説明

プロジェクタ装置

【課題】投射映像の投射位置を鑑賞者の姿勢に合わせて変更することができるプロジェクタ装置を提供する。
【解決手段】画面(E61)形状の映像を投射する投射部(2)と、投射部(2)を第1の軸線(CLv)回りに回動可能に支持した筐体(1)と、筐体(1)を第2の軸線(CLh)回りに回動可能に支持した台座部(3a)と、を備える。投射部(2)を、投射部(2)の光軸(CL)が台座部(3a)の底面に対して平行方向に位置すると共に画面形状の映像を正立して投射する姿勢にした際に、第1の軸線(CLv)が画面(E61)の鉛直方向と平行に位置し、第1の軸線(CLv)回りに筐体を回動することにより画面(E61)を水平方向に移動可能とし、第2の軸線(CLh)が画面(E61)の水平方向と平行に位置し、第2の軸線(CLh)回りに筐体を回動することにより画面を鉛直方向に移動可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクタ装置に係り、特に、映像の投射方向を変えることができ、室内に設置して映像を壁や天井に選択的に投射して鑑賞する用途に好適なプロジェクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタ装置は、居間やホールなどの広い場所に設置され、映像を、予め決められた位置に配置されたスクリーンに対し大画面で投射して大人数で鑑賞する、という用途に用いられてきている。
更に、近年は、小型化及びポータブル化が進んだことから、プロジェクタ装置を個室などの比較的狭い部屋に持ち込んで設置し、映像を、部屋の壁や天井に投射して個人又は少人数で鑑賞する、という用途も広まってきている。この用途を、便宜的に「プライベート用途」とも称する。
プロジェクタ装置には、プライベート用途として使い易いように、部屋の中へ設置した後、本体の向きを変えずに、映像を部屋の壁や天井に対し選択的に投射できるよう投射方向を変えられるものがある。
映像の投射方向を変えることができるプロジェクタ装置の例として、特許文献1に記載されたプロジェクタがある。
【0003】
特許文献1に記載されたプロジェクタPは、図11(a)に示されるように、映像を投射する投射部P1と、投射部P1を支持する支持部P2と、を含んで構成されている。
更に、支持部P2は、投射部P1を投射仰角として水平軸線Ch回りの垂直方向に0°〜90°の範囲で回転移動可能に支持する第1支持部P2aと、投射部P1及び第1支持部P2aを垂直軸線Cv回りの水平方向に0°〜360°の範囲で回転移動可能に支持する第2支持部P2bと、から構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−77545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プライベート用途におけるプロジェクタ装置の代表的な使用形態について、部屋での使用例を説明する。
図11(b),(c)は、部屋R101内の一般的な什器配置を説明するための斜視図である。これらの図では、便宜的に、左右方向、前後方向、上下方向、として各方向を規定し、描画の都合上、部屋R101における、前側の壁WL1及び天井CEの一部、並びに、右側の壁を省略している。また、壁や天井に投射される映像は、動画像と静止画像とのいずれでもよく、正立した映像は画面の左右方向を長手とし、例えばアスペクト比が16:9とされている。以下、「画面」とは、映像が被投射体に投射された際の投射像を示す。
【0006】
部屋R101には、ベッド101とベッド101の脇に設置されたサイドテーブル102とが備えられている。
ベッド101は、部屋R101の四隅の内の一つの隅位置において、就寝時に鑑賞者Kの頭部が壁WL1側となる向きに設置されている。
部屋R101内で投射映像を鑑賞する場合、部屋の利用者(以下、鑑賞者と称する)Kとしては、ベッド101の上で上半身を起こし背中を壁WL1に当てた姿勢〔第1の姿勢:図11(b)参照〕と、ベッド101の上で仰臥した姿勢〔第2の姿勢:図11(c)参照〕と、のいずれかの姿勢で映像を鑑賞できると、長時間リラックス状態で鑑賞できるので好ましい。
従って、映像は、第1の姿勢において壁WL1に対向し鑑賞者Kの正面となる壁WL2に画面E1として投射され、第2の姿勢において鑑賞者Kの正面となる天井CEに画面E2として投射されるとよい。
プロジェクタPは、壁WL2と天井CEとに対して、選択的に映像を投射するため、投射仰角を変更可能なものが望ましい。
特許文献1に記載されたプロジェクタPは、投射仰角を第1の支持部P2aにより0°〜90°の範囲で変更可能なので、このプライベート用途に利用することができる。
【0007】
プロジェクタPの設置位置は、映像をなるべく大きい画面で投射し、投射された画面を鑑賞者ができるだけ遠くから見ることができるように、壁WL2と天井CEとの両方からできるだけ離れた位置で、かつ鑑賞者の近傍、とするのが好ましい。
この場合、ベッド101を、ヘッドボード101aに宮棚を有するものとし、宮棚の上にプロジェクタPを配置することがまず考えられる。
しかしながら、この配置位置は、プロジェクタPが鑑賞者Kの直近に位置し、プロジェクタPから発生する熱やファンの音を、鑑賞者Kが極めて不快に感じる虞が高いので好ましくない。
従って、部屋R101では、サイドテーブル102をベッド101の直ぐ脇の壁WL1側に寄せた位置に配置し、プロジェクタPはそのサイドテーブル102の上に乗せるのが好適となる。
【0008】
鑑賞者Kが第1の姿勢をとっている場合、壁WL2に投射された画面E1は、できる限りベッド101上の鑑賞者Kの真正面に位置することが望ましい。
具体的には、画面E1が壁WL2からはみ出さない範囲で、ベッド101の幅方向の中心を通る鉛直面(上下前後方向を含む面)と壁WL2との交線LN1が画面E1の水平方向の中心にできるだけ近い位置にあることが望ましい。
そのためには、プロジェクタPの投射部P1を第2の支持部P2bにより垂直軸線Cv回りに左回動させて、投射された画面E1の位置を矢印DR1方向に移動させればよい。
ここで壁WL1に投射された画面E1には台形歪みが生じるが、この台形歪みは、周知の電気的補正処理により補正可能である。
【0009】
鑑賞者Kの姿勢が第1の姿勢から第2の姿勢へ移行した場合、映像の投射位置を壁WL2から天井CEに移行させる。
プロジェクタPは、第1支持部P2aによって投射部P1を垂直方向に回動可能であるから、投射部P1を上方に向け回動させ、映像を天井CEに画面E2として投射することはできる。
しかし、プロジェクタPは、図11(c)に示されるように、画面E2を、垂直軸線Cvを含み水平軸線Chに直交する面と天井CEとの交線LN2に沿って移動させることしかできない。
従って、プロジェクタPは、図11(b)に示された状態である壁WL2に画面E1を投射した状態からそのまま投射部P1を上方へ回動させると、天井CEに投射された画面E2は、鑑賞者Kの頭部直上ではなくプロジェクタPの直上に位置してしまう。
しかも、天井CEに投射された画面E2は、画面の長手方向が左右方向に対して傾いたものとなる。そのため、投射された画面E2は鑑賞に適するものではない。
【0010】
プロジェクタPによって画面E2を鑑賞者Kの直上に位置させることは不可能ではなく、投射部P1を、第2支持部P2bにより、垂直軸線Cvを含み水平軸線Chに直交する面が鑑賞者Kの頭部を通る位置まで回動させ、その位置で第1支持部P2aにより投射部P1を上方に回動させることで実現する。
しかしながら、この場合も、天井CEに投射された画面E2は、その長手方向が左右方向から大きく傾いてほぼ前後方向となるので、実質的に鑑賞者Kが第1の姿勢で鑑賞できるものではない。
【0011】
このように、投射された画面が鑑賞者Kの正面になく、また、画面の長手方向が左右方向に対して傾いていると、鑑賞者は、ベッドの上でリラックスして映像を鑑賞することができない。
すなわち、ベッドが備えられた部屋の中で壁や天井に投射された投射映像を鑑賞する際には、ベッド上で壁に背中を当てて座った第1の姿勢とベッド上に仰臥した第2の姿勢との各姿勢おいて、鑑賞者の真正面に傾いていない画面が投射されることが望まれる。
【0012】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、投射映像の投射位置を鑑賞者の姿勢に合わせて変更できるプロジェクタ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するために、本発明は次の構成を有する。
1) 画面(E61)形状の映像を投射する投射部(2)と、
前記投射部(2)を第1の軸線(CLv)回りに回動可能に支持した筐体(1)と、
前記筐体(1)を第2の軸線(CLh)回りに回動可能に支持した台座部(3a)と、を備えたプロジェクタ装置であって、
前記投射部(2)を、前記投射部(2)の光軸(CL)が前記台座部(3a)の底面に対して平行方向に位置すると共に前記画面形状の映像を正立して投射する姿勢にした際に、前記第1の軸線(CLv)が画面(E61)の鉛直方向と平行に位置し、前記第1の軸線(CLv)回りに前記筐体を回動することにより前記画面(E61)を水平方向に移動可能とし、前記第2の軸線(CLh)が前記画面(E61)の水平方向と平行に位置し、前記第2の軸線(CLh)回りに前記筐体を回動することにより前記画面を鉛直方向に移動可能とすることを特徴とするプロジェクタ装置(51)である。
2) 画面形状の映像を被投射体(WL2,CE)に投射する投射部(2)と、前記投射部(2)を収める筐体(1)と、前記筐体(1)を支持する台座部(3a)と、を有するプロジェクタ装置であって、
前記投射部(2)を、その光軸(CL)が前記台座部(2)の底面に対して平行方向に位置すると共に前記映像を正立して投射する姿勢にした際に、前記画面(E61)の長手方向を基準方向とする基本投射姿勢をとり得るよう支持する支持構造部(SJ)を備え、
前記支持構造部(SJ)は、前記投射部(2)の投射姿勢を、
前記基本投射姿勢から、前記投射された画面(E61)の位置を前記基準方向としたまま左方又は右方に水平移動した第1の位置(P1)とする第1の投射姿勢に変更可能であり、かつ、前記第1の投射姿勢から、前記第1の位置(P1)に投射された画面(E61)の位置を、前記長手を基準方向としたまま前記第1の位置の上方の第2の位置(P2)とする第2の投射姿勢に変更可能であることを特徴とするプロジェクタ装置(51)である。
3) 前記投射部(2)を前記第1の軸線(CLv)回りに回動させる第1の駆動部(AC1)と、
前記筐体(1)を前記第2の軸線(CLh)回りに回動させる第2の駆動部(AC2)と、
前記第1及び第2の駆動部(AC1,AC2)の動作を制御する制御部(SG)と、
を備えたことを特徴とする1)に記載のプロジェクタ装置(51)である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、投射映像の投射位置を鑑賞者の姿勢に合わせて変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明のプロジェクタ装置の実施例を説明するための外観斜視図である。
【図2】本発明のプロジェクタ装置の実施例における内部構造を説明するために筐体のみを断面とした縦断面図である。
【図3】本発明のプロジェクタ装置の実施例における内部構造を説明するために筐体のみを断面とした横断面図である。
【図4】本発明のプロジェクタ装置の実施例における第1の使用状態を説明するための部屋内部の斜視図である。
【図5】本発明のプロジェクタ装置の実施例における第1の使用状態を説明するための平面視見取り図である。
【図6】本発明のプロジェクタ装置の実施例における第1の使用状態を説明するための側面視見取り図である。
【図7】本発明のプロジェクタ装置の実施例における第2の使用状態を説明するための部屋内部の斜視図である。
【図8】本発明のプロジェクタ装置の実施例における第2の使用状態を説明するための平面視見取り図である。
【図9】本発明のプロジェクタ装置の実施例における第2の使用状態を説明するための側面視見取り図である。
【図10】本発明のプロジェクタ装置の実施例における変形例を説明するための外観斜視図である。
【図11】従来のプロジェクタ装置を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を、好ましい実施例により図1〜図10を用いて説明する。
【0017】
まず、図1〜図3を用いて、本発明のプロジェクタ装置の実施例であるプロジェクタ装置51について詳述する。
図1は、本発明のプロジェクタ装置の実施例であるプロジェクタ装置51を示す外観斜視図である。図2は、図1におけるS2−S2位置での縦断面図であって、筐体1の内部に収納された光学エンジン部2を説明するために筐体1のみを切断した図である。図3は、図1におけるS3−S3位置での横断面図であって、光学エンジン部2を説明するために筐体1のみを切断した図である。
