説明

プリント装置およびデカール装置

【課題】異なる方向から導入されるシートに対してカール矯正を行なうことができるコンパクトなデカール機構の実現。
【解決手段】表面プリントにおいてシート供給部から供給されたシートは、第1ピンチローラ31とデカールローラ20とのニップ位置に第1方向から導入され、デカールローラ20でデカール力が付与されて排出される。一方、裏面プリントにおいて反転部から供給されたシートは、上記ニップ位置に第1方向とは反対の第2方向から導入され、デカールローラ20でデカール力が付与されて排出される。カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、デカールローラと少なくとも一部のピンチローラとのニップ状態が解除され、デカール力の作用が緩和される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートにプリントを行なうプリント装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ロール状に巻かれた長尺の連続シートを用いて、インクジェット方式でシート表裏に両面プリントを行なうプリント装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−126530号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロール状に巻かれたシートはカール(巻き癖)を持っている。カールを持ったままプリント部にシートが供給されると、シートの先端とプリントヘッドとが接触する畏れがある。そのため、プリント部でプリントする前に、ロールから引き出したシートに対してデカール(カール矯正)を行なうことが望まれる。
【0005】
特許文献1の装置では、両面プリントにおいて、シート表(おもて)面へのプリントの後にいったんシートを巻取軸に巻き取って、表裏を反転させてシート裏面にプリントを行なう。この巻取軸へシートが巻き取られた際にも巻取り方向に新たにカールが付与される。したがって、表面をプリントする前はもとより、シートを反転させて裏面をプリントする前にもデカールを行なうことが望まれる。これは両面プリントにおける新たな課題である。しかし、特許文献1の装置はデカールについては何ら考慮されていない。
【0006】
本発明は上記課題の認識に基づいてなされたものである。本発明の目的は、両面プリントにおいて表面プリント、裏面プリントそれぞれで共通のデカール機構でカール矯正を行なうことができるプリント装置の提供である。別の本発明の目的は、異なる方向から導入されるシートに対してカール矯正を行なうことができるコンパクトなデカール装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は両面プリントを行なうことが可能なプリント装置であって、ロール状に巻かれたシートを保持して供給するためのシート供給部と、供給されるシートをカール矯正するデカール部と、前記デカール部を通過したシートにプリントを行なうプリント部と、前記プリント部でプリントされたシートを巻き取ってシートの表裏を反転させる反転部とを有し、前記デカール部は、デカールローラと、前記デカールローラの周囲に配置されそれぞれ前記デカールローラとの間でニップ状態を形成することが可能な、第1ピンチローラおよび前記第1ピンチローラの両側の第2ピンチローラおよび第3ピンチローラを有し、
両面プリントにおいては、前記シート供給部から送り出されたシートは前記デカール部にてデカールされ前記プリント部で第1面にプリントが行なわれて前記反転部に巻き取られ、次いで、前記反転部から送り出されたシートは再び前記デカール部にてデカールされ前記プリント部で前記第1面の背面側の第2面にプリントが行なわれるように制御され、
前記シート供給部から供給されたシートは、前記第1ピンチローラと前記デカールローラとのニップ位置に第1方向から導入されて、前記第1ピンチローラ、前記第2ピンチローラの順に前記デカールローラとの間にニップされて前記プリント部に送られるように制御され、且つ、カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、前記デカールローラと前記第2ピンチローラとのニップ状態が解除されるように制御され、前記反転部から供給されたシートは、前記第1ピンチローラと前記デカールローラとのニップ位置に前記第1方向とは反対の第2方向から導入されて、前記第1ピンチローラ、前記第3ピンチローラの順に前記デカールローラとの間にニップされて前記プリント部に送られるように制御され、且つ、カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、前記デカールローラと前記第3ピンチローラとのニップ状態が解除されるように制御されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、両面プリントにおいて表面プリント、裏面プリントそれぞれで共通のデカール機構でカール矯正を行なうことができるコンパクトなプリント装置が実現する。また、異なる方向から導入されるシートに対してカール矯正を行なことができるコンパクトなデカール装置が実現する。カール矯正中にシート搬送が停止する場合は、デカールローラと少なくとも一部のピンチローラとのニップ状態が解除されてデカール力の作用が緩和されるので、シートに局所的な曲げ癖が付くことが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】プリント装置の内部構成を示す概略図
【図2】制御部のブロック図
【図3】片面プリントモード、両面プリントモードでの動作を説明するための図
【図4】デカール動作のシーケンスを示すフローチャート
【図5】カール矯正中にシート搬送を停止する場合のデカール部の動作シーケンスを示すフローチャート
【図6】シート搬送を再開する際のデカール部の動作シーケンスを示すフローチャート
【図7】表面プリントにおけるデカール動作を説明するための図
【図8】表面プリントにおけるデカール動作を説明するための図
【図9】表面プリントにおけるデカール動作を説明するための図
【図10】表面プリントにおけるシート搬送停止時のデカール動作を説明するための図
【図11】表面プリントにおけるシート搬送停止時のデカール動作を説明するための図
【図12】表面プリントにおけるシート搬送停止時のデカール動作を説明するための図
【図13】裏面プリントにおけるデカール動作を説明するための図
【図14】裏面プリントにおけるデカール動作を説明するための図
【図15】裏面プリントにおけるシート搬送停止時のデカール動作を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、インクジェット方式を用いたプリント装置の実施形態を説明する。本例のプリント装置は、長尺で連続したシート(搬送方向において繰り返しのプリント単位(1ページあるいは単位画像という)の長さよりも長い連続したシート)を使用し、片面プリントおよび両面プリントの両方に対応した高速ラインプリンタである。例えば、プリントラボ等における大量の枚数のプリントの分野に適している。なお、本明細書では、1つのプリント単位(1ページ)の領域内に複数の小さな画像や文字や空白が混在していたとしても、当該領域内に含まれるものをまとめて1つの単位画像という。つまり、単位画像とは、連続したシートに複数のページを順次プリントする場合の1つのプリント単位(1ページ)を意味する。プリントする画像サイズに応じて単位画像の長さは異なる。例えばL版サイズの写真ではシート搬送方向の長さは135mm、A4サイズではシート搬送方向の長さは297mmとなる。
【0011】
本発明はプリンタ、プリンタ複合機、複写機、ファクシミリ装置、各種デバイスの製造装置などプリント装置に広く適用可能である。プリント処理はインクジェット方式、電子写真方式、熱転写方式、ドットインパクト方式、液体現像方式など方式は問わない。また、本発明はプリント処理に限らず連続したシートに種々の処理(記録、加工、塗布、照射、読取、検査など)を行なうシート処理装置にも適用可能である。
【0012】
図1はプリント装置の内部構成を示す断面の概略図である。本実施形態のプリント装置は、ロール状に巻かれたシートを用いて、シートの第1面と第1面の背面側の第2面に両面プリントすることが可能となっている。プリント装置内部には、大きくは、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、プリント部4、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12、制御部13の各ユニットを備える。シートは、図中の実線で示したシート搬送経路に沿ってローラ対やベルトからなる搬送機構で搬送され、各ユニットで処理がなされる。なお、シート搬送経路の任意の位置において、シート供給部1に近い側を「上流」、その逆側を「下流」という。
【0013】
シート供給部1は、ロール状に巻かれた連続シートを保持して供給するためのユニットである。シート供給部1は、2つのロールR1、R2を収納することが可能であり、択一的にシートを引き出して供給する構成となっている。なお、収納可能なロールは2つであることに限定はされず、1つ、あるいは3つ以上を収納するものであってもよい。
【0014】
デカール部2は、シート供給部1から供給されたシートのカール(反り)を軽減させるユニットである。デカール部2では、1つの駆動ローラに対して2つのピンチローラを用いて、カールの逆向きの反りを与えるようにシートを湾曲させて通過させることでデカール力を作用させてカールを軽減させる。
【0015】
斜行矯正部3は、デカール部2を通過したシートの斜行(本来の進行方向に対する傾き)を矯正するユニットである。基準となる側のシート端部をガイド部材に押し付けることにより、シートの斜行が矯正される。
【0016】
プリント部4は、搬送されるシートに対して上方からプリントヘッド14によりシート上にプリント処理を行なって画像を形成するシート処理部である。つまり、プリント部4はシートに所定の処理を行なう処理部である。プリント部4は、シートを搬送する複数の搬送ローラも備えている。プリントヘッド14は、使用が想定されるシートの最大幅をカバーする範囲でインクジェット方式のノズル列が形成されたライン型プリントヘッドを有する。プリントヘッド14は、複数のプリントヘッドが搬送方向に沿って平行に並べられている。本例ではC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、LC(ライトシアン)、LM(ライトマゼンタ)、G(グレー)、K(ブラック)の7色に対応した7つのプリントヘッドを有する。なお、色数およびプリントヘッドの数は7つには限定はされない。インクジェット方式は、発熱素子を用いた方式、ピエゾ素子を用いた方式、静電素子を用いた方式、MEMS素子を用いた方式等を採用することができる。各色のインクは、インクタンクからそれぞれインクチューブを介してプリントヘッド14に供給される。
【0017】
検査部5は、プリント部4でシートにプリントされた検査パターンや画像をスキャナによって光学的に読み取って、プリントヘッドのノズルの状態、シート搬送状態、画像位置等を検査して画像が正しくプリントされたかを判定するためのユニットである。スキャナはCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサを有する。
【0018】
カッタ部6は、プリント後のシートを所定長さに切断する機械的なカッタを備えたユニットである。カッタ部6は、シートを次工程に送り出すための複数の搬送ローラも備えている。
【0019】
情報記録部7は、切断されたシートの非プリント領域にプリントのシリアル番号や日付などのプリント情報(固有の情報)を記録するユニットである。記録はインクジェット方式、熱転写方式などで文字やコードをプリントすることで行なわれる。情報記録部7の上流側且つカッタ部6の下流側には、切断されたシートの先端エッジを検知するセンサ17が設けられている。つまり、センサ17はカッタ部6と情報記録部7による記録位置との間でシートの端部を検知する、センサ17の検知タイミングに基づいて情報記録部7で情報記録するタイミングが制御される。
【0020】
乾燥部8は、プリント部4でプリントされたシートを加熱して、付与されたインクを短時間に乾燥させるためのユニットである。乾燥部8の内部では通過するシートに対して少なくとも下面側から熱風を付与してインク付与面を乾燥させる。なお、乾燥方式は熱風を付与する方式に限らず、電磁波(紫外線や赤外線など)をシート表面に照射する方式であってもよい。
【0021】
以上のシート供給部1から乾燥部8までのシート搬送経路を第1経路と称する。第1経路はプリント部4から乾燥部8までの間にUターンする形状を有し、カッタ部6はUターンの形状の途中に位置している。
【0022】
反転部9は両面プリントを行う際に表面プリントが終了した連続シートを一時的に巻き取って表裏反転させるためのユニットである。反転部9は、乾燥部8を通過したシートを再びプリント部4に供給するための、乾燥部8からデカール部2を経てプリント部4に到る経路(ループパス)(第2経路と称する)の途中に設けられている。反転部9はシートを巻き取るための回転する巻取回転体(ドラム)を備えている。表面のプリントが済んで切断されていない連続シートは巻取回転体に一時的に巻き取られる。巻き取りが終わったら、巻取回転体が逆回転して巻き取り済みシートは巻き取りのときとは逆順に送り出されてデカール部2に供給され、プリント部4に送られる。このシートは表裏反転しているのでプリント部4で裏面にプリントを行うことができる。両面プリントのより具体的な動作については後述する。
【0023】
排出搬送部10は、カッタ部6で切断され乾燥部8で乾燥させられたシートを搬送して、ソータ部11までシートを受け渡すためのユニットである。排出搬送部10は、反転部9が設けられた第2経路とは異なる経路(第3経路と称する)に設けられている。第1経路を搬送されてきたシートを第2経路と第3経路のいずれか一方に選択的に導くために、経路の分岐位置には可動フラッパを有する経路切替機構が設けられている。
【0024】
ソータ部11と排出部12は、シート供給部1の側部で且つ第3経路の末端に設けられている。ソータ部11は必要に応じてプリント済みシートをグループ毎に仕分けるためのユニットである。仕分けられたシートは、複数のトレイからなる排出部12に排出される。このように、第3経路はシート供給部1の下方を通過して、シート供給部1を挟んでプリント部4や乾燥部8とは逆側にシートを排出するレイアウトとなっている。
【0025】
以上のように、シート供給部1から乾燥部8までが第1経路に順に設けられている。乾燥部8の先は第2経路と第3経路に分岐され、第2経路は途中に反転部9が設けられ反転部9の先は第1経路に合流する。第3経路の末端には排出部12が設けられている。
【0026】
制御部13は、プリント装置全体の各部の制御を司るユニットである。制御部13は、CPU、記憶装置、各種制御部を備えたコントローラ、外部インターフェース、およびユーザーが入出力を行なう操作部15を有する。プリント装置の動作は、コントローラまたはコントローラに外部インターフェースを介して接続されるホストコンピュータ等のホスト装置16からの指令に基づいて制御される。
【0027】
図2は制御部13の概念を示すブロック図である。制御部13に含まれるコントローラ(破線で囲んだ範囲)は、CPU201、ROM202、RAM203、HDD204、画像処理部207、エンジン制御部208、個別ユニット制御部209から構成される。CPU201(中央演算処理部)はプリント装置の各ユニットの動作を統合的に制御する。ROM202はCPU201が実行するためのプログラムやプリント装置の各種動作に必要な固定データを格納する。RAM203はCPU201のワークエリアとして用いられたり、種々の受信データの一時格納領域として用いられたり、各種設定データを記憶させたりする。HDD204(ハードディスク)はCPU201が実行するためのプログラム、プリントデータ、プリント装置の各種動作に必要な設定情報を記憶読出することが可能である。操作部15はユーザーとの入出力インターフェースであり、ハードキーやタッチパネルの入力部、および情報を提示するディスプレイや音声発生器などの出力部を含む。
【0028】
高速なデータ処理が要求されるユニットについては専用の処理部が設けられている。画像処理部207は、プリント装置で扱うプリントデータの画像処理を行う。入力された画像データの色空間(たとえばYCbCr)を、標準的なRGB色空間(たとえばsRGB)に変換する。また、画像データに対し解像度変換、画像解析、画像補正等、様々な画像処理が必要に応じて施される。これらの画像処理によって得られたプリントデータは、RAM203またはHDD204に格納される。エンジン制御部208は、CPU201等から受信した制御コマンドに基づいてプリントデータに応じてプリント部4のプリントヘッド14の駆動制御を行なう。エンジン制御部208は更にプリント装置内の各部の搬送機構の制御も行なう。個別ユニット制御部209は、シート供給部1、デカール部2、斜行矯正部3、検査部5、カッタ部6、情報記録部7、乾燥部8、反転部9、排出搬送部10、ソータ部11、排出部12の各ユニットを個別に制御するためのサブコントローラである。CPU201による指令に基づいて個別ユニット制御部209によりそれぞれのユニットの動作が制御される。外部インターフェース205は、コントローラをホスト装置16に接続するためのインターフェース(I/F)であり、ローカルI/FまたはネットワークI/Fである。以上の構成要素はシステムバス210によって接続されている。
【0029】
ホスト装置16は、プリント装置にプリントを行わせるための画像データの供給源となる装置である。ホスト装置16は、汎用または専用のコンピュータであってもよいし、画像リーダ部を有する画像キャプチャ、デジタルカメラ、フォトストレージ等の専用の画像機器であってもよい。ホスト装置16がコンピュータの場合は、コンピュータに含まれる記憶装置にOS、画像データを生成するアプリケーションソフトウェア、プリント装置用のプリンタドライバがインストールされる。なお、以上の処理の全てをソフトウェアで実現することは必須ではなく、一部または全部をハードウェアによって実現するようにしてもよい。
【0030】
次に、プリント時の基本動作について説明する。プリントは、片面プリントモードと両面プリントモードとでは動作が異なるので、それぞれについて説明する。
【0031】
