説明

プレス加工品用オートシューター

【課題】プレス加工において、型抜きされて落下してくる加工品を、人手を要さずに確実且つ安全に自動回収することができるプレス加工品用オートシューターを提供することを課題とする。
【解決手段】上面に傾斜面を有するベース1と、該傾斜面上に設置される支持板4と、それに固定される静止シュート8と、その上に摺動可能に配置される可動シュート11と、支持板4上に設置されて、可動シュート11を静止ベース8に沿って摺動させる駆動機構とから成り、駆動機構は、支持板4上に対置されて軸23が渡される軸支板21、22と、軸23に枢支される三方アームとを備え、三方アームは上流側上向きアーム25と上流側下向きアーム26と下流側アーム27とを備え、下流側アーム27には、一端が支持板4に固定されるリターンスプリング28の他端が固定され、上流側下向きアーム26の先端部は可動シュート11の側部に固定される被動板15に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス加工品用オートシューター、より詳細には、例えばコンパウンド金型を用いたプレス打抜き加工において、ステンレス等の金属製板材の打抜き後、上方に移動するメス型から落とされる加工品を受け、回収するためのプレス加工品用オートシューターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、上記プレス機械による打抜き加工において、型抜きされてメス型から突き落とされる加工品の回収は、手を差し入れて行なうことが多いが、その方法の場合は、誤って金型間に手を挟まれて大ケガをすることが少なくなく、危険を伴なう作業となる。
【0003】
また、落下してくる加工品をエアで吹いて回収することも考えられるが、加工品の向き等によってエアの作用が十分に及ばないこともあって、動作が不確実となるので、この方法は実用的とはいえない。
【0004】
【特許文献1】実開昭51−57476号公報
【特許文献2】実公平4−3697号公報
【特許文献3】実開平6−61330号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のとおり、打抜き加工品の回収を手作業で行なう場合は危険を伴ない、また、エアを利用する方法の場合は動作の安定性に欠けるといった問題があったので、本発明はそのような問題のない、即ち、プレス加工において、型抜きされて落下してくる加工品を、人手を要さずに確実且つ安全に自動回収することができるプレス加工品用オートシューターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、上面に傾斜面を有するベースと、前記ベースの傾斜面上に設置される支持板と、前記支持板に固定される静止シュートと、前記静止シュート上に摺動可能に配置される可動シュートと、前記支持板上に設置されて、前記可動シュートを前記静止ベースに沿って摺動させる駆動機構とから成り、前記駆動機構は、前記支持板上に対置されて軸が渡される軸支板と、前記軸に枢支される三方アームとを備えて成り、前記三方アームは上流側上向きアームと上流側下向きアームと下流側アームとを備え、前記下流側アームには、一端が前記支持板に固定されるリターンスプリングの他端が固定され、前記上流側下向きアームの先端部は前記可動シュートの側部に固定される被動板に係止されることを特徴とするプレス加工品用オートシューターである。
【0007】
好ましくは、前記支持板は、固定用ネジのネジ穴として長孔を有していて、前記ベースの傾斜面上における取付位置の変更が可能であり、前記上流側上向きアームは二分割されていて、前記軸側の部分に対する先端側の部分の角度の変更が可能となるようにされる。
【0008】
また、好ましくは、前記上流側下向きアームは、その先端部が前記被動板に形成された係止孔に遊挿されることによって前記係止板に係止され、前記支持板上には、前記係止板の下方折曲部を摺動させる支持溝が形成される。
【0009】
更に好ましくは、前記可動シュートの退避動作を検出するセンサーが前記可動シュートの外側面その他任意の個所に設置され、前記センサーからの信号に基づいてプレス動作の制御がなされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上記のとおりであって、プレス加工品を無人にて連続的に自動回収することができるので、安全であり、簡易な構成であって、既存のプレス機器にも簡単に設置でき、格別の動力を要しないで動作させることができるといった効果がある。
【0011】
また、請求項6に係る発明においては、可動シュートの退避動作が適正に行なわれない場合において、可動シュートが金型間に挟まれて高価な金型が損傷するといった事態の発生が確実に防止される効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態について、添付図面に依拠して説明する。図1乃至図4は、本発明に係るオートシューターの一実施形態を、それぞれ異なる角度から表わした斜視図である。
【0013】
図中1は、上面に傾斜面2を有するベースで、ネジ止め、溶着その他任意の方法で、プレス機のテーブル3上等、所望の位置に固定される。傾斜面2上には、支持板4が配置される。好ましくは、支持板4にはその長さ方向に延びる長孔5が形成され、この長孔5を通して固定ネジ6を傾斜面2にネジ込むことにより、支持板4を傾斜面上に固定するようにする。そのようにした場合、長孔5の長さ分だけ支持板4を、傾斜面2に沿って斜め上下方向に移動させることが可能となり、後述する可動シュート11の動作範囲の変更調節が可能になる。
【0014】
