説明

プレスブレーキ用金型ホルダー装置

【課題】長手方向に保持溝を持つ上金型が金型ホルダー装置から2mm程落下することを防ぐプレスブレーキ用金型ホルダー装置を提供する。
【解決手段】締金27に出没自在に備えられた、金型保持面23rを持つ金型保持部材61と金型締付面27hを持ち、金型締付時にばね等により蓄勢される傾斜部を持った部材4に滑合する傾斜部を持つ部材2を有する締金25を持ち、上金型締付時に上金型を上方向へ移動保持した状態で、上金型をホルダー本体21に締付装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にプレスブレーキと称せられる板金材を成形加工する機械において上金型を保持する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の通り、板金材の成型加工等を行なうプレスブレーキは、プレスブレーキの上部テーブルに装着される上金型とプレスブレーキの下部テーブル上に装着される下金型とを有して成るものであり、上記上金型の先端と下金型の溝部を噛み合わせることによってワークの加工を行なうものである。
そして、上記プレスブレーキに使用される上金型は、プレスブレーキの上部テーブルに取り付けられた金型ホルダー装置に取り付けられる。しかし、箱状の製品を作る場合においては、長手方向に保持溝を持ち、かつ長手方向に分割された、複数個の上金型を金型ホルダー装置に取り付けることになるが、この際上記上金型がそれぞれ均等に締め付けられず、幾つかの分割された上金型が、上金型の保持溝の上面が金型ホルダー装置の締金に設けられたストッパー部に当たるまで約1〜2mm下降したりすることも有り、作業性も悪く危険であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術による長手方向に保持溝を持つ上金型の落下を防ぎ装着し、作業の安全性を高め金型ホルダー装置の機能向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成する為に、本発明は次の技術的手段を有する。長手方向に保持溝をもつ上金型の上記保持溝上部の面に接し、正面から見て前後に移動可能な金型保持面を持つ金型保持部材を持つか又は、上記保持溝上部の面に接する突起部を持ち、締付ボルト等による締め付け力を金型の締付面に伝える金型締付面を持つと共に、締付時にホルダー本体にボルト等で支持され、バネ等により蓄勢される傾斜部を持つ部材に滑合する傾斜部を持つ部材を有し、金型締付時締付方向及び上方に移動する締金を持つ金型ホルダー装置である。
【発明の効果】
【0005】
上記締金を持つ金型ホルダー装置に、長手方向に保持溝を持つ上金型を入れるときは、締付ボルトを反時計方向に廻し、上記金型の保持溝上部の面を金型保持部材の金型保持面(金型保持部材を持たない場合は、突起部の金型保持面)に載せ横から入れるか、上記金型を金型保持部材とホルダー本体との間に下方から入れ、上記金型の保持溝上部の面を金型保持部材の金型保持面(金型保持部材を持たない場合は、突起部の金型保持面)に載せる。この状態で締付ボルトを時計方向に廻し締め付けると、締金の背面に取り付けられ傾斜部を持つ部材が、ホルダー本体にボルト等で支持されバネ等で蓄勢される傾斜部を持つ部材に接合している為、上記金型を上方向に持ち上げた状態で締め付けることになり、締付前にあった締金の締付面と上記金型の締付面の隙間、及びホルダー本体の下面と上記金型の負荷面との隙間もなくなった状態で上記金型は締付保持され、落下はしない。
金型保持部材を持つ締金では、長手方向に保持溝を持たない上金型も同様に横又は下方から金型ホルダー装置に入れることができ、金型締付時には、金型保持部材は締金本体に設けられた溝部の中に移動し、上記上金型は装着される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の理解を容易にする為に、添付図面に使用した符号を用いて全体構成について説明する。
【0007】
図面を参照するに、本発明の実施に係るプレスブレーキ用金型ホルダー装置は、全体的に数字1で示してあり、板金材を成形加工するプレスブレーキにおいて上金型3を保持するものであり、プレスブレーキの前面上部にある水平の長い形状の支持部材5(上部テーブルとも言う)に、公知の方法により、懸垂する状態にて装着される。なお、説明の進行によって理解されるとおり、第1図、第2図、第3図、および第5図においては、上金型3は、金型ホルダー装置1によって保持されるべき位置にあるが、未だ最終的に保持されない状態として示されている。
【0008】
特に第1図において、金型ホルダー装置1は、複数個のボルト7とスプリングピン9によって矩形の板11に固定されており、その矩形の板11は公知の方法によってプレスブレーキの支持部材(上部テーブルとも言う)に取り付けられている。また、公知の技術として、楔15が、金型ホルダー装置1の上方部にプレスブレーキの支持部材5の下面に接する状態で、板11にボルト17により座金19を介して固定されている。因に、第2図に示すとおり、ボルト17が通る板11の穴の開口部で座金19がある部分は、楔15の水平に移動により、板11が上下に動けるように形成されている。なお、図示を省略するが、周知のとおり、プレスブレーキの支持部材5(上部テーブルとも言う)の直下には、一般にテーブルと称する支持部材があり、その上に、板金材を成形加工するために上金型3と協働する下金型が装着される。かくて、成形加工されるべき板金材が下金型上に載置され、それを成形加工するために、上金型3を支持する支持部材5と下金型を支持する下方の支持部材のいずれかが他方に対して垂直に駆動される。なお、第1図において、金型ホルダー装置1と上金型3はそれぞれ1個だけ示してあるが、幅の広い板金材を成形加工するためには、複数個の分割された上金型が第1図の左右方向に連結されて用いられ、この為に、複数個の金型ホルダー装置1が用いられる。
【0009】
周知のとおり、上金型3は、上部に装着のためのシャンク部3sを有し、板金材の成形加工時の加重を受けるように、そのシャンク部3sの根本に、肩状に水平な負荷面3fが形成されている。また、上金型3は、周知のとおり、一般に、落下に備える安全対策として、長手方向に断面が矩形の落下防止用の保持溝3gが形成されている。ただし、後述のとおり、本金型ホルダー装置1は、上金型3が保持溝3gを有すると否とにかかわらず、これを保持することができる。