図3(a)は片面プリントモードでの動作を説明するための図である。シート供給部1から供給され、デカール部2、斜行矯正部3でそれぞれ処理されたシートは、プリント部4において表面(第1面)のプリントがなされる。長尺の連続シートに対して、搬送方向における所定の単位長さの画像(単位画像)を順次プリントして複数の画像を並べて形成していく。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において単位画像ごとに切断される。切断されたカットシートは、必要に応じて情報記録部7でシートの裏面にプリント情報が記録される。そして、カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され乾燥が行なわれる。その後、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。一方、最後の単位画像の切断でプリント部4の側に残されたシートはシート供給部1に送り戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。
【0032】
このように、片面プリントにおいては、シートは第1経路と第3経路を通過して処理され、第2経路は通過しない。以上をまとめると、片面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(6)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(4)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(5)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する;
(6)最後の単位画像を切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す。
【0033】
図3(b)は両面プリントモードでの動作を説明するための図である。両面プリントでは、表(おもて)面(第1面)プリントシーケンスに次いで裏面(第2面)プリントシーケンスを実行する。最初の表面プリントシーケンスでは、シート供給部1から検査部5までの各ユニットでの動作は上述の片面プリントの動作と同じである。カッタ部6では切断動作は行わずに、連続シートのまま乾燥部8に搬送される。乾燥部8での表面のインク乾燥の後、排出搬送部10の側の経路(第3経路)ではなく、反転部9の側の経路(第2経路)にシートが導かれる。第2経路においてシートは、順方向(図面では反時計回り方向)に回転する反転部9の巻取回転体に巻き取られていく。プリント部4において、予定された表面のプリントが全て終了すると、カッタ部6にて連続シートのプリント領域の後端が切断される。切断位置を基準に、搬送方向下流側(プリントされた側)の連続シートは乾燥部8を経て反転部9でシート後端(切断位置)まで全て巻き取られる。一方、この巻取りと同時に、切断位置よりも搬送方向上流側(プリント部4の側)に残された連続シートは、シート先端(切断位置)がデカール部2に残らないように、シート供給部1に巻き戻されて、シートがロールR1またはR2に巻き取られる。この巻き戻しによって、以下の裏面プリントシーケンスで再び供給されるシートとの衝突が避けられる。
【0034】
上述の表面プリントシーケンスの後に、裏面プリントシーケンスに切り替わる。反転部9の巻取回転体が巻き取り時とは逆方向(図面では時計回り方向)に回転する。巻き取られたシートの端部(巻き取り時のシート後端は、送り出し時にはシート先端になる)は、図の破線の経路に沿ってデカール部2に送り込まれる。デカール部2では巻取回転体で付与されたカールの矯正がなされる。つまり、デカール部2は第1経路においてシート供給部1とプリント部4の間、ならびに第2経路において反転部9とプリント部4の間に設けられて、いずれの経路においてもデカールの働きをする共通のユニットとなっている。シートの表裏が反転したシートは、斜行矯正部3を経て、プリント部4に送られて、シートの裏面にプリントが行なわれる。プリントされたシートは検査部5を経て、カッタ部6において予め設定されている所定の単位長さ毎に切断される。カットシートは両面にプリントされているので、情報記録部7での記録はなされない。カットシートは1枚ずつ乾燥部8に搬送され、排出搬送部10を経由して、ソータ部11の排出部12に順次排出され積載されていく。
【0035】
このように、両面プリントにおいてはシートは第1経路、第2経路、第1経路、第3経路の順に通過して処理される。以上をまとめると、両面プリントモードにおいては制御部13の制御により、以下(1)〜(11)のシーケンスが実行される。
(1)シート供給部1からシートを送り出してプリント部4に供給する;
(2)供給されたシートの第1面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(3)第1面にプリントされたシートを乾燥部8を通過させる;
(4)乾燥部8を通過したシートを第2経路に導いて、反転部9が有する巻取回転体に巻き取っていく;
(5)第1面への繰返しのプリントが済んだら最後にプリントした単位画像の後ろでカッタ部6でシートを切断する;
(6)切断したシートの端部が乾燥部8を通過して巻取回転体に達するまで巻取回転体に巻き取る。これと共に、切断してプリント部4の側に残されたシートをシート供給部1に送り戻す;
(7)巻取りが済んだら巻取回転体を逆回転させて、第2経路から再びプリント部4にシートを供給する;
(8)第2経路から供給されるシートの第2面にプリント部4で単位画像のプリントを繰り返す;
(9)第2面にプリントした単位画像ごとにカッタ部6でシートの切断を繰り返す;
(10)単位画像ごとに切断されたシートを1枚ずつ乾燥部8を通過させる;
(11)1枚ずつ乾燥部8を通過したシートを、第3経路を通して排出部12に排出する。
【0036】
次に、上述の構成のプリント装置におけるデカール部2でのカール矯正動作について、さらに詳しく説明する。
【0037】
図7〜図9はデカール部2の構成および動作を説明するための図である。デカール部2は、シートを局所的に湾曲させてデカール力を与えるためのデカールローラ20と、デカールローラ20と対向し両者の間でニップを形成することが可能な第1ピンチローラ31を有する。デカール部2はさらに、デカールローラ20の周囲で第1ピンチローラを挟むように両側に配置された第2ピンチローラ41および第3ピンチローラ51を有する。デカールローラ20と第1ピンチローラ31によって第1デカールローラ対30を成し、デカールローラ20と第2ピンチローラ41によって第2デカールローラ対40を成し、デカールローラ20と第3ピンチローラ51によって第3デカールローラ対50を成す。いずれもデカールローラ対も独立してニップ状態を形成することが可能(離間と当接が可能)となっている。
