説明

プレスロール成形装置

【課題】プレスロール成形装置において、ロール移動方向への金型の移動作業を簡便化する。
【解決手段】ロール5の移動方向へ金型3をスライド可能なスライド手段8を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレスロール成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、ロールを用いて材料片を金型に対して押し付けることにより、材料片の成形を行うプレスロール装置が広く用いられている。
例えば、ジェットエンジンの圧縮機に用いられる静翼の多くは、プレスロール成形装置の一種であり、成形と同時に鍛造を行うプレスロール鍛造装置によって製造されている(特許文献1及び2)。
【0003】
例えば、特許文献1及び2に開示されたプレスロール鍛造装置では、油圧装置等によって荷重を受けるロールが回転しながら移動可能とされており、ロールを移動させ、金型の手前側において把持されて支持される材料片をロールによって金型に対して押し付けることによって材料片の成形を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4483168号明細書
【特許文献2】米国特許第5600995号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、プレスロール鍛造装置では、材料片を複数回に分けて成形する場合がある。このような場合には、材料片に対してロールを繰り返し押し付けることとなる。
ところが、材料片は、ロールによって押し付けられるごとに伸びて変形する。このため、従来から、材料片の伸びに合わせて金型の位置を移動し、金型の成形溝部が材料片の製品位置に合わせる作業を行っている。
【0006】
しかしながら、従来のプレスロール鍛造装置において金型の位置を移動させるためには、一旦金型をプレスロール鍛造装置から取外し、スペーサを設置する必要があった。このため、従来のプレスロール鍛造装置では、金型を移動させるために長い時間を要した。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、プレスロール成形装置において、ロール移動方向への金型の移動作業を簡便化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を採用する。
【0009】
第1の発明は、ロールによって材料片を金型に対して押し付けることで上記材料片の成形を行うプレスロール成形装置であって、上記ロールの移動方向へ上記金型をスライド可能なスライド手段を備えるという構成を採用する。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記スライド手段が、水平かつ上記ロールの移動方向に対して傾斜して延在する係合溝を有する第1ブロックと、上記金型に対して上記ロールの移動方向から接続して固定されると共に上記係合溝に摺動可能に嵌合する第2ブロックと、上記第2ブロックを水平かつ上記ロールの移動方向と直交する方向に移動する駆動手段とを備えるという構成を採用する。
【0011】
第3の発明は、上記第2の発明において、上記駆動手段が、サーボモータであるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スライド手段により金型をロールの移動方向へスライドできるため、作業者が金型を取り外す必要がなくなり、ロール移動方向への金型の移動作業を簡便化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態におけるプレスロール鍛造装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施形態におけるプレスロール鍛造装置が備える金型スライド機構の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明に係るプレスロール成形装置及びプレスロール成形方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。また、以下の説明においては、本発明のプレスロール成形装置の一例としてプレスロール鍛造装置を挙げて説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1の概略構成を示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1は、ベース1と、ガイドレール2と、金型3と、把持部4と、ボトムロール5(ロール)と、トップロール6と、支持部材7と、金型スライド機構8(スライド手段)と、上部ブロック9と、油圧装置10と、ロールスライド駆動部11と、制御装置12とを備えている。
