説明

プリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置

【課題】使用する樹脂が熱可塑性樹脂からなるプリント基板を廃プリント基板としてリサイクルするものにおいて、樹脂を効率的に分離回収可能なプリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置を提供する。
【解決手段】廃棄された電子製品もしくは電子製品の製造工程で発生する廃材としての廃プリント基板100から、樹脂材料2aと配線金属材料2bとに分離するプリント基板の樹脂と金属の分離装置であって、廃プリント基板100を加圧する加圧手段M1と、廃プリント基板100を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱する加熱手段M2と、加熱手段M2によって所定温度に維持される廃プリント基板100から、樹脂材料2aを濾過する濾過手段M3を備えている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃材であるプリント基板から樹脂材料と金属材料とに分離するプリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子製品に主として使用されるプリント基板は、その基板材料がガラス繊維と熱硬化樹脂であるエポキシ樹脂とからなり、そのリサイクル方法としては、回路配線としての配線金属材料のみを回収し、再利用していた。このため、配線金属材料を分離回収した残りの絶縁材料等については、焼却して熱エネルギーとして利用するか、あるいは廃棄物として埋め立てる方法がとられていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のリサイクル方法では、配線金属材料は回収されるが、基板材料の熱硬化樹脂等の絶縁材料は、再利用可能な材料として回収されることがなく、廃棄物の増大の一因となっている。
【0004】
このため、地球環境保全のための廃棄物およびCOの排出量の減量、あるいは資源の効率的利用への対応は、重要な問題となっている。このような現状から、プリント基板のリサイクル方法として、再利用可能な樹脂と金属とに分離回収する方法が、またその手段として、特に樹脂と金属とに分離回収できる装置が望まれている。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、使用する樹脂が熱可塑性樹脂からなるプリント基板を廃プリント基板としてリサイクルするものにおいて、樹脂を効率的に分離回収可能なプリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1によると、廃棄された電子製品もしくは電子製品の製造工程で発生する廃材としての廃プリント基板から、樹脂材料と配線金属材料とに分離するプリント基板の樹脂と金属の分離方法であって、廃プリントを加熱し、加圧する溶融加圧工程と、溶融加圧工程にて加熱しかつ加圧された廃プリント基板を濾過することで、樹脂材料のみを通過させる濾過工程を備えている。
【0007】
これにより、使用する樹脂が熱可塑性樹脂からなるプリント基板を廃プリント基板としてリサイクルするものにおいて、廃プリント基板を加熱することで樹脂材料を、軟化した状態もしくは粘性の低い状態にするとともに、これら状態の樹脂材料を加圧しながら濾過するつまり強制濾過することで樹脂材料のみを通過させて、プリント基板を樹脂材料と配線金属材料等の金属材料に分離することが可能である。
【0008】
なお、軟化した状態とは、その樹脂材料の弾性率が十分小さくなっている状態である。
【0009】
本発明の請求項2によると、溶融加圧工程は、廃プリント基板を加熱する加熱手段と、廃プリント基板を加圧する手段を備え、加圧手段は、略円筒体と、この略円筒体の内周に摺接可能な軸部材とからなり、略円筒体の両開口端のうち、一方には、開放、閉塞可能な可動蓋部材が配置されている。
【0010】
これにより、加圧方法として、略円筒体の内周、可動蓋部材および軸部材とで区画される空間を、軸部材の移動によって圧縮するという簡素な構造を用いるので、安定した加圧動作を行なうことが可能である。さらに、圧縮のための軸部材を移動させることによって、円筒体内のその空間に付着あるいは沈殿する固形物を、略円筒体の開放、閉塞可能な開口端つまり可動蓋部材側に捕集することが可能である。したがって、加熱しても固形物のままの配線金属材料等の金属材料と、少なくとも軟化して濾過可能な状態となる樹脂材料に、効率的に分離が可能である。
【0011】
なお、例えば上記互いに摺接可能な略円筒体の内周と軸部材の間の隙間は、濾過工程における濾過通路の一つとして用いることが可能である。
【0012】
本発明の請求項3によると、溶融加圧工程は、廃プリント基板が所定量投入されるまで廃プリント基板を加熱する工程を備えている。
【0013】
すなわち、溶融加圧工程は、加熱し、かつ加圧する本工程と、その前工程としての廃プリント基板が所定量投入されるまで廃プリント基板を加熱する工程を有する。これにより、加圧動作中に、廃プリント基板が連続的に投入されることはなくなるので、溶融加圧工程における加圧手段、特にシール構造に係わる装置の簡素化が図れる。
【0014】
本発明の請求項4によると、濾過工程は、配線金属材料程度の大きさを有する固形物を取り除く1次濾過工程と、固形物の大きさより小さいものを取り除く2次濾過工程を備えている。
【0015】
すなわち、取り除く固形物の大きさが二段階となる濾過通路を有する濾過手段を備える。これにより、濾過手段を備えた装置の寿命向上が図れるとともに、効率的に樹脂材料と配線金属材料に分離することが可能である。しかも、2次濾過工程で微細な固形物を取り除ける程度の濾過通路に設定すれば、回収される樹脂材料に含まれる不純物の残存量の低減が図れる。
【0016】
本発明の請求項5によると、1次濾過工程における濾過手段は、略円筒体と、略円筒体の内周に摺接可能な軸部材との隙間を濾過通路として用いる加圧手段である。
【0017】
これにより、濾過工程を1次濾過工程と2次濾過工程に増やしたとしても、例えば溶融加圧工程の加圧手段として、略円筒体と、略円筒体の内周に摺接可能な軸部材を備える加圧手段を採用し、かつ1次濾過工程の濾過手段として、略円筒体と軸部材との隙間を濾過通路とすることで、溶融加圧工程の加圧手段と1次濾過工程の濾過手段の共用化が図れるので、装置数の増加を抑制でき、従ってプリント基板の樹脂と金属の分離方法に係わる製造コストの低減が図れる。
【0018】
本発明の請求項6によると、濾過工程にて通過し、回収した樹脂材料に、所定期間経過するまで背圧を印加する回収樹脂分離工程を備えている。
【0019】
一般に、溶融加圧工程にて加熱かつ加圧された廃プリント基板を、濾過する際、軟化した状態もしくは粘性の低い状態の樹脂材料に加圧による気泡が混入する場合がある。このまま回収した状態の樹脂材料を、リサイクルするためペレット状に切削加工等により加工しようとすると、気泡混入の疎な部分と密な部分とによってペレットの大きさ、形状が不揃いになり、均一形状に形成することが難しくなるという問題がある。
【0020】
これに対して、回収した樹脂材料を、大気圧で放置せず、背圧を加えるので、大きな気泡を生じさせず、均一な形状を有するペレットの形成が可能である。また、例えば冷却固化するまでの所定時間だけ回収した樹脂材料に背圧を加えるので、背圧を発生するために要するエネルギーの消費の節約が可能である。さらになお、例えば徐々に冷却される間に気泡分と樹脂材料に分離することも可能である。
【0021】
本発明の請求項7によると、溶融加圧工程では、廃プリント基板を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱する。
【0022】
これにより、溶融加圧工程で加熱する温度を、廃プリント基板を少なくとも軟化可能な所定温度、すなわち樹脂材料が軟化可能な温度に抑えるので、廃プリント基板を加熱するため、加熱する手段を備えた装置が消費するエネルギーの無駄消費を抑えることが可能である。
【0023】
本発明の請求項8によると、廃プリント基板としてリサイクルするプリント基板としては、熱可塑性樹脂、もしくは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物のうちいずれか一方からなる絶縁基材と、絶縁基材の表面に配設され、前記配線金属材料からなる導体パターンとを備え、絶縁基材に導体パターンを形成した導体形成絶縁基材を積層した後に、加熱しつつ加圧することで、相互に接着して積層成形がなされているプリント基板が好適である。
【0024】
これにより、プリント基板の絶縁基材中の樹脂材料を、熱可塑性樹脂、もしくは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物にすることにより、廃プリント基板から樹脂材料と配線金属材料とに分離回収した後に、加熱して所望の形状に形成でき、従って確実に再利用が図れる。
【0025】
また、積層成形されたものであっても、分離回収する工程すなわち溶融加圧工程にて、積層成形がなされた積層条件の温度に近い温度に加熱すれば、塑性変形するに十分な軟化状態にすることが可能である。
【0026】
本発明の請求項9によると、絶縁基材が樹脂フィルムからなり、絶縁基材に設けられたビアホール中の一体化した導電性組成物により、導体パターン間相互を電気的に接続するものであって、導電性組成物は、金属材料のみからなる材料、あるいは金属材料と、絶縁基材に用いた熱可塑性樹脂もしくは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物のうちいずれか一方からなる材料から形成されている。
【0027】
これにより、廃プリント基板から樹脂材料を分離回収する際に、分離回収した樹脂材料中に層間接続材としての導電性組成物から混入する成分は、絶縁基材に用いた樹脂材料と同一成分であるため、回収した樹脂材料の純度は低下せず、回収後の樹脂材料も回収前の樹脂材料と同等の特性が期待できる。
【0028】
本発明の請求項10によると、廃棄された電子製品もしくは電子製品の製造工程で発生する廃材としての廃プリント基板から、樹脂材料と配線金属材料とに分離するプリント基板の樹脂と金属の分離装置であって、廃プリント基板を加圧する加圧手段と、廃プリント基板を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱する加熱手段と、加熱手段によって所定温度に維持される廃プリント基板から、樹脂材料を濾過する濾過手段を備えている。
【0029】
これにより、使用する樹脂が熱可塑性樹脂からなるプリント基板を廃プリント基板としてリサイクルするものにおいて、加熱手段によって加熱することで軟化させるとともに、加圧手段によって強制濾過することで樹脂材料のみを通過させて、濾過手段による分離回収を容易に行なうことが可能である。例えば、加熱手段によって、廃プリント基板、すなわち廃材となったプリント基板の初期の製造工程にて加熱成形された加熱温度に近い温度に維持されることで、溶融された樹脂材料を濾過手段を用いて容易に分離回収することが可能である。
【0030】
本発明の請求項11によると、加圧手段は、略円筒体と、略円筒体の内周に摺接可能な軸部材と、軸部材をその内周に沿って軸方向に往復移動自在にする駆動手段を備え、略円筒体の両開口端のうち、一方には、開放、閉塞可能な可動蓋部材が配置されている。
【0031】
これにより、加熱手段によって加熱され、少なくとも軟化可能な廃プリント基板つまり軟化可能な状態となった樹脂材料と固形物の状態である配線金属材料を、加圧装置として、略円筒体の内周、可動蓋部材および軸部材とで区画される空間を、軸部材の移動によって圧縮するという簡素な構造を用いるので、安定した加圧動作を行なうことが可能である。
【0032】
さらに、圧縮のための駆動手段を用いて軸部材を往復移動させることによって、円筒体の内周に付着あるいは沈殿する固形物を、その内周から掻き出すことが可能である。その結果、加圧動作の安定化が図れる。また、圧縮の継続に従って、略円筒体の開放、閉塞可能な開口端つまり可動蓋部材側に、固形物である配線金属材料を捕集することが可能である。したがって、安定した加圧動作を維持するとともに、加熱しても固形物のままの配線金属材料等の金属材料と、少なくとも軟化して濾過可能な状態となる樹脂材料に、効率的に分離することが可能である。
【0033】
なお、例えば、互いに摺接可能な略円筒体の内周と軸部材の間の隙間は、濾過手段における濾過通路の一つとして用いることが可能である。
【0034】
本発明の請求項12によると、略円筒体の外周には、廃プリント基板を投入する投入口が形成されており、投入口には、その内周への連通、遮断が可能で、廃プリント基板が所定量投入されるまで廃プリント基板を貯留する廃プリント基板投入手段が設けられている。
【0035】
これにより、加圧手段による加圧動作中に、廃プリント基板が連続的に投入されることはなくなるので、加圧手段を構成する略円筒体の外周に設けられる廃プリント基板投入手段は、廃プリント基板を投入する際に加圧手段である略円筒体の投入口を必ずしも高圧気密に保つ必要はない。従って加圧手段に係わる装置のシール構造の複雑化を防止することができる。
【0036】
本発明の請求項13によると、加熱手段は、略円筒体と可動蓋部材に設けることができる。
【0037】
本発明の請求項14によると、軸部材は、可動蓋部材によって開口端を開放したとき、駆動手段によって開口端を越えて軸方向移動する。
【0038】
これにより、駆動手段による軸部材を開口端から突き出す動作を行なうことができるので、例えば軸部材の圧縮動作の継続に従って可動蓋部材が配置されたその開口端側に固形物である配線金属材料が所定量に集められているとき、回収した配線金属材料を、容易に取り出すことが可能である。
【0039】
本発明の請求項15によると、濾過手段は、二段階の濾過通路を有しており、これら二段階の濾過通路のうちの一方は、互いに摺接可能な略円筒体と軸部材との間に形成される隙間である。
【0040】
これにより、濾過手段として、二段階の濾過通路によって1次濾過、2次濾過と二段階の濾過過程を採用したとしても、加圧手段を構成する略円筒体と軸部材との間に形成される隙間を利用して濾過手段としての濾過通路とすることが可能である。
【0041】
したがって、二段階の濾過通路によって1次濾過、2次濾過と二段階の濾過過程を採用することで樹脂材料と配線金属材料に分離する精度の向上が図れる。さらに、装置数の増加を抑制でき、結果として、プリント基板の樹脂と金属の分離装置に係わる装置コストの低減が可能であるので、プリント基板の樹脂と金属の分離回収するコストの低減が図れる。
【0042】
本発明の請求項16によると、二段階の濾過通路のうちの他方は、廃プリント基板から樹脂材料のみを通過させるフィルタであって、フィルタは、焼結金属で形成されている。
【0043】
これにより、被濾過対象物を濾過するフィルタのメッシュ穴が単に貫通しているものではなく、曲がりくねったメッシュ穴に形成することが可能である。したがって、樹脂材料を通過させるフィルタのメッシュ穴が曲がりくねったものとすることができるので、例えば針状の細くて長い固形物であっても確実に捕獲でき、従って、樹脂材料のみを確実に通過させることが可能である。
【0044】
本発明の請求項17によると、濾過手段を通過し、回収された樹脂材料に、背圧を加える背圧発生手段を備えている。
【0045】
これにより、回収した樹脂材料を、大気圧状態で放置せず、背圧を加えた状態とするので、濾過される前の加圧された状態に近い状態にすることが可能である。したがって、濾過される前の加圧された状態において、樹脂材料に気泡が混入する場合があっても、背圧を加えるので、減圧による大きな気泡に成長する現象を防止可能である。したがって、リサイクルする回収樹脂として、均一な形状を有するペレットの形成が可能な樹脂材料を廃プリント基板から分離回収することが可能である。
【0046】
なお、従来技術による大気圧状態では、気泡が減圧膨張により樹脂材料内に拡大してしまう。場合によっては、膨張する気泡がさらに分裂して樹脂材料内に多数の気泡が残留してしまう恐れある。これら気泡が残留している状態の樹脂材料からは、リサイクルするための望ましいペレットを形成することは難しい。
【0047】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のプリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置を、具体化した実施形態を図面に従って説明する。
【0048】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離装置の構成を表す部分的断面図である。図2は、本実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用したプリント基板のリサイクル方法を表すブロック図である。図3は、図2に示すリサイクルの各工程のうち、本実施形態のプリント基板の樹脂と金属の分離方法に係わる工程を示すブロック図であって、その分離方法を工程で示す模式図である。図4は、図2に示すリサイクルの各工程のうち、本実施形態のプリント基板の樹脂と金属の分離方法に係わる工程を示すブロック図であって、図1に示すプリント基板の樹脂と金属の分離装置に係わる加熱手段および加圧手段による処理に対応させて、その分離方法に係わる工程を説明する説明図である。図5は、図1の分離装置において、加熱し、加圧された廃プリント基板から樹脂材料のみを通過させる濾過を行なうことで、廃プリント基板を樹脂材料と配線金属材料に分離する過程を表す模式的部分断面図である。図6は、図1の分離装置において、廃プリント基板から分離回収した樹脂材料と配線金属材料を取出す過程を表す模式的部分断面図である。なお、図7は、図1の分離装置を適用して樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板の概略構成を表す模式的断面図である。
【0049】
(本発明のプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用するプリント基板のリサイクル方法のシステム概略説明)
図2に示すように、プリント基板のリサイクル方法に係わるプロセスは、被処理物としての廃プリント基板100と、被処理物100を一次処理する実装部品の除去手段200と、被処理物100を二次処理するはんだ除去手段300と、一次および二次処理後に実施する樹脂と金属の分離回収手段400と、分離回収手段400にて分離回収した一方の樹脂材料2aを樹脂成形する樹脂成形手段500と、分離回収手段400にて分離回収した他方の配線金属材料2bを金属精錬する金属精錬分離手段600より構成されている。なお、樹脂と金属の分離回収手段400は後述する濾過方法によって樹脂材料2aのみを通過させて、樹脂材料2aと金属材料2bに分離する。
【0050】
廃プリント基板100は、廃棄された電子製品に使用されているプリント基板101、あるいは電子製品を製造工程で発生する廃材としてのいわゆる廃プリント基板であって、図7に示すように、少なくとも熱可塑性樹脂からなる絶縁基材23と、この絶縁基材23の表面に配設され、少なくとも配線金属材料からなる導電パターン22とを備えている。なお、電子製品に使用されるプリント基板101では、絶縁基材23と導体パターン22とを備える回路基板21と、その回路基板21に実装される実装部品70と、実装部品70と回路基板21とを電気的に接続するはんだ80とを含んで構成されている(例えば第3の実施形態の図9参照)。さらになお、回路基板21が積層成形されている場合には、導体パターン22間すなわち層間を電気的に接続する層間接続材料からなる導電性組成物51を備えていてもよい(例えば第4の実施形態の図10参照)。
【0051】
なお、本実施形態では、リサイクルする廃プリント基板100として使用するプリント基板101としては、絶縁基材23において、絶縁材料として使用する樹脂材料が、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物で形成されるものであれば何れのものでもよく、樹脂フィルムであってもよい。
【0052】
次に、実装部品70(図9参照)の除去手段200は、半導体素子等の部品70を除去するものであって、周知の手段を用いればよい。例えば常温で機械的に部品70を剥離する機械的除去手段、実装基板101をはんだが溶融する温度まで加熱して部品70を除去する加熱除去手段等の何れの手段を用いてもよい。
【0053】
なお、電子製品に装着済みのプリント基板101をリサイクルする場合であれば、装着された状態のプリント基板を脱着する必要があるが、脱着については、実装基板101を固定しているコネクタを外して脱着しても、破壊して脱着しても、どのような手段を用いて脱着してもよい。なお、本実施形態では、電子製品に実装基板101を装着しているコネクタを外す手段を用いて、電子製品から廃プリント基板100を回収した。
【0054】
はんだ除去手段300は、部品除去手段としての機械的除去手段等によって部品70を剥離させた廃プリント基板100に残ったはんだ80、あるいは加熱除去手段等によって溶融したはんだ80、もしくは冷却固化したはんだ80を除去するものであって、周知の手段を用いればよい。例えばグラインダ等を用いて機械的に除去する機械的はんだ除去手段、あるいは塩酸と硫酸の混酸等のはんだが溶解する薬品を用いて除去するはんだ薬品除去手段等の何れの手段を用いてもよい。
【0055】
樹脂と金属の分離回収手段400は、上記部品除去手段200およびはんだ除去手段300によって、半導体素子等の実装部品70およびはんだ80が除去された廃プリント基板100を、加熱して強制濾過する手段である。これにより、廃プリント基板100を構成する樹脂材料2aと配線金属材料2bのうち、樹脂材料2aのみを通過させて、樹脂材料2aと配線金属材料2bとに分離回収が可能である。
【0056】
なお、被処理物である廃プリント基板100を加熱して強制濾過することで樹脂材料2aのみを通過させる手段・方法、つまり本発明のプリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置の詳細については、後述する。
【0057】
なお、廃プリント基板100から分離回収した樹脂材料2a、配線金属材料2bを、それぞれリサイクル使用するための材料製品に形成する樹脂成形手段500、金属精錬分離手段600は、それぞれ、周知の樹脂成形技術による成形手段、周知の金属精錬技術による金属種類ごとに分離精練する精練手段であればよい。
【0058】
次に、プリント基板をリサイクル方法に係わる工程を図2に従って説明する。そのリサイクル方法は、廃プリント基板100を材料毎に層別して分離回収し、分離回収した材料を再利用する流れを工程で表わすと、図2に示すように、部品除去工程P200と、はんだ除去工程P300と、樹脂と金属の分離回収工程P400と、樹脂と金属の分離回収工程P400にて分離回収された樹脂材料2aと配線金属材料2bとを、それぞれ、製品利用するための製造工程としての樹脂成形工程P500と、金属精錬分離工程P600と含んで構成されている。なお、廃棄された電子製品に装着済みの廃プリント基板100をリサイクルする場合には、部品除去工程P200の前工程として、製品に装着された実装基板100を脱着する脱着工程を設ければよい。部品除去工程P200では、上述の部品除去手段200を用いて、常温状態で半導体素子等の部品70を機械的に剥離、あるいははんだ80が溶融する温度まで加熱して部品70を除去する等のいずれの方法であってもよい。なお、本実施形態では、廃プリント基板100をはんだが溶融する200℃に加熱し、金属のへらを基板100の表面に接触させ、基板100と平行に金属へらを移動させることで、実装部品70をかき取り、部品70を除去した。次に、はんだ除去工程P300では、上述のはんだ除去手段3を用いて、はんだ80を機械的に除去、あるいははんだ80を溶解して除去する等のいずれの方法であってもよい。なお、本実施形態では、上記廃プリント基板100の表面を#320の研磨砥石を装着した回転式グラインダで研磨することで、はんだを除去した。樹脂と金属の分離回収工程P400は、被処理物として、部品除去工程P200およびはんだ除去工程P300にて実装部品70およびはんだ80が除去された廃プリント基板100(図7参照)を用いる。この樹脂と金属の分離除去工程P400の詳細については、後述する。
【0059】
なお、廃プリント基板100から分離回収した樹脂材料2a、配線金属材料2bを、それぞれ再使用するために材料製品に再形成する樹脂成形工程P500、金属精錬分離工程P600は、それぞれ、周知の製造技術による樹脂成形する工程、周知の金属精錬技術によって金属種類ごとに精練する精練工程であればよい。
【0060】
(本発明のプリント基板の樹脂と金属の分離方法およびその装置の詳細説明)以下、上述のプリント基板のリサイクル方法における樹脂と金属の分離回収手段400および樹脂と金属の分離除去工程P400を、図1および図3から図6に従って説明する。
【0061】
本実施形態では、図1に示すように、プリント基板の樹脂と金属の分離装置1は、主要な機能を手段として表すと、被処理物としての廃プリント基板100を加圧する加圧手段M1と、廃プリント基板100を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱する加熱手段M2と、この加熱手段M2によって所定温度に維持される被処理物100から、樹脂材料2aを濾過する濾過手段M3とを含んで構成されている。これにより、使用する樹脂が熱可塑性樹脂からなるプリント基板101を廃プリント基板100としてリサイクルものにおいて、加熱手段M2によって加熱することで軟化させるとともに、加圧手段M1によって強制濾過させることで樹脂材料2aのみを通過させて、濾過手段M3による分離回収を容易に行なうことが可能である。
【0062】
例えば、加熱手段M2によって、廃プリント基板100すなわち廃材となったプリント基板101の初期の製造工程にて加熱成形された加熱温度に近い温度に維持されることで、溶融された樹脂を濾過手段M3を用いて容易に分離回収することが可能である。
【0063】
なお、廃プリント基板100として使用するプリント基板101(詳しくは、絶縁基材23)に使用する樹脂材料は、熱可塑性からなるものであればよく、これにより、加熱することで軟化させることができるとともに、樹脂と金属の分離装置1によって分離回収した樹脂材料を加熱して所望の材料の形状にすることが可能である。なお、絶縁基材として熱硬化樹脂からなるものが使用されるプリント基板は、高温にしても弾性率が下がることはなく、後述する簡便な構造を有する装置1での分離回収は、不可能である。
【0064】
加圧手段M1は、図1に示すように、略円筒状の略円筒体11と、その略円筒体11の内周に摺接可能な軸部材12と、軸部材12をその内周に沿って軸方向に往復移動自在にする駆動手段13とを含んで構成されている。さらに、この略円筒体(以下、シリンダと呼ぶ)11の両開口端のうち、一方開口端11aには、図1に示すように、その開口端11aを開放、閉塞可能な可動蓋部材(以下、シリンダヘッドと呼ぶ)14が設けられている。これにより、加圧手段M1として、シリンダ11の内周、シリンダヘッド14、および軸部材(以下、ピストンと呼ぶ)12とで区画された空間(以下、加圧室と呼ぶ)Rを、ピストン12の移動によって圧縮するという簡素な構造を用いることができる。その結果、本実施形態の加圧手段M1は安定した加圧動作を行なうことが可能である。