支持板4の内方側の長さ方向端縁は立上げられて、被固定壁7が形成され、被固定壁7に静止シュート8が固定される。静止シュート8は、その外方側端縁が立上げられて支持壁9が形成され、内方側端縁は下方に折曲されて固定壁10とされ、この固定壁10が被固定壁7に合接される。
【0015】
静止シュート8上には、その内側に収まるようにして、断面コ字状の可動シュート11が摺動可能に配置される。可動シュート11は、支持壁9の内側面に接して摺動する外側壁12と、これに対向する内側壁13とを有し、内側壁13は、被動板15に固定される。
【0016】
被動板15は可動シュート11と一体となって移動するものであって、可動シュート11に固定されてその動きを支持する支持部材16と、後述する駆動機構から駆動力を受ける被動部材17とから成る。支持部材16は断面がL字形状であって、その垂直面16aに可動シュート11の内側壁13が固定され、その水平面16bは静止シュート8の内方側端縁上にあって、その上を摺動する。
【0017】
被動部材17も断面L字形状であって、その下方向に折曲された垂直面17aの上半部が支持部材16の垂直面16aに固定される。垂直面17aの下半部は、被固定壁7と、支持板4上に定置されるガイドブロック18との間に形成されるガイド溝19内を摺動する。
【0018】
駆動機構は、支持板4上に対置されて軸23が渡される軸支板21、22と、軸23に枢支される三方アーム24とを備える。被動部材17には、内側の軸支板22を挿通するための逃げ穴17aが形成される。逃げ穴17aは、被動部材17の内方側端縁において長さ方向に延びる。言うまでもなく逃げ穴17aは、被動部材17の動きが軸支板22によって阻害されないようにするためのものである。
【0019】
三方アーム24は、上流側上向きアーム25と上流側下向きアーム26と下流側アーム27とを備える。下流側アーム27の端部にはリターンスプリング28の一端が固定され、該リターンスプリング28の他端は支持板4の側部に固定される。リターンスプリング28は、常時下流側アーム27を引張って下向きに回動するように作用する。
【0020】
上流側下向きアーム26の先端部26aは細幅にされ、この細幅にされた先端部26aは、被動部材17に穿設された係止孔29に遊挿される。好ましくは、上流側上向きアーム25の先端に、フリーロール30が取り付けられる。
【0021】
好ましくは上流側上向きアーム25は二分割され、その軸側部分25aに対する先端側部分25bの取付角度が変更可能となるようにされる。そのためには、例えば、先端側部分25bに扇形部25cを設け、ネジ穴31をその要部に1つと周縁部に複数穿設する。そして、その要部のネジ穴と周縁部の選択されたいずれかのネジ穴31に軸側部分25aをネジ止めする。その場合、周縁部のネジ穴31のいずれを用いるかによって、軸側部分25aと先端側部分25bの角度が変わることになる。
【0022】
このように、軸側部分25aに対して先端側部分25bの角度を変えることにより、後述する上下金型の間隔に対応させることができる。
【0023】
本発明に係るオートシューターは、既存のプレス機器に後付けするものとして開発されたものであるが、当初よりプレス機器等に備え付けることとしてもよいこともちろんである。後付けの場合には、ベース1を、ネジ止め、溶接等によって、プレス機のテーブル3等に固定することによって設置される。
【0024】
図5(図1)は、メス型41が上昇し、可動シュート11がその下に迫り出した状態を示している。その状態において三方アーム24は、リターンスプリング28の作用でその下流側アーム27が下方向に回動させられ、逆に上流側上向きアーム25が上方向に回動させられる(正方向への回動)。それらの回動端は、フリーロール30がメス型41に突設された停止板42に当たることによって規制される。
【0025】
その状態から、型抜きのためにメス型41が下降動作を始めると、フリーロール30が停止板42からリターンスプリング28による引張力以上の押下力を受けるため、三方アーム24は上記正方向とは逆の方向に回動する。その結果、下方向に回動する上流側下方向アーム26が、その先端部26が係合している係止孔29を介して被動部材17に作用し、被動部材17を斜め下方向に移動させる。
【0026】
この被動部材17の動きは、そのままそれと一体となった可動シュート11に伝わり、可動シュート11は静止シュート8上を滑動し、メス型41の昇降動作域から脱するように後退動作するので(図6、図2参照)、何ら型抜き動作の邪魔にはならない。この可動シュート11の後退動作は、被動部材17の垂直面17aがガイド溝19内を摺動することによってガイドされる。
【0027】
そして、型抜き動作後、メス型41が上昇するに伴なって停止板42も上昇し、フリーロール30に対する押下力が解除されるにつれ、三方アーム24は再びリターンスプリング28に引張られて正方向に回動する。その結果、被動部材17が、係止孔29を介して上流側下方向アーム26から上方への駆動力を受け、以て可動シュート11が前進動作して図5に示す状態、即ち、メス型41の下に迫り出した状態に復帰する。その状態において、メス型41から突き出されて落下してくる1又は複数の成形品を受け、これを下方に流して回収箱(図示していない)に落とし込む。
【0028】
以後上記動作を反復し、連続的に打抜き加工されて落下してくる加工品をその都度自動回収する。この回収動作には、一切人手を要さないので、作業者が手を挟まれるといった危険は全くなく、また、その動作のための動力として金型の動きを利用するので、配線等の煩わしさもなく、そのためのコストもかからない。
【0029】
図7は、本発明の他の実施形態の要部を示すもので、上記実施形態の構成に金型保護手段を組み込んだものである。即ち、可動シュート11は上述したように、メス型41の昇降に呼応して進退動作をするが、何らかの原因で可動シュート11が十分に退避動作をしないこともあり得る。その場合、可動シュート11が上下金型間に挟まれて、高価な金型が損傷するおそれがある。
【0030】
その対策として、この実施形態においては、任意の個所、例えば、可動シュート11の先端側外側面にセンサー32が取り付けられる。このセンサー32は、金型間に前進した可動シュート11が適正位置まで後退したことを検出するためのもので、例えば近接スイッチが用いられる。
【0031】
このセンサー32からの信号に基づいてメス型41の下降動作が制御される。即ち、図示せぬ制御装置は、センサー32からの正常信号を待って、メス型41の下降動作を許容する信号を送出する(もちろん、センサー32からの異常信号に基いてメス型41の動作を停止させることとしてもよい。)。かくして、何らかの原因で可動シュート11が適正位置に退避しない場合においてメス型41が下降動作をすることが防止され、可動シュート11の挟圧によって金型が損傷するおそれが回避される。
【0032】
この発明をある程度詳細にその最も好ましい実施形態について説明してきたが、この発明の精神と範囲に反することなしに広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は添付請求の範囲において限定した以外はその特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの構成を示す、一方向からの斜視図である。
【図2】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの構成を示す、別の方向からの斜視図である。
【図3】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの構成を示す、更に別の方向からの斜視図である。
【図4】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの構成を示す、更に別の方向からの斜視図である。
【図5】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの使用状態図(前進状態時)である。
【図6】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの使用状態図(後退状態時)である。
【図7】本発明に係るプレス加工品用オートシューターの他の構成例の要部を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 ベース
2 傾斜面
3 テーブル
4 支持板
5 長孔
6 固定ネジ
7 被固定壁
8 静止シュート
9 支持壁
10 固定壁
11 可動シュート
12 外側壁板
13 内側壁
15 被動板
16a、17a 垂直面
17 被動部材
18 ガイドブロック
19 ガイド溝
21、22 軸支板
23 軸
24 三方アーム
25 上流側上向きアーム
25a 軸側部分
25b 先端側部分
25c 扇形部
26 上流側下向きアーム
27 下流側アーム
28 リターンスプリング
29 係止孔
30 フリーロール
31 ネジ穴
32 センサー
41 メス型
42 停止板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に傾斜面を有するベースと、前記ベースの傾斜面上に設置される支持板と、前記支持板に固定される静止シュートと、前記静止シュート上に摺動可能に配置される可動シュートと、前記支持板上に設置されて、前記可動シュートを前記静止ベースに沿って摺動させる駆動機構とから成り、
前記駆動機構は、前記支持板上に対置されて軸が渡される軸支板と、前記軸に枢支される三方アームとを備えて成り、前記三方アームは上流側上向きアームと上流側下向きアームと下流側アームとを備え、前記下流側アームには、一端が前記支持板に固定されるリターンスプリングの他端が固定され、前記上流側下向きアームの先端部は、前記可動シュートの側部に固定される被動板に係止されることを特徴とするプレス加工品用オートシューター。
【請求項2】
前記支持板は、固定用ネジのネジ穴として長孔を有していて、前記ベースの傾斜面上における取付位置の変更が可能である請求項1に記載のプレス加工品用オートシューター。
【請求項3】
前記上流側上向きアームは二分割されていて、前記軸側の部分に対する先端側の部分の角度の変更が可能である請求項1又は2に記載のプレス加工品用オートシューター。
【請求項4】
前記上流側下向きアームは、その先端部が前記被動板に形成された係止孔に遊挿されることによって前記被動板に係止される請求項1乃至3のいずれかに記載のプレス加工品用オートシューター。
【請求項5】
前記支持板上に、前記被動板の下方折曲部をガイドするガイド溝が形成される請求項1乃至4のいずれかに記載のプレス加工品用オートシューター。
【請求項6】
前記可動シュートの退避動作を検出するセンサーが前記可動シュートの外側面その他任意の個所に設置され、前記センサーからの信号に基づいてプレス動作の制御がなされる請求項1乃至5のいずれかに記載のプレス加工品用オートシューター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−142733(P2008−142733A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332122(P2006−332122)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【特許番号】特許第4086884号(P4086884)
【特許公報発行日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(594164438)株式会社三雲製作所 (1)
【Fターム(参考)】