説明

プリーツ型カートリッジフィルタ装置

【課題】ろ過効率が高くフィルタ寿命も長く安価に製造できるカートリッジフィルタ装置を提供する。
【解決手段】プリーツ折りしたろ材、コア、スリーブ、及び二つのエンドキャップ(上下蓋部)とを有するカートリッジフィルタ装置において、プリーツ折りに直交するフィルタ材断面中には、コア側にスリーブに至らない山折線部を設け、スリーブ側に前記山折線部よりもコア側に接近した谷折線部を設け、それによりこれらの山折線部と谷折線部がプリーツを介して互いに重畳することによりフィルター材の座屈を防止した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろ過効率が高くフィルタ寿命の長いプリーツ型カートリッジフィルタ装置に関する。更に詳しくはろ過に寄与するフィルタ面積が増大し、安価に製造できるプリーツ型カートリッジフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルタは各種流体中の異物・粒子の分離処理に用いられており、目的とする異物・粒子を捕捉でき、使用が簡単・簡便であり、粒子の保持能力(収容容量)が高い、つまり使用寿命が長いという機能が求められている。このようなフィルタとして、不織布又は膜状シート(メンブレン)がプリーツ状に折り畳まれたプリーツ型のものが知られている。プリーツ型フィルタはろ過面積を大きく製造することができるという点でメリットがある。
【0003】
フィルタの用途としては、車両用オイル、エアろ過装置等の比較的簡易なものから半導体装置製造用のウェハ洗浄やフォトレジストろ過、医療分野におけるろ過等の精密なものまで多分野に渡っている。特に精密なフィルタが要求される半導体分野では、近年LSIの集積度が向上するにつれてより微細な配線幅が要求されてきており、LSIのパターニングを行う製造工程でのきわめて微細な異物の排除技術が要求されている。パターニングは一般的にはフォトレジストをシリコンウェハに適用し、露光部と非露光部との現像液に対する溶解度の差を利用して行われるものであるが、ウェハ上やレジスト液に異物が混入していると、設計どおりの線幅にパターニングすることができず不良の原因となる。例えば、現在ではろ過後のフォトレジスト液中に0.05μm程度の異物が残存しても欠陥・配線不良等の原因となってしまう。しかし、フォトレジスト液は、通常は滞留、長時間の放置によってゲルを発生しやすい性質をもっているので、フォトレジスト液をシリコンウェハに塗布して感光させる前にフォトレジスト液中にゲルが発生してしまう(ここで、ゲルとはフォトレジスト中においてその一部が変質した感光性物質とは異なるものをいう)。このようなゲルがフォトレジスト液中に存在する場合には、シリコンウェハ上のフォトレジスト膜には感光によって現像液に溶解されるべきパターンに未溶解の異物が残りパターン欠陥を生じてしまう。
【0004】
上記のような超微細粒子・異物を除去するためのフィルタ材は非常に高価であり、フィルタ材の使用量は使用中に目詰まりが起こりにくい程度に広いろ過面積の範囲内でできるだけ節約することが好ましい。ここで、フィルタを透過しない粒子が実際に堆積する部分の面積を有効ろ過面積という。
【0005】
通常、目詰まりを防止し使用可能期間(寿命)を延ばすために有効ろ過面積を広げるには、使用するフィルタ材面積を広くすることが行なわれている。しかし、通常のプリーツ折りは高さが均一な山から構成されるため、使用フィルタ材面積を広くするにはプリーツ折りの山の側面同士が接触するようにフィルタが緊密に折り畳まれる必要があった。図3は通常のプリーツ折りフィルタの一例の断面図であり、図の上流(または外側)から被ろ過流体が供給され下流(または内側)にろ液が流出する。図3では山折線及び谷折線の高さはそれぞれ一定であるように設計されている。このような緊密に折り畳まれたフィルタでは、異物粒子を含んでいる流体をろ過するとフィルタを透過しない粒子が折り山の上方部にのみ堆積して目詰まりを生じ、折り畳まれた部分は有効に機能せず(有効ろ過面積が小さくなる)、結果的にフィルタとしての寿命が短くなる問題があった。
【0006】
又、アウトインパス方式のプリーツ折りフィルタ材での通常のプリーツ折りの変形として、スリーブに相対する一部の山の頂上部の山折線をV字型に谷折してM字型とし、全ての山の頂上部の高さを一定とした構成も提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1のフィルタ材は、円筒状フィルタ材において均一プリーツ折りをした場合に、内周側(コア側)が密となり外周側(スリーブ側)が粗となって必然的に生じる外周側の空間を有効に利用して使用フィルタ材面積を広げるための構成である。従って、特許文献1のろ材は、内周側も外周側も密となる構成であるから更にフィルタは緊密に折り畳まれプリーツ同士がきつく面接触し、目詰まりは更に起こりやすくなり、せっかく増大したろ過面積が有効に作用できず、実効ろ過面積がより小さくなっている。
【特許文献1】実開昭62−87710号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、有効ろ過面積を広げ、かつ実際に使用するフィルタ材面積を節約する方法が求められていたが、フィルタ装置のスリーブ外径や高さなどの外径寸法は互換性があるように製作されているため、外径寸法を変更せずにこれらの目的を達成する必要があった。
【0008】
本発明者は、本発明者の発明にかかる未公開先願である特願2004−120359号において、図4に示したように、四角いフィルタ材をプリーツ状に折り畳み、フィルタ材のプリーツ折りに平行な両端を互いに封着して略円筒状として得られたろ材1と、濾液側コア(多孔内筒)2と、供給液側スリーブ(多孔外筒)3と、二つのエンドキャップ(上下蓋部)とを有し、上記コア2と上記スリーブ3との間に上記ろ材1を挿入して上下エンドキャップで挟み、ろ材の上下端縁部分をエンドキャップに液密に熱溶着した、カートリッジフィルタ装置において、プリーツ折りに直交するフィルタ材断面中には、1つの山折線a、その両側でコア外周面に接する2つの谷折線b、及びその両側のスリーブ内周面に接する2つの山折線cが存在して、コア側の1の低い山部、その両側のコア側の2つの谷部、及びその両側のスリーブ側の2つの高い山部が形成されているW字型部が含まれるカートリッジフィルタ装置を考案した。同装置は目詰まりが起きにくく、実効ろ過面積が大きく、しかも長寿命の装置であることが判明した。
【0009】
しかしながら、この構造では、フィルタ材やそれに添える支持材(シート)を剛性の高いものにしないと、コア側でろ材の谷部を最密充填したときに、スリーブ側の山部の充填率が25%程度に下がるため、山部を構成するプリーツが座屈したり折れ曲がり有効ろ過面積が低下することが分かった。
従って、本発明は従来から慣用されている通常のフィルタ材や支持体を使用しても、有効ろ過面積が維持できるプリーツ型カートリッジフィルタ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、シート状(膜状)のフィルタ材をプリーツ状に折り畳み、フィルタ材のプリーツ折りに平行な両端縁を互いに封着して円筒状に形成されたろ材と、内側多孔コアと、外側多孔スリーブと、二つのエンドキャップとを有し、上記コアと上記スリーブとの間の半径距離Bのスペースに前記円筒状に形成されたろ材を挿入して前記上下エンドキャップで挟み前記ろ材の上下端縁部分をエンドキャップに液密に熱溶着した、カートリッジフィルタ装置において;
前記ろ材は、フィルタ材を次の特徴を有するように折り込んで構成される。すなわち、ろ材はコア側からスリーブ側を見て折線の山及び谷を定めたとき、(a)前記コアに接する少なくとも2つのコア側谷折線とこれらの間に設けられコア側谷折線よりも1つだけ少なく且つ距離Bよりも低いコア側山折線とを含むコア側プリーツ単位と、(b)該コア側プリーツ単位に連接する、前記スリーブに接する少なくとも2つのスリーブ側山折線とこれらの間に設けられスリーブ側山折線よりも1つだけ少なく且つ前記コアに至らない高さの谷折線とを含むスリーブ側プリーツ単位を有し、(c)コア側プリーツ単位のコア側山折線の高さAは前記スリーブ側プリーツ単位の谷折線の高さCよりも高い位置に形成され、それにより前記コア側山折線を有する山部と前記スリーブ側谷折線を有する谷部とが互いに部分的に重畳していることを特徴とする。
ここに重畳とは直接の重畳ではなくてフィルタ材のプリーツが介在する重畳である。また折線はろ材(サポート材を使用する場合にはろ材とサポート材)の厚みのために明確に指定できないので、折線部分のろ材の外側の頂部(谷折では底縁、山折では頂縁)と定義する。
(2)好ましい形態では、前記スリーブ側の山折線の数は前記コア側の谷折線の数と同一又はそれより少ない。
(3)好ましくは、上記フィルタ材の少なくとも片面にサポート材が使用されて補強効果を与え且つ流路を増す。
(4)好ましくは、上記コアの外径D1(mm)、上記スリーブの内径D2(mm)、フィルタ材及びサポート材の総厚さt(mm)に対するフィルタ材のコア側谷折線の総数n1は、n1=(πD1/2t)×(1.1〜1.9)の関係を有し、スリーブ側の山折線の総数n2は、n2=(πD2/2t)×(0.25〜0.5)の関係を持たせる。これによりスリーブ側の充填率が低く抑えられろ過容量が増す。
(5)前記コア側山折線の高さAは広くは前記コアから前記スリーブまでの半径方向距離の30〜90%、好ましくは40〜80%である。
【0011】
なお、前記重畳した部分は重畳さえしていれば密度が上がり且つコア側プリーツにより支持されるので機械的な強度が大きく上る。よって重畳割合はあまり重要ではないが、例えばコアからスリーブまでの距離Bの5〜50%、好ましくは5〜40%、更に好ましくは5〜30%である。
【0012】
後で実施例に関連して本発明の作用効果を具体的に説明するが、原理的なことをここで説明しておく。
先に説明したように特願2004−120359号では、コア側にスリーブに達しない低い山折部を作り、コア側のフィルター材密度を上げてn1=(πD1/2t)×(圧縮率)としたが、この状態ではスリーブ側が粗になり過ぎ、そのためスリーブ側の山が倒れてしまい、本来の意図した目的が充分に達成されない。そこで、上記のようにスリーブ側に谷折部を形成し、コアとスリーブの中間部分でコア側の山折りとスリーブ側の谷折りを重畳させる。この重畳のある中間部における直径をDとしたときの2tを単位とする最密充填数(つまり折り線数に換算したもの)は(πD/2t)×(圧縮率)となり、圧縮がないこと(圧縮率=1)を仮定すると直径Dにおける充填率(常識で圧縮率1としたとき)は実際の充填数をnとすると充填率=n/(πD/2t)となる。後で検討するが、実施例の図1〜2の簡単な考察からnはコア側谷折り数n1とスリーブ側山折り数n2に対して次の関係にある。
【0013】
図1(実施例1)の場合はn1:n2:n=2:2:3、換言するとn2=n1、n=(3/2)n1である。
図2(実施例2)の場合にはn1:n2:n=3:2:4、換言するとn2=(2/3)n1、n=(4/3)n1である。
実施例3の場合はn1:n2:n=5:4:7、換言するとn2=(4/5)n1、n=(7/5)n1である。
特願2004−120359号ではn1:n2:n=2:1:2、換言するとn2=(1/2)n1、n=n1である。
今D2=2D1とし、重畳部がちょうどD2とD1の中央すなわち直径D=(D1+D2)/2=1.5D1のところにあるとすると、充填率=n/(1.5πD1/2t)=n/1.5n1となる。
【0014】
図1の例では、n=(3/2)n1を考慮すれば中央部の充填率=1(=100%)となり、中央部の重畳により充分な支持強度が提供できる。
図2の例では、n2=(4/3)n1を考慮すれば充填率0.89(=89%)となり、中央部の重畳により充分な支持強度が提供できる。ちなみに、特願2004−120359号では重畳部がなく中央部Dの個所の充填率は0.67(=67%)となるが、スリーブ側に大きい空所が存在するのでこの充填率では支持強度不足を生じて不十分である。なお従来の通常のプリーツフィルタ材もn1=n2=nであり、中央部で充填率約0.67(=67%)となる。
【0015】
以上の考察から、中央部近辺の充填率は0.7以上、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.9以上、最大で約1とすることが望ましい。
このように重畳部を形成して機械的な強化を行うと、フィルタ膜の折れ曲がりや座屈が生じないので、重畳部の上側に大きいスペースが確保でき、ろ過残渣の貯留容量が大きくなる。
さらに重畳部の下側の充填密度は最大でも100%に圧縮率を乗じた程度であるので、ろ過に余裕があり、ろ液の排出性も良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプリーツ型カートリッジフィルタ装置のフィルタは、コア側に低い山折部が含まれるため、ろ過に寄与するフィルタ面積が従来技術に比べ大幅に増大している。一方、コア側山折部の上側部分はスリーブ側の谷折部と重畳することにより機械的に強化されてスリーブ側のプリーツ部分が強化され、上記の大きいフィルタ面積が維持できる。
【0017】
従来の常識では、フィルタ面積を増大させるためにはできるだけ広い面積のフィルタをフィルタ装置内に充填する必要があり、外周部のプリーツ数を多くする必要があった。これに対して本発明では意外にも狭いフィルタ面積(少ない充填量)でろ過効率が高くフィルタ寿命も長い効果が得られ、又、上記のように重畳部を設けることにより別個の強化手段を使用しないでもろ材自体を利用してろ材の座屈を防ぐことができるので、従来のプリーツフィルタ膜のプリーツ加工工程をわずかに変更するだけで従来よりも遙かに長寿命のカートリッジフィルタ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のプリーツ型のカートリッジフィルタ装置は、シート状のフィルタ材をプリーツ状に折り畳み、フィルタ材のプリーツ折りに平行な両端縁を互いに封着して円筒状に形成されたろ材と、内側多孔コアと、外側多孔スリーブと、二つのエンドキャップとを有し、上記コアと上記スリーブとの間に前記円筒状に形成されたろ材を挿入して前記上下エンドキャップで挟み前記ろ材の上下端縁部分をエンドキャップに液密に熱溶着した構成を有する。ここで使用されるろ材は本発明に従ってフィルタ材をプリーツ折りした特徴のある構造を有する。
【0019】
本発明のフィルタ材は、処理液中の除去すべき異物の大きさにより所望の大きさの孔を有する素材であればいかなる材質のものでもよく、例えば、フォトレジスト液のろ過を行う場合には、0.05〜0.2μm程度の微細孔を有する、四フッ化エチレン樹脂(以下PTFEと記す)、ポリエチレン、ポリプロピレン、SUS、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル(以下PFAと記す)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)等の材質のフィルタ膜が用いられるがこれらに限定されるものではない。また、シリコンウェハ用のリンス液等、半導体装置製造に用いられる薬剤のろ過を行う場合には、0.05〜1.0μm程度の微細孔を有する上記材質のフィルタ膜が用いられる。
【0020】
フィルタ材の厚さは、樹脂系材料の場合、例えば0.1〜2.0mmである。0.5mm未満であってもフィルタ材の曲げ剛性が低いものもあり、サポート材を使用することによりフィルタが座屈し圧力損失が増大することを防止している。また、2.0mmを超えるとプリーツ加工が非常に困難になるばかりか、使用するフィルタ材面積の上限が制限され、結果的に有効ろ過面積が減少して目的の性能を発揮することができない。
【実施例】
【0021】
実施例1
図1は本発明の第1実施例を示し、コア2の外面とスリーブ3の内面の間に装着された本発明に従った構造を有するろ材1の折線に直交する断面を示している。なお折線の半径方向高さの定義は先に述べたとおりである。
【0022】
ろ材1はフィルタ材4を図示の構造に折り込んで構成されたものであり、コア側からスリーブ側を見て前記プリーツの山谷を定めたとき、(a)コア2に接する2つのコア側谷折線a1、a3とこれらの間に設けられスリーブ3に至らないコア側山折線a2とを含むコア側プリーツ単位(この例ではW形をなす)と、(b)このコア側プリーツ単位に連接する、スリーブ3に接する少なくとも2つのスリーブ側山折線b1、b3とこれらの間に設けられコア2に至らないスリーブ側谷折線b2とを含むスリーブ側プリーツ単位(この例ではM形をなす)を有している。これらの単位(a)と(b)は交互に繰り返す。そして(c)コア側プリーツ単位のコア側山折線a2の高さAはスリーブ側プリーツ単位の谷折線b2の高さCよりも高い位置に形成され、それによりコア側山折線a2を有する山部とスリーブ側谷折線b2を有する谷部とがプリーツを介在して互いに部分的(AとCの間の部分)に重畳していることを特徴とする。これによりスリーブ側のプリーツ単位(b)はコア側のプリーツ単位(a)により支持され、またA−C間の範囲での重畳による充填密度の増大により支持されて座屈が防止される。このようにしてろ過残渣(固形粒子)(図3の5参照。実施例では省略)のためのスペースがコア側山折a2の上側に十分に確保される。
【0023】
実施例2
図2は別の実施例を示す。この例では(a)コア2に接する3つのコア側谷折線a1、a3、a5とこれらの間に設けられスリーブ3に至らないコア側山折線a2、a4とを含むコア側プリーツ単位と、(b)このコア側プリーツ単位に連接する、スリーブ3に接する少なくとも2つのスリーブ側山折線b1、b3とこれらの間に設けられコア2に至らないスリーブ側谷折線b2とを含むスリーブ側プリーツ単位(この例ではM形をなす)を有している。これらの単位(a)と(b)は交互に繰り返す。そして(c)コア側プリーツ単位のコア側山折線a2の高さAはスリーブ側プリーツ単位の谷折線b2の高さCよりも高い位置に形成され、それによりコア側山折線a2、a4を有する山部とスリーブ側谷折線b2を有する谷部とがプリーツを介在して互いに部分的(AとCの間の部分)に重畳していることを特徴とする。これによりスリーブ側のプリーツ単位(b)はコア側のプリーツ単位(a)により及びA−C間の重畳による充填密度の増大により支持されて座屈が防止される。この例ではろ過残渣(固形分)のためのスペースが実施例1よりもより大きくなる。
【0024】
一般にろ材1のプリーツ折り込み構造は、(a)前記コアに接する少なくとも2つのコア側谷折線とこれらの間に設けられコア側谷折線よりも1つだけ少なく且つスリーブ内径に至らないコア側山折線とを含むコア側プリーツ単位と、(b)該コア側プリーツ単位に連接する、前記スリーブに接する少なくとも2つのスリーブ側山折線とこれらの間に設けられスリーブ側山折線よりも1つだけ少なく且つ前記コア外径に至らない谷折線とを含むスリーブ側プリーツ単位を有し、(c)コア側プリーツ単位のコア側山折線の高さは前記スリーブ側プリーツ単位の谷折線の高さよりも高い位置に形成され、それにより前記コア側山折線を有する山部と前記スリーブ側谷折線を有する谷部とがプリーツを介在して互いに部分的に重畳していればよい。
【0025】
このように、本発明の構成を有するフィルタで粒子含有流体をろ過すると、折り畳まれたフィルタ部分も有効に機能してろ過が行なわれ、ろ過された粒子はコア側山折線の上方にできる大きいスペース内に堆積できるためフィルタ目詰まりを起こして使用が困難になるまでの時間(フィルタ寿命)が長くなる。一方、スリーブ側のプリーツ密度が低い外側の強度が、コア側折山線を含む山部とスリーブ側折谷線を含む谷部の重畳により補強されることにより、フィルタ材の座屈を防いで残渣粒子に対する保持容量を大きく維持することが可能になる。
【0026】
実施例3
図6のように実施例1と実施例2の中間形態としてコア側を1つの山折線a2と2つの山折線a4、a6山折が交互に現れるように変更しても良い。なおコア側の谷折線はa1、a3、5、a7、a9で、またスリーブ山折線はb1、b3、b5、b7でそれぞれ表した。
【0027】
以上のように、本発明のフィルタは、プリーツ折りの密度を高くすることにより、エンドキャップの融着の際に座屈しないような高い剛性(保形性)を確保することも可能であるが、ろ過効率が高いため、サポート材を使用して折り畳みやすさと高い剛性(保形性)を確保する一方、プリーツ折りの密度を低くしてフィルタ材の使用量を節約することも可能である。
【0028】
上に述べたように、本発明者の先の未公開先願である特願2004−120359号において、コア側の低い山折線を有する山折部(W形)のみを設けたろ材を提供した(図4)。その際にスリーブ側のフィルタ材に対する補強のために、フィルタ材及びサポート材の総厚さt(mm)とし(一つの山又は谷の厚みは2tである)、使用するコアの外径D1(mm)及びフィルタ材の谷折線の総数nとの間に、n=(πD1/2t)×(1.1〜1.9)の関係を持たせることを提案した。これはコア側の密度を圧縮のない最密フィルタ材充填密度の(1.1〜1.9)倍に圧縮して機械的に補強効果を持たせることを意図したものであった。
【0029】
しかし、上記先願の構造ではスリーブ側のフィルタ材充填密度が極端に小さくなるのでよほど慎重にろ材をコアとスリーブの間に挿入しなければフィルタ材の座屈を避けることができず、また使用中に座屈や折れ曲がりのためろ過容量(つまりは耐用寿命)が減じる問題があった。
【0030】
例えば、コア側に接する谷折線の数は、コア側で圧縮のない状態で最密充填したとき、上式からn1=(πD1/2t)であるが、スリーブ内径D2に接する山折線の圧縮のない状態での細密充填に要する数は(πD2/2t)である。いまスリーブ側の折り線の数が実際にはn2であるとすると、スリーブ側のフィルタ材充填率はn2/(πD2/2t)である。そこで例えばD2=2D1であると仮定すると、上記先願ではn2=0.5n1であるのでスリーブ側の充填率は0.5(πD1/2t)/(π2D1/2t)=0.25(25%)であり、従来の通常の場合の充填率0.5(50%)に比して大きい座屈が生じる可能性があることが分かる。
【0031】
本発明の実施例1ではn2=n1であるのでスリーブ側の充填率0.5(50%)であるが、コア側の低い山折線の上方に大きいスペースが確保できる点で通常の折り方よりも長寿命を期すことができ、又座屈の問題点はコア側山折部とスリーブ側谷折部の重畳により解消される。先の原理説明において中間直径D=1.5D1を仮定したときに、直径Dにおける充填率は約100%(コア径D1の個所で圧縮があればこれに圧縮率を掛けたもの)であり、スリーブ側谷折部を使用しない上記先願例の充填率約67%の場合に比して充分大きい支持強度を与えることが分かる。
【0032】
本発明の実施例2ではn2=(2/3)n1でありスリーブ側の充填率は0.33(=33%)に過ぎないので、コア側の2つの低い山折線の上方に大きいスペースが確保できる点で通常の折り方よりも長寿命を期すことができ、一方座屈の問題点はコア側山折部とスリーブ側谷折部の重畳により解消される。すでに説明したように、直径Dにおける充填率は約89%であり、スリーブ側谷折部を使用しない上記先願例に比して充分大きい支持強度を与えることが分かる。
【0033】
同様に実施例3ではn2=(4/5)n1なので、充填率0.4(40%)となり、同様な効果を得ることができる。またn=(7/5)n1なので、直径Dにおける充填率はn/1.5n1=0.93、すなわち約93%であり、スリーブ側谷折部を使用しない上記先願例に比して充分大きい支持強度を与えることが分かる。
なおコア側の圧縮率を考慮すれば上記は若干修正される。
以上から一般にスリーブ側の充填率は0.25〜0.5に設定すればよい。
また重畳部の充填率は0.7以上1の範囲(約70〜100%)で設定すると良い。
【0034】
本発明のろ材は、フィルタ材の少なくとも片面又は両面にサポート材が使用されていてもよく、例えばフィルタ材の両面に1対のサポート材が添わされた後、プリーツ状に折り畳まれ両側縁が封着されたものでもよい。サポート材としては、メッシュ、不織布等の通常使用される材料が使用できる。サポート材を使用することによりフィルタ全体としての曲げ剛性を高くすることが可能となり保形性が向上する。
サポート材は、ネット状、多孔質シート状、不織布状で用いられ、例えば、PFA、PTFE、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(以下ETFEと記す)、PVDF等の熱可塑性フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、SUS等の材質が好ましく用いられる。
【0035】
本発明の、四角いフィルタ材をプリーツ状に折り畳み、フィルタ材のプリーツ折りに平行な両端を互いに封着して得られる略円筒状ろ材は、コアとスリーブとの間に挿入され、上下エンドキャップでさらに挟んでろ材の上下端縁部分をエンドキャップに液密に熱溶着して、カートリッジフィルタ装置に収納される。
本発明のカートリッジフィルタ装置は、アウトインパス方式に使用できる。流体がプリーツ型フィルタを通過する際には、流体供給方向に対して低い山折部分を囲んでいる高い山折部分が開口部となり流体に含まれる粒子及び/又は異物が効果的に捕捉され、フィルタの露出表面を充分に活用することができる。
樹脂系材料の場合、流体供給側(一次側)サポート材の種類は、プリーツ加工時またはプリーツ加工後において、プリーツの山形状(高低)を保持し得るサポート材の組み合わせを種々選択することにより多数存在する。
又、流体として液体、気体のいずれでも使用できる。
【0036】
実施例1による試作例
一次側(流体供給側)サポート材として厚さ450μmのPFA製2重織りネット(繊維直径0.22mm)、プレフィルタとして厚さ100μmのポリテトラフルオロエチレン(ザイテックス社製、PTFE)不織布、二次側(流体排出側)サポート材として厚さ220μmの材料PFA製厚手ネット(繊維直径0.11mm)、及び膜面積約7800cm2で公称孔径0.1μmのPTFE膜フィルタをこの順に重ねあわせ、実施例1により、コア側山折線a2の高さA=12mm/スリーブ側谷折線b2の高さC=10mm/スリーブ側山折線b1、b3の高さB=15mmから構成される繰り返し単位を繰り返してプリーツ加工してコア側谷折り数n1=114及びスリーブ側山折数n2=114としてから両側縁を封着してろ材とし、カートリッジフィルタ装置(スリーブ内径76mmコア外径46mm)を組み立てた。
【0037】
比較例
比較のため、実施例1の試作例において、従来の通常のプリーツ折りによりn1=n2=114の試作品を作製した。膜面積は約6500cm2であった。
【0038】
フィルタ性能評価
実施例1及び比較例のろ材を使用して構成したカートリッジフィルタ装置に、ダスト(ベントナイト中位径5μm)を濃度10ppmで含有する供給水を、室温にて、流量一定流量5L/分で、流し、時間と差圧(供給圧力−排出圧力の差圧)の関係をプロットした結果を図5に示す。図から寿命(供給圧力−排出差圧が1kgf/cm2に到達するまでのろ過体積)は、実施例1では5L/分×約200分=約1000Lであり、比較例(従来例)の場合には5L/分×約100分=約500Lであることが分る。
【0039】
実施例1は、実用可能な除粒子性能を有し、かつ供給圧力に対する流出速度が大きく、実施例1のプリーツ型カートリッジフィルタ装置は従来の通常のプリーツ型フィルター装置の約2倍の寿命を示し、ろ材面積に対しては1.2倍の寿命を示した。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施例1によるカートリッジフィルタ装置のフィルタ材部分の構造と使用状態を示す断面概略図である。
【図2】本発明の実施例2によるカートリッジフィルタ装置のフィルタ材部分の構造と使用状態を示す断面概略図である。
【図3】従来のカートリッジフィルタ装置のフィルタ材部分の構造と使用状態を示す断面概略図である。
【図4】本発明者が開発し先願の対象とした未公開のカートリッジフィルタ装置のフィルタ材部分の構造と使用状態を示す断面概略図である。
【図5】流量を一定にした場合のフィルタ装置のろ過時間に対する圧力の変化を示すグラフである。
【図6】本発明の実施例3によるカートリッジフィルタ装置のフィルタ材部分の構造と使用状態を示す断面概略図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ろ材
2 コア
3 スリーブ
4 フィルタ材
1、a3、5、a7、a9 コア側谷折線
2、a4、a6 コア側山折線
1、b3、b5、b7 スリーブ側山折線
2、b4 スリーブ側谷折線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状のフィルタ材をプリーツ状に折り畳み、フィルタ材のプリーツ折りに平行な両端縁を互いに封着して円筒状に形成されたろ材と、内側多孔コアと、外側多孔スリーブと、二つのエンドキャップとを有し、上記コアと上記スリーブとの間に前記円筒状に形成されたろ材を挿入して前記上下エンドキャップで挟み前記ろ材の上下端縁部分をエンドキャップに液密に熱溶着した、カートリッジフィルタ装置において;
前記ろ材は、コア側からスリーブ側を見て前記プリーツの山谷を定めたとき、(a)前記コアに接する少なくとも2つのコア側谷折線とこれらの間に設けられコア側谷折線よりも1つだけ少なく且つスリーブ内径に至らないコア側山折線とを含むコア側プリーツ単位と、(b)該コア側プリーツ単位に連接する、前記スリーブに接する少なくとも2つのスリーブ側山折線とこれらの間に設けられスリーブ側山折線よりも1つだけ少なく且つ前記コア外径に至らない谷折線とを含むスリーブ側プリーツ単位を有し、(c)コア側プリーツ単位のコア側山折線の高さは前記スリーブ側プリーツ単位の谷折線の高さよりも高い位置に形成され、それにより前記コア側山折線を有する山部と前記スリーブ側谷折線を有する谷部とがプリーツを介在して互いに部分的に重畳していることを特徴とするカートリッジフィルタ装置。
【請求項2】
前記スリーブ側の山折線の数は前記コア側の谷折線の数と同一又はそれより少ない請求項1のカートリッジフィルタ装置。
【請求項3】
上記フィルタ材の少なくとも片面にサポート材が使用されている請求項1又は2のカートリッジフィルタ装置。
【請求項4】
上記コアの外径D1(mm)、上記スリーブの内径D2(mm)、フィルタ材及びサポート材の総厚さt(mm)に対するフィルタ材のコア側谷折線の総数n1は、n1=(πD1/2t)×(1.1〜1.9)の関係を有し、スリーブ側の山折線の総数n2は、n2=(πD2/2t)×(0.25〜0.5)の関係を有する請求項3のカートリッジフィルタ装置。
【請求項5】
前記コア側山折線の高さAは前記コアから前記スリーブまでの半径方向距離Bの30〜90%である請求項1のカートリッジフィルタ装置。
【請求項6】
前記コア側山折線を有する山部と前記スリーブ側谷折線を有する谷部とがプリーツを介在して、前記コアから前記スリーブまでの半径方向距離Bの5〜50%以内で重畳している請求項1のカートリッジフィルタ装置。
【請求項7】
前記重畳部のプリーツの充填率は0.7以上1までである請求項1のカートリッジフィルタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−50313(P2007−50313A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235371(P2005−235371)
【出願日】平成17年8月15日(2005.8.15)
【出願人】(505307471)インテグリス・インコーポレーテッド (124)
【Fターム(参考)】