尚、理解容易のため、図1に示されるように、プロジェクタ装置51に対して便宜的に上下方向、前後方向、左右方向を規定している。
【0018】
プロジェクタ装置51は、筐体1と、筐体1の内部に収納された光学エンジン部2と、筐体1を支持する支持部3と、を有している。
筐体1は、概ね六面体の箱状に形成されている。筐体1は、上方側において、前壁1Mから左側壁1S1及び右側壁1S2にかけて横長に開口した開口部1aを有している。
開口部1aからは、内部に収納した光学エンジン部2の投射レンズ2aを臨むことができる。
【0019】
図2に示されるように、光学エンジン部2は、ベース部2kと、固体光源2bと、固体光源2bに接触固定され、固体光源2bで発生した熱を放出するヒートシンク2cと、固体光源2bから出射した映像光LTを反射する折り返しミラー2dと、折り返しミラー2dで反射した光を反射する折り返しミラー2eと、折り返しミラー2eで反射した光が入射する透過型空間変調素子2fと、投射レンズ2aを含み、透過型空間変調素子2fを通過した映像光を外部へ投射する投射レンズ群2gと、を有して構成されている。
ヒートシンク2cと折り返しミラー2d,2eと透過型空間変調素子2fとは、図示しない保持部材によってベース部2kと連結されている。ベース部2kには、このプロジェクタ装置51の全体の動作を電気的に制御する制御部SGが設けられている。
【0020】
ベース部2kは、このプロジェクタ装置51の使用姿勢において鉛直方向となる回動軸線CLv上に、上方に延出する軸部2h1と下方に延出する軸部2h2を有している。回動軸線CLvと投射レンズ群2gの光軸CLとは直交している。
筐体1は、上壁1T及び下壁1Bにそれぞれ孔1Ta,1Baを有している。孔1Ta,1Baには、それぞれ光学エンジン部2における軸部2h1,2h2が挿通されている。
筐体1の上壁1Tの内面には、軸部2h1と係合して軸部2h1を回動軸線CLvの回りに回動させる駆動部AC1が設けられている。
すなわち、光学エンジン部2は、駆動部AC1によって、筐体1に対し回動軸線CLv回りに回動するようになっている。
駆動部AC1は、制御部SGからの指示又は外部からの指示に応じた回動方向及び回動角度で軸部2h1を軸線CLv回りに回動させる。
この駆動部AC1によって回動可能とされる光学エンジン部2の回動角度範囲において、投射レンズ2aから映像を外部に投射できるように、開口部1aの形状及び大きさが設定されている。図1に示す台座部3aに対して軸線CLvが垂直であるときを0°とするとき、光学エンジン部2が軸線CLv回りに回動可能な角度範囲は、例えば±45°である。
また、光学エンジン部2は、駆動部AC1により、回動可能な角度範囲の任意の位置で保持可能とされている。
【0021】
図3に示されるように、支持部3は、台座部3aと、一対の支柱部3b1,3b2と、を有して構成されている。一対の支柱部3b1と3b2は、所定の距離離隔しており、また台座部3aと垂直に立設される。
支柱部3b1,3b2の台座部3aとは反対の先端側には、光学エンジン部2を収納した状態の筐体1を側壁1S1,1S2で支持すると共に、このプロジェクタ装置51の使用姿勢において台座部3aの底面に対して水平となる回動軸線CLhまわりに筐体1を回動可能に支持する支持部材3cがそれぞれ設けられている。また、支持部材3cにはギヤ部3cgが一体に取り付けられている。
筐体1の一方の側壁(ここでは左側壁1S1)の内側には、ギヤ部3cgに噛合して筐体1を回動軸線CLh回りに回動させる駆動部AC2が設けられている。
すなわち、筐体1は、駆動部AC2によって、支柱部3b1,3b2に対し回動軸線CLh回りに回動するようになっている。
【0022】
回動軸線CLhの位置は、投射レンズ群2gの光軸CLと交わらずに直交する位置に設定されている。回動軸線CLhと光軸CLとは、交わって直交するように設定されていてもよい。
また、回動軸線CLhの位置は、回動軸線CLvと交わらずに直交する位置に設定されている。回動軸線CLhと回動軸線CLvとは、交わるように設定されていてもよい。
駆動部AC2は、制御部SG又は外部からの指示に応じた回動方向及び回動角度で筐体1を回動軸線CLh回りに回動させる。
筐体1及び支持部3の形状及び寸法は、駆動部AC2によって回動可能とされる筐体1の回動角度範囲において、台座部3aと筐体1とが干渉しないように設定されている。筐体1が回動軸線CLh回りに回動可能な角度範囲は、光軸CLが水平の場合を0°として上方を正の角度とすれば、例えば0°〜90°である。
また、筐体1は、駆動部AC2により、回動可能な角度範囲の任意の位置で保持可能とされている。
尚、台座部3aが水平面上に載置されると共に、光軸CLが、台座部3aの底面に対して水平であって回動軸線CLhと回動軸線CLvとのいずれにも直交する状態を、プロジェクタ装置51については「基準姿勢」と称し、光学エンジン部2については、「基準位置」と称し、回動軸線CLhの方向を「基準方向」と称することにする。また、このプロジェクタ装置51が基準姿勢にあり、その状態で画面形状の映像を正立して投射する際に、回動軸線CLvが画面の鉛直方向と平行に位置し、回動軸線CLhが画面の水平方向と平行に位置する。
【0023】
次に、図4〜図9を参照して、上述したプロジェクタ装置51をプライベート的用途として利用する例について説明する。具体的には、部屋R1内で使用する例である。
図4,図7は、部屋R1の斜視図であり、図5,図8は、部屋R1の見取り図である。図6は、図5におけるYS1−YS1位置の矢視図であり、図9は、図8におけるYS2−YS2位置の矢視図である。
図4〜図9に示される部屋R1の什器配置は、図11に示された部屋R101の什器配置と同様である。これらの図では、便宜的に、左右方向、前後方向、上下方向、として各方向を規定し、図4及び図7では、描画の都合上、部屋R1における、前側の壁WL1及び天井CEの一部、並びに、右側の壁を省略している。また、投射される映像は、画面の左右方向を長手として正立し、例えばアスペクト比が16:9とされている。
【0024】
図4及び図7において、部屋R1には、ベッド61とベッド61の脇に配置されたサイドテーブル62とが備えられている。また、サイドテーブル62を挟んでベッド61とは反対側にソファ64が置かれている。
サイドテーブル62の上には、実施例のプロジェクタ装置51が、回動軸線CLhを左右方向とする姿勢で設置されている。
【0025】
まず、図4〜図6を参照し、鑑賞者Kが、ベッド61の上で上半身を起こし背中を前側の壁WL1に当てた姿勢(第1の姿勢)をとった状態で、壁WL1に対向する壁WL2に対してプロジェクタ装置51から投射された画面E61を鑑賞する場合を説明する。画面E61は、例えば長手が水平方向で正立する画面である。
投射する画面E61は、壁WL2において鑑賞者Kの真正面に位置することが好ましい。そのため、プロジェクタ装置51の光学エンジン部2を、筐体1に対し回動軸線CLv回りの反時計方向(上方側から見て)に回動して、光軸CLと壁WL2との交点P1を鑑賞者Kの真正面に位置させる。
図5に示されるように、プロジェクタ装置51の基準姿勢における光軸CLの位置をCLrfとすると、第1の姿勢をとる鑑賞者Kの真正面に画面E61を位置させるために、光学エンジン部2を、角度θaだけ反時計回りに回動させる。
尚、ここでは、理解容易のため、光軸CLの位置は、プロジェクタ装置51の基準姿勢から、光軸CLの水平を維持したまま光学エンジン部2を回動軸線CLv回りに回動させた際に、画面E61の上下方向の位置(高さ)が、第1の姿勢をとる鑑賞者Kの顔の真正面に位置するように設定されているものとする(図6参照)。
【0026】
画面E61は、台形歪みを生じるが、この台形歪みは、周知の電気的処理により補正可能である。例えば、制御部SGに、光学エンジン部2の回動角度に応じて台形歪みを電気的に補正する台形歪補正部を搭載してもよい。
【0027】
次に、図7〜図9を参照し、鑑賞者Kの姿勢が、第1の姿勢からベッド61の上で仰臥した姿勢(第2の姿勢)に移行した場合について説明する。
鑑賞者Kが第2の姿勢をとっている場合、映像は、できるだけ、仰臥した鑑賞者Kの顔の直上の天井CEに投射されるのが好ましい。これは、プロジェクタ装置51の筐体1を、第1の姿勢に対応した状態(図7に示される状態)から、そのまま回動軸線CLh回りに、光軸CLを台座部3aの底面に対して水平位置からほぼ鉛直となる位置迄、上方へ回動させることで実現する。
すなわち、図9に示されるように、筐体1を基準位置から天井方向に回動させる。詳しくは、光軸CLが基準姿勢における位置CLrfから角度θbだけ回動するようにする。角度θbは、例えば90°である。
【0028】
筐体1の角度θbの回動後に、天井CEに投射された画面E62の位置が鑑賞者Kの顔の直上に対して左右方向にずれている場合は、光学エンジン部2を回動軸線CLv回りの左右いずれかの方向に回動させる。これにより、画面E62の位置が左右方向へ移動するので、画面E62を顔の直上に位置させることができる。
プロジェクタ装置62は、回動軸線CLhが、常に左右方向に沿って位置しており、回動軸線CLhは、光学エンジン部2の回動軸線CLv回りの回動に伴って傾くことがない。
従って、壁WL2及び天井CEに投射された画面E62は、台形歪みこそ生じ得るものの、その画面の長手(左右)方向が水平方向に対して傾くことはなく、長手が水平方向に位置し、鑑賞者Kにとって正立したものとなる。
【0029】
天井CEに投射された画面E62における光軸CLと天井CEとの交点を交点P2とすると、画面E61における交点P1から交点P2に至る交点の軌跡は、壁WL2及び天井CEとのそれぞれにおいて直線状となる。
ベッド61上での鑑賞者Kの顔の左右方向位置が、第1の姿勢と第2の姿勢とで変わらないとすると、画面E61及び画面E62は顔の真正面に位置することが望まれるので、画面E61における交点P1の左右方向位置と画面E62における交点P2の左右方向位置とが精度よく一致するとよい。
交点P1及び交点P2の左右方向位置は、例えば左側の壁WL3からの距離で示される。すなわち、交点P1については距離LP1であり、交点P2については距離LP2である。
【0030】
距離LP1と距離LP2との比率は、投射レンズ2aから壁WL2までの距離と投射レンズ2aから天井CEまでの距離との比率、及び画面E62を投射している状態における筐体1の基準姿勢から上方への回動角度に依存する。
【0031】
一方、プロジェクタ装置51は、図5に示されるように、鑑賞者K2が、サイドテーブル62を挟んでベッド61の反対側に備え付けられているソファ64に座っていても、筐体1を回動軸線CLvの回りの時計方向に回動させることで映像をソファ64に座っている鑑賞者K2の真正面に正立した映像を投射することができる。
詳しくは、図5に示されるように、ソファ64に座っている鑑賞者K2の真正面に画面E63を位置させるため、プロジェクタ装置51の基準姿勢における光軸CLの位置CLrfに対し、光学エンジン部2を角度θcだけ時計回り方向に回動させる。
【0032】
<変形例>
次に、プロジェクタ装置51の変形例であるプロジェクタ装置51Aについて図10を参照して説明する。図10は、プロジェクタ装置51Aを示す外観斜視図である。
【0033】
プロジェクタ装置51Aは、筐体1Aと、筐体1Aの内部に筐体1Aと一体に収納された光学エンジン部2と、筐体1Aを支持する支持部3Aと、を有している。光学エンジン部2は、筐体1Aと一体化されている点以外、プロジェクタ装置51の筐体1に収納されたものと構造は同じである。
筐体1Aは、概ね六面体の箱状に形成されている。前壁1AMには開口部1Aaが形成されており、光学エンジン部2は、筐体1Aに対し、開口部1Aaにおいて投射レンズ2aが露出するように収められている。
【0034】
筐体1Aは、上壁1AT及び下壁1ABから、光学エンジン部2の軸部2h1及び軸部2h2が突出している。軸部2h1及び軸部2h2は回動軸線CLv上にあり、回動軸線CLvと投射レンズ群2gの光軸CLとは直交している。
【0035】
支持部3Aは、台座部3Aaと、台座部3Aaにおいて所定の距離離隔して立設された一対の支柱部3Ab1,3Ab2と、支柱部3Ab1,3Ab2の先端部に連結した枠状の枠部3Acと、を有して構成されている。
枠部3Acは、互いに対向する一対の横枠部33a,33bと互いに対向する一対の縦枠部33c,33dとから概ね矩形に形成されており、縦枠部33c,33dのほぼ中央部において、支持部材34を介し支柱部3Ab1,3Ab2に対して回動軸線CLhの回りに回動可能に支持されている。
また、横枠部33a,33bの中央には、孔33a1,33b1が設けられている(33b1のみ図示)。筐体1Aは、孔33a1に軸部2h1が挿通され孔33b1に軸部2h2が挿通されていることにより、枠部3Acに対して回動軸線CLv回りに回動可能に支持されている。
また、筐体1Aは、図示しない駆動部AC3により、支持部3Aに対し回動軸線CLh回りに回動され、図示しない駆動部AC4により、支持部3Aに対し回動軸線CLv回りに回動されるようになっている。
【0036】
筐体1Aの回動軸線CLh回りの回動角度範囲は、例えば、光軸CLが、水平位置となる0°から投射レンズ2aが上方を向く垂直位置となる90°迄である。また、回動軸線CLv回りの回動角度範囲は、光軸CLが回動軸線CLhに対して直交する位置を0°として、例えば±45°である。
駆動部AC3,AC4の動作は、制御部SGによって駆動部AC1,AC2と同様に制御される。この変形例のプロジェクタ装置51Aは、プロジェクタ装置51と同様の効果を奏する。
【0037】
交点P1,P2は、画面E61,E62の中心位置にあるので、便宜的に、交点P1,P2の位置が画面E61,E62の位置であるとしても支障はない。
上述した実施例及びその変形例であるプロジェクタ装置51,51Aによれば、光学エンジン部2を、基準位置から回動軸線CLv回りに所定量回動させた状態で、壁WL2における第1の姿勢の鑑賞者Kの真正面となる位置に、投射した画面E61を位置させることができる。
鑑賞者Kの姿勢が第1の姿勢から第2の姿勢に移行した場合には、筐体1,1Aを回動軸線CLh回りに回動させることで、天井CEに画面E62を投射でき、画面E62を第2の姿勢の鑑賞者Kの概ね上方に位置させることができる。
その状態で画面E62が鑑賞者Kの直上に位置していない場合は、更に光学エンジン部2を回動軸線CLv回りに回動させることで、画面E62を、天井CEにおける鑑賞者Kの顔の直上に精度よく位置させることができる。
従って、ベッド61の上で鑑賞者Kが第1の姿勢と第2の姿勢とのいずれの姿勢をとっても、鑑賞者Kの顔の真正面に投射した画面E61,E62を位置させることができるので、鑑賞者Kは、リラックスした状態で投射映像を鑑賞することができる。
また、画面E61,E62の長手方向が水平方向に対して傾くことがないので、鑑賞者Kは、ベッド61の上でよりリラックスした状態で映像を鑑賞することができる。
また、プロジェクタ装置51,51Aは、光学エンジン部2の回動軸線CLv回りの回動角度範囲の任意の位置と筐体1,1Aの回動軸線CLh回りの回動角度範囲の任意の位置とを組み合わせた任意の方向に映像を投射できる。
映像を壁WL2又は天井CEに投射した際には、投射した画面の位置を、ベッド61上の鑑賞者Kに対して概ね正面とすることができる。
【0038】
また、上述した実施例及び変形例のプロジェクタ装置51,51Aは、投射する映像の画面形状が長手を有し、例えば矩形であって、その映像を被投射体である壁WL2及び天井CEに投射する投射部である光学エンジン部2を有している。
光学エンジン部2が、その光軸CLを水平方向に位置させると共に被投射体である壁WL2に投射された画面の長手が水平方向となる基本投射姿勢である「基本位置」をとり得るように、支持構造部SJは光学エンジン部2及び筐体1を支持する。すなわち、支持構造部SJは、軸部2h1,2h2とこれらを支持する孔1Ta,1Baと支持部材3c,34と支持部3,3Aとが該当する。
前記支持構造部SJは、光学エンジン部2の投射姿勢を、基本投射姿勢から、投射された画面E61の位置を長手を水平方向としたまま左方又は右方に水平移動した第1の位置P1とする第1の投射姿勢に変更可能であり、かつ、第1の投射姿勢から、第1の位置P1に投射された画面E61の位置を、長手を水平方向としたまま第1の位置の上方の天井CEにおける第2の位置P2とするする第2の投射姿勢に変更可能とされている。
【0039】
本発明の実施例及びその変形例は、上述した構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において別の変形例としてもよいのは言うまでもない。
筐体1と支持部3とは、又は筐体1Aと支持部3Aとは分離可能とされていてもよい。これにより、筐体1,筐体1Aを、他の仕様のものと交換可能にすることができ、支持部3,3Aを共用化することができる。
回動軸線CLv,CLh回りの回動角度は、上述した範囲に限定されない。
例えば、回動軸線CLhまわりの回動角度を、0°〜180°とし、映像の上下を反転する映像処理部を設けてもよい。
これにより、プロジェクタ装置51,51Aを部屋の中央近傍に配設し、天井と、互いに対向する一対の壁と、の三面に映像を投射可能としてもよい。これは、ある程度の広さを有する部屋の中でプロジェクタ装置51,51Aを使用する場合に有効である。
光学エンジン部2及び筐体1,1Aの回動とそれらの所定角度位置での保持は、駆動部AC1〜AC4によって行われるものに限らない。駆動部AC1〜AC4を備えずに、人手によって行う構造でもよい。その場合の所定角度位置での保持は、波ワッシャなどを用いて得られる回動摩擦力を利用する構造としてもよい。
上述した実施例及びその変形例は、部屋のみに利用され得るものではない。
比較的狭い空間で、個人又は少人数で映像を鑑賞する用途に自由に用いることができる。
【符号の説明】
【0040】
1,1A 筐体
1B 下壁、1Ba 孔、1M,1AM 前壁
1S1 左側壁、1S2 右側壁、1T 上壁、1Ta 孔
1a,1Aa 開口部
2 光学エンジン部
2a 投射レンズ、2b 固体光源、2c ヒートシンク
2d,2e 折り返しミラー、2f 透過型空間変調素子
2g 投射レンズ群、2h1,2h2 軸部
3,3A 支持部、3a,3Aa 台座部、3c 支持部材、3cg ギヤ
3b1,3b2,3Ab1,3Ab2 支柱部
3Ac 枠部
33a,33b 横枠部、33a1,33b1 孔、33c,33d 縦枠部
34 支持部材
51,51A プロジェクタ装置
61 ベッド、62 サイドテーブル、64 ソファ
AC1〜AC4 駆動部
CE 天井、CL 光軸
CLh (水平方向の)回動軸線、CLv (鉛直方向の)回動軸線
E61〜E63 画面
K,K2 鑑賞者
KS (交点の)軌跡
LT 映像光、P1,P2 交点、R1 部屋
SG 制御部、SJ 支持構造部
WL1〜WL3 壁
θa〜θc 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面形状の映像を投射する投射部と、
前記投射部を第1の軸線回りに回動可能に支持した筐体と、
前記筐体を第2の軸線回りに回動可能に支持した台座部と、を備えたプロジェクタ装置であって、
前記投射部を、前記投射部の光軸が前記台座部の底面に対して平行方向に位置すると共に前記映像を正立して投射する姿勢にした際に、前記第1の軸線が画面の鉛直方向と平行に位置し、前記第1の軸線回りに前記筐体を回動することにより前記画面を水平方向に移動可能とし、前記第2の軸線が前記画面の水平方向と平行に位置し、前記第2の軸線回りに前記筐体を回動することにより前記画面を鉛直方向に移動可能とすることを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項2】
画面形状の映像を被投射体に投射する投射部と、前記投射部を収める筐体と、前記筐体を支持する台座部と、を有するプロジェクタ装置であって、
前記投射部を、その光軸が前記台座部の底面に対して平行方向に位置すると共に前記映像を正立して投射する姿勢にした際に、前記画面の長手方向を基準方向とする基本投射姿勢をとり得るよう支持する支持構造部を備え、
前記支持構造部は、前記投射部の投射姿勢を、
前記基本投射姿勢から、前記投射された画面の位置を前記基準方向としたまま左方又は右方に水平移動した第1の位置とする第1の投射姿勢に変更可能であり、かつ、前記第1の投射姿勢から、前記第1の位置に投射された画面の位置を、前記基準方向としたまま前記第1の位置の上方の第2の位置とする第2の投射姿勢に変更可能であることを特徴とするプロジェクタ装置。
【請求項3】
前記投射部を前記第1の軸線回りに回動させる第1の駆動部と、
前記筐体を前記第2の軸線回りに回動させる第2の駆動部と、
前記第1及び第2の駆動部の動作を制御する制御部と、
を備えたことを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−50542(P2013−50542A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187545(P2011−187545)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】