説明

プリントヘッドのマウント装置

【課題】プリントヘッドモジュールの端面の破損を防止する。
【解決手段】プリントヘッドアセンブリ(300)は、プリントヘッドモジュール(306)とマウント構造体(302)を含む。プリントヘッドモジュール(306)は、マウント構造体(302)の受け面(307)に取り付けられ、第1端面(310)と、その反対側の第2端面(312)を有する。これら端面(310,312)は受け面(307)の縁端面を超えて第1方向に第1距離だけ延出し、第1方向と実質的に垂直な第2方向について当該マウント構造体の特徴的エッジの間に配置される。各特徴的エッジは、第1方向に第2距離まで突出した第1の特徴部(303)を有する。第2距離は第1距離よりも大きく、第1の特徴部(303)は第1及び第2端面(310,312)を超えて延出する。また、各特徴的エッジは、隣接配置されるマウント構造体の第1の特徴部を収納できるように窪んだ第2の特徴部(305)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下に説明する技術は、印刷に好適な流体吐出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに例示される流体吐出システムは、一般に、インク滴を吐出する複数のノズルを有するプリントヘッドモジュールに対し、インク供給源からインクを供給するためのインク流路を備える。ここでいう「インク」は、ジェットプリンタ(吐出式プリンタ)から吐出される液体の一例である。インク滴の吐出動作は、インク流路内のインクをアクチュエータによって加圧することによって制御し得る。アクチュエータとしては、例えば、圧電吐出素子、加熱気泡発生素子(サーマルバブルジェットジェネレータ)、或いは静電吐出素子などがある。通常、プリントヘッドモジュールは、複数のノズルが一列に並んだ又は多数列に並んだ構成を備え、これらの複数のノズルに対応するインク流路及び対応するアクチュエータを有しており、各ノズルからの液滴吐出は独立して制御可能となっている。いわゆる「ドロップ−オン−デマンド」式のプリントヘッドモジュールの場合、各アクチュエータは媒体上の特定の場所(位置)へ選択的に液滴の吐出を行うように駆動される。印刷動作中、プリントヘッドモジュールと媒体とは互いに相対的に移動可能である。
【0003】
一例として、プリントヘッドモジュールは、シリコンプリントヘッドモジュールと圧電アクチュエータとを含んで構成され得る。かかるプリントヘッドモジュールは、シリコンをエッチングすることで圧力室(ポンプ室)を形成した構成とし得る。ノズル群は、プリントヘッドモジュールに取り付けられる別体の基板(すなわち、ノズル層)によって形成され得る。圧電アクチュエータは、印加電圧に応じて形状変化或いは撓み変形する圧電材料の層(圧電体層)を備え得る。圧電体層の撓み変形により、圧力室の一壁を構成するメンブレンの撓みが引き起こされる。メンブレンの撓み変形により、インク流路に沿って配置される圧力室内のインクが加圧され、ノズルからインク滴が吐出速度で吐出される。圧電アクチュエータは、メンブレンに接合されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、プリントヘッドモジュールをマウント構造体(マウント機構)に取り付けた組立部品ユニット(アセンブリ)において、プリントヘッドモジュールの端面がマウント構造体の端面から張り出している場合、この露出した端面が破損しやすいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は流体吐出システムによる印刷技術に関するものである。概略を説明すると、一態様として、本発明は、プリントヘッドモジュールとマウント構造体とを含んだプリントヘッドアセンブリを特徴付けるものである。プリントヘッドモジュールは、マウント構造体の受け面に取り付けられる。該プリントヘッドモジュールは、第1端部と、当該第1端部の反対側の第2端部と、を有する。これら第1端部及び第2端部は、前記受け面の縁端(エッジ)を超えて、当該受け面の縁端から第1方向に第1距離だけ延出する。また、前記第1端部及び前記第2端部は、前記マウント構造体における前記第1方向と実質的に垂直な方向の第2方向に設けられている特定端部(特徴的エッジ)の間に配置される。このマウント構造体は、プリントヘッドモジュールを取り付ける(マウントする)ための前記受け面と、前記第2方向について前記受け面(マウンティング面)の両側に位置する前記特定端部とを含んで構成される。各特定端部は、それぞれその特定端部から第1方向に第2距離まで突出した第1の特徴部(第1の機能部)を有する。第2距離は前記第1距離よりも大きく、第1の特徴部は、前記プリントヘッドモジュールの第1端部及び第2端部を超えて延出するように突設されている。さらに、各特定端部は、その特定端部から凹状に窪み形成されて成る第2の特徴部(第2の機能部)を有している。当該第2の特徴部は、隣接配置される他のマウント構造体の第1の特徴部を受け入れる(収納する)ことができるように構成されている。
【0006】
本発明のプリントヘッドアセンブリを実施するに際しては、以下に示す1又は複数の
特徴をさらに含ませることが可能である。例えば、それぞれの第1の特徴部は突出部(突片部、コブ、凸状部、突設部など他の用語による表現可能)として構成され、それぞれの第2の特徴部は窪み部(凹部、凹陥部、凹状部)など他の用語による表現可能)として構成され得る。いくつかの実施態様では、各突出部は当該突出部が突設されている特定端部に対して実質的に垂直な軸に沿って突き出るように、マウント構造体の当該特定端部から突出して形成され得る。各窪み部は、当該窪み部が凹成されているマウント構造体の特定端部に対して実質的に垂直な軸に沿って奥行きのある深さを有して形成され得る。前記第1の特徴部と前記第2の特徴部は、前記受け面の中心の縦軸に関して対称的に又は非対称的に配置され得る。
【0007】
プリントヘッドモジュールは、実質的に長方形の形状を有する構成とすることができる。また、さらに他の実施形態として、プリントヘッドモジュールは、非長方形の平行四辺形の形体を有するとともに、前記受け面の端部を超えて角度をもって斜めに延出する前記第1端部及び前記第2端部を有し、前記第1距離を、前記第1及び第2端部が前記受け面の端部を超えて延出する最大距離とすることが可能である。
【0008】
前記第1の特徴部と前記第2の特徴部の寸法(大きさ、形成位置などの諸条件を定めるディメンジョン)に関して、前記マウント構造体と他の第2マウント構造体との2つのマウント構造体が互いに隣接して位置決め配置されたときに、前記マウント構造体に取り付けられた前記プリントヘッドモジュールの位置が、前記第2マウント構造体に取り付けられた第2プリントヘッドモジュールに対して干渉することなく、前記マウント構造体の前記第1の特徴部が前記第2マウント構造体の前記第2の特徴部の中に収容されるように、前記第1の特徴部と前記第2の特徴部の各寸法が設計され得る。いくつかの実施態様では、前記マウント構造体の第1の特徴部の深さ(奥行き)は、前記第1の特徴部を収容する位置に形成された前記第2マウント構造体の第2の特徴部の深さと、前記プリントヘッドモジュール及び前記第2プリントヘッドモジュール間のギャップと、前記プリントヘッドモジュールが前記マウント構造体の端部を超えて延出している部分の前記第1距離と、前記第2プリントヘッドモジュールが前記第2マウント構造体の端部を超えて延出している部分の第2距離との合計よりも小さい。
【0009】
前記マウント構造体は、前記受け面が表面上に形成された中央部と、ウイング部とを含んで構成され得る。ウイング部は、前記中央部を挟んで対向する2つの側部に配置され、前記中央部の幅を超えて延出形成され得る。そして、前記特定端部は前記ウイング部の端部として構成され得る。また、前記ウイング部は、マウント構造体を流体吐出システムに取り付けることができるように構成され得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実施により、以下に示す1又は複数の効果が実現され得る。すなわち、マウント構造体にマウントされたプリントヘッドモジュールの露出した端部を超えて延出する特徴部を、当該マウント構造体の端部に沿って設けたことにより、プリントヘッドモジュールの露出した端部の破損を防止することができる。例えば、プリントヘッドモジュールが既にマウント構造体に取り付けられた状態の組立プロセスにおいて、当該プリントヘッドモジュールとマウント構造体とが一体となったアセンブリ(組立ユニット、以下「プリントヘッドモジュール/マウント構造体のアセンブリ」という場合がある。)を取り扱う際にプリントヘッドモジュールの露出端部に応力がかかることがあり、プリントヘッドモジュールの露出した端部を接面させて当該アセンブリを置くと、当該プリントヘッドモジュールの端部に応力がかかることになる。