説明

プリント配線板のケーブル係止装置

【目的】 結束器具や共絞め部品を用いずに入出力ケーブルをプリント配線板などの端面から突出することなく処理できるものを得ること。
【構成】 入出力ケーブル13近傍の平板部分端面に、入出力ケーブル13を1本ずつ挿入するためのケーブル挿入口28と、多数本の入出力ケーブル13を収納するためのケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設ける。入出力ケーブル13をやや長目にして1本ずつケーブル挿入口28に挿入したときは、その弾力性による応力によってケーブル係止孔29の奥深く入り込む。入出力ケーブル13をやや短目にして挿入したときは、その撓み性による応力によってケーブル係止孔29の奥深くまで引き込まれる。収納された入出力ケーブル13はケーブル挿入口28から抜け出ることがない。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、多数本の入出力ケーブルを接続したプリント配線板を実装した電子機器において、入出力ケーブルがプリント配線板からできるだけ突出することのないように、かつ、簡単に係止するようにしたプリント配線板のケーブル係止装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、図5に示すように、電子機器に2枚のプリント配線板11を、互いにはんだ付け面12を向かいあわせ、間にサポート19を介在して実装した場合において、これらプリント配線板11の間を入出力ケーブル13で接続することが行なわれる。このような接続の場合、それぞれのプリント配線板11の部品実装面17に、直接多数本の入出力ケーブル13をはんだ付けしたり、コネクタ18などを介して入出力ケーブル13を接続したりする。
【0003】入出力ケーブル13の数が多くなると、組み立て作業に支障を来すとともに、絡まって断線その他の故障の原因になる恐れがある。そこで、従来、このような多数の入出力ケーブル13を結束するのに、プラスチック製の結束器具14が使用されてきた。この結束器具14は、図7(a)に示すように、一側面に係止歯部21を有する幅が数mmの可撓性のある帯部20で多数本の入出力ケーブル13に巻きつけ、結束器具14の先端を係止筒部22の挿入孔23に差し込み、他端から引きだすことによって係止歯部21を挿入孔23内の係止爪24に係止して結束するものである。また、(b)のように、係止筒部22の帯部20と反対側に固定孔16を穿設した突片部25を有するものがあり、これを用いると、プリント配線板11などにねじ15で固定できるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】以上のように、2枚のプリント配線板11の部品実装面17相互間、はんだ付け面12と部品実装面17との間、プリント配線板11と他の電子部品との間などを入出力ケーブル13で接続した場合において、結束器具14で結束しただけでは、図6に示すように、入出力ケーブル13がプリント配線板11の端面から外方に図中H部分だけ突出してしまい、依然として、組み立て作業に支障を来すとともに、絡まって断線その他の故障の原因になる恐れがあるという問題があった。
【0005】入出力ケーブル13がプリント配線板11の端面から外方に突出するのを防ぐためには、プリント配線板11の端面付近に結束器具取付け孔をあけ、この孔に図7(b)のような結束器具14を固定して入出力ケーブル13をできるだけプリント配線板11の端面に近付けて固定するとか、図8に示すように、プリント配線板11の端面に切欠き凹部26を形成し、この切欠き凹部26に入出力ケーブル13を収納するとともに、近辺のサポート19と一緒に結束器具14で結束することなどを行なわなければならない。しかし、このような方法であっても、結束器具14は必ず使用しなければならず、特に、図8の場合には、結束位置にサポート19などの共絞めのための部品が必要になるという問題があった。
【0006】本発明は、結束器具を用いることなく、かつサポートなどの共絞めのための部品がなくても入出力ケーブルがプリント配線板などの端面から外方に突出することなく入出力ケーブルを処理できるものを得ることを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、多数本の入出力ケーブル13を接続したプリント配線板11を実装した電子機器において、前記入出力ケーブル13近傍の平板部分端面に、前記入出力ケーブル13を1本ずつ挿入するためのケーブル挿入口28と、多数本の入出力ケーブル13を収納するためのケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設けてなることを特徴とするプリント配線板のケーブル係止装置である。
【0008】
【作用】入出力ケーブル13をやや長目にして1本ずつケーブル挿入口28に挿入すると、入出力ケーブル13はその弾力性による応力によってケーブル係止孔29の奥深く入り込む。同様にして複数本の入出力ケーブル13が順次ケーブル係止孔29に収納される。入出力ケーブル13をやや短目にして1本ずつケーブル挿入口28に挿入すると、入出力ケーブル13はその撓み性による応力によってケーブル係止孔29の奥深くまで引き込まれる。同様にして複数本の入出力ケーブル13が順次ケーブル係止孔29に収納される。収納された入出力ケーブル13はケーブル挿入口28から抜け出ることがない。
【0009】
【実施例】以下、本発明の一実施例を図面に基づき説明する。図1における電子機器においては、2枚のプリント配線板11が、互いにはんだ付け面12を向かいあわせ、間にサポート19を介在して実装されてる例を示している。これらプリント配線板11の部品実装面17の間に、直接多数本の入出力ケーブル13をはんだ付けしたり、コネクタ18などを介して入出力ケーブル13を接続したものとする。
【0010】本発明では、このような場合、プリント配線板11の端面とサポート19に近い位置に、ケーブル挿入口28とケーブル係止孔29からなるケーブル保持孔27が設けられる。前記ケーブル挿入口28は、プリント配線板11の端面に略垂直で、また前記ケーブル係止孔29は、プリント配線板11の端面に略平行とすることにより、略L字形のケーブル保持孔27が形成される。
【0011】入出力ケーブル13の外径が2mm以上など、折り曲げたときの弾力の大きいものに使用する場合には、図2に示すように、入出力ケーブル13のプリント配線板11への実装位置に近い側にケーブル挿入口28を形成し、このケーブル挿入口28から遠くなる方向にケーブル係止孔29を形成する。ケーブル挿入口28は、入出力ケーブル13の外径よりも20%程度大きくして入出力ケーブル13が挿入し易くする。入出力ケーブル13をやや長目にして1本ずつケーブル挿入口28に挿入すると、入出力ケーブル13はその弾力性による応力によってケーブル係止孔29の奥深く入り込む。同様にして複数本の入出力ケーブル13が順次ケーブル係止孔29に収納され、入出力ケーブル13がケーブル挿入口28から抜け出ることがない。
【0012】また、入出力ケーブル13の外径が2mm以下など、折り曲げたときの弾力の小さいものに使用する場合には、図3に示すように、入出力ケーブル13のプリント配線板11への実装位置から遠い側にケーブル挿入口28を形成し、このケーブル挿入口28から近くなる方向にケーブル係止孔29を形成する。ケーブル挿入口28は、入出力ケーブル13の外径よりも20%程度大きくして入出力ケーブル13が挿入し易くする。入出力ケーブル13をやや短目にして1本ずつケーブル挿入口28に挿入すると、入出力ケーブル13はその撓み性による応力によってケーブル係止孔29の奥深くまで引き込まれる。同様にして複数本の入出力ケーブル13が順次ケーブル係止孔29に収納され、入出力ケーブル13がケーブル挿入口28から抜け出ることがない。
【0013】前記ケーブル保持孔27のケーブル挿入口28は、図4に示すように、入口側の幅d1を入出力ケーブル13の外径よりも20%程度大きくし、出口側(ケーブル係止孔29との連通側)の幅d2を入出力ケーブル13の外径と略同じとするなど、入口側を広くしたテーパー状に形成すれば、入出力ケーブル13の挿入が円滑にできるとともに、一旦ケーブル係止孔29に挿入された入出力ケーブル13がケーブル挿入口28から抜け出るのを防止することができる。
【0014】前記実施例では、2枚のプリント配線板11間を入出力ケーブル13で接続する場合について説明したが、プリント配線板11からプリント配線板11以外の他の電子部品間に入出力ケーブル13を接続する場合についても用いることができる。また、プリント配線板11を構成する紙基材、ガラス繊維基材、フェノール樹脂、エポキシ樹脂など、どのような種類の材質であっても対応できる。
【0015】前記実施例では、ケーブル保持孔27をプリント配線板11に構成する場合について説明したが、これに限られるものではなく、金属シャーシー、発熱部品の放熱板などの平板であれば、絶縁性や耐熱性を考慮すれば、応用することができる。
【0016】前記実施例では、ケーブル挿入口28は、プリント配線板11の端面に略垂直で、またケーブル係止孔29は、プリント配線板11の端面に略平行とすることにより、略L字形のケーブル保持孔27を形成した場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、ケーブル挿入口28は、平板部分の端面に斜めとか曲線的に切り欠かれ、またケーブル係止孔29は、円形、楕円形、曲線、折線、角形など多数本の入出力ケーブル13が収納される空間を有するものであればどのような形状であってもよい。
【0017】
【発明の効果】本発明は、入出力ケーブル13近傍の平板部分に、ケーブル挿入口28と、ケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設けたので、結束器具14を用いることなく、かつサポート19などの共絞めのための部品がなくても、入出力ケーブル13がプリント配線板11の端面から外方に突出することなく入出力ケーブル13を処理でき、組み立て作業に支障を来したり、絡まって断線その他の故障の原因になる恐れがない。
【0018】ケーブル挿入口28は、入口側を広く、ケーブル係止孔29への出口側を狭いテーパー状としたので、入出力ケーブル13の挿入が円滑で、しかも一旦挿入した入出力ケーブル13が抜け出ることがない。
【0019】入出力ケーブル13の外径が太いものについては、入出力ケーブル13のプリント配線板11への実装部分から近い側にケーブル挿入口28を設けることにより、入出力ケーブル13はその弾力性による応力によってケーブル係止孔29の奥深く入り込み、複数本の入出力ケーブル13がケーブル係止孔29に収納され、入出力ケーブル13がケーブル挿入口28から抜け出ることがない。
【0020】入出力ケーブル13の外径が細いものについては、入出力ケーブル13のプリント配線板11への実装部分から遠い側にケーブル挿入口28を設け、この実装部分から近い方向に伸びるようにケーブル係止孔29を設けたので、入出力ケーブル13はその撓み性による応力によってケーブル係止孔29の奥深くまで引き込まれ、複数本の入出力ケーブル13がケーブル係止孔29に収納され、入出力ケーブル13がケーブル挿入口28から抜け出ることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるプリント配線板のケーブル係止装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】入出力ケーブル13の外径が太い場合の本発明のケーブル保持孔27の説明図である。
【図3】入出力ケーブル13の外径が細い場合の本発明のケーブル保持孔27の説明図である。
【図4】ケーブル挿入口28がテーパーを有する場合のケーブル保持孔27の説明図である。
【図5】従来のプリント配線板のケーブル係止装置の斜視図である。
【図6】図5の側面図である。
【図7】(a)は従来の結束器具14の第1例の断面図、(b)は従来の結束器具14の第2例の一部切り欠いた正面図である。
【図8】プリント配線板11に切欠き凹部26を設け、結束器具14でサポート19と共に入出力ケーブル13を結束した状態の斜視図である。
【符号の説明】
11…プリント配線板、12…はんだ付け面、13…入出力ケーブル、14…結束器具、15…ねじ、16…固定孔、17…部品実装面、18…コネクタ、19…サポート、20…帯部、21…係止歯部、22…係止筒部、23…挿入孔、24…係止爪、25…突片部、26…切欠き凹部、27…ケーブル保持孔、28…ケーブル挿入口、29…ケーブル係止孔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 多数本の入出力ケーブル13を接続したプリント配線板11を実装した電子機器において、前記入出力ケーブル13近傍の平板部分端面に、前記入出力ケーブル13を1本ずつ挿入するためのケーブル挿入口28と、多数本の入出力ケーブル13を収納するためのケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設けてなることを特徴とするプリント配線板のケーブル係止装置。
【請求項2】 多数本の入出力ケーブル13を接続したプリント配線板11を実装した電子機器において、前記入出力ケーブル13近傍の平板部分端面に、前記入出力ケーブル13を1本ずつ挿入するためのケーブル挿入口28と、多数本の入出力ケーブル13を収納するためのケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設けてなり、前記ケーブル挿入口28は、入口側を広く、ケーブル係止孔29への出口側を狭いテーパー状としたことを特徴とするプリント配線板のケーブル係止装置。
【請求項3】 多数本の入出力ケーブル13を接続したプリント配線板11を実装した電子機器において、前記入出力ケーブル13近傍の平板部分端面に、前記入出力ケーブル13を1本ずつ挿入するためのケーブル挿入口28と、多数本の入出力ケーブル13を収納するためのケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設け、入出力ケーブル13の外径の太いものについては、入出力ケーブル13のプリント配線板11への実装部分から近い側にケーブル挿入口28を設け、この実装部分から遠い方向に伸びるようにケーブル係止孔29を設けてなることを特徴とするプリント配線板のケーブル係止装置。
【請求項4】 多数本の入出力ケーブル13を接続したプリント配線板11を実装した電子機器において、前記入出力ケーブル13近傍の平板部分端面に、前記入出力ケーブル13を1本ずつ挿入するためのケーブル挿入口28と、多数本の入出力ケーブル13を収納するためのケーブル係止孔29とからなるケーブル保持孔27を設け、入出力ケーブル13の外径の細いものについては、入出力ケーブル13のプリント配線板11への実装部分から遠い側にケーブル挿入口28を設け、この実装部分から近い方向に伸びるようにケーブル係止孔29を設けてなることを特徴とするプリント配線板のケーブル係止装置。
【請求項5】 ケーブル保持孔27を設けた入出力ケーブル13近傍の平板部分は、プリント配線板11、金属シャーシー、発熱部品の放熱板などの平板であって絶縁性と耐熱性を具備したものからなる請求項1、2、3または4記載のプリント配線板のケーブル係止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開平7−326873
【公開日】平成7年(1995)12月12日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−142468
【出願日】平成6年(1994)6月1日
【出願人】(000138543)株式会社ユタカ電機製作所 (18)