説明

プレビュー映像を提供する超音波システムおよび方法

【課題】ボリュームデータを互いに異なるレンダリング方向にレンダリングして複数のビューに対応する複数のプレビュー映像を提供する超音波システムおよび方法を提供すること。
【解決手段】本発明における超音波システムは、超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する超音波データ取得部と、前記超音波データを用いてボリュームデータを形成し、複数のジオメトリに対応する複数のレンダリング方向を設定し、前記ボリュームデータを前記複数のレンダリング方向のそれぞれにレンダリングして複数のプレビュー映像を形成するプロセッサとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波システムに関し、特に、プレビュー映像を提供する超音波システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波システムは、無侵襲および非破壊特性を有しており、対象体内部の情報を得るために医療分野で広く用いられている。超音波システムは、対象体を直接切開して観察する外科手術の必要がなく、対象体の内部組織を高解像度の映像で医師に提供することができるため、医療分野で非常に重要なものとして用いられている。
【0003】
3次元の超音波映像を用いた超音波システムは、2次元超音波映像では提供することができない空間情報や解剖学的な形態情報を提供してくれる。一般に、超音波システムは、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を受信し、その受信された超音波エコー信号を用いてボリュームデータを形成する。超音波システムは、ボリュームデータを予め設定されたレンダリング方向にレンダリングして3次元超音波映像を形成する。
【0004】
従来は、ボリュームデータを予め設定されたレンダリング方向にレンダリングした3次元超音波映像のみが提供されている。しかしこれでは、ユーザーが所望のビュー(view)の3次元超音波映像を探すために、3次元超音波映像を様々な方向に回転および移動させなければならない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−068956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、ボリュームデータを互いに異なるレンダリング方向にレンダリングして複数のビュー(view)に対応する複数のプレビュー映像を提供する超音波システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明における超音波システムは、超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する超音波データ取得部と、前記超音波データを用いてボリュームデータを形成し、複数のジオメトリに対応する複数のレンダリング方向を設定し、前記ボリュームデータを前記複数のレンダリング方向のそれぞれにレンダリングして複数のプレビュー映像を形成するプロセッサとを備える。
【0008】
また、本発明によるプレビュー映像提供方法は、a)超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して複数の超音波データを取得する段階と、b)前記複数の超音波データを用いてボリュームデータを形成する段階と、c)複数のジオメトリに対応する複数のレンダリング方向を設定する段階と、d)前記ボリュームデータを前記複数のレンダリング方向のそれぞれにレンダリングして複数のプレビュー映像を形成する段階とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ボリュームデータを互いに異なるレンダリング方向にレンダリングして複数のビュー(view)に対応する複数のプレビュー映像を提供することができ、ユーザーが3次元超音波映像を様々な方向に回転および移動させる必要がなく、所望のビューの3次元超音波映像を容易に探すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例における超音波データ取得部の構成を示すブロック図である。
【図3】フレームを取得する方向を示す例示図である。
【図4】本発明の実施例によって、複数のプレビュー映像を提供する順序を示すフローチャートである。
【図5】ボリュームデータを示す例示図である。
【図6】本発明の実施例におけるレンダリング方向を示す例示図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施例における超音波システムの構成を示すブロック図である。図1を参照すると、超音波システム100は、超音波データ取得部110、ユーザー入力部120、プロセッサ130、格納部140およびディスプレイ部150を備える。
【0013】
超音波データ取得部110は、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波信号(即ち、超音波エコー信号)を受信して超音波データを取得する。
【0014】
図2は、本発明の実施例における超音波データ取得部の構成を示すブロック図である。図2を参照すると、超音波データ取得部110は、超音波プローブ210、送信信号形成部220、ビームフォーマ230および超音波データ形成部240を備える。
【0015】
