説明

プレス装置

【課題】ベルトを加熱して加圧ヘッドやパッキンが熱膨張しても、パッキンの境界から加圧流体が漏れるのを効果的に防止する。
【解決手段】プレス装置は、一対の加圧ヘッド1のプレス面に設けた流体供給チャンバ10の開口部を閉塞するようにベルトを配設している。加圧ヘッド1は、流体供給チャンバ10の外周に沿って設けたパッキン溝12に案内してなるパッキン20を、ベルトに摺動状態に密接させている。プレス装置は、流体供給チャンバ10に供給される加圧流体8で、ベルトを介して被プレス物を加熱状態でプレスしている。プレス装置は、流体供給チャンバ10の外周に設けているパッキン溝12を多角形として、各々の辺に分離されたパッキン20を配設すると共に、各々のパッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させる隙間閉塞具30を備えており、この隙間閉塞具30でパッキン20間の流体漏れを阻止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の加圧ヘッドの間に一対のベルトを配置し、加圧ヘッドの対向面に設けた流体供給チャンバに供給される加圧流体でベルトを加圧し、ベルトの間の供給される被プレス物をプレスしながらベルトで移送するプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対向して配置している加圧ヘッドの間に一対のベルトを配置し、このベルトで被プレス物をプレスしながら移送するプレス装置は開発されている。(特許文献1参照)
このプレス装置は、図1と図2に示すように、互いに対向して配設している第1の加圧ヘッド101A及び第2の加圧ヘッド101Bからなる一対の加圧ヘッド101と、一対の加圧ヘッド101の一方又は両方を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構(図示せず)とを備えている。さらに、このプレス装置は、加圧ヘッド101のプレス面101aに、加圧流体108を供給する流体供給チャンバ110を設けている。この流体供給チャンバ110は、対向する加圧ヘッド101との対向面を開口して、この開口部を閉塞するようにベルト102を配設している。一対のベルト102は、移送機構で一緒に同じ方向に同じ速度で移動される。このプレス装置は、流体供給チャンバ110の開口部を、移動するベルト102で閉塞しながら、流体供給チャンバ110に加圧流体108を供給し、加圧流体108が、移動するベルト102を介して被プレス物109を加熱状態でプレスしながら移送する。この装置は、被プレス物109を移送しながら加熱状態でプレスするので、連続的に被プレス物109を加熱しながらプレスできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−105783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上のプレス装置は、流体供給チャンバ110の外周にパッキン120を設けている。パッキン120は、ベルト102の表面に密着して、流体供給チャンバ110に供給される加圧流体108が漏れるのを防止する。パッキン120は、加圧ヘッド101に設けたパッキン溝112に案内されて、移動するベルト102の表面を摺動しながらベルト102の表面に密着する。加圧ヘッド101に設けている流体供給チャンバ110は、開口部を四角形などの多角形とするので、図3に示すように、4本に分離されたパッキン120を、四角形の各々の辺に設けられたパッキン溝112に挿入している。4本のパッキン120は、境界に隙間ができると加圧流体108が外部に漏れるので、隙間ができないことが大切である。このことを実現するために、図3は、2本のパッキン120Aを、平行に配設している他の2本のパッキン120Bの間に配設して、その両端面120xを隣接するパッキン120Bの内面120yに接近させている。いいかえると、2本のパッキン120Aは、その両端面120xを他のパッキン120Bの内面120yに密接できる長さとして、境界の隙間をなくするようにしている。
【0005】
ところが、加熱されたベルトで被プレス物を加熱するプレス装置は、加圧ヘッドとパッキンの熱膨張率の差で、パッキンの端面に隙間ができ、この隙間から加圧流体が漏れる欠点がある。加圧ヘッドとパッキンの熱膨張率の差を考慮し、さらに被プレス物を加熱する温度を考慮して、ベルトが被プレス物をプレスする状態で、パッキンの両端面を隣接するパッキンの内面に密接させることは理論的には可能である。ただ、被プレス物を加熱する温度は一定でなく、さらに、加熱する温度が特定されても、熱膨張率を考慮する寸法で、パッキンの両端面を隣接するパッキンの内面に密接することは現実にはできず、パッキンの境界から加圧流体が漏れるのを防止できない欠点がある。加圧流体を加熱油とする装置は、漏れた加熱油を回収して再使用しているが、外部に漏れた加熱油は酸化されて劣化するので、加熱油の寿命を短くする原因となる。
【0006】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、被プレス物を加熱するためにベルトを加熱して加圧ヘッドやパッキンが熱膨張しても、パッキンの境界から加圧流体が漏れるのを効果的に防止できるプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0007】
本発明のプレス装置は、対向面をプレス面1aとして互いに対向して配設してなる第1の加圧ヘッド1A及び第2の加圧ヘッド1Bからなる一対の加圧ヘッド1と、一対の加圧ヘッド1の一方又は両方を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構3と、一対の加圧ヘッド1のプレス面1aに沿って移動するように配置してなる一対のベルト2と、一対のベルト2を移動させる駆動機構4と、ベルト2を加熱してベルト2を介して被プレス物9を加熱する加熱機構5とを備えている。加圧ヘッド1は、加圧流体8を供給する流体供給チャンバ10をプレス面1aに備えている。この流体供給チャンバ10は、対向する加圧ヘッド1との対向面を開口して、この開口部を閉塞するようにベルト2を配設している。加圧ヘッド1は、流体供給チャンバ10の外周に沿ってパッキン溝12を有しており、このパッキン溝12に案内してなるパッキン20を設けて、このパッキン20を移動するベルト2に摺動状態に密接させて流体供給チャンバ10をベルト2で密閉している。プレス装置は、駆動機構4で移動されるベルト2がパッキン20を介して流体供給チャンバ10を閉塞する状態で、流体供給チャンバ10に加圧流体8を供給して、加圧流体8が移動するベルト2を介して被プレス物9を加熱状態でプレスしている。さらに、プレス装置は、流体供給チャンバ10の外周に設けているパッキン溝12を多角形としており、多角形の各々の辺に分離されたパッキン20を配設すると共に、各々のパッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させる隙間閉塞具30を備えている。プレス装置は、この隙間閉塞具30でパッキン20の端面20xを、隣接するパッキン20に接近させて、隣接するパッキン20間の流体漏れを阻止している。
【0008】
以上のプレス装置は、被プレス物を加熱するためにベルトを加熱して加圧ヘッドやパッキンが熱膨張しても、隣接するパッキンの境界に広い隙間ができず、ここから流体供給チャンバに供給される加圧流体が漏れるのを有効に防止できる特徴がある。
【0009】
本発明のプレス装置は、隙間閉塞具30を弾性体31として、パッキン20を長手方向に押圧して、パッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに密接させることができる。
以上のプレス装置は、弾性体でもって、パッキンの端面を隣接するパッキンの内面に押圧する方向に弾性的に押圧するので、パッキンや加圧ヘッドが熱膨張してもパッキンの端面を常に隣接するパッキンの内面に密接できる。
【0010】
本発明のプレス装置は、隙間閉塞具30を、パッキン20の端面20xにネジ止めしてなる止ネジ32として、この止ネジ32で、隣接するパッキン20を外面20zから内面20yに向かって貫通して、パッキン20の端面20xにねじ込んで、パッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させることができる。
以上のプレス装置は、止ネジでパッキンの端面を隣接するパッキンの内面に密接させるので、隣接するパッキンを確実に密接状態に連結して、隙間からの加圧流体の漏れを効果的に防止できる特徴がある。
【0011】
本発明のプレス装置は、隙間閉塞具30の止ネジ32を、先端部に雄ネジ32Bを有するショルダーネジ32Xとして、ショルダーネジ32Xのショルダー部32Aの長さ(D)を、ショルダー部32Aを挿通する貫通孔22の深さ(d)に等しくし、あるいはショルダー部32Aの長さ(D)を貫通孔22の深さ(d)よりも大きく、長さ(D)と深さ(d)の差が100μm以下とすると共に、加圧流体8を加熱油とすることができる。
以上のプレス装置は、隣接するパッキンの隙間をショルダーネジで正確に特定できるので、パッキンの隙間を加圧流体が漏れない微細な隙間としながら、互いにパッキンを相対的に移動しやすい状態にできる。隣接するパッキンが相対移動できる構造は、ベルトで被プレス物の全面を均一にプレスすることにおいて大切な特性である。それは、被プレス物の部分的な厚さが完全には同じでないからである。たとえば、両端で厚さに誤差のある被プレス物をプレスするベルトは完全には平行とならない。相対移動できるパッキンは、厚さに差のある被プレス物に沿うようにベルトを押圧しながら、ベルトの表面に密着して、内部の加圧流体でベルトを均一にプレスできる。
【0012】
本発明のプレス装置は、パッキン20が、ショルダーネジ32Xのねじ頭32Cがパッキン20の表面から突出しないようにねじ頭32Cを案内する凹部23を備えており、この凹部23の内形をねじ頭32Cの外形よりも大きくすることができる。
以上のプレス装置は、ねじ頭がパッキンの表面から突出しない構造としながら、隣接するパッキンを互いに相対的に移動できる状態として、厚さが不均一である被プレス物の全面んをベルトで均一にプレスしながら、ベルトの表面に密着して、ベルトとの間からの加圧流体の漏れを効果的に防止できる。
【0013】
本発明のプレス装置は、隙間閉塞具30を、加圧ヘッド1からパッキン20に向かって突出するピン33として、このピン33をパッキン20の端部に設けられたガイド孔24に挿入して、ピン33の挿通されたパッキン20の端面20xを、隣接するパッキン20の内面20yに接近させることができる。
以上のプレス装置も、ピンでもってパッキンの端面を隣接するパッキンの内面に確実に密接して、パッキンの間からの加圧流体の漏れを防止できる。
【0014】
本発明のプレス装置は、隙間閉塞具30のピン33を加圧ヘッド1に固定し、このピン33を挿通しているパッキン20がピン33に沿って移動できるようにピン33をガイド孔24に挿通することができる。
以上のプレス装置も、パッキンの隙間を加圧流体が漏れない微細な隙間としながら、互いにパッキンを相対的に移動しやすい状態として、厚さに差のある被プレス物の全面をベルトで均一にプレスしながら、ベルトの表面に密着して、ベルトとの間からの加圧流体の漏れを効果的に防止できる。
【0015】
本発明のプレス装置は、隙間閉塞具30のピン33をパッキン20に固定し、このピン33を加圧ヘッド1に軸方向に移動できるように連結することができる。
以上のプレス装置も、パッキンの隙間を加圧流体が漏れない微細な隙間としながら、互いにパッキンを相対的に移動しやすい状態として、厚さに差のある被プレス物の全面をベルトで均一にプレスしながら、ベルトの表面に密着して、ベルトとの間からの加圧流体の漏れを効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のプレス装置を模式的に示す側面図である。
【図2】図1に示すプレス装置の拡大横断面図である。
【図3】図1に示すプレス装置の加圧ヘッドの平面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかるプレス装置の側面図である。
【図5】図4に示すプレス装置の平面図である。
【図6】図5に示すプレス装置のVI−VI線断面図であって、一部拡大した断面図である。
【図7】図5に示すプレス装置のVII−VII線断面に相当する概略断面図であって、一部拡大した断面図である。
【図8】図6に示すプレス装置の加圧ヘッドの要部拡大断面図である。
【図9】本発明の一実施例にかかるプレス装置の加圧ヘッドの水平断面図であって、パッキンの隙間閉塞具を一部拡大断面図に示す図である。
【図10】加圧ヘッドの他の一例を示す水平断面図であって、パッキンの隙間閉塞具を一部拡大断面図に示す図である。
【図11】図10に示すパッキンの分解断面図である。
【図12】加圧ヘッドの他の一例を示す水平断面図であって、パッキンの隙間閉塞具を一部拡大断面図に示す図である。
【図13】加圧ヘッドの他の一例を示す一部拡大水平断面図である。
【図14】図13に示す加圧ヘッドのXIV−XIV線断面図である。
【図15】図13に示す加圧ヘッドの隙間閉塞具の他の一例を示す拡大断面図である。
【図16】図6に示すプレス装置の厚さ調整機構を示す拡大断面図である。
【図17】図16に示す厚さ調整機構の要部を拡大して分解した一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための厚さ調整機構を備えるプレス装置を例示するものであって、本発明はプレス装置を以下のものに特定しない。
【0018】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0019】
図4ないし図7は、ゴムシートやプリント基板のようにシート状の被プレス物9をプレスするプレス装置を示す。これらの図のプレス装置は、互いに上下に対向して配設している第1の加圧ヘッド1A及び第2の加圧ヘッド1Bからなる一対の加圧ヘッド1と、一対の加圧ヘッド1を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構3と、一対の加圧ヘッド1のプレス面1aに沿って移動するように配置している一対のベルト2と、一対のベルト2を移動させる駆動機構4と、ベルト2を加熱してベルト2を介して被プレス物9を加熱する加熱機構5とを備える。さらに、図のプレス装置は、第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bとを、プレス状態におけるプレス面1aの間隔を調整できるように連結している厚さ調整機構7も備える。
【0020】
一対の加圧ヘッド1は、対向するプレス面1aで被プレス物9をプレスする。図のプレス装置は、上下に加圧ヘッド1を配設している。図において上の加圧ヘッド1を第1の加圧ヘッド1Aとし、下の加圧ヘッド1を第2の加圧ヘッド1Bとする。ただし、上の加圧ヘッドを第2の加圧ヘッドとして、下の加圧ヘッドを第1の加圧ヘッドとすることもできる。また、本発明のプレス装置は、必ずしも一対の加圧ヘッドを上下に配設する必要はない。
【0021】
加圧ヘッド1は、図8の拡大断面図に示すように、プレス面1aに、加圧流体8を供給する流体供給チャンバ10を設けている。流体供給チャンバ10は、対向する加圧ヘッド1との対向面を開口して、この開口部を閉塞するようにベルト2を配設している。ベルト2はステンレス等の金属ベルトからなるエンドレスベルトである。加圧ヘッド1は、プレス面1aにベルト2を配設して、上下のベルト2の間で被プレス物9をプレスする。
【0022】
加圧ヘッド1は、周囲に周壁11を設けて、周壁11の内側を流体供給チャンバ10としている。周壁11は、パッキン20を入れるパッキン溝12をベルト2との当接面に設けている。パッキン溝12に入れたパッキン20は、プレス状態で移動するベルト2の表面に摺動状態に密接されて、流体供給チャンバ10を密閉する。
【0023】
流体供給チャンバ10の外周に設けた周壁11に設けているパッキン溝12は多角形で、多角形の各々の辺に分離されたパッキン20を配設している。図9の加圧ヘッド1は、流体供給チャンバ10の開口部を四角形としている。この加圧ヘッド1は、四角形の周壁11を設けて、その内側に開口部を四角形とする流体供給チャンバ10を設けている。四角形の周壁11には、四角形のパッキン溝12を設けて、4本のパッキン20を配置している。図9の加圧ヘッド1は、流体供給チャンバ10の開口部を長方形とするので、その外側に設けられるパッキン溝12も長方形として、長辺に2本、短辺に2本のパッキン20を挿入している。パッキン20は、パッキン溝12からベルト2に向かって突出されてベルト2の表面に密接する。
【0024】
パッキン20は、加熱状態で移動するベルト2の表面を摺動しながら密接できる耐熱性に優れたもので、たとえばカーボン製あるいは金属製である。
【0025】
四角形のパッキン溝12は、隅部において一方の辺を直線状に隅部から突出する突出部12Tを有する。各々のパッキン20、図9にあっは4本のパッキン20は、一端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させて、他端部をパッキン溝12の突出部12Tに案内している。各々のパッキン20は、四角形の一辺よりも長くして突出部12Tに案内している。突出部12Tに挿入される側の端部の内面20yは、隣接するパッキン20の端面20xを後述する隙間閉塞具30で接近させている。すなわち、各々のパッキン20は、一方の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させて、他方の端部には隣接するパッキン20の端面20xを接近させて、その両端から加圧流体8が漏れないようにしている。
【0026】
さらに、パッキン溝12は、その底部に油圧路13を開口している。油圧路13は、油圧回路(図示せず)に連結されて、油圧回路から供給される加圧された油14をパッキン溝12に供給する。パッキン溝12に供給される加圧された油14は、パッキン溝12からパッキン20をベルト2に向かって押し出してベルト2の表面に密接させる。パッキン溝12に供給される油圧でパッキン20をベルト2に向かって押し出すために、パッキン20の横断面形状を四角形として、パッキン溝12の内幅をパッキン20の横幅としている。この構造の加圧ヘッド1は、パッキン溝12に加圧された油14を供給して、パッキン20をベルト2の表面に油圧で押し付けて、パッキン20とベルト2との間から油14が漏れるのを防止できる。ただし、図示しないが、パッキンは、パッキン溝の底部に入れたバネなどの弾性体でベルトに向かって押圧することもできる。
【0027】
さらに、図9ないし図14に示す加圧ヘッド1は、各々のパッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させるための隙間閉塞具30を備える。隙間閉塞具30は、パッキン20の端面20xを、隣接するパッキン20に接近させて、隣接するパッキン間の流体漏れを防止する。
【0028】
図9に示す隙間閉塞具30は弾性体31で、パッキン20を長手方向に押圧して、パッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させるように押圧して密接させている。弾性体31は押しバネで、パッキン溝12の突出部12Tに内蔵されて、パッキン20を長手方向に押圧している。図の弾性体31はコイルバネ31Aで、パッキン20の端部に設けたガイド孔21に一部を挿入している。ガイド孔21は、パッキン20の端部に開口されて、パッキン20の長手方向に伸びるように設けている。押しバネの弾性体31は、常にパッキン20を長手方向に押圧して、その先端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに押し付けて接近させている。
【0029】
図10と図11に示す隙間閉塞具30は、パッキン20の端面20xにネジ止めしてなる止ネジ32である。この隙間閉塞具30である止ネジ32は、隣接するパッキン20を外面20zから内面20yに向かって貫通して、パッキン20の端面20xにねじ込まれて、パッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させている。止ネジ32は、パッキン20の端部であって、パッキン溝12の突出部12Tに案内される側の端部を貫通して、その先端を隣接するパッキン20の端面20xから長手方向にねじ込んでいる。さらに、図の隙間閉塞具30は、止ネジ32をショルダーネジ32Xとしている。ショルダーネジ32Xは、太いショルダー部32Aの先端に雄ネジ32Bを設けたネジである。ショルダーネジ32Xは、ショルダー部32Aの長さ(D)を、ショルダー部32Aを挿通する貫通孔22の深さ(d)に等しくして、隣接するパッキン20を互いに確実に固定することもできるが、好ましくはショルダー部32Aの長さ(D)を貫通孔22の深さ(d)よりも大きくして、長さ(D)と深さ(d)の差を100μm以下とする。長さ(D)と深さ(d)の差は、隣接するパッキン20が接近する間隔を特定する。この間隔は、好ましくは加圧流体8が漏れない隙間とする。加圧流体8に油を使用するプレス装置にあっては、長さ(D)と深さ(d)の差を0ないし15μmとして、加圧流体8の漏れをなくして、隣接するパッキン20を相対移動できるように連結できる。
【0030】
さらに、図11の分解断面図に示すパッキン20は、ショルダーネジ32Xのねじ頭32Cを案内する凹部23を設けている。凹部23は、ショルダーネジ32Xのねじ頭32Cがパッキン20の表面から突出しないように案内する。凹部23は、内形をねじ頭32Cの外形よりも大きくして、ねじ頭32Cを凹部23の内部で移動できるようにできる。このパッキン20は、ショルダーネジ32Xのショルダー部32Aの長さ(D)を、パッキン20の貫通孔22の深さ(d)よりも大きくする構造と併用して、隣接するパッキン20をよりスムーズに相対移動できる構造を実現する。止ネジ32のねじ頭32Cをパッキン20の凹部23で移動できる構造として、止ネジ32と一体となったパッキン20と、貫通孔22を設けたパッキン20とを相対移動できるからである。
【0031】
さらに、図12に示す隙間閉塞具30は、止ネジ32と弾性体31の両方を設けている。この図の隙間閉塞具30は、各々のパッキン20の一端に止ネジ32をねじ込んで隣接するパッキン20の内面20yに接近させると共に、パッキン20の他端には弾性体31を設けて、パッキン20を長手方向に押圧して、その端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近させている。この構造は、止ネジ32のショルダーネジ32Xと弾性体31の両方でパッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近できるので、より確実に加圧流体8の漏れを防止できる。
【0032】
さらに、図13と図14に示す隙間閉塞具30は、加圧ヘッド1からパッキン20に向かって突出するピン33である。ピン33は、パッキン20をベルト2に押し付ける方向、すなわち加圧ヘッド1の内面に直交する方向に伸びてパッキン20に向かって突出している。このピン33は、パッキン20の端部に設けられたガイド孔24に挿入される。パッキン20は、ガイド孔24にピン33を挿入して、長手方向の位置ずれが阻止される。ガイド孔24は、ピン33を挿入しているパッキン20の端面20xを、隣接するパッキン20の内面20yに接近させる。言い換えると、ガイド孔24は、ピン33を挿入しているパッキン20の端部を隣接するパッキン20の内面20yに接近できる位置に設けられる。パッキン20は、ガイド孔24と端面20xとの間の寸法が、熱膨張によって変化するが、この間隔はパッキン20の全長にくらべて十分に小さく、熱膨張による寸法の変化は極めて少ない。このため、パッキン20の熱膨張による寸法の変化を実質的に無視でき、パッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに接近できる。
【0033】
この構造は、図14に示すように、隙間閉塞具30のピン33を加圧ヘッド1に固定して、このピン33を挿通しているパッキン20がピン33に沿って移動できるように、ピン33をガイド孔24に挿通し、あるいは、図15に示すように、ピン33をパッキン20に固定して、このピン33を加圧ヘッド1に軸方向に移動できるように連結することで、パッキン20を加圧ヘッド1に対して相対的に移動できる構造にできる。したがって、この隙間閉塞具30は、パッキン溝12に供給される加圧された油14でパッキン20をベルト2に向かって移動し、さらに隣接するパッキン20を相対移動させながら、パッキン20の端面20xを隣接するパッキン20の内面20yに密接できる。
【0034】
加圧ヘッド1の間にあって被プレス物9の上下に配設される一対のエンドレスベルト2は、駆動機構4で移動される。駆動機構4は、図7に示すように、プレス装置の両端に配置されてベルト2が掛けられている一対のロール41と、これらのロール41を回転させる回転機構(図示せず)とを備えている。駆動機構4は、上下のロール41を回転させて、上下に配設される一対のベルト2を、一緒に同じ方向に移動させる。上下に配設される一対のベルト2は、被プレス物9であるゴムシート等のワークを挟着する状態で同じ方向に移動される。ロール41に掛けているエンドレスベルト2は、加圧ヘッド1のプレス面1aと反対面に配置される。エンドレスベルト2は、被プレス物9のワークをプレスする状態で停止され、プレス面1aに被プレス物9のゴムシート等のワークを搬入し、あるいはゴムシートを排出するときに、一緒に移動される。
【0035】
図7のプレス装置は、加圧ヘッド1が一対のベルト2を挟み、ベルト2で被プレス物9を挟んで加熱するために加熱機構5を設けている。加熱機構5は、上下に配設された第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bのプレス面1aにベルト2を配設して、上下のベルト2の間で被プレス物9を挟んでプレスする状態で、流体供給チャンバ10に加圧流体8を供給してベルト2で被プレス物9のゴムシートを加圧しながら、ベルト2を加熱する。したがって、加熱機構5は、加圧ヘッド1の流体供給チャンバ10には、加圧流体8として、加熱された油を供給している。この加熱機構5は、加圧ヘッド1の流体供給チャンバ10に、例えば、300℃に加熱された加熱油を供給しており、この加熱油からベルト2に熱伝導させてベルト2を加熱している。
【0036】
さらに、プレス装置は、厚さ調整機構7で一対の加圧ヘッド1を所定の位置に固定して、ベルト2を周壁11に密着させてベルト2で流体供給チャンバ10を閉塞し、加圧ヘッド1で被プレス物9をプレスする状態として、流体供給チャンバ10に加圧流体8が供給される。流体供給チャンバ10に供給される加圧流体8は、ベルト2を介して被プレス物9のゴムシート等をプレスする。さらに、流体供給チャンバ10に供給される加圧流体8は、加熱、加圧された流体として、加圧流体8でベルト2を加熱している。
【0037】
ゴムシート等のシート状の被プレス物9をプレスする加圧ヘッド1は、高い圧力のプレスで、一対の加圧ヘッド1の位置を正確にコントロールして、加圧ヘッド1の隙間を正確に一定に保持することが大切である。隙間のわずかなずれが製品の品質や生産効率に影響を与えるからである。とくに、加圧ヘッド1とベルト2の間に流体供給チャンバ10を設けてここに加圧流体8を圧入して、ベルト2でゴムシート等の被プレス物9をプレスする装置は、加圧ヘッド1のずれがベルト2を蛇行させる原因となるので、生産能率を低下させないために、加圧ヘッド1の隙間を極めて高精度にコントロールすることが要求される。たとえば、ゴムシートの加硫装置にあっては、ゴムシートをプレスするベルト2の水平方向の横ずれを2〜3mm以下に制御することが要求される。
【0038】
図に示すプレス装置は、以下に詳述する構造の厚さ調整機構7で、一対の加圧ヘッド1の隙間を極めて正確にコントロールする。プレス装置は、加圧ヘッド1の両側に複数の厚さ調整機構7を設けて、加圧ヘッド1の隙間を一定に保持する。図4ないし図6に示す装置は、加圧ヘッド1の両側にふたつ、全体で4組の厚さ調整機構7を設けている。厚さ調整機構7は、図6、図16及び図17に示すように、第1の加圧ヘッド1Aに垂直姿勢に固定しているガイドロッド74と、このガイドロッド74を挿入できるように第2の加圧ヘッド1Bに固定しているガイド壁76と、ガイドロッド74をガイド壁76に挿入する状態で、ガイド壁76とガイドロッド74の貫通孔77、75に挿入して、ガイドロッド74とガイド壁76とを一定の位置に固定するクサビ78と、このクサビ78をガイドロッド74とガイド壁76の貫通孔75、77に挿入する挿入機構79とを備える。
【0039】
ガイドロッド74は、往復運動機構3による加圧ヘッド1の往復運動方向に延長する姿勢で第1の加圧ヘッド1Aに固定している。図のプレス装置は、第1の加圧ヘッド1Aを上下に往復運動させて、被プレス物9のゴムシートをプレスする。したがって、ガイドロッド74は上下方向に延長されて、下の第2の加圧ヘッド1Bに固定しているガイド壁76に挿入されるように下向きに突出して設けている。図のガイドロッド74は、下端に交換プレート87を交換できるように固定している。交換プレート87は硬い摩耗の少ない金属板で、止ネジ88を介してガイドロッド74の下端に交換できるように固定している。このガイドロッド74は、交換プレート87が摩耗すると新しいものに交換できる。
【0040】
ガイドロッド74は四角柱状で、横向きに、図において水平方向にクサビ78を挿入する貫通孔75を開口している。ガイドロッドは、必ずしも四角柱状とする必要はない。ガイドロッドは、多角柱状、円柱状、楕円筒状とすることもできる。
【0041】
図に示すガイドロッド74の貫通孔75は四角形として、下面をクサビ78の下面に沿う摺動面75Aとしている。この貫通孔75は、摺動面75Aを傾斜する面としている。傾斜する摺動面75Aは、クサビ78の下面の傾斜面78Aに面接触状態で摺動するようにしている。この構造は、貫通孔75に挿入されるクサビ78の下面に面接触状態で摺動して、すなわち広い面積で接触しながら摺動して、摩耗を少なくできる。ただ、貫通孔の下面は、必ずしもクサビの下面に沿う傾斜面とする必要はない。ガイドロッド74の貫通孔75の上面は、好ましくは、図16に示すように、貫通孔75にクサビ78を挿入する状態で、クサビ78の上面との間にクリアランスを設ける。この貫通孔75は、上面をクサビ78の上面から離して、クサビ78の上面をガイド壁76に設けた貫通孔77の上面に当接するまで挿入できる。ただ、ガイドロッドに設ける貫通孔は、ガイド壁の貫通孔にクサビを挿入して、クサビの上面をガイド壁の貫通孔の上面に接触させる状態で、ガイドロッドの貫通孔の上面もクサビの上面に接触させることもできる。
【0042】
図17の厚さ調整機構7は、ガイドロッド74を挿入するガイド壁76を筒状のガイド筒89としている。ガイド筒89のガイド壁76は、対向する壁面を一対のガイド壁76としている。この図のガイド壁76は、四角形のガイド筒89の対向する壁面をガイド壁76としている。このガイド筒89のガイド壁76は、ここにガイドロッド74を挿入して、ガイドロッド74の水平方向のずれを阻止できる。また、一対のガイド壁76の間にガイドロッド74を挿入して、ガイドロッド74とその両側のガイド壁76の貫通孔75、77にクサビ78を挿入するので、加圧ヘッド1に強いプレス力が作用する状態で、クサビ78を特定の位置に特定の姿勢で保持できる。クサビ78の位置がずれないのは、一対の加圧ヘッド1に作用するプレス力が、クサビ78の上下面である対向面にバランスして作用して打ち消されるからである。また、クサビ78の姿勢がずれないのは、ガイドロッド74の両側にガイド壁76があり、ガイドロッド74とガイド壁76でもって、ガイドロッド74の接触面の両側に、ガイド壁76でもってバランスよく逆方向の力が作用するからである。また、クサビ78は加圧ヘッド1にプレス力が作用しない状態で、ガイドロッド74とガイド壁76の貫通孔75、77に出し入れされるので、クサビ78の挿入機構79を小さいシリンダ等の簡単な機構にできる。ただ、厚さ調整機構のガイド壁は、ガイド筒に特定しない。ガイド壁は、ガイドロッドの片面に配設される壁面とし、あるいはガイドロッドの両側に設けた一対のガイド壁を連結しない構造とすることもできる。
【0043】
ガイド壁76は、ガイドロッド74を挿入する状態で、クサビ78を挿入する貫通孔77を設けている。図17の厚さ調整機構7は、ガイド壁76の貫通孔77を四角形とするが、この貫通孔も、ガイドロッドの貫通孔と同じように、必ずしも四角形に特定する必要はなく、クサビを挿入できる種々の形状にできる。
【0044】
ガイド壁76の貫通孔77は、図16の断面図に示すように、ガイドロッド74の貫通孔75とは反対に、上面を摺動面77Aとしてクサビ78の上面に摺動状態で接触させて、下面をクサビ78の下面から離してクリアランスを設けている。この構造は、クサビ78をスムーズに挿入できる。ただ、ガイド壁の貫通孔も、クサビを貫通孔に挿入して、ガイドロッドとガイド壁を特定の位置に停止する状態で、下面をクサビの下面に接触させることもできる。
【0045】
ガイド壁76の貫通孔77の上面は、クサビ78の上面の摺動面77Aとなる。この貫通孔77は、摺動面77Aである上面を傾斜する面としている。傾斜する貫通孔77の上面の摺動面77Aは、クサビ78の上面の傾斜面78Bに面接触状態で摺動するようにしている。この構造は、貫通孔77に挿入されるクサビ78の上面に面接触状態で摺動して、すなわち広い面積で接触しながら摺動して、摩耗を少なくできる。ただ、貫通孔の上面は、必ずしもクサビの上面に沿う傾斜面とする必要はない。
【0046】
図16と図17に示すクサビ78は、貫通孔75に挿入する先端に向かって、上面を下り勾配に、下面を上り勾配に傾斜させている。このクサビ78は、図16に示すように、ガイドロッド74とガイド壁76の貫通孔75、77に挿入されて、上面をガイド壁76の貫通孔77の上面に摺動させて、ガイド壁76を押し上げ、下面をガイドロッド74の貫通孔75の下面に摺動させてガイドロッド74を押し下げて、ガイドロッド74とガイド壁76を一定の位置に固定する。図のクサビ78は、上面と下面の両方を挿入方向に対して傾斜面78A、78Bとしているが、クサビは下面のみを傾斜面として、上面を挿入方向と平行な面とすることもできる。
【0047】
クサビ78は、挿入機構79で往復運動されて、貫通孔75、77に挿入され、また貫通孔75、77から引き抜かれる。挿入機構79は、ガイドロッド74をガイド壁76に挿入する状態で、両者の貫通孔75、77にクサビ78を挿入して、ガイドロッド74とガイド壁76を一定の位置に連結する。この状態で、一対の加圧ヘッド1は所定の隙間に保持されて、ゴムシート等の被プレス物9をプレスする状態に保持する。また、挿入機構79は、クサビ78を貫通孔75、77から引き抜いて、ガイドロッド74をガイド壁76に対して上昇できる状態とする。この状態でゴムシート等の被プレス物9をプレスしない状態として、ベルト2を移動させる。複数の厚さ調整機構7の挿入機構79は、クサビ78を一緒に往復運動させる。図のプレス装置は、挿入機構79をシリンダーとする。ただ、挿入機構は、クサビを往復運動できる全ての機構とすることができる。
【0048】
図16と図17の厚さ調整機構7は、ガイドロッド74の先端を当接させるストッパ80を設けている。ストッパ80は、ガイドロッド74が降下する位置を特定する。したがって、ストッパ80を備える厚さ調整機構7は、ストッパ80でガイドロッド74の降下位置を特定して、クサビ78を貫通孔75、77に挿入する。この厚さ調整機構7は、ストッパ80でガイドロッド74の降下位置を正確に制御し、この状態で貫通孔75、77にクサビ78を挿入して、加圧ヘッド1の隙間をストッパ80で調整された状態に保持する。このため、一対の加圧ヘッド1の隙間をより正確にできる。ただ、プレス装置は、必ずしもストッパを設ける必要はない。それは、クサビを貫通孔に挿入する位置で、ガイドロッドとガイド壁との連結位置を調整することもできるからである。
【0049】
図16と図17の厚さ調整機構7は、ガイドロッド74のガイド壁76に対する降下位置を特定するストッパ80を設けている。これらの図の厚さ調整機構7は、ストッパ80をガイド壁76の下端に設けている。ただ、ストッパは、図示しないが、第2の加圧ヘッドに連結することもできる。ガイド壁76は第2の加圧ヘッド1Bに連結しているので、第2の加圧ヘッドに連結されるストッパは、第2の加圧ヘッドを介してガイド壁に連結される。
【0050】
ストッパ80は、ガイドロッド74の挿入方向、図において上下方向に移動して、ガイドロッド74をガイド壁76に挿入する上下位置、図においてガイドロッド74の降下位置を調整する。ストッパ80は、ガイドロッド74の先端(図において下端)に当たって、ガイドロッド74がガイド壁76に挿入される位置を特定する。したがって、ストッパ80は、ガイドロッド74の停止位置を上下に調整できるように、上下に移動でき、かつ所定の移動位置に停止できるようにガイド壁76に設けている。
【0051】
図16と図17のストッパ80は、ネジ棒81と、このネジ棒81にねじ込んでいる調整ネジ82を備える。ネジ棒81は、ガイド筒89の端部、図においてガイド筒89の下端にねじ込んでいる。ガイド筒89は、ネジ棒81をねじ込む雌ねじ89Aを下端に設けている。ネジ棒81は、これを回転するために、下端に角頭81Aを突出して設けている。ネジ棒81が回転されると、ガイド筒89の雌ねじ89Aに沿って上下に移動して、位置が変更される。上下に移動されたネジ棒81は、移動された位置で停止されて、ガイドロッド74の下端位置を特定する。
【0052】
図のストッパ80は、ネジ棒81の上端にガイドロッド74の先端に当接る調整ネジ82をねじ込んでおり、この調整ネジ82をガイドロッド74の下端に当たるようにしている。調整ネジ82は、ガイドロッド74の往復運動方向に移動できるが回転しないようにネジ棒81にねじ込んでいる。ネジ棒81は、調整ネジ82をねじ込む雌ねじ孔81Bを上端部に設けている。この雌ねじ孔81Bは、中心軸をガイドロッド74の往復運動方向としている。図の調整ネジ82は、角頭82Aをガイド筒89の内面に摺動させて、回転しないようにガイド筒89に保持される。調整ネジ82の角頭82Aは、その外形をガイド筒89の内形よりもわずかに小さい形状として、回転しないが軸方向には移動できるようにしている。回転しない調整ネジ82は、ネジ棒81が回転されると、相対的にはネジ棒81の回転方向の逆方向に回転される。ネジ棒81と調整ネジ82のねじ山は同じ方向にある。たとえばネジ棒81のねじ山を右ねじとする場合、調整ネジ82のねじ山も右ねじである。したがって、ネジ棒81が上昇方向に回転されると、調整ネジ82は降下する。調整ネジ82がネジ棒81に対して逆方向に回転されるからである。ネジ棒81と調整ネジ82は、1回転で移動するねじ山のピッチが異なる。互いにピッチが異なるネジ棒81と調整ネジ82は、互いに逆方向に移動する距離が異なり、移動距離の差が調整ネジ82の先端の移動距離となる。この構造は、ネジ棒81を1回転させて、調整ネジ82の移動距離をねじ山の1ピッチよりも小さくできる。このため、ネジ棒81を回転してより高精度でガイドロッド74の位置を調整できる。ただ、ストッパは、ネジ棒の先端を直接にガイドロッドの先端に当てて、ガイドロッドの位置を調整することもできる。
【0053】
以上のプレス装置は、以下のようにして被プレス物9のゴムシートをプレスして加硫する。
往復運動機構3でもって、上の加圧ヘッド1である第1の加圧ヘッド1Aを上昇位置とする。往復運動機構3は、油圧シリンダー19で第1の加圧ヘッド1Aを上昇させる。このプレス装置は、往復運動機構3の油圧シリンダー19で、第1の加圧ヘッド1Aをプレスして、被プレス物9をプレスするのではない。往復運動機構3は、第1の加圧ヘッド1Aを上下に移動すれば足りる。それは、厚さ調整機構7で一対の加圧ヘッド1を指定の隙間に保持して、加圧ヘッド1の流体供給チャンバ10に供給する加圧流体8で被プレス物9のゴムシートをプレスするからである。したがって、往復運動機構3には、被プレス物9をプレスする強いプレス力は要求されない。
【0054】
第1の加圧ヘッド1Aを上昇位置として、第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bの間に被プレス物9のゴムシートを搬入する。被プレス物9のゴムシートは、上下からベルト2で挟んで加圧ヘッド1の間に搬入される。
【0055】
第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bの間に被プレス物9のゴムシートを搬入した後、往復運動機構3が第1の加圧ヘッド1Aを降下させる。このとき、第1の加圧ヘッド1Aに連結しているガイドロッド74は、第2の加圧ヘッド1Bに連結しているガイド壁76の間に挿入される。第1の加圧ヘッド1Aは、ガイドロッド74の下端がストッパ80に当たるまで降下される。
【0056】
ガイドロッド74の下端がストッパ80に当たる状態で、挿入機構79は、ガイド壁76とガイドロッド74の貫通孔77、75にクサビ78を挿入して厚さ調整機構7をロック状態として、一対の加圧ヘッド1の隙間を一定に保持する。クサビ78は、図8に示すように、上面でガイド壁76の貫通孔77の上面を押圧し、下面でガイドロッド74の貫通孔75の下面を押圧して、ガイドロッド74とガイド壁76とを所定の位置に固定する。この状態で、ガイドロッド74とガイド壁76との相対位置が特定され、ガイドロッド74とガイド壁76を介して第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bの隙間が一定に保持される。
【0057】
その後、流体供給チャンバ10に加圧流体8を供給する。加圧流体8が供給される流体供給チャンバ10は、開口部をベルト2で閉塞する状態となっている。流体供給チャンバ10に供給される加圧流体8は、加圧、加熱された流体、たとえば温度を300℃、圧力を5MPaとする加熱油である。流体供給チャンバ10に供給される加圧流体8は、ベルト2を介して被プレス物9のゴムシートを加熱状態で加圧する。このとき、加圧流体8が被プレス物9をプレスする総圧力は加圧流体8の圧力と流体供給チャンバ10の開口面積の積になるが、この総圧力は500トン〜数千トンとなる。
【0058】
以上のように、プレス装置は、厚さ調整機構7で、一対の加圧ヘッド1の隙間を一定に保持する状態で、ベルト2を移動させて、ベルト2間の被プレス物9であるゴムシートを連続的に加熱、加圧して加硫する。
【符号の説明】
【0059】
1…加圧ヘッド 1A…第1の加圧ヘッド
1B…第2の加圧ヘッド
1a…プレス面
2…ベルト
3…往復運動機構
4…駆動機構
5…加熱機構
7…厚さ調整機構
8…加圧流体
9…被プレス物
10…流体供給チャンバ
11…周壁
12…パッキン溝 12T…突出部
13…油圧路
14…油
19…油圧シリンダー
20…パッキン 20x…端面
20y…内面
20z…外面
21…ガイド孔
22…貫通孔
23…凹部
24…ガイド孔
30…隙間閉塞具
31…弾性体 31A…コイルバネ
32…止ネジ 32X…ショルダーネジ
32A…ショルダー部
32B…雄ネジ
32C…ねじ頭
33…ピン
41…ロール
74…ガイドロッド
75…貫通孔 75A…摺動面
76…ガイド壁
77…貫通孔 77A…摺動面
78…クサビ 78A…傾斜面
78B…傾斜面
79…挿入機構
80…ストッパ
81…ネジ棒 81A…角頭
81B…雌ねじ孔
82…調整ネジ 82A…角頭
87…交換プレート
88…ネジ
89…ガイド筒 89A…雌ねじ
101…加圧ヘッド 101A…第1の加圧ヘッド
101B…第2の加圧ヘッド
101a…プレス面
102…ベルト
108…加圧流体
109…被プレス物
110…流体供給チャンバ
112…パッキン溝
120…パッキン 120A…パッキン
120B…パッキン
120x…端面20x
120y…内面20y

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向面をプレス面(1a)として互いに対向して配設してなる第1の加圧ヘッド(1A)及び第2の加圧ヘッド(1B)からなる一対の加圧ヘッド(1)と、一対の加圧ヘッド(1)の一方又は両方を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構(3)と、前記一対の加圧ヘッド(1)のプレス面(1a)に沿って移動するように配置してなる一対のベルト(2)と、一対のベルト(2)を移動させる駆動機構(4)と、前記ベルト(2)を加熱してベルト(2)を介して被プレス物(9)を加熱する加熱機構(5)とを備え、
前記加圧ヘッド(1)は、加圧流体(8)を供給する流体供給チャンバ(10)をプレス面(1a)に備え、この流体供給チャンバ(10)は対向する加圧ヘッド(1)との対向面を開口して、この開口部を閉塞するように前記ベルト(2)を配設しており、
前記加圧ヘッド(1)が流体供給チャンバ(10)の外周に沿ってパッキン溝(12)を有し、このパッキン溝(12)に案内してなるパッキン(20)が設けられて、このパッキン(20)が移動するベルト(2)に摺動状態に密接されて前記流体供給チャンバ(10)をベルト(2)で密閉しており、
前記駆動機構(4)で移動されるベルト(2)がパッキン(20)を介して流体供給チャンバ(10)を閉塞する状態で、流体供給チャンバ(10)に加圧流体(8)が供給されて、加圧流体(8)が移動するベルト(2)を介して被プレス物(9)を加熱状態でプレスするようにしてなるプレス装置において、
前記流体供給チャンバ(10)の外周に設けているパッキン溝(12)が多角形で、多角形の各々の辺に分離されたパッキン(20)が配設されると共に、各々のパッキン(20)の端面(20x)を隣接するパッキン(20)の内面(20y)に接近させる隙間閉塞具(30)を備え、この隙間閉塞具(30)がパッキン(20)の端面(20x)を隣接するパッキン(20)に接近させて、隣接するパッキン(20)間の流体漏れを阻止するようにしてなるプレス装置。
【請求項2】
前記隙間閉塞具(30)が弾性体(31)で、パッキン(20)を長手方向に押圧してパッキン(20)の端面(20x)を隣接するパッキン(20)の内面(20y)に密接してなる請求項1に記載されるプレス装置。
【請求項3】
前記隙間閉塞具(30)がパッキン(20)の端面(20x)にネジ止めしてなる止ネジ(32)で、この止ネジ(32)が隣接するパッキン(20)を外面(20z)から内面(20y)に向かって貫通して、パッキン(20)の端面(20x)にねじ込まれて、パッキン(20)の端面(20x)を隣接するパッキン(20)の内面(20y)に接近させてなる請求項1に記載されるプレス装置。
【請求項4】
前記隙間閉塞具(30)の止ネジ(32)が先端部に雄ネジ(32B)を有するショルダーネジ(32X)で、ショルダーネジ(32X)のショルダー部(32A)の長さ(D)が、ショルダー部(32A)を挿通する貫通孔(22)の深さ(d)に等しく、あるいはショルダー部(32A)の長さ(D)が貫通孔(22)の深さ(d)よりも大きく、長さ(D)と深さ(d)の差が100μm以下であって、加圧流体(8)が加熱油である請求項3に記載されるプレス装置。
【請求項5】
前記パッキン(20)が、ショルダーネジ(32X)のねじ頭(32C)がパッキン(20)の表面から突出しないようにねじ頭(32C)を案内する凹部(23)を設けており、この凹部(23)の内形がねじ頭(32C)の外形よりも大きい請求項4に記載されるプレス装置。
【請求項6】
前記隙間閉塞具(30)が、加圧ヘッド(1)からパッキン(20)に向かって突出するピン(33)で、このピン(33)がパッキン(20)の端部に設けられたガイド孔(24)に挿入されて、ピン(33)の挿通されたパッキン(20)の端面(20x)が、隣接するパッキン(20)の内面(20y)に接近してなる請求項1に記載されるプレス装置。
【請求項7】
前記隙間閉塞具(30)のピン(33)が加圧ヘッド(1)に固定され、このピン(33)を挿通しているパッキン(20)がピン(33)に沿って移動できるようにピン(33)をガイド孔(24)に挿通してなる請求項6に記載されるプレス装置。
【請求項8】
前記隙間閉塞具(30)のピン(33)がパッキン(20)に固定され、このピン(33)が加圧ヘッド(1)に軸方向に移動できるように連結してなる請求項6に記載されるプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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