説明

プレス土を用いた芝用目土及びその製造方法

【課題】採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土を採取し、該洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させてプレス土を採取し、該プレス土を高温熱乾燥し、該高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理してなる人工土壌と、洗浄された山砂と、完全熟成された鶏糞と、添加剤とを適宜割合で混合してなる。
【解決手段】採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土Fを採取し、洗浄残土を高分子凝固剤Gにより凝固させてプレス土Pを採取し、プレス土を高温熱乾燥し、高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理して人工土壌Dを製造し、そして、この人工土壌に、洗浄された山砂、完全熟成された鶏糞及び添加剤Tを適宜割合で混合して芝用目土Qを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレス土の有効利用に用いられるプレス土を用いた芝用目土及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の芝用目土は、公園、ゴルフ場、庭園、グリーンベルト等において、外界の影響からの保護、凹凸のならし、めじ塞ぎ等の芝の健全生育の促進、土壌改良などを目的として用いられている。
【0003】
従来、この種の芝用目土として、砂のみ、砂と肥料とを混合したものなどが知られている。
【0004】
一方、プレス土を用いた人工土壌として、プレス土に繊維質を含む廃有機物を混合する方法が知られている。
【0005】
ここに、プレス土とは、採掘砕石や採取砂等の洗浄により洗い流された泥水状態の洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させた土をいう。
【特許文献1】特許第2923761号
【特許文献2】特開2001−120054
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらこのプレス土を用いた人工土壌の場合、人工土壌中に凝縮用の高分子凝固剤が残留しているおそれがあり、この高分子凝固剤としては、例えば、廃水処理用高分子凝集剤が用いられ、この中には化学名アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物等の化学薬品が用いられていることが多いので、この高分子凝固剤の存在により、芝の健全生育に対して副作用が生じて好ましくないことがあるという不都合を有している。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの不都合を解決することを目的とするもので、本発明のうちで、請求項1記載の発明は、採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土を採取し、該洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させてプレス土を採取し、該プレス土を高温熱乾燥し、該高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理してなる人工土壌と、洗浄された山砂と、完全熟成された鶏糞と、添加剤とを適宜割合で混合してなることを特徴とするプレス土を用いた芝用目土にある。
【0008】
又、請求項2記載の発明は、上記混合割合は、それぞれ全重量に対して、上記人工土壌約10重量%〜約30重量%、上記山砂約50重量%〜約80重量%、上記鶏糞約10重量%〜約30重量%、上記添加剤約0.001重量%〜約0.005重量%であることを特徴とするものであり、又、請求項3記載の発明は、上記添加剤は、枯草菌、乳酸菌、酵素等の菌群、米ぬか、ふすま、バイオカルシュウム等の天然資材群から選ばれる少なくとも一種類であることを特徴とするものである。
【0009】
又、請求項4記載の発明は、採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土を採取し、該洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させてプレス土を採取し、該プレス土を高温熱乾燥し、該高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理してなる人工土壌を製造し、この人工土壌に、洗浄された山砂、完全熟成された鶏糞及び添加剤を適宜割合で混合することを特徴とするプレス土を用いた芝用目土の製造方法にある。
【0010】
又、請求項5記載の発明は、上記プレス土の高温熱乾燥温度は、約200℃〜約300℃であることを特徴とするものであり、又、請求項6記載の発明は、上記プレス土の粉末化後の粒径は、約10μm(ミクロン)〜約60μmであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は上述の如く、請求項1又は4記載の発明にあっては、採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土を採取し、洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させてプレス土を採取し、プレス土を高温熱乾燥し、高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理して人工土壌を製造し、そして、この人工土壌に、洗浄された山砂、完全熟成された鶏糞及び添加剤を適宜割合で混合して芝用目土を製造することになり、この際、上記プレス土を高温熱乾燥させるから、高分子凝固剤に含まれるアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物等の作物等に害を及ぼす化学薬品を除去することができ、かつ、この高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理するから、この人工土壌と、洗浄された山砂、完全熟成された鶏糞及び添加剤との混合を良好に行うことができ、廃棄され、埋め立て処理されている、不用なプレス土の有効な再利用を図ることができ、更に、この人工土壌に、洗浄された山砂、完全熟成された鶏糞及び添加剤とを混合することにより、芝の健全生育及び促進に期する芝用目土を得ることができる。
【0012】
又、請求項2記載の発明にあっては、上記混合割合は、それぞれ全重量に対して、上記人工土壌約10重量%〜約30重量%、上記山砂約50重量%〜約80重量%、上記鶏糞約10重量%〜約30重量%、上記添加剤約0.001重量%〜約0.005重量%であるから、芝の種類、芝が生育している土壌の性質、固相、液相、気相のバランス、通気性、肥効性を良化することができると共に根腐れの起因となる硫化水素の軽減等を図ることができ、又、請求項3記載の発明にあっては、上記添加剤は、枯草菌、乳酸菌、酵素等の菌群、米ぬか、ふすま、バイオカルシュウム等の天然資材群から選ばれる少なくとも一種類であるから、芝の根腐れを抑制することができる。
【0013】
又、請求項5記載の発明にあっては、上記プレス土の高温熱乾燥温度を、約200℃〜約300℃としているから、約200℃以下であると乾燥時間が掛かり、約300℃以上であると、プレス土の焼けこげが生ずることを回避することができ、又、請求項6記載の発明にあっては、上記プレス土の粉末化後の粒径は、約10μm〜約60μmであるから、約10μm以下であると、土壌空隙に乏しく、空気や水が含み難いことがあり、約60μm以上であると、土壌空隙が大き過ぎ、通水性が高すぎることになるから、作物用土壌として良好な人工土壌を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1、図2は本発明の製造方法の実施の形態例を示し、図1において、先ず、洗浄残土採取工程1において、採掘場等から土が付着している砕石や砂等を採取し、この採掘砕石や採取砂等を水で洗浄し、洗浄後の砕石や砂等は土木用資材等に利用され、土木用資材等に利用されずに、この洗浄により洗い流された泥水状態の洗浄残土Fを採取することになる。
【0015】
次ぎに、プレス土採取工程2において、上記泥水状態の洗浄残土Fに高分子凝固剤G、例えば、廃水処理用高分子凝縮剤(ダイヤニトリックス株式会社製、商品名、ハイセットP−713:化学名アクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物を主に含む)を添加し、高分子凝固剤Gにより凝固させてプレス土Pを形成することになる。
【0016】
次ぎに、高温熱乾燥工程3において、上記プレス土Pを、乾燥機等を用いて、高温熱乾燥することになる。このプレス土の高温熱乾燥温度は、約200℃〜約300℃程度が望ましい。
【0017】
次ぎに、粉末化処理工程4において、上記高温熱乾燥されたプレス土Pを粉砕機を用いて粉末化処理することになる。このプレス土の粉末化後の粒径は、約10μm〜約60μm程度が望ましい。
【0018】
この粉末化処理により人工土壌Dが製造されることになる。
【0019】
次ぎに、図2の如く、上記人工土壌Dと、洗浄された山砂Sと、完全熟成された鶏糞Kと、添加剤Tとを混合機により適宜割合で混合し、これによりプレス土を用いた芝用目土Qを製造することになる。
【0020】
この混合割合は、それぞれ全重量に対して、上記人工土壌Dが約10重量%〜約30重量%、上記山砂Sが約50重量%〜約80重量%、上記鶏糞Kが約10重量%〜約30重量%、上記添加剤Tが約0.001重量%〜約0.005重量%とすることが望ましい。
【0021】
この混合割合は、使用される芝の種類、芝が生育している土壌の性質、固相、液相、気相のバランス、通気性、肥効性並びに添加剤Tについては、根腐れの起因となる硫化水素の軽減等を考慮して、定められるものである。
【0022】
又、上記添加剤Tは、枯草菌、乳酸菌、酵素等の菌群、米ぬか、ふすま、バイオカルシュウム等の天然資材群から選ばれる少なくとも一種類、即ち、これらから選択された一種類又は数種類を組み合わせたものが用いられる。この添加剤Tの決定については、使用される芝の種類、芝が生育している土壌の性質、根腐れの起因となる硫化水素の軽減等を考慮することになる。
【0023】