超音波プローブ210は、電気的信号と超音波信号とを相互に変換する複数の電気音響変換素子(transducer element:以下単に変換素子と呼ぶ)(図示せず)を備える。超音波プローブ210は、超音波信号を対象体に送信し、対象体から反射される超音波エコー信号を受信して受信信号を形成する。受信信号は、アナログ信号である。超音波プローブ210は、3Dメカニカルプローブ(three−dimensional mechanical probe)、2Dアレイプローブ(two−dimensional array probe)などを含む。
【0016】
送信信号形成部220は、超音波信号の送信を制御する。また、送信信号形成部220は、変換素子および集束点を考慮して、フレームを得るための送信信号を形成する。本実施例において、送信信号形成部220は、図3に示すように、複数のフレームF(1≦i≦N)のそれぞれを得るための送信信号を形成する。従って、超音波プローブ210は、送信信号形成部220から送信信号が提供されると、送信信号を超音波信号に変換して対象体に送信し、対象体から反射される超音波エコー信号を受信して受信信号を形成する。
【0017】
ビームフォーマ230は、超音波プローブ210から提供される受信信号をアナログデジタル変換してデジタル信号を形成する。また、ビームフォーマ230は、変換素子および集束点を考慮して、デジタル信号を受信集束させて受信集束信号を形成する。
【0018】
超音波データ形成部240は、ビームフォーマ230から提供される受信集束信号を用いて、該当フレームF(1≦i≦N)に対応する超音波データを形成する。しかし、超音波データは、必ずしもこれに限定されない。また、超音波データ形成部240は、超音波データを形成するのに必要な多様な信号処理(例えば、利得(gain)調節等)を受信集束信号に行うこともできる。
【0019】
再び図1を参照すると、ユーザー入力部120は、ユーザーの入力情報を受信する。本実施例において、入力情報は、複数のプレビュー映像から少なくとも1つのプレビュー映像を選択するための選択情報を含む。しかし、入力情報は、必ずしもこれに限定されない。ユーザー入力部120は、コントロールパネル(control panel)、トラックボール(trackball)、マウス(mouse)、キーボード(keyboard)などを含む。
【0020】
プロセッサ130は、超音波データ取得部110およびユーザー入力部120に連結される。プロセッサ130は、ボリュームデータを互いに異なるレンダリング方向にレンダリングして複数のビューに対応する複数のプレビュー映像を形成する。プロセッサ130は、CPU(central processing unit)、マイクロプロセッサ(microprocessor)、GPU(graphic processing unit)などを含む。
【0021】
図4は、本発明の実施例によって、複数のプレビュー映像を提供する順序を示すフローチャートである。図4を参照すると、プロセッサ130は、超音波データ取得部110から提供される超音波データを用いて、図5に示すように、ボリュームデータ510を形成する(S402)。ボリュームデータ510は,格納部140に格納される。
【0022】
図5は、ボリュームデータを示す例示図である。ボリュームデー510は、輝度値を有する複数のボクセル(voxel)(図示せず)を含む。図5において、軸(axial)方向は、超音波プローブ210の変換素子を基準として超音波信号の進行方向を、横(lateral)方向は、スキャンライン(scanline)の移動方向を、また、エレベーション(elevation)方向は、3次元超音波映像の深さ方向であって、フレーム(即ち、走査面)のスキャン方向を示す。
【0023】
再び図4を参照すると、プロセッサ130は、3次元超音波映像を形成するための基準レンダリング方向を設定する(S404)。プロセッサ130は、基準レンダリング方向を基準にボリュームデータ510をレンダリングして基準3次元超音波映像を形成する(S406)。本実施例において、基準レンダリング方向は、エレベーション方向と平行な方向に設定される。しかし、基準レンダリング方向は、必ずしもこれに限定されない。
【0024】
プロセッサ130は、基準レンダリング方向に基づいて複数のジオメトリに対応する複数のレンダリング方向を設定する(S408)。一例として、プロセッサ130は、図6に示すように、基準レンダリング方向610をボリュームデータ510の鉛直方向の軸を中心軸に90゜回転させた第1レンダリング方向621、基準レンダリング方向610を180゜回転させた第2レンダリング方向622、および基準レンダリング方向610を270゜回転させた第3レンダリング方向623を設定する。
【0025】
前述した例においては、基準レンダリング方向に基づいて3つのレンダリング方向を設定するものと説明したが、必ずしもこれに限定されず、基準レンダリング方向に基づいて3次元直交座標のX軸、Y軸およびZ軸のそれぞれに対応する複数のレンダリング方向を設定することもできる。
【0026】
また、前述した例においては、基準レンダリング方向610をボリュームデータ510の鉛直方向の軸を中心軸に90°毎に回転させるものと説明したが、必ずしもこれに限定されず、基準レンダリング方向610をたとえば10°や30°毎に回転させることもできる。
【0027】
プロセッサ130は、複数のレンダリング方向のそれぞれに基づいてボリュームデータをレンダリングして複数のレンダリング方向に対応する複数のプレビュー映像を形成する(410)。プレビュー映像は、3次元超音波映像である。
【0028】