【0065】
なお、本実施形態では、加熱手段M2は、シリンダ11とシリンダヘッド14に備えられている。さらに後述する濾過手段M3が加圧手段M1(詳しくは、シリンダ11)に設けられている。これにより、リサイクルする廃プリント基板100から樹脂材料2aと配線金属材料2bを分離回収する際、樹脂材料2aと配線金属材料2bに分離回収前の廃プリント基板100を加熱する工程から、濾過手段M3によって樹脂材料2aのみ通過させて、樹脂材料2aと配線金属材料2bにそれぞれ分離回収する工程まで、その加熱手段M2によって容易に対応可能である。なお、加熱手段M2は、伝熱媒体としてのシリンダ11とシリンダヘッド14を加熱するものであればよく、加熱ヒータ(図1参照)、あるいはその伝熱媒体の内部に循環通路(図示せず)を形成し、循環通路に加熱媒体を流す過熱装置であってもよい。なお、本実施形態で説明する加熱手段M2としては、加熱ヒータ21として説明する。
【0066】
さらになお、加熱手段M2は、例えば廃プリント基板100を加熱して、廃プリント基板100を構成する樹脂材料2aを、軟化した状態もしくは粘性の低い状態にする所定加熱温度に設定することが可能である。なお、この加熱手段M2は、廃プリント基板100を軟化可能な所定温度に加熱することが望ましい。これにより、濾過手段M3にて濾過する前の廃プリント基板100の状態を、少なくとも軟化可能な所定温度、すなわち樹脂材料2aが軟化可能な温度に抑えることが可能である。したがって、加熱手段M2が、廃プリント基板100を加熱するために消費するエネルギーの無駄消費を抑えることが可能である。
【0067】
さらになお、本実施形態では、上述の加熱手段M2と加圧手段M1を用いることで、濾過手段M3で濾過する被濾過対象としての廃プリント基板100を、配線金属材料2bは固形物の状態のまま、樹脂材料2aを溶融加圧することが可能である。詳しくは、加圧手段M1によって、樹脂材料2aからなる絶縁材料23と配線金属材料2bからなる導体パターン22を加圧成形した製造工程での加圧圧力に近い圧力で加圧する状態を維持することで、配線金属材料2bは固形物の状態のまま、樹脂材料2aを、軟化した状態つまり固形物状態の配線金属材料2bと比して溶融可能な状態とすることができる。なお、この溶融可能な状態とは、軟化した状態となった樹脂材料2aが、加圧手段M1により塑性変形させることで、後述の濾過手段M3の濾過通路を通過可能となる状態のことである。
【0068】
さらに、本実施形態では、加圧手段M1は、駆動手段(以下、プレスシリンダと呼ぶ)を用いてピストン12を往復移動させることによって、シリンダ11の内周に付着あるいは沈殿する固形物、つまり配線金属材料2bを、その内周に沿って掻きだすことが可能である。その結果、ピストン12の駆動によって圧縮されるシリンダ11内、特に内周だけに、付着あるいは沈殿する固形物が堆積してしまう現象の防止が可能である。したがって、加圧手段M1の加圧動作の安定化が図れる。
【0069】
さらに、加圧動作つまり圧縮動作の継続に従って、圧縮動作の終端側に配置されているシリンダヘッド14側に、固形物である配線金属材料2bを寄せ集める、つまり捕集することを可能とする波及効果が得られる(図5参照)。
【0070】
したがって、加圧手段M1は、安定した加圧動作の維持が図れるとともに、加熱手段M2によって加熱しても固形物のままの配線金属材料2bと、軟化して濾過可能な状態となる樹脂材料2aに、効率的に分離することが可能である。
【0071】
なお、加圧手段M1とともに、加熱手段M2を備えるシリンダ11には、図1に示すように、リサイクルする廃プリント基板100を加圧室Rに投入するための投入口15が設けられている。この投入口15はシリンダ11の内周と外周を貫通する孔を形成している。この孔の形状は、図1に示すように、外周側から内周側に向かって略縮径する形状を備えている。これにより、投入口15内に廃プリント基板100を留めながら、所定量の廃プリント基板100を投入することが可能である。さらに、本実施形態では、この投入口15は、図1に示すように、投入口に沿ってシリンダ11の外周側に突出る貯留部15aを備えている。これにより、加圧室Rに投入するまで所定量の廃プリント基板100を貯めておく貯留空間R100の確保が容易となる。さらになお、本実施形態では、貯留部15aの上端面に、投入口15と加圧室Rを連通、遮断可能な閉塞部としての投入口キャップ16が設けられている。これにより、加圧手段M1の加圧室Rのシール構造を複雑化することなく、所定量の廃プリント基板100が投入されるまで一時的に貯めておく投入口15つまり貯留空間R100を確保することが可能である。
【0072】
さらになお、本実施形態では、シリンダヘッド14によって開口端11aが開放されたとき、駆動手段を用いてピストン12を、開口端11aを越えて軸方向移動させる。これにより、ピストン12による突き出し動作を行なうことが可能である。したがって、例えば加圧手段M1(詳しくは、ピストン12)の加圧動作が継続し、シリンダヘッド側に配線金属材料2bが所定量集められたとき、このピストン12の突き出し動作によって、回収した固形物としての配線金属材料2bを、容易に取出すことが可能となる(図6参照)。
【0073】
濾過手段M3は、加熱手段M2によって少なくとも軟化可能な所定温度に維持されている廃プリント基板100から、樹脂材料2aのみを通過させる手段であって、樹脂材料2aを通過させる濾過通路を有する。本実施形態では、濾過手段M3として、この複数の濾過通路17aを有するフィルタ17が、加圧手段M1であるシリンダ11の内周に沿って配置されている。詳しくは、フィルタ17は、シリンダ11内部に配置されており、その内周に沿って形成された回収溝18の下流側(詳しくは、フィルタ17の被濾過対象の樹脂材料2aの流れの下流側)に配置されている。
【0074】
さらに、本実施形態では、このフィルタ17を、焼結金属から形成する。これにより、被濾過対象物を濾過するフィルタ17の複数の濾過通路、すなわちメッシュ穴17aが単に貫通しているものではなく、曲がりくねったメッシュ穴に形成することが可能である。したがって、樹脂材料2aを通過させる濾過手段M3として、例えば針状の細くて長い金属材料2bであっても、曲がりくねったメッシュ穴17aに起因して、確実に捕獲することが可能である。その結果、配線金属材料2b等の固形物のうち、針状の微細な大きさになったものがフィルタ17を通過するのを阻止可能である。したがって、濾過手段M3つまりフィルタ17を通過した樹脂材料2aの純度を高めることが可能である。結果、リサイクルする樹脂材料2aとして、望ましい残存不純物量に抑えた樹脂材料2aを、廃プリント基板100から分離回収が可能である。
【0075】
なお、このフィルタ17は、配線金属材料2bが通過できず、かつ樹脂材料2aが通過可能なメッシュ穴の大きさを有するものであれば、ステンレス製フィルタ等を積層したディスクフィルタ、セラミック、あるいは発泡体の何れのフィルタでもよい。なお、焼結金属から形成されるフィルタ17は、組付構造が複雑なディスクフィルタに比べて、安価に製造できる。
【0076】
なお、本実施形態におけるフィルタ17としては、金属材料としてステンレスを用いた焼結金属で形成し、メッシュ穴17aのサイズを50μmとした。なお、メッシュ穴17aサイズは、20μm〜200μmの範囲であれば、樹脂材料2aを金属材料2bから分離可能である。メッシュ穴17aを小さくする場合には、フィルタ17の寿命に制約され、メッシュ穴17aを焼結金属で形成する場合には、焼結する金属材料を代えることで、例えばステンレスに代えて銅(Cu)を用いて焼成すれば、200μm程度の大きさにすることができる。
【0077】
さらにまた、フィルタ17を焼結金属で成形するので、フィルタ17の上流側端面17bに比較的高い圧力が加わっても、焼結金属の構造に起因して機械的強度が保証できる。したがって、比較的高い加圧下で、広い上流側端面17bの面積すなわち濾過面積を確保することが可能である。例えば所定量の被処理物(詳しくは、廃プリント基板100)を、その所定量を分割することなく、一括して処理可能であるので、樹脂材料2aと配線金属材料2bとに分離する作業の生産性向上が図れる。
【0078】
さらにまた、フィルタ17を焼結金属で成形するので、上述如く使用する金属材料に起因して金属メッシュ穴のサイズが決まるので、メッシュ穴17aのサイズを高精度に形成できる。
【0079】
なお、上記実施形態で説明したフィルタ17として、いわゆるプレコートフィルタを用いてもよい。すなわち、予めメッシュ穴17aを大きめに形成しておく。樹脂と金属の分離装置1の稼動とともに、フィルタ17の上流側端面17bに金属材料2bが堆積し、メッシュ穴17aが小さくなっていく。そして結果として、所望のメッシュ穴17aになるようにするものであってもよい。これによって、フィルタ17の寿命延長が図れる。
