説明

プリント配線基板およびマルチワイヤー配線基板

【目的】高周波特性に優れ、耐ノイズ性に良好なプリント配線基板およびマルチワイヤー配線基板を提供する。
【構成】多層のプリント配線基板において、該プリント配線基板の内層に信号線となる回路パターンを形成するとともに、該信号線を含む回路パターンを絶縁性樹脂等で囲んだ後、電源線や接地線に接続された導電性樹脂によって面状パターンにて囲って疑似同軸構造とした。また、マルチワイヤー配線基板布線層の、アンダーレイプリプレグやオーバーレイプリプレグまたは樹脂層および接着剤等に導電材料を使用し、この層で絶縁被覆ワイヤーを囲って同軸構造にした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、プリント配線基板およびマルチワイヤー配線基板に関し、特に、高周波特性に優れ、耐ノイズ性に良好なプリント配線基板およびマルチワイヤー配線基板に関する。
【0002】
【従来の技術】以下、図面を参照して従来のプリント配線基板およびマルチワイヤー配線基板を説明する。図7は従来の多層プリント配線基板の構成の一例を示す断面図である。即ち、プリント配線基板10は絶縁層となる基板(プリプレグ)11の表面に電源線,接地線等の銅箔パターン層12を形成し、その上に絶縁層14を介して信号線および回路パターンの銅箔パターン層15を形成したものである。このため、信号線を形成したは銅箔パターン層15の信号線はストリップライン構造であって、同軸構造とはなっていない。
【0003】図8は、従来のマルチワイヤー配線基板の構成の一例を示したもので、この断面図に示すように、従来のマルチワイヤー配線基板21は内層となる電源線またはグランド線となる銅箔を有する基板22に、布線用絶縁性接着剤25aと絶縁性アンダーレイプリプレグ24aが貼り合わせられ、ここに絶縁被覆ワイヤー26を布線し、その後、この上を絶縁性オーバーレイプリプレグ27aにより覆われて構成される。このため、絶縁被覆ワイヤー26はストリップライン構造であり、この例の場合も同軸構造とはなっていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この種の配線基板は、実装される部品の高速化が進み、実装密度が高密度してきており、信号線間の電磁結合が密となるため、静電誘導、電磁誘導によるノイズやクロストークの影響を受けやすく、また、近傍に布線された信号線や絶縁被覆ワイヤー、配線パターンおよび部品などの影響により信号線や絶縁被覆ワイヤーの特性インピーダンスが不均一になり、信号線や絶縁被覆ワイヤーに流れる信号に反射波が生じ、回路動作時の誤動作や電磁波障害の原因となり問題である。また、基板自身には遮蔽層も無く、外部から静電誘導等の外来ノイズを受けやすいので、導電性シールドケース等を取り付けて遮蔽を行っていた。なお、上記問題点を解決する一方法として、従来よりプリント配線基板やマルチワイヤー配線基板に代えて極細同軸線を用いたマルチワイヤー配線基板が提案されているが、この方式は布線が難しく配線基板が高価になる傾向があった。
【0005】この発明はこのような点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、プリント配線基板においては、信号線を疑似同軸構造とすることにより干渉や外部からの静電誘導ノイズを大幅に減少させることにある。また、マルチワイヤー配線基板においては、絶縁被覆ワイヤーを同軸構造により布線し、絶縁被覆線ワイヤーを干渉や外部からの静電誘導ノイズを大幅に減少させるマルチワイヤー配線基板を提供するにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、この発明では多層のプリント配線基板において、該プリント配線基板の内層に信号線となる回路パターンを形成するとともに、該信号線を含む回路パターンを絶縁性樹脂等で囲んだ後、電源線や接地線に接続された導電性樹脂によって面状パターンにて囲って疑似同軸構造とする。また、この発明の請求項2の発明は、マルチワイヤー配線基板布線層の、アンダーレイプリプレグやオーバイレイプリプレグまたは樹脂層および接着剤等に導電材料を使用し、この層で絶縁被覆ワイヤーを囲って同軸構造にしたマルチワイヤー配線基板である。即ち、コア配線基板上に布線された絶縁被覆ワイヤーを、埋め込み固定するためのアンダーレイプリプレグ,オーバーレイプリプレグまたは樹脂層や接着剤に導電性材料を使用したことにより、布線された絶縁被覆ワイヤーが同軸構造となるマルチワイヤー配線基板である。
