説明

プレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器

【課題】プレフィルドシリンジが包装容器内で移動・振動することなく適度に固定され、しかも包装容器への装填が機械によっても容易に行うことができ、所謂、高速自動装填に適しており、且つ、プレフィルドシリンジを取り出すことが容易である、一体成型タイプの包装容器を提供する。
【解決手段】1又は2以上のロック部と1又は2以上の空間部を備えているプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器であり、空間部は、プレフィルドシリンジを装填するための空間と、当該シリンジを取り出すための空間とに分けて別々に設けられていてもよく、また、空間部は、プレフィルドシリンジの縦軸方向への移動を制限するように設けられていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジ収納用のブリスター包装容器に関する。更に詳しくは、壊れ易く、振動を嫌うプレフィルドシリンジを保存、輸送するためのプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック成型による包装容器の製造において、所謂、深絞り成型(ブリスター成型)が広く採用されている。これは、プラスチックシートを加熱下にプレスしてポケットを形成させ、該ポケット内に製品を装填することにより包装が行われる。ガラス製品、精密機械部品その他壊れやすい物、振動を嫌う物等を保存、輸送するためにブリスター包装容器が採用されているが、成型ポケットの形状は包装される物の大まかな外形に相当するもの、或いは、縦長方向にやや余裕を持たせた緩やかなロック機構を付加したものが多く、かかる形状においては、包装容器内で内容物が充分には固定されず、前後左右、或いは、上下に動くことが避けられない。従来の成型ポケットがこのような欠陥を有しているのは、包装容器への内容物の装填を容易に行うためであり、包装容器内での多少の移動・振動は止むを得ないとされてきたためであると考えられる。然しながら、包装容器内で充分な固定が行われていない場合、内容物が輸送中に過度に振動し、破壊や変形の原因となる。
【0003】
このような物の一例として、薬液を充填した注射器(プレフィルドシリンジ)が挙げられる。薬液を充填した注射器の包装にブリスター成型容器による包装が通常用いられているが、包装容器内で充分な固定が行われているとはいい難い。注射器内の液体が輸送中に過度に振動することは好ましくなく、特に振動を嫌う液体、例えば、タンパク質溶液等においては変質や沈殿の原因となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来の薬液を充填した注射器(プレフィルドシリンジ)のブリスター包装容器の内蔵する欠点の改良を目的としてなされたもので、プレフィルドシリンジが包装容器内で移動・振動することなく適度に固定され、しかも包装容器への装填が機械によっても容易に行うことができ、所謂、高速自動装填に適しており、且つ、プレフィルドシリンジを取り出すことが容易である、一体成型タイプの包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、1又は2以上のロック部と1又は2以上の空間部を備えていることを特徴とするプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器であり、該空間部は、プレフィルドシリンジを装填するための空間と、プレフィルドシリンジを取り出すための空間とに分けて別々に設けられていてもよく、また、該空間部が、プレフィルドシリンジの縦軸方向への移動を制限するように設けられていてもよいプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、ブリスター一体成型で、壊れ易く、輸送・保存中の過度の振動を嫌うプレフィルドシリンジの包装容器が容易に作製でき、輸送中にプレフィルドシリンジが容器内で過度の振動をしたり、落下時のショックから保護される。
【0007】
本発明のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器は、容器内での振動や衝撃によるショックが少ないため、薬液を充填した注射器の包装に適しており、特に、タンパク質溶液の場合、振動による変質や沈殿を防止することができる。
【0008】
本発明のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器は、装填が容易に行われ、機械のアームによる自動装填、就中、高速自動装填に適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器は、ロック部と空間部を備えていることに特徴があり、ここで、ロック部とは、プレフィルドシリンジの一部分を固定するべく、その部分に合わせて絞って成型された部分をいい、空間部とは、プレフィルドシリンジの一部分の周りに形成されている空間をいう。
【0010】
装填する際には、この空間にプレフィルドシリンジを掴んだアームが入り、当該シリンジをロック部に押し込んで固定するための操作をすることができ、また、取り出す際には、この空間に指を入れてプレフィルドシリンジをロック部から外すことができる。
【0011】