プロセッサ130は、複数のプレビュー映像の表示を制御する(S412)。一例として、プロセッサ130は、ディスプレイ部150の画面領域を複数の領域に分割し、その分割された複数の領域に複数のプレビュー映像が表示されるように制御する。従って、ユーザーは、ユーザー入力部120を用いて複数のプレビュー映像から少なくとも1つのプレビュー映像を選択することができる。
【0029】
プロセッサ130は、ユーザー入力部120から入力情報が提供されると(S414)、複数のプレビュー映像で入力情報に対応するプレビュー映像の表示を制御する(S416)。一例として、プロセッサ130は、入力情報に対応するプレビュー映像のみを表示するように制御する。他の例として、プロセッサ130は、入力情報に対応するプレビュー映像のみを拡大して表示するように制御する。
【0030】
選択的に、プロセッサ130は、入力情報に対応するプレビュー映像のレンダリング方向を基準レンダリング方向として設定することもできる。
【0031】
再び図1を参照すると、格納部140は、超音波データ取得部120で取得された超音波データを格納する。また、格納部140は、プロセッサ130で形成されたボリュームデータを格納する。
【0032】
ディスプレイ部150は、プロセッサ130で形成された複数のプレビュー映像を表示する。また、ディスプレイ部150は、ユーザー入力部120から提供される入力情報に対応するプレビュー映像を表示する。また、ディスプレイ部150は、プロセッサ130で形成された基準3次元超音波映像を表示する。
【0033】
本発明は、望ましい実施例によって説明および例示をしたが、当業者であれば添付した特許請求の範囲の事項および範疇を逸脱することなく、様々な変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
100 超音波システム
110 超音波データ取得部
120 ユーザ入力部
130 プロセッサ
140 格納部
150 ディスプレイ部
210 超音波プローブ
220 送信信号形成部
230 ビームフォーマ
240 超音波データ形成部
510 ボリュームデータ
610、621、622、623 レンダリング方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する超音波データ取得部と、
前記超音波データを用いてボリュームデータを形成し、複数のジオメトリに対応する複数のレンダリング方向を設定し、前記ボリュームデータを前記複数のレンダリング方向のそれぞれにレンダリングして複数のプレビュー映像を形成するプロセッサと
を備えることを特徴とする超音波システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記ボリュームデータに対して基準レンダリング方向を設定し、
前記基準レンダリング方向に基づいて前記複数のレンダリング方向を設定することを特徴とする請求項1に記載の超音波システム。
【請求項3】
前記複数のレンダリング方向は、前記ボリュームデータの鉛直方向の軸を中心軸として、前記基準レンダリング方向を90°毎に回転させた方向を含むことを特徴とする請求項2に記載の超音波システム。
【請求項4】
前記複数のプレビュー映像から少なくとも1つのプレビュー映像を選択するための入力情報をユーザーから受信するユーザー入力部
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の超音波システム。
【請求項5】
a)超音波信号を対象体に送信し、前記対象体から反射される超音波エコー信号を受信して超音波データを取得する段階と、
b)前記超音波データを用いてボリュームデータを形成する段階と、
c)複数のジオメトリに対応する複数のレンダリング方向を設定する段階と、
d)前記ボリュームデータを前記複数のレンダリング方向のそれぞれにレンダリングして複数のプレビュー映像を形成する段階と
を備えることを特徴とするプレビュー映像提供方法。
【請求項6】
前記段階c)は、
前記ボリュームデータに対して基準レンダリング方向を設定する段階と、
前記基準レンダリング方向に基づいて前記複数のレンダリング方向を設定する段階と
を備えることを特徴とする請求項5に記載のプレビュー映像提供方法。
【請求項7】
前記複数のレンダリング方向を設定する段階は、
前記ボリュームデータの鉛直方向の軸を中心軸として、前記基準レンダリング方向を90°毎に回転させて前記複数のレンダリング方向を設定することを特徴とする請求項6に記載の超音波システム。
【請求項8】
e)前記複数のプレビュー映像から少なくとも1つのプレビュー映像を選択する入力情報をユーザーから受信する段階
をさらに備えることを特徴とする請求項5ないし7のいずれかに記載のプレビュー映像提供方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−101075(P2012−101075A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245804(P2011−245804)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(597096909)三星メディソン株式会社 (269)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG MEDISON CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】114 Yangdukwon−ri,Nam−myun,Hongchun−gun,Kangwon−do 250−870,Republic of Korea
【Fターム(参考)】