説明

プレートフィン型熱交換器

【課題】 プレートフィン型熱交換器において、より熱交換性能のよいものの提供。
【解決手段】 熱交換器に用いる各プレートフィン2は、そのチューブ挿通孔1に筒状部2aを形成し、その根元部に環状凹陥部5を設け、各環状凹陥部5間に台形部6を突設形成する。そして、その台形部6の平坦部6aにスリット7またはルーバ8を切起し形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、断面円形チューブとプレートフィンとの組み合わせからなるプレート型熱交換器であって、空調用熱交換器等に用いられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
空調用熱交換器に用いられる従来のプレートフィン型熱交換器は、そのプレートフィンとして図11〜図13に示すような波型プレートフィン9、スリット型プレートフィン11、ルーバ型プレートフィン12が用いられていた。スリット型プレートフィン11は図12に示すごとく、平坦な細長いフィン本体に、チューブ挿通用の多数の筒状部2aを立上げ形成すると共に、各筒状部2a間にスリット7を切起し形成したものである。またルーバ型プレートフィン12は図13に示すごとく、平坦な細長いフィン本体の筒状部2a間に多数のルーバ8を切起し形成したものである。
次に、波型プレートフィン9は図11(B)に示すごとく、プレート本体の基面が波形に曲折されたものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
図11に示す波型プレートフィン9は、そのフィン本体が波形に曲折されているため、空気流を波形に導いて熱交換を促進させる効果がある。しかしながら、その波形の熱交換性能の効果は、スリット7、ルーバ8のそれより劣るものである。
次に、スリット型プレートフィン11、ルーバ型プレートフィン12は、そのプレート本体が平坦に形成されているため、空気流を波形に導くことができず、空気流の流速が波型プレートフィン9のそれに比べて小さい。それと共に、筒状部2aの下流側背面に空気流の滞留部が生じ、その部分で熱交換性能が低下する。
【0004】
なお、波型プレートフィン9の構造と、スリット型プレートフィン11またはルーバ型プレートフィン12との構造を組合わせることも考えられる。これは波形の各斜面にスリットまたはルーバを切り起したことになる。ところが、本発明者の実験によれば、単にその斜面に、スリットまたはルーバを切り起しても、熱交換性能が向上しないことが明らかとなった。これは斜面に配置したスリットまたはルーバの存在により、斜面の空気流の案内効果が減少するからと思われる。それと共に、斜面においては、スリットまたはルーバの前縁効果も減少するものと思われる。そのため、全体として通常のスリットフィン、ルーバフィンより熱交換性能が劣ることが分かった。
そこでこれらの知見に基づいて、性能のよい新たなプレートフィン型熱交換器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の本発明は、複数の円形のチューブ挿通孔(1) が長手方向に離間して並列された互いに整合する多数のプレートフィン(2) の積層体と、その各プレートフィン(2) のチューブ挿通孔(1) に挿通された複数のチューブ(3) とを有し、そのプレートフィン(2) の幅方向に空気流(4)が流通するプレートフィン型熱交換器において、
各プレートフィン(2) は、そのチューブ挿通孔(1) が筒状に立ち上げられて筒状部(2a)を形成し、その根元部が環状に凹陥された環状凹陥部(5)を有し、隣り合う環状凹陥部(5)間に、その幅方向に沿う横断面を台形状とした台形部(6)が突設形成され、その台形部(6)の頂部平坦面(6a)に前記幅方向に対して交差するスリット(7) またはルーバ (8) が切り起こし形成されたことを特徴とするプレートフィン型熱交換器である。
請求項2に記載の本発明は、請求項1において、
前記プレートフィン(2) の多数のチューブ挿通孔(1) が、幅方向に離間して複数列に配置され且つ、各チューブ挿通孔(1) が千鳥配置されているプレートフィン型熱交換器である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプレートフィン型熱交換器は、その各プレートフィン2の表面に台形部6が突設形成され、その台形部6の平坦部6aに幅方向に対して交差するスリット7またはルーバ8が切起し形成されたから、積層されたプレートフィン2を空気流4が流通するとき、台形部6の斜面によって流速が高まり、速い空気流4を台形波状に流通させる。そして、その平坦部6aに設けられたスリット7またはルーバ8によって空気流の境界層を分断し、熱交換性能を向上させる。すなわち、本発明の熱交換器は、そのプレートフィン2によって台形波の効果と、スリット7またはルーバ8による境界層分離効果とを極めて簡単な構造で達しうる。しかも、スリット7、ルーバ8は平坦部6aに形成されているため、空気流4の安定域において且つ流速が増大した状態で境界層を分断するため、熱交換性能が向上することが確認された。
さらに、このプレートフィン2は筒状部2aの根元部に環状凹陥部5を有するので、そこに空気が導かれ、その空気流がチューブの背面側に円滑に導かれて、それが下流方向に流出し、チューブ背面側の空気の滞留域を減少し、熱交換性能を向上させる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示すプレートフィン型熱交換器に用いるプレートフィン2の要部斜視図。
【図2】同平面図。
【図3】図2のIII−III矢視断面図。
【図4】同熱交換器の要部断面説明図。
【図5】本発明の第2のプレートフィン型熱交換器におけるプレートフィン2の斜視図。
【図6】同平面図。
【図7】図6のVII−VII矢視断面図。
【図8】同熱交換器の要部を示す説明図。
【図9】本発明の第3のプレートフィン型熱交換器に用いるプレートフィン2の平面図。
【図10】同第4のプレートフィン型熱交換器に用いるプレートフィン2の平面図。
【図11】従来のプレートフィン型熱交換器に用いる波型プレートフィン9の平面図およびB−B矢視断面図。
【図12】従来の他のプレートフィン型熱交換器に用いるスリット型プレートフィン11の平面図およびB−B矢視断面図。
【図13】従来のさらに他のプレートフィン型熱交換器に用いるルーバ型プレートフィン12の平面図およびB−B矢視断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1〜図4には本発明の第1実施例のプレートフィン型熱交換器に用いるプレートフィン2が図示されている。その熱交換器のプレートフィン2は、この例では複数の円形のチューブ挿通孔1が長手方向に等間隔に離間して形成されると共に、幅方向にそれが2列に且つ、隣り合う各チューブ挿通孔1が千鳥状に配置されている。プレートフィン2の孔縁部は立ち上げられて、筒状部2aを形成する。それと共に、筒状部2aの先端は僅かにフランジ状に形成されている。筒状部2aの根元部には環状凹陥部5が、内周をすり鉢状に、形成されている。
【0009】
次に、プレートフィン2はその幅方向に全体として横断面台形状とした台形部6が突設形成されている。その台形部6の平坦部6aに、複数のスリット7がその上面側および下面側に切起し形成され、それらが平坦面に平行に突設されている。このスリット7はプレートフィン2の長手方向に台形状の断面を有する。
そして、互いに整合するプレートフィン2を図4に示すごとく、多数積層すると共に、各プレートフィン2の筒状部2a内に断面円形のチューブ3をそれぞれ挿通する。次いで、そのチューブ3内に拡開治具を挿通して、チューブ3を拡開し、その外周と筒状部2a内周との間を圧着固定する。そして、各チューブ3端どうしを連通し(図示せず)、本発明のプレートフィン型熱交換器を完成する。
【0010】
(作用)
図4において、各プレートフィン2の幅方向に空気流4を流通させる。すると、空気流4は台形部6に導かれて台形状に案内され、その分だけ流速が増速する。そして、平坦部6aでは空気流4が安定し、そこに設けたスリット7によって境界層が分断され、スリット7の前縁効果が生じ、空気流4とチューブ3内の流体との間の熱交換が促進される。平坦部6aを通過した空気流4はさらに波型に導かれ下流側の環状凹陥部5に誘導される。そして、筒状部2aの外周を流通して下流側に導かれる。このすり鉢状の環状凹陥部5の存在は、それに延在する波型部との相互作用により、空気流4の流通を円滑に行うことができる。そして、筒状部2aの下流側における空気流の滞留を防止し、円滑な流通を確保する。
【0011】
次に、図5〜図7は本発明の第2のプレートフィン型熱交換器に用いるプレートフィン2を示し、図8はその積層状態を示す熱交換器の要部説明図である。この例が第1の実施例と異なる点は、スリット7の代わりにルーバ8を設けた点のみである。スリット7は平坦部6aに並行に切起し形成されているが、ルーバ8は平坦部6aに傾斜して切起し形成されたものである。この熱交換器も空気流4が各プレートフィン2の幅方向に流通し、平坦部6aにおいて、空気流4の一部はルーバ8によって各プレートフィン2の裏面側から表面側に導かれる。そのときルーバ8による前縁効果でチューブ3内の流体と空気流4との熱交換が促進される。他の作用は第1実施例と同様である。
【0012】
次に図9は、本発明の第3の実施例を示す平面図であり、これが図2の第1実施例のそれと異なる点は、平坦部6aに形成されたスリット7の向きのみである。このスリット7はプレートフィン2の幅方向に対して斜めに且つ平面ハの字状に形成されている。なお、ハの字のスリット対は図示のように、各列同一方向に形成されているが、それを1列ごとに逆向きにスリットを形成することもできる。
次に図10は、本発明の第4の実施の形態を示すプレートフィン2の平面図であり、これが図2の実施例と異なる点は、スリット7が平坦部6aに、その中心に対し放射状に形成されている点のみである。
【符号の説明】
【0013】
1 チューブ挿通孔
2 プレートフィン
2a 筒状部
3 チューブ
4 空気流
5 環状凹陥部
6 台形部
6a 平坦部
【0014】
7 スリット
8 ルーバ
9 波型プレートフィン
10 波形面
11 スリット型プレートフィン
12 ルーバ型プレートフィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の円形のチューブ挿通孔(1) が長手方向に離間して並列された互いに整合する多数のプレートフィン(2) の積層体と、その各プレートフィン(2) のチューブ挿通孔(1) に挿通された複数のチューブ(3) とを有し、そのプレートフィン(2) の幅方向に空気流(4)が流通するプレートフィン型熱交換器において、
各プレートフィン(2) は、そのチューブ挿通孔(1) が筒状に立ち上げられて筒状部(2a)を形成し、その根元部が環状に凹陥された環状凹陥部(5)を有し、隣り合う環状凹陥部(5)間に、その幅方向に沿う横断面を台形状とした台形部(6)が突設形成され、その台形部(6)の頂部平坦面(6a)に前記幅方向に対して交差するスリット(7) またはルーバ (8) が切り起こし形成されたことを特徴とするプレートフィン型熱交換器。
【請求項2】
請求項1において、
前記プレートフィン(2) の多数のチューブ挿通孔(1) が、幅方向に離間して複数列に配置され且つ、各チューブ挿通孔(1) が千鳥配置されているプレートフィン型熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−286133(P2010−286133A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−138330(P2009−138330)
【出願日】平成21年6月9日(2009.6.9)
【出願人】(000222484)株式会社ティラド (289)