説明

プリンタ

【課題】プリンタの大型化や制御の複雑化を防ぎ、小型で制御の簡易なカッター機構を備えたプリンタを提供する。
【解決手段】用紙Shに対して接離可能で選択的に搬送方向の送り動作を行う可動送りローラ27と、固定刃およびこの固定刃に沿って用紙搬送方向と交叉する切断方向に移動可能な回転刃、この回転刃を切断方向に移動させる駆動手段であるDCモータMを備えたカッター機構1とを具備してなるものにおいて、カッター機構1における回転刃の移動領域を、用紙Shの切断を行う切断領域と、待機位置から切断領域までの間に設定した遊動領域とから構成するとともに、回転刃が切断開始位置に至るまでに用紙Shを圧接するための連動機構と、回転刃の遊動領域の動作を可動送りローラ27に接離動作として伝えるための連動機構6を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリンタにおいて、特にカッター機構を有するプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンタに備えられたカッター機構の一例として、固定刃に対して回転刃を保持させたカッターホルダを移動させることによって用紙を切断するカッター機構が知られている。この回転刃を使用したカッター機構は用紙幅が広くなってもカッターをそれに合わせて大型にすることが不要で、カッター機構を小型軽量化することができるので、よく用いられているものである。また、このようなカッター機構においては、回転刃を保持させたカッターホルダを移動させるのにはモータを接続して駆動している。例えば例としては多少古いが、特許文献1にキャリッジとも呼ばれるカッターホルダをプーリと送りネジを介してモータ駆動したものが開示されている。
【0003】
また、従来、プリンタにおいて、前述したような回転刃を保持させたカッターホルダを駆動するためのモータと、切断時にカッター機構内で用紙を押さえるための用紙押さえローラを用紙に接離させるためのモータと、送りローラと協働して用紙を搬送するための可動送りローラを用紙に対して接離させるためのモータはそれぞれ別々のものが一般的であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−143879公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなプリンタでは、カッターホルダ、用紙押さえローラ及び送りピンチローラの各々にモータを設置することが必要になるので、プリンタの大型化を招き、その制御も複雑であった。
【0006】
本発明は、このような問題を解消し、小型で制御の簡易なカッター機構を備えたプリンタを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以上のような問題点を鑑み、次のような手段を講じたものである。
【0008】
すなわち、本発明のカッター機構は、用紙に対して接離することで当該用紙に対して選択的に搬送方向の送り動作を行う可動送りローラと、切断位置に送られた用紙を切断すべく、固定刃、この固定刃に沿って用紙搬送方向と交叉する切断方向に移動可能な回転刃、この回転刃を前記切断方向に移動させる駆動手段を備えたカッター機構とを具備してなるものにおいて、前記カッター機構における回転刃の移動領域を、用紙の切断を行う切断領域と、待機位置から前記切断領域までの間に設定した遊動領域とから構成するとともに、前記回転刃が切断開始位置に至るまでに用紙を圧接するための連動機構と、前記回転刃の遊動領域の動作を前記可動送りローラに接離動作として伝えるための連動機構とを設けたことを特徴とする。
【0009】
このように構成すると、回転刃を切断方向に移動させるための駆動手段に、回転刃を遊動領域内で動作させることにより可動送りローラを圧接、退避切替することができるので、用紙に可動送りローラを圧接、退避切替させていた駆動手段を不要にすることができる。このようにして、用紙に可動送りローラを圧接、退避切替させるための駆動手段と、用紙を切断するための駆動手段とを共用でき、小型かつ軽量で制御の簡易なカッター機構を備えたプリンタの提供が可能となった。また、前記遊動領域は、カッター機構が切断を行わない領域であるので、可動送りローラの接離切替動作時に用紙を傷つけることがない。
【0010】
さらに小型化、軽量化および制御の簡易化を図るために、前記カッター機構に用紙に対して接離可能な用紙押さえ部を具備し、前記回転刃の動作を前記用紙押さえ部に接離動作として伝えるための連動機構を設けて構成すると好適である。
【発明の効果】
【0011】