【0010】
特に第1図、第2図および第3図に明示されるとおり、金型ホルダー装置1は、ホルダー本体21を有し、これは、プレスブレーキの左右方向に長く上下方向に短く前後方向に薄い直方体状の部材である。ただし、本実施例において、ホルダー本体21は、第1図にて見られるとおり、上面が傾斜を成し楔15に接し、ボルト17を緩め楔15を水平に動かすことにより、高さを調整できるように構成されている。ホルダー本体21は、下面に、長い直方体状の金型保持部23が形成されており、これは、前後に、上金型3を受ける垂直の金型保持面23fおよび23rを有する。なお、上金型3は、図示においてはホルダー本体21の金型保持部23の前部金型保持面23fにて保持されるが、成形加工される板金材の寸法や形状等により、前後の金型保持面23fおよび23rのいずれかで保持される。ただし、上金型3は、普通はホルダー本体21の前部で保持するのが便利であるので、本実施例においては、金型ホルダー21は、主として、前部金型保持面23f側で保持するように構成されている。
【0011】
特に第1図、第2図、第3図および第5図に明示されるとおり、上金型3をホルダー本体21の金型保持部23にて保持するために、その前後に、すなわち第2図および第3図において金型保持部23の両側に、長方形の板状の締め金25および27が金型保持部23に平行に備えられている。締め金25および27は、それぞれ、その下端部に締付部25hおよび27hを有し、締付けボルト6及び6′によって水平の状態で保持され、それらの締付部25hおよび27hがそれぞれ金型保持部23の金型保持面23fと23rに対して上金型3を押し当て保持できるように構成されている。
又、締め金25および27はその背面に設けられた溝10に隙間なく組込まれ、止めねじ8で保持された傾斜部(正面から見て矩形)を持つ部材4を有する、上記部材4の傾斜部に滑合する傾斜部を持つ部材2(正面から見て矩形または丸)は、皿バネ12を介して上記部材4を持つ締め金25及び27と共に締付ボルト6及び6´によってホルダー本体21に装着されている。締付ボルト6及び6′が通る部材4の穴は図1及び図2が示すように、穴部上方は締付ボルト6及び6′の上部に接しており、下部は締め金25及び27が部材4と共に上昇しても締付ボルト6及び6′の下部には接しない。
締金25は、締金27を締付ボルト6′で締め付けるために、工具を入れる穴29を有する。本実施例に於いては、穴29は第1図に示すとおり締金25に2箇所それぞれ同じ高さに設けられている。
【0012】
特に第1図、第2図および第3図にて見られるとおり、締め金25および27は、いずれも、その下端部の締め付け部25hおよび27hに、その全長に亘って水平に長手方向の溝25gおよび27gが形成されており、その溝25gおよび27gに、金型保持部材61を有する。金型保持部材61は、締め金25および27とほぼ同じ長さの部材であり、水平な金型保持面61hおよび傾斜面61sを有し、締め金25および27の溝25gおよび27gに、複数個のネジ63によって水平に移動可能に保持され、かつ、ばね64によって上金型3の方向に締め金25および27から突出するように蓄勢されている。すなわち、金型保持部材61は、締め金25および27の締め付け部25hおよび27hに形成された溝25gおよび27gに、出没自在に備えられている。金型保持部材61は、上金型3に保持溝3gがある場合に、上金型3を保持溝3gによって保持するものものであり、上金型3の万一の落下に備えるとともに、上金型3を締め金25または27により最終的に締め付け保持する前に仮に保持するものである。このために、金型保持部材61は、第2図および第3図に示すとおり、保持溝3gのある金型3が締め金25または27とホルダー本体21の金型保持部23との間に締め付け保持されるべき位置にある時、上金型3の保持溝3g内に位置し、その金型保持面61hが保持溝3gの上部面により上金型3を保持できるように構成される。なお、金型保持部材61の金型保持面61hは、上金型3の保持溝3gの上部面に当接し上金型3を保持するものであり、また、金型保持部材61の傾斜面61sは、カムの働きをなし、例えば上金型3が装着時に当接すれば、金型保持部材61はばね64に抗して締め金25または27内に没入する。上記の構成により、上金型3を締付保持するために、締め付けボルト6が締付方向に回転されれば、締め金25は、第2図において右側に移動しつつ、傾斜部を持つ部材4と皿バネ12により蓄勢された傾斜部を持つ部材2との滑合により上向へ押し上げられる。この様にして締め金25が押し上げられる結果、上金型3は、その保持溝3gに係合する金型保持部材61によって,その負荷面3fがホルダー本体21の金型保持部23の下面に完全に当接まで持ち上げられる。(詳細な説明は省くが、図5に示す金型保持部材61等を持たず金型保持面61hに相当する突起部Bを持つ締め金も同様である。)このような状態で、さらに締め付けボルトを締付方向に廻せば、上記のように上金型3は上方へ移動できないため、傾斜部を持つ部材4と傾斜部を持つ部材2は滑りをとめ、皿バネ12を圧縮しつつ締め付け面25hと金型締め付面23fで上金型3を締め付け保持する。
因に、上金型3に保持溝3gがない場合、金型保持部材61は、バネ64に抗して締め金25または27に没入させられる。
【0013】
第1図、第3図及び第4図を参照するに、上金型3をホルダー本体21の金型保持部23の後方すなわち第3図において右側にて装着するために、ホルダー本体21の下部に、締め金27を締め付けるための締め付けボルト6′が備えられている。本実施例においては、締め付けボルト6′は、第1図に示すとおり、ホルダー本体21の左右2箇所に、それぞれ同じ高さにて設置され、ホルダー本体21に水平に形成された穴を貫通し、皿バネ12、傾斜部を持つ部材2及び傾斜部を持つ部材4を持つ締め金27を通り、締め金27に設けられた溝部32にスプリングピン30によって係止されたナット31に螺合している。
かくて、金型3の保持溝上部を金型保持面61hにのせ、締め付けボルト6′を締付方向に廻せば、上述のように金型3の負荷面3rがホルダー本体21の金型保持部23の下面に当接する状態で、金型3は締付保持される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 プレスブレーキに装着された本発明の金型ホルダーを示す正面図である。
【図2】