【0007】
【作用】上記構成によって、多層のプリント配線基板にあっては、基板の内層に信号線を配置し、かつ、基板表面に導電性の面パターンを形成する際に、信号線両サイドも導電性樹脂で囲み込み疑似同軸構造のプリント配線基板となる。また、マルチワイヤー配線基板においては、絶縁被覆ワイヤーを囲って同軸構造とする。従って、信号線や絶縁被覆ワイヤーのインピーダンスを下げ、信号線間の電磁誘導による干渉を防止することができる。また、基板表面を電源線や接地線の面パターンで覆うことで隣り合わせとなる信号線をも遮蔽するために、この面パターンが静電遮蔽の役割を果し、外部の静電誘導ノイズを大幅に減少させることができる。
【0008】
【実施例】以下、図面に基づいてこの発明の実施例を説明する。図1は、この発明の実施例のプリント配線基板の構成を示す要部断面図である。即ち、プリント配線基板30は、絶縁層よりなる基板(プリプレグ)31の表層部に銅箔パターン層32が内層として形成される。例えば、一方の表面に形成される銅箔パターン層32が電源線となり、他方の表面に形成される銅箔パターン層32が接地線となる。このとき、両面とも電源線あるいは接地線であっても良い。また、この銅箔パターン層32は、信号線を含む回路パターンを構成しても良い。なお、銅箔パターン層32の表面は部品取付面や半田取付面を兼ねていても良い。
【0009】上記銅箔パターン層32の表面に面状に形成される導電性紫外線硬化型樹脂等からなる導電性プリプレグによる遮蔽層33aを設け、さらに絶縁性紫外線硬化型樹脂等からなる絶縁層34aを銅箔パターン層32の信号線回路パターンよりも幅広く形成し、この絶縁層34aの表層に銅箔パターン層32による信号線を含む回路パターン35を形成する。回路パターン35は無電解メッキやエッチング等により容易に回路パターンを構成することができる。しかる後に、絶縁層34aや回路パターン35の上に、さらに絶縁性紫外線硬化型樹脂等からなる絶縁層34bを形成する。
【0010】上記絶縁層34b上に形成される遮蔽層33bは導電性樹脂で構成され、信号線を含む回路パターン35を構成する銅箔パターン層32の信号線の間や両サイドに信号線に沿わせて銅箔パターン層32に及ぶ層を構成して得られる。なお、導電性プリプレグまたは導電性樹脂による遮蔽層33a,33bや絶縁層34a,34bは紫外線硬化型樹脂等を使用すれば容易にフォトエッチングが可能であり、回路パターンを構成することができる。導電性プリプレグ33aや導電性樹脂層による遮蔽層33bは銅箔パターン層32に接続され、この銅箔パターン層32が電源線の場合は電源線となり、銅箔パターン層32が接地線の場合は接地線となる。
【0011】なお、上記構成において工程を簡略化するために、導電性プリプレグによる遮蔽層33aを形成する工程を省略することも可能である。
【0012】次に、図2に基づいて第2実施例を説明する。この例では、図1に示すプリント配線基板30の導電性樹脂による遮蔽層33bの上に、さらに銅箔層またはメッキ等による遮蔽層36を形成したことを特徴とする。この銅箔層36を形成する場合、無電解メッキ後に電解銅メッキを施して形成しも良い。この例では、メッキ厚の確保に要する時間が短くて済み、経済的である。また、メッキ厚を厚くできることにより遮蔽効果が改善できる特徴を持たせることができる。
【0013】次に、図3に基づいて第3実施例を説明する。この例では、図1に示すプリント配線基板30の遮蔽層33bを成形する際に、絶縁層34aや34bを面状に形成した後、遮蔽層33bを形成するために側溝33cを形成したことを特徴とする。この側溝33cはフォトエッチングやNCドリル等による機械加工でも形成することができる。機械加工で施す場合、紫外線硬化型樹脂等からなる絶縁層34a,34bに代わり、プリント板に一般に使用されている基材(プリプレグ)でも構成が可能となり、フォトエッチング工程を使用しないでも実現することが可能となる。
【0014】次に、図4に基づいて第4実施例を説明する。この例では、基板を使わずに導電性プリプレグによる遮蔽層(基材)33aの表面に面状に形成される紫外線硬化型樹脂等からなる絶縁層34aを設け、この絶縁層34aの表層に銅箔層による信号線を含む回路パターン35をそれぞれ形成する。この銅箔層35は無電解メッキやエッチング等により容易に回路パターンを構成することができる。しかる後に、絶縁層34aや上記銅箔層35の上に、さらに紫外線硬化型樹脂等からなる絶縁層34bを形成させた後、紫外線硬化型樹脂等からなる導電性樹脂による遮蔽層33bを形成する。同上の手順によって各層を順次積み重ねて多層のプリント基板が形成される。この例によれば、基板を使用しないために柔軟性に富んだフレキシブルなプリント基板の作成が可能となる。なお、遮蔽層33a,33bの層間にプラスチックフィルムと銅箔層を対にした層等を挿入して構成してもかまわない。
