説明

プロセスチーズ類の連続式乳化方法及びその装置並びにプロセスチーズ類の連続式製造方法及びその装置

本発明の目的は、オンラインで正確に測定された粘度が得られるとともに製造条件を自動制御し得るプロセスチーズ類の連続式乳化方法及びその装置、並びに連続式製造方法及びその装置を提供することにある。本発明は、プロセスチーズ類の原料を所定背圧が付与された容器3にて加熱するとともに撹拌子4により任意の撹拌強度で撹拌乳化して加熱処理し、保持配管7中に所定の時間流しながら保持した後冷却し、成型・充填してプロセスチーズ類製品13を取得する方法において、保持している間の又は冷却した後のプロセスチーズ類に対して振動式粘度計10の振動子を当該プロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、振動子により検出した検出値が予め設定した目標値に近づくように撹拌子の撹拌強度及び/又は容器内の背圧を調節し、もって保持している間の又は冷却した後のプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御しつつ製造する連続式製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、プロセスチーズ類を連続式で加熱乳化する方法及びその装置、並びにプロセスチーズ類を連続式で製造する方法及びその装置に関する。
本発明において、「プロセスチーズ類」との用語は、乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令[昭和26年12月27日厚生省令第52号])において定義されるプロセスチーズの他に、例えば、チーズフード、チーズを主原料とする食品等のように、チーズを含有する食品であってプロセスチーズと同様に加熱乳化する製造方法によって製造されるものも包含される。ただし、乳等省令で定義される所のプロセスチーズが最も好適である。
本願は、2003年7月10日に出願された特願2003−273068号に対し優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
プロセスチーズは、ナチュラルチーズ等のチーズ原料を粉砕し、加熱溶融し、乳化して製造される(乳等省令における定義)。プロセスチーズ類の連続式製造方法は、これらの工程を連続的に行う。
プロセスチーズの連続製造方法として、a)チーズ製品を製造するために必要な出発材料から実質的に均質な液体調製物流を調製する段階と、b)所望により、液体調製物流を熱処理する段階と、c)所望により、調製物流を粘度調整に適した温度まで冷却する段階と、d)少なくともプロセスの初期に調製物流の全部又は一部を閉鎖循環システムに循環させ、プロセス中に剪断力を加えて液体調製物流の粘度を所望値に調製する段階と、e)調整物流を循環システムから迂回させ、任意の所望の別の処理及び/又は仮貯蔵後に完成品として取り出す段階とを含むチーズ製品の連続製造方法が、例えば、特表平9−502886号公報に提案されている。
また、例えば、特開平11−221016号公報には、電子レンジによる加熱により好ましい流動性を示すプロセスチーズとして、水分を43〜55重量%及び、固形分中に脂肪を50〜75重量%含有し、70℃において500〜1,500cPの粘度(振動式粘度計による測定)を示すプロセスチーズが提案されている。
さらに、前記振動式粘度計に関しては、例えば特公平5−20692号公報、特公平6−25729号公報、特公平8−30674号公報、特許第2622361号公報、および特許第3348162号公報に開示されている。
プロセスチーズ類の製造工程において、溶融したチーズの物性は、原料チーズの種類と熟度、配合、溶融条件、撹拌条件などの様々な要因により変化する。この溶融チーズの粘度は、チーズの溶融後の工程と製品の品質に大きく影響することから、溶融条件を調整して粘度を安定化させることが重要である。一方、溶融チーズの粘度をオンライン計測することは困難であり、従来はオペレーターの目視評価やオフライン粘度計によって溶融チーズの粘度を便宜的に測定することが行われていた。しかし、目視評価では溶融チーズの粘度を測定できず、また製造ラインから溶融チーズを取り出しオフラインで粘度を測定しても、測定までに時間がかかり、測定している間に溶融チーズは次工程に移送されてしまう時間遅れの問題があり、オフライン測定データをもとに製造条件を適切に調整して自動制御することは困難である。
また、様々なオンライン粘度計や、撹拌トルク、送液時の圧力損失等を測定して溶融チーズの粘度を評価することも試みられている。例えば、前記特表平9−502886号公報には、内蔵オンライン測定装置で測定される圧力損失から粘度を推定しており、また前記特開平11−221016号では、振動式粘度計を用い、プローブの先端をプロセスチーズにつけて粘度を測定している。
しかしながら、従来の粘度測定方法のうち、送液時の圧力損失や撹拌トルクの値を基に溶融チーズの粘度を推定する方法では、正確な粘度を計測することは困難である。このような不正確な粘度を基に、製造条件を制御してプロセスチーズ類を製造しても、所望の品質のものが得られない可能性がある(例えば後記比較例参照)。
また、振動子(プローブ)を有するオンライン振動式粘度計を用いて溶融チーズの粘度を測定しようとしても、振動子(プローブ)にチーズが付着してしまい、粘度の計測ができないために、オンラインで溶融チーズの粘度を測定することは困難である。
本発明は前記課題に鑑みてなされ、オンラインで正確に測定された粘度が得られるとともに製造条件を自動制御し得るプロセスチーズ類を連続式で加熱乳化する方法及びその装置、並びにプロセスチーズ類を連続式で製造する方法及びその装置の提供を目的とする。
【発明の開示】
前記目的を達成するために、本発明は、所定背圧を付与した容器内でプロセスチーズ類を加熱するとともに容器に付設した撹拌手段により任意の撹拌強度で撹拌して乳化する加熱工程と、加熱したプロセスチーズ類を配管中に流しながら所定時間保持する保持工程と、保持したプロセスチーズ類を冷却する冷却工程とを連続的に行うプロセスチーズ類の連続式乳化方法において、保持工程におけるプロセスチーズ類又は冷却工程を経たプロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を当該プロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、埋没させた振動子により検出した検出値が予め設定した目標値に近づくように加熱工程における撹拌手段の撹拌強度及び/又は容器内の背圧を調節し、もって前記保持工程における又は冷却工程を経たプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御しつつ乳化処理することを特徴とするプロセスチーズ類の連続式乳化方法を提供する。
本発明のプロセスチーズ類の連続式乳化方法において、プロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を埋没させる際に、前記振動子を予め被覆部材によって被覆することによりプロセスチーズ類と直接接触しない状態にすることが好ましい。
また本発明は、プロセスチーズ類の原料を混練し、混練したプロセスチーズ類の原料を所定背圧が付与された容器に搬送し、容器にてプロセスチーズ類を加熱するとともに容器に付設した撹拌手段により任意の撹拌強度でプロセスチーズ類を撹拌乳化して加熱処理し、加熱処理したプロセスