説明

プリント基板

【課題】プリント基板にプルアップ抵抗を実装する場合に、実装部品点数を削減して部品コストを低減しつつ、部品実装工程における生産性向上により製造コストも低減でき、更に、プリント基板の面積効率を向上させてプリント基板の小型化も可能にする。
【解決手段】プリント基板1は、複数の信号線3と、各信号線3に電源からの電圧を付与するための電源ライン2と、信号線3の1つと電源ライン2とを接続するカーボンジャンパとを備え、カーボンジャンパ5は、予め定められた抵抗値を有する長さに設定されてプルアップ抵抗とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に関し、特に、信号線にプルアップ抵抗を配線する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プリント基板には、ICの入力端子を電源側にプルアップして適切な電位レベルに保つためにプルアップ抵抗が用いられている。プリント基板上で、各信号線にプルアップ抵抗を付与する場合、多層プリント基板では、スルーホールを用いて他の層に抵抗器を配置できるが、片面プリント基板では、併走する他の信号線を跨いで接続する必要がある。このように他の信号線を跨いでプルアップ抵抗を接続する場合に、当該プルアップ抵抗として、チップ抵抗器やアキシャル型抵抗器が広く用いられている。また、下記特許文献1に示されるように、プリント基板上の各信号線の接続にカーボンジャンパを用いることも行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−181400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、プリント基板上で、上記のように他の信号線を跨いでプルアップ抵抗を接続するとき、チップ抵抗器を用いる場合は、当該チップ抵抗器から信号線までをジャンパ線で接続する必要があるため、当該チップ抵抗器分及びジャンパ線分の両方の実装面積を要し、プルアップ抵抗の実装に必要な実装面積が大きくなる。また、これらチップ抵抗器及びアキシャル型抵抗器を用いて電源側と信号線を接続するには、電源側とこれら抵抗器との距離を離さずに近い位置に配置する必要がある。このため、チップ抵抗器とアキシャル型抵抗器とをプルアップ抵抗として用いることは、自由なプリント配線設計の阻害要因となり、プリント基板の面積効率の低下要因となる。また、電源側とこれら抵抗器との距離を離して配置し、電源側とこれら抵抗器との間の他の配線を跨ぐためにジャンパ線を用いることも可能であるが、この場合、当該ジャンパ線分の部品コストが増大する。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、プリント基板にプルアップ抵抗を実装する場合に、実装部品点数を削減して部品コストを低減しつつ、部品実装工程における生産性向上により製造コストも低減でき、更に、プリント基板の面積効率を向上させてプリント基板の小型化も可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、複数の信号線と、
前記各信号線に電源からの電圧を付与するための電源ラインと、
前記信号線と前記電源ラインとを接続するカーボンジャンパとを備え、
前記カーボンジャンパは、予め定められた抵抗値を有する長さに設定されてプルアップ抵抗とされているプリント基板である。
【0007】
この発明では、当該カーボンジャンパの長さが調節されることで上記予め定められた抵抗値が確保され、当該カーボンジャンパにより信号線と電源ラインとが接続されることで、カーボンジャンパをプルアップ抵抗として、電源ラインを介して電源側から信号線に付与される電圧を一定の電圧レベルにすることを可能にしている。これにより、本発明は、信号線をプルアップする場合、電源ラインから信号線までをカーボンジャンパで接続してプルアップできるため、例えばチップ抵抗器を用いる場合のように、チップ抵抗と信号線との接続にジャンパ線を必要とすることがなく、実装部品点数を削減して部品コストを低減できる。また、カーボンジャンパにより配線を跨ぐことが可能であるため、電源ラインと信号線との距離を離して配置しても、電源ラインと信号線を跨ぐためにジャンパ線を必要としない。これにより、配線設計の自由度が高まりプリント基板の小型化が可能である共に、当該ジャンパ線分の部品コストを低減することもできる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のプリント基板であって、前記プルアップ抵抗としてのカーボンジャンパは、当該プリント基板上に予めプリントされている。
【0009】