【0038】
デカール部2はさらに、シート供給部1(第1のシート供給部)から供給されるシートを搬送して導入する第1導入ローラ対21、反転部9(第2のシート供給部)から供給されるシートを搬送して導入する第2導入ローラ対22を有する。デカール部2はさらに、デカール部2からシートを排出する排出ローラ対23を有する。カム32と押圧ばね33は、第1ピンチローラ31によるニップ状態(離間と当接)を切り換えるための駆動機構を成す。カム42と押圧ばね43は、第2ピンチローラ41によるニップ状態を切り換えるための駆動機構を成す。カム52と押圧ばね53は、第3ピンチローラ51によるニップ状態を切り換えるための駆動機構を成す。
【0039】
図4はデカール動作のシーケンスを示すフローチャートである。表(おもて)面プリント(片面プリントモードならびに両面プリントモードでの表面プリント)か、裏面プリント(両面プリントモードでの裏面プリント)かによってシーケンスが異なる。
【0040】
ステップS10では、現在のプリントモードを表面プリントであれば、ステップS11に移行し、裏面プリントであればステップS21に移行する。
【0041】
ステップS11では、第1デカールローラ対30をニップ状態にすると共に、第2デカールローラ対40および第3デカールローラ対50を離間状態にしてニップ解除する。具体的には、カム32が回転して押圧ばねデカールローラ20から第2ピンチローラ41および第3ピンチローラ51がリフトアップすることで離間状態となる。なお、ここでは第3デカールローラ対50はニップ解除することは必須ではなく、少なくとも第2デカールローラ対40がニップ解除されればよい。
【0042】
ステップS12では、シートに当接してシートの進行方向を変えるための切換器24を切り換えて図7のような位置に設定する。この状態では、第1デカールローラ対30のニップ位置を基準にして、シート供給部1とは反対の側で切換器24が経路に侵入し、シート供給部1の側では切換器24は経路から退避する。これにより、シート供給部1から第1導入経路を通って図の水平左方向(第1方向という)に向かって送られてくるシートSは、第1デカールローラ対30のニップ位置を過ぎたところで切換器24の斜面に当接して、図の左上方向にその進行方向を変える。シートSは無理なストレスを受けることなく進行する向きが変えられる。
【0043】
ステップS13では、シート供給部1からシートを供給開始する。シートSの先端は第1導入経路で第1導入ローラ対21でニップされ、第1デカールローラ対30でニップされ、切換器24で進行方向が変化して、ニップ解除されている第2デカールローラ対40の間を通過する。図7は、離間状態にある第2デカールローラ対40の間隙25を通過した位置まで来た状態を示している。
【0044】
ステップS14では、図7の状態からさらに搬送が進んでシートSの先端が排出ローラ対23でニップされたところで、シート搬送をいったん停止させる。
【0045】
ステップS15では、デカールローラ20および第1導入ローラ対21を逆回転させ、シートSをこれまでと逆向きに送り戻す動作を開始する。
【0046】
ステップS16では、カム32と押圧ばね33によって第2ピンチローラ41を移動させ、第2デカールローラ対40でシートSをニップさせる。この動作によりシートはSはデカールローラ20に巻きついて巻きついた部分にデカール力が付与される。シートSはデカールローラ20を頂点として90度よりも小さな角度(鋭角)で、反転部9でのシートの巻き方向とは逆向きに湾曲した状態となる。
【0047】
図8はシートS先端部のデカール動作を示す。シートSは第1デカールローラ対30、第2デカールローラ対40でニップされた状態のまま送り戻される。シートSはロールR1でのシート巻き方向とは逆向きに湾曲した状態(デカール力が作用した状態)を維持して搬送される。
【0048】
ステップS17では、この状態からさらにシートSの先端が第1デカールローラ対30のニップ位置から引き抜かれるまで送り戻してシート搬送を停止させる。このように、シートSの先端から所定の長さの領域がデカールローラ20でカールの向きとは逆向きに湾曲しながらデカールローラ20を通過し、その際の「しごき」動作によってデカール力が付与されてシートSの先端のカールが矯正される。
【0049】
ステップS18では、第2デカールローラ対40のニップを再び解除する。
【0050】
ステップS19では、シートを再び順方向に搬送再開する。なお、使用するシートSの種類によっては、ロールから引き出したシートのカールが非常に大きく、一度のデカール動作では所望の矯正ができない可能性がある。そのような場合は、上述した送り戻し動作によるシート先端部のデカール動作を複数回(2回以上)繰り返すようにしてもよい。
【0051】
シート先端が第2デカールローラ対40を通過して排出ローラ対23でニップされたら、第2デカールローラ対40をニップ状態に切り換える。そして、シートの搬送を続けてデカール部2からシートを排出させる。
【0052】
図9は図8で示したシートS先端のデカール動作後にシートSがデカール部2を通過して、プリント部4に送られている様子を示す。このときも、シートSはデカールローラ20に対して鋭角で巻きついて湾曲し、シート供給部1から供給されるシートSのすべての領域にもデカール力が作用する。上述した送り戻し動作により、シート先端部は繰返し(合計3回)デカールローラ20を通過するので、デカールがとくに必要なシートSの先端により多くのデカール力が付与されることになる。
【0053】
一方、ステップS10で裏面プリントと判断してステップS21に移行した場合は、以下のようなシーケンスを実行する。図13、図14は裏面プリントにおけるデカール部2の動作を説明するための図である。上述したように裏面プリントにおいては、シートSは反転部9(第2のシート供給部)からデカール部2に供給される。
【0054】
ステップS21では、第1デカールローラ対30をニップ状態にすると共に、少なくとも第3デカールローラ対50を離間状態にしてニップ解除する。
【0055】
ステップS22では、切換器24を切り換えて図13のような位置に設定する。この状態では、第1デカールローラ対30のニップ位置を基準にして、シート供給部1の側(反転部9とは反対側)で切換器24が経路に侵入し、シート供給部1とは反対の側(反転部9の側)では切換器24は経路から退避する。これにより、反転部9から第2導入経路を通って図の水平右方向(第2方向という)に向かって送られてくるシートSは、第1デカールローラ対30のニップ位置を過ぎたところで切換器24の斜面に当接して、図の右上方向にその進行方向を変える。シートSは無理なストレスを受けることなく進行する向きが変えられる。
【0056】
ステップS23では、反転部9からシートを供給開始する。シートSの先端は第2導入経路で第2導入ローラ対22でニップされ、第1デカールローラ対30でニップされ、切換器24で進行方向が変化して、ニップ解除されている第3デカールローラ対50の間を通過する。図13は、離間状態にある第3デカールローラ対50の間隙26を通過した位置まで来た状態を示している。
【0057】
ステップS24では、図13の状態からさらに搬送が進んでシートSの先端が排出ローラ対23でニップされたところで、シート搬送をいったん停止させる。
【0058】
ステップS25では、デカールローラ20および第2導入ローラ対22を逆回転させ、シートSをこれまでと逆向きに送り戻す動作を開始する。
【0059】
ステップS26では、カム42と押圧ばね43によって第3ピンチローラ51を移動させ、第3デカールローラ対50でシートSをニップさせる。この動作によりシートはSはデカールローラ20に巻きついて巻きついた部分にデカール力が付与される。シートSはデカールローラ20を頂点として90度よりも小さな角度(鋭角)で、反転部9でのシートの巻き方向とは逆向きに湾曲した状態となる。
【0060】
シートSは第1デカールローラ対30、第3デカールローラ対50でニップされた状態のまま送り戻される。シートSは反転部9でのシートの巻き方向とは逆向きに湾曲した状態(デカール力が作用した状態)を維持して搬送される。
【0061】
ステップS27では、この状態からさらにシートSの先端が第1デカールローラ対30のニップ位置から引き抜かれるまで送り戻してシート搬送を停止させる。このように、シートSの先端から所定の長さの領域がデカールローラ20でカールの向きとは逆向きに湾曲しながらデカールローラ20を通過することでシートSの先端のカールが矯正される。
【0062】
ステップS28では、第3デカールローラ対50のニップを再び解除する。次いで、ステップS29では、シートを再び順方向に搬送再開する。シート先端が第3デカールローラ対50を通過して排出ローラ対23でニップされたら、第3デカールローラ対50をニップ状態に切り換える。そして、シートの搬送を続けてデカール部2からシートを排出させる。図14はシートS先端のデカール動作後にシートSがデカール部2を通過して、プリント部4に送られている様子を示す。このときも、シートSはデカールローラ20に対して鋭角で巻きついて湾曲し、反転部9から供給されるシートSのすべての領域にもデカール力が作用する。
【0063】
第1面へのプリントが済んで反転部9の巻取回転体に巻き取られるシートは、シート供給部1のロールR1またはR2と同様に、シートの第1面が外側(外周)となるように巻き取られている。反転部9(第2のシート供給部)からデカール部2の第1デカールローラ対30のニップ位置には、シート供給部1(第1のシート供給部)の導入方向(第1方向)とは反対方向(第2方向)から導入される。そのため、デカール部2を通過したシートは表裏が反転して、プリント部4においてはシートの第2面がプリントヘッド14に対向する。
【0064】
以上説明したように、共通のデカール部2によって、表面プリント(第1のシート供給部であるシート供給部1からシート供給)と裏面プリント(第2のシート供給部である反転部9からのシート供給)とで異なるデカール動作を行なうようになっている。
【0065】
なお、使用するシートの種類によってはデカール動作が必要ないものもある。その場合は、図4におけるステップS14〜ステップ18ならびにステップS24〜ステップS28はスキップすればよい。
【0066】
ところで、プリント動作シーケンスの中で、何らかの理由によりシート搬送が停止することがある。例えば、画像形成前に画像データ処理のためのシート搬送を一時的に停止させたり、シートSをシート供給部1または反転部9に送り戻す動作の前に一時的にシート搬送を停止する。デカール部2にシートSが存在してカール矯正を行っている状態で長期間シート搬送が停止すると、その部分にだけデカール力が作用し続けるので、シートSには局所的に逆向きの曲げ癖(逆カール)がついてしまう畏れがある。これを避ける手法について以下説明する。
【0067】
図5は、カール矯正中にシート搬送を停止する場合のデカール部2の動作シーケンスを示すフローチャートである。カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送を停止する場合に本シーケンスが実行される。所定期間は、これ以上長く搬送停止するとプリントに影響を及ぼすだけの曲げ癖が付与される畏れがある期間を設定する。
【0068】
デカール部2の動作は、表面プリントか裏面プリントかでシーケンスが異なる。シート搬送を停止させる際には、ステップS100では、現在のプリントモードを認識して、表面プリントであればステップS101に移行し、裏面プリントであればステップS111へ移行する。
【0069】
シートSはシート供給部1から第1導入ローラ対21を経て導入されている。ステップS101では、デカールローラ20よりも下流側に位置する排出ローラ対23を停止させる。なお、それ以外の第1導入ローラ対21およびデカールローラ20は駆動を続ける。ステップS102では、第2ピンチローラ対40のニップを解除する。すなわち、図10に示すように、第2ピンチローラ41をデカールローラ20から離間させ、シートSがデカールローラ20に巻き付く強制力を開放する。
【0070】
ステップS103では、シートSの屈曲のしやすさを、制御部が認識しているシート種類から判断する。例えば、シートSの剛性が大きい場合には局所的な曲げ癖がつきやすいので、デカール力を与え続けることは避ける必要がある。判断がYes(屈曲しやすいシート)の場合はステップS104に移行し、判断がNo(屈曲しにくいシート)の場合はステップS104はスキップしてステップS105に移行する。
【0071】
ステップS104では、第1ピンチローラ対30のニップを解除する。すなわち、第1ピンチローラ31をデカールローラ20から離間させる。ステップS105では、ステップS101における排紙ローラ対23の駆動停止から所定時間(T1)経過した後に、第1導入ローラ対21およびデカールローラ20の駆動を停止させる。
【0072】
ステップS104をスキップしてステップS105を実行した場合には、図11に示すように、第1ピンチローラ対30はニップを維持し、且つ第2ピンチローラ対40はニップが解除された状態となる。このため、デカールローラ20への巻きつきが一部解除されて緩むので、デカール力の作用が一部緩和されて、シートSに局所的な曲げ癖が付与されることが防止される。シートSは元々曲げ癖がつきにくい性質なので、デカール力の一部緩和であっても支障はない。
【0073】
ステップS103、ステップS104、ステップS105の順にシーケンスを実行した場合は、図12に示すように、第1ピンチローラ対30および第2ピンチローラ対40の両方がニップが解除された状態となる。このため、デカールローラ20への巻きつきがすべて解除されて緩むので、デカール力の作用がほぼ無くなり、シートSが曲げ癖がつきやすい性質であっても局所的な曲げ癖が付与されることが防止される。
【0074】
一方、ステップS100で裏面プリントと判断してステップS111に移行した場合は、以下のようなシーケンスを実行する。
【0075】
シートSは反転部9から第2導入ローラ対22を経て導入されている。ステップS111では、排出ローラ対23を停止させる。なお、それ以外の第2導入ローラ対22およびデカールローラ20は駆動を続ける。ステップS112では、第3ピンチローラ対50のニップを解除する。すなわち、第3ピンチローラ51をデカールローラ20から離間させ、シートSがデカールローラ20に巻き付く強制力を開放する。
【0076】
ステップS113では、シートSの屈曲のしやすさを、制御部が認識しているシート種類から判断する。判断がYes(屈曲しやすいシート)の場合はステップS114に移行し、判断がNo(屈曲しにくいシート)の場合はステップS114はスキップしてステップS115に移行する。
【0077】
ステップS114では、第1ピンチローラ対30のニップを解除する。すなわち、第1ピンチローラ31をデカールローラ20から離間させる。ステップS115では、ステップS111における排紙ローラ対23の駆動停止から所定時間(T2)経過した後に、第2導入ローラ対22およびデカールローラ20の駆動を停止させる。
【0078】
ステップS114をスキップしてステップS115を実行した場合には、図15に示すように、第1ピンチローラ対30はニップを維持し、且つ第3ピンチローラ対50はニップが解除された状態となる。このため、デカールローラ20への巻きつきが一部解除されて緩むので、デカール力の作用が一部緩和されて、シートSに局所的な曲げ癖が付与されることが防止される。シートSは元々曲げ癖がつきにくい性質なので、デカール力の一部緩和であっても支障はない。
【0079】
ステップS113、ステップS114、ステップS115の順にシーケンスを実行した場合は、第1ピンチローラ対30および第3ピンチローラ対50の両方がニップが解除された状態となる。このため、デカールローラ20への巻きつきがすべて解除されて緩むので、デカール力の作用がほぼ無くなり、シートSが曲げ癖がつきやすい性質であっても局所的な曲げ癖が付与されることが防止される。
【0080】
図6は、シートシート搬送を再開する際のデカール部の動作シーケンスを示すフローチャートである。デカール部2の動作は、表面プリントか裏面プリントかでシーケンスが異なる。ステップS200では、現在のプリントモードを認識して、表面プリントであればステップS201に移行し、裏面プリントであればステップS211へ移行する。
【0081】
ステップS201では、排出ローラ対23を駆動開始させる。ステップS202では、排出ローラ対23の駆動開始から所定時間(T3)経過した後に、第1導入ローラ対21およびデカールローラ20の駆動を開始させる。所定時間(T3)は、デカールローラ20へのシートの巻きつき緩緩みが解消されるだけの時間とする。ステップS203では、第2ピンチローラ対40および第1ピンチピンチローラ対30をともにニップ状態にしてシートSを挟持させる。元々第1ピンチローラ対30がニップ状態であれば、第2ピンチローラ対40だけをニップ状態に切り替える。こうして、デカール部2が通常のデカール力を付与する状態に復帰し、プリント動作を再開する。
【0082】
一方、ステップS200で裏面プリントと判断した場合は、ステップS211で排出ローラ対23を駆動開始させる。ステップS212では、排出ローラ対23の駆動開始から所定時間(T4)経過した後に、第2導入ローラ対22およびデカールローラ20の駆動を開始させる。所定時間(T4)は、デカールローラ20へのシートの巻きつき緩緩みが解消されるだけの時間とする。ステップS213では、第3ピンチローラ対50および第1ピンチピンチローラ対30をともにニップ状態にしてシートSを挟持させる。元々第1ピンチローラ対30がニップ状態であれば、第3ピンチローラ対50だけをニップ状態に切り替える。こうして、デカール部2が通常のデカール力を付与する状態に復帰し、プリント動作を再開する。
【0083】
以上説明した実施形態は、シート供給部1を第1のシート供給部、反転部9を第2のシート供給部とみなして、いずれか一方から供給されるシートに対して共通のデカール部2で適切なデカール動作を行なうものである。両面プリントにおいて2度のカール矯正を行なうことを可能としたコンパクトなデカール機構を備えたプリント装置が実現される。これにより高品質の両面プリントが可能となる。加えて、カール矯正中にシート搬送が停止する場合は、デカールローラと少なくとも一部のピンチローラとのニップ状態が解除され、デカール力の作用が緩和される。このため、シートに局所的な曲げ癖が付くことが防止される。
【0084】
なお、本発明はこれに限らず、反転部9が未使用のロールR3を供給するものとして、ロールR1(またはR2)とロールR3のいずれか一方から未使用のシートを供給して片面にプリントするような系においても、適用することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 シート供給部
2 デカール部
4 プリント部
13 制御部
14 プリントヘッド
20 デカールローラ
21 第1導入ローラ対
22 第2導入ローラ対
23 排出ローラ対
30 第1デカールローラ対
31 第1ピンチローラ
40 第2デカールローラ対
41 第2ピンチローラ
50 第3デカールローラ対
51 第3ピンチローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面プリントを行なうことが可能なプリント装置であって、
ロール状に巻かれたシートを保持して供給するためのシート供給部と、
供給されるシートをカール矯正するデカール部と、
前記デカール部を通過したシートにプリントを行なうプリント部と、
前記プリント部でプリントされたシートを巻き取ってシートの表裏を反転させる反転部と、を有し、
前記デカール部は、デカールローラと、前記デカールローラの周囲に配置されそれぞれ前記デカールローラとの間でニップ状態を形成することが可能な、第1ピンチローラおよび前記第1ピンチローラの両側の第2ピンチローラおよび第3ピンチローラを有し、
両面プリントにおいては、前記シート供給部から送り出されたシートは前記デカール部にてデカールされ前記プリント部で第1面にプリントが行なわれて前記反転部に巻き取られ、次いで、前記反転部から送り出されたシートは再び前記デカール部にてデカールされ前記プリント部で前記第1面の背面側の第2面にプリントが行なわれるように制御され、
前記シート供給部から供給されたシートは、前記第1ピンチローラと前記デカールローラとのニップ位置に第1方向から導入されて、前記第1ピンチローラ、前記第2ピンチローラの順に前記デカールローラとの間にニップされて前記プリント部に送られるように制御され、且つ、カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、前記デカールローラと前記第2ピンチローラとのニップ状態が解除されるように制御され、
前記反転部から供給されたシートは、前記第1ピンチローラと前記デカールローラとのニップ位置に前記第1方向とは反対の第2方向から導入されて、前記第1ピンチローラ、前記第3ピンチローラの順に前記デカールローラとの間にニップされて前記プリント部に送られるように制御され、且つ、カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、前記デカールローラと前記第3ピンチローラとのニップ状態が解除されるように制御される
ことを特徴とするプリント装置。
【請求項2】
カール矯正中にシート搬送が停止する場合に、前記デカールローラと前記第1ピンチローラとのニップ状態も解除されるように制御されることを特徴とする、請求項1記載のプリント装置。
【請求項3】
シートの種類の応じて、前記デカールローラと前記第1ピンチローラとのニップ状態が解除されるか否かが制御されることを特徴とする、請求項2記載のプリント装置。
【請求項4】
前記デカール部は、前記シート供給部から供給されたるシートを前記デカールローラと前記第1ピンチローラのニップ位置に導入する第1導入ローラ対と、前記反転部から供給されるシートを前記デカールローラと前記第1ピンチローラのニップ位置に導入する第2導入ローラ対と、シートをニップして前記プリント部に送り出すための排出ローラ対を有することを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載のプリント装置。
【請求項5】
前記デカール部において、
前記供給部から供給されるシートをカール矯正中にシート搬送が停止する際には、先に前記排出ローラの駆動が停止し、次いで、前記第2ピンチローラと前記デカールローラとのニップが解除され、且つ、前記第1導入ローラの駆動が停止するように制御され、
前記反転部から供給されるシートをカール矯正中にシート搬送が停止する際には、先に前記排出ローラの駆動が停止し、次いで、前記第3ピンチローラと前記デカールローラとのニップが解除され、且つ、前記第2導入ローラの駆動が停止するように制御されることを特徴とする、請求項4記載のプリント装置。
【請求項6】
前記デカール部において、
カール矯正中に搬送が停止したシートの搬送を再開する際には、先に前記排出ローラが駆動を開始し、次いで、前記第1導入ローラが駆動を開始し且つ前記第2ピンチローラと前記デカールローラがニップ状態に切り替わる、もしくは、前記第2導入ローラが駆動を開始し且つ前記第3ピンチローラと前記デカールローラがニップ状態に切り替わるように制御されることを特徴とする請求項5に記載のプリント装置。
【請求項7】
第1のシート供給部または第2のシート供給部から供給されるシートをカール矯正するデカール装置であって、
デカールローラと、前記デカールローラの周囲に配置されそれぞれ前記デカールローラとの間でニップ状態を形成することが可能な、第1ピンチローラおよび前記第1ピンチローラの両側の第2ピンチローラおよび第3ピンチローラを有し、
前記第1のシート供給部から供給されたシートは、前記第1ピンチローラと前記デカールローラとのニップ位置に第1方向から導入されて、前記第1ピンチローラ、前記第2ピンチローラの順に前記デカールローラとの間にニップされてシート搬送が行われ、且つ、カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、前記デカールローラの周囲のシートの少なくとも一部のニップ状態が解除されるように制御され、
前記第2のシート供給部から供給されたシートは、前記第1ピンチローラと前記デカールローラとのニップ位置に前記第1方向とは反対の第2方向から導入されて、前記第1ピンチローラ、前記第3ピンチローラの順に前記デカールローラとの間にニップされてシート搬送が行われ、且つ、カール矯正中に所定期間よりも長くシート搬送が停止する場合は、前記デカールローラの周囲のシートの少なくとも一部のニップ状態が解除されるように制御される
ことを特徴とするデカール装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2011−240997(P2011−240997A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111537(P2010−111537)
【出願日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】