説明

プレス部品の製造方法、及びプレス部品

【課題】製品機能や意匠に影響が出難いうえ、プレスによるせん断加工状態の変化に影響されることなく、安定して横振れ少なくプレスによる曲げ加工を行うこと。
【解決手段】基端部10から先端部11に向けて延在すると共に、基端部と先端部との間で折り曲げ加工された帯板片4と、先端部を自由端とした状態で帯板片を片持ち支持するベース板2と、を具備するプレス部品1を製造する方法であって、ベース板をプレスによるせん断加工によって打ち抜き、非折曲状態の帯板片を形成する工程と、帯板片における両主面4a、4bのうち少なくともいずれか一方の主面上における傾斜を部分的に矯正し、ベース板の表裏面2aに対して平行とされた矯正面12を形成する工程と、プレス加工用金型で帯板片をプレス加工し、該帯板片を折り曲げる工程と、を備え、折曲工程の際、矯正面が形成された部分が折れ曲がりの起点となるようにプレスを行う製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス部品の製造方法、及びプレス部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、プレス加工用金型を用いて、鉄板、鋼板、アルミ板等の基板をプレス加工することで様々なプレス部品の製造がなされている。プレス加工の手法としては、例えばせん断加工、曲げ加工、絞り加工等があり、これらを適宜選択、又は組み合わせながら加工を行うことでプレス部品の製造が行われている。
【0003】
例えば、時計用部品である地板、輪列受けや各種の歯車押さえ等は、小型で且つ精密な部品であることに加え、生産性が求められる部品であり、従来よりプレス加工によって好適に製造がなされている。この際、時計用部品は小型であるがゆえに、通常プレス加工を複数回に分けて行い、加工を段階的に行う場合が多い。これは、ダイやパンチ等のプレス加工用金型をプレス部品のサイズに応じて小型且つ精密に仕上げることが困難であるので、1回のプレス加工だけでプレス部品を所望の形状に仕上げることが実際上できないためである。従って、例えば2回又は3回以上のプレス加工によって、せん断加工、曲げ加工や絞り加工を段階的に行い、所望の形状に仕上げている。
【0004】
ところで、上記した複数回のプレス加工によって、図9に示す細長い帯状のばね部100を具備する歯車押さえ等を形成する場合がある。
このばね部100は、基端部101が歯車押さえのベース板110に接続され、先端部102が自由端とされたばね性を有する片持ち状の部材であり、例えば時計の電源端子用部材として用いられる。ばね部100の先端部102と基端部101との間は、略90度の角度で折り曲げられており、この折り曲げ部分によってばね性が確保されている。
【0005】
上述したばね部100は、図10に示すように、プレス加工によってベース板110から細長い帯板状にせん断加工(打ち抜き加工)された(点線に示す状態)後、プレス加工によって折り曲げられることで製造される。ところが、この曲げ加工時に、先端部102が真っ直ぐに折れ曲がるのではなく、図9に示すように横振れした状態(図中の点線で示す状態)で折れ曲がり易かった。この場合には、ばね部100の先端部102の位置が位置ずれするうえ、ばね特性が変化する等の不都合が生じてしまう。
【0006】
ここで、上記した横振れについて詳細に説明する。
はじめに、プレス加工によってベース板110をせん断加工することで、折り曲げ前のばね部100を形成するが、ばね部100自体が微細であるため、上述したように1回のプレス加工でせん断加工を可能とさせるプレス加工用金型が存在しない。そのため、図11に示すように、プレス加工によってせん断加工が一度なされたベース板110を、再度ダイ120及びパンチ121を利用してプレス加工(せん断加工)することで、図10に示す折り曲げ前のばね部100を形成する。
【0007】
ところが、この2回目のプレス加工による応力によって、ばね部100が軸線O回りに捩れるように変形し易く、図12に示すように、その断面形状が捩れによって歪になり、ばね部100の上面100a及び下面100bがベース板110の表裏面に対して傾いた状態になり易い。従って、その後にばね部100をプレス加工によって折り曲げると、上面100a及び下面100bの傾きに倣って折れ曲がり易く、先端部102に横振れが発生してしまうものであった。
【0008】
そこで、この横振れを抑制するための対策として、例えば以下の方法が知られている。
第1の方法としては、2回目のプレス加工によるせん断加工時に、度決め部品により予めばね部100を押さえ込んでその姿勢を矯正しておき、ばね部100に捩り等の不正変形が生じることを抑制する方法である。第2の方法としては、2回目のプレス加工後に、ばね部100の全体を押潰して、上記捩りによってベース板110の表裏面に対して傾斜したばね部100の上面100a及び下面100bを再度ベース板110の表裏面に対して平行となるように矯正する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭61−269350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したいずれの方法であっても、ばね部100に矯正痕が残り易いので、製品機能や意匠が満足しない場合があった。また、度決め部品やばね部100全体を押潰す部品の初期の条件出しが複雑で難しいうえ、プレスによるせん断加工状態の変化(例えば、プレス加工用金型の切れ味の低下等)によって、度決め部品やばね部100全体を押潰す部品の金型調整に手間がかかり、またその調整に費用が多くかかり易かった。
【0011】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、製品機能や意匠に影響が出難いうえ、プレスによるせん断加工状態の変化に影響されることなく、安定して横振れ少なくプレスによる曲げ加工を行うことができるプレス部品の製造方法、及び該方法により製造されたプレス部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
(1)本発明に係るプレス部品の製造方法は、基端部から先端部に向けて帯状に延在すると共に、基端部と先端部との間で折り曲げ加工された帯板片と、該帯板片の前記基端部が接続され、前記先端部を自由端とした状態で該帯板片を片持ち支持するベース板と、を具備するプレス部品を製造する方法であって、前記ベース板の一部をプレスによるせん断加工によって打ち抜き、非折曲状態の前記帯板片を形成するせん断工程と、前記帯板片における一方の主面と他方の主面とのうち、少なくともいずれか一方の主面上における傾斜を部分的に矯正し、ベース板の表裏面に対して平行とされた矯正面を形成する矯正工程と、互いに接近離間可能な一対のプレス加工用金型で前記帯板片をプレス加工し、該帯板片を前記基端部と前記先端部との間で折り曲げる折曲工程と、を備え、前記折曲工程の際、前記矯正面が形成された部分が折れ曲がりの起点となるように前記プレスを行うことを特徴とする。
【0013】
本発明に係るプレス部品の製造方法によれば、ベース板の一部をせん断加工して打ち抜き、非折曲状態の帯板片を形成した後に、帯板片に対して矯正面を形成するので、せん断加工時の応力によって帯板片に捩れ等が発生し、その断面形状が歪になったとしても、少なくとも矯正面の部分だけはベース板の表裏面に対して平行にすることができる。そして、この矯正面を形成した後、一対のプレス加工用金型で帯板片をプレス加工し、該帯板片を基端部と先端部との間で折り曲げる折曲工程を行う。これにより、先端部側がベース板から立ち上がるように折り曲げられた帯板片と、この帯板片の基端部側を片持ち支持するベース板と、を具備するプレス部品を製造することができる。
【0014】
特に、折曲工程の際、矯正面が形成された部分が折れ曲がりの起点となるようにプレスを行うので、帯板片の折れ曲がり方向がこの矯正面の傾斜状態に優先的に支配され易くなり、矯正面に対して垂直な面内で立ち上がるように帯板片を折り曲げることができる。これにより、従来とは異なり、帯板片の先端部を横振れ少なく折り曲げることができる。
【0015】
また、矯正面を形成する位置は、せん断加工による打ち抜き精度に関係なく、折り曲げを行う部分であれば良いので、その形成位置を容易に決定し易く、矯正面を形成するための作業が簡便である。しかも、せん断加工時の加工状態が変化したとしても、矯正面を形成する位置をその都度代える必要がないので、せん断加工の加工精度に影響されることなく横振れを抑制できる。
更に、帯板片の全体に矯正面を形成するのではなく、折り曲げを行う部分にのみ部分的に形成すれば良いので、矯正痕である矯正面を極力目立ち難くすることができる。従って、プレス部品自体の製品機能や意匠に影響を与え難い。
【0016】
(2)上記本発明に係るプレス部品の製造方法において、前記矯正工程の際、前記帯板片が折れ曲がる側の前記主面に前記矯正面を形成することが好ましい。
【0017】
この場合には、帯板片が折れ曲がる側の主面に矯正面を形成するので、帯板片の折れ曲がり方向が矯正面の傾斜状態により優先的に支配され易くなる。そのため、帯板片の先端部をさらに横振れ少なく折り曲げることができる。
【0018】
(3)上記本発明に係るプレス部品の製造方法において、前記矯正工程の際、前記一方の主面及び前記他方の主面の両面に前記矯正面を形成することが好ましい。
【0019】
この場合には、帯板片の先端部をより効果的に横振れ少なく折り曲げることができる。
【0020】
(4)上記本発明に係るプレス部品の製造方法において、前記矯正工程の際、前記帯板片の折れ曲がり部分の全体に亘って前記矯正面を形成することが好ましい。
【0021】
この場合には、帯板片の折れ曲がり部分の全体に亘って矯正面を形成するので、帯板片の先端部をさらに安定して横振れ少なく折り曲げることができる。
【0022】
(5)本発明に係るプレス部品は、基端部から先端部に向けて帯状に延在すると共に、基端部と先端部との間で折り曲げられた帯板片と、該帯板片の前記基端部が接続され、前記先端部を自由端とした状態で該帯板片を片持ち支持するベース板と、を備え、前記帯板片には、前記ベース板の表裏面に対して平行な矯正面が、一方の主面と他方の主面とのうち少なくともいずれか一方の主面上に形成され、前記帯板片は、前記矯正面の部分が折れ曲がりの起点となるようにプレス加工されていることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るプレス部品によれば、上述した製造方法と同様の作用効果を奏効することができる。即ち、帯板片が安定して横振れ少なくプレスによる折り曲げ加工されるので、高品質なプレス部品とすることができる。しかも、矯正面が帯板片の全体でなく部分的に形成されているので目立ち難く、製品機能や意匠に影響が出難い。
【0024】
(6)上記本発明に係るプレス部品において、前記矯正面は、前記帯板片が折れ曲がる側の前記主面に形成されていることが好ましい。
【0025】
この場合には、上述した製造方法と同様の作用効果を奏効することができる。即ち、帯板片の先端部がさらに横振れ少なく折り曲げられたプレス部品とすることができる。
【0026】
(7)上記本発明に係るプレス部品において、前記矯正面は、前記帯状片の前記一方の主面及び前記他方の主面の両面に形成されていることが好ましい。
【0027】
この場合には、上述した製造方法と同様の作用効果を奏効することができる。即ち、帯板片の先端部がさらに効果的に横振れ少なく折り曲げられたプレス部品とすることができる。
【0028】
(8)上記本発明に係るプレス部品において、前記矯正面は、前記帯板片の折れ曲がり部分の全体に亘って形成されていることが好ましい。
【0029】
この場合には、上述した製造方法と同様の作用効果を奏効することができる。即ち、帯板片の先端部が安定して横振れ少なく折り曲げられたプレス部品とすることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、製品機能や意匠に影響が出難いうえ、プレスによるせん断加工時の加工状態の変化に影響を受けずに、安定して横振れ少なくプレスによる折り曲げ加工を行うことができ、高精度に折り曲げられた帯板片を具備するプレス部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係るプレス部品である歯車押さえの平面図である。
【図2】図1に示す歯車押さえのばね部の斜視図である。
【図3】図2に示すばね部を製造する際の一工程であって、プレスによるせん断加工によって打ち抜かれた状態のばね部を、第1矯正型と第2矯正型とで押潰す直前の状態を示す斜視図である。
【図4】図3に示す状態の後、第1矯正型と第2矯正型とでばね部を押し潰している状態を示す断面図である。
【図5】図4に示す押潰しによって、矯正面が形成されたばね部の斜視図である。
【図6】図5に示すA−A線に沿ったばね部の断面図である。
