説明

プリンタ

【課題】サーマルヘッドに熱的ダメージを与えることなく、短時間で適切な予熱を行えるようにする。
【解決手段】制御部3に、用紙搬送とともにダミーデータによる模擬的な印刷を実行するためのダミープリント処理部3aを設け、制御部3が印刷指令を受け付けた際、画像データに対する印刷処理を実行するに先立ってダミープリント処理部3aを起動させ、このダミープリント処理部3aが、用紙搬送の下にサーマルヘッド1の発熱抵抗体11にダミーデータに対応する印刷信号を入力することにより用紙4の所定領域にダミープリント処理を実行するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッドに対して、熱によるダメージの低減化を図りつつ適切な予熱を行い得るようにしたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルヘッドを用いたこの種のプリンタは、感熱式プリンタと昇華型プリンタに大別される。
【0003】
感熱式プリンタは、図11(a)に示すように、熱を加えると変色する特殊な用紙(感熱紙)4に、図示しないプリンタ本体から通電されたサーマルヘッド1を押し付けることで印刷する。主に、レシートや映画チケットの発券機などに用いられている。
【0004】
昇華型プリンタは、図11(b)に示すように、染料または顔料が塗布されたインクリボン5にサーマルヘッド1を押し当て、サーマルヘッド1の熱により、インクリボン5の染料または顔料を用紙4などの記録媒体に転写させ画像を形成するものであり、写真印刷の用途などで使用されている。
【0005】
何れにせよ、上記2種類のサーマルプリンタは、ともにサーマルヘッド1の温度によって印刷濃度が大きく左右される。つまり、ヘッド温度が高ければ印画結果の濃度は濃く、ヘッド温度が低ければ印画結果の濃度は薄くなる。
【0006】
しかし、プリンタ本体の電源投入直後、もしくは印刷間隔が空いた後の印刷直後は、サーマルヘッド1が十分な温度を保持していないため、図12に示すように、画像の先頭領域nにおいて、印刷開始直後は薄く印画され、次第に印画結果が濃くなる印画結果を招くこととなってしまう。
【0007】
この問題に対処するため、従来よりプレヒート処理が行われている。これは、プリント開始前の待機中に、サーマルヘッド1の温度を図示しない温度センサによって監視し、正常な印画結果を得るための温度を下回れば、サーマルヘッド1の所要箇所に設けたヒータに通電することで事前にサーマルヘッド1を暖めておく処理である。これにより、図13に示すように、プリント開始直後の印画結果が階調化することなく、正常な印画結果を得ることが可能となる。
【0008】
特許文献1は、目的が異なるため直接の参考になるものではないが、サーマルヘッドへのプレヒートに係る熱量を制御する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−230206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、印刷時には図11に示すサーマルヘッド1を用紙4に押し付けた状態で印刷が行われ、サーマルヘッド1の熱の一部は用紙4へ逃がすことが出来るが、プレヒート処理は用紙を印刷せずにサーマルヘッド1を加熱することからサーマルヘッド1をヘッドアップした状態で行われ、空通電(用紙に接触させずに通電)となる。このため、用紙4に熱を逃がすことができず、サーマルヘッド1に必要以上の熱が蓄熱して、熱によるダメージを受けやすい。この場合、サーマルヘッド1へのダメージを軽減するために、従来より空通電時に比較的弱い電流で通電することも行われているが、このようにすると十分な温度へ到達するためのプレヒート時間すなわちプリント待機時間が延びるという不都合につながる。
【0011】
本発明は、簡便な方法を用いて、このような課題を有効に解消したサーマルプリンタを新たに提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、かかる目的を達成するために、次のような手段を講じたものである。