【0080】
(変形例)
変形例では、濾過手段M3として、上記第1の実施形態で説明したフィルタ17の濾過通路17aに加えて、図1に示すように、加圧手段M1を構成し、互いに摺接可能なシリンダ11とピストン12の間に形成される隙間δM1を、もう一方の濾過通路とし、二段階の濾過通路を有する。すなわち、1次濾過および2次濾過処理を行なう。なお、この二段階の濾過通路17a、δM1は、その濾過通路のサイズとして、1次濾過処理用濾過通路としての加圧手段M1の隙間δM1は、配線金属材料2b程度の大きさを有する固形物を取り除くことが可能なサイズとし、2次濾過処理用濾過通路としてのフィルタ17のメッシュ穴17aは、その固形物の大きさより小さいものを取り除くことが可能なサイズであれば、サイズは何れであってもよい。
【0081】
なお、本実施形態では、隙間δM1のサイズを100μmとし、メッシュ穴17aのサイズを20μmとした。
【0082】
これにより、濾過手段M3、特に濾過通路17aのサイズが微細なフィルタ17の寿命向上が図れるとともに、1次濾過および2次濾過処理を行なうことで、効率的に樹脂材料2aと配線金属材料2bに分離することが可能である。しかも、2次濾過処理によって微細な固形物を取り除くことが可能なメッシュ穴17aのサイズに設定しているので、回収される樹脂材料2aに含まれる不純物の残存量の低減が図れる。したがって、樹脂材料2aと配線金属材料2bに分離する精度、とくに、樹脂材料2aの分離回収する精度の向上が図れる。
【0083】
さらに、1次濾過および2次濾過処理の二段階の濾過処理を採用したとしても、加圧手段M1の隙間δM1を利用するので、装置数の増加の抑制が図れ、結果として、プリント基板の樹脂と金属の分離装置1の装置コストの低減が可能である。その結果、プリント基板の樹脂と金属の分離回収するコスト低減が図れる波及効果もある。
【0084】
なお、上記説明したプリント基板の樹脂と金属の分離装置1において、加圧手段M1のシリンダ11に形成された投入口15、および貯留部15a、および投入口キャップ16は、廃プリント基板100を所定量投入されるまで貯留する廃プリント基板投入手段を構成している。これにより、加圧手段M1が加圧動作中に、廃プリント基板100が連続的に投入されることはなくなるので、加圧手段M1であるシリンダ11の投入口15を必ずしも高圧気密に保つ必要はない。従って、加圧手段M1に係わる装置のシール構造の複雑化を防止することができる。
【0085】
さらになお、シリンダ11において、ピストン12と摺接し、加圧室Rが形成する側開口端11aとは、反対の開口端側にある内周は、隙間δM1からの樹脂材料2a等の漏れ防止のため、シール部材39を設けることが望ましい。
【0086】
さらになお、シリンダヘッド14を駆動して、開口端11aを開放、閉塞する駆動手段としては、電気モータで駆動する駆動装置、あるいは工場エア等の気体媒体を利用したエア駆動装置であってもよい。
【0087】
以上説明したプリント基板の樹脂と金属の分離装置1に係わる分離方法について、以下図3と図4の工程図、および図1と図5と図6の装置1の状態図に従って説明する。図1は廃プリント基板100を溶融加圧する直前の装置1の状態を示し、図5は廃プリント基板100を溶融加圧しながら、樹脂材料2aのみを濾過手段(詳しくは、濾過通路としての1次濾過処理を行なう隙間δM1、2次濾過処理を行なうフィルタ17(そのメッシュ穴17a))により通過させて、樹脂材料2aと配線金属材料2bに分離する作業が継続している装置1の状態を示し、図6は樹脂材料2aと配線金属材料2bがそれぞれ所定量回収され、それら回収した樹脂材料2aおよび配線金属材料2bを取出した直後の装置1の状態を示すものである。
【0088】
図3に示すように、本発明の要部であるプリント基板の樹脂と金属の分離方法の流れを工程で表すと、その分離方法は、廃プリント基板100を装置1に投入する投入工程P410と、廃プリント基板100を加熱し、加圧する溶融加圧工程P420と、溶融加圧工程P420にて加熱しかつ加圧された廃プリント基板100を濾過することで、樹脂材料2aのみを通過させる濾過工程P430と、分離回収した樹脂材料2aと配線金属材料2bを装置1から取出す取出工程P450とを含んで構成されている。なお、これら投入工程P410、溶融加圧工程P420、濾過工程P430、および取出工程P450は、プリント基板をリサイクル方法に係わる樹脂と金属の分離回収工程P400を構成している。
【0089】
投入工程P410では、廃プリント基板投入手段15、15a、16によって、廃プリント基板100が所定量投入されるまで廃プリント基板100を貯留する。このとき、少なくとも投入口15および貯留部15aは、シリンダ11に形成されているので、シリンダ11に内蔵される加熱ヒータ21によって加熱されている。これにより、廃プリント基板100は、加圧室Rに投入される前に、廃プリント基板投入手段15、15a、16によって、少なくとも軟化可能な温度に近い温度で加熱されることが可能である。したがって、投入口15が投入キャップ16によって加圧室Rに連通されると、廃プリント基板100は、直ちに加圧手段M1によって加圧されながら、濾過を開始することが可能である。その結果、溶融加圧工程P420のサイクルタイムの短縮が可能である。
【0090】
溶融加圧工程P420では、加熱手段M2としての熱ヒータ21によって樹脂材料2aが軟化可能な所定温度に維持されている。加圧手段M1によって加圧室R内が所定圧力で加圧されている。なお、本実施形態では、工程条件として、廃プリント基板100を340°Cの加熱温度に維持し、加圧室R内を加圧手段M1によって8MPaの比較的高い圧力で加圧した。これにより、廃プリント基板100を構成する樹脂材料2aを、少なくとも軟化した状態にするとともに、その軟化した状態の樹脂材料2aに比較的高い圧力を加えることで、樹脂材料2aの塑性変形を可能にする。したがって、濾過手段M3の濾過通路δM1、17aを、樹脂材料2aが通過できる溶融状態にすることが可能である。
【0091】
さらになお、溶融加熱工程では、廃プリント基板100を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱する。これにより、加熱手段M2が、廃プリント基板100を加熱させるために消費するエネルギーの無駄消費を抑えることが可能である。
【0092】
なお、投入工程P410では、廃プリント基板100が所定量投入されるまで廃プリント基板100を貯留するので、加圧手段M1が加圧動作中に、廃プリント基板100が連続的に加圧室Rに投入されるような投入状態をなくすことが可能である。これにより、溶融加圧工程P420における加圧手段M1、特にシール構造に係わる装置部分の簡素化が図れる。
【0093】
濾過工程430は、溶融加圧工程P420にて加熱しかつ加圧された廃プリント基板100を濾過することで、樹脂材料2aのみを通過させる工程であって、濾過処理を行なうため、1次濾過処理および2次濾過処理等複数の濾過処理を経て最終的に樹脂材料2aを通過させるものであってもよい。
【0094】
本実施形態では、溶融加圧工程P430は1次濾過工程431と2次濾過工程432を備えている。1次濾過工程431は、廃プリント基板100のうち、配線金属材料2b程度の大きさを有する固形物を取り除く。2次濾過工程432では、さらにその固形物より小さいものを取り除く。1次濾過工程431および2次濾過工程432による二段階の濾過処理によって、樹脂材料2aのみを確実に通過させて分離することが可能である。これにより、濾過手段M3を備えた装置1の寿命向上が図れるとともに、効率的に樹脂材料2aと配線金属材料2bに分離することが可能である。しかも、2次濾過工程432にて微細な固形物を取り除くことが可能である。したがって、分離回収される樹脂材料2aに含まれる不純物の残存量の低減が図れる。
【0095】
さらに本実施形態では、2次濾過工程432で焼結フィルタ17を用いるので、曲がりくねったメッシュ穴17aに起因して、微細で、かつ針状の固形物であっても通過を阻止し、取り除くことが可能である。したがって、分離回収される樹脂材料2aに含まれる不純物の残存量の低減が確実に図れる。
【0096】
さらに本実施形態では、1次濾過工程421で濾過処理する手段として、加圧手段M1を構成するシリンダ11とピストン12の隙間δM1を濾過通路として利用する。これにより、濾過工程P430を1次濾過工程P431と2次濾過工程P432に増やしたとしても、1次濾過工程の濾過手段として溶融加熱工程P420で使用する加熱手段M1の隙間δM1を濾過通路とすることで、1次濾過工程P431の濾過手段M3が溶融加圧工程P420の加圧手段M1と共用化が図れる(図1および図4参照)。したがって、装置数の増加の抑制が図れるので、プリント基板の樹脂と金属の分離方法に係わる製造コストの低減が図れる。
【0097】
さらになお、濾過工程P430が進んで、加圧手段M1による加圧動作が継続する(図4参照)と、加圧手段M1を構成するピストン12がシリンダ11の内周を掻き出すことによって、図5に示すように、加圧動作つまり圧縮動作の終端側に配置されるシリンダヘッド14側に、固形物である配線金属材料2bを捕集することが可能となる。
