説明

プレハブ構造物の輸送組立方法

【課題】開口部を有するプレハブ構造物を大気汚染地域へ輸送し組み立てる際に、プレハブ構造物の内部空間が汚染されないようにする方法を提供する。
【解決手段】大気汚染地域外で組上げた開口部を有するプレハブ構造物1A,1Bのそれぞれを、大気汚染地域内に輸送し、その大気汚染地域で開口部を対向させた状態で隣接配置し、開口部相互を連結するプレハブ構造物の構築方法であって、大気汚染地域外において、プレハブ構造物の前記開口部に閉止板を設け、さらにその閉止板及び開口部周囲を覆って遮蔽シートを設けることをそれぞれ行い、この状態で大気汚染地域内に輸送し、開口部を対向させた状態でプレハブ構造物を隣接配置し、一方のプレハブ構造物内から、作業員が一方のプレハブ構造物の閉止板を取り外し遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する、つぎに他方のプレハブ構造物の閉止板を取り外し、隣接するプレハブ構造物を連結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレハブ構造物の輸送組立方法に関するものであり、より詳しくは、開口部を有するプレハブ構造物を大気汚染地域へ輸送し組み立てる際に、プレハブ構造物の内部空間が汚染されないようにする方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
放射性物質、アスベスト、ダイオキシン等の汚染物質が飛散する大気汚染地域に仮設事務所などを設置する場合、現場作業員の安全性確保などの観点から、現場での作業時間が少ないプレハブ工法が適している。
【0003】
このプレハブ工法とは、大気汚染されていない地域でプレハブ構造物を作り上げ、それを現地へ輸送した後、プレハブ構造物を組み立てて仮設事務所等を作りあげる方法である。
【0004】
このプレハブ工法においては、前記プレハブ構造物の側面等に、他のプレハブ構造物を連結するための開口部を設ける必要がある。
しかし、プレハブ構造物を積んで大気汚染地域を通過する際や、大気汚染された設置現場でプレハブ構造物を組み立てる際に、プレハブ構造物の開口部から内部空間へ汚染物質を伴った外気が入り込み、内部空間が汚染されてしまう可能性がある。
【0005】
大気汚染されていない地域を通過したり、大気汚染されていない設置現場で組み立てるのであれば、雨風を防げれば十分であり、プレハブ構造物の開口部を合成樹脂シートで覆う程度で間に合う。
しかし、大気汚染地域では、開口部を合成樹脂シートで覆う程度では強風などで汚染物質を伴った外気が内部空間へ入り込む懸念がある。汚染物質が内部空間に入り込むと、プレハブ構造物の内部で生活する技術者、作業員の健康に悪影響を与える可能性があるため、避けなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明の主たる目的は、開口部を有するプレハブ構造物を大気汚染地域へ輸送し組み立てる際に、プレハブ構造物の内部空間が汚染されないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
大気汚染地域外で組上げた開口部を有するプレハブ構造物のそれぞれを、大気汚染地域内に輸送し、その大気汚染地域で開口部を対向させた状態でプレハブ構造物を隣接配置し、開口部相互を連結するプレハブ構造物の構築方法であって、
大気汚染地域外において、プレハブ構造物の前記開口部に閉止板を設け、さらにその閉止板及び開口部周囲を覆って遮蔽シートを設けることをそれぞれ行い、この状態で大気汚染地域内に輸送し、
大気汚染地域内において、開口部を対向させた状態でプレハブ構造物を隣接配置し、
一方のプレハブ構造物内から、作業員によって、順次(1)〜(3)の作業を行ない、
(1)一方のプレハブ構造物の閉止板を取り外す、
(2)一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する、
(3)他方のプレハブ構造物の閉止板を取り外す、
これによって、隣接するプレハブ構造物を連結する、
ことを特徴とするプレハブ構造物の構築方法。
【0008】
(作用効果)
プレハブ構造物の開口部に閉止板を設けたことで、プレハブ構造物を輸送する際などに強風が吹いた場合でも、汚染物質を伴った外気がプレハブ構造物の内部空間へ入り込むことがなくなり、内部空間の汚染を防ぐことができる。
また、閉止板及び開口部周囲を覆うように遮蔽シートを設けることで、プレハブ構造物の開口部と閉止板の間に生じた微細な隙間から内部空間へ汚染物質が入り込むことを防ぐことができる。
さらに、大気汚染地域内において、開口部を対向させた状態でプレハブ構造物を隣接配置し、一方のプレハブ構造物内から、作業員によって、順次(1)一方のプレハブ構造物の閉止板を取り外す、(2)一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する、(3)他方のプレハブ構造物の閉止板を取り外す、という作業を行ない、これによって隣接するプレハブ構造物を連結することで、隣接するプレハブ構造物の内部空間が外気にさらされることなく連結され、内部空間へ汚染物質が入りこむことを防ぐことができる。
【0009】
<請求項2記載の発明>
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する前に、
遮蔽シートの外側表面に付着している汚染物質を遮蔽シートに固着させる固着剤を与える請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【0010】
(作用効果)
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、プレハブ構造物の開口部を隣接配置する前に、遮蔽シートの外側表面に付着している汚染物質を遮蔽シートに固着させる固着剤を与えることで、輸送中や組立て作業中に遮蔽シートに付着した汚染物質を遮蔽シートに固着させることができ、遮蔽シートを取り外す際に、プレハブ構造物の内部空間に汚染物質が落下し、飛散するのを防ぐことができる。
【0011】
<請求項3記載の発明>
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、
一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除した後に、
プレハブ構造物の開口部の繋がり部分の内周縁面をシールするシール材を塗布する請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【0012】
(作用効果)
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除した後に、プレハブ構造物の開口部の繋がり部分の内周縁面をシールするシール材を塗布することで、プレハブ構造物の開口部の繋がり部分から汚染物質が落下し、飛散するのを防ぐことができる。
【0013】
<請求項4記載の発明>
前記一方のプレハブ構造物の閉止板を内側から取り外せるように固定し、
前記他方のプレハブ構造物の閉止板を外側から取り外せるように固定して、
一方のプレハブ構造物および他方のプレハブ構造物の閉止板それぞれを、
作業員が一方のプレハブ構造物内から取り外すようにした請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【0014】
(作用効果)
前記一方のプレハブ構造物の閉止板を内側から取り外せるように固定し、前記他方のプレハブ構造物の閉止板を外側から取り外せるように固定して、一方のプレハブ構造物および他方のプレハブ構造物の閉止板それぞれを、作業員が一方のプレハブ構造物内から取り外すようにしたことで、閉止板を取り外す際の作業員の負荷を下げることができる。
【0015】
<請求項5記載の発明>
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する際に、
前記一方のプレハブ構造物および前記他方のプレハブ構造物の遮蔽シートそれぞれを遮蔽シートの外側表面に塗布した接着剤により接着し、
一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する際に、
これらの遮蔽シートを一体として切除し、
一方のプレハブ構造内に取り込んで廃棄に供する請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【0016】
(作用効果)
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する際に、前記一方のプレハブ構造物および前記他方のプレハブ構造物の遮蔽シートそれぞれを遮蔽シートの外側表面に塗布した接着剤により接着し、一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する際に、これらの遮蔽シートを一体として切除し、 一方のプレハブ構造内に取り込んで廃棄に供することで、遮蔽シートの間に汚染物質を閉じ込めることができ、遮蔽シートから汚染物質が落下し、飛散するのを防ぐことができる。
【0017】
<請求項6記載の発明>
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する前に、