以上、説明した本発明によれば、回転刃を切断方向に移動させる一つの駆動手段により、用紙に可動送りローラを圧接、退避切替させるための駆動手段と、用紙を切断するための駆動手段とを共用できるので、今まで個別に設置しなければならなかった駆動手段が一つになり、小型かつ軽量で制御の簡易なカッター機構を備えたプリンタを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリンタの側面図。
【図2】同プリンタのカッター機構および可動送りローラ連動機構の平面図。
【図3】同プリンタのカッター機構および用紙押さえローラ連動機構の模式的な要部側断面図(カッター退避時)。
【図4】同プリンタのカッター機構および用紙押さえローラ連動機構の模式的な要部側断面図(カッター動作時)。
【図5】同プリンタのカッター機構および可動送りローラ連動機構の模式的な側面図。
【図6】同プリンタの制御手段のブロック図。
【図7】カッターホルダの模式的な動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本実施形態に係るプリンタの側面図である。
【0015】
本実施形態のプリンタは、概括的に、カッター機構1と、用紙搬送機構2と、印刷機構3と、制御手段4とからなる。
【0016】
前記カッター機構1は、図5に示されるように、固定刃11と、前記固定刃11と協働して回転しながら用紙Shを切断する回転刃12と、前記回転刃12を保持してこの回転刃12とともに移動するカッターホルダ13と、前記カッターホルダ13をベルト駆動するDCモータMとを具備している。
【0017】
前記用紙搬送機構2は、図1に示されるように、コンパクト化のためにカッター機構1の下に設けられた用紙Shをロール状に巻いた形態の給紙ロール21と、この給紙ロール21から引き出された用紙Shを給紙ロール21近傍の所定の位置で搬送方向に案内する給紙ローラ23およびこの給紙ローラ23に対向配置され用紙Shを圧接する給紙ピンチローラ22と、印刷機構3より給紙側で用紙Shを搬送するためのフィードローラ24およびこのフィードローラに対向配置され用紙Shを圧接するメインピンチローラ25と、印刷機構3より排紙側で用紙Shを位置決めしながらカッター機構1へ搬送する送りローラ26と、この送りローラ26に対向配置され用紙Shを接離切替可能な可動送りローラ27とを具備する。
【0018】
なお、前記フィードローラ24は外部駆動手段であるパルスモータM1に接続されており、用紙Shの搬送挟持力を付加するために、その外周面に亘って微小突起が規則的に形成されている。
【0019】
前記印刷機構3は、プラテンローラ31と、このプラテンローラ31に対向配置され、プラテンローラ31に対して接離切替可能に設けられたサーマルヘッド32を具備する。また、図示していないが、本実施形態ではインクリボンとインクリボンを供給、回収するのに必要な各種ボビンやインクリボン用ローラと、サーマルヘッド32の近傍所定位置には用紙Shが位置することを検知するセンサとサーマルヘッド32をプラテンローラ31に対して所定の位置で圧接するためのセンサとを具備している。
【0020】
また、図6および図1に示されるように、本実施形態のプリンタは、CPU、メモリ及びインターフェイスを具備する通常のマイクロコンピュータユニットにより構成された制御手段4を具備し、当該制御手段4はフィードローラ24及び送りローラ26の回転速度や回転方向などを制御する搬送制御部41と、前記サーマルヘッド32への印刷データの送り込み当該サーマルヘッド32のプラテンローラ31への接離などを制御する印刷制御部42と、用紙切断位置や切断を制御するカッター制御部43とを具備して構成される。
【0021】
以上、本実施形態のプリンタの基本構成であるが、本実施形態ではさらに以下の特徴を備えて構成した。
【0022】
前記カッター機構1には、2つの連動機構を設けて構成した。図3に示されるように、1つ目の連動機構5は、カッター機構1内の連動機構で、カッターホルダ13の動きをホルダレバー14を介して用紙押さえ部である用紙押さえローラ16に関連づけるものである。この図3は図2には十分に現れていないものの、X部における部分的な左側断面図である。
【0023】
前記ホルダレバー14は用紙幅方向の回転軸14cと長手レバー部14aとレバーリンク部14bとを有し、前記長手レバー部14aは切断待機状態のカッターホルダ13の上部に載置され、前記レバーリンク部14bはC字型の形状をなし前記用紙押さえローラ16の回転軸16cに係合されている。前記ホルダレバー14の回転軸14cにはねじりコイルばね15が装着されて、長手レバー部14aの端部が常に下方に(カッターホルダ13の方向に)付勢されている。なお、前記ホルダレバー14は回転軸14cを介してカッター機構1の反対側にも設けられており(図2のY部参照)、これらは一対で構成され、連動して動作する。また、図示しないY部のホルダレバーとX部のホルダレバー14とは鏡面対称で構成されている。
【0024】
もう一つの連動機構は、図5および図2に示されるように、カッター機構1と前記可動送りローラ27の間の連動機構6で、当該連動機構6が用紙押さえローラ16の回転軸16cにリンクした第一のリンクレバー61と、当該第一のリンクレバー61にリンクした第二のリンクレバー62と、前記第二のリンクレバー62に固定された可動送りローラホルダ64とを具備する。
【0025】
前記第一のリンクレバー61は端部61aに設けた長孔で用紙押さえローラ16の回転軸16cと係合している。前記リンクレバー61の回転軸61cに対して用紙押さえローラ16側と反対側の端部に設けられたスタッドボルト61bは前記第二のリンクレバー62の端部62aの上端面と当接している。当該第二のリンクレバー62は略L字形の部材で回転軸63を有し、この第二のリンクレバー62の他端部62bにはコイルばね65が設けられており、リンクレバー61の端部に設けられたスタッドボルト61bを上方に押し上げ付勢している。前記第二のリンクレバー62の回転軸63には前記可動送りローラホルダ64が例えばリベットで固定されており、当該リベット固定された端部64aとは反対側の端部である先端部64bには前記可動送りローラ27が回転可能に設けられている。
【0026】
以降、前記2つの連動機構を区別するために、1つ目の連動機構を用紙押さえ連動機構5、2つ目の連動機構を可動送りローラ連動機構6と呼ぶことにする。
【0027】
また、前記カッター制御部43は、図6に示されるように、切断モード部MD1と印刷・搬送モード部MD2を切替え可能に具備する。前記切断モード部MD1は、用紙Shを切断するためのモードであり、カッターホルダ13に図7に示す切断領域Rcを移動させるように構成されている。一方、前記印刷・搬送モード部MD2は用紙Shを印刷または搬送するモードであり、前記カッターホルダ13に図7に示す遊動領域Rfを移動させるように構成されている。
【0028】
当該遊動領域Rfとは、用紙Shの切断を行う切断領域Rcに対して、待機位置Wから前記切断領域Rcまでの間に設定した回転刃12の切断領域Rcでない所定の領域であり、用紙shの幅に対して左右一対になるように切断領域Rcと待機位置Wは構成されている。なお、図示していないが、待機位置Wにはカッターホルダ13が待機位置Wに位置することを検知する待機中検知センサと、切断領域Rcの近傍の所定位置にはDCモータMの駆動を停止すべき位置を検知する停止検知センサとを具備する。
【0029】
図6において、符号M1で示すものはフィードローラ24および送りローラ26を回転駆動するためのパルスモータであり、符号M2で示すものはサーマルヘッド32を昇降させるためのDCモータである。
【0030】
次に、本実施形態における具体的な基本動作について説明する。
【0031】
図1に示されるように、前記給紙ロール21に巻回された用紙Shは排紙側方向に引き出され、給紙ローラ23と給紙ピンチローラ22間を通って、フィードローラ24とメインピンチローラ25に搬送される。前記搬送制御部41がフィードローラ24と送りローラ26の距離の所定パルス信号S3をパルスモータM1に出力した後、用紙ShはパルスモータM1で駆動されるフィードローラ24と送りローラ26により、サーマルヘッド32の近傍所定の位置にあるセンサに検知されるまで印刷機構3へと搬送される。用紙Shが前記センサに検知されたらパルスモータM1を停止させる。この時、可動送りローラ27は上記搬送に寄与するため用紙Shに圧接されている。搬送が終わり、印刷されるときは前記可動送りローラ27は用紙Shより離間される。
【0032】
印刷時には、図6および図1に示されるように、前記印刷制御部42が外部から入力される印刷指令に含まれる印刷データに応じた通電パルスを生成し、これらを印刷指令Pとして前記サーマルヘッド32の図示しない各発熱抵抗体に通電する。
【0033】