【0098】
取出工程P450は、濾過工程P430にて樹脂材料2aのみを通過させることで、分離回収した樹脂材料2aと配線金属材料2bをそれぞれリサイクルするために望ましい状態、形状で取出す。図4に示すように、取出工程P450を開始する直前まで、樹脂材料2a、配線金属材料2bは、それぞれ加熱手段M2によって加熱されながら蓄積される。例えば配線金属材料2bに含有する樹脂材料の比率が所定比率以下となったとき、加熱手段M2による加熱を中止し、加圧室Rから取出す。なお、本実施形態では、シリンダヘッド14によって開口端11aが開放されたとき、駆動手段を用いてピストン12を、開口端11aを越えて軸方向移動させる。これにより、ピストン12による突き出し動作を行なうので、回収した固形物としての配線金属材料2bを、容易に取出すことが可能となる(図6参照)。
【0099】
(第2の実施形態)
以下、本発明を適用した他の実施形態を説明する。なお、以下の実施形態においては、第1の実施形態と同じもしくは均等の構成には同一の符号を付し、説明を繰り返さない。
【0100】
第2の実施形態では、第1の実施形態で説明した濾過工程P430と取出工程P450との間に、図8に示すように、分離回収した樹脂材料2aに背圧を加える回収樹脂分離工程P440を設ける。図8は、本実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法のうち、回収樹脂分離工程を表すブロック図である。なお、分離回収した樹脂材料2aに背圧を加える背圧発生手段としては、図1に示すように、溶融している状態の樹脂材料2aのいわゆる液面を押圧する背圧シリンダ(図1参照)等のエア駆動する背圧発生装置に限らず、電気モータで駆動する背圧発生装置であってもよい。なお、本実施形態で説明する背圧発生手段としては、背圧シリンダ19として説明する。
【0101】
これにより、分離回収した樹脂材料2aを、大気圧状態で放置せず、背圧を加えた状態とするので、濾過される前の加圧された状態に近い状態にすることが可能である。したがって、濾過される前の加圧された状態において、樹脂材料2aに気泡が混入する場合があっても、背圧を加えるので、減圧による大きな気泡に成長する現象を阻止可能である。さらに、本実施形態では、この背圧を加えた状態を所定期間継続させる。これにより、冷却固化するまでの所定時間だけ回収した樹脂材料2aに背圧を加えることが可能である。これにより、気泡が高圧圧縮された小さい粒の状態で冷却固化されるので、リサイクルする回収樹脂として、ペレットに加工する際、略均一な形状を有するペレットの形成が可能である。
【0102】
なお、従来技術による大気圧状態の放置では、気泡が減圧膨張により樹脂材料2a内に拡大してしまう。場合によっては、膨張する気泡がさらに分裂してしまって、樹脂材料2a内に多数の気泡が残留してしまう恐れがある。これら気泡が残留している状態の樹脂材料から、切削加工等によって、リサイクルするための望ましいペレット、例えば均一な形状を有するペレットを形成することは難しい。
【0103】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、リサイクルする廃プリント基板100として適用するプリント基板101を、第1の実施形態で説明した絶縁基材23の表面に導体パターン22が配設されるものに代えて、図9に示すように、例えば樹脂フィルムからなる絶縁機材23に導体パターン22が積層されるものとしてもよい。図9は、本実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用して、樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板の概略構成を表す模式的断面図である。
【0104】
図9に示すように、プリント基板101は、熱可塑性樹脂からなる樹脂材料2a、もしくはその樹脂材料2aと無機充填材料との混合物のうちいずれか一方からなる絶縁基材23と、その絶縁基材の表面に配設され、配線金属材料2bからなる導体パターン22とを備え、絶縁基材23に導体パターン22を形成した導体形成絶縁基材21を積層した後に、加熱しつつ加圧することで、相互に接着して積層成形がなされている。
【0105】
これにより、加熱手段M2によって、廃プリント基板100すなわち廃材となったプリント基板101の初期の製造工程にて加熱成形された加熱温度に近い温度に維持されることで、溶融された樹脂を濾過手段M3を用いて容易に分離回収することが可能である。さらに、加圧手段1と加熱手段M2によって、プリント基板101の初期の製造工程にて加熱しつつ加圧することで成形された加熱温度に近い温度、および加圧圧力に近い圧力に維持されることで、溶融された樹脂材料2aを濾過手段M3を用いて分離回収することがさらに容易になる。
【0106】
(第4の実施形態)
第4の実施形態では、リサイクルする廃プリント基板100として適用するプリント基板101を、第3施形態で説明した絶縁基材23が、熱可塑性樹脂のみ、もしくは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物で形成されるものに加えて、図10に示すように、下記特徴を有する構成もしくは製造方法によって形成されるものとしてもよい。図10は、実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用して、樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板の構成、特にビアホール内の状態を示す部分拡大図であって、図10(a)は導体ペースト充填後の状態、図10(b)は層間接続後の状態を示す模式図である。
【0107】
まず、まず、絶縁基材23は、絶縁材料として、熱可塑性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物で形成されるものであれば何れのものでもよく、樹脂フィルムであってもよく、本実施形態で説明する絶縁基材23は樹脂フィルムとして説明する。次に、プリント基板101に半導体素子等の部品70を実装する際にはんだを使用する場合、絶縁基材23に使用する樹脂材料2aは、熱可性樹脂のみ、あるいは熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物のうちで、250℃以上の加熱が可能な材料に限られる。例えば、ポリエーテルエーテルケトン(略語としてのPEEK)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂またはそれらの混合物、熱可塑性ポリイミド樹脂(熱可塑性PI)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、あるいは液晶ポリマ(LCP)等を用いることができる。また、無機充填材料は、形成したプリント基板101の物性値を調整するために添加するものであって、例えば、熱膨張率を低下させる目的で添加するシリカ(SiO)粉末、熱伝導率を向上させる目的で添加する窒化アルミニウム(AlN)粉末、あるいは機械的強度を向上させる目的で添加するガラスファイバー等を、添加目的に応じて添加する。
【0108】
以下、本実施形態で説明する絶縁基材23としては、PEEK樹脂とPEI樹脂の混合物(38/62重量部)100重量部に対して、無機充填材料としてマイカ(KMg(SiAl10)F等)を15.5重量部加えて配合された樹脂フィルムを、用いるものとする。
【0109】
配線金属材料は、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)、および銅合金、銀合金等の金属材料であれば何れのものであってもよい。なお、本実施形態で説明する配線金属材料としては、以下、銅箔とし、例えば銅箔を上記樹脂フィルム23に圧着して貼り付け後、エッチング等にて不要な部分を除去して導体パターン22が形成されている。そして、図10に示すように、樹脂フィルム23の表面に導体パターン22を有する回路基板21を成形した後(図9参照)、層間接続のためのビアホールとしての穴24を樹脂フィルム23にレーザ光の照射等によって形成する。そのビアホールには、図10に示すように、層間接続材料としての導体ペースト50が充填され、導体パターン22間を電気的に接続する導電性組成物51が形成されている。なお、この電気的接続は、いわゆる接触導通によるものに限らず、後述の第4の実施形態の金属間の固相拡散による電気的接続等の何れの電気的接続であってもよい。
【0110】
なお、本実施形態では、金属間の固相拡散による電気的接続として以下説明する。
【0111】
プリント基板101の構成上の特徴としては、図10に示すように、絶縁基材としての樹脂フィルム23に設けられたビアホール24中の一体化した導電性組成物51により、導体パターン22間相互を電気的に接続するものであって、導電性組成物51は、金属材料のみからなる材料か、あるいは金属材料と樹脂フィルム23に用いた熱可塑性樹脂との混合物、もしくは金属材料と熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物のうち、いずれか一方とからなる材料から形成されている。
【0112】
これにより、廃プリント基板100から樹脂材料2aを分離回収する際に、分離回収した樹脂材料2a中に層間接続材料として、導電性組成物51から混入する成分は、樹脂フィルム23に使用した樹脂材料2aと同一成分であるため、回収した樹脂材料2aの純度の低下を防止できる。なお、回収した樹脂材料2aの純度は低下しないため、回収後、リサイクルする樹脂材料2aも、回収前の樹脂材料2aと同等の特性が期待できる。
【0113】
さらにまた、図10(a)および10(b)に示すように、導電性組成物51を形成する導電ペーストすなわち層間接続材料としては、導体パターン22を形成する金属材料2bと合金を形成し得る第1の金属粒子61と、第1の金属粒子61を形成する金属と合金を形成し得る第2の金属粒子62とからなり、例えば層間接続工程において、加熱しつつ加圧することで第1の金属粒子61と第2の金属粒子62とを焼結し、一体化した導電性組成物51を形成するものを使用する。
【0114】
詳しくは、層間接続材料すなわち導電ペースト50として、第1の金属粒子である錫(Sn)粒子61と、第2の金属粒子である銀(Ag)粒子62とからなる。なお、図10(a)は、ビアホール24内に充填され乾燥された導電ペースト50が、真空加熱プレス機(図示せず)により加熱される前の状態を示し、図10(b)は、真空加熱プレス機により焼結された状態を示す。
【0115】
まず、図10(a)に示すように、導電ペースト50は、錫粒子61と銀粒子62とが混合された状態にある。そして、このペースト50が240〜350℃に加熱されると、錫粒子61の融点は232℃であり、銀粒子62の融点は961℃であるため、錫粒子61は融解し、銀粒子62の外周を覆うように付着する。この状態で加熱が継続すると、融解した錫は、銀粒子62の表面から拡散を始め、錫と銀との合金(融点480℃)を形成する。このとき、導電ペースト50には2〜10MPaの圧力が加えられているため、錫と銀との合金形成に伴い、図10(b)に示すように、ビアホール24には、焼結により一体化した合金からなる導電性組成物51が形成される。
【0116】
また、ビアホール24内で導電性組成物51が形成されているときには、この導電性組成物51は加圧されているため、導体パターン22のビアホール24の底部を構成している面に圧接される。これにより、導電性組成物51中の錫成分と、導体パターン22を構成する銅箔の銅成分とが相互に固相拡散し、導電性組成物51と導体パターン22との界面に固相拡散層52を形成する。
【0117】
図10には図示していないが、ビアホール24の下方側の導体パターン22と導電性組成物51との界面にも、導電性組成物51中の錫成分と、導体パターン22を構成する銅箔の銅成分との固相拡散層52が形成される。したがって、ビアホール24の上下の導体パターン22間には、接触接続ではなく、一体化した導電性組成物51と固相拡散層52とによって確実に電気的に接続される。これにより層間接続の信頼性向上が図れる。
【0118】
したがって、上記の構成を有する導電性組成物51により層間接続の信頼性向上が図れるとともに、樹脂と金属の分離回収工程P400(詳しくは、溶融加圧工程420)にて、340℃に加熱されたとしても、導電性組成物51は錫と銀との合金(融点480℃)に形成されているため、確実に固相状態を維持することができる。よって、溶融加圧工程420にて、樹脂材料2aと配線金属材料2b(層間接続材料も含む)とに確実に分離回収ができる。
【0119】
なお、この層間接続がなされる工程において、絶縁基材としての樹脂フィルム23に導体パターン22を形成した導体形成絶縁基材(以下、片面導体パターンフィルム)21を積層した後に、加熱しつつ加圧することで、相互に接着した成層形成がなされる(多層プリント基板ができる)。
【0120】
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、リサイクルする廃プリント基板100として適用するプリント基板101を、第4施形態で説明した導電性組成物51を成形する際において、図11に示すように、絶縁基材である樹脂フィルム23に静水圧が掛かった状態でビアホール24にアーチ状に押出す構成を有するものとしてもよい。図11は、本実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用して、樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板であって、層間接続後の導電性組成物の形状の一実施例を模式的に示す部分拡大図である。
【0121】
上記の第4の実施形態にて説明した真空加熱プレス機により加熱しつつ加圧する製造工程において、樹脂フィルム23も真空加熱プレス機により加熱しつつ加圧されるので、樹脂フィルム23はフィルムの延在方向に変形し、ビアホール24の周囲の樹脂フィルム23はビアホール24内に押出されるように変形しようとする。このとき、樹脂フィルム23の弾性率は約5〜40MPaに低下している。このように弾性率が低下した樹脂フィルム23を加圧すると、絶縁基材である樹脂フィルム23中にはほぼ均一な圧力(いわゆる静水圧)が発生する。そして、樹脂フィルム23中にほぼ均一な圧力が掛かった状態で加圧を続け、ビアホール24の周囲の樹脂フィルム23をビアホール24内に押出すように塑性変形させると、樹脂フィルム23のビアホール24内への押出し量は、ビアホール24の導体パターン22と接続する端部(ビアホール24の中心軸方向端部)よりも中央部(ビアホール24の中心軸方向中央部)の方が大きくなる。すなわち、図11に示すように、加熱プレス前には略円筒状であったビアホール24の内壁は、上述のように樹脂フィルム23がビアホール24内に押出されることにより、ビアホール24の中心軸を通る断面の内壁面形状を、アーチ状に形成することができる。なお、加熱プレス時の樹脂フィルム23の弾性率は、1〜1000MPaの範囲にある。このとき、導電性組成物51は焼結の進行に伴い容積(見かけの体積)が減少している。この結果、導電性組成物51のビアホール24の中心軸を通る断面の側方側を、アーチ状に形成することができる。
【0122】
これにより、プリント基板101に曲げ等の変形応力が加わった場合に、導電性組成物51のビアホール24の中心軸を通る断面の側方側を、アーチ状に形成されているので、従来の円筒状のビアホールに比べて、導電性組成物51の接続部51b以外の部位にも応力が集中し難い。よって、層間接続の信頼性向上が図れる。したがって、プリント基板101の製造工程において、上記加熱しつつ加圧する工程を備え、加熱しつつ加圧するときの加熱温度において、絶縁基材23(詳しくは、熱可塑性樹脂からなる絶縁基材)の弾性率は、1〜1000MPaであるように構成することで、導電性組成物51のビアホール24の中心軸を通る断面の側方側を、アーチ状に形成することができ、従って層間接続の信頼性向上が図れる。
【0123】
さらに、樹脂と金属の分離回収工程P400(詳しくは、溶融加圧工程420)にて、製造工程にて加熱しつつ加圧された条件(もしくは、多層基板の場合には、成層形成がなされた積層条件)の温度に近い温度に加熱すれば、弾性率が十分低下させることが可能である。したがって、樹脂と金属の分離装置1の濾過手段M3のフィルタ17等によって樹脂材料2aのみを通過させる濾過作業が容易に行なうことができる。
【0124】
なお、以上説明した実施形態において、廃プリント基板100が多層プリント基板である場合、層間接続材料(詳しくは、導電ペースト50)の大きさが100〜200μm程度であるため、1次濾過工程P431の濾過通路すなわち加圧手段M1の隙間δM1は、100μm以下が望ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離装置の構成を表す部分的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用したプリント基板のリサイクル方法を表すブロック図である。
【図3】図2に示すリサイクルの各工程のうち、第1の実施形態のプリント基板の樹脂と金属の分離方法に係わる工程を示すブロック図であって、廃プリント基板が樹脂材料と配線金属材料に分離される過程を説明するため、その分離方法を工程で示す模式図である。
【図4】図2に示すリサイクルの各工程のうち、第1の実施形態のプリント基板の樹脂と金属の分離方法に係わる工程を示すブロック図であって、図1に示すプリント基板の樹脂と金属の分離装置に係わる加熱手段および加圧手段による処理に対応して、その分離方法に係わる工程を説明する説明図である。
【図5】図1の第1の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離装置において、加熱し、加圧された廃プリント基板から樹脂材料のみを通過させる濾過を行なうことで、廃プリント基板を樹脂材料と配線金属材料に分離する過程を表す模式的部分断面図である。
【図6】図1の第1の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離装置において、廃プリント基板から分離回収した樹脂材料と配線金属材料を取出す過程を表す模式的部分断面図である。
【図7】図1の分離装置を適用して樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板の概略構成を表す模式的断面図である。
【図8】第2の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法のうち、回収樹脂分離工程を表すブロック図である。
【図9】第3の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用して、樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板の概略構成を表す模式的断面図である。
【図10】第4の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用して、樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板の構成、特にビアホール内の状態を示す部分拡大図であって、図10(a)は導体ペースト充填後の状態、図10(b)は層間接続後の状態を示す模式図である。
【図11】第5の実施形態に係わるプリント基板の樹脂と金属の分離方法を適用して、樹脂材料と配線金属材料とに分離する被処理物としてのプリント基板であって、層間接続後の導電性組成物の形状の一実施例を模式的に示す部分拡大図である。
【符号の説明】
1 樹脂と金属の分離装置
2a 樹脂材料
2b 配線金属材料
11 シリンダ(略円筒体)
12 ピストン(軸部材)
13 プレスシリンダ(駆動手段)
14 シリンダヘッド(可動蓋部材)
15 投入口(廃プリント基板投入手段の一部)
15a 貯留部(廃プリント基板投入手段の一部)
16 投入キャップ(廃プリント基板投入手段の一部)
17 フィルタ
17a (濾過通路としての)メッシュ穴
19 背圧シリンダ(背圧発生手段)
21 加熱ヒータ(加熱手段)
M1 加圧手段
M2 加熱手段
M3 濾過手段
R 加圧室(加圧空間)
δM1 (濾過通路としての)隙間
P400 樹脂と金属の分離回収工程
P410 投入工程
P420 溶融加圧工程
P430 濾過工程
P431、P432 1次濾過工程、2次濾過工程
P440 回収樹脂分離工程
P450 取出工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄された電子製品もしくは電子製品の製造工程で発生する廃材としての廃プリント基板から、樹脂材料と配線金属材料とに分離するプリント基板の樹脂と金属の分離方法であって、
前記廃プリントを加熱し、加圧する溶融加圧工程と、
前記溶融加圧工程にて加熱しかつ加圧された前記廃プリント基板を濾過することで、前記樹脂材料のみを通過させる濾過工程を備えていることを特徴とするプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項2】
前記溶融加圧工程は、前記廃プリント基板を加熱する加熱手段と、前記廃プリント基板を加圧する手段を備え、
前記加圧手段は、略円筒体と、前記略円筒体の内周に摺接可能な軸部材とからなり、前記略円筒体の両開口端のうち、一方には、開放、閉塞可能な可動蓋部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項3】
前記溶融加圧工程は、前記廃プリント基板が所定量投入されるまで前記廃プリント基板を加熱する工程を備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項4】
前記濾過工程は、前記配線金属材料程度の大きさを有する固形物を取り除く1次濾過工程と、前記固形物の大きさより小さいものを取り除く2次濾過工程を備えていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項5】
前記1次濾過工程における濾過手段は、略円筒体と、前記略円筒体の内周に摺接可能な軸部材との隙間を濾過通路として用いる加圧手段であることを特徴とする請求項4に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項6】
前記濾過工程にて通過し、回収した前記樹脂材料に、所定期間経過するまで背圧を印加する回収樹脂分離工程を備えていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項7】
前記溶融加圧工程では、前記廃プリント基板を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項8】
前記廃プリント基板としてのプリント基板は、熱可塑性樹脂、もしくは前記熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物のうちいずれか一方からなる絶縁基材と、前記絶縁基材の表面に配設され、前記配線金属材料からなる導体パターンとを備え、
前記絶縁基材に前記導体パターンを形成した導体形成絶縁基材を積層した後に、加熱しつつ加圧することで、相互に接着して積層成形がなされていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項9】
前記絶縁基材が樹脂フィルムからなり、前記絶縁基材に設けられたビアホール中の一体化した導電性組成物により、前記導体パターン間相互を電気的に接続するものであって、
前記導電性組成物は、金属材料のみからなる材料、あるいは前記金属材料と、前記絶縁基材に用いた前記熱可塑性樹脂もしくは前記熱可塑性樹脂と無機充填材料との混合物のうちいずれか一方からなる材料から形成されていることを特徴とする請求項8に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離方法。
【請求項10】
廃棄された電子製品もしくは電子製品の製造工程で発生する廃材としての廃プリント基板から、樹脂材料と配線金属材料とに分離するプリント基板の樹脂と金属の分離装置であって、
前記廃プリント基板を加圧する加圧手段と、前記廃プリント基板を少なくとも軟化可能な所定温度に加熱する加熱手段と、前記加熱手段によって所定温度に維持される前記廃プリント基板から、前記樹脂材料を濾過する濾過手段を備えていることを特徴とするプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項11】
前記加圧手段は、略円筒体と、前記略円筒体の内周に摺接可能な軸部材と、前記軸部材を前記内周に沿って軸方向に往復移動自在にする駆動手段を備え、
前記略円筒体の両開口端のうち、一方には、開放、閉塞可能な可動蓋部材が配置されていることを特徴とする請求項10に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項12】
前記略円筒体の外周には、前記廃プリント基板を投入する投入口が形成されており、
前記投入口には、前記内周への連通、遮断が可能で、前記廃プリント基板が所定量投入されるまで前記廃プリント基板を貯留する廃プリント基板投入手段が設けられていることを特徴とする請求項11に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項13】
加熱手段は、前記略円筒体と前記可動蓋部材に設けられていることを特徴とする請求項11または請求項12に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項14】
前記軸部材は、前記可動蓋部材によって前記開口端を開放したとき、前記駆動手段によって前記開口端を越えて軸方向移動することを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項15】
前記濾過手段は、二段階の濾過通路を有しており、
前記二段階の濾過通路のうちの一方は、互いに摺接可能な前記略円筒体と前記軸部材との間に形成される隙間であることを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項16】
前記二段階の濾過通路のうちの他方は、前記廃プリント基板から前記樹脂材料のみを通過させるフィルタであって、
前記フィルタは、焼結金属で形成されていることを特徴とする請求項15に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。
【請求項17】
前記濾過手段を通過し、回収された前記樹脂材料に、背圧を加える背圧発生手段を備えていることを特徴とする請求項10から請求項16のいずれか一項に記載のプリント基板の樹脂と金属の分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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