説明

プレフィルドシリンジ用収納容器及びプレフィルドシリンジ包装体

【課題】封止部材の剥離途中に剥離速度を低下させ、容器部材から付属部材の飛び出しや落下を防ぐことができるようにする。
【解決手段】プレフィルドシリンジ用収納容器1は、開口部10と、プレフィルドシリンジ5を収納する第1収納部11と、付属部材6を収納する第2収納部12と、開口部10の周縁に設けられたシール用平坦部13とを有する容器部材2と、開口部10を封止する封止部材3と、封止部材3がシール用平坦部13においてシールされることにより形成されたものであるシール部を備える。シール部は、剥離開始部46と、剥離開始部46に連続する第1シール部47と、第1シール部47から更に連続する第2シール部48とを有し、第2シール部48のシール強度が第1シール部47のシール強度より大きいことにより、封止部材3を剥離開始部46側から剥離する途中で剥離抵抗が増大するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレフィルドシリンジ及びプレフィルドシリンジに装着される付属部材を収納するプレフィルドシリンジ用収納容器、及びプレフィルドシリンジ用収納容器にプレフィルドシリンジを収納したプレフィルドシリンジ包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤の配合及び投与の操作の煩雑さを解消するために、予め薬液がシリンジ内に充填されたいわゆるプレフィルドシリンジが提案されている。このプレフィルドシリンジは、包装容器に収納された状態で提供される(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載されたプレフィルドシリンジ用収納容器では、プラスチックシートの凹部に、プレフィルドシリンジ本体及び付属部材であるピストンロッドが密着して収納されている。そして、プラスチックシートにおける凹部の上面にフィルムを接着し、凹部の開口が覆われ、プレフィルドシリンジ本体及びピストンロッドが包装される。プレフィルドシリンジ包装体は、その包装を開封しやすい構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3155666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたプレフィルドシリンジ包装体は、プレフィルドシリンジよりも小さい付属部材を同梱して収納した場合に、包装体を開封する際に勢い余って付属部材が飛び出したり、誤って落下したりすることがあるという問題を有している。
【0006】
もっとも、特許文献1に記載されたプレフィルドシリンジ包装体では、付属部材がプレフィルドシリンジ本体とほぼ同等の大きさを有するプランジャーであるため、上述した問題は比較的生じにくい。しかしながら、例えばプレフィルドシリンジに接続する専用針のように、プレフィルドシリンジに対してかなり小さな付属部材を収納する場合には、上述した問題が顕在化する。
【0007】
本発明の目的は、上記の問題点を考慮し、開封時に、包装体にプレフィルドシリンジとともに収納された付属部材の飛び出しや落下の発生を防ぐことができるプレフィルドシリンジ用収納容器及びプレフィルドシリンジ包装体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決し、本発明の目的を達成するため、本発明のプレフィルドシリンジ用収納容器は、開口部と、開口部から窪んで形成された、プレフィルドシリンジを収納するための第1収納部及びプレフィルドシリンジよりも小型の付属部材を収納するための第2収納部と、開口部の周縁に設けられたシール用平坦部とを有する容器部材と、容器部材の開口部を封止するとともに、容器部材から剥離する際に把持される把持部を有する封止部材と、封止部材がシール用平坦部においてシールされることにより形成されたものであるシール部と、を備える。
また、シール部は、容器部材における封止部材の把持部側に配置される剥離開始部と、剥離開始部に連続する第1シール部と、第1シール部から更に連続し、第1シール部を挟んで剥離開始部と反対側に設けられる第2シール部と、を有し、第2シール部のシール強度が第1シール部のシール強度より大きいことにより、封止部材を剥離開始部側から剥離する途中で剥離抵抗が増大するように構成される。
【0009】
そして、本発明のプレフィルドシリンジ包装体は、上述したプレフィルドシリンジ用収納容器に、プレフィルドシリンジと、プレフィルドシリンジよりも小型の付属部材を収納して構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明のプレフィルドシリンジ用収納容器及びプレフィルドシリンジ包装体によれば、第1シール部のシール強度よりシール強度が大きい第2シール部を設けたことで、封止部材の剥離途中に剥離速度を低下させることができる。その結果、プレフィルドシリンジ包装体の封止部材を開封した際の、容器部材から付属部材の飛び出しや落下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のプレフィルドシリンジ包装体の実施の形態例を示す上面図である。
【図2】本発明のプレフィルドシリンジ包装体の実施の形態例を示す斜視図である。
【図3】本発明のプレフィルドシリンジ包装体の実施の形態例における封止部材を剥離した状態を示す上面図である。
【図4】本発明のプレフィルドシリンジ用収納容器の実施の形態例にかかる容器部材を示す上面図である。
【図5】本発明のプレフィルドシリンジ用収納容器の実施の形態例にかかる容器部材を示す斜視図である。
【図6】本発明のプレフィルドシリンジ用収納容器の実施の形態例にかかる容器部材における変形例を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のプレフィルドシリンジ用収納容器及びプレフィルドシリンジ包装体の実施形態例について、図1〜図6を参照して説明する。なお、各図において共通の部材には、同一の符号を付している。また、本発明は、以下の形態に限定されるものではない。
【0013】
<プレフィルドシリンジ包装体の実施の形態例>
[プレフィルドシリンジ包装体]
まず、図1〜図5を参照して本発明の実施の形態例(以下、「本例」という。)にかかるプレフィルドシリンジ包装体について説明する。
図1は本例のプレフィルドシリンジ包装体を示す上面図、図2は本例のプレフィルドシリンジ包装体を示す斜視図、図3は本例のプレフィルドシリンジ包装体における封止部材を剥離した状態を示す上面図である。
【0014】
図1及び図2に示すように、プレフィルドシリンジ包装体1は、容器部材2及び容器部材2を封止する剥離可能な封止部材3から構成されるプレフィルドシリンジ用収納容器4と、容器部材2に収納されるプレフィルドシリンジ5及び付属部材として専用針6を備えている。
【0015】
プレフィルドシリンジ5は予めシリンジ内に薬剤が充填されるものである。プレフィルドシリンジ5に予め充填される薬剤としては、通常注射剤として使用される薬剤であれば何でもよく、例えば、抗体等の蛋白質性医療品、ホルモン等のペプチド性医療品、核酸医療品、細胞医薬品、血液製剤、各種感染症を予防するワクチン、抗がん剤、麻薬、抗生物質、ステロイド剤、蛋白質分解酵素阻害剤、ヘパリン、ブドウ糖等の糖質注射液、塩化ナトリウムや乳酸カリウム等の電解質補正用注射液、ビタミン剤、脂肪乳剤、造影剤、覚せい剤等が挙げられる。
【0016】
図2及び図3に示すように、このプレフィルドシリンジ5は、プランジャー31と、外筒32と、プランジャー31と外筒32との間に位置するフランジ部33と、を有している。プランジャー31は、先端部と、本体部と、円盤状の押圧部とを有している。本体部は、押圧部から十字状の本体部が連続して形成されている。また、先端部は、本体部と連続して形成され、その端部は円盤状となっている。この先端部は、外筒32の開口に挿入される。このため、先端部の直径は、外筒32の内径に対応した大きさとなっている。
【0017】
外筒32は、略円筒形状に形成され、その両端は開口している。この外筒32は、フランジ部33と、収納部と、接続部34とを有している。外筒32の軸方向の一端部には、フランジ部33が設けられている。このフランジ部33は、外筒32の軸方向の一端部から外筒32の半径方向の外側に向かって形成されている。
【0018】
収納部は、外筒32の中央に設けられている。この収納部には、薬剤が充填される。また、収納部には、外筒32の軸方向の一端側に設けられた開口からプランジャー31の先端部が挿入される。
【0019】
接続部34は、外筒32の他端から連続して形成され、接続部34の直径は収納部の直径よりも小さく設定されている。この接続部34には、容器部材2に収納されている専用針6が接続される。また、接続部には、収納部に充填された薬剤が排出される排出孔が設けられている。この排出孔は、収納部と連通している。そして、プレフィルドシリンジ5の使用前では、この接続部の排出孔が封止されている。
【0020】
本例では付属部材として専用針を例示したが、これに限定されない。付属部材としては、プレフィルドシリンジ5よりも小型で、プレフィルドシリンジに装着される部材であればよい。例えば、容量の大きなプレフィルドシリンジを用いる際には、プレフィルドシリンジ本体とプランジャーが乖離した状態で容器部材に収納される場合がある。この場合、プランジャーが本例における付属部材となり得る。
【0021】
[容器部材]
次に、容器部材2について、図3〜図5を参照して説明する。
図4は本例のプレフィルドシリンジ用収納容器にかかる容器部材を示す上面図であり、図5は本例のプレフィルドシリンジ用収納容器にかかる容器部材を示す斜視図である。
【0022】
図4及び図5に示すように、プレフィルドシリンジ5及び専用針6が収納される容器部材2は、略直方体に形成され、開口部10を有している。開口部10には、プレフィルドシリンジ5を収納する第1収納部11と専用針6を収納する第2収納部12が、開口部10から窪んで形成されている。また、開口部10の周縁にはシール用平坦部13が形成されている。
【0023】
容器部材2の材質としては、ある程度の強度と硬度を有することが好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、などを使用することができる。また、シリンジに収納される薬剤が光の影響を受けやすい場合には、容器本体の形成材料に、各種顔料、紫外線吸収剤を含有させてもよい。
【0024】
[第1収納部]
次に、第1収納部11について説明する。
第1収納部11は、容器部材2の長手方向に渡って設けられ、容器部材2の開口部10から窪んで形成されている。第1収納部11は、容器部材2の長手方向の一端から他端にかけて、第1凹部21、仕切り部22、第2凹部23、保持部24、第3凹部25が順に形成されている。
【0025】
第1凹部21は、容器部材2の長手方向の一端側に配置され、容器部材2の開口部10から窪んで形成されている。図3に示すように、プレフィルドシリンジ5が第1収納部11に収納されると、第1凹部21にはプレフィルドシリンジ5のプランジャー31が配置される。
【0026】
また、図4に示すように、第1凹部21は、第1隆起部21aを有している。第1隆起部21aは、第1凹部21の底部から容器部材2の開口部10に向かって突出して設けられ、第1凹部21における容器部材2の長手方向の他端側に位置する。そして、第1隆起部21aにおける容器部材2の開口部10側は平面となっている。プレフィルドシリンジ5が容器部材2に収納されているとき、第1隆起部21aは、プレフィルドシリンジ5のプランジャー31と当接する。これにより、プレフィルドシリンジ5のプランジャー31を安定して配置することができるとともに、プランジャー31が第1凹部21の底面に落ち込むことを防止することができる。
【0027】
第1凹部21における容器部材2の長手方向の他端側には仕切り部22が設けられている。仕切り部22は、第1凹部21と第2凹部23の間に設けられており、第1凹部21と第2凹部23を仕切っている。仕切り部22は、湾曲部22a、側面部22bを有している。湾曲部22aは、プレフィルドシリンジ5の外筒32の外径に対応した大きさに形成されている。そして、プレフィルドシリンジ5が容器部材2に収納されると、湾曲部22aにプレフィルドシリンジ5の外筒32が当接する。また、容器部材2の長手方向の一端側の側面部22bには、プレフィルドシリンジ5のフランジ部33が接触する(図3参照)。そのため、プレフィルドシリンジ5における容器部材2の長手方向の他端側への移動が仕切り部22により規制され、プレフィルドシリンジ5を安定して収納することができる。
【0028】
図4に示すように、第2凹部23は、仕切り部22をはさんで第1凹部21の反対側に設けられ、仕切り部22の湾曲部22aから窪んで形成されている。第2凹部23は容器部材2の中央に位置し、第1凹部21と第3凹部25の間に形成されている。
【0029】
第2凹部23は、第2隆起部23aを有している。第2隆起部23aは、第2凹部23の中央に位置し、第2凹部23の底部から容器部材2の開口部10に向かって突出して設けられている。そして、第2隆起部23aの一面は平面となっている。第2隆起部23aは、プレフィルドシリンジ5が容器部材2に収納されているときに、プレフィルドシリンジ5の外筒32と当接する。これにより、プレフィルドシリンジ5を容器部材2内において安定して配置することができるとともに、プレフィルドシリンジ5の外筒32が第2凹部23の底面に落ち込むことを防止することができる。
【0030】
また、第2凹部23の開口は、外筒32の直径よりも大きく形成されており、外筒32と第2凹部23との間には空間ができる。この空間があるため、使用者が容器部材2に収納されたプレフィルドシリンジ5を取り出しやすくなっている。
【0031】
第2凹部23における容器部材2の長手方向の他端側には、保持部24を介して第3凹部25が連続して形成されている。保持部24は、第2凹部23と第3凹部25の間に位置し、第2凹部23と第3凹部25を接続している。そして、保持部24の大きさは、プレフィルドシリンジ5の外筒32の形状に対応して形成されている。このため、プレフィルドシリンジ5が容器部材2に収納されると、保持部24にはプレフィルドシリンジ5の外筒32が当接する。これにより、プレフィルドシリンジ5を容器部材2内に安定して保持することができる。
【0032】
第3凹部25は、保持部24と連続して設けられ、容器部材2の長手方向の他端側に配置される。第3凹部25は、保持部24の底部よりも窪んで形成されている。そして、第3凹部25には、プレフィルドシリンジ5の接続部34が配置される。
【0033】
第1収納部11は、上述した形状、構成等に限定されない。第1収納部11の形状、大きさ、構成等は、第1収納部11に収納されるプレフィルドシリンジ5の形状、大きさ、構成等に合わせて適宜設定される。
【0034】
[第2収納部]
次に、第2収納部について説明する。
図4及び図5に示すように、第2収納部12は、容器部材2における長手方向の他端側に配置され、第2凹部23、保持部24、第3凹部25と隣り合うように設けられている。第2収納部12は、容器部材2の底部から隆起して形成され、第1収納部11よりもその深さが浅く形成されている。そして、第2収納部12には専用針6が収納されるため、第2収納部12の形状は専用針6の形状、大きさ等に対応して設定される。
【0035】
本例では、専用針6が円筒形状であるため、第2収納部12の底部は湾曲しているが、これに限定されるものではない。付属部材の形状、大きさ等に合わせて設ければよく、例えば、付属部材が四角柱状であれば、第2収納部の底部を平面とし、付属部材に合わせた凹部を設けてもよい。
【0036】
[シール用平坦部]
次に、シール用平坦部13について説明する。
図4及び図5に示すように、容器部材2の開口部10の周縁には、水平方向に突出したフランジ状にシール用平坦部13が形成されている。このシール用平坦部13は、第1平坦部16と、第2平坦部17と、第3平坦部18とを有している。シール用平坦部13には、その全周にわたり、封止部材3の周縁部が気密かつ剥離可能にシールされる。封止部材3がシール用平坦部13においてシールされることにより形成されたものをシール部という。このシール部は、剥離開始部46と、剥離開始部46に連続する第1シール部47と、第1シール部47から更に連続する第2シール部48を備える(図1及び図2参照)。
【0037】
図4及び図5に示すように、シール用平坦部13における容器部材2の長手方向の一端側の両側角部には、変形部14が設けられている。そして、変形部14の境界には、突起14aが設けられており、この変形部14とその周辺部には封止部材3のシールが行われていないものとなっている。このため、封止部材3がシールされた際に、突起14aが封止部材3と当接するとともに、封止部材3と変形部14に所定の間隔が開く。
【0038】
シール用平坦部13において、第1平坦部16は、シール用平坦部13の容器部材2の長手方向の一端側の短辺に形成されており、変形部14の近傍に位置している。第1平坦部16によって、封止部材3の長手方向の一端部が容器部材2のシール用平坦部13にシールされ、剥離開始部46が形成される。
【0039】
この剥離開始部46のシール強度は、使用時まで外力が加わっても封止部材3の剥離が生じにくく、使用時に封止部材3を剥離しやすい強度となっている。このような剥離開始部46のシール強度は特に限定されないが、後述する第1シール部47のシール強度と同等か、あるいは若干大きいことが好ましい。そして、第1平坦部16の両端は、第2平坦部17の一端と連続している。
【0040】