【図3】

【図4】

【図5】 金型保持部材を持たず、金型保持面を持つ、突起部を持った締金の側面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 金型ホルダー装置
2 部材
3 上金型
4 部材
5 支持部材
6 締付ボルト
7 ボルト
8 止めネジ
9 スプリングピン
10 溝
11 板
15 楔
17 ボルト
19 座金
21 ホルダー本体
23 金型保持部
23f 金型保持面
23r 金型保持面
25 締め金
25h 締め付け面
25g 溝
27 締め金
27h 締め付け面
27g 溝
29 穴
30 スプリングピン
31 ナット
32 溝部
61 金型保持部材
61h 金型保持面
61s 傾斜面
63 ネジ
64 ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレスブレーキの前面上部にある水平の長い形状の支持部材(上部テーブルとも言う)に対して金型を着脱可能に装着支持する金型ホルダー装置にして、金型保持面と金型締付面を持つと共に、ホルダー本体内にボルト等で支持され、バネ等により蓄勢され、正面から見て前後に移動可能な傾斜部を持つ部材に滑合する部材又は部位を有し、金型締付時、長手方向に保持溝を持つ上金型を、上方向に持ち上げることにより、ホルダー本体の金型保持部下面と上金型の負荷面との隙間をなくし、上記上金型をホルダー本体に締め付け装着することのできる。締金と上記バネ等及びそのバネ等によって蓄勢される上記傾斜部を持った部材を持つホルダー本体から構成されることを特徴とする、金型ホルダー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate