説明

プロジェクタ

【課題】簡単な構成で投射方向を変更することができるプロジェクタの提供。
【解決手段】箱体10に画像を投射する投射レンズ2が設けられている。箱体10にはカバー3が設けられている。カバー3は、投射レンズ2を遮蔽する遮蔽位置及び露出する露出位置の間を移動可能に構成されている。カバー3には、カバー3が遮蔽位置にある場合に、投射レンズ2と対向する開口31が設けられている。開口31には、箱体10の内外方向に回動する蓋32が配されている。蓋32は、投射レンズ2と対向する面に反射鏡を有し、開口31の位置から箱体10の内外方向に回動する。反射鏡が投射レンズ2から投射された画像を反射することによって投射方向が変更される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像を投射するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
会議室又は展覧会場等で画像をスクリーンに表示し、プレゼンテーションを行う場合にプロジェクタ(例えば、特許文献1)が利用されている。
【0003】
プロジェクタは直方体状の箱体を備え、箱体の内部には、光源と表示デバイスとが収納されている。また、箱体の一面に内外を貫通するように投射レンズが設けられている。光源は、画像をスクリーンに投射するために光を表示デバイスに出射する。表示デバイスは、表面に画像を形成し、光源からの光を透過させる。表示デバイスを透過した光は、投射レンズを通じて外部に投射される。
【0004】
また、プロジェクタは投射レンズを保護するカバーを更に備えている。カバーとして、箱体の外側に移動可能に取り付けたカバーがある。このカバーは投射レンズを遮蔽する遮蔽位置及び露出させる露出位置との間を移動する。
【0005】
プロジェクタは、一般に、投射レンズの光軸がスクリーンと垂直をなすように配置され、投射レンズから投射された画像はスクリーンに表示される。このため、プロジェクタが使用される場合に、プロジェクタのスクリーンに対する配置が制限される。
【0006】
プロジェクタの使用時の配置が制限された場合、プロジェクタから排気される熱風が問題となる。
箱体の内部に送風機が更に収納されている。また、吸気口及び排気口が箱体に設けられている。送風機は、吸気口から外部の空気を吸気し、光源を空冷し、光源によって熱せられた空気を排気口から排気する。一般に、排気口は、投射レンズが設けられた一面と異なる一面に設けられる事が多い。
【0007】
視聴者は、投射レンズが設けられた一面の近傍を除くプロジェクタ周辺におり、排気口の近傍にいる可能性がある。排気口の近傍に視聴者がいる場合、排気口からの熱風が視聴者に当たり、視聴者を不快にさせる虞がある。
【0008】
そこで、画像を投射する方向を、投射レンズの光軸方向ではなく、他の方向に変更することによって、画像の投射方向と熱風の排気方向とを一致させることができ、視聴者に熱風を当てないようにすることができる。
画像の投射方向を種々の方向に変更することができるプロジェクタが特許文献2に開示されている。
【0009】
特許文献2に記載のプロジェクタは、光源、表示デバイス、及び投射レンズの他に、枠体と反射鏡とを備えている。枠体は、円筒の両端面に連通する円形の開口が設けられた形状をなす。投射レンズは開口に嵌め込まれて、枠体によって支持されている。反射鏡は、枠体の一端面に固定され、投射レンズから投射された光を反射する。このプロジェクタが例えば床に配置された場合、投射レンズの光軸は床に垂直をなす。
【0010】
反射鏡は投射レンズから投射された光を投射レンズの光軸に対して垂直をなす方向に反射する。枠体は投射レンズの光軸回りに回動可能に構成されている。このため、反射鏡は、枠体の回動と共に投射レンズの光軸回りに回動し、光軸に対して垂直をなすいずれかの方向に画像を反射する。
【0011】
表示デバイスが固定された状態で、反射鏡が回動した場合、反射鏡の位置によってスクリーンに投射された画像の向きが変化する。特許文献2に記載のプロジェクタにおいては、画像の向きが変わらないようにするため、反射鏡が回動した際、表示デバイスを反射鏡の回動量と同一の回動量だけ回動させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−42371号公報
【特許文献2】特開2002−90879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献2に記載のプロジェクタは、枠体が必要であるため、枠体を配置する場所が投射レンズの周りに必要になり、プロジェクタが大型になるという問題がある。また、表示デバイスを回動させる回動機構が必要であるため、プロジェクタの構成が複雑になるという問題がある。
【0014】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な構成で投射方向を変更することができるプロジェクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るプロジェクタは、画像を投射するために箱体に設けられた投射レンズと、該投射レンズを遮蔽する遮蔽位置及び露出させる露出位置の間を移動可能なカバーとを備えるプロジェクタにおいて、前記カバーは、前記遮蔽位置にある場合に前記投射レンズに対向する開口と、該開口に前記箱体の内外方向への回動を可能に配され、投射された画像を反射する反射鏡とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明にあっては、箱体に設けられた投射レンズを遮蔽する遮蔽位置及び露出させる露出位置の間を移動可能なカバーに開口と反射鏡とが設けられている。開口は、カバーが遮蔽位置にある場合に投射レンズに対向する。反射鏡は、開口に配され、箱体の内外方向に回動可能であり、投射レンズから投射された画像を反射して投射方向を変更する。
【0017】
カバーを備えるプロジェクタは既に存在しており、既存のプロジェクタが備えるカバーに開口と反射鏡とを設けているだけなので、既存のプロジェクタと大きさは変わらず、構成が簡単である。また、カバーを改良しているだけなので、製造費用が安価である。更に、投射方向を光源によって熱せられた空気を排気する方向に一致させることによって、視聴者に熱風を当てず、視聴者を不快にさせない。
【0018】
本発明に係るプロジェクタは、前記カバーは、更に、前記開口の周縁間に渡され、前記反射鏡を枢支する回動軸を有することを特徴とする。
【0019】
本発明にあっては、回動軸は、開口の周縁間に渡され、反射鏡を枢支するので、反射鏡は回動軸の軸回りに回動され、種々の方向に画像を投射することができる。
【0020】
本発明に係るプロジェクタは、前記カバーは、前記回動軸を複数有し、前記反射鏡は、複数の前記回動軸夫々に着脱可能及び回動可能に取付けられる複数の取付部を有することを特徴とする。
【0021】
本発明にあっては、開口に複数の回動軸が設けてあり、反射鏡は回動軸に着脱可能及び回動可能に取付けられる複数の取付部を有する。複数の回動軸中の一の回動軸に、対応する取付部を取付けることで、反射鏡は、一の回動軸回りに回動され、種々の方向に画像を投射する。また、他の回動軸に、対応する取付部を取り付けることで、反射鏡は、他の回動軸回りに回動され、種々の方向に画像を投射する。複数の回動軸が設けられることで、より多くの方向に画像を投射することができる。
【0022】
本発明に係るプロジェクタは、前記取付部は、前記反射鏡の周縁部に突設され、前記反射鏡を支持する支持柱部と、円環の周方向の一部を切除した形状をなし、前記円環の軸方向が前記反射鏡と平行をなすように前記支持柱部の先端に設けられ、前記回動軸に嵌合する嵌合部とを有することを特徴とする。
【0023】
本発明にあっては、取付部は支持柱部と嵌合部とを有する。支持柱部は、反射鏡の周縁部に突設され、反射鏡を支持する。嵌合部は、円環の周方向の一部を切除した形状をなし、支持柱部の先端に設けられる。円環の軸方向は反射鏡と平行している。嵌合部は、円環の一部を切除した形状であり、切除部分を利用して回動軸に着脱することができ、回動軸に嵌合した状態では、回動軸の軸回りに回動することができる。
【0024】
本発明に係るプロジェクタは、前記嵌合部の内周面に設けられた少なくとも1つの突起と、前記回動軸における前記嵌合部が嵌合する周面に周設され、前記突起と係合する複数の凹部とを有することを特徴とする。
【0025】
本発明にあっては、嵌合部の内周面に少なくとも1つの突起が設けられており、嵌合部が嵌合する回動軸の周面に、複数の凹部が周設されている。このため、回動する反射鏡を突起と凹部とが係合する位置で位置決めすることができる。従って、画像が投射されている間、反射鏡の位置がずれにくく、画像が乱れにくい。
【0026】
本発明に係るプロジェクタは、前記開口及び反射鏡は矩形状をなし、前記カバーは前記回動軸を2つ有し、前記回動軸は、共に前記開口の短手方向又は長手方向に渡されていることを特徴とする。
【0027】
本発明にあっては、開口及び反射鏡が矩形状をなし、開口の短手方向又は長手方向に回動軸が2つ渡されている。回動軸が短手方向に渡されている場合、投射方向を長手方向の一方向にも他方向にも変更することができる。同様に、回動軸が長手方向に渡されている場合、投射方向を短手方向の一方向にも他方向にも変更することができる。
【0028】
本発明に係るプロジェクタは、前記開口が開放されているか否かを検出する検出部と、該検出部が開放されていると検出した場合に、前記投射レンズから投射される画像を鏡像反転する反転部とを備えることを特徴とする。
【0029】
本発明にあっては、検出部は、反射鏡が回動され、開口が開放しているか否かを検出する。反転部は、検出部により開口の開放が検出された場合、投射レンズから投射される画像を鏡像反転する。
【0030】
反射鏡によって反射された画像は鏡像反転するので、反射鏡を用いて画像を投射する場合には、予め投射する画像を鏡像反転しておく必要がある。検出部が開口の開放を検出した場合に、反転部が投射レンズから投射される画像を鏡像反転することによって、正しく画像が投射される。
【0031】
本発明に係るプロジェクタは、前記反射鏡によって反射され、台形状に歪んだ画像を補正する操作を受け付ける受付部と、前記受付部が受け付けた操作を記憶する記憶部と、前記開口が開放されているか否かを検出する検出部と、前記検出部が開放されていると検出した場合に前記記憶部が記憶している操作を再現する再現部とを備えることを特徴とする。
【0032】
本発明にあっては、受付部は、台形状に歪んだ画像を補正する操作をユーザから受け付ける。記憶部は、受付部がユーザから受け付けた補正の操作を記憶する。検出部は開口が開放されているか否かを検出する。再現部は、検出部が開口の開放を検出した場合に、記憶部に記憶されている操作を再現する。
【0033】
これにより、ユーザが、反射鏡を用いて画像を投射すべく、反射鏡を回動させ、開口を開放した場合に、以前にユーザから受け付けた補正の操作が行われるので、ユーザが再び台形状に歪んだ画像を補正する手間が省かれる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、投射レンズを遮蔽する遮蔽位置及び露出させる露出位置の間を移動可能なカバーに、開口と、開口に箱体の内外方向への回動を可能に配され、投射された画像を反射する反射鏡とが設けられているため、簡単な構成で投射方向を変更することができるプロジェクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプロジェクタの内部構成図である。
【図2】カバーが露出位置にある場合におけるプロジェクタの斜視図である。
【図3】カバーが遮蔽位置にある場合におけるプロジェクタの斜視図である。
【図4】開口が開かれた場合におけるプロジェクタの斜視図である。
【図5】カバーの正面図である。
【図6】カバーに設けられた開口の正面図である。
【図7】カバーの平面断面図である。
【図8】カバーの側面断面図である。
【図9】蓋の開閉を説明する説明図である。
【図10】嵌合部の拡大図である。
【図11】回動軸の断面図である。
【図12】カバーが露出位置にある場合におけるプロジェクタの使用状態を説明する説明図である。
【図13】カバーが遮蔽位置にある場合におけるプロジェクタの使用状態を説明する説明図である。
【図14】蓋の開閉角度に対するスクリーンの画像を説明する説明図である。
【図15】プロジェクタの構成を示すブロック図である。
【図16】制御部の動作手順を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態2に係るプロジェクタのカバーの正面図である。
【図18】カバーに設けられた開口の正面図である。
【図19】カバーの平面断面図である。
【図20】カバーの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
(実施の形態1)
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は本発明の実施の形態1に係るプロジェクタの内部構成図、図2はカバーが露出位置にある場合におけるプロジェクタの斜視図、図3はカバーが遮蔽位置にある場合におけるプロジェクタの斜視図である。
【0037】
プロジェクタ1は直方体状の箱体10を備えている。箱体10の一面には短手方向に開放された凹所11が一短辺寄りに設けられている。凹所11の中央部には、円筒状の投射レンズ2が箱体10の外部に一側を突出させて固定されている。投射レンズ2の突出長は凹所11の凹みよりも短くしてある。
【0038】
なお、以下の説明においては、箱体10における投射レンズ2の突出側を前、反対側を後とし、箱体10の前面の長手方向を左右方向、短手方向を上下方向とする。