すなわち、本発明のプリンタは、発熱抵抗体を備えたサーマルヘッドと、印刷に供する用紙を搬送する搬送機構と、外部から印刷指令とともに画像データを受け付けることにより前記搬送機構による用紙搬送の下に前記サーマルヘッドの発熱抵抗体に前記画像データに対応する印刷信号を入力して印刷処理を実行する制御部とを具備してなるプリンタにおいて、前記制御部に、用紙搬送とともにダミーデータによる模擬的な印刷を実行するためのダミープリント処理部を備え、前記制御部が印刷指令を受け付けた際、前記画像データに対する印刷処理を実行するに先立って前記ダミープリント処理部を起動させ、このダミープリント処理部が、用紙搬送の下に前記サーマルヘッドの発熱抵抗体に前記ダミーデータに対応する印刷信号を入力することにより用紙の所定領域にダミープリント処理を実行するように構成したことを特徴とする。
【0013】
このような構成にすると、従来のプレヒート機能に比べて、空通電ではなく実際に用紙に接触させてダミープリントすることによって予熱が行われ、必要な熱は速やかにサーマルヘッドに与え、かつ必要以上の熱は紙に逃がすことが出来る。このため、サーマルヘッドへの熱的ダメージを軽減させながら、予熱によるプリント待機時間の短縮を有効に図ることができる。
【0014】
用紙のプリント領域間にマージン領域が存在する場合に、ダミープリントによる用紙の無駄を可能な限り抑制するためには、ダミープリント処理部が前記用紙の搬送制御とともに前記用紙のマージン領域に対してダミープリント処理を実行するように構成されていることが望ましい。
【0015】
印刷対象がページカットされた感熱紙や感熱版等であって、マージン領域が利用できない場合には、前記制御部にダミーデータに階調に関する情報を含んでいることを前提に、前記ダミープリント処理部がダミープリントを実行する際のダミーデータに対応する印刷信号の階調が用紙の状態を変化させないレベルの階調値に設定されていることが好ましい。
【0016】
インクリボンを用いる昇華型のものにおいて、インクリボンの未使用部分を使うことなくダミープリントを行えるようにするためには、ダミープリント処理部が、インクリボンを巻き戻すことにより当該インクリボンの使用済領域をダミープリント処理時の使用領域とする制御を行うように構成されていることが望ましい。
【0017】
勿論、印刷指令が無い状態でサーマルヘッドを適切に予熱することにより更なるプリント時間の短縮を図るためには、プリンタの起動後もしくは画像データに基づく印刷後の所定時間の間に印刷指令が入力されないことを検知してサーマルヘッドへのプレヒート処理を実行するように構成されていることが好ましい。
【0018】
長時間プレヒート状態が続くことで予熱が不十分となる箇所が発生すること等を防ぐためには、プレヒート処理を所定回数続けた場合に印刷指令の有無に拘わらずダミープリント処理部を起動させるように構成していることが望ましい。
【0019】
特に電源投入時には直後に印刷指令がなされることが多い点に鑑みれば、制御部が、電源投入時の起動動作の間に印刷指令の有無に拘わらずダミープリント処理部を起動させるように構成されていることが好ましい。
【0020】
更に、ダミープリント時に用紙若しくはインクリボンの使用領域を抑制しつつサーマルヘッドを適切に予熱するために、ダミープリント処理部が、ダミープリント制御の間に用紙若しくはインクリボンの送り速度を低下させる制御を行うように構成されているのが望ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明したダミープリント処理部を採用することで、サーマルヘッドの熱的ダメージの回避とプリント待機時間の短縮とを好適に両立させつつ、良好な印刷結果を得ることができる。このため、プリント品質が良好でプリント時間も短く、信頼性や耐久性も向上された、有用なプリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るサーマルプリンタの制御要素を示すブロック図。
【図2】同実施形態の制御部による処理の概要を示すフローチャート。
【図3】印刷対象であるロール状の用紙をマージン領域とともに示す図。
【図4】同実施形態の印画結果を示す模式図。
【図5】本発明の他の実施形態における印刷対象であるカットされた用紙を示す図。
【図6】本発明の上記以外の実施形態として制御部がインクリボンを巻き戻す制御を行う際の手順を示すフローチャート。
【図7】本発明の上記以外の実施形態として制御部が印刷指令がない状態が続いたときにプレヒートを実行する制御を行う際の手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の上記以外の実施形態として制御部がプレヒート回数に応じてダミープリントを実行する制御を行う際の手順を示すフローチャート。
【図9】本発明の上記以外の実施形態として制御部が電源投入後、すぐにダミープリント処理を実行する制御を行う際の手順を示すフローチャート。
【図10】本発明の上記以外の実施形態として制御部がダミープリント時に用紙やインクリボンの送り速度を低下させる処理を制御を行う際の手順を示すフローチャート。
【図11】サーマルプリンタの一般的構成を示す図。
【図12】サーマルヘッドへの予熱を行わない場合の印画結果を示す模式図。
【図13】サーマルヘッドへの予熱を行った場合の印画結果を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
この実施形態における感熱式印刷版プリンタは、図1に示すように、発熱抵抗体11を具備するサーマルヘッド1と、このサーマルヘッド1においてプリントに供される用紙4を搬送する搬送機構2と、外部から入力される画像データに基づき前記搬送機構2との同期の下に前記サーマルヘッド1の発熱抵抗体11に印刷信号である通電パルスPを入力する制御部3とを具備する。
【0024】
サーマルヘッド1には、当該サーマルヘッド1の発熱抵抗体11に適度に押圧されるプラテンローラ21が用紙4を介し対向配置されて、印刷位置を構成する。
【0025】
搬送機構2は、前記プラテンローラ21から所用距離を隔てて配置した対をなすピンチローラ22及びフィードローラ23を具備し、ピンチローラ22とフィードローラ23の間に用紙4を挟み込んでフィードローラ23を回転駆動することにより用紙4を搬送する。フィードローラ23は、図1に示すギヤ機構24を介してパルスモータ25により駆動される。
【0026】
制御部3は、CPUやメモリ、インターフェース等を備えた通常のマイクロコンピュータユニットにより構成されるもので、メモリ内に適宜の制御プログラムが格納されており、CPUは逐次その制御プログラムを読み込んで、図1に示す入力バッファ31、通電パルス生成部33、モーター駆動部34等を制御する。
【0027】
入力バッファ31には、外部から入力される画像データが一時的に蓄積される。
【0028】
通電パルス生成部33には、制御部3からの制御信号を受けて、印刷信号に含まれる階調値(濃度)に応じた通電パルスPを生成する。すなわち、この通電パルス生成部33では、パルスジェネレータ33aから基準パルスが供給され、その基準パルスが、パルスパターン保持部33bに保持されている階調値に応じたパルスパターンに変換されて通電パルスPが生成される。そして、この通電パルスPがサーマルヘッド1の発熱抵抗体11へ供給される。
【0029】
モーター駆動部34は、前記通電パルス生成部33への制御信号と同期する制御信号を駆動パルス生成部34aが受け取ることによって駆動パルスを生成し、この駆動パルスをパルスモータ25に通電して、フィードローラ23を駆動し、用紙4の搬送を行う。この実施形態では、フィードローラ23を正逆駆動して、用紙4の搬送を図1に矢印で示すように正逆方向に行い得るようにしている。
【0030】
このような構成において、本実施形態はさらに、前記制御部3に、ダミープリント処理部3aを新たに設け、また、通電パルス生成部33にデータを入力し得る位置に入力バッファ31とともにダミーデータ記憶部32を新たに配置して、印刷指令を受けた際、ダミーデータ記憶部32に記憶させた模擬的なデータに基づいてダミープリント処理を行うようにしている。
【0031】
ダミープリント処理部3aは、通常のプリント制御時と同様に通電パルス生成部33への印刷信号の入力と同期して搬送機構2を作動させるが、その際の印刷信号としてダミープリント記憶部32から取り出したダミーデータを使用する。また、ダミープリントを行う領域を、用紙4の所定領域に特定する制御を併せて行う。
【0032】
すなわち、本実施形態で印刷対象とする用紙4は図3に示すようなロール紙であり、ロールから供給された用紙4は印刷終了後にカットされるため、印刷領域と印刷領域との間にページカットに必要なマージン領域mが設定され、制御部3は通常このマージン領域mには印刷は行わない。
【0033】
そこで、このダミープリント処理部3aは、図4に示すように、用紙4をX方向に搬送しながら、そのマージン領域mに対してダミー画像を印刷するように、用紙4の送り制御を行う。
【0034】
図2は、ダミープリント処理部3aを含む制御部3で行われる処理手順を示すフローチャートである。以下、図2を参照して、その処理の流れについて説明する。
【0035】
最初に、プリンタが印刷指令を受け付けたかどうかを判断する(ステップS21)。
【0036】
印刷指令を受け付けたと判断された場合は(ステップS21:Yes)、ダミープリント処理部3aを起動させてダミーデータ記憶部32からダミーデータを読み込み(ステップS22)、当該ダミーデータに基づき印刷信号を生成して、用紙4のマージン領域mを印刷位置に搬送しながら前記サーマルヘッド1の発熱抵抗体11に当該印刷信号を入力して、前記マージン領域mに対してダミー画像を印刷してダミープリント処理を終える(ステップS23)。その後、制御部3は本来の画像データを読み込んで(ステップS24)、画像を印刷する(ステップS25)。その後、ダミープリントを施したマージン領域mは、ページカット位置に送られて印画領域から切り離される。
【0037】
以上のように、この実施形態のプリンタは、発熱抵抗体11を備えたサーマルヘッド1と、印刷に供する用紙4を搬送する搬送機構2と、外部から印刷指令とともに画像データを受け付けることにより搬送機構2による用紙搬送の下にサーマルヘッド1の発熱抵抗体11に画像データに対応する印刷信号を入力して印刷処理を実行する制御部3とを備えるものである。そして、制御部3に、用紙搬送とともにダミーデータによる模擬的な印刷を実行するためのダミープリント処理部3aを設け、制御部3が印刷指令を受け付けた際、画像データに対する印刷処理を実行するに先立ってダミープリント処理部3aを起動させ、このダミープリント処理部3aが、用紙搬送の下にサーマルヘッド1の発熱抵抗体11にダミーデータに対応する印刷信号を入力することとしている。
【0038】
このように構成すれば、従来のプレヒート機能に比べて、空通電ではなく実際に用紙4にサーマルヘッド1を接触させてダミープリントすることによって、必要な熱は速やかにサーマルヘッド1に与え、かつ必要以上の熱は用紙4に逃がすことが出来る。このため、サーマルヘッド1への熱的ダメージを軽減させながら、予熱によるプリント待機時間の短縮を有効に図り、印刷直前に正常な印刷結果を得る程度の適切な温度に当該サーマルヘッド1を加熱することができる。よって、プリント品質が良好でプリント時間も短く、信頼性や耐久性も向上した、有用なプリンタとして実用に供することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態の印刷対象が、ロールより繰り出される用紙4であって、この種の用紙4を用いたプリンタは通常、前記制御部3が用紙4のプリント領域の間にマージン領域mを設定している点に鑑みて、前記ダミープリント処理部3aが、前記用紙4の搬送制御とともに用紙4のマージン領域mに対してダミープリント処理を実行するように構成してあるので、ダミープリントを行うことによる用紙4の無駄を排除して、ランニングコストの増加を有効に抑えることができる。
【0040】
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0041】
例えば、上記実施形態では印刷対象が感熱紙等である場合について説明したが、インクリボンを用いた昇華型のものにおいても全く同様である。
【0042】
また、図5に示すようにロール紙ではなく予めページカットされたプリント用紙4aを一枚ずつ搬送するようなプリンタでは、マージン領域mが存在しないため、上記実施形態のような制御では用紙1枚がまるまる無駄になる。
【0043】
そこで、このような場合には、図1に示す制御部3のダミーデータ記憶部32にダミープリント時の階調値として用紙4を印画しないレベルの比較的低い階調値を予め入力しておく。或いは、ダミープリント処理部3aに、ダミープリント処理に係る印刷信号を、用紙4を印画しないレベルの比較的低い階調値に変換するプログラムを加えておく。そして、ダミープリント処理部3aが図2の手順を実行することで、用紙4を印画せずにダミープリント処理を終え、引き続き本来の制御に従って画像データの印刷を行うようにすればよい。この場合、ステップS23で用紙4を所定の送り量だけ搬送しつつダミープリント完了したら、ステップS25の開始までの間に同じ送り量だけ用紙4を戻して当該用紙4の最初から制御部3によって本来の制御を開始するようにすれば、用紙4の所定位置に適切にプリントを行うことができる。以上によれば、用紙4に変化を与えることなく、当該用紙4を利用して熱を逃がしつつサーマルヘッドを予熱した後に、当該用紙4の所定位置に本来の印刷を適切に施すことが可能となる。
【0044】
また、インクリボン5を用いる昇華型プリンタの場合、サーマルヘッド1の周辺部は、図11(b)に示すように、用紙4の上面側にインクリボン5を供給するための繰り出し側のインクリボンロール26(未使用部分)、インクリボン用ガイドロール27、巻き取り側のインクリボンロール28(使用済部分)が順に配置される。そして、インクリボンロール26から繰り出されたインクリボン5は、インクリボン用ガイドロール27にガイドされて用紙4と重ね合わされ、サーマルヘッド1とプラテンローラ21との間を搬送された後、インクリボンコア28に巻き取られる。
【0045】
そこで、制御部3に含まれるダミープリント処理部32に、ダミープリント時にモータ駆動部34を制御して、インクリボン5の使用済領域を再びサーマルヘッド1の印刷位置に巻き戻す制御を行わせる。
【0046】
具体的には、図6のフローチャートに示すように、最初にダミープリント指令を受け付けたかどうかを判断する(ステップS71)。ダミープリント指令を受け付けたと判断された場合は(ステップS71:Yes)、インクリボン5を巻き戻し(ステップS72)、インクリボンの使用済領域を利用して用紙4のマージン領域mに図2のステップS22,S23に示した手順に従ってダミープリントを行う(ステップS73)。このようにすれば、インクリボンを無駄に消費することなくダミープリントを行うことができるので、インクリボンを節約してランニングコストの増加を有効に抑えることができる。
【0047】
これらの場合において、本発明は従来のプレヒート処理を全く排除することを意図するものではない。例えば、制御部3に長時間印刷指令が入力されない場合、ダミープリントが行われないため、サーマルヘッド1の温度はやはり低下する。
【0048】
そこで、図7(a)に示すように、制御部3にダミープリント処理部3aとともに従来より行われているプレヒート処理部3bを設けておき、制御部3がプリンタの起動後もしくは画像データに基づく印刷後の所定時間の間に印刷指令が入力されないことを検知して、サーマルヘッド1の適宜部位に設けたヒータに通電する制御を行うように構成してもよい。
【0049】
図7(b)はその際に制御部3が実行する手順の概要を示したフローチャートである。制御部3は、プリンタの起動もしくは印刷完了状態を判断して(ステップS81)、Yesの場合にタイマーを作動させ(ステップS82)、印刷指令があったか否かを判断する(ステップS83)。印刷指令があった場合には(ステップS83:Yes)、図2のステップS22以下を実行し、印刷指令がない場合には(ステップS83:No)、次にタイマー作動から所定時間が経過したかを判断する(ステップS84)。所定時間が経過した場合には(ステップS84:Yes)プレヒート処理を実行してエンドするが、所定時間が経過していなければ(ステップS84:No)、再びステップS83の手前に戻る。
このように構成することで、サーマルヘッド1の温度を一定以上に維持することができるので、印刷指令までに間が空いても次の印刷指令時のダミープリントでサーマルヘッド1を短時間のうちに適切な温度に復帰させることができる。
【0050】
このプレヒートに関しても、当該プレヒートのみでは一部の温度低下が補えない等の事情がある場合には、図7(a)に示した制御部3が、プレヒート処理が続いたときに間欠的にダミープリントを実行する制御を行うように構成してもよい。
【0051】
図8はその際に制御部3が実行する制御の概要を示したフローチャートである。
【0052】
プレヒート処理を実行した際(ステップS91:Yes)、プレヒート回数をカウントアップする(ステップS92)。次に、プレヒートが所定回数を越えたかどうかを判断する(ステップS93)。プレヒート処理が所定回数を越えていないと判断された場合(ステップS93:No)、ステップS91に戻るが、プレヒート処理が所定回数を越えていると判断した場合(ステップS93:Yes)、ダミープリント処理を実行し(ステップS94)、プレヒート回数をリセットして(ステップS95)、制御を終了する。
【0053】
このようにすれば、間欠的なダミープリントによって実際に印刷の主体となる発熱抵抗体11を間欠的に予熱することができるので、長時間プレヒート処理が続くことによる不具合がある場合にはこれを有効に解消することができる。
【0054】
さらに、電源投入時には即座にプリント指令がなされる可能性が高いことに鑑みれば、図1や図7(a)に示した制御部3に、電源投入時の起動動作の間に印刷指令の有無に拘わらずダミープリント処理を実行するプログラムを予め設定しておくことが有効となる。
図9はその際に制御部3が実行する制御の概要を示したフローチャートであり、電源投入時(ステップS101)の起動動作の間に印刷指令の有無に拘わらずダミープリント処理を実行する(ステップS102)。このようにすれば、電源投入後に速やかにプリント開始状態に入ることができる。
