテーブル部13を有し、支持部41は、少なくとも一部(ベース41b)がターンテーブル部13と対向する板状に形成されており、姿勢センサ43は、ターンテーブル部13及び支持部41の板状部位(ベース41b)のうち互いに対向する部位に配置しなければならない制約条件の下で設けられているので、かかる制約条件が課せられる限られたスペースの範囲内で姿勢センサを配置するにあたり、姿勢センサの数を低減でき有用である。
【0053】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0054】
例えば、本実施形態では、出力量検出部6により出力される検知信号Psを数えることにより電動部42の出力量を計測しているが、電動部の出力量を計測できれば検知信号Psをカウントする構成に限定されるものではない。
【0055】
その他、本実施形態では、給紙部1を回転軸Cnを中心に回転させているが、直交座標系を定めるy軸やx軸、z軸周りに回転させてもよい。
【0056】
最後に、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0057】
1…給紙部
13…ターンテーブル部
2…ヘッド部
40…姿勢制御部
41…支持部
42…電動部
42b…伝達部
44…位置決め手段
45…被係合部
46a…係合部
6…出力量検出部
bs1…第一の基準姿勢
bs2…第二の基準姿勢
ro1…第一の停止目標姿勢
ro2…第二の停止目標姿勢
ro3…第三の停止目標姿勢
N2…目標出力量
M2…所定値
Pa…記録媒体
Li…搬送路


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷を行うヘッド部に記録媒体を搬送する搬送路に対して供給可能な状態で記録媒体を保持する給紙部と、
給紙部を回転可能に支持する支持部と、
支持部に対して給紙部を回転させる電動部と、
給紙部の姿勢が予め定めた基準姿勢であることを検出する姿勢センサと、
姿勢センサでの検出に基づいて電動部の駆動を制御することにより基準姿勢に関連付けられた停止目標姿勢へ給紙部を回転により姿勢変更させる姿勢制御部と、
電動部により回転する給紙部を停止目標姿勢に位置決め状態で停止させる位置決め手段とを具備してなり、
電動部の出力量を検出する出力量検出部を設けるとともに、前記姿勢制御部を、前記出力量検出部により検出される出力量の計測を前記姿勢センサにより基準姿勢であることが検出される時点から開始し、計測した出力量が給紙部を停止目標姿勢に姿勢変更させるために必要な目標出力量になるように電動部に対する駆動制御を行うように構成し、単一の基準姿勢を複数の停止目標姿勢に関連付けることにより、単一の姿勢センサで複数の停止目標姿勢に給紙部を姿勢変更させるようにしたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記姿勢制御部は、前記計測した出力量が前記目標出力量よりも小さい所定値を超えた場合に給紙部の減速を開始する請求項1に記載のプリンタ。
【請求項3】
前記電動部は、給紙部又は支持部のいずれか一方に設けられ、噛み合い構造の伝達部を介して動力を給紙部又は支持部のいずれか他方に伝達することにより、給紙部を回転させるように構成されており、
前記位置決め手段は、前記給紙部又は前記支持部のいずれか一方に設けられる被係合部と、前記給紙部又は前記支持部のいずれか他方に設けられ被係合部に係合する係合部とを有し、被係合部に対して所定の領域内に係合部が進入した場合に係合部を被係合部と係合する位置に引き込んで給紙部の姿勢を停止目標姿勢とした状態で給紙部の回転を禁止するように構成されている請求項1又は2に記載のプリンタ。
【請求項4】
前記姿勢センサは、停止目標姿勢以外の姿勢を基準姿勢として設定している請求項3に記載のプリンタ。
【請求項5】
前記給紙部は、前記支持部に回転可能に支持される板状のターンテーブル部を有し、
前記支持部は、少なくとも一部がターンテーブル部と対向する板状に形成されており、
前記姿勢センサは、ターンテーブル部及び支持部の板状部位のうち互いに対向する部位に配置しなければならない制約条件の下で設けられている請求項1〜4に記載のプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−61642(P2012−61642A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206075(P2010−206075)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】