この発明によれば、当該基板上に予めプリントされているカーボンジャンパを、電源や信号線に接続すればプルアップ抵抗を実装可能となるので、部品実装工程での手間を削減して、生産性向上により製造コスト増加を抑えることができる。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のプリント基板であって、前記プルアップ抵抗としてのカーボンジャンパが複数備えられ、これら各カーボンジャンパが、それぞれの接続対象とされる信号線に接続されている。
【0011】
この発明では、同じ長さの複数のカーボンジャンパを基板上にプリントしておき、これらを、それぞれの接続対象となる信号線に接続することにより、当該信号線をプルアップすることが可能なので、プルアップ抵抗を基板上に設ける際の工程を簡易にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、プリント基板にプルアップ抵抗を実装する場合に、実装部品点数を削減して部品コストを低減しつつ、部品実装工程における生産性向上により製造コストも低減でき、更に、プリント基板の面積効率を向上させてプリント基板の小型化も可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリント基板における配線を説明する図である。
【図2】図2は図1に示すプリント基板のA−A、B−B、C−C、及び、D−D断面図である。
【図3】従来のプリント基板を示す図である。
【図4】従来のプリント基板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態に係るプリント基板について図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態に係るプリント基板における配線を説明する図である。図2は図1に示すプリント基板のA−A、B−B、C−C、及び、D−D断面図である。
【0015】
本発明の一実施形態に係るプリント基板1は、基材10上に、電源ライン2と、複数の信号線3と、カーボンジャンパ5とが形成されている。
【0016】
基材10は、例えばフェノール基板、ガラスエポキシ基板やコンポジット基板等のリジット基板からなる。
【0017】
電源ライン2は、信号線3に電圧を付与するための電源Vcc(図略)に接続されるラインであり、絶縁層よりなる基材10上に銅箔パターン層がプリントされることで設けられている。
【0018】
信号線3は、銅箔パターン層等で形成され、電子デバイス等に接続され、当該電子デバイスに対して図略のCPU等からの信号を伝達するためのラインである。信号線3も基材10上にプリントにより設けられている。本実施形態では、信号線3は基材10上に複数ライン設けられている。
【0019】
カーボンジャンパ5は、基材10上で接点間等の特定部分間を架橋するために用いられる。本実施形態では、カーボンジャンパ5は、信号線3と電源ライン2とを接続するために用いられている。
【0020】
カーボンジャンパ5は、例えば、導体抵抗は幅1mmに対して予め定められた抵抗値、例えば20〜30Ω(20〜30Ω/mm)のものが用いられる。本実施形態では、電源ラインVccと各信号線3とを接続するカーボンジャンパ5として、幅1mm、長さ50mmのものが基材10の部品面上に複数プリントされている。すなわち、カーボンジャンパ5が1000〜1500Ωの抵抗値を有する抵抗器(プルアップ抵抗)として機能する。
【0021】
信号線3は、カーボンジャンパ5を介して電源ライン2と接続されてプルアップされている。また、基材10には、図略の接地線が設けられている。信号線3は、当該接地線に接続されてプルダウンされている。これにより、信号線3は、入力レベルがVccレベル(Hレベル)であることが明確にされている。
【0022】
例えば、図1に示すように、複数の信号線3は、各信号線3同士が併走する状態として基材10の部品面上に形成されている。また、図2(a)乃至(d)に示すように、基材10上に併走状態で形成されている複数の信号線3は、その上に絶縁層6が形成されている。上記複数のカーボンジャンパ5は、当該絶縁層6上にプリントされている。図1に示すように、カーボンジャンパ5の一端部は、電源ライン2の近傍に配置されている。カーボンジャンパ5の他端部は、接続対象とされる信号線3の配設位置(信号線3の接点)まで延び、接続対象ではない他の信号線3を跨いでプリントされている。
【0023】
従って、併走する複数の信号線3に対して略直交するように各カーボンジャンパ5を配した場合、各カーボンジャンパ5は例えば長さ50mmとされているため、図1に示すように、カーボンジャンパ5の電源ライン2側の上記一端部は、各カーボンジャンパ5の接続先の信号線3の配設位置に応じて、電源ライン2からの距離が異なることになる。これらカーボンジャンパ5の電源ライン2側の一端部のそれぞれが電源ライン2に接続される。
【0024】
図2に示すように、各信号線3におけるカーボンジャンパ5との接点部分は、絶縁層6が設けられずに露出した状態とされ、カーボンジャンパ5の上記他端部が接続されている。また、電源ライン2は、少なくとも接点部分は絶縁層6が設けられておらず、接続線9を介して、カーボンジャンパ5の電源ライン2側の一端部と接続される。
【0025】
以上のように、プリント基板1には、上記予め定められた幅、長さ、抵抗値からなるカーボンジャンパ5が設けられ、このカーボンジャンパ5と電源ライン2とが接続され、カーボンジャンパ5と信号線3とが接続されることで信号線3プルアップされている。すなわち、カーボンジャンパ5がプルアップ抵抗とされている。
【0026】
このため、当該プリント基板1では、プルアップ抵抗としてのカーボンジャンパ5の実装は、信号線3及び電源ライン2のパターンと共に基材10上にプリントすることで足りるので、プリント基板1へのプルアップ抵抗実装時の実装部品点数を削減して部品コストを低減でき、部品実装工程における生産性向上により製造コストも低減できる。更に、プルアップ抵抗として用いるカーボンジャンパ5は、ジャンパ線を介さずに、電源ライン2及び信号線3のそれぞれに接続可能であるため、電源ライン2の配設位置を信号線3から離れた位置とすることも可能になる。このため、基材10上における配線設計上の自由度が高まり、プリント基板の面積効率を向上させてプリント基板を小型化することが可能になる。さらには、カーボンジャンパ5の抵抗値及び長さを調節することにより所望の抵抗値を有するプルアップ抵抗を実装可能であるので、この点でも更に、基材10上における配線設計上の自由度を高めることが可能である。
【0027】
例えば、図3に示すように、従来のようにチップ抵抗器20をプルアップ抵抗として用いるプリント基板1’の場合は、基材10上に配設されたチップ抵抗器20と各信号線3とを接続する際、接続対象ではない信号線を非導通状態で跨ぐために(以下、単に「跨ぐ」という)、ジャンパ線8が必要であるが、本実施形態に係るプリント基板1では、上記カーボンジャンパ5をプルアップ抵抗とすることで当該ジャンパ線を不要としている。さらに、電源ライン2が信号線3から離れた位置にある場合は、電源ライン2とチップ抵抗器20との間にある配線を跨ぐためのジャンパ線80が必要になるか(図3)、或いは電源ライン2をチップ抵抗器20の近傍に配設することが必要になるが、本実施形態に係るプリント基板1では、これらいずれの必要性も無くして、配線設計上の自由度を高め、当該ジャンパ線分の部品コストを低下させている。
【0028】
また、図4に示すように、アキシャル型抵抗器21をプルアップ抵抗として用いるプリント基板1’’の場合は、ジャンパ線を用いることなく、接続対象ではない信号線を跨いて、接続対象とする信号線3にアキシャル型抵抗器21を接続できるが、この場合も、電源ライン2が信号線3から離れた位置に配置する場合は、電源ライン2とアキシャル型抵抗器21との間にある配線を跨ぐためのジャンパ線80が必要になるか(図4)、或いは電源ライン2をアキシャル型抵抗器21の近傍に配設するかが必要になるが、本実施形態に係るプリント基板1では、これらいずれの必要性も無くして、配線設計上の自由度を高め、当該ジャンパ線分の部品コストを低下させている。
【0029】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、基材10をリジッド基板からなるとして説明したが、これは単なる一例であり、例えばフレキシブル基板等の他の基材からなるものでもよい。また、上記実施形態では、カーボンジャンパ5が複数設けられている例を示したが、当該カーボンジャンパ5の数は限定されない。また、当該カーボンジャンパ5の特性(幅、長さ、抵抗値等)も上記に示した内容に限定されるものではない。
【0030】
上記図1及び2に示した実施形態に係る構成及び処理は、本発明に係るプリント基板の構成及び処理の単なる一例に過ぎず、本発明に係るプリント基板の構成及び処理を上記に示した内容に限定するものではない。
【符号の説明】
【0031】
1 プリント基板
2 電源ライン
3 信号線
5 カーボンジャンパ
6 絶縁層
9 接続線
10 基材
20 チップ抵抗器
21 アキシャル型抵抗器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号線と、
前記各信号線に電源からの電圧を付与するための電源ラインと、
前記信号線と前記電源ラインとを接続するカーボンジャンパとを備え、
前記カーボンジャンパは、予め定められた抵抗値を有する長さに設定されてプルアップ抵抗とされているプリント基板。
【請求項2】
前記プルアップ抵抗としてのカーボンジャンパは、当該プリント基板上に予めプリントされている請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】
前記プルアップ抵抗としてのカーボンジャンパが複数備えられ、これら各カーボンジャンパが、それぞれの接続対象とされる信号線に接続されている請求項2に記載のプリント基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate