説明

プレスブレーキ用上型ホルダ装置

【課題】被支持部100aの形状の異なる複数種類の上型100の何れをもクランプできるものとする。
【解決手段】上型押さえ部材3aの支持板部側縦向き面c2の最下部に上型100の被支持部100aの縦向き被押圧面e4と面接触する縦向き押圧平面部c5aを形成すると共に、この縦向き押圧平面部c5aの上下方向長さ途中の左右方向箇所に直状棒部材支持溝c7aを形成され、この棒部材支持溝c7a内には上型100の被支持部100aの係止溝e3の断面形状に対応した特定断面形状の直状棒部材18aが縦向き押圧平面部c5aに直交した前後方向f1の一定範囲内での変位可能に且つ被支持部100a側へ弾力手段19で付勢された状態に嵌合されている構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスブレーキに使用される上型ホルダ装置に係り、さらに詳細には、これに装着することのできる上型の被支持部の形状についての制限を緩和させるものである。
【背景技術】
【0002】
プレスブレーキとして、例えば特許文献1及び2に開示されているようなものが存在しているのであって、その概略の構成は、上部テーブルと下部テーブルとを上下に対向して備えており、上部テーブル又は下部テーブルの一方を上下駆動するものとなされている。
【0003】
このプレスブレーキを使用して板状のワークの折曲げ加工を行うさいは、上部テーブルの下部に上型が装着され、下部テーブルの上部に下型が装着される。
そして、可動側の一方のテーブルを上下動して上型と下型とを係合することにより、上型と下型との間に位置せしめたワークの折曲げ加工が行われるものである。
【0004】
この種のプレスブレーキにおいては、例えばワークの折曲げ形状などによって上型を交換することが必要となるために、上部テーブルの下部に多数の上型ホルダ装置を固定させ、この多数の上型ホルダ装置によって上型を着脱可能に支持する構成である。
【0005】
上記上型ホルダ装置は、上部テーブルに取付けるホルダ本体と、ホルダ本体の下面から下方へ延出させた支持板部と、この支持板部に上型の被支持部を押圧し前記支持板部との間に上型を挟付け状に支持する上型押さえ部材とを備えた構成となされており、これに支持させることのできる上型は、その被支持部の形状がホルダ本体、支持板部及び上型押さえ部材の形態に適合するものに限られるのであり、一般には、専用品として予め用意されているのが実情である。
【0006】
【特許文献1】特開平7−60361号公報
【特許文献2】特開平8−33922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように従来の上型ホルダ装置は、一般に、これに専用される上型のみを支持するものとなされているのであり、したがって例えばワークの加工において別種の被支持部を具備した上型を使用しなければならないような場合には、上部テーブルに装着された上型ホルダ装置を上記別種の上型に対応したものと交換することが必要となり、このことが作業の能率化を阻むものとなっている。
【0008】
本発明は、斯かる問題点に対処できるものとなし、さらには上型押さえ部材を支持板部に対し簡便に近接離反させることのできるものとしたプレスブレーキ用上型ホルダ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、請求項1に記載したように、上部テーブルに取付けるホルダ本体の下部に形成された支持板部と、この支持板部に上型の被支持部を押圧し前記支持板部との間に上型を挟み付ける上型押さえ部材とを備えたプレスブレーキ用上型ホルダ装置において、前記上型押さえ部材の上型側縦向き面の最下部に前記上型の被支持部の縦向き被押圧面部と面接触する縦向き押圧平面部を形成すると共に、この縦向き押圧平面部の上下方向長さ途中の左右方向箇所に直状棒部材支持溝を形成され、この直状棒部材支持溝内には前記上型の被支持部の係止溝の断面形状に対応した特定断面形状の直状棒部材が前記縦向き押圧平面部に直交した前後方向の一定範囲内での変位可能に且つ前記被支持部側へ弾力手段で付勢された状態に嵌合されている構成を特徴とするものである。
【0010】
この発明は次のように具体化するのがよい。
即ち、請求項2に記載したように、前記上型押さえ部材に軸部材を介してカム部材を回動可能に装着すると共にこのカム部材を回動させるための操作レバーを設け、一方では前記カム部材の回動に関連した変位を入力されてこの変位に関連した大きさの特定向き押圧力を前記カム部材に付与するものとした押圧力発生手段を設け、前記操作レバーが軸部材回りへ操作されると、その操作量に対応して前記上型押さえ部材が前後方向へ変位され前記被支持部を前記操作量に対応した大きさの押圧力で前記支持板部に向け押圧する構成となす。
【0011】
また請求項3に記載したように、前記操作レバーが縦向きとなされた前記軸部材回りの左右方向へ向けられたときに前記上型押さえ部材が前記被支持部を前記支持板部に特定大きさの押圧力で押圧した状態となり、また前記操作レバーの自由端部が前記軸部材回りで前記被支持部から離れる側へ揺動されたときに前記上型押さえ部材が前記被支持部から離れる側へ変位される構成となす。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明によれば、次のような効果が得られる。
即ち、請求項1記載の発明によれば、被支持部の形状の異なる複数種類の上型の何れであっても、構成部品を取り外したり交換することなく簡便にクランプさせたり或いは外方へ取り外すことが可能となり、プレスブレーキによる作業を能率化させることができるものである。
さらに具体的に言えば上型の被支持部が係止構を有しているもの若しくは有しないもの、又は、傾斜面を有するもの若しくは有しないもののように表面形状を異にした複数種類の上型の何れであっても簡便にクランプさせることができるものとなる。
【0013】
請求項2記載の発明によれば、操作レバーの前後揺動操作により、上型を上型押さえ部材と支持板部との間にクランプさせたり或いはこのようにクランプされた上型をアンクランプさせることができるものとなり、操作レバーへの操作力の付与が行い易くなると共に、操作レバーを水平揺動操作するものとすれば操作レバーの上下方向スペースを小さくすることができ、また操作レバーを上下揺動操作するものとすれば操作レバーの左右方向スペースを小さくすることができる。
【0014】
請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発明と同様な効果が得られる上に次のような効果が得られるのであって、即ち、操作レバーの揺動方向へ上型押さえ部材が変位するものとなることから操作レバーの誤操作が発生し難いものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図9を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る上型ホルダ装置の正面図、図2は図1のx1−x1部を示す断面図、図3は図1のx2−x2部を示す図、図4は前記上型ホルダ装置の操作レバーをクランプ位置に操作した状態を示す図、図5は前記操作レバーを中間操作範囲内に操作した状態を示す図、図6はカム部材及び操作レバーを示すものでAは平面図でBは正面図、図7は前記上型ホルダ装置に装着される上型を示すものでAは被支持部に係止溝を有しないものを示す図でBは被支持部に係止溝を有するが傾斜面を有しないものを示す図でCは被支持部に係止溝及び傾斜面を有するものを示す図、図8は前記上型ホルダ装置に図7中のBに示す上型を装着した状態を示す図、図9は前記上型ホルダ装置に図7中のCに示す上型を装着した状態を示す図である。
【0016】
本発明に係る上型ホルダ装置は、図1〜図5に示すように、プレスブレーキの上部テーブルに取付けるホルダ本体1の下部に形成された支持板部1Aと、この支持板部1Aの前後に配置されていて支持板部1Aに上型100の被支持部100aを押圧して前記支持板部1Aとの間に上型100を挟み付け状に支持するものとした一対の上型押さえ部材3a、3bとを備えている。
【0017】
ホルダ本体1は前後方向f1厚さを比較的大きくなされた断面四角形の本体最上部1aと、この本体最上部1aの下面の前後方向f1厚さの中央位置に結合され前後方向f1厚さを本体最上部1aのそれよりも小さくなされた断面四角形の本体中間部1bとを備えている。
【0018】
支持板部1Aは前後方向f1厚さを本体中間部1bのそれよりも小さくなされていて本体中間部1bの下面の前後方向f1厚さの中央位置に結合されており、支持板部1Aの前面a1及び後面a2は何れも垂直な平面となされている。
【0019】
本体最上部1aの左右方向f2長さ中央位置の上部には前後方向f1の透孔b1が形成され、該透孔b1内に押圧力発生手段4が内蔵されている。この押圧力発生手段4は特許文献1に開示された技術と同様に形成されるもので、透孔b1の前端面側及び後端面側のそれぞれから弾性部材4aをその弾力に抗して押し変位可能になされると共に弾性体4aの圧縮量が変更調整可能な構造となされており、透孔b1の前端面側から前面部4b1を、そして透孔b1の後端面側から後面部4b2を押圧されたときにその押圧力に対応して弾性部材4aの圧縮量が変化するものである。また本体最上部1aの左右端寄り上部箇所のそれぞれにボルト孔b2、b2が形成され、これらボルト孔b2、b2には本体最上部1aをプレスブレーキの上部テーブルに固定させるためのボルトが挿通される。
【0020】
一対の上型押さえ部材3a、3bのそれぞれは、図2に示すように、その対応する支点手段5A、5Bを介してホルダ本体1に若干の揺動を許容された状態に係着されている。
上型押さえ部材3aを支持した支点手段5Aは本体中間部1bに形成された透孔b3に挿通されナット6で締結状に固定されたボルト7を設け、このボルト7を上型押さえ部材3aの上下方向長さの略中央位置に形成された段付透孔c1に若干の遊動可能に挿通させ、ボルト頭部7aを透孔c1の径大孔部c1aの内方に位置させ径大孔部c1aの環状底面上に凹形球面座金8を位置させ、この凹形球面座金8とボルト頭部7aとの間に凸形球面リング体9を介在させ、凹形球面座金8の凹形球面に凸形球面リング体9の凸形球面を支持させ、本体中間部1bの前面b4と上型押さえ部材3aの後面c2との間となるボルト7部分に圧縮スプリング10を外嵌し、圧縮スプリング10が上型押さえ部材3aを前方f1aへ弾圧した状態の下で上型押さえ部材3aが凹形球面座金8の凹形球面と凸形球面リング体9の凸形球面との案内作用により抵抗の少ない状態で前後方向縦面に沿って揺動される構成となされている。
【0021】
他方の上型押さえ部材3bを支持した支点手段5Bは、図3に示すように、本体中間部1bに形成された透孔b5の前側から透孔b5との間に若干の隙間を有した状態でボルト11を挿通させてボルト頭部11aを本体中間部1bの前側に位置させ、ボルト11の先部を上型押さえ部材3bの上下方向長さの略中央位置に形成されたネジ孔d1に螺着し、本体中間部1bの前面に凹形球面座金12を当接させ、この凹形球面座金12とボルト頭部11aとの間に凸形球面リング体13を介在させ、凹形球面座金12の凹形球面に凸形球面リング体13の凸形球面を支持させ、本体中間部1bの後面と上型押さえ部材3bの前面d2との間となるボルト11部分に圧縮スプリング14を外嵌させ、圧縮スプリング14が上型押さえ部材3bを後方f1bへ弾圧した状態の下で上型押さえ部材3bが凹形球面座金12の凹形球面と凸形球面リング体13の凸形球面との案内作用により抵抗の少ない状態で前後方向縦面に沿って揺動される構成となされている。
【0022】
なお、上型押さえ部材3aにおいてボルト頭部11aと正対した位置にはボルト頭部11aよりも径大となされた透孔c3が形成されており、この透孔c3はボルト11の締結弛緩着脱を可能とするものである。
【0023】
また各上型押さえ部材3a、3bの上部寄り箇所と本体最上部1aとの間で支点手段5A、5Bよりも上側となる位置には各上型押さえ部材3a、3bの上端を本体最上部1aへ近接させるように押圧する弾圧手段15A、15Bが形成されている。
【0024】
一方の弾圧手段15Aは、上型押さえ部材3aの上部寄り箇所に前後向きの段付透孔c4を形成し、この透孔c4にボルト16を若干の隙間を有する状態で挿通させ、ボルト頭部16aを径大透孔部内に位置させてボルト16の先部を本体最上部1aの前面b4に螺着し、ボルト頭部16aと透孔c4の径大透孔部の底面との間に圧縮スプリング17を装着し、圧縮スプリング17の弾力で上型押さえ部材3aの上端を本体最上部1aに近接させる側へ付勢させた状態となしている。
他方の弾圧手段15Bも前記弾圧手段15Aと対称な構造となされているのであって、実質的に同一の部材には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0025】
上記した構成は特許文献1及び2に示す技術と実質的に同一なものであり、以下に本発明に係る特徴的構成について説明する。
各上型押さえ部材3a、3bのホルダ本体1側の面の最下部に上型100の被支持部100aの縦向き被押圧面部e1と面接触する縦向き押圧平面部c5aが形成されている。各上型押さえ部材3a、3bの縦向き押圧平面部c5a、c5bの上下方向長さ途中位置をなす左右方向箇所には断面四角形の直状棒部材支持溝c6a、c6bが形成されている。
【0026】
この直状棒部材支持溝c6a、c6b内には上型100の被支持部100aに形成された係止溝e3(図7参照)の断面形状に対応した特定断面形状の直状棒部材18a、18bがその対応する縦向き押圧平面部c5a、c5bに直交した前後方向f1の変位可能に且つ前記被支持部100a側へ向け弾力手段としての圧縮スプリング19で付勢された状態に嵌合されている。
【0027】
各直状棒部材18a、18bにはこれの嵌合された直状棒部材支持溝c6a、c6bの底面に対向した面に圧縮スプリング19を内装するための凹み孔が形成され、この凹み孔内に挿入された圧縮スプリング19は外方端をこれの嵌合された直状棒部材支持溝c6a、c6bの底面に支持されており、また直状棒部材支持溝c6a、c6bの底面の長手方向適当間隔位置には前後向きの段付透孔c7a、c7bが形成され、この段付透孔c7a、c7bはその対応する上型押さえ部材3a又は3b外方側を径大透孔部となされており、この段付透孔c7a、c7b内にこれの外方側からボルト20が挿通され、ボルト20頭部がこの段付透孔c7a、c7bの径大透孔内に位置され、ボルト20の先部が直状棒部材18a、18bのネジ孔に螺着されている。したがって各直状棒部材18a、18bは圧縮スプリング19の弾力により図2などに示すようにその対応する縦向き押圧平面部c5a、c5bから支持板部1A側へ適当に張り出した状態となって直状棒部材支持溝c6a、c6bに安定的に支持される。
【0028】
また前側の上型押さえ部材3aの上部には左右方向f2へ長い断面四角形の透孔c8が形成されており、この透孔c8内には操作レバー21a付のカム部材21が挿入されており、カム部材21は上型押さえ部材3aに縦向きの軸部材22を介して水平回動可能に装着されている。このさい、カム部材21は図6に示すように円弧状外周面g1の曲率中心O1に対し偏心した位置に回転中心孔g2を形成されており、軸部材22はこの回転中心孔g2に挿通される。操作レバー21のレバー部21bが左右向き姿勢のクランプ位置p1に位置されると、カム部材21の外周面g1は縦向きの面c2から外方へ最も張り出した状態となり、逆にレバー部21aが図4に示すような左右向き姿勢位置p1から前側へ一定角度(例えば45度)以上水平揺動された位置p2から特定揺動位置p3に至るまでの中間操作範囲H内に位置されると、カム部材21の外周面は上型押さえ部材3aのホルダ本体1側の縦向きの面c2から外方へ中間的な一定角度だけ張り出した状態となる。
【0029】
操作レバー21aの基端側の片面には直状溝h1が形成されており、この直状溝h1内には係止部材22が嵌合され、これの一端側が支点軸23を介して操作レバー21aに揺動自在に装着されると共に他端側がスプリング24の弾力で下方へ付勢された状態となされ、係止部材22はその自由状態においてスプリング24の弾力で他端を外方に張り出させた状態に保持されるものとなり、一方、他端を外方から押さえ込むと、全体が直状溝h1内に没入するものとなる。
【0030】
したがって操作レバー21aがクランプ位置p1から操作角度の大きい方へ操作していくと、係止部材22の前記他端が上型押さえ部材3aの表面に衝接してそれ以上の操作が規制される状態となるのであり、このときの操作レバー21aの位置が中間操作範囲Hの最大操作位置であり、操作レバー21aは不用意に中間操作範囲Hを超えて操作されるのを係止部材22により規制される。中間操作範囲Hを超えて操作レバー21aを揺動させたいときは、係止部材22の前記他端を指で押さえて係止部材22を直状溝h1内に没入させた状態で操作レバー21aをさらに大きく揺動させるようにする。これによりカム部材21の外周面g1は上型押さえ部材3aのホルダ本体1側の縦向きの面c2から外方へ最も小さく張り出した状態となる。
【0031】
上記構成よりなる上型ホルダ装置に対して着脱交換される上型9は、図7に示すような複数種類のものがある。何れの上型100も下半部をプレスブレーキの下部テーブル上に装着した下型と協働してワークWの折曲げ加工を行うワーク加工部100bとなされており、またワーク加工部100bの上端には支持板部1Aの下端面i1に当接する当接面e2を備えると共に、当接面e2より上方へ突出した部分を被支持部100aとなされ、この被支持部100aに支持板部1Aの前面a1又は後面a2に摺動可能に接触する垂直な摺接面e4を形成されたものとなされている。
【0032】
そして図7中Aに示した上型100における被支持部100aは摺接面e4の反対側に摺接面e4と平行で摺接面e4と略同一大きさの平面e5を備えたものとなされており、また図7中Bに示す上型100の被支持部100aは摺接面e4の反対側に摺接面e4に平行で摺接面e4よりもやや小さくなされた平面e6を備えるほか平面e6の下端に左右向きの係止溝2を形成されたものとなされており、また図7中Cに示した上型100の被支持部100aは摺接面e4の反対側に摺接面3eに平行で摺接面3eの上下方向長さよりも著しく小さい上下方向幅の平面e7を備えると共にこの平面e7の上下方向中間位置に左右向きの係止溝e3を形成されるほか、この平面e7の上方に傾斜面e8を形成されたものとなされている。
【0033】
上記した構成において、上型ホルダ装置から上型100を取り外した状態にあるときに上型100を上型ホルダ装置に装着するには次のような操作を行う。
先ず、図7中Aに示す上型100を装着する場合について説明する。
【0034】
操作レバー21aにおける係止部材22を直状溝h1内に没入させて操作レバー21aを中間操作範囲Hを超えたアンクランプ位置p5(図5参照)へ揺動させた状態にする。 この状態では弾性手段17の弾性力及び弾圧手段15Aのスプリング10の弾力が上型押さえ部材3aに作用し且つカム部材21のホルダ本体1側への張出し量が最小の大きさとなるため、支持板部1Aと上型押さえ部材3aの下端部とが上型100の被支持部100aの前後方向厚さよりも十分に大きく開いた状態となる。さらに詳細には支持板部1Aの前面a1と上型押さえ部材3aの自由状態の直状棒部材18aの後面との前後方向間隔が被支持部100aの前後方向厚さより僅かに大きい状態となる。
【0035】
この状態の下で、被支持部100aを支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間へ下方から挿入し、この挿入状態を保持した状態の下で、操作レバー21aを左右方向姿勢として図4に示すクランプ位置p1に位置させる。これによりカム部材21の外周面g1がホルダ本体1側へ最も大きく張り出した状態となって押圧力発生手段4の前端面4b1を押し変位させ、このさいの押し変位量だけ押圧力発生手段4の弾性部材4aが圧縮量を増大される。
【0036】
これにより押圧力発生手段4は弾性部材4aの圧縮量に応じた前向きの押圧力をカム部材21に付与して上型押さえ部材3aの上端を前方f1aへ移動させるものとなり、これに関連して上型押さえ部材3aが支点手段5Bを支点して反時計回り方向へ揺動されて下端を後方へ変位されるため、上型100は摺接面e4を支持板部1Aに押圧されると同時に平面e5を上型押さえ部材3aの直状棒部材18a及び縦向き押圧平面部c5aに押圧されて被支持部100aを支持板部1Aと上型押さえ部材3aとで強力にクランプされた状態となる。
このクランプ状態では、直状棒部材18aは押圧力発生手段4の押圧力で上型100の平面e5に押されて直状棒部材支持溝c7a内に弾性手段19の弾力に抗して没入した状態となり、縦向き押圧平面部c5aが平面e5に圧接する上で何ら障害とならない。
【0037】
この後、プレスブレーキにおける上下テーブルの可動側を上下動して上型100と下型とを係合させることにより、上型100は縦向き押圧平面部3a及び直状棒部材18aや支持板部1Aに圧接した状態でこれらに対し相対的に上昇される。
この上昇により、当接面e2は支持板部1Aの下端面i1に密状に当接され、上型100は図3に示すようにホルダ本体1に対する特定位置に強力且つ安定的にクランプされた状態となる。
【0038】
上述のように、上型ホルダ装置に上型100をクランプさせた後、上型ホルダ装置から上型100を取り外すには、操作レバー21aをアンクランプ位置p4に移動させる。これにより、支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの前後方向間隔が増大されて上型100は支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間から抜け落ちる。
【0039】
次に図7中Bに示す上型100を装着する場合について説明する。
図5に示すように操作レバー21aを中間操作範囲H内の任意位置に揺動させた状態にする。この状態では弾性手段15Aの弾性力及び支点手段5Aのスプリング10の弾力が上型押さえ部材3aに作用し且つカム部材21のホルダ本体1側への張出し量が中間的な特定大きさとなるため、支持板部1Aと上型押さえ部材3aの下端部とが被支持部100aの前後方向厚さよりも僅かに大きく開いた状態となる。さらに詳細には支持板部1Aの前面a1と上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5aとの前後方向間隔が被支持部100aの前後方向厚さより僅かに大きい状態となる。
【0040】
この状態の下で、上型100における被支持部100aを支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間へ左右方向f2から挿入し、上型100に形成された係止溝e3内に上型押さえ部材3aの直状棒部材18aを位置させる。このさい、被支持部100aは上型押さえ部材3aや支持板部1Aや直状棒部材18aに強く接触するものとならず、被支持部100aは支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間に円滑に挿入される。またこの挿入状態では、上型100は支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間から落下するのを直状棒部材18aと係止溝e3との係合により阻止される。
【0041】
次に操作レバー21aを左右向き姿勢にしてクランプ位置p1に位置させる。これにより被支持部100aは既述した作用により支持板部1Aの前面a1と上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5aとで強力にクランプされた状態となる。このさい、上型押さえ部材3aの直状棒部材18aの後面は係止溝e3の底面に接触しないか或いは弾性手段19の弾力により比較的小さい圧力で接触した状態となる。
【0042】
この後、プレスブレーキにおける上下テーブルの可動側を上下動して上型100と下型とを係合させることにより、上型100は上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5a及び直状棒部材18aや支持板部1Aに圧接した状態でこれらに対し相対的に上昇される。
この上昇により、当接面e2はやがて支持板部1Aの下端面i1に密状に当接され、上型100は図8に示すようにホルダ本体1に対する特定位置に強力且つ安定的にクランプされた状態となる。
【0043】
上述のように、上型ホルダ装置に上型100を装着した後、上型ホルダ装置から上型100を取り外すには、操作レバー21aを中間操作範囲H内の任意位置に移動させる。この状態では支持板部1Aの前面a1と上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5aとの前後方向間隔が被支持部100aの前後方向厚さよりも僅かに大きくなるが、直状棒部材18aは係止溝e3内から完全には抜け出ない状態となる。
【0044】
これにより、上型100は締付け状態を解除されるため、自重により下降しようとするが、係止溝e3の上面が直状棒部材18aに係止されるので、上型100が支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間から落下することはない。
この後、上型100を左右方向f2へ移動させるのであり、これにより上型100は上型ホルダ装置から抜き外される。
【0045】
次に図7中Cに示す上型100を装着する場合には、図5に示すように操作レバー21aを中間操作範囲H内の任意位置に揺動させた状態にする。これにより既述したように、支持板部1Aと上型押さえ部材3aの下端部とが開いて、支持板部1Aの前面a1と上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5aとの前後方向間隔が被支持部100aの前後方向厚さより僅かに大きい状態となる。
【0046】
この状態の下で、上型100における被支持部100aを支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間に左右方向f2から挿入し、上型100に形成された係止溝e3内に上型押さえ部材3aの直状棒部材18aを位置させる。このさい、被支持部100aは上型押さえ部材3aや支持板部1Aや直状棒部材18aに強く接触するものとならず、被支持部100aは支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間に円滑に挿入される。またこの挿入状態では、上型100は支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間から落下するのを直状棒部材18aと係止溝e3との係合により阻止される。
【0047】
次に操作レバー21aを図4に示すようにクランプ位置p1に操作する。これにより被支持部100aは既述した作用により支持板部1Aの前面a1で摺接面e3を押圧されると同時に上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5aで平面e7を押圧されて強力にクランプされた状態となる。このさい、上型押さえ部材3aの直状棒部材18aの後面は係止溝e3の底面に接触しないか或いは弾性手段19の弾力により比較的小さい圧力で接触した状態となる。
【0048】
この後、プレスブレーキにおける上下テーブルの可動側を上下動して上型100と下型とを係合させることにより、上型100は上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5a及び直状棒材18aや支持板部1Aに圧接した状態でこれらに対し相対的に上昇される。
この上昇により、当接面e2はやがて支持板部1Aの下端面i1に密状に当接され、上型100は図9に示すようにホルダ本体1に対する特定位置に強力且つ安定的にクランプされた状態となる。
このさい、傾斜面部e8は被支持部100aをクランプする上で従来より得られる本来的な作用を奏するものとならないのであるが、このことは本発明に係る上型ホルダ装置で上型100をクランプする上で何ら障害を生じさせるものとならない。
【0049】
上述のように、上型ホルダ装置に上型100を装着した後、上型ホルダ装置から上型100を取り外すには、操作レバー21aを中間操作範囲H内の任意位置に移動させる。この状態では支持板部1Aの前面a1と上型押さえ部材3aの縦向き押圧平面部c5aとの前後方向間隔が被支持部100aの前後方向厚さよりも僅かに大きくなるが、直状棒部材18aは係止溝e3内から完全には抜け出ない状態となる。
【0050】
この状態で、上型100は締付け状態を解除されるため、自重により下降しようとするが、係止溝2eの上面が直状棒部材18aに係止されるので、上型100が支持板部1Aと上型押さえ部材3aとの間から落下することはない。
この後、上型100を左右方向f2へ移動させるのであり、これにより上型100は上型ホルダ装置から抜き外される。
【0051】
上述したところでは、上型100を支持板部1Aと前側の上型押さえ部材3aとの間に装着する場合について説明したが、これに代えて支持板部1Aと後側の上型押さえ部材3bとの間に装着することも差し支えない。この場合、前側の上型押さえ部材3aは適宜な係止具を使用して支持板部1Aに同体状に位置保持させた状態となす。この状態で操作レバー21aを揺動させると押圧力発生手段4はカム部材21で弾性部材4aを圧縮変形され、後側の上型押さえ部材3bに対し前側の上型押さえ部材3aの場合と同様に作用するものとなる。したがって、上型ホルダ装置は上型100を支持板部1Aと後側の上型押さえ部材3bとの間に装着する場合にも上述したところと実質的に同一に作用するものとなる。
【0052】
なお、本発明は上記実施形態に限るものではなく、各部をこれと実質的に同様に機能する他の構成に変更したものとなすことは任意になし得ることであり、このようなものも本発明の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明に係る上型ホルダ装置の正面図である。
【図2】図1のx1−x1部を示す断面図である。
【図3】図1のx2−x2部を示す図である。
【図4】前記上型ホルダ装置の操作レバーをクランプ位置に操作した状態を示す図である。
【図5】前記操作レバーを中間操作範囲内に操作した状態を示す図である。
【図6】カム部材及び操作レバーを示すものでAは平面図でBは正面図である。
【図7】前記上型ホルダ装置に装着される上型を示すものでAは被支持部に係止溝を有しないものを示す図でBは被支持部に係止溝を有するが傾斜面を有しないものを示す図でCは被支持部に係止溝及び傾斜面を有するものを示す図である。
【図8】前記上型ホルダ装置に図7中のBに示す上型を装着した状態を示す図である。
【図9】前記上型ホルダ装置に図7中のCに示す上型を装着した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ホルダ本体
1A 支持板部
3a 上型押さえ部材
4 押圧力発生手段
18a 直状棒部材
19 弾力手段
21 カム部材
21a 操作レバー
22 軸部材
100 上型
100a 被支持部
a1 縦向き被押圧面
c2 支持板部側縦向き面
c5a 縦向き押圧平面部
c7a 直状棒部材支持溝
e2 係止溝
f2 左右方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部テーブルに取付けるホルダ本体の下部に形成された支持板部と、この支持板部に上型の被支持部を押圧し前記支持板部との間に上型を挟み付ける上型押さえ部材とを備えたプレスブレーキ用上型ホルダ装置において、前記上型押さえ部材の上型側縦向き面の最下部に前記上型の被支持部の縦向き被押圧面部と面接触する縦向き押圧平面部を形成すると共に、この縦向き押圧平面部の上下方向長さ途中の左右方向箇所に直状棒部材支持溝を形成され、この直状棒部材支持溝内には前記上型の被支持部の係止溝の断面形状に対応した特定断面形状の直状棒部材が前記縦向き押圧平面部に直交した前後方向の一定範囲内での変位可能に且つ前記被支持部側へ弾力手段で付勢された状態に嵌合されている構成を特徴とするプレスブレーキ用上型ホルダ装置。
【請求項2】
前記上型押さえ部材に軸部材を介してカム部材を回動可能に装着すると共にこのカム部材を回動させるための操作レバーを設け、一方では前記カム部材の回動に関連した変位を入力されてこの変位に関連した大きさの特定向き押圧力を前記カム部材に付与するものとした押圧力発生手段を設け、前記操作レバーが軸部材回りへ操作されると、その操作量に対応して前記上型押さえ部材が前後方向へ変位され前記被支持部を前記操作量に対応した大きさの押圧力で前記支持板部に向け押圧することを特徴とする請求項1記載のプレスブレーキ用上型ホルダ装置。
【請求項3】
前記操作レバーが縦向きとなされた前記軸部材回りの左右方向へ向けられたときに前記上型押さえ部材が前記被支持部を前記支持板部に特定大きさの押圧力で押圧した状態となり、また左右方向へ向けられた前記操作レバーの自由端部が前記軸部材回りで前記被支持部から離れる側へ揺動されたときに前記上型押さえ部材が前記被支持部から離れる側へ連動されることを特徴とする請求項2記載のプレスブレーキ用上型ホルダ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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