【0055】
さらにまた、図1に示した印刷版に対するプリントや図11(b)に示したインクリボンを採用したプリントなどにおいて、ダミープリントのために用紙やインクリボンの無駄を極力低減するためには、制御部3のダミープリント処理部3aがダミープリント時に用紙やインクリボンの送り速度を低下させる制御を行うように構成することもできる。
【0056】
図10はその際に制御部3が実行する手順の概要を示したフローチャートである。
【0057】
制御部3は、ダミープリント指令を受けたかどうか判断する(ステップS111)。ダミープリント指令を受け付けていない場合は(ステップS111:NO)、ステップS111に戻る。ダミープリント指令を受け付けた場合は(ステップS111:YES)、次に制御部3は用紙4やインクリボン5の送り速度を低下させる指令を図1の搬送機構2を構成するモータ駆動部34等に対してなし(ステップS112)、パルスモータ25によるフィードローラ23の送り速度を低下させながら、或いは図11(b)に示したリボンロール25、56の送り速度や巻き取り速度を低下させながら、ダミープリント処理を実行する。このようにすれば、ダミープリント時に用紙4若しくはインクリボン5の使用量を抑制しつつサーマルヘッド1の予熱を有効に実現することができる。
【0058】
その他、ダミーデータをダミーデータ記憶部に記憶せずに、画像データ等からリアルタイムに生成して用いるなど、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…サーマルヘッド
3…制御部
3a…ダミープリント処理部
4…用紙
5…インクリボン
11…発熱抵抗体
31…ダミーデータ記憶部
m…マージン領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱抵抗体を備えたサーマルヘッドと、印刷に供する用紙を搬送する搬送機構と、外部から印刷指令とともに画像データを受け付けることにより前記搬送機構による用紙搬送の下に前記サーマルヘッドの発熱抵抗体に前記画像データに対応する印刷信号を入力して印刷処理を実行する制御部とを具備してなるプリンタにおいて、
前記制御部に、用紙搬送とともにダミーデータによる模擬的な印刷を実行するためのダミープリント処理部を備え、前記制御部が印刷指令を受け付けた際、前記画像データに対する印刷処理を実行するに先立って前記ダミープリント処理部を起動させ、このダミープリント処理部が、用紙搬送の下に前記サーマルヘッドの発熱抵抗体に前記ダミーデータに対応する印刷信号を入力することにより用紙の所定領域にダミープリント処理を実行するように構成したことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
印刷対象が、ロールより繰り出される用紙であって、前記制御部が用紙のプリント領域の間にマージン領域を設定しており、前記ダミープリント処理部が前記用紙の搬送制御とともに前記用紙のマージン領域に対してダミープリント処理を実行するように構成されている請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
印刷対象が、予め所定寸法にカットされた感熱紙や感熱版等の用紙であって、前記制御部がダミーデータに階調に関する情報を含んでおり、前記ダミープリント処理部がダミープリントを実行する際のダミーデータに対応する印刷信号の階調が用紙の状態を変化させないレベルの階調値に設定されている請求項1記載のプリンタ。
【請求項4】
インクリボンを用いる昇華型のものにおいて、制御部はインクリボンの送り制御をも行うものであり、ダミープリント処理部が、インクリボンを巻き戻すことにより当該インクリボンの使用済領域をダミープリント処理時の使用領域とする制御を行うように構成されている請求項1記載のプリンタ。
【請求項5】
制御部が、プリンタの起動後もしくは画像データに基づく印刷後の所定時間の間に印刷指令が入力されないことを検知してサーマルヘッドへのプレヒート処理を実行するように構成されている請求項1〜4何れかに記載のプリンタ。
【請求項6】
制御部が、プレヒート処理を所定回数続けた場合に印刷指令の有無に拘わらずダミープリント処理部を起動させるように構成されている請求項5記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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