この実施の形態例は上記構成であるから、図1の如く、採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土Fを採取し、洗浄残土Fを高分子凝固剤Gにより凝固させてプレス土Pを採取し、プレス土Pを高温熱乾燥し、高温熱乾燥されたプレス土Pを粉末化処理して人工土壌Dを製造し、そして、図2の如く、この人工土壌Dに、洗浄された山砂S、完全熟成された鶏糞K及び添加剤Tを適宜割合で混合し、芝用目土Qを製造することになり、この際、上記プレス土Pを高温熱乾燥させるから、高分子凝固剤に含まれるアクリルアミド・アクリル酸ソーダ共重合物等の作物等に害を及ぼす化学薬品を除去することができ、かつ、この高温熱乾燥されたプレス土Pを粉末化処理するから、この人工土壌Dと、洗浄された山砂S、完全熟成された鶏糞K及び添加剤Tとの混合を良好に行うことができ、廃棄され、埋め立て処理されている、不用なプレス土Pの有効な再利用を図ることができ、更に、この人工土壌Dに、洗浄された山砂S、完全熟成された鶏糞K及び添加剤Tとを混合することにより、芝の健全生育及び促進に期する芝用目土Qを得ることができる。
【0024】
又、この場合、上記混合割合は、それぞれ全重量に対して、上記人工土壌約10重量%〜約30重量%、上記山砂約50重量%〜約80重量%、上記鶏糞約10重量%〜約30重量%、上記添加剤約0.001重量%〜約0.005重量%であるから、芝の種類、芝が生育している土壌の性質、固相、液相、気相のバランス、通気性、肥効性を良化することができると共に根腐れの起因となる硫化水素の軽減等を図ることができ、又、この場合、上記添加剤Tは、枯草菌、乳酸菌、酵素等の菌群、米ぬか、ふすま、バイオカルシュウム等の天然資材群から選ばれる少なくとも一種類であるから、芝の根腐れを抑制することができる。
【0025】
又、この場合、上記プレス土Pの高温熱乾燥温度を、約200℃〜約300℃としているから、約200℃以下であると乾燥時間が掛かり、約300℃以上であると、プレス土Pの焼けこげが生ずることを回避することができ、又、この場合、上記プレス土Pの粉末化後の粒径は、約10μm〜約60μmであるから、約10μm以下であると、土壌空隙に乏しく、空気や水が含み難いことがあり、約60μm以上であると、土壌空隙が大き過ぎ、通水性が高すぎることになるから、作物用土壌として良好な人工土壌を製造することができる。
【0026】
尚、本発明は上記実施の形態例に限られるものではなく、例えば、高分子凝固剤の種類や乾燥温度、粒径、山砂の粒径等は芝の種類や用途に応じて適宜変更されるものである。
【0027】
以上、所期の目的を充分達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態例の製造工程図である。
【図2】本発明の実施の形態例の製造工程図である。
【符号の説明】
【0029】
F 洗浄残土
P プレス土
G 高分子凝固剤
D 人工土壌
Q 芝用目土
S 山砂
K 鶏糞
T 添加剤
1 洗浄残土採取工程
2 プレス土採取工程
3 高温熱乾燥工程
4 粉末化処理工程


【特許請求の範囲】
【請求項1】
採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土を採取し、該洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させてプレス土を採取し、該プレス土を高温熱乾燥し、該高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理してなる人工土壌と、洗浄された山砂と、完全熟成された鶏糞と、添加剤とを適宜割合で混合してなることを特徴とするプレス土を用いた芝用目土。
【請求項2】
上記混合割合は、それぞれ全重量に対して、上記人工土壌約10重量%〜約30重量%、上記山砂約50重量%〜約80重量%、上記鶏糞約10重量%〜約30重量%、上記添加剤約0.001重量%〜約0.005重量%であることを特徴とする請求項1記載のプレス土を用いた芝用目土。
【請求項3】
上記添加剤は、枯草菌、乳酸菌、酵素等の菌群、米ぬか、ふすま、バイオカルシュウム等の天然資材群から選ばれる少なくとも一種類であることを特徴とする請求項1又は2記載のプレス土を用いた芝用目土。
【請求項4】
採掘砕石や採取砂等を洗浄して泥水状態の洗浄残土を採取し、該洗浄残土を高分子凝固剤により凝固させてプレス土を採取し、該プレス土を高温熱乾燥し、該高温熱乾燥されたプレス土を粉末化処理してなる人工土壌を製造し、この人工土壌に、洗浄された山砂、完全熟成された鶏糞及び添加剤を適宜割合で混合することを特徴とするプレス土を用いた芝用目土の製造方法。
【請求項5】
上記プレス土の高温熱乾燥温度は、約200℃〜約300℃であることを特徴とする請求項4記載のプレス土を用いた芝用目土の製造方法。
【請求項6】
上記プレス土の粉末化後の粒径は、約10μm〜約60μmであることを特徴とする請求項4又は5記載のプレス土を用いた芝用目土の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−53962(P2007−53962A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−243153(P2005−243153)
【出願日】平成17年8月24日(2005.8.24)
【出願人】(305035107)岡田土建工業株式会社 (4)
【出願人】(505320632)有限会社秀造園 (2)
【Fターム(参考)】