このとき、前記搬送制御部41は、パルスモータM1にパルス信号S3を出力し、フィードローラ24とメインピンチローラ25及び送りローラ26と可動送りローラ27を適宜用紙Shに圧接させて搬送するとともに、前記印刷制御部42はDCモータM2に駆動信号S4を出力して、このDCモータM2を駆動させ、サーマルヘッド32をプラテンローラ31に対して所定の位置で圧接するためのセンサからの情報を基にして、所定の位置でサーマルヘッド32を用紙Shに圧接する。以上、印刷準備が整った後、パルスモータM1による用紙Shの搬送とサーマルヘッド32の通電を開始する。サーマルヘッド32に所定パルス通電したら通電を停止する。前記印刷制御部42による上記以外のシーケンスは一般的なものであるためここでは省略している。各色の印刷過程においては排紙側方向に用紙Shを搬送させながら印刷位置の頭出しを行い、印刷時には可動送りローラ27を用紙Shから離間させ、フィードローラ24の搬送力のみで給紙方向に逆搬送しながら、図示しないインクリボンと重合させ、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、OP(オーバーコート)の4色印刷を行わせる。
【0034】
印刷位置の頭出しの時のみ可動送りローラ27を用紙Shに圧接し、送りローラ26に搬送力を付与する。これは印刷開始時に用紙Shを弛ませないためであり、ひいては次の色の印刷時に印刷ずれを起こさせないためである。
【0035】
このようにして、全色の印刷を終了した用紙Shは、搬送制御部41が所定パルス信号S3をパルスモータM1に出力し、パルスモータM1が駆動され、所定の切断位置まで搬送される。その後、用紙Shは所定の位置で、前記カッター制御部43から出力された駆動信号S1により、当該DCモータMを駆動させることにより、回転刃12がカッターホルダ13とともに移動し用紙Shを切断し、排紙される(図6、図5参照)。
【0036】
以上の前記カッター機構1の動作は従来のカッター機構の動作と基本的には同一であるが、本実施形態では前記カッター制御部43に切断モード部MD1と印刷・搬送モード部MD2を設け、各モードでのカッターホルダ13に異なる領域を移動させることにした。
【0037】
まず、切断モードMD1においては、前記DCモータMはカッター制御部43からの駆動信号S1を入力され、前記カッターホルダ13が図7に示される切断領域Rcを移動する。
【0038】
また、図6および図4に示すように、この切断モードMD1において、前記カッター制御部43からの駆動信号S1に基づき、カッターホルダ13が移動し始めると、用紙押さえ連動機構5が同時に作動し始める。
【0039】
この用紙押さえ連動機構5の動作を以下に説明する。
【0040】
図7に示されるように、前記カッターホルダ13は切断に供されないときは左右いずれかの待機位置Wに退避している。図3はカッターホルダ13が待機位置Wに待機している時のカッター機構1の模式的な側断面図である。前記ホルダレバー14の長手レバー部14aが下方に押し下げ付勢された状態でカッターホルダ13の上部に載置されている。
【0041】
カッター制御部43が切断モード部MD1に切り替えられると、前記カッターホルダ13が待機位置Wから移動し始める、図4に示すように、下方に押し下げ付勢されている前記ホルダレバー14の長手レバー部14aが下がり、このホルダレバー14が回転軸14cを中心に図面に向かって時計回りに回動する。そうすると、前記ホルダレバー14のレバーリンク部14bの図中のA部が前記用紙押さえローラ16の回転軸16cを下方に押さえ、この用紙押さえローラ16が用紙押さえローラ16の直下にある用紙Shを圧接する。この状態で、回転刃12をカッターホルダ13とともに遊動領域Rfを経て切断領域Rcを横断させ、用紙Shを切断する。なお、切断領域Rcの近傍の所定位置には停止検知センサがあり、センサONになったら前記DCモータは駆動を停止する。
【0042】
用紙Shの切断後は、回転刃12をカッターホルダ13とともに待機位置Wに戻し、前記カッターホルダ13が前記ホルダレバー14の端部14aを元のカッターホルダ13上に持ち上げることにより、前記ホルダレバー14のレバーリンク部14bのB部が前記用紙押さえローラ16の回転軸16cを上方に持ち上げ、用紙押さえローラ16を用紙Shから離間させる。
【0043】
また、前記退避位置Wであるが、両方向から切断可能なため用紙Shを切断後は停止位置で待機し、次切断時は同じ制御でカッターホルダ13の動作方向が逆になる。
【0044】
したがって、この切断モードMD1において、前記カッターホルダ13が切断領域Rcを移動することにより、用紙Shを切断する手段と、用紙Shを押さえる手段とを同時に実現している。
【0045】
次に、用紙Shを搬送、印刷する過程においては、前記カッター制御部43は印刷・搬送モードMD2に切替えられる。(図6参照)
【0046】
図6に示されるように、この印刷過程における前記印刷制御部42のシーケンスに基づいた出力信号S5は搬送制御部41に入力され、印刷に同期してフィードローラ24や送りローラ26の回転方向や回転速度を制御するが、本実施形態では、前記印刷制御部42から前記カッター制御部43にも信号S6が出力され、それに同期して、カッター制御部43が前記DCモータMに駆動信号S2を出力し、DCモータMを駆動し、カッターホルダ13を前記印刷・搬送モードMD2での可動領域である図7に示される遊動領域Rfで動かす。
【0047】
この印刷・搬送モードMD2においては、前記カッター制御部43からの駆動信号S2を入力されるとカッターホルダ13は切断領域Rcには進入せず、遊動領域Rfを移動する。当該遊動領域Rfはカッターホルダ13が用紙Shの切断をしない待機位置Wから前記切断領域Rcまでの間に設定した所定の領域である。(図7参照)
【0048】
前記カッターホルダ13が遊動領域Rfを移動し始めると、可動送りローラ連動機構6が同時に作動し始める。
【0049】
この可動送りローラ連動機構6の動作を以下に説明する。
【0050】
前記カッターホルダ13が移動を開始すると同時に、前記切断モードMD1と同様に、前記ホルダレバー14の長手レバー部14aが下がることによって、前述したように用紙押さえローラ16が下がる(図4参照)。ここまでは、前記用紙押さえローラ連動機構5を利用したものである。図5に示されるように、さらに、回転軸16cを有す当該用紙押さえローラ16は、当該回転軸16cが用紙押さえローラ16とともに下方に押し下げられたとき、用紙押さえローラ16の回転軸16cに緩嵌合している前記第一のリンクレバー61の端部61aもともに下方に押し下げられ、第一のリンクレバー61の回転軸61cに対して第一のリンクレバー61の他端部61bが押し上げられる。当該端部61bが押し上げられると、この端部61bを押し上げ付勢している前記第二のリンクレバー62がその回転軸63を中心に図面に対して反時計回りに回動する。前記第二のリンクレバー62が図面に対して反時計回りに回動すると、第二のリンクレバー62の回転軸63に固定された前記可動送りローラホルダ64も同方向に回動し、前記可動送りローラホルダ64の先端部64bに回転可能に設けられた可動送りローラ27が当該可動送りローラホルダ64に対向配置された前記送りローラ26に圧接される。以上が、可動送りローラ連動機構6の動作である。
【0051】
したがって、この印刷・搬送モードMD2において、前記カッターホルダ13が遊動領域Rfを移動することにより、可動送りローラ27を用紙Shに接離する手段を実現した。
【0052】
このように、搬送過程では、図1に示されるように、搬送は前記フィードローラ24と送りローラ26がそれぞれメインピンチローラ25および可動送りローラ27と共に協働してなされるので、前記可動送りローラ27を用紙Shに圧接させる。この圧接手段は上記可動送りローラ連動機構6を利用して実現される。
【0053】
具体的には、用紙Shを印刷機構3へ搬送する過程で送りローラ26に可動送りローラ27を圧接させて搬送するが、この時の可動送りローラ27の圧接は可動送りローラ連動機構6を利用して行われていて、DCモータMを時間制御で遊動領域Rf内で動かすことにより可動送りローラ27を用紙Shに圧接している。そして、用紙Shが印刷機構3の所定位置に搬送されたら、カッターホルダ13を待機位置Wに戻すことにより印刷開始前には同機構6を用いて可動送りローラ27を用紙Shから離間させる。
【0054】
また、印刷過程では、既に述べたように、各色を印刷する前の印刷位置頭だし搬送時では前記可動送りローラ27は用紙Shを圧接し、印刷時には用紙Shから離間させる。この接離切替手段も上記可動送りローラ連動機構6を利用することで実現される。
【0055】
以上のように、本実施形態のプリンタは、用紙Shに対して接離することで当該用紙Shに対して選択的に搬送方向の送り動作を行う可動送りローラ27と、切断位置に送られた用紙Shを切断すべく、固定刃11、この固定刃11に沿って用紙搬送方向と交叉する切断方向に移動可能な回転刃12、この回転刃12を前記切断方向に移動させる駆動手段であるDCモータMを備えたカッター機構1とを具備してなるものにおいて、前記カッター機構1における回転刃12の移動領域を、用紙Shの切断を行う切断領域Rcと、待機位置Wから前記切断領域Rcまでの間に設定した遊動領域Rfとから構成するとともに、前記回転刃12が切断開始位置に至るまでに用紙Shを圧接するための連動機構5と、前記回転刃12の遊動領域Rfの動作を前記可動送りローラ27に接離動作として伝えるための連動機構6とを設けて構成されているので、回転刃12を切断方向に移動させるための駆動手段であるDCモータMに、回転刃12を遊動領域Rf内で動作させることにより可動送りローラ27を圧接、退避切替することができ、用紙Shに可動送りローラを圧接、退避切替させていた駆動手段を不要にすることができる。このようにして、用紙Shに可動送りローラ27を圧接、退避切替させるための接離手段と、用紙Shを切断するための駆動手段とを一つのDCモータMで共用することができ、小型かつ軽量で制御の簡易なカッター機構1を備えたプリンタの提供が可能となった。また、前記遊動領域Rfは、カッター機構1が切断を行わない領域であるので、可動送りローラ27の接離切替動作時に用紙を傷つけることがない。
【0056】
さらに、本実施形態では、前記カッター機構1に用紙に対して接離可能な用紙押さえ部である用紙押さえローラ16を具備し、前記回転刃12の動作を用紙押さえ部である前記用紙押さえローラ16に接離動作として伝えるための連動機構5を設けたので、用紙押さえ部である用紙押さえローラ16を用紙Shに圧接、退避させるための接離手段も、用紙Shを切断するための駆動手段であるDCモータMに行わせることができるようになり、一段と小型かつ軽量で制御の簡易なカッター機構1を備えたプリンタが可能となった。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではない。
【0058】
例えば、本実施形態では、用紙Shの切断時に用紙押さえローラ16を使用して用紙Shを固定したが、用紙Shを固定できる手段であればこれに限定されるものではなく、板材などの形状のものでも良いし、当該ローラ位置に空気孔と外部に吸引機を設け、空気を用紙Shにしわが寄らない程度に空気を吸引して用紙Shを固定するようなものでも良い。好ましくは、表面が滑らかで用紙Shを傷つけないものが良い。
【0059】
また、本実施形態では、インクリボンを用いた昇華型プリンタを想定したが、用紙Shの搬送に伴う接離可能な可動送りローラ27を使用するものなら、プリンタの印刷手段を選ばない。
【0060】
また、本実施形態では、連動機構において、回転軸の上下運動、コイルバネ、ねじりばね、突起物を介した力の伝達で連動機構を実現したが、連動機構が所望のタイミングで行われ、プリンタの用紙搬送、印刷、切断に支障がでない限り、本実施例で用いなかったギア、カム、その他の種類のばねなど他の部材を使用してもよいし、本実施例で使用した部材を置き換えて使用することも可能である。
【0061】
また、本実施形態では、回転刃12とカッターホルダ13を駆動する駆動手段として、DCモータMを用いたが、これに限らず、より細かい制御をするために、例えばパルスモータに置き換えて使用することも可能である。
【0062】
上記以外にも、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1・・・カッター機構
5・・・連動機構(用紙押さえ連動機構)
6・・・連動機構(可動送りローラ連動機構)
11・・・固定刃
12・・・回転刃
16・・・用紙押さえ部(用紙押さえローラ)
27・・・可動送りローラ
M・・・駆動手段(DCモータ)
Rc・・・切断領域
Rf・・・遊動領域
Sh・・・用紙
W・・・待機位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に対して接離することで当該用紙に対して選択的に搬送方向の送り動作を行う可動送りローラと、切断位置に送られた用紙を切断すべく、固定刃、この固定刃に沿って用紙搬送方向と交叉する切断方向に移動可能な回転刃、この回転刃を前記切断方向に移動させる駆動手段を備えたカッター機構とを具備してなるものにおいて、
前記カッター機構における回転刃の移動領域を、用紙の切断を行う切断領域と、待機位置から前記切断領域までの間に設定した遊動領域とから構成するとともに、前記回転刃が切断開始位置に至るまでに用紙を圧接するための連動機構と、前記回転刃の遊動領域の動作を前記可動送りローラに接離動作として伝えるための連動機構とを設けたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記カッター機構に用紙に対して接離可能な用紙押さえ部を具備し、前記回転刃の動作を前記用紙押さえ部に接離動作として伝えるための連動機構を設けていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−86363(P2013−86363A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229077(P2011−229077)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】