【図7】図5に示す状態の後、一対のプレス加工用金型によってばね部を折り曲げ加工している状態を示す図である。
【図8】折り曲げ終了時における、ばね部の折れ曲げ部分を拡大した図である。
【図9】従来のばね部の一例を示す斜視図であって、先端部に横振れが発生した状態を示す図である。
【図10】図9に示すばね部を製造する際の一工程図であって、プレスによるせん断加工によって打ち抜かれた状態のばね部を、折り曲げ加工した状態を示す図である。
【図11】図9に示すばね部を製造する際の一工程図であって、プレスによるせん断加工がなされたベース板を、再度プレスしてせん断加工する状態を示す図である。
【図12】図10に示すB−B線に沿ったばね部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<プレス部品(歯車押さえ)>
以下、本発明に係るプレス部品、及びその製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本実施形態では、プレス部品として時計用部品である歯車押さえを例に挙げて説明する。
【0033】
図1に示す歯車押さえ1は、例えば機械式時計やクオーツ時計等の各種時計に組み込まれ、各種の歯車の位置決めや支持を行うための板状部品である。なお、図示の例では、軸受孔や取付孔等の図示を省略した簡略図としている。
この歯車押さえ1は、外形形状が複雑に形成されたベース板2と、ベース板2の一部に形成された開口部3内に配置され、ベース板2に片持ち支持されたばね部(帯板片)4と、を備えている。ベース板2及び開口部3は、プレスによるせん断加工によって打ち抜かれることで外形形成されている。
【0034】
ばね部4は、図2に示すように、基端部10から先端部11に向けて帯状に延在すると共に、基端部10と先端部11との間で略90度の角度で折り曲げられたばね性を有する帯板状の部材であり、例えばアース用端子として機能するものである。
このばね部4は、上記したように基端部10がベース板2に片持ち支持されていると共に、先端部11が自由端とされている。この際、ばね部4は、図1に示すようにベース板2の開口部3の略中央部分に向けて突き出るように配設されており、その先端部11が開口部3の略中央部分においてベース基板の厚み方向(図1において紙面に対して垂直方向)に立ち上がるように折り曲げられている。
これにより、ばね部4の先端部11を図示しない時計のアース部分に対して適度な力で接触させることができ、安定した接地状態(アース状態)を確保することが可能とされている。
【0035】
また、このばね部4は、ベース板2及び開口部3と共にプレスによるせん断加工によって打ち抜かれることで外形形成された後、後述する一対のプレス加工用金型25、26を利用したプレス加工による折り曲げによって形成されている。
特に、図2に示すように、ばね部4には、ベース板2の表裏面2aに対して平行な矯正面12が、一方の主面4a及び他方の主面4bの両面に形成されている。そして、ばね部4はこの矯正面12の部分が折れ曲がりの起点となるようにプレス加工がなされている。
なお、上記矯正面12は、折れ曲がりの部分(湾曲したR部分)全体に亘って形成されている。また、ばね部4の主面4a、4bとは、プレスによるせん断加工を行う前段階において、ベース板2の表裏面2aをなしていた部分をいう。
【0036】
<プレス部品(歯車押さえ)の製造方法>
次に、上記のように構成された歯車押さえ1の製造方法について説明する。
はじめに、ベース板2をプレスによるせん断加工によって打ち抜き、所望の外形形状に形成すると同時に、その一部を打ち抜いて図1に示す開口部3と、図3に示す非折曲状態のばね部4を形成するせん断工程を行う。
【0037】
次いで、非折曲状態のばね部4の両主面4a、4b上における傾斜具合を部分的に矯正し、ベース板2の表裏面2aに対して平行とされた矯正面12を、ばね部4の両主面4a、4bにそれぞれ形成する矯正工程を行う。
具体的には、図3に示すように、互いに接近離間可能な第1矯正型20及び第2矯正型21を利用して行う。これら第1矯正型20及び第2矯正型21は、例えば四角柱状に形成された型であり、そのプレス面(端面)20a、21aは平面視四角形状の平坦面とされている。
なお、これら第1矯正型20及び第2矯正型21は、プレス面20a、21aがベース板2の表裏面2aに対して平行状態を維持したまま、接近離間可能に配設されている。
【0038】
そして、図3及び図4に示すように、第1矯正型20と第2矯正型21とでばね部4を両主面4a、4b側から挟み込んで押潰し、図5に示すように両主面4a、4bに上記矯正面12をそれぞれ形成する。
なお、矯正面12を形成する位置は、ばね部4を後に折り曲げる部分に形成する。加えて、折れ曲がり部分の全体に亘って矯正面12を形成する。
【0039】
上記した矯正工程を行うことで、例えば、せん断加工時の応力によってばね部4に軸線O回りの捩れ等が発生し、その断面形状が歪(図6に示す点線形状)になったとしても、少なくとも矯正面12の部分だけはベース板2の表裏面2aに対して平行(図6に示す実線部分)にすることができる。
【0040】
次いで、図7に示す一対のプレス加工用金型25、26でばね部4をプレス加工し、該ばね部4を基端部10と先端部11との間で折り曲げる折曲工程を行う。
一対のプレス加工用金型25、26は、互いに相対的に接近離間可能とされ、一方が固定型25、他方が可動型26とされている。そして、固定型25に対して可動型26を接近させるにつれて、ばね部4を徐々にプレスでき、最終的にはばね部4を略90度の角度で折り曲げることが可能とされている。
【0041】
そして、上記した一対のプレス加工用金型25、26を利用して、図7及び図8に示すように、矯正面12が形成された部分が折れ曲がりの起点となるように上記プレス加工を行う。これにより、先端部11がベース板2から立ち上がるように略90度の角度で折り曲げられたばね部4と、このばね部4の基端部10側を片持ち支持するベース板2と、を具備する、図1及び図2に示す歯車押さえ1を製造することができる。
【0042】
特に、折曲工程の際に、矯正面12が形成された部分が折れ曲がりの起点となるようにプレスを行うので、ばね部4の折れ曲がり方向がこの矯正面12の傾斜状態に優先的に支配され易くなり、矯正面12に対して垂直な仮想面K(図6参照)内で立ち上がるようにばね部4を折り曲げることができる。これにより、従来とは異なり、ばね部4の先端部11を横振れ少なく折り曲げることができる。
【0043】
また、矯正面12を形成する位置は、せん断加工によるうち抜き精度に関係なく、折り曲げを行う部分であれば良いので、その形成位置を容易に決定し易く、矯正面12を形成するための作業が簡便である。つまり、第1矯正型20及び第2矯正型21の初期の位置設定等を、打ち抜き精度に左右されずに容易に行うことができる。
しかも、せん断加工時の加工状態が変化したとしても、矯正面12を形成する位置をその都度代える必要がないので、せん断加工の加工精度に影響されることなく横振れを抑制できる。
【0044】
更に、ばね部4の全体に矯正面12を形成するのではなく、折り曲げを行う部分にのみ部分的に形成すれば良いので、矯正痕(プレス痕)であるこの矯正面12を図2に示すように極力目立ち難くすることができる。従って、ばね部4の製品機能(所望するばね特性やサイズ等)や意匠性に影響を与え難い。そのため、アース用端子として好適なばね部4を具備する歯車押さえ1を得ることができる。
しかも、本実施形態では、矯正面12をばね部4の両主面4a、4bに形成しているうえ、折れ曲がり部分の全体に亘って形成しているので、ばね部4の先端部11をより安定して横振れ少なく折り曲げることができる。
【0045】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態では、プレス部品の一例として歯車押さえ1を例に挙げて説明したが、この場合に限定されるものではなく、例えば歯車押さえ1以外の時計用部品等であっても構わない。
【0047】
また、上記実施形態では、ばね部4を略90度の角度で折り曲げたが、その角度範囲は自由に設定して構わない。また、ばね部4の両主面4a、4bに矯正面12をそれぞれ形成したが、少なくともいずれか一方の主面4a(又は4b)にだけ矯正面12を形成しても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏効することができる。但し、上記実施形態のように、両主面4a、4bにそれぞれ矯正面12を形成することで、ばね部4の先端部11の横振れをより効果的に抑制し易いので、より好ましい。
なお、矯正面12をばね部4の両主面4a、4bに形成しない場合には、ばね部4が折れ曲がる側の主面4aに形成することが好ましい。こうすることで、ばね部4の先端部11を横振れ少なく効果的に折り曲げ易い。
【0048】
また、上記実施形態では、四角柱状の第1矯正型20及び第2矯正型21を利用してばね部4に矯正面12を形成したが、四角柱状以外の多角柱状や円柱状の矯正型を用いても構わない。この場合であっても、同様の作用効果を奏効することができる。
また、第1矯正型20及び第2矯正型21を利用して矯正面12を形成する場合に限定されるものではなく、その他の方法、例えば研磨加工等で矯正面12を形成しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1…歯車押さえ(プレス部品)
2…ベース板
4…ばね部(帯板部)
4a、4b…ばね部の主面
10…ばね部の基端部
11…ばね部の先端部
12…矯正面
25、26…プレス加工用金型

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部から先端部に向けて帯状に延在すると共に、基端部と先端部との間で折り曲げ加工された帯板片と、
該帯板片の前記基端部が接続され、前記先端部を自由端とした状態で該帯板片を片持ち支持するベース板と、を具備するプレス部品を製造する方法であって、
前記ベース板の一部をプレスによるせん断加工によって打ち抜き、非折曲状態の前記帯板片を形成するせん断工程と、
前記帯板片における一方の主面と他方の主面とのうち、少なくともいずれか一方の主面上における傾斜を部分的に矯正し、ベース板の表裏面に対して平行とされた矯正面を形成する矯正工程と、
互いに接近離間可能な一対のプレス加工用金型で前記帯板片をプレス加工し、該帯板片を前記基端部と前記先端部との間で折り曲げる折曲工程と、を備え、
前記折曲工程の際、前記矯正面が形成された部分が折れ曲がりの起点となるように前記プレスを行うことを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のプレス部品の製造方法において、
前記矯正工程の際、前記帯板片が折れ曲がる側の前記主面に前記矯正面を形成することを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプレス部品の製造方法において、
前記矯正工程の際、前記一方の主面及び前記他方の主面の両面に前記矯正面を形成することを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のプレス部品の製造方法において、
前記矯正工程の際、前記帯板片の折れ曲がり部分の全体に亘って前記矯正面を形成することを特徴とするプレス部品の製造方法。
【請求項5】
基端部から先端部に向けて帯状に延在すると共に、基端部と先端部との間で折り曲げられた帯板片と、
該帯板片の前記基端部が接続され、前記先端部を自由端とした状態で該帯板片を片持ち支持するベース板と、を備え、
前記帯板片には、前記ベース板の表裏面に対して平行な矯正面が、一方の主面と他方の主面とのうち少なくともいずれか一方の主面上に形成され、
前記帯板片は、前記矯正面の部分が折れ曲がりの起点となるようにプレス加工されていることを特徴とするプレス部品。
【請求項6】
請求項5に記載のプレス部品において、
前記矯正面は、前記帯板片が折れ曲がる側の前記主面に形成されていることを特徴とするプレス部品。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のプレス部品において、
前記矯正面は、前記帯状片の前記一方の主面及び前記他方の主面の両面に形成されていることを特徴とするプレス部品。
【請求項8】
請求項5から7のいずれか1項に記載のプレス部品において、
前記矯正面は、前記帯板片の折れ曲がり部分の全体に亘って形成されていることを特徴とするプレス部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−75328(P2013−75328A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218234(P2011−218234)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(305018823)盛岡セイコー工業株式会社 (51)
【Fターム(参考)】