遮蔽シートの外側表面に付着している汚染物質を遮蔽シートに固着させるために固着剤を与え、
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する際に、
前記一方のプレハブ構造物および前記他方のプレハブ構造物の遮蔽シートそれぞれを前記固着剤を用いて接着し、
一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する際に、
これらの遮蔽シートを一体として切除し、
一方のプレハブ構造内に取り込んで廃棄に供する請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【0018】
(作用効果)
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、プレハブ構造物の開口部を隣接配置する前に、遮蔽シートの外側表面に付着している汚染物質を遮蔽シートに固着させるために固着剤を与え、プレハブ構造物の開口部を隣接配置する際に、前記一方のプレハブ構造物および前記他方のプレハブ構造物の遮蔽シートそれぞれを前記固着剤を用いて接着し、一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する際に、これらの遮蔽シートを一体として切除し、一方のプレハブ構造内に取り込んで廃棄に供することで、遮蔽シートを接着する接着剤を用いずに済み、材料費の節減及び接着剤の塗布作業の省略をすることができる。
【発明の効果】
【0019】
以上のとおり本発明によれば、開口部を有するプレハブ構造物を大気汚染地域へ輸送し組み立てる際に、プレハブ構造物の内部空間が汚染されないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明にかかるプレハブ構造物を並列に配置した図である。
【図2】図1のプレハブ構造物のX−X部分の断面図である。
【図3】図2の連結部分の拡大図である。
【図4】図3のプレハブ構造物を隣接した断面図であり、連結部分の拡大図である。
【図5】一方のプレハブ構造物から閉止板を取り外した後の断面図であり、連結部分の拡大図である。
【図6】プレハブ構造物から遮蔽シートを切りはがした後の断面図であり、連結部分の拡大図である。
【図7】他方のプレハブ構造物から閉止板を取り外すとともに、シール剤を塗布した図であり、連結部分の拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の第1の実施の形態について添付図面を参照しながら詳説する。
【0022】
図1は、本発明にかかるプレハブ構造物1を並列に配置した図である。
このプレハブ構造物1は、連結すると仮設事務所などのプレハブ構造物集合体が出来上がるものであればその種類を問わない。プレハブ構造物1の例としては、改造した海上コンテナや鉄道コンテナ、住宅メーカーが工事現場の仮設事務所向けとして販売する分割搬入式ハウスの各ユニットなどが挙げられる。
また、プレハブ構造物1を連結したプレハブ構造物集合体の例としては、現場事務所、休憩所、レストラン、カラオケルーム、トランクルームなどが挙げられる。
【0023】
以下の説明においては、プレハブ構造物1として20フィート海上コンテナを改造したコンテナを例に挙げて説明する。このコンテナを二個以上連結すると、仮設事務所が完成する。
また、大気汚染地域として、放射性物質で汚染された放射能汚染地域を例に挙げて説明する。
【0024】
放射能汚染地域に設置する仮設事務所は、休憩スペースのほか、事務所内に放射能を入り込ませないための除塵スペース、脱衣スペース、エアシャワースペースなどを設けるのが一般的である。そのため、このような仮設事務所は、前記スペース毎にコンテナ1を用意し、これら複数のコンテナ1を連結する必要がある。
なお、下記においては説明の都合上、二つのコンテナ1A、1Bを連結する部分に焦点を当てて説明する。
【0025】
また、除塵スペース、脱衣スペース、シャワースペースを有するコンテナ1と、休憩スペースを有するコンテナ1を連結して、二つのコンテナ1からなる仮設事務所を設けることもできるが、この場合においても、本発明を適用することができる。
【0026】
コンテナ1を改造する作業は放射能汚染地域外で行われる。そして、改造されたコンテナ1は放射能汚染地域を通って輸送され、放射能汚染地域で組立てられる。
この輸送および組立てを行う間、コンテナ1の内装面および内部空間が放射能で汚染されないように、下記の対策を取る必要がある。
【0027】
図2は、図1のコンテナ1A、1BのX−X部分の断面図である。
コンテナ1A、1Bの側面に同一形状の開口部Mを設け、この開口部Mを連結する。この開口部Mを合成樹脂シートで覆っただけでは、コンテナ1A、1Bの輸送や組立て時に強風が吹くとシートがばたつき、放射能で汚染された外気がコンテナ1A、1B内に入り込む懸念がある。
そこで、本発明は強風が吹いた場合でも、放射能で汚染された外気がコンテナ1A、1B内に入り込まないような構造にした。具体的な構造は、図3を用いながら説明する。
【0028】
図3は、図2の連結部分の拡大図である。
放射能汚染区域外で行う改造作業では、開口部Mに閉止板3を設ける。図3においては、閉止板3の厚さを、コンテナ1の壁面2の厚さとほぼ同じ寸法にしているが、これに限られるものではない。閉止板3の厚さを壁面2の厚さよりも厚くしてもよいし、薄くしても良い。
【0029】
一方、コンテナ1の壁2の外面と閉止板3の外面の位置を平面視で直線状または略直線状となるようにするか、閉止板3の外面の位置をコンテナ1の壁2の外面の位置よりもコンテナ1の内部側となるようにするのが好ましい。閉止板3の外面がコンテナ1の壁2の外面よりも外側にあると、コンテナ1A、1Bを隣接させた場合に、相対する閉止板3A、3Bは隣接するが、相対する壁2の間には隙間が空いてしまうため、コンテナ1A、1Bを密接させることができないからである。
【0030】
この閉止板3には、例えば、鉄板、アルミ板、強化プラスチックなどの素材からなるものが用いられる。
【0031】
また、コンテナ1の壁2と閉止板3の間にはガスケット5Aを設けるのが望ましい。ガスケット5Aを設けることで、壁2と閉止板3の間に空いた微細な隙間を塞いで、コンテナ1の内部に放射性物質が侵入するのを防ぐことができるからである。
このガスケット5Aの代わりとして、パッキンを用いても良い。
【0032】
このガスケット5Aやパッキンには、例えば、天然ゴムのほかに、ニトリルゴム、シリコーンゴム、アクリルゴム、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴムなどの合成ゴム、四フッ化エチレンゴム(テフロン)樹脂、麻や綿などの植物繊維、さらには皮革などを用いることができる。また、鉄合金、非鉄合金、セラミック、黒鉛などを用いても良い。
【0033】
図3においては、閉止板3をコの字の断面形状にしており、この閉止板3の側面、ガスケット5A、壁2には予めねじ穴が設けられている。そして、閉止板3の側面からネジ6を回転させながら挿入し、ガスケット5Aを貫通させ、壁2に取り付けることで、閉止板3が壁2に固定される。
【0034】
閉止板3を取り付けるためのネジ6の固定位置は、コンテナ1の室内側または外側のいずれか一方に設ける。
【0035】
ただし、コンテナ1に出入扉10がなく、開口部Mが一つしかない場合、開口部Mに閉止板3を固定するとコンテナ1内に入れなくなるため、コンテナ1の外側から閉止板3を外すことができるように、ネジ6の固定位置を外側にする必要がある。
また、コンテナ1に出入扉10がなく、開口部Mが二以上ある場合、全ての開口部Mに閉止板3を固定するとコンテナ1内に入れなくなるため、少なくとも一つの閉止板3をコンテナ1の外側から外すことができるように、少なくとも一つの閉止板3のネジ6の固定位置を外側にする必要がある。
【0036】
コンテナ1に出入扉10がある場合は、開口部Mに閉止板3を固定しても、出入扉10からコンテナ1に入って室内側から閉止板3を外すことができるため、ネジ6の固定位置は外側に設けても室内側に設けても良い。
【0037】
具体的なネジ6の固定位置は、コンテナ1の閉止板3を取り外す手順を考えて決められる。
図2においては、コンテナ1Aの左下に設けた出入扉10から作業員がコンテナ1A内に入り、閉止板3Aを室内側から取り外すことを想定しているため、室内側にネジ6の固定位置を設けている。
そして、後ほど詳述するが、コンテナ1Bの閉止板3Bはコンテナ1Bの外側から取り外すことを想定しているため、外側にネジ6の固定位置を設けている。
【0038】
この図2に示すように、相対するコンテナ1A、1Bの相対する開口部Mに設けた閉止板3A、3Bのネジ6を取り付ける位置は、先に取り外す閉止板3Aは室内側にし、当該閉止板3Aと相対する閉止板3Bは外側にするのが好ましい。このようにすると、作業員の負荷を減らすことができるからである。
【0039】
なお、作業員がコンテナ1の室内へ最初に入る際は、出入扉10を利用することが好ましい。閉止板3を取り外すことによって室内へ入ることもできるが、閉止板3を取り外すと汚染された外気が室内へ入る可能性があるからである。
【0040】
前記のように、開口部Mに閉止板3を取り付けたことで、コンテナ1を輸送する際に、放射能汚染地域を通過しても、コンテナ1の室内に外気が侵入し、内装面および内部空間が汚染されるという事態を回避することができる。
【0041】
しかしながら、閉止板3の外面に放射性物質が付着することは避けられない。そのため、現地でコンテナ1を組み立てて事務所を作る過程で、閉止板3を取り外し撤去する際に、閉止板3に付いている放射性物質がコンテナ1内に落下し、結果として、コンテナ1の内装面および内部空間を汚染してしまう可能性がある。
【0042】
そこで、本発明においては、閉止板3及び開口部Mの周囲を覆うように遮蔽シート4を設けている。以下、図3〜図7を用いて、遮蔽シート4の役割を詳述する。
【0043】
図3に示すように、放射能汚染区域外でコンテナ1の改造作業を行う過程で、閉止板3を取り付けた後、当該閉止板3及び開口部Mの周囲を覆うように遮蔽シート4を貼り付ける。
【0044】
この遮蔽シート4としては、例えば、合成樹脂、塩化ビニール、ポリエチレンなどの素材からなるものが挙げられる。
【0045】
コンテナ1の輸送時に遮蔽シート4が剥がれ落ちないように、コンテナ1の開口外周部Nには遮蔽シート4を強固に貼り付ける。一方、開口部Mの内側にある閉止板3には、遮蔽シート4を貼り付けないか、貼り付けたとしても容易に剥がすことができる程度にする。閉止板3と遮蔽シート4を容易に分離できるようにすることで、閉止板3を撤去する作業の負荷を減らすことができるからである。この点は、後ほど詳述する。
【0046】
また、閉止板3と壁2の間に設けたガスケット5Aには、遮蔽シート4を貼り付けないか、貼り付けたとしても容易に剥がすことができる程度にする。ガスケット5Aと遮蔽シート4を容易に分離できるようにすることで、ガスケット5Aを撤去する作業の負荷を減らすことができるからである。
【0047】
更に、コンテナ1の開口外周部Nの外壁にもガスケット5Bを設け、このガスケット5Bを内包するように、ガスケット5Bの外側から遮蔽シート4を貼り付ける。仮に、放射性物質が遮蔽シート4と壁2の間を通り抜けて内部に入り込んだ場合であっても、ガスケット5Bによって、放射性物質がそれ以上内部へ入り込むことを防ぐことができる。
なお、輸送中の風圧等にも耐えられるよう遮蔽シート4を強固に貼り付ける必要があるため、ガスケット5Bを内包するように遮蔽シート4を貼り付ける。
【0048】
図2および図3のように、放射能非汚染地域でコンテナ1の開口部Mに閉止板3、遮蔽シート4、ガスケット5A、5Bを取り付けた後、トラック等に積載して放射能汚染地域へ運ぶ。
【0049】
(コンテナ1の組み立て過程)
以下に、図2から図7を用いて、放射能汚染地域でコンテナ1を組み立てる過程を説明する。
放射能汚染地域でコンテナ1A、1Bを積み降ろした後、図2のようにコンテナ1A、1Bを近接させ、コンテナ1A、1Bの開口部Mを対向させる。
【0050】
その後、遮蔽シート4の外側表面に付着した放射性物質を遮蔽シート4に固着させる固着剤を遮蔽シート4の外側表面に与える。この固着剤により、輸送中や組立て作業中に遮蔽シート4に付着した放射性物質を遮蔽シート4に固着させることができ、後に遮蔽シート4を取り外す際に、コンテナ1の内部空間に放射性物質が落下し、飛散するのを防ぐことができる。
【0051】
この固着剤の種類としては、スリーエム製のスプレーのり55やG17を挙げることができる。
また、この固着剤はスプレーで吹きかける方法のほか、刷毛で塗布する方法などがある。
【0052】
遮蔽シート4の外側表面に前記固着剤を与えた後、相対する遮蔽シート4A、4Bを接着させるための接着剤を遮蔽シート4A、4Bの外側表面に更に与える。
後に詳述するが、プレハブ1A、1Bの相対する遮蔽シート4A、4Bを前記接着剤により接着し、遮蔽シート4A、4Bの少なくとも開口部M相当領域を切除する際に、遮蔽シート4A、4Bの間に放射性物質を閉じ込めて、これらの遮蔽シート4A、4Bを一体として切除し、一方のプレハブ1A内に取り込んで廃棄することで、遮蔽シート4A、4Bから放射性物質がコンテナ1Aの内部に落下し、飛散するのを防ぐことができる。
【0053】
この接着剤の種類としては、スリーエム製のスプレーのり55やG17を挙げることができる。
また、この接着剤はスプレーで吹きかける方法のほか、刷毛で塗布する方法などがある。
【0054】
なお、放射性物質を固着させる前記固着剤と、遮蔽シート4を接着させる前記接着剤は、1つの固着剤で併用することができる。併用することで、材料費の節減及び塗布作業の手間の低減を図ることができる。
【0055】
併用する場合は、放射性物質を固着させる作用と、遮蔽シート4を接着させる作用を有する固着剤を用いる必要がある。具体的には、前記した、スリーエム製のスプレーのり55やG17を挙げることができる。
【0056】
また、相対する二枚の遮蔽シート4A、4Bを接着させる前に、遮蔽シート4の外面のうち、開口外周部Nに相当する領域にコーキング剤7を塗布する。このコーキング剤7を塗布することにより、二枚の遮蔽シート4A、4Bの開口外周部Nの密着性を高めることができる。そのため、後の過程で、遮蔽シート4A、4Bの開口部M相当領域を切除した後、開口外周部Nに相当する領域に二枚の遮蔽シート4A、4Bの切れ端が残るが、この遮蔽シート4A、4Bの切れ端の間を通って、外部から室内へ放射性物質が侵入するのを防ぐことができる。
【0057】
図4は、コンテナ1A、1Bを隣接した断面図であり、連結部分の拡大図である。前述のように、相対する遮蔽シート4A、4Bが接着剤9およびコーキング剤7を通して接着している。
【0058】
そして、コンテナ1A、1Bを隣接させた後、コンテナ1Aに設けた開閉扉10から作業員がコンテナ1A内に入る。
コンテナ1A内に入った作業員が、コンテナ1Aの開口部Mに設けた閉止板3Aをとめているネジ6を緩め、閉止板3Aを取り外して撤去する。
【0059】
閉止板3Aを取り外す際に、閉止板3Aの外側にある遮蔽シート4A、4Bを分離するとともに、遮蔽シート4A、4Bを破かないようにしなければならない。遮蔽シート4A、4Bの外面には放射性物質が付着しているため、遮蔽シート4A、4Bが破けるとこの放射性物質が室内に入り込む可能性があるためである。
【0060】
閉止板3を遮蔽シート4から分離する作業の手間を低減するとともに、遮蔽シート4が破けないようにするため、前述したように、閉止板3に遮蔽シート4を貼り付けないか、貼り付けたとしても容易に剥がれる程度にするのが望ましい。
図5は、コンテナ1Aから閉止板3Aを取り外した後の断面図であり、連結部分の拡大図である。
【0061】
閉止板3Aを撤去した後、遮蔽シート4Aを作業員の手などで押し、遮蔽シート4Aと4Bを圧着する。そして、遮蔽シート4A、4Bが前記接着剤によって接着されたかどうかを確認する。
その後、開口部Mの外周の寸法に合わせて、遮蔽シート4A、4Bをナイフ等の刃物で切断する。
前述したように、二枚の遮蔽シート4A、4Bは接着剤9によって接着しているので、切断する際は二枚の遮蔽シート4A、4Bを一度に切断するようにする。二枚の遮蔽シート4A、4Bの間に放射性物質が挟み込まれているので、それらの放射性物質をコンテナ1の室内に落とさないようにするためである。
切断した遮蔽シート4A、4Bは、放射性物質が落ちないように、切断したその場で袋などに入れ、コンテナ1Aの外へ撤去する。
【0062】
なお、開口外周部Nには、遮蔽シート4A、4Bの切れ端が残った状態となる。
図6は、このようにして、プレハブ1から遮蔽シート4A、4Bを切りはがした後の断面図であり、連結部分の拡大図である。
【0063】
遮蔽シート4A、4Bを撤去した後、コンテナ1Bの開口部Mに設けた閉止板3Bを取り外す。
本発明においては、この閉止板3Bは外側からネジ止めすることが好ましい。
【0064】
仮に、閉止板3Bを室内側からネジ止めし、コンテナ1Bにも開閉扉10を設けた場合、作業員が開閉扉10からコンテナ1Bに入り、閉止板3Bをコンテナ1Bの室内側から取り外すこともできる。
しかし、その場合は、コンテナ1Aにいる作業員が遮蔽シート4A、4Bを撤去した後に、一端外へ出て、コンテナ1Bの開閉扉10へ回り込んでコンテナ1Bの室内へ入らなければならず、作業の手間がかかってしまうからである。
【0065】
よって、閉止板3Bを外側からネジ止めすることで、作業員がコンテナ1Aの外へ出ずに閉止板3Bを取り外すことができ、作業の手間の低減および作業時間の短縮を図ることができる。
【0066】
このように閉止板3A、3Bを取り外し、遮蔽シート4A,4Bを切り剥がすことで、コンテナ1A、1Bが連結される。
【0067】
なお、壁2、ガスケット5B、遮蔽シート4A、4Bの切れ端、コーキング剤7の各部剤の間に隙間が空いていた場合、コンテナ1の外側から室内へ放射性物質が入り込む恐れがある。また、前記各部材の間に放射性物質が残留していた場合も、室内へ放射性物質が落下し、飛散する可能性がある。
そのため、遮蔽シート4A、4Bを切り剥がした後であって閉止板3Bを取り外す前に、または閉止板3Bを取り外した後に、前記各部材の室内側壁面にシール剤8を塗布するのが好ましい。
【0068】
図7は、プレハブ1Bから閉止板3Bを取り外すとともに、シール剤8を塗布した図であり、連結部分の拡大図である。
【0069】
前記においては、説明の都合上、二つのコンテナ1A、1Bを連結する手順を説明したが、同様の手順でその他のコンテナも連結することができる。このように複数のコンテナ1を結合することで、放射能汚染地域であっても、室内が放射性物質に汚染されていない仮設事務所を作ることができる。
【符号の説明】
【0070】
1:プレハブ構造物、コンテナ、1A:(一方の)コンテナ、1B:(他の)コンテナ、2:壁面、3:閉止板、3A:(一方の)閉止板、3B:(他の)閉止板、4:遮蔽シート、4A:(一方の)遮蔽シート、4B:(他の)遮蔽シート、5A:(壁と閉止板の間にある)ガスケット、5B:(コンテナの外壁にある)ガスケット、6:ネジ、7:コーキング剤、8:シール剤、9:接着剤、10:開閉扉
M:開口部、N:開口外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気汚染地域外で組上げた開口部を有するプレハブ構造物のそれぞれを、大気汚染地域内に輸送し、その大気汚染地域で開口部を対向させた状態でプレハブ構造物を隣接配置し、開口部相互を連結するプレハブ構造物の構築方法であって、
大気汚染地域外において、プレハブ構造物の前記開口部に閉止板を設け、さらにその閉止板及び開口部周囲を覆って遮蔽シートを設けることをそれぞれ行い、この状態で大気汚染地域内に輸送し、
大気汚染地域内において、開口部を対向させた状態でプレハブ構造物を隣接配置し、
一方のプレハブ構造物内から、作業員によって、順次(1)〜(3)の作業を行ない、
(1)一方のプレハブ構造物の閉止板を取り外す、
(2)一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する、
(3)他方のプレハブ構造物の閉止板を取り外す、
これによって、隣接するプレハブ構造物を連結する、
ことを特徴とするプレハブ構造物の構築方法。
【請求項2】
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する前に、
遮蔽シートの外側表面に付着している汚染物質を遮蔽シートに固着させる固着剤を与える請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【請求項3】
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、
一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除した後に、
プレハブ構造物の開口部の繋がり部分の内周縁面をシールするシール材を塗布する請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【請求項4】
前記一方のプレハブ構造物の閉止板を内側から取り外せるように固定し、
前記他方のプレハブ構造物の閉止板を外側から取り外せるように固定して、
一方のプレハブ構造物および他方のプレハブ構造物の閉止板それぞれを、
作業員が一方のプレハブ構造物内から取り外すようにした請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【請求項5】
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する際に、
前記一方のプレハブ構造物および前記他方のプレハブ構造物の遮蔽シートそれぞれを遮蔽シートの外側表面に塗布した接着剤により接着し、
一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する際に、
これらの遮蔽シートを一体として切除し、
一方のプレハブ構造内に取り込んで廃棄に供する請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。
【請求項6】
プレハブ構造物を大気汚染地域内へ輸送した後であって、
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する前に、
遮蔽シートの外側表面に付着している汚染物質を遮蔽シートに固着させるために固着剤を与え、
プレハブ構造物の開口部を隣接配置する際に、
前記一方のプレハブ構造物および前記他方のプレハブ構造物の遮蔽シートそれぞれを前記固着剤を用いて接着し、
一方のプレハブ構造物の遮蔽シート及び他方のプレハブ構造物の遮蔽シートの少なくとも開口部相当領域を切除する際に、
これらの遮蔽シートを一体として切除し、
一方のプレハブ構造内に取り込んで廃棄に供する請求項1記載のプレハブ構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−19209(P2013−19209A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154763(P2011−154763)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(390018474)新日本空調株式会社 (88)