図1はその一例を示し、ブリスター包装容器1に模式的に描かれたプレフィルドシリンジ2が装填されている。図1中、ロック部3の破線aにおける断面図を図3に示す。即ち、プレフィルドシリンジ2は、ロック部3(図1の例では2箇所設けられている)において当該シリンジの形状に合わせて絞り込まれた容器壁により固定される。空間部4は、図1中破線bにおける断面を図4に示すように、プレフィルドシリンジの周りに空間を形成しており、この空間を利用して、当該シリンジを容器に装填し、或いは取り出すことができる。図2は図1の側面図であり、プレフィルドシリンジが空中に浮かぶ形になっており、落下等の衝撃から保護されることを示している。なお、図1においては、空間部4が3箇所設けられているが、左右の空間部は、縦軸方向の長さをプレフィルドシリンジの長さに合わせて調整されおり、当該シリンジの縦軸方向への移動を制限する。
【実施例】
【0012】
本発明のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器は、薬液を充填した注射器(プレフィルドシリンジ)を機械による高速自動包装ラインに載せる場合に適する。図5は上面図、図6は側面図、図7a〜dは、図6中破線a〜dにおける断面図である。図9は収納の状態を示す斜視図である。
【0013】
図5、図6に示すように、プレフィルドシリンジが包装容器内に収納され、バレル6の一部がロック部3において固定される(図7a参照)。空間部4-1にプレフィルドシリンジの頭部5が、空間部4-3にバックストップ7が、空間部4-4にプランジャーロットの末端部8が夫々収納される。空間部4-1と空間部4-3の側壁の距離が頭部5とバックストップ7の距離にほぼ等しく、プレフィルドシリンジの縦軸方向の移動を制限する(図6側面図参照)。
【0014】
プレフィルドシリンジの包装容器への装填は空間部4-2において行われ、バレル6を掴んだアームが空間部4-2の空間内に入り込み、そこでバレル6をロック部3に押し込んだ後、アームを開いてバレル6を離し、空間部4-2から離れる(図7b参照)。
【0015】
包装容器からプレフィルドシリンジを取り出すには、図8に示すように、空間部4-4においてプランジャーロットの末端部8に指を掛けて引上げることにより、バレル6をロック部3から外す。この例は、空間部4が、包装されるプレフィルドシリンジを充填するための空間と、包装されているプレフィルドシリンジを取り出すための空間に分けて別々に設けられている例である。
【0016】
本発明のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器は、通常の技術手段を利用してブリスター成型して作製することができ、材料も、ポリエチレンテレフタレート(PET)等、通常使用されるものから適宜選ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器の一例を示す上面説明図である。
【0018】
【図2】図2は、図1の包装容器の側面説明図である。
【0019】
【図3】図3は、図1、図2中、破線aにおける断面説明図であり、ロック部の断面を説明するため説明図である。
【0020】
【図4】図4は、図1、図2中、破線bにおける断面図であり、空間部の断面を説明するため説明図である。
【0021】
【図5】図5は、薬液を充填した注射器(プレフィルドシリンジ)を収納したプレフィルドシリンジ収納用包装容器の上面図である。
【0022】
【図6】図6は、図5の側面図である。
【0023】
【図7】図7は、図6中破線a〜dにおける断面図である。aはロック部を、bは空間部を、夫々示す。
【0024】
【図8】図8は、包装容器からプレフィルドシリンジを取り出す状態を示す図6と同様の側面図である。
【0025】
【図9】図9は、プレフィルドシリンジを収納した本発明のプレフィルドシリンジ収納用包装容器の斜視図である。
【符号の説明】
【0026】
1…ブリスター包装容器、2…プレフィルドシリンジ、3…ロック部、4,4-1〜4-4…空間部、5…プレフィルドシリンジの頭部、6…バレル、7…バックストップ、8…プランジャーロットの末端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1又は2以上のロック部と1又は2以上の空間部を備えていることを特徴とするプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器。
【請求項2】
空間部として、プレフィルドシリンジを装填するための空間と、当該シリンジを取り出すための空間とが別々に設けられていることを特徴とする請求項1記載のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器。
【請求項3】
空間部が、プレフィルドシリンジの縦軸方向への移動を制限するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載のプレフィルドシリンジ収納用ブリスター包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−6154(P2011−6154A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206258(P2010−206258)
【出願日】平成22年9月15日(2010.9.15)
【分割の表示】特願2001−21677(P2001−21677)の分割
【原出願日】平成13年1月30日(2001.1.30)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】