説明

プリント配線板

【目的】 搭載した電子回路のノイズ対策を有効に行うことができ、同時にプリント配線板の全体を小型化することが可能なプリント配線板を提供すること。
【構成】 プリント配線板100に搭載されているゲートアレイ14の電源ラインあるいは信号ライン、および、モデム用コネクタ15、プリンタ用コネクタ16、キーボード用コネクタ17およびLCD駆動ケーブル18を介した信号ラインに分布定数型LCノイズフィルタ20が直列に接続されている。これにより、外部からプリント配線板100内の電子回路に侵入するノイズやプリント配線板100内で発生したノイズは、分布定数型LCノイズフィルタ10により良好に減衰除去される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプリント配線板に関し、特にノイズ対策を講じたプリント配線板に関する。
【0002】
【従来の技術】近年の電子技術の発達に伴い、電子回路は各種分野において幅広く用いられており、従って、これら各電子回路を外部からの影響を受けることなく安定して確実に作動させることが望まれる。
【0003】しかし、このような電子回路には、直接あるいは間接的に外部からノイズが侵入する。このため、電子回路を使用した各種電子機器に後動作が引き起こされる場合が少なくないという問題がある。
【0004】特に、電子回路は、直流電源としてスイッチングレギュレータを用いる場合が多い。従って、スイッチングなどの過渡電流により、または使用するデジタルICのスイッチング動作に起因する負荷変動により、スイッチングレギュレータの電源ラインには各種の周波数成分をもった大きなノイズが発生することが多い。そして、これらのノイズは、同じ機器内の他の回路へ電源ラインを介して、または輻射により伝播され誤動作やS/N比の低下などの悪影響を及ぼし、さらに近くで使用中の電子機器の誤動作を引き起こすことがある。
【0005】このため、従来のプリント配線板は、電子回路の電源ラインあるいは信号ライン上に必要に応じてLCノイズフィルタを搭載することにより、ノイズ対策を行っていた。
【0006】このLCノイズフィルタとしては、例えば図9(a)に構成を、同図(b)に等価回路を示すように、コア70に2組の巻線72,74を巻回し、これら巻線72,74の両端にコンデンサ76,78をそれぞれ並列に接続して構成されるものが知られている。
【0007】その他には、特開昭56−50507号公報に開示されたノイズフィルタが知られている。この従来技術に係る複合電子部品では、図10に示すよう、複数の絶縁体層80a,80b,80c等を構成することにより積層体を形成する。そして、前記各絶縁体層80a,80b等の層間に、導電パターン82a,82b,82cを設け、これにより所定のターン数のコイルLを形成する。また、前記絶縁体層80a,80b等の層間に、前記周回導電パターン82a,82cと間隔をあけて導電層84a,84bを配置し、これら導電層84a,84bと導電パターン82a,82cとの間にキャパシタンスCを形成する。
【0008】これにより、図11に示すようLおよびCからなる集中定数型のノイズフィルタを得ることができる。さらに、この従来技術では、LおよびCが積層体内に組み込まれているため、小型で軽量なLCノイズフィルタとして用いることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来のコア70に巻線を巻くタイプのLCノイズフィルタは、インダクタを構成するコア70および巻線72,74の部分が大きくなり、しかもインダクタとコンデンサ76,78とが別部品で構成されているため、フィルタ全体が大きくなってしまい、電子回路用のプリント配線板に搭載するには不向きであり、近年の電子機器の小型軽量化の要求を満足できないという問題点があった。
【0010】また、このタイプのLCノイズフィルタは、LおよびCが集中定数として形成されるため、良好な減衰特性を得ることができず、ノイズ対策が充分でなかった。
【0011】また、導電パターンを積層するタイプのLCノイズフィルタは、コイルを形成する導電パターン82a,82cの一部の直線部分に、キャパシタンスを形成する導電層84a,84bを隣接して設けるだけである。このため、コイルと導電層84との間のキャパシタンスCが極めて小さく、しかもキャパシタンスが集中定数的に形成されるため、良好な減衰特性を得ることができず、プリント配線板に搭載した電子回路のノイズ対策が充分でないという問題点があった。
【0012】本発明は、このような点に鑑みて創作されたものであり、搭載した電子回路のノイズ対策を有効に行うことができ、同時にプリント配線板の全体を小型化することが可能なプリント配線板を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するために、本発明のプリント配線板は、電子回路搭載用のプリント配線板において、電子回路の信号ラインまたは電源ラインの少なくとも一方に分布定数型LCノイズフィルタを設けたことを特徴とする。
【0014】
【作用】本発明において、プリント配線板に搭載された電子回路に侵入しようとする外部からのあるいはプリント配線板内部で発生するノイズは、この電子回路の信号ラインあるいは電源ラインに設けられた分布定数型LCノイズフィルタにより減衰除去されるため、搭載された電子回路は、ノイズの影響を受けることなく安定して動作することができる。
【0015】さらに、電子回路から発生するノイズが信号ラインに混入した場合でも、このノイズは、分布定数型LCノイズフィルタにより減衰除去され、プリント配線板内の他の電子回路にあるいはプリント配線板の外部に出力されることは未然に防止される。
【0016】このようにして、本発明によれば、プリント配線板に搭載された電子回路に侵入るノイズおよび電子回路が発生するノイズを除去し、搭載された電子回路のノイズ対策を有効に行うことが可能となる。
【0017】特に、本発明において、前記分布定数型LCノイズフィルタは、複数の絶縁層が積層された積層体と、前記積層体の層間に1の層間から他の層間にかけて周回し、互いに絶縁層を介して相対向する複数の導体と、を含み、前記各導体は独自にインダクタとして機能するとともに、各導体間にキャパシタが分布定数的に形成された積層型のフィルタとして形成することが好ましい。
【0018】これにより、このLCノイズフィルタを構成するコンデンサやコイルが一体的に形成され、LCノイズフィルタが小型化でき、プリント配線板の全体を小型化することが可能となる。
【0019】また、本発明において、前記積層型のフィルタは、請求項3記載のように、プリント配線板上に膜成形技術を用いてまたは印刷技術を用いて形成することが好ましい。これにより、プリント配線板そのものが、必要ヵ所にLCノイズフィルタを内蔵することになり、ノイズ対策を施したプリント配線板をより小型化することが可能となる。
【0020】
【実施例】次に本発明の好適な実施例を図面に基づき詳細に説明する。
【0021】第1実施例図1には、本発明が適用されたプリント配線板の好適な実施例が示されている。同図に示すプリント配線板100は、パーソナルコンピュータあるいはワードプロセッサ等に使用されるものであり、一枚の基板上に中央処理装置(CPU)やメモリ等の処理機能の全てが搭載されている。
【0022】プリント配線板100は、セラミックスあるいガラスエポキシ樹脂等でできた基板上に各種の電子部品が配置、配線されており、全体としてパーソナルコンピュータあるいはワードプロセッサ用の電子回路の要部を構成している。プリント配線板100上に搭載される電子部品としては、CPU10、メモリ12、ゲートアレイ14や各種の入出力用IC等がある。また、この各種の入出力用ICは、同図に示した各種のインタフェースを介して入出力機器と接続されている。具体的には、モデム用コネクタ15を介して外付けのモデム(図示せず)と接続され、プリンタ用コネクタ16を介してプリンタ(図示せず)と接続され、キーボード用コネクタ17を介してキーボード(図示せず)と接続され、LCD(液晶表示板)駆動ケーブル18によって備え付けのLCD(図示せず)に接続される。
【0023】また、実施例のプリント配線板100は、図1に点線で示した分布定数型のLCノイズフィルタ20を備えている。このLCノイズフィルタ20は、膜成形技術または印刷技術を用いて、プリント配線板100と一体的に形成したものである。本実施例では、ゲートアレイ14の電源ラインおよび信号ライン上、モデム用コネクタ15を介した信号ライン上、プリンタ用コネクタ16を介した信号ライン上、キーボード用コネクタ17を介した信号ライン上およびLCD駆動ケーブル18を介した信号ライン上にLCノイズフィルタ20を直列に挿入している。
【0024】これにより、電源ラインあるいは入力信号ラインを介してゲートアレイ14に侵入しようとするノイズや、出力信号ラインに出力される信号に含まれるノイズを有効に除去することができる。また、モデム用コネクタ15、プリンタ用コネクタ16を介して信号ラインに侵入しようとする、あるいは信号ラインからこれらのコネクタ15、16を介して外部に出力される信号に含まれるノイズを有効に除去することができる。また、キーボード用コネクタ17を介して信号ラインに侵入しようとするノイズを有効に除去することができる。また、LCD駆動ケーブル18を介して出力される駆動信号に含まれるノイズを有効に除去することができる。
【0025】特に、前記LCノイズフィルタ20は、分布定数型のLCノイズフィルタとして形成されているため、集中定数型のLCノイズフィルタを使用した場合に比べ、良好な減衰特性を得ることができ、各種ノイズを良好に除去することが可能となる。また、前記LCノイズフィルタ20は、膜成形技術または印刷技術によって一体的に成形されているため、コアに巻線を巻く場合やコイルとコンデンサを組み合わせてノイズフィルタを形成する場合に比べ、素子自体を小型化することができ、これによりプリント配線板100全体の小型化が可能となる。特に、最近では、パーソナルコンピュータやワードプロセッサも、デスクトップ型からラップトップ型やノート型に小型化される傾向にあり、プリント配線板100が小型化されることにより、例えばノート型の開発や高機能化にも容易に対応することができるようになる。
【0026】本実施例のLCノイズフィルタ20は、複数の絶縁層が積層された積層体と、前記積層体の一の層間から他の層間に掛けて周回し互いに絶縁層を介して相対向する複数の導体とを含み、前記各導体は独自にインダクタとして機能すると共に、各導体間にキャパシタが分布定数的に形成された積層型のフィルタとして形成されている。
【0027】このような分布定数型のLCノイズフィルタとしては、例えば特願平2−11540、特願平2−7590、特願平2−143427、特願平2−227360、特願平2−411247、特願平2−280521、特願平3−50600等の出願に係るものを用いることができる。
【0028】本実施例において、前記LCノイズフィルタ20は、図1に示すよう、プリント配線板100と一体的に形成されている。このため、プリント配線板100の一部としてこのLCノイズフィルタ20を形成した後、その上に各種電子部品を配置することができる。
【0029】図2〜図5には、薄膜形成技術を用いた、この積層型のLCノイズフィルタ20の製造工程の好適な一例が示されている。なお、各信号ラインや電源ラインのそれぞれに別個に対応する積層型の各LCノイズフィルタ20は同時に形成されるが、ここでは理解を容易にするため、1つのLCノイズフィルタ20のみを図示し、他のLCノイズフィルタ20の説明は省略する。おな、以下の図2〜図4に示したプリント配線板100は、図1に示したプリント配線板100の一部(点線部分)を示したものである。
【0030】実施例のLCノイズフィルタ20は、まず図2(a)に示すよう、プリント配線板100の表面に、第2の導電性エレメント54−1を反時計方向に巻くよう被覆形成する。
【0031】次に、図2(b)に示すよう、プリント配線板100の表面に、第2の導電性エレメント54−1の端部が露出するよう絶縁薄膜200−1を被覆形成する。
【0032】次に、図2(c)に示すよう、第2の導電性エレメント54−1と電気的に接続された第2の導電性エレメント54−2を被覆形成する。これと同時に、絶縁薄膜200−1を介し第2の導電性エレメント54−1と相対向する第1の導電性エレメント44−1を被覆形成する。
【0033】次に、図2(d)に示すよう、各導電性エレメント54−2,44−1の端部が露出するよう絶縁薄膜200−2を被覆形成する。
【0034】次に図3(a)に示すよう、この絶縁薄膜200−2上に、前記導電性エレメント44−1,54−2と絶縁薄膜200−2を介して相対向するよう、第2の導電性エレメント54−3,第1の導電性エメント44−2を被覆形成する。
【0035】このような薄膜形成工程と、エレメント形成工程とを、図3(b)〜図4(b)に示すよう繰返して行い積層体30を形成する。
【0036】このようにして積層型のLCノイズフィルタ20が形成され、プリント配線板100上に現れた端子42a,42b(第1の導電性エレメント44−1、44−4の端部)を信号ラインあるいは電源ラインに直列に挿入し、端子52(第2の導電性エレメント54の一端)を接地する。
【0037】これにより、図5に示すよう、実施例の積層型LCノイズフィルタ20において、第1の導電性エレメント44によって構成される第1の導体40は、その両端が端子42a,42bに接続され、所定のインダクタンスL1 を持ったコイルとして機能することになる。同様に、第2の導電性エレメント54によって構成される第2の導体50は、その一端がアース端子52aに接続され、所定のインダクタンスL2 を持ったコイルとして機能することになる。
【0038】しかも、前述したように、これら第1,第2の導体40,50の間には、キャパシタンスCがほぼ連続的にしかも分布定数的に形成されるものと推定される。
【0039】従って、本発明の積層型LCノイズフィルタ20は、従来の集中定数型LCノイズフィルタ20にはない優れた特性を発揮することができ、この積層型LCノイズフィルタ20を、LCノイズフィルタとして用いることにより、広帯域にわたって優れた減衰特性を発揮することができる。
【0040】これに加えて、本発明によれば、第1および第2の導体40,50が、絶縁薄膜200を介して相対向している。従って、図10に示した従来の積層型LCノイズフィルタに比べ、十分大きなキャパシタンスCを得ることができ、この面からも従来の積層型LCノイズフィルタに比べ、良好な減衰特性をもったLCノイズフィルタとして使用可能であることが理解されよう。
【0041】また、プリント配線板100に本実施例のような分布定数型LCノイズフィルタ20を膜成形技術を用いて形成することにより、部品点数を増やさずに、良好なノイズ対策を講ずることができる。
【0042】なお、前記各実施例のLCノイズフィルタ20は、必要に応じキャパシタ導体として機能する第2の導体50を複数に分割し、各分割区間の一端側を接地端子52aと接続するようにしてもよい。
【0043】第2実施例次に本発明のプリント配線板の好適な第2実施例を説明する。なお前記第1実施例と対応する部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0044】前記第1実施例では、分布定数型LCノイズフィルタ20として、膜成形技術を用いた積層型のフィルタを用いた。これに対して本実施例では、図6に示すよう、チップ型のフィルタを用いたことを特徴とする。
【0045】図7および図8には、本実施例の回路に用いられるチップ型のLCノイズフィルタ20の好適な一例が示されている。なお、図7および図8に示したLCノイズフィルタ20は、図6において各信号ラインや電源ラインのそれぞれに用いられる複数のLCノイズフィルタ20の中の1つを示したものである。
【0046】図7に示すよう、実施例のLCノイズフィルタ20は、複数の絶縁板32−1,32−2…32−4を積層して形成された積層体30と、前記絶縁板32の層間36−2,36−3,36−4に設けられ所定ターン数のコイルを形成する第1の導体40と、前記絶縁板32の層間36−1,36−2,36−3に、絶縁板32を介して前記第1の導体40と相対向するよう設けられた第2の導体50とを有する。
【0047】前記各絶縁板32は、必要に応じて各種絶縁材料を用いて形成すればよい。実施例ではセラミクスを用いて形成されている。
【0048】実施例の積層体30では、前記第1の導体40および第2の導体50の短絡を防止するため、各絶縁板30を層間絶縁シート34−1,34−2,34−3を介して積層している。
【0049】そして、最上層の絶縁板32−1および最下層の絶縁シート34−3の表面には、第1の導体40の端子42a,42bと、第2の導体50の端子52aが被覆形成されている。
【0050】また、前記第1の導体40および第2の導体50は、前記絶縁板32の層間36−1,36−2…36−4に、一の層間から他の層間にかけて連続して周回する複数の第1の導電性エレメント44−1,44−2,44−3および第2の導電性エレメント54−1,54−2,54−3から構成されている。
【0051】ここにおいて特徴的なことは、前記第1および第2の導電性エレメント44,54が、絶縁板32を介して相対向し、両者の間にキャパシタンスをほぼ連続的に形成することにある。
【0052】これにより、第1および第2の導体40,50は、それぞれ所定ターン数のコイルとして機能すると共に、これら第1および第2の導体40,50の間には絶縁板32を介しキャパシタンスCがほぼ連続的に形成され、しかもこのキャパシタンスCは第1および第2の導体40,50の間に分布定数的に形成されるものと推定される。
【0053】ここにおいて、実施例の第1,第2の導電性エレメント44,54は、例えば印刷、蒸着、メッキ等の手法を用いて絶縁板32の両面に互いに相対向するよう被覆形成されている。また接続用の導電パターン46,56も、絶縁板32上に被覆形成されている。
【0054】そして、絶縁板32−1の表面に形成された端子52aは、スルーホール33を介して絶縁板32−2上に設けられた第2の導電性エレメント54−1に接続される。
【0055】同様に、絶縁板32−1の表面に設けられた一方の入力端子42−bは、各絶縁板32−1,32−2に設けられたスルーホール33および導電パターン46を介して、絶縁板32−2の裏面側に設けられた第1の導電性エレメント44−1の端部に接続されている。同様に最下層の層間絶縁シート34−3上に設けられた他方の入出力端子42aは、スルーホール35を介し、絶縁板32−4上に被覆形成された第1の導電性エレメント44−3に接続されている。
【0056】また、各絶縁板32−2,32−3,32−4上に被覆形成された第1の導電性エレメント44および第2の導電性エレメント54は、これら各絶縁板32上に形成されたスルーホール33,導電パターン46,56および層間絶縁シート34上に設けられたスルーホール35を介して、一つの層間36から他の層間36にかけて周回するよう電気的に接続されている。
【0057】これにより、前記図5に示すようなLおよびCからなる分布定数型の等価回路をもった3端子型LCノイズフィルタ20を得ることができる。従って、本実施例のLCノイズフィルタ20は、広帯域にわたり良好な減衰特性を発揮することができる。
【0058】なお、本実施例のLCノイズフィルタ20は、ノーマルモード型として用いているが、必要に応じ、前記第2の導体50の両端に入出力端子52aを設けることによりコモンモード型としても用いることができる。
【0059】図8には、このようにして形成されたノーマルモード型LCノイズフィルタ20の外観斜視図が示されている。実施例では、図7に示す絶縁板32および層間絶縁シート34を積層固定して積層体30を形成した後、この積層体30の表面および裏面側に形成された入力端子42a,42aを接続し1つの端子として機能するよう導電材を被覆形成する。同様に、入出力端子42b,42bも1つの端子として機能するよう導電材を被覆形成する。さらに同様にして端子52aも導電材で被覆する。
【0060】これにより、積層体30の外周面に2個の入出力端子42a,42bと、1個のアース端子52とが設けられた3端子型のノイズフィルタとして形成される。しかもこのノイズフィルタは、SMDタイプ(サーフェス・マウント・ディバイス)の素子として形成されるため、その取扱が極めて容易なものとなる。
【0061】第3実施例次に、本発明のプリント配線板に使用される分布定数型LCノイズフィルタ20の他の1例を、特願平2−280521にかかるフィルタを例に取り説明する。なお、前記各実施例では、絶縁板を積層することにより積層体30を形成したが、本実施例では、誘電体シートを導電体と共に折り畳んで積層体を形成することを特徴とする。
【0062】図12、図13には、本実施例の回路に用いられるチップ型LCノイズフィルタの好適な1例が示されている。
【0063】実施例LCノイズフィルタを製造する場合には、まず図13に示す第1の絶縁シート120を形成する。この第1の絶縁シート120は、折畳んで積層される複数の折畳み部122−1,122−2…122−8を、折り曲部124を介して連続的に配列して形成されている。前記各折り曲部124には、その折曲げを容易にするために予めミシン目が形成されている。また、実施例の折畳み部122は、正方形状に形成されているが、折畳んだ場合に互いに積層されるならば、その形状は任意に形成することができる。
【0064】そして、この第1の絶縁シート120の表面120a側、裏面120b側に、図13に示すパターンの第1の導体40,第2の導体50を設ける。
【0065】前記第1の導体40は、連続的に配列された各折畳み部122−1,122−2…122−8の表面120a側に、その一部を切欠いたリング状のインダクタ用導電体142−1,142−2…142−7を交互にしかも逆向きに連続して設け、第1の絶縁シート20を図12に示すように交互にしかも逆向きに折畳んで積層したときに所定ターン数(実施例では4ターン)のコイルを形成する。そして、前記第1の導体40の両端に入出力端子42a,42bを設ける。
【0066】また、前記第2の導体50は、各折畳み部122−1,122−2…122−7の裏面側20bに設けられたキャパシタ用導電体156−1,156−2…156−7から構成されている。各キャパシタ用導電体156−1,156−2…156−7は、前記インダクタ用導電体142−1,142−2…142−7と相対向するよう連続して設けられ、第1の導体40との間にキャパシタンスを形成している。そして、この導体50一端側は、折畳み部22−7から22−8の中央まで延び、ここに、アース用端子52aが設けられている。
【0067】なお、本実施例の各導体40、導体50は、その表面に絶縁層が被覆形成されているが、導体50の表面に絶縁層を被覆形成するかわりに、第1の絶縁シート120と同様な構成の第2の絶縁シート130を用意し、これら両絶縁シート120,130を、導体50をその間に挾むようにして積層し接着してもよい。なお、後の説明を簡単なものとするため、以下の説明は第2の絶縁シート130を使用しない場合を例にとり行う。
【0068】次に、その両面に導体40および導体50が被覆形成された絶縁シート120を、図12(A)に示すよう、折り曲部124を介してジクザク状に折曲げ、各折畳み部122−1,122−2…122−8を積層する。これにより、図12(B)に示す積層体30が形成される。これにより、一部切欠いたリング形状の各導電体142−1,142−2…142−7は互いに重なり合い、1本の導線を複数ターン(実施例では4ターン)巻回したコイルを形成し、インダクタンスL1をもったインダクタとして機能することになる。これと同時に、前記導体50は、第1の導体40と絶縁シート120を介して相対向し、その間にキャパシタンスCを形成する。
【0069】従って、このLCノイズフィルタは、図5に示すような等価回路の3端子型LCノイズフィルタとして機能することになる。
【0070】次に、第1図(C)に示すよう、この積層体30を、端子42a,42b,52aを除いて、エポキシ等の樹脂を用いてモールドし、最終的なLCノイズフィルタを形成する。
【0071】以上説明したように、本実施例のLCノイズフィルタによれば、その両面に第1の導体40および第2の導体50が被覆形成された第1の絶縁シート120を、折り曲部124を介しジグザク状に折畳むことにより、偏平な立方体形状に形成される。このため、従来のLCノイズフィルタに比べ小型軽量なものとなり、近年とみに小型軽量化が求められている電子回路用部品として極めて好適なものとなる。
【0072】なお、本発明において用いられるノイズフィルタは、前記実施例に限定されるものでなく、本要旨の範囲において各種の変型実施が可能である。
【0073】例えば、前記各実施例では、絶縁層を介して各導体が相対向する場合を例に取り説明したが、これら各導体は完全に対向していなくとも、両者の間にキャパシタンスが分布定数的に形成されるならば、両者の対向位置にずれがあってもよい。 また、前記各実施例では、LCノイズフィルタ20として、積層型のフィルタを用いた場合を例に取り説明したが、本発明はこれに限らず、必要に応じこれ以外の各種の分布定数型のLCノイズフィルタを用いることができる。
【0074】また、前記実施例では、主にプリント配線板100の外部と入出力される信号上のノイズを除去する場合を考えたが、本発明はこれに限らず、例えばプリント配線板100上の電子部品間の信号の入出力ライン上にLCノイズフィルタ20を設けるようにしてもよい。特に、プリント配線板100上のプリント配線が長い場合にはノイズがのりやすいため、このようなノイズ対策を行うことも必要である。
【0075】また、本発明は、パーソナルコンピュータやーワードプロセッサのみならず、各種の電子機器、例えばファクシミリ装置やテレビジョン等のモニタ装置にも適用することができる。
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、プリント配線板に搭載された電子回路に侵入しようとする外部からのあるいはプリント配線板内部で発生するノイズを、信号ラインあるいは電源ラインに設けられた分布定数型LCノイズフィルタにより除去することができる。特に、本発明にて用いるLCノイズフィルタは、分布定数型のフィルタとして形成されているため、集中定数型のフィルタを用いた場合に比べ、プリント配線板に搭載された電子回路のノイズ対策を有効に行うことができる。
【0076】また、請求項(2)の発明によれば、LCノイズフィルタを構成するコイルやコンデンサが一体的に形成され、その小型化ができるため、複数のディスクリート部品から成るフィルタを用いた場合に比べ、プリント配線板全体を小型化することができる。
【0077】さらに、請求項3の発明のように、LCノイズフィルタを、プリント配線板上に膜成形技術または印刷技術を用いて積層形成することにより、プリント配線板上にフィルタを作り込むことができ、プリント配線板全体をより小型化することができ、しかもプリントリ配線板の表面にLCノイズフィルタを別部品として取り付ける必要がないため、配線板自体の取扱も容易なものとなる。
【0078】さらに、請求項4の発明によれば、LCノイズフィルタをSMDタイプのものとして形成することにより、プリント配線板へのLCノイズフィルタの装着を自動化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリント配線板の外観斜視説明図である。
【図2】図1に示すプリント配線板に用いられる分布定数型LCノイズフィルタの製造工程の説明図である。
【図3】図1に示すプリント配線板に用いられる分布定数型LCノイズフィルタの製造工程の説明図である。
【図4】図1に示すプリント配線板に用いられる分布定数型LCノイズフィルタの製造工程の説明図である。
【図5】図2〜図4に示す分布定数型LCノイズフィルタの等価回路図である。
【図6】本発明の他の実施例の外観斜視説明図である。
【図7】図6に示すプリント配線板に用いられる分布定数型ノイズフィルタの分解斜視説明図である。
【図8】図7に示すLCノイズフィルタを組み立てた状態での外観斜視説明図である。
【図9】従来のLCノイズフィルタの説明図であり、同図(a)は具体構成の説明図、同図(b)はその等価回路図である。
【図10】同図(a)〜(f)は、従来の積層型LC素子の製造工程の一例を示す説明図である。
【図11】図10に示すLCノイズフィルタの等価回路図である。
【図12】本発明のプリント配線板に用いられる分布定数型ノイズフィルタの説明図である。
【図13】図12に示すノイズフィルタの分解斜視説明図である。
【符号の説明】
10 中央処理装置(CPU)
12 メモリ
14 ゲートアレイ
15 モデム用コネクタ
16 プリンタ用コネクタ
17 キーボード用コネクタ
18 液晶表示板(LCD)駆動ケーブル
20 LCノイズフィルタ
100 プリント配線板 IK013201

【特許請求の範囲】
【請求項1】 電子回路搭載用のプリント配線板において、前記電子回路の信号ラインまたは電源ラインの少なくとも一方に分布定数型LCノイズフィルタを設けたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】 請求項1において、前記分布定数型LCノイズフィルタは、複数の絶縁層が積層された積層体と、前記積層体の層間に1の層間から他の層間にかけて周回し、互いに絶縁層を介して相対向する複数の導体と、を含み、前記各導体は独自にインダクタとして機能するとともに、各導体間にキャパシタが分布定数的に形成された積層型のフィルタとして形成されたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項3】 請求項2の分布定数型LCノイズフィルタは、プリント配線板上に膜形成技術または印刷技術を用いて積層形成されたことを特徴とするプリント配線板。
【請求項4】 請求項2の分布定数型LCノイズフィルタは、S・M・Dタイプのフィルタとして形成されたことを特徴とするプリント配線板。

【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図11】
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【図1】
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【図2】
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【図10】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図12】
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【図13】
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