説明

プレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法

プレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法、特に、二軸方向鉄筋部材の応力に耐える抵抗手段を有する金属製型枠が用いられる方法。本方法によれば、型枠3が設けられ、該型枠3は、パネルの広い面を形成する2つの平行な中央壁2、5と、中央壁2、5の側部同士を接続してパネルの側縁を形成する2つの側壁9と、中央壁2、5及び側壁9の端縁同士を接続してパネルの端縁を形成する2つの端壁とによって形成される。各側壁9の間及び各端壁の間に二軸に沿って張力をかけた鉄筋部材7、8が設けられる。最後に、中央壁2、5、側壁9、及び/又は端壁の1つに設けられている利用可能な空間を通してモルタルが投入される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブを製造する方法に関し、特に、二軸方向鉄筋部材の応力に耐える抵抗手段を有する金属製型枠が用いられると共に、二軸方向にプレストレスを与えた平坦パネル及びスラブと湾曲パネル及びスラブとの両方を既製品として得ることができるようになっている方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3等、曲面を有する壁を構築するための型枠が考慮されている特許がいくつか知られている。上記特許文献のすべてで、曲面を有するコンクリート壁の「現場」構築を可能にする型枠構成が言及されているが、いずれの場合も、プレストレスを与えない鉄筋部材で湾曲の母線方向にのみ補強される可能性しかない。
【0003】
これらの場合、曲面を有すると共に二軸方向プレストレス鉄筋部材を有するプレハブパネル及びスラブを得ることは不可能である。
【0004】
他方、これまで実際には平坦な構成のみであった補強モルタルパネル及びスラブを成形する従来の方法は、上部が開口した水平型枠を用いるが、これは、モルタルからの水の蒸発に起因して正確な硬化を得難くすると共に、その成形面が型枠剥離剤で覆われる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】スペイン特許第2084868号
【特許文献2】スペイン特許第2141010号
【特許文献3】スペイン特許第2178604号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
平面、曲面、捩れ面、又は球面を有すると共に二軸方向プレストレス鉄筋部材を有する任意の構成の既製品としてパネル及びスラブを製造することができると同時に、硬化プロセス中のモルタルからの水の望ましくない蒸発を回避することができるようにする目的で、湾曲軌道上の鉄筋部材の案内手段を用いて閉鎖型枠内で上記パネル及びスラブを成形するという解決手段が採用されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記解決手段によれば、本発明の目的であるプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブを製造する方法が開発されており、該方法は、型枠を設けることであって、該型枠は、垂直位置又は水平位置にされることが可能であり、パネルの主面を形成する2つの平行な中央壁と、中央壁の側部同士を接続してこのパネルの側縁を形成する2つの側壁と、中央壁及び側壁の上方又は前方及び下方又は後方である端縁同士を接続してパネルの端縁を形成する、型枠の位置決めに応じて上端又は前端及び下端又は後端となる2つの端壁と、によって形成される型枠を設けること、各側壁の間及び各端壁の間に応力鉄筋部材を二軸方向に設けること、及び、その後、各中央壁、各側壁、及び/又は各端壁の1つに設けられている利用可能な(operable)空間を通してモルタルを導入することからなる。
【0008】
本発明の1つの特徴は、一実施の形態では、平行な各中央壁、各側壁、及び各端壁が平坦な矩形構成を有するが、別の実施の形態では、各中央壁が少なくとも一次元で湾曲した構成を有し、各側壁が矩形で実質的に平坦であり、各端壁が平坦で弧状の、好ましくは環状の構成を有する。
【0009】
本発明のさらなる特徴は、平行な各中央壁、各側壁、及び各端壁の成形面がテフロン(登録商標)コーティングされることである。
【0010】
本発明のさらに別の特徴は、平坦パネル及びスラブの場合、各側壁の間及び各端壁の間の応力鉄筋部材が各中央壁と平行な平面内にあって2つの直交する群を形成し、各群で鉄筋部材が互いに平行な直線軌道を辿るが、湾曲パネル及びスラブの場合、各側壁の間の応力鉄筋部材が、仮想円弧上に位置する頂点を形成する段違い平行軌道を辿ると共に、曲率寸法が小さい方の中央壁の凸面に垂直に挿入される支持部材に支持されることである。
【0011】
本発明の別の特徴は、曲率寸法が小さい方の中央壁が、その凹面に対して垂直に、段違い軌道の鉄筋部材が応力を受けていることに起因してこれらによって加えられる応力に耐える横方向補強手段を有すると同時に、曲率が小さい方の中央壁に互いに平行に配置される横方向補強手段同士が、それに対して垂直なスペーサーバーによって接続されることである。
【0012】
最後に、本発明の詳細を構成する他の特徴が、後述される本発明の説明を通して開示される。
【0013】
上記着想の理解を促すために、プレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブを得るのに好ましい手段を用いてこれらを製造する方法が、例示的な添付図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】プレストレス二軸方向鉄筋部材が設置されている弧状パネルの製造用の型枠の機能原理を概略的に示す。
【図2】前図の方式に従って作製された型枠の実施形態の中央部分の上面図である。
【図3】横方向補強手段を見えるようにした、曲率半径が小さい方の面から見た前図の型枠の斜視図である。
【図4】鉄筋部材の交点用の支持部材の一実施形態の斜視図である。
【図5】前図のものと機能的に同等の鉄筋部材の交点用の支持部材の別の実施形態の斜視図である。
【図6】前図の支持部材の実施形態の変形形態の斜視図である。
【図7】成形作業時に中央壁を側壁に接合する利用可能な閉鎖手段の可能な実施形態の部分断面上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1には、本発明の方法が湾曲パネル又はスラブを得るためのものである場合に適用される、本発明の機能原理を示している。
【0016】
したがって、湾曲パネル用の型枠3の、小中央壁5の凸面4と平行な大中央壁2の凹面1が示されており、型枠3には、縦方向プレストレス鉄筋部材7及び横方向プレストレス鉄筋部材8用の支持部材6が設置されている。
【0017】
縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8が支持部材6と共に組み込まれているこれら大中央壁2と小中央壁5との間の空間は、成形すべきモルタルの塊を収容するためのものである。上記縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8は、それらの支持部材6と共に上記塊に埋め込まれ、支持部材6は、小中央壁5から取り外されることになる。
【0018】
本発明の方法を実行に移すためには、平行でありパネルの主面を形成する2つの中央壁である大中央壁2及び小中央壁5と、大中央壁2及び小中央壁5の側部同士を接続してパネルの側縁を形成する2つの側壁9とによって形成される、垂直位置又は水平位置にされることが可能な型枠3があることが必要である。型枠3は、予想されるものとして図示されていないが、型枠の位置決めに従って上方又は前方及び下方又は後方である2つの端壁によっても形成される。これら2つの端壁は、上方又は前方及び下方又は後方の端壁として、中央壁2及び5の側縁と側壁9とを接続し、パネルの端縁を形成する。最後に、縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8が、側壁9間及び端壁間に二軸方向に配置されて応力を受け、その後、中央壁2、5、側壁9、及び/又は先の場合のように図示されていない端壁の1つに設けられている利用可能な空間を通してモルタルが流し込まれる。
【0019】
本発明は、平行な中央壁2、5、側壁9、及び端壁が平坦な矩形構成である場合のほかに、上記平行な大中央壁2及び小中央壁5が一次元のみで湾曲した構成を有し、側壁9が矩形かつ平坦であり、端壁が平坦な弧状構成である、現在論じている場合を意図したものである。
【0020】
図1、図2、及び図3において、上記中央壁が平坦な場合、側壁9間及び端壁間の応力を受けた縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8が、大中央壁2及び小中央壁5と平行な面内にあって2つの直交する群を形成し、各群で鉄筋部材7、8が互いに平行な直線軌道を辿るが、側壁9間の応力を受けた縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8が、仮想円弧上に位置する頂点を形成する段違い平行軌道を辿ると共に、小中央壁5の凸面4に垂直に挿入される支持部材6に支持されることが分かる。
【0021】
図2及び図3において、小中央壁5が、その凹面に対して垂直に、段違い軌道の鉄筋部材が応力を受けていることに起因してこれらによって加えられる応力に耐える横方向補強手段10を有することが分かる。これらの横方向補強手段10は、小中央壁5に互いに平行に配置され、それに対して垂直なスペーサーバー11によって接続される。
【0022】
他方、図7に示されているように、側壁9は、利用可能な閉鎖手段12によって大中央壁2及び小中央壁5に接続され、図示されていないが端壁も同様である。
【0023】
図4は、二股ロッド13によって形成されている支持部材6の変形形態を示している。
【0024】
支持部材6の他の実施形態は、図5では、応力を受けた縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8の交点を案内して着座させるための2つの直交溝16が設けられている頭部15を有する本体14を含み、図6では、頭部19の付近で2つの隣接する平行面内に直交して位置付けられている、縦方向鉄筋部材7及び横方向鉄筋部材8を通過させる2つの径方向貫通孔18が設けられている本体17を含む。
【0025】
いずれの場合も、型枠3は、湾曲形態及び図示されていない平坦形態の両方で、熱調整された流体を循環させるためのジャケットを少なくともその大中央壁2及び小中央壁5に備え得ることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法、特に二軸方向鉄筋部材の応力に耐える抵抗手段を有する金属製型枠が用いられる、プレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法であって、
型枠(3)を設けることであって、該型枠は、垂直位置又は水平位置を取ることが可能であり、前記パネルの主面を形成する2つの平行な中央壁(2、5)と、前記中央壁(2、5)の側部同士を接続して前記パネルの側縁を形成する2つの側壁(9)と、前記中央壁(2、5)及び前記側壁(9)の上方又は前方及び下方又は後方である端縁同士を接続して前記パネルの端縁を形成する、前記型枠の位置決めに応じて上端又は前端及び下端又は後端となる2つの端壁と、によって形成される型枠(3)を設けること、
前記各側壁(9)の間及び前記各端壁の間に応力を受けた鉄筋部材(7、8)を二軸方向に設けること、及び
その後、前記各中央壁(2、5)、前記各側壁(9)、及び/又は前記各端壁の1つに設けられている利用可能な空間を通してモルタルを導入すること、
を特徴とするプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項2】
前記平行の各中央壁(2、5)、前記各側壁(9)、及び前記各端壁は、平坦な矩形構成であることを特徴とする請求項1に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項3】
前記平行の各中央壁(2、5)は、一次元のみで湾曲した構成であり、前記各側壁(9)は矩形かつ平坦であり、前記各端壁は平坦な弧状構成であることを特徴とする請求項1に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項4】
前記平行の各中央壁(2、5)、前記各側壁(9)、及び前記各端壁は、それらの成形面がテフロン(登録商標)コーティングされることを特徴とする請求項1に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項5】
前記各側壁(9)の間及び前記各端壁の間の応力を受けた前記鉄筋部材(7、8)は、前記各中央壁(2、5)と平行な平面内にあって2つの直交する群を構成し、各群で、前記鉄筋部材(7、8)は、互いに平行な直線軌道を辿ることを特徴とする請求項2に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項6】
前記各側壁(9)間の応力を受けた前記鉄筋部材(7、8)は、仮想円弧上に位置する頂点を形成する段違い平行軌道を辿ると共に、曲率寸法が小さい方の前記中央壁(5)の凸面(4)に垂直に挿入される支持部材(6)に支持されることを特徴とする請求項3に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項7】
前記曲率寸法が小さい方の中央壁(5)の凹面に対して垂直に、段違い軌道の前記鉄筋部材(8)が応力を受けていることに起因して該鉄筋部材(8)によって加えられる応力に耐える横方向補強手段(10)が設けられることを特徴とする請求項3に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項8】
前記各側壁(9)及び前記各端壁は、利用可能な閉鎖手段(12)によって前記各中央壁(2、5)に接続されることを特徴とする請求項1に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項9】
前記曲率が小さい方の中央壁(5)に互いに平行に配置される前記横方向補強手段(10)は、該横方向補強手段(10)に対して垂直なスペーサーバー(11)によって接続されることを特徴とする請求項7に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項10】
前記支持部材(6)は、応力を受けた前記鉄筋部材(7、8)の交点を案内して着座させるための2つの直交溝(16)が設けられている頭部(15)を含むことを特徴とする請求項5に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項11】
前記支持部材(6)は、該支持部材の頭部の付近で2つの隣接する平行面内に直交して位置付けられている2つの径方向貫通孔(18)を含むことを特徴とする請求項6に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。
【請求項12】
前記型枠は、熱調整された流体を循環させるためのジャケットを少なくとも前記各中央壁(2、5)に含み得ることを特徴とする請求項1に記載のプレハブ鉄筋モルタルパネル及びスラブの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−506788(P2012−506788A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−532673(P2011−532673)
【出願日】平成20年10月28日(2008.10.28)
【国際出願番号】PCT/ES2008/000664
【国際公開番号】WO2010/049544
【国際公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(310009030)
【Fターム(参考)】