説明

プレスフレーム

【課題】輸送が容易で製造上の欠陥が生じずプレス負荷に強く、さらにプレスをコンパクト化することができるプレスフレームを提供する。
【解決手段】ベッド3と、ベッド3の上面に立設された左右一対のサイドフレーム2,2と、左右のサイドフレーム2,2の上端部同士を連結する連結部材10とからなり、連結部材10は、左右一対のサイドフレーム2,2の上端面上に配設されている。サイドフレーム2と連結部材10を別体で製造できるので輸送が容易であり、各部材はその形状が簡単になるので製造上の欠陥が生じにくくなる。また、サイドフレーム2をコンパクト化でき重量も低減できるので、サイドフレーム2の搬送性を向上させることができ、しかもプレス全体をコンパクト化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスフレームに関する。プレスの構造は、加圧力を受け全体を支持するフレーム、上型を取付けて往復運動するスライド、スライドに往復運動を与える駆動部等からなる。また、フレームは小・中型機に採用されるC形フレームと、中型機以上に採用されるストレートサイド構造とがある。本発明は、ストレートサイド構造のプレスフレームに関する。
【背景技術】
【0002】
図4〜図6は、従来より採用されているストレートサイド構造のプレスフレームを示している。このプレスフレームは、クラウン101、アプライト102、ベッド103の3部材からなり、タイロッド104でこれら分割された三部材を締め付ける構造としている(非特許文献1)。クラウン101とアプライト102上面、ベッド103とアプライト102下面の分割面は、キーなどの位置決め部材を介在させて位置決めした後に、前記タイロッド104により強固に一体化されている。
クラウン101はプレスの頭に相当する部分で、クランク軸やギヤ類を納める部材である。通常は、左右の側方部材120,120とこれら側方部材を連結するための1個の中央部材110で構成されており、正面視で略逆U字状となる立体形状物である。
アプライト102は、クラウン101とベッド103の間にある柱状の部材である。
ベッド103は、下型を取付けたボルスタを固定する部材で、プレス全体を基礎上に安定して支持するものである。
【0003】
前記クラウン101の側方部材120,120のそれぞれには、円形の穴105,105が形成され、エキセン軸(クランク軸)の両端のジャーナル部を支持し、かつ負荷をクラウン101に伝達するようにしている。106はリング形状のスリーブである。この2つの穴105,105は、エキセン軸を水平に支持するために正確に加工する必要があることから、一つの部品(クラウン101)に加工できるように、左右のクラウン側方部材120,120とクラウン中央部材110は一体物として製造されている。
【0004】
しかるに、クラウン側方部材120,120と中央部材110の接合部は、部材断面形状が急変しているため応力集中が生じやすい。これを緩和するため、形状が複雑になったり、部材厚みの増加により重量が増加したりするという問題がある。
また、プレスの高さが高くスライド起動停止時の振動が生じやすいので、大規模な振動対策を施さなければならない。しかも、プレスを設置する建屋も大形のものになるから、プレスの設置費用が高くつく。
【0005】
【非特許文献1】「知りたいプレス機械改訂版」56〜57頁 2001年10月1日 2版発行 著者アイダプレス研究会 発行株式会社ジャパンマシニスト社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、輸送が容易で、製造上の欠陥が生じずプレス負荷に強く、さらにプレスをコンパクト化することができるプレスフレームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明のプレスフレームは、ベッドと、該ベッドの上面に立設された左右一対のサイドフレームと、該左右一対のサイドフレームの上端部同士を連結する連結部材とからなり、前記連結部材は、前記左右一対のサイドフレームの上端面上に配設されていることを特徴とする。
第2発明のプレスフレームは、第1発明において、前記連結部材は、前記左右一対のサイドフレームの上端との間に上下方向に沿った締結力が加えられて、該左右一対のサイドフレームの上端面に連結されていることを特徴とする。
第3発明のプレスフレームは、第1発明において、前記連結部材は、前記左右一対のサイドフレームに対して着脱可能に取り付けられていることを特徴とする
第4発明のプレスフレームは、第1発明において、前記連結部材と前記左右一対のサイドフレームの上端面との間は、位置決め部材で位置決めされていることを特徴とする。
第5発明のプレスフレームは、第1発明において、前記各サイドフレームは、下方のアプライト部と、その上方のエキセン軸支持部を一体に形成した部材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、サイドフレームと連結部材とが別体であるから、各部材の設計の自由度が高くなる。よって、フレームの強度や剛性を確保するために、最適な寸法、材質等を選択することができる。そして、両者を別々に輸送することも可能となるので、大型のフレームであっても輸送が容易になる。しかも、各部材はその形状が簡単になるので、製造上の欠陥が生じにくくなる。また、両サイドフレームの上面に連結部材を配設しているから、両サイドフレームを別体としても、その上部に両サイドフレームと連結部材とを連結するために特別な部分を設ける必要がない。すると、サイドフレームの高さが低くなり、サイドフレームをコンパクト化でき重量も低減できるので、サイドフレームの搬送性を向上させることができ、しかもプレス全体をコンパクト化することができる。さらに、プレスフレームの高さが低くなるので、スライド起動停止時の振動が低減できる。すると、振動対策費を抑えることができ、プレスを設置する建屋も高さが低くてすむから、プレスの設置費用を低減できる。
第2発明によれば、連結部材と各サイドフレームとは、上下方向に沿った締結力が加えられて連結されている。すると、連結部材とサイドフレームとの組立て時において、サイドフレームに対して、両者間の距離を縮めるような力が加わらないから、サイドフレームの互いに対向する面間の寸法が変化することを防ぐことができる。
第3発明によれば、連結部材と各サイドフレームとが着脱可能に設けられているので、連結部材を取り外せば、スライドやコンロッドのメンテナンスを簡単かつ容易に行うことができる。
第4発明によれば、連結部材と各サイドフレームの上面とが位置決め部材によって連結されるので、両サイドフレーム間の距離を所定の距離に保つことができる。しかも、連結位置が変位しないので、大きな負荷がかかってもフレームの変形を防止でき、製品の寸法精度を高く維持できる。
第5発明によれば、エキセン軸支持部を含むサイドフレームは、連結部材とは別体の柱状の部材であるから、クラウンのような凹凸がない。そして、エキセン軸を通すための穴を大きくしてもサイドフレームの大型化を抑えることができるので、嵩張ることなく輸送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るプレスフレームの縦断面図である。図2は同プレスフレームにおける図1のII−II線矢視図である。図3は同プレスフレームにおける頭部の平面図である。
【0010】
図1〜図2において、3はベッドである。このベッド3は従来のベッドと実質同等の形状を有するものであり、その前後には、ベッド3を基礎に固定するための脚部3bが設けられている。
このベッド3の上面には、左右一対のサイドフレーム2,2が立設されている。各サイドフレーム2は、下方のアプライト部21と、その上方のエキセン軸支持部22とを一体に形成した部材であり、全体的な形状は柱状である。前記アプライト部21は、従来のプレスフレームにおけるアプライト102(図4〜図5参照)に相当する部分であり、前後の柱状部分を含んでいる。前記エキセン軸支持部22は従来のプレスフレームにおけるクラウン側方部材120に相当する部分であるが、形状的には単純な柱状である点で相違している。
【0011】
図1〜図3に示すように、前記左右のサイドフレーム2,2の上端部同士は、直方体状の連結部材10で連結される。すなわち、連結部材10は、その両端部が各サイドフレーム2,2の上端面上に位置するように配設されており、この両端部が各サイドフレーム2,2の上端面と連結されているのである。
【0012】
連結部材10の両端部と各サイドフレーム2,2の上端面とは、両者の間に上下方向に沿った締結力が加えられて連結されている。
具体的には、図2に示すように、連結部材10の両端部に上下を貫通する貫通孔が形成され、一方、各サイドフレーム2,2の上端面にネジ孔が形成され、そして、連結部材10の上方から貫通孔を挿通されたボルト11が、各サイドフレーム2,2の上端面のネジ孔に螺合されている。すると、連結部材10の両端部が各サイドフレーム2,2の上端面に押し付けられるから、連結部材10を各サイドフレーム2,2の上端面に連結することができる。
【0013】
このとき、各サイドフレーム2,2には、上下方向に沿った力は働くものの、水平方向の力、言い換えれば、両サイドフレーム2,2間の距離を縮めるような力が加わらない。すると、連結部材10を各サイドフレーム2,2の上端面に取り付けて、両者を締結しても、両サイドフレーム2,2の互いに対向する面間の寸法が変化することを防ぐことができる。
【0014】
なお、連結部材10の両端部と各サイドフレーム2,2の上端とを連結する方法は、両者の間に上下方向に沿った締結力を加えて連結できる方法であればよい。とくに、連結部材10を取り付けたときに上下方向に沿った締結力のみが発生するか、または、水平方向の力が発生してもその力が非常に弱い連結方法が好ましい。
さらになお、連結部材10と各サイドフレーム2,2とは、完全に固定されていてもよいが、上記のごとき構成であれば、連結部材10と各サイドフレーム2,2とを着脱することができる。すると、スライドやコンロッドのメンテナンスを行うときに、各サイドフレーム2,2から連結部材10を取り外せば、スライドやコンロッドのメンテナンスを簡単かつ容易に行うことができる。
【0015】
また、両サイドフレーム2,2の上面に連結部材10を配設するので、連結部材10と両サイドフレーム2,2とを連結するための特別な部分を両サイドフレーム2,2の上部に設ける必要がない。すると、両サイドフレーム2,2の間に連結部材を設ける場合に比べて、連結部材10の厚みの分だけ両サイドフレーム2,2の高さを低くすることも可能となる。
すると、両サイドフレーム2,2をコンパクト化でき、両サイドフレーム2,2の寸法および重量を低減できるから、両サイドフレーム2,2の搬送性も向上させることができる。しかも、スライド起動停止時の振動が低減でき、振動対策費を抑えることができるし、プレスを設置する建屋も高さが低くてすむから、プレスの設置費用を低減できる。
【0016】
そして、両サイドフレーム2,2がコンパクト化されその重量が軽くなると、両サイドフレーム2,2を支えるベッド3の脚部3bが支持する重量が低減する。また、上述したように本実施形態のプレスフレームではスライド起動停止時の振動が低減できる。したがって、ベッド3の脚部3bを小型化することが可能となるから、プレス全体をコンパクト化することも可能となる。そして、ベッド3の前後に張り出している脚部3bが小型化できるので、ベッド3の搬送性を向上することもできる。
【0017】
なお、両サイドフレーム2,2と連結部材10は別体であるから、いずれも他方の構造等から受ける制約が少なくなる。すると、各部材の設計の自由度が高くなるから、フレームの強度や剛性を確保するために、それぞれ最適な寸法、材質等を選択することができる。しかも、各部材は、いずれも形状が簡単になり、かつ別体で製造すればよいので、製造上の欠陥が生じにくくなる。両サイドフレーム2,2と連結部材10を別々に輸送することも可能となるので、大型のフレームであっても輸送が容易になる。
さらになお、各サイドフレーム2,2の上方部分に設けられているエキセン軸支持部22には、エキセン軸を通し、そのジャーナル部を支持する穴5が形成されているが、この穴5は、プレスストロークが大きくなるほどその穴径が大きくなる。しかし、左右のサイドフレーム2は柱状の部材であって、従来のプレスフレームにおけるクラウンほど凹凸が大きくない。そして、エキセン軸を通すための穴5を大きくしてもサイドフレーム2の大型化を抑えることができるので、嵩張ることなく輸送することができる。
【0018】
本実施形態のプレスフレームを組み立てる場合には、サイドフレーム2とベッド3にタイロッド4を貫通させてナットで締め付けるだけでサイドフレーム2とベッド3とを連結することができるので、従来のプレスフレームに比べて、上下方向の接合個所を2カ所から1カ所に減らすことができる。
しかも、連結部材10の取付は、各サイドフレーム2,2上に連結部材10を配設して、連結部材10の両端部と各サイドフレーム2,2とを連結するだけである。
したがって、本実施形態のプレスフレームは、従来に比べて組立て工数を減らすことができ、その組立ても容易であるから、プレスの組立てを短時間で行うことができる。
【0019】
また、プレスフレームを組立てる際は、各サイドフレーム2,2に設けられている穴5,5の芯位置は正確に合わせなければならない。本実施形態のプレスフレームでは、連結部材10の両端部を各サイドフレーム2,2の上端面に配設するときに、両者の間に設けられたキー7によって、両者の位置決めが行われている。
【0020】
図3に示すように、各サイドフレーム2,2の上端面には、プレスの前後方向および左右方向に沿ってキー溝が形成されており、連結部材10の両端部下面における対応する位置にもキー溝が形成されている。すると、両溝にキー7を噛み合わせて、連結部材10と各サイドフレーム2,2の上端面を連結すれば、両サイドフレーム2,2が、左右の穴5,5の芯が同軸となるように位置決めできる。
【0021】
よって、両サイドフレーム2,2に対して連結部材10が移動することを防ぐことができ、両サイドフレーム2,2の互いに対向する面間の距離を所定の距離に保つことができる。
そして、連結部材10と各サイドフレーム2,2の上端面との連結位置が変位しないので、組立後の位置ズレも防ぐことができるし、大きな負荷がかかってもフレームの変形を防止でき、製品の寸法精度を高く維持できる。
なお、位置決め部材はキー7に限られず、連結部材10と各サイドフレーム2,2の上端面とを正確にかつその連結位置が変化しないように位置決めできるのであれば、とくに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプレスフレームの縦断面図である。
【図2】同プレスフレームにおける図1のII−II線矢視図である。
【図3】同プレスフレームにおける頭部の平面図である。
【図4】従来のプレスフレームの縦断面図である。
【図5】従来のプレスフレームにおける図4のV−V線矢視図である。
【図6】従来のプレスフレームにおける図4のVI−VI線矢視図である。
【符号の説明】
【0023】
2 サイドフレーム
3 ベッド
7 キー
10 連結部材
21 アプライト部
22 エキセン軸支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッドと、
該ベッドの上面に立設された左右一対のサイドフレームと、
該左右一対のサイドフレームの上端部同士を連結する連結部材とからなり、
前記連結部材は、
前記左右一対のサイドフレームの上端面上に配設されている
ことを特徴とするプレスフレーム。
【請求項2】
前記連結部材は、
前記左右一対のサイドフレームの上端との間に上下方向に沿った締結力が加えられて、該左右一対のサイドフレームの上端面に連結されている
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。
【請求項3】
前記連結部材は、
前記左右一対のサイドフレームに対して着脱可能に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。
【請求項4】
前記連結部材と前記左右一対のサイドフレームの上端面との間は、位置決め部材で位置決めされている
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。
【請求項5】
前記各サイドフレームは、下方のアプライト部と、その上方のエキセン軸支持部を一体に形成した部材である
ことを特徴とする請求項1記載のプレスフレーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−221325(P2008−221325A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−67225(P2007−67225)
【出願日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(502235326)住友重機械テクノフォート株式会社 (122)
【Fターム(参考)】