しかしながら、例えば突出部のような特徴部をマウント構造体の端部に沿って設けることにより、プリントヘッドモジュールの露出した端部ではなく当該特徴部が、応力を吸収することが可能となる。これにより、プリントヘッドモジュールを破損させる虞を低減することができる。また、プリントヘッドモジュールを取り付ける受け面の中央の縦軸に対して、第1の特徴部を非対称的に配置した実施態様によれば(例えば図4Cに示したように、中心縦軸に対して鏡像の位置関係のような場合)、当該マウント構造体は、他のマウント構造体が隣接して取り付けられる場合でも、流体吐出スシテムのフレーム上に、不注意で逆向きに(例えば、180度回転させた状態で)取り付けられることが起こりえなくなる。すなわち、第1の特徴部が非対称の位置に形成されているとき、これら第1の特徴部は、そのマウント構造体が一つの向き(同じ方向性の姿勢)にある場合に限って、当該フレーム上に取り付けられている隣接したマウント構造体の第2の特徴部と結合することが可能となる。
【0011】
本発明の1又は複数の実施形態の詳細は、添付の図面及び以下の記述において説明される。本発明における他の特徴、目的、効果については、以下の記述、図面、及び特許請求の範囲の記載によって明らかなものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】図1Aは、マウント構造体に取り付けられたプリントヘッドモジュールの斜視図である。
【図1B】図1Bは、図1Aに示したマウント構造体を示す図である。
【図2】図2は、隣接するマウント構造体に取り付けられた隣接する2つのプリントヘッドモジュールの部分平面図である。
【図3A】図3Aは、図1のプリントヘッドモジュールとマウント構造体を平面上に置いた状態を示す部分図である。
【図3B】図3Bは、本発明の実施形態によるマウント構造体に取り付けられたプリントヘッドモジュールを示す図である。
【図4A】図4Aは、図3Bに示したマウント構造体に取り付けられたプリントヘッドモジュールの斜視図である。
【図4B】図4Bは、図4A中のマウント構造体を示す図である。
【図4C】図4Cは、マウント構造体の他の形態を示す図である。
【図5】図5は、隣接するマウント構造体に取り付けられた2つの隣接ヘッドモジュールの部分拡大図である。
【図6】図6は、マウント構造体に搭載されたヘッドモジュールの他の形態を示す平面図である。
【図7A】図7Aは、プリントヘッドモジュールの一例を示す断面図である。
【図7B】図7Bは、プリントヘッドモジュールの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0014】
なお、異なる図面において、類似する符号は類似する要素を表している。
【0015】
図1Aは、マウント構造体102に取り付けられたプリントヘッドモジュール106の概略構成を示す。プリントヘッドモジュールは、一般にシリコンによって形成され、比較的薄いものであり、例えば、約0.3mm〜2.0mm(ミリメートル)の範囲の厚さを有する。図1Aに示されたプリントヘッドモジュール106の露出した平坦面は、ノズル面であり、プリンティング液を吐出可能な多数のノズル(不図示)が配列される。プリンティング液としてインクを適用できるが、他の液体でもよく、例えば、液晶ディスプレイの製造に用いられる電界発光材料、回路基板の製造に用いられる液体金属、或いは、生物学的液体などを用いることができる。
【0016】
図1Bには、プリントヘッドモジュール106を取り外したマウント構造体を示す。この実施態様において、マウント構造体は中央部105を有し、当該中央部105を挟んだ二つの対向する側部にウイング部(翼状部)104が配置されている。プリントヘッドモジュール106を受け入れるための受け面107は、中央部105の上部終端に含まれている。マウント構造体について他の構成も可能であり、図示は一例を示したに過ぎない。
【0017】
プリントヘッドモジュール106は、マウント構造体102における2つの対向するウイング部104の間に設けられた受け面107に取り付けられる。図示のマウント構造体の構成では、ウイング部104に複数の開口108が設けられ、当該開口を通る連結部(接続部)を介しウイング部104が取り付けられるフレームによってマウント構造体が支持される流体吐出システムに対し、ウイング部が取り付け可能となっている。すなわち、当該開口に連結部材(接続部材)を通すことによってウイング部は、当該マウント構造体が支持される液体吐出システムのフレームに取り付け可能である。なお、マウント構造体は、別の方法で流体吐出システムに取り付けることが可能である。例えば、接着による取り付けが可能であり、さらに、ウイング部に開口を有する構成は任意的なものである。一般的な構成として典型的には、2以上のプリントヘッドモジュールとマウント構造体がそのようなフレームに取り付けられる。各プリントヘッドモジュールに含まれるノズルは、モジュールがフレームに取り付けられたときに、隣接ノズル間が一貫性のある(一定の)間隔で配置されて長尺のノズル列を構成するように、互いに相対的に位置合わせされて配列される。流体吐出システムにマウント構造体102を取り付ける際のプリントヘッドモジュール106の取り扱い性を提供するために、プリントヘッドモジュール106の露出した端面110、112は、ウイング部104の縁端面を超えて延出している。
【0018】
図2は、隣接するマウント構造体に取り付けられ、互いに近接して配置される2つのプリントヘッドモジュールを示す。例えば、これらモジュールは、流体吐出システムのフレーム内に取り付けられたときに、かかる配置となり得る。図示の便宜上、誇張して描いているが、一般的に、隣接するプリントヘッドモジュールのエッジ間のギャップGと、対応するマウント構造体のエッジ間のより広いギャップHが存在する。このギャップHが存在することによって、プリントヘッドモジュール同士の相対的な位置を一又は複数の方向、例えば、x方向、若しくは、y方向、及び/又は、z方向の周りの回転方向に調整することが可能となっている。各プリントヘッドモジュールの相対的位置、及びそれらに含まれるノズルの相対的位置は、対応するマウント構造体を流体吐出システムのフレームに取り付ける前に、隣接プリントヘッドモジュール間で正確なノズル配置に調整され得る。
【0019】
図1Bに示されたマウント構造体102の課題を図3Aに示す。プリントヘッドモジュール106の端面110、112は、マウント構造体のウイング部104から広がり出ているため、流体吐出システムに組み込むプリントヘッドモジュールのアセンブリ(組立ユニット)において、これら端面はダメージを受けやすい。図3Aは、図1Aに示した構成を平面112の上に放置した様子を示している。このような状況は組立作業プロセスにおいて起こりうる。プリントヘッドモジュール/マウント構造体のアセンブリの全重量(或いは、それらの実質的な部分の重量)は、プリントヘッドモジュールの露出した端面110に加わり得る。プリントヘッドモジュール106は比較的薄いシリコン層で形成されているため、露出した端面110は破損しやすい。プリントヘッドモジュール106は、アセンブリ内で高価な部材要素、部品となり得るものであり、もし仮にダメージを受けると、全く使用できなくなる可能性がある。したがって、プリントヘッドモジュール106とその露出した端面110,112の破損を防止することは、不要な製造経費と製造遅延を回避するために重要である。
【0020】
図3Bは、ウイング部304を有するマウントアセンブリ内に取り付けられたプリントヘッドモジュール306の部分投影図である。ウイング部304は、それぞれプリントヘッドモジュールの張り出した端面(例えば、端面310)に近接するエッジ部分に、プリントヘッドモジュールの露出した端面を超えて延出する特徴部を備えている。図示の実施態様では、その特徴部は、プリントヘッドモジュール306の露出した端面310を超えて延出する突出部(コブ状の部分)303である。これにより、プリントヘッドモジュール/マウント構造体のアセンブリが平面112上に置かれたとき、図示のとおり、アセンブリの重量は、プリントヘッドモジュール306の露出した端面310ではなく、突出部303にかかる。端面310は、他の面と接触しにくく、ダメージを受けにくい。また、ウイング部304のエッジに沿って窪み部305が設けられている。この窪み部305は、流体吐出システムにおいて複数のマウント構造体が互いに近接して配置されるときに、突出部303を収容する凹部を可能にするものである。詳細は後述する。
【0021】
図4Aはマウント構造体302に取り付けられたプリントヘッドモジュール306の斜視図であり、本発明の実施形態に係るプリントヘッドアセンブリ300を示している。図4Bは、プリントヘッドモジュール306を取り外したマウント構造体302を示す。この実施態様において、マウント構造体302は、中央部309に取り付けられたウイング部304を含んで構成される。ただし、同図において、全体の長さは示されていない。プリントヘッドモジュール306のための受け面307は、ウイング部304の間の中央部309端面に形成されている。ウイング部304は、当該マウント構造体302を流体吐出システムのフレームに取り付けるための開口308を有している。このような開口308は、任意的な構成であり、流体吐出システムにマウント構造体を取り付けるために他の手段、例えば、接着接合を適用することが可能である。
【0022】
プリントヘッドモジュール306の露出した端面310,312と隣り合うマウント構造体のエッジ(以下、「特徴的エッジ」という。)が、露出した端面310、312の破損を防止するようにその露出した端面を超えて延出する特徴部を有する限り、マウント構造体は他の構成を有してもよい。すなわち、マウント構造体は、中央部309から延設されるウイング部304を具備して構成されることは必ずしも必要とされない。また、マウント構造体は、図示のものとは異なる断面形状を有してもよい。ただし、マウント構造体302がいかなる構成を採用したとしても、プリントヘッドモジュールにおける露出した端面の両方の側にマウント構造体の特徴的エッジが設けられるようなマウント構造体においてプリントヘッドモジュール306は位置決め設置され、その特徴的エッジは上記のような特徴を有する。
【0023】
図4A,4Bを再度参照すると、図示の実施形態では、突出部303及び窪み部305は、ウイング部304の厚み全体にわたっており全厚みに達している。しかしながら、他の実施形態では、突出部303と窪み305は、ウイング部304の厚みの一部分だけに達している構成とし得る。図示の形態では、ウイング部304の各エッジに1つの突出部303と1つの窪み部305を備えており、これらは受け面307の中央縦軸に関して対称的に配置されている。図4Cに示すように、いくつかの実施態様では、突出部303と窪み部305は前記中央縦軸に関して非対称に配置可能であり、前記中央縦軸に関して鏡像(ミラーイメージ)のように配置可能である。このような配置形態によれば、マウント構造体は、流体吐出システムのフレーム上に取り付けられる際、当該マウント機構の突出部を隣接するマウント構造体の窪み部に連結させるための「正しい」置き方と、「誤った」置き方とを持つことになるという利点がある。すなわち、このマウント構造体は、フレーム上において不注意で逆向きに(すなわち、180°回転させて)取り付けてしまうことが起こりえない。このような特徴は、プリントヘッドモジュールについて「正しい」向きと「誤った」向き(配置方向性)がある実施形態において重要なものとなり得る。
【0024】
いくつかの実施形態は、さらに追加的な突出部と窪み部を含み得る。また、さらに他の実施形態では、プリントヘッドモジュールの露出した端面を超えて延在する特徴部が、上記例示した突出部以外の構成、例えば直角の角部やその他の構成を有することも可能である。
【0025】
マウント構造体302のウイング部304に含まれた突出部303と窪み部305は、隣り合うプリントヘッドモジュール306の相対的な位置決めにおいて干渉しないように配置されている。すなわち、突出部303と窪み部305は、隣り合うマウント構造体の対応する窪み部に突出部303が入り込む(収納される)ことを許容するような位置と形状(大きさ寸法)で形成される。
【0026】
図5は、ウイング部304を有する第1マウント構造体が、ウイング部314を有する第2マウント構造体に隣接した位置に配置された様子を示した部分拡大図である。図示の例示においては、2つのマウント構造体は、流体吐出システムのフレーム(取り付け枠)に取り付けられている。当該フレーム上におけるプリントヘッドモジュール306と、プリントヘッドモジュール320との相対的位置はプリントヘッドモジュール306,320のノズルが整列するように、互いに相対的な位置が決定されている。突出部303は、深さ(奥行き)Bを有し、第2マウント構造体に形成された深さDの窪み部316に収容される。
【0027】
第1及び第2マウント構造体が流体吐出システムのフレームに取り付けられたときに、突出部303の外周面が、これに対応する窪み部316の内周面に接触する必要はない。図5に示したように、突出部303の表面と窪み部316の表面との間にギャップ318が存在してもよい。なお、図示の便宜上、ギャップ318は誇張して描いた。突出部303と窪み部316の面同士が接触する構成の場合、第1及び第2マウント構造体の最終的な位置が規定され、これにより、それらに搭載されるプリントヘッドモジュール306と320の相対的位置が規定され得る。好ましくは、プリントヘッドモジュール306と320の相対的位置は、マウント構造体の突出部と窪み部で決定されるというよりはむしろ、各プリントヘッドモジュール内に含まれるノズルの配列によって決定される。したがって、突出部と窪み部は、プリントヘッドモジュールの位置が干渉しないように、以下に示す関係を満たして設計、配置、及び寸法決めされ得る。
【0028】
X1+G+X2+D>B (式1)
上記(式1)において、各記号は以下の事項を指す。
【0029】
X1=プリントヘッドモジュール306の露出した端面310がウイング部304のエッジを超えて張り出す距離
G=プリントヘッドモジュール306,320間のギャップ
X2=プリントヘッドモジュール320の露出した端面322がウイング部314のエッジを超えて張り出す距離
D=窪み部316の深さ
B=突出部303の深さ
さらに、X1+X2<Bである。プリントヘッドモジュール306,320間のギャップGは、2つのプリントヘッドモジュール306と320間のノズル配列によって決定され得る。よって、このギャップGは、実施形態毎に異なり得る。しかしながら、ギャップGのとり得る範囲は推定可能であり、その範囲の最小値は、突出部の深さB又は窪み部の深さDの値を決定するための上記関係式(式1)に使用され得る。
【0030】
図3B、図4A、図5の実施形態では、プリントヘッドモジュール306は、長方形の形状に構成されている。他の形態として、プリントヘッドモジュールは、異なる形状に構成され得る。図6には、概ね長方形の断面を有するマウント構造体(突起部と窪み部とを含むウイング部304のエッジを除いた概略の平面視形状が概ね長方形のマウント構造体)に搭載される長方形以外の平行四辺形体として構成されるプリントヘッドモジュール330が例示されている。さらに他の実施形態として、マウント構造体は、長方形以外の断面形状を有する構成も可能である。
【0031】
図6に示されているように、プリントヘッドモジュール330の露出した端面332及び端面334は、マウント構造体のウイング部304の特徴的エッジに対して、角度を成して傾斜している。しかしながら、突出部303は、依然として端面332,334の最も外側のコーナ部を超えて延出しており、これにより、例えば組立工程の期間において、これら破損しやすい端面332,334を保護する。いくつかの実施形態において、プリントヘッドモジュール330は、図示のように、非長方形の平行四辺形に構成され、端面332、334に対して平行に位置合わせされてそこに形成された多数のノズル群(ノズル配列)が設けられている。そして、プリントヘッドモジュール330は、印刷を受ける基板(その上に印刷が行われる基板)に対し相対的に、y方向に、すなわち、ウイング部の特徴的エッジと平行な方向に移動する。上述以外の形態も可能であり、上記実施形態は一例に過ぎない。
【0032】
図7A、図7Bには、一実施例に係るプリントヘッドモジュール700を示した。プリントヘッドモジュール700の部分的な断面図が示されており、図7Aには上部要素が分解図で示されている。プリントヘッドモジュール700は、上述したマウント構造体に取り付けられ得るプリントヘッドモジュールの単なる一例を示したものであり、本例に限定されず、他の構成も可能である。
【0033】
本例で示したプリントヘッドモジュール700は、複数の流体流路が形成された(ただし、1つの流路のみを図示した)基板708を含んでいる。さらに、プリントヘッドモジュール700は、前記流路から選択的に液体(例えば、インク)を吐出させるための複数のアクチュエータを含んでいる。これにより、対応するアクチュエータを備えた各流路は、個別に制御可能なMEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)液体吐出装置をもたらすものとなる。
【0034】
この実施例に係るプリントヘッドモジュールでは、当該基板708への流体供給源(不図示)にインレット(供給導入口)が流体的に接続される。このインレットは、流路(不図示)を介して供給流路710に流体的に接続される。供給流路710は、圧力室712と流体的に接続される。この圧力室712は、ノズル718を終端部とする下方流路716に連通接続されている。ノズル718は、基板708に取り付けられるノズル層720によって規定され得る。
【0035】
メンブレン(膜)704は、圧力室712に極めて近接して、基板708の最上部上に設けられる。例えば、メンブレン704の下方面は、圧力室712の上方境界を規定し得る。アクチュエータ702は、メンブレン704の上に配置され、アクチュエータ702とメンブレン704の間に接着剤703が介在する。図示の例では、アクチュエータ702は、圧電アクチュエータであり、駆動電極730とグランド電極732の間に配置された圧電体層731を含んでいる。圧電体層731を駆動するための電圧差が駆動電極730とグランド電極732との間に印加されることにより、圧電体層731とメンブレン704が撓む。他の実施形態では、異なる構成のアクチュエータを使用可能であり、例えばサーマルアクチュエータを採用し得る。
【0036】
他の実施形態として、メンブレン704を除外した構成が可能であり、圧電体層731それ自体が圧力室712の境界を形成することも可能であることが理解できるはずである。プリンティング液が圧電素材を腐食し得るような実施形態では、圧力室の境界を形成する面を、例えばユーピレックス(Upilex;登録商標)やカプトン(Kapton;登録商標)のようなポリイミド層などの保護層によって保護することが可能である。
【0037】
動作時には、液体(流体)が、供給口を介して基板708内に流れ、供給流路710を流れる。液体は、供給流路710を流れて圧力室712に流れ込む。圧力室712上のアクチュエータ702が駆動されると、アクチュエータ702はメンブレン704を圧力室712の中の方へと撓ませる。その結果としてもたらされる圧力室712の容積変化によって、圧力室712の外へと液が押し出され、下方流路716内に液が送り出される。このとき、ノズルからの液滴719の吐出に十分な圧力をアクチュエータ702が付与していれば、液体はノズル718を通過する。こうして、液滴719が吐出され、その液滴719は基板上に堆積(付着、着弾)する。
【0038】
本明細書及び特許請求の範囲において使用されている「前」、「後」、「上」、「下」等の用語の使用は、図示の便宜に過ぎず、プリントヘッドモジュールの様々な要素と他の要素との間を区別するためのものである。「前」、「後」、「上」、「下」という用語の使用は、プリントヘッドモジュールの特定の配置姿勢、方向付けを意味するものではない。同様に、明細書中で要素の説明に際して用いられる「水平」、「垂直」といった用語は、実施形態に関連して用いられたものである。他の実施形態では、その具体的な事例に応じて、同一又は類似する要素が水平又は垂直以外の方向性を有する態様もあり得る。
【0039】
様々な発明の実施形態を説明したが、これらに限定されず、本発明の思想とその範囲から逸脱しない多様な変更の態様が可能である。したがって、他の様々な態様は特許請求の範囲に記載の発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0040】
300…プリントヘッドアセンブリ、302…マウント構造体、303…突出部、304…ウイング部、305…窪み部、306…プリントヘッドモジュール、307…受け面、309…中央部、310,312…端面、320…プリントヘッドモジュール、330…プリントヘッドモジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウント機構の受け面にプリントヘッドモジュールが取り付けられた構造を有するプリントヘッドアセンブリであって、
前記プリントヘッドモジュールは、第1端面と、当該第1端面の反対側にある第2端面と、を含み、前記第1端面及び前記第2端面は、前記受け面の端面から第1方向に第1距離だけ延出するともに、前記第1端面及び前記第2端面は、前記第1方向に対して実質的に垂直な第2方向に設けられた前記マウント機構の複数の特定端部の間に位置し、
前記マウント機構は、
前記プリントヘッドモジュールを取り付けるための前記受け面と、
前記第2方向に関して前記受け面の両側に設けられた前記特定端部と、を備え、
前記各特定端部は、
前記プリントヘッドモジュールの第1端面及び第2端面を超えて延出するように、当該特定端部から前記第1方向に前記第1距離よりも大きい第2距離まで突出した第1の機能部と、
当該特定端部から窪んだ形に形成され、該マウント機構に隣接配置される他のマウント機構の第1の機能部を収容するように構成された第2の機能部と、
を含んで構成されるプリントヘッドアセンブリ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記各第1の機能部は、突片部として構成され、
前記各第2の機能部は、窪み部として構成されるプリントヘッドアセンブリ。
【請求項3】
請求項2に記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記各突片部は、当該突片部が突設されている特定端面に対して実質的に垂直な軸に沿って突き出るように、前記マウント機構の当該特定端面から突出して形成されおり、
前記各窪み部は、当該窪み部が凹成されている特定端面に対して実質的に垂直な軸に沿って奥行きのある深さを有して形成されているプリントヘッドアセンブリ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記第1の機能部と前記第2の機能部は、前記受け面の中心の縦軸に関して対称的に配置されているプリントヘッドアセンブリ。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記第1の機能部と前記第2の機能部は、前記受け面の中心の縦軸に関して非対称的に配置されているプリントヘッドアセンブリ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記プリントヘッドモジュールは、実質的に長方形の形状であるプリントヘッドアセンブリ。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記プリントヘッドモジュールは、非長方形の平行四辺形の形体を有するとともに、
前記受け面の端面を超えて斜めに延出する前記第1端面及び前記第2端面を有し、
前記第1距離は、前記受け面の端面を超えて当該端面から延出する前記第1端面及び第2端面の最大距離であるプリントヘッドアセンブリ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記マウント機構と他の第2マウント機構との2つのマウント機構が互いに隣接して位置決め配置されたときに、前記第2マウント機構に取り付けられた第2プリントヘッドモジュールに対し、前記マウント機構に取り付けられた前記プリントヘッドモジュールの位置が干渉することなく、当該マウント機構の前記第1の機能部が前記第2マウント機構の前記第2の機能部の中に収容されるような寸法を、前記第1の機能部及び前記第2の機能部が有するプリントヘッドアセンブリ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記マウント機構の第1の機能部の深さは、
前記第1の機能部を収容する位置に形成された前記第2マウント機構の第2の機能部の深さと、
前記プリントヘッドモジュールと前記第2プリントヘッドモジュールとの間のギャップと、
前記プリントヘッドモジュールが前記マウント機構の端面を超えて延出している部分の前記第1距離と、
前記第2プリントヘッドモジュールが前記第2マウント機構の端面を超えて延出している部分の第2距離と、
の合計総和よりも小さいものであるプリントヘッドアセンブリ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記マウント機構は、
前記受け面が表面上に形成された中央部と、
前記中央部を挟んで対向する2つの側部に配置され、前記中央部の幅を超えて延出形成されたウイング部と、を有し、
前記特定端部は、前記ウイング部の端面であるプリントヘッドアセンブリ。
【請求項11】
請求項10に記載のプリントヘッドアセンブリにおいて、
前記ウイング部は、前記マウント機構を流体吐出システムに取り付けられるように構成されているプリントヘッドアセンブリ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2010−264747(P2010−264747A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285403(P2009−285403)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】