なお、以下の説明においては、ボトムロール5の移動方向Lにおいて、材料片Xの成形を行う際にボトムロール5が進行する先側を下流側とし、その反対側の上流側とする。
【0016】
ベース1は、図1に示すボトムロール5の移動方向Lから見て、その中央部に金型3を収容する第1窪み1aを備えている。この第1窪み1aは、上方から見て移動方向Lの下流側が開口された矩形に形状設定されている。
また、ベース1は、ボトムロール5の移動方向Lにおける第1窪み1aの上流側に後述する把持部4の把持爪4aを回動可能に収容する第2窪み1bを備えている。この窪み1bを形成する壁面のうち、下流側の壁面は、材料片Xの先端部を当接させることによって材料片Xが傾斜した成形姿勢(図1に示す姿勢)とするための傾斜面1b1とされている。
また、ベース1において、第1窪み1a及び第2窪み1bを囲う上面1cは、ボトムロール5の受面として機能する。
【0017】
ガイドレール2は、ボトムロール5の移動方向に沿ってベース1の上面1bに設置されており、支持部材7の移動(すなわちボトムロール5及びトップロール6の移動)をガイドするものである。
ガイドレール2は、第1窪み1a(すなわち金型3)を中央にして両側に各々設置されている。
【0018】
金型3は、上面3bがボトムロール5の受面とされてベース1の上面1bと面一となるように窪み1aに収容されている。
金型3は、材料片Xを目的形状に成形するための成形溝部3aを備えている。この成形溝部3aは、金型3の上面3bに露出して形成されている。
そして、当該成形溝部3aに材料片Xが押し付けられて充填されることにより材料片Xが成形される。
【0019】
把持部4は、材料片Xを把持して支持するためのものであり、把持爪4aと把持爪駆動部4bとを備えている。
把持爪4aは、ベース1の第2窪み1bに収容されており、第2窪み1bの上記傾斜面1b1との間で材料片Xを狭持することで把持する把持姿勢(図1に示す姿勢)と、上記傾斜面1b1との間を大きく開けて材料片Xの脱着を可能な開放姿勢との間で回動可能に軸支されている。なお、把持爪4aの上面4a1は、把持爪4aが把持姿勢である場合に、ベース1の上面1cと面一となると共にボトムロール5の受面となる面として構成されている。
把持爪駆動部4bは、把持爪4aを回動させる駆動力を発生するものであり、把持爪4aと接続されている。
【0020】
ボトムロール5は、ベース1、金型3あるいは把持爪4aと当接し、ベース1の上面1c、金型3の上面3bあるいは把持爪4aの上面4a1を受面として転がり可能に配置されている。そして、ボトムロール5は、材料片Xを金型3に対して押し付けることによって材料片Xの成形を行う。
トップロール6は、ボトムロール5の上方に当該ボトムロール5と当接して配置されている。このトップロール6は、ボトムロール5と同様の円柱形状を有しており、下位同軸がボトムロール5の回転軸に対して平行かつ鉛直方向に離間して配置されている。そして、トップロール6は、上部が上部ブロック9の下面9aと当接しており、上部ブロック9とボトムロール5との間で回動することによって、ボトムロール5を回動移動可能としている。
【0021】
支持部材7は、ボトムロール5とトップロール6とを一体的に軸支すると共に、ガイドレール2に対して摺動可能に嵌合されている。
そして、この支持部材7は、ロールスライド駆動部11と接続されており、ロールスライド駆動部11から駆動力を伝達されることによって、ガイドレール2に沿って移動する。この結果、当該支持部材7に軸支されたボトムロール5及びトップロール6が回転しながらガイドレール2に沿って移動する。すなわち、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1においては、支持部材7がボトムロール5及びトップロール6の移動に伴って移動する。
【0022】
金型スライド機構8は、ボトムロール5の移動方向Lへ金型3をスライドするものである。図2は、金型スライド機構8の上面図である。この図に示すように、連結ブロック8a(第2ブロック)と、移動ブロック8b(第1ブロック)と、レール8cと、サーボモータ8d(駆動手段)とを備えている。
【0023】
連結ブロック8a、移動ブロック8b及びレール8cは、ベース1に設けられた収容溝1d内に収容されて配置されている。
【0024】
連結ブロック8aは、金型3に対してボトムロール5の移動方向Lから接続して固定されるものである。この連結ブロック8aは、移動ブロック8bの係合溝8b1に対して摺動可能に係合されている。
なお、連結ブロック8aは、図2に示すように、隙間Sを空けて配置されており、ボトムロール5の移動方向Lに対して移動可能とされている。
【0025】
移動ブロック8bは、ボトムロール5の移動方向Lに対して傾斜して延在する係合溝8b1を有しており、レール8cに摺動可能に嵌合することによって収容溝1d内をレール8cに沿って移動可能とされている。
【0026】
レール8cは、収容溝1d内に敷設され、ボトムロール5の移動方向Lと直交する方向に沿って延在している。
【0027】
サーボモータ8dは、移動ブロック8bと連結しており、移動ブロック8bに伝達される駆動力を発生することによって移動ブロック8bをボトムロール5の移動方向Lと直交する方向に移動するものである。
【0028】
このような金型スライド機構8では、サーボモータ8dで発生した駆動力が移動ブロック8bに伝達されて移動ブロック8bが移動すると、収容溝1dがボトムロール5の移動方向Lに対して傾斜されているため、収容溝1dに係合された連結ブロック8aが上記移動方向Lに移動する。
なお、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1においては、係合溝8b1がサーボモータ8d側から遠のくに連れて移動方向Lの上流側に傾斜しており、移動ブロック8bがサーボモータ8dから遠のく側(図2の紙面左側)に移動することによって連結ブロック8aを介して金型3が移動方向Lの下流側に移動し、移動ブロック8bがサーボモータ8dに近づく側(図2の紙面右側)に移動することによって連結ブロック8aを介して金型3が移動方向Lの上流側に移動する。
【0029】
図1に戻り、上部ブロック9は、トップロール6の上方に配置されており、下面9aがベース1の上面1c、金型3の上面3b及び把持爪4aの上面4a1と平行とされている。そして、当該上部ブロック9には、上面側から油圧装置10が接続されている。
【0030】
油圧装置10は、上方から上部ブロック9を押圧することによって、上部ブロック9及びトップロール6を介してボトムロール5に対して荷重を掛けるものである。
【0031】
ロールスライド駆動部11は、支持部材7を押し引きすることによって、ボトムロール5を回動移動させるものである。
例えば、図1の配置関係であれば、ロールスライド駆動部11が支持部材7を押すことによってボトムロール5が回動しながら紙面左側に向けて移動し、ロールスライド駆動部11が支持部材7を引くことによってボトムロール5が回動しながら紙面右側に向けて移動する。
【0032】
制御装置12は、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1の動作全体を制御するものであり、把持爪駆動部4b、金型スライド機構8、油圧装置10及びロールスライド駆動部11、さらには必要に応じて外部機器に対して電気的に接続されている。
【0033】
なお、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1において、制御装置12は、材料片Xを複数回、金型3に対して押し付ける。つまり、制御装置12は、ボトムロール5を繰り返し回転移動する。
【0034】
そして、制御装置12は、材料片Xの成形途中において、どのタイミングで、どの程度金型3を金型スライド機構8によって移動するかを記憶している。この制御装置12が記憶する金型3の移動タイミング及び移動量は、材料片Xを用いた実験やシミュレーションに基づいて、材料片Xに対して最適な成形が行われるように予め求められる。
例えば、材料片Xを3回金型3に対して押し付けることによって成形する場合において、1回目及び2回目の押し付け工程の際には金型3を移動させず、3回目の押し付け工程にて金型3を2mmあるいは3mm移動方向Lの下流側に移動させることによって、材料片Xに対して最適な成形が可能であることが実験あるいはシミュレーションにて求められた場合には、当該結果に基づいたプログラムが制御装置12に記憶され、制御装置12は、当該プログラムに基づいて金型スライド機構8の制御を行う。
【0035】
また、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1は、材料片Xの成形領域や、ボトムロール5及びトップロール6の移動領域に潤滑油を供給する供給装置を備えており、不図示のノズルから潤滑油を噴出する。
【0036】
次に、このように構成された本実施形態のプレスロール鍛造装置S1の動作について説明する。
なお、以下の説明において、プレスロール鍛造装置S1の動作を行う主体は制御装置12である。そして、制御装置12は、不図示の操作パネルやセンサから入力される信号や予め組み込まれたプログラムに基づいて動作する。
【0037】
まず作業者によって材料片Xが第1窪み1bに挿入されると、制御装置12は、把持爪駆動部4bを制御して把持爪4aを把持姿勢まで回動させ、これによって材料片Xを把持して支持する。
続いて、制御装置12は、油圧装置10を制御してボトムロール5に対して荷重を掛ける。
そして、制御装置12は、ロールスライド駆動部11を制御してボトムロール5を回動移動させ、当該ボトムロール5で材料片Xを金型3に対して押し付けることによって材料片Xの成形を行う。
また、制御装置12は、ボトムロール5の移動を繰り返して材料片Xの金型3への押し付け作業を複数回繰り返し、必要に応じて金型スライド機構8を制御することによって金型3を移動する。
【0038】
このような本実施形態のプレスロール鍛造装置S1によれば、金型スライド機構8により金型3をボトムロール5の移動方向Lへスライドできるため、作業者が金型3を取り外す必要がなくなり、ボトムロール5の移動方向Lへの金型3の移動作業を簡便化することができる。
【0039】
また、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1においては、金型スライド機構8が、水平かつボトムロール5の移動方向Lに対して傾斜して延在する係合溝8b1を有する移動ブロック8bと、金型3に対してボトムロール5の移動方向Lから接続して固定されると共に係合溝8b1に摺動可能に嵌合する連結ブロック8aと、連結ブロック8aを水平かつボトムロール5の移動方向Lと直交する方向に移動するサーボモータ8dとを備えている。
このような構成を採用することによって、装置構成を複雑化することなく、金型3の移動作業を簡便化することができる。
【0040】
また、本実施形態のプレスロール鍛造装置S1においては、サーボモータ8dを用いて移動ブロック8bを移動している。このため、移動ブロック8bの移動量を細かく調節することができ、金型3の位置を細かく調節することが可能となる。
【0041】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0042】
例えば、上記実施形態における金型スライド機構8の構成は一例であり、他の構成を採用することもできる。
具体的には、金型スライド機構8の駆動手段として油圧シリンダやエアシリンダ等を用いたり、連結ブロック8aと移動ブロック8bとの換わりに単一のブロックを用いる構成を用いたりしても良い。
【0043】
また、上記実施形態においては、金型を用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、金属以外の材料からなる型を金型の換わりに用いても良い。
【符号の説明】
【0044】
S1……プレスロール鍛造装置(プレスロール成形装置)、1……ベース、1a……第1窪み、1b……第2窪み、1b1……傾斜面、1c……上面、1d……収容溝、2……ガイドレール、3……金型、3a……成形溝部、3b……上面、4……把持部、4a……把持爪、4a1……上面、4b……把持爪駆動部、5……ボトムロール(ロール)、6……トップロール、7……支持部材、8……金型スライド機構(スライド手段)、8a……連結ブロック(第2ブロック)、8b……移動ブロック(第1ブロック)、8b1……係合溝、8c……レール、8d……サーボモータ(駆動手段)、9……上部ブロック、9a……下面、10……油圧装置、11……ロールスライド駆動部、12……制御装置、X……材料片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロールによって材料片を金型に対して押し付けることで前記材料片の成形を行うプレスロール成形装置であって、
前記ロールの移動方向へ前記金型をスライド可能なスライド手段を備えることを特徴とするプレスロール成形装置。
【請求項2】
前記スライド手段は、
水平かつ前記ロールの移動方向に対して傾斜して延在する係合溝を有する第1ブロックと、
前記金型に対して前記ロールの移動方向から接続して固定されると共に前記係合溝に摺動可能に嵌合する第2ブロックと、
前記第2ブロックを水平かつ前記ロールの移動方向と直交する方向に移動する駆動手段と
を備えることを特徴とする請求項1記載のプレスロール成形装置。
【請求項3】
前記駆動手段は、サーボモータであることを特徴とする請求項2記載のプレスロール成形装置。

【図1】
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【図2】
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