【0039】
カバー3は、断面がU字状をなし、箱体10の前面に嵌合されている。カバー3は箱体10の前面に沿って左右方向に移動可能であり、投射レンズ2を図2に示すように露出し、図3に示すように遮蔽する。投射レンズ2を露出させているカバー3の位置を露出位置、遮蔽しているカバー3の位置を遮蔽位置とする。カバー3は、前側から見て矩形状をなし、遮蔽位置にある場合に凹所11の全体を覆う。
【0040】
箱体10の内部には、表示デバイス12、ミラー13、及び光源14が収納されている。表示デバイス12及びミラー13は、図1に示すように、投射レンズ2の光軸方向に沿って、投射レンズ2の後側に順に設置されている。光源14は、プロジェクタ1の前側から見て、ミラー13の左側に設置されている。
【0041】
光源14は画像を投射するための光をミラー13に向けて出射する。ミラー13は光源14からの光を表示デバイス12に向けて反射する。表示デバイス12は、表面に画像を形成し、ミラー13で反射した光を透過させる。表示デバイス12を透過した光は投射レンズ2を通じて箱体10の外部に投射される。
【0042】
箱体10の右側面及び左側面夫々に吸気口15及び排気口16が設けられている。吸気口15の内側に送風機4aが、排気口16の内側に送風機4bが設置されている。送風機4aは、吸気口15から箱体10の外部の空気を吸気し、光源14に風を送り、光源14を空冷する。送風機4bは、光源14によって熱せられた空気を排気口16から排気する。
【0043】
図4は、開口が開かれた場合におけるプロジェクタ1の斜視図である。図4に示すプロジェクタ1では、カバー3は遮蔽位置にある。カバー3の前面には矩形状の開口31が設けられている。開口31には、開口31を開閉可能に支持された矩形状の蓋32が配置されている。開口31及び蓋32の大きさは略同じである。
本発明の特徴は、カバー3の構成にあり、以下詳細に説明する。
【0044】
図5はカバー3の正面図である。カバー3には、前述したように、蓋32が設けられている。蓋32の前面には、把持部33,33が、左辺及び右辺夫々の中央部に設けられている。把持部33は、蓋32を開ける際にユーザが指を引掛ける取っ手である。
【0045】
図6はカバー3に設けられた開口31の正面図である。開口31には円柱状をなす回動軸34,34が、開口31の左辺及び右辺の近傍に上下方向に渡すように設けられている。
【0046】
図7はカバー3の平面断面図である。蓋32の後面において、矩形状をなす反射鏡36が中央部に設けられており、取付部35が2つずつ反射鏡36の左辺及び右辺夫々の近傍に設けられている。
【0047】
取付部35は支持柱部351と嵌合部352とによって構成される。支持柱部351は蓋32の後面に立設されている。嵌合部352は、円環の周方向の一部を切除した形状をなしている。嵌合部352は、円環の軸方向が反射鏡36と平行をなすように支持柱部351の先端に固設されている。
【0048】
嵌合部352において、切除部分は、中心に対して、支持柱部351との境界面の反対側に位置する。嵌合部352の内径は回動軸34の外径と略同じである。嵌合部352が回動軸34に嵌合することによって、蓋32が回動軸34に取付けられている。
【0049】
図8はカバー3の側面断面図である。2つの取付部35,35が1つの回動軸34に取付けられている。
なお、1つの回動軸34に対して取付けられる取付部35の数は2つに限定されない。取付部35の数は1つであってもよいし、3つ以上であってもよい。また、同数の取付部35が回動軸34,34夫々に取付けられる必要はない。
【0050】
図9は蓋32の開閉を説明する説明図である。図9において、破線部分は蓋32が閉められた状態を示し、実線部分は蓋32が開けられた状態を示している。
【0051】
蓋32が閉められている場合、全ての取付部35,35,35,35が回動軸34,34に取付けられている。ユーザは、蓋32を開ける場合、蓋32の前面にある一方の把持部33を引っ張ることによって、把持部33と同じ側にある取付部35,35を回動軸34から外し、蓋32を他側の回動軸34の軸回りに回動させる。
【0052】
図10は嵌合部352の拡大図である。嵌合部352の内周面に、周方向に等配をなして複数の突起38,38,・・・が並設されている。複数の突起38,38,・・・は、嵌合部352の中心に対して所定角(例えば15度)ごとに並設されている。
【0053】
図11は回動軸34の断面図である。回動軸34の外周面に、複数の凹部39,39,・・・が等配をなして周設されている。複数の凹部39,39,・・・は、回動軸34の軸心に対して突起38と同じ所定角ごとに周設されている。
【0054】
蓋32は複数の突起38,38,・・・と複数の凹部39,39,・・・とが係合する位置で位置決めされる。
なお、突起38は、少なくとも1つ設けられていればよく、凹部39は2つ以上設けられていればよい。従って、突起38及び凹部39の数は限定されない。
【0055】
また、蓋32の位置決めは他の構成によっても実現可能である。例えば、嵌合部352に中心に向けて螺子孔を設け、該螺子孔に通した螺子を締めることによって、回動軸34を螺子に対向する嵌合部352の内周面に押し当て、嵌合部352が回動軸34を回動できなくして蓋32を位置決めしてもよい。この場合、蓋32を回動する際、螺子を緩める。
【0056】
図12は、カバー3が露出位置にある場合におけるプロジェクタ1の使用状態を説明する説明図である。プロジェクタ1の前方向にスクリーン5が配置されている。スクリーン5には、画像がプロジェクタ1から投射され、投射された画像が表示される。カバー3が露出位置にある状態でプロジェクタ1を使用する場合、図12に示すように、プロジェクタ1は投射レンズ2の光軸がスクリーン5に対して垂直をなすように配置される。
【0057】
カバー3が露出位置にある状態でプロジェクタ1を使用した場合、スクリーン5に投射された画像を見て、プレゼンテーション等を聴く視聴者は、投射レンズ2が設けられた前面の近傍を除くプロジェクタ1の周辺におり、箱体10の左側面に設けられた排気口16の近傍にいる可能性がある。排気口16の近傍に視聴者がいる場合、排気口16からの熱風が視聴者に当たり、視聴者を不快にさせる虞がある。
【0058】
図13は、カバー3が遮蔽位置にある場合におけるプロジェクタ1の使用状態を説明する説明図である。カバー3が遮蔽位置にある状態でプロジェクタ1を使用する場合、蓋32を開けて、所定の開閉角度で位置決めする。図13では、スクリーン5がプロジェクタ1の左側に配置されているので、左側の取付部35,35を同じ側の回動軸34から外し、蓋32を右側の回動軸34の軸回りに回動させ、箱体10の前面に対して45度をなす開閉角度で位置決めしている。
【0059】
投射レンズ2から投射された画像は、蓋32の後面に設けられた反射鏡36によって左方向に反射され、スクリーン5に投射される。この場合、画像の投射方向と箱体10の左側面に設けられた排気口16の排気方向とが一致するため、視聴者が排気口16の近傍にいることはなく、排気された熱風が視聴者に当たることはない。
【0060】
なお、蓋32の開閉角度を45度以上にすることによって左斜め前方向にも画像を投射することができる。更に、右側の取付部35,35を同じ側の回動軸34から外し、左側の回動軸34の軸回りに蓋32を回動させることによって、プロジェクタ1の右方向及び右斜め前方向にも画像を投射することもできる。
【0061】
また、カバー3が遮蔽位置にある状態で蓋32が開けられている場合、開口31と投射レンズ2とは対向している。カバー3が遮蔽位置にある状態でプロジェクタ1を使用する場合、スクリーン5に取付部35の影が映らないようにするため、取付部35の大きさを小さくし、取付部35が蓋32の後面の周縁に近くに設置されるように工夫されている。
【0062】
図14は、蓋32の開閉角度に対するスクリーン5の画像を説明する説明図である。図14Aは、カバー3が遮蔽位置にある場合におけるプロジェクタ1の使用状態を示している。スクリーン5は、プロジェクタ1の左側に配置されている。蓋32は、後面の反射鏡36を用いてスクリーン5に画像を投射すべく、カバー3の右側にある回動軸34の軸回りに回動して開けられ、一定の開閉角度で位置決めされている。
【0063】
破線で示された蓋32は箱体10の前面と45度をなしており、実線で示された蓋32は45度よりも大きな角度(例えば50度)をなしている。
【0064】
図14Bは、図14Aにおいて実線で示された蓋32の後面に設けられた反射鏡36によって反射され、スクリーン5に投射された画像を示している。蓋32の開閉角度が45度を超えた場合、投射された画像は台形状に歪む。
【0065】
また、反射鏡36を用いて画像を投射した場合、スクリーン5におけるプロジェクタ1の設置面に平行な方向の画像成分が鏡像反転する。
プロジェクタ1は、図14Bに示すように台形状に歪んだ画像を補正する機能及び投射レンズ2から投射する画像を予め鏡像反転する機能を備えている。
【0066】
以下に、プロジェクタ1によって実行される画像補正及び鏡像反転の処理を説明する。
図15は、プロジェクタ1の構成を示すブロック図である。プロジェクタ1は、制御部70、検出部71、反転部72、受付部73、記憶部74、及び再現部75を備えている。制御部70は、検出部71、反転部72、受付部73、記憶部74、及び再現部75に夫々接続されている。
【0067】
制御部70は、CPUと内蔵ROMとによって構成され、CPUを用いて、内蔵ROMに記憶されている制御プログラムを実行することによって、検出部71、反転部72、受付部73、記憶部74、及び再現部75の動作を制御する。
【0068】
検出部71は、蓋32が回動され、開口31が開放しているか否かを検出する。
反転部72は、表示デバイス12(図1参照)の表面に形成される画像の左右方向の画像成分を反転させることによって、投射レンズ2から投射された画像を鏡像反転する。
【0069】
受付部73は、図14Aに示す箱体10の上面に設けられた操作部7を介して、ユーザから画像を補正するか否かの決定、補正が完了したか否かの決定、及びユーザによる補正操作を受け付ける。
なお、操作部7は、箱体10の上面ではなく、リモートコントローラに設けられてもよい。
【0070】
記憶部74は、ユーザによって行われた補正操作を記憶する。受付部73がユーザから補正操作を受け付けた場合、投射レンズ2から投射された画像を補正するための補正値が変わる。補正操作を記憶するとは、補正操作に係る補正値を記憶することを意味する。
再現部75は、記憶部74に記憶されている補正値に基づいて補正操作を再現する。
【0071】
図16は制御部70の動作手順を示すフローチャートである。まず、制御部70は、検出部71に指示して、開口31が開放しているか否かを検出させる(ステップS1)。制御部70は、開口31の開放を検出しなかった場合(ステップS1:NO)、反射鏡36によって画像が反射されていないとみなして制御を終了する。
【0072】
制御部70は、開口31の開放を検出した場合(ステップS1:YES)、反転部72に指示して、投射レンズ2から投射される画像を鏡像反転させる(ステップS2)。
【0073】
次に、制御部70は、再現部75に指示して、記憶部74が記憶している補正操作を再現させる(ステップS3)。
なお、制御部70は、記憶部74に補正操作が記憶されていない場合、再現部75に補正操作を再現させず、後述のステップS4を実行する。
【0074】
ステップS3の後、制御部70は、受付部73に指示して、ステップS3で再現部75によって再現された補正操作に加えて、更に補正操作を行うか否かをユーザから受け付けさせる(ステップS4)。更に補正操作を行うか否かを受け付ける旨のメッセージは、例えば、プロジェクタ1から投射された画像に表示される。ユーザは、操作部7を操作することによって、更に補正操作を行うか否かを決定する。
【0075】
制御部70は、更に補正操作を行わない決定をユーザから受け付けた場合(ステップS4:NO)、制御を終了する。
制御部70は、更に補正操作を行う決定をユーザから受け付けた場合(ステップS4:YES)、受付部73に指示して、ユーザから補正操作を受け付けさせる(ステップS5)。ユーザは、操作部7を操作してスクリーン5に投射された画像を見ながら、台形状に歪んだ画像を補正する。
【0076】
次に、制御部70は、受付部73に指示して、画像の補正が完了した否かを、操作部7を介してユーザから受け付けさせる(ステップS6)。補正が完了したか否かを受け付ける旨のメッセージは、例えばプロジェクタ1から投射された画像に表示される。ユーザは、操作部7を操作することによって、画像の補正が完了したか否かをプロジェクタ1に通知する。
【0077】
制御部70は、画像の補正が完了していない決定を受付部73が受け付けた場合(ステップS6:NO)、ステップS5に戻り、画像の補正が完了するまで、受付部73に補正操作を受け付けさせる。
【0078】
制御部70は、画像の補正が完了した決定を受付部73が受け付けた場合(ステップS6:YES)、記憶部74に指示して、ステップS5において受付部73がユーザから受け付けた補正操作を記憶させる(ステップS7)。なお、記憶部74は、補正操作を記憶する前に、記憶されている補正操作に係る補正値を予め消去している。
制御部70は、ステップS7の後、制御を終了する。
【0079】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、投射レンズを遮蔽する遮蔽位置及び露出させる露出位置の間を移動可能なカバーを備える既存のプロジェクタに開口と反射鏡を有する蓋とを設けた構成になっている。このため、プロジェクタ1の大きさは既存のプロジェクタと変わらず、構成が簡単である。また、プロジェクタ1は、既存のプロジェクタにおいて、カバーが改良されているだけであるため、製造費用が安価である。
【0080】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、回動軸34は、開口31を上下方向に渡され、反射鏡36を有する蓋32を枢支するので、反射鏡36は、回動軸34の軸回りに回動され、種々の方向に画像を投射することができる。
【0081】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、開口31に2つの回動軸34,34が設けられており、反射鏡36の周縁部に回動軸34,34に着脱及び回動可能に取付けられた取付部35,35,35,35が設けられている。従って、反射鏡36は、回動軸34,34夫々の軸回りに回動するため、左方向、左斜め前方向、右斜め前方向、及び右方向に画像を投射することができる。
【0082】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、嵌合部352は、円環の周方向の一部を切除した形状をなすため、切除部分を利用して回動軸34に着脱することができ、回動軸34に嵌合した状態で、回動軸34の軸回りに回動することができる。
【0083】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、反射鏡36は、複数の突起38,38,・・・と複数の凹部39,39,・・・とが係合する位置で位置決めすることができる。このため、画像が投射されている間、反射鏡36の位置がずれにくく、画像が乱れにくい。
【0084】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、検出部71によって開口31が開放されているか否かが検出され、開口31の開放が検出された場合に、反転部72は投射レンズ2から投射される画像を鏡像反転する。これにより、反射鏡36によって反射された画像はスクリーン5に正しく表示される。
【0085】
実施の形態1に係るプロジェクタ1にあっては、検出部71によって開口31の開放が検出された場合に、記憶部74に記憶されている補正操作が行われる。これにより、ユーザが、反射鏡36を用いて画像を投射すべく、蓋32を回動させ、開口31を開放した場合に、以前にユーザが行った補正操作が行われるので、再び台形状に歪んだ画像を補正する手間が省かれる。
【0086】
(実施の形態2)
図17は本発明の実施の形態2に係るプロジェクタのカバー3の正面図である。
実施の形態2に係るプロジェクタは、実施の形態1に係るプロジェクタ1と比較して、カバー3の構成が異なる。
以下、実施の形態1のプロジェクタ1と異なる部分を主に説明し、他の実施の形態1に対応する部分は同じ符号を付して説明を省略する。
【0087】
図17に示すように、蓋32の前面には、把持部33,33の他に、把持部83,83が、上辺及び下辺夫々の中央部に設けられている。把持部83は、蓋32を開ける際にユーザが指を引掛ける取っ手である。
【0088】
図18はカバー3に設けられた開口31の正面図である。開口31には、回動軸34,34の他に円柱状の回動軸84,84が設けられている。回動軸84,84夫々は、開口31の上辺及び下辺の近傍に左右方向に渡すように、回動軸34,34の後側に設けられている。
【0089】
図19はカバー3の平面断面図である。蓋32の後面において、取付部35,35,35,35及び反射鏡36の他に、取付部85が2つずつ反射鏡36の上辺及び下辺夫々の近傍に設けられている。2つの取付部85,85は1つの回動軸84に取付けられている。
【0090】
図20はカバー3の側面断面図である。取付部85は支持柱部851と嵌合部852とによって構成される。支持柱部851は蓋32の後面に立設されている。嵌合部852は、円環の周方向の一部を切除した形状をなし、円環の軸方向が反射鏡36と平行をなすように支持柱部851の先端に固設されている。支持柱部851の前後方向の長さは支持柱部351よりも長い。
【0091】
嵌合部852において、切除部分は、中心に対して、支持柱部851との境界面の反対側に位置する。嵌合部852の内径は回動軸84の外径と略同じである。嵌合部852が回動軸84に嵌合することによって、蓋32が回動軸84に取付けられる。
【0092】
実施の形態2に係るプロジェクタにあっては、回動軸34,34,84,84が開口31に、取付部35,35,35,35,85,85,85,85が反射鏡36の周縁部に設けられている。従って、反射鏡36は、回動軸34,34,84,84夫々の軸回りに回動し、左方向、左斜め前方向、右斜め前方向、及び右方向の他に上方向、前方の斜め上方向、前方の斜め下方向、及び下方向に画像を投射することができる。
【0093】
なお、蓋32を回動する構成は回動軸34,84を設ける構成に限定されない。例えば、開口31の縁部分にヒンジを設けてもよい。また、回動軸34,84の軸方向は開口31の左右方向又は上下方向に限定されない。例えば、開口31の短辺から長辺に渡る回動軸を設けてもよい。
【0094】
また、嵌合部352,852の構成は円環の周方向の一部を切除した形状に限定されない。嵌合部352,852は回動軸34,84に着脱可能及び回動可能に取付けられる構成であればよい。また、反射鏡36を有する蓋32を枢支する回動軸は2つ又は4つに限定されない。1つ、3つ、又は5つ以上の回動軸が設けられてもよい。
【符号の説明】
【0095】
1 プロジェクタ
10 箱体
2 投射レンズ
3 カバー
31 開口
32 蓋
34,84 回動軸
35,85 取付部
351,851 支持柱部
352,852 嵌合部
36 反射鏡
38 突起
39 凹部
71 検出部
72 反転部
73 受付部
74 記憶部
75 再現部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を投射するために箱体に設けられた投射レンズと、該投射レンズを遮蔽する遮蔽位置及び露出させる露出位置の間を移動可能なカバーとを備えるプロジェクタにおいて、
前記カバーは、
前記遮蔽位置にある場合に前記投射レンズに対向する開口と、
該開口に前記箱体の内外方向への回動を可能に配され、投射された画像を反射する反射鏡と
を有すること
を特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記カバーは、更に、
前記開口の周縁間に渡され、前記反射鏡を枢支する回動軸
を有すること
を特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記カバーは、前記回動軸を複数有し、
前記反射鏡は、複数の前記回動軸夫々に着脱可能及び回動可能に取付けられる複数の取付部を有すること
を特徴とする請求項2に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記取付部は、
前記反射鏡の周縁部に突設され、前記反射鏡を支持する支持柱部と、
円環の周方向の一部を切除した形状をなし、前記円環の軸方向が前記反射鏡と平行をなすように前記支持柱部の先端に設けられ、前記回動軸に嵌合する嵌合部と
を有すること
を特徴とする請求項3に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記嵌合部の内周面に設けられた少なくとも1つの突起と、
前記回動軸における前記嵌合部が嵌合する周面に周設され、前記突起と係合する複数の凹部と
を有すること
を特徴とする請求項4に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記開口及び反射鏡は矩形状をなし、
前記カバーは前記回動軸を2つ有し、
前記回動軸は、共に前記開口の短手方向又は長手方向に渡されていること
を特徴とする請求項2から請求項5のいずれか1つに記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記開口が開放されているか否かを検出する検出部と、
該検出部が開放されていると検出した場合に、前記投射レンズから投射される画像を鏡像反転する反転部と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のプロジェクタ。
【請求項8】
前記反射鏡によって反射され、台形状に歪んだ画像を補正する操作を受け付ける受付部と、
前記受付部が受け付けた操作を記憶する記憶部と、
前記開口が開放されているか否かを検出する検出部と、
前記検出部が開放されていると検出した場合に前記記憶部が記憶している操作を再現する再現部と
を備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−37674(P2012−37674A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−176674(P2010−176674)
【出願日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】