第2平坦部17は、シール用平坦部13における容器部材2の長手方向に長辺に設けられ、その一端が第1平坦部16と連続し、他端が第3平坦部18と連続するように形成されている。封止部材3における長辺部と第2平坦部17がシールされ、第1シール部47が形成される。
【0041】
第1シール部47のシール強度(以下、「第1のシール強度」という。)は、剥離開始部46のシール強度と同様に使用時まで外力が加わっても封止部材3の剥離が生じにくく、使用時に封止部材3を剥離しやすい強度となっている。このような第1のシール強度の大きさは、特に限定されないが、封止部材3の剥離操作を良好にするために8〜15N/15mmとすることが好ましい。
【0042】
第3平坦部18は、容器部材2の第2収納部12側に形成され、第3平坦部18の一端が第2平坦部17と連続している。第3平坦部18は、図3〜図5に示す点線Lから容器部材2の他端側に向けて、長手方向の長辺から他端側の短辺にかけて形成されている。すなわち、第2シール部48は、剥離開始部46から封止部材3の剥離を開始したときに、第2収納部12の鉛直上面の剥離に差し掛かる付近で第1シール部47と連続している。そして、本例では、第3平坦部18のシール幅は、第2平坦部17のシール幅と同じものになっている。第3平坦部18において、封止部材3の長手方向の他端部が容器部材2のシール用平坦部13にシールされ、第2シール部48が形成される。
【0043】
第2シール部48のシール強度(以下、「第2のシール強度」という。)は、プレフィルドシリンジ5の使用時まで外力が加わっても封止部材3の剥離が生じにくい強度となっている。また、第2のシール強度は、第1のシール強度よりも大きくなっている。これにより、封止部材3の剥離が第1シール部47から第2シール部48に移る際に剥離抵抗が大きくなり、封止部材の剥離速度を低下させる、あるいは剥離を一旦停止させることができ、封止部材3が過剰な勢いで剥離されることを防止することができる。その結果、収納されている専用針6が容器部材2から飛び出して落下することを防止することができる。このような第2のシール強度の大きさは、特に限定されないが、封止部材3の剥離速度を効果的に低下させるために、第1のシール強度の大きさの2〜3倍とすることが好ましい。
【0044】
また、第1シール部47から第2シール部48にかけて、封止部材3の剥離方向に向かってシール強度が連続的に大きくなる。すなわち、第1シール部47及び/又は第2シール部48のシール強度が連続的に増大するように構成してもよい。これにより、封止部材3を剥離するにつれて剥離抵抗が徐々に増加し、自然な操作感を保ったまま剥離速度を低下させることができる。この場合、第1シール部47と第2シール部48の境界は必ずしも明確ではなくなるが、第1のシール強度の最小値と第2のシール強度の最大値のちょうど中間のシール強度を有する点を当該境界と考えることができる。ここで、第2のシール強度の最大値は、第1のシール強度の最小値の2〜3倍とすることが好ましい。なお、封止部材3の剥離方向とは、封止部材3の一端側から他端側に向かう方向(図1における、右から左への方向)をいう。
【0045】
[封止部材]
次に、封止部材3について説明する。
図2に示すように、封止部材3は、シート状の部材からなり、略長方形に形成されている。そして、封止部材3の周縁部3aは、前述したように、容器部材2のシール用平坦部13に気密かつ剥離可能にシールされている。
【0046】
封止部材3は、前述の通り、容器部材2の変形部14とその周辺においてはシールされない。この非シール部は、封止部材3を剥離する際に把持するための把持部3bを構成している。また、変形部14には、突起14aが設けられているため、把持部3bと変形部14が所定の間隔で離間して対向する。これにより、封止部材3の把持部3bを把持しやすくなる。
【0047】
封止部材3としては、アルミニウム、銀、金などの金属箔またはアルミニウム、銀、金などが表面に蒸着された金属蒸着フィルム、SiOなどが表面に蒸着された無機物蒸着フィルム、ガスバリア性樹脂フィルム、などが挙げられる。ガスバリア性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン−ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン−アクリル酸エステル共重合体、高密度ポリエチレン等のフィルムを好適に使用することができる。
【0048】
封止部材3のシールには、種々の接着剤を利用し、剥離可能にヒートシールすることができる。例えば、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、エチレン−アクリル酸系樹脂、ポリプロピレンとポリエチレンとをブレンドしたものなどのオレフィン系樹脂や2液硬化型ウレタン系ドライラミネート接着剤等を使用することができる。
【0049】
次に、上述した構成を有するプレフィルドシリンジ包装体1の製造方法について説明する。
まず、図3に示すように、プレフィルドシリンジ5を第1収納部11に収納し、専用針6を第2収納部12に収納する。そして、容器部材2のシール用平坦部13又は封止部材3の周縁部3aに接着剤を塗布する。次に、図2に示すように、容器部材2の開口部10を封止部材3で覆い、シール用平坦部13と周縁部3aを貼り合わせる。そして、シール金型によってシール用平坦部13と周縁部3aをプレスし、容器部材2と封止部材3をシールする。これにより、プレフィルドシリンジ包装体1の製造が完了する。
【0050】
なお、シール金型によってシール用平坦部13と周縁部3aをプレスする際に、第2シール部48におけるシール金型の押圧力を、第1シール部47におけるシール金型の押圧力よりも大きく設定する。その結果、第2のシール強度が第1のシール強度よりも大きくなる。
【0051】
また、第2シール部48をプレスするシール金型の厚みを、第1シール部47をプレスするシール金型の厚みよりも厚くしてもよい。これにより、シール金型の押圧力を複雑に制御することなく、第2シール部48における押圧力を第1シール部47における押圧力よりも大きくすることができる。
【0052】
次に、プレフィルドシリンジ包装体1の開封について、図2及び図3を用いて説明する。
【0053】
図2に示すように、開封する前の状態では、第1収納部11及び第2収納部12は封止部材3によって気密に封止されている。
【0054】
プレフィルドシリンジ包装体1を開封する際には、使用者は、封止部材3の把持部3bを把持する。そして、この把持部3bを、容器部材2の一端側から他端側へ移動させる。すると、剥離開始部46から、第1シール部47、第2シール部48の順に、容器部材2から封止部材3が剥離される。そして、図3に示すように、第2シール部48が全て剥離されると、容器部材2に収納されていたプレフィルドシリンジ5及び専用針6を取り出すことができる。
【0055】
また、第2シール部のシール強度が第1シール部のシール強度よりも大きく設定されているため、封止部材3を剥離する際に、容器部材2の一端側から他端側に向けて剥離抵抗が大きくなり、剥離速度が低下する。すなわち、剥離部分が第2収納部12の鉛直上面に差し掛かり第2シール部48まで到達すると、第1シール部47における剥離速度よりも低下し、または剥離が停止される。これにより、封止部材3が過剰な勢いで一度に剥離されることがなくなる。
【0056】
また、これまで第2シール部48のシール強度を第1シール部47のシール強度よりも大きくするために、シール金型の押圧力を変化させる例を説明したが、これに限定されるものではない。
【0057】
図6はプレフィルドシリンジ用収納容器にかかる容器部材の第3平坦部の変形例を示す上面図である。
この変形例にかかる容器部材52が前述の容器部材2と異なるところは、第3平坦部のシール幅である。ここでは、第3平坦部のシール幅に関連する事項について説明し、本例にかかる容器部材2と共通する部分には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0058】
第2シール部のシール強度(剥離強度)を第1シール部のシール強度よりも大きくするために、図6に示す容器部材52では、第3平坦部58のシール幅を第2平坦部17のシール幅よりも広げて形成されている。そのため、第3平坦部58と封止部材3とのシール面積が大きくなり、第2シール部のシール強度を第1シール部のシール強度よりも大きくすることができる。
【0059】
また、第2平坦部から第3平坦部にかけてシール幅を連続的に広げる、すなわちテーパー状に形成してもよい。これにより、第1シール部から第2シール部にかけて連続的に剥離速度を低下させることができる。
【0060】
なお、本発明は上述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…プレフィルドシリンジ包装体、 2,52…容器部材、 3…封止部材、 3a…周縁部、 3b…把持部、 4…プレフィルドシリンジ用収納容器、 5…プレフィルドシリンジ、 6…専用針(付属部材)、 10…開口部、 11…第1収納部、 12…第2収納部、 13…シール用平坦部、 14…変形部、 16…第1平坦部、 17…第2平坦部、 18,58…第3平坦部、 21…第1凹部、 21a…第1隆起部、 22…仕切り部、 22a…湾曲部、 22b…側面部、 23…第2凹部、 23a…第2隆起部、 24…保持部、 25…第3凹部、 31…プランジャー、 32…外筒、 33…フランジ部、 34…接続部、 46…剥離開始部、 47…第1シール部、 48…第2シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部と、前記開口部から窪んで形成された、プレフィルドシリンジを収納するための第1収納部及び前記プレフィルドシリンジよりも小型の付属部材を収納するための第2収納部と、前記開口部の周縁に設けられたシール用平坦部とを有する容器部材と、
前記容器部材の前記開口部を封止するとともに、前記容器部材から剥離する際に把持される把持部を有する封止部材と、
前記封止部材が前記シール用平坦部においてシールされることにより形成されたものであるシール部と、を備え、
前記シール部は、
前記容器部材における前記封止部材の前記把持部側に配置される剥離開始部と、
前記剥離開始部に連続する第1シール部と、
前記第1シール部から更に連続し、前記第1シール部を挟んで前記剥離開始部と反対側に設けられる第2シール部と、を有し、
前記第2シール部のシール強度が前記第1シール部のシール強度より大きいことにより、前記封止部材を前記剥離開始部側から剥離する途中で剥離抵抗が増大するように構成される
プレフィルドシリンジ用収納容器。
【請求項2】
前記第1シール部及び/又は前記第2シール部のシール強度が連続的に増大するものである請求項1記載のプレフィルドシリンジ用収納容器。
【請求項3】
前記第2シール部は、前記剥離開始部から前記封止部材の剥離を開始したときに、前記第2収納部の鉛直上面の剥離に差し掛かる付近で前記第1シール部と連続するものである請求項1又は2に記載のプレフィルドシリンジ用収納容器。
【請求項4】
前記第2シール部のシール強度の最大値は、前記第1シール部のシール強度の最小値の2〜3倍である請求項1〜3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ用収納容器。
【請求項5】
前記第1シール部のシール強度が8〜15N/15mmである請求項1〜4のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ用収納容器。
【請求項6】
開口部と、前記開口部から窪んで形成された、プレフィルドシリンジを収納するための第1収納部及び前記プレフィルドシリンジよりも小型の付属部材を収納するための第2収納部と、前記開口部の周縁に設けられたシール用平坦部とを有する容器部材と、
前記容器部材の前記開口部を封止するとともに、前記容器部材から剥離する際に把持される把持部を有する封止部材と、
前記封止部材が前記シール用平坦部においてシールされることにより形成されたものであるシール部と、を備え、
前記シール部は、
前記容器部材における前記封止部材の前記把持部側に配置される剥離開始部と、
前記剥離開始部に連続する第1シール部と、
前記第1シール部から更に連続し、前記第1シール部を挟んで前記剥離開始部と反対側に設けられる第2シール部と、を有し、
前記第2シール部のシール強度が前記第1シール部のシール強度より大きいことにより、前記封止部材を前記剥離開始部側から剥離する途中で剥離抵抗が増大するように構成される
プレフィルドシリンジ用収納容器に、
プレフィルドシリンジと、前記付属部材を収納した
プレフィルドシリンジ包装体。
【請求項7】
前記付属部材は前記プレフィルドシリンジの専用針である
請求項6記載のプレフィルドシリンジ包装体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−13581(P2013−13581A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148710(P2011−148710)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】