【0015】次に、この発明の請求項2の発明のマルチワイヤー配線基板の実施例を説明する。図5はマルチワイヤー配線基板の構成を示す要部断面図、図6はその変形例を示す要部断面図である。この例では4層の場合を示している。即ち、4層マルチワイヤー配線基板41は基板コア42の両面に電源線またはグランド線となる面パターンを有する銅箔層43により挟み込まれて形成される。さらに、この導電層である銅箔層43の外側に導電性アンダーレイプリプレグまたは導電性樹脂層44や、導電性接着剤の層45が形成される。そして、この導電性接着剤の層45に絶縁被覆ワイヤー46が埋め込まれ、その上に導電性オーバーレイプリプレグまたは導電性樹脂層47で覆われて構成される。従って、絶縁被覆ワイヤー46と導電性アンダーレイプリプレグまたは導電性樹脂層44と導電性接着剤の層45および導電性オーバーレイプリプレグまたは導電性樹脂層47で同軸構造を構成する。また、図6に示すように、マルチワイヤー配線基板41に絶縁性プリプレグまたは接着剤49を介してスルーホール48を形成し、ここを利用して絶縁被覆ワイヤー46をそのまま通すことも可能である。
【0016】
【発明の効果】以上説明したとおり、この発明のプリント配線基板およびマルチワイヤー配線基板は、プリント配線基板の信号線が疑似同軸構造およびマルチワイヤー配線基板の絶縁被覆ワイヤーが同軸構造を有することで、それぞれの特性インピーダンスが小さく均一にすることが可能である。従って、信号線や絶縁被覆ワイヤーを流れる電流に反射波が少なくなり、それら相互間の電磁的干渉を小さくできる。また、静電誘導,電磁誘導によるノイズやクロストークの影響を受けにくく、回路動作時の誤動作や電磁波障害の問題が大幅に軽減される。さらに、プリント配線基板の信号線やマルチワイヤー配線基板の絶縁被覆ワイヤーに同軸線を使用した場合に比べ、従来のプリント配線基板やマルチワイヤー配線板の製造ラインで製造することが可能であり、同軸線のスルーホールへの接続処理も不要であり、安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明のプリント配線基板の第1実施例の構成を示す断面図である。
【図2】プリント配線基板の第2実施例の構成を示す断面図である。
【図3】プリント配線基板の第3実施例の構成を示す断面図である。
【図4】プリント配線基板の第4実施例の構成を示す断面図である。
【図5】この発明のマルチワイヤー配線基板の実施例の構成を示す断面図である。
【図6】図5の変形例の構成を示す断面図である。
【図7】従来のプリント配線基板の構成を示す断面図である。
【図8】従来のマルチワイヤー配線基板の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
30 プリント配線基板
31 基板(プリプレグ)
32 電源線または接地線の面パターン
33a,33b 導電性プリプレグまたは導電性樹脂による遮蔽層
33c 遮蔽層を形成するための側溝
34,34a,34b 絶縁層
35 銅箔パターン層
36 銅箔またはメッキ等の遮蔽層
41 マルチワイヤー配線基板
42 基板(コア)
43 銅箔パターン層
44 導電性アンダーレイプリプレグまたは導電性樹脂層
45 導電性接着剤
46 絶縁被覆ワイヤー
47 導電性オーバーレイプリプレグまたは導電性樹脂層
48 スルーホール
49 基板または絶縁性プリプレグまたは絶縁性樹脂層

【特許請求の範囲】
【請求項1】多層のプリント配線基板において、該プリント配線基板の内層に信号線となる回路パターンを形成するとともに、該信号線を含む回路パターンを絶縁性樹脂等で囲んだ後、電源線や接地線に接続された導電性樹脂によって面状パターンにて囲って疑似同軸構造としたことを特徴とするプリント配線基板。
【請求項2】マルチワイヤー配線基板布線層の、アンダーレイプリプレグやオーバーレイプリプレグまたは樹脂層および接着剤等に導電材料を使用し、この層で絶縁被覆ワイヤーを囲って同軸構造にしたことを特徴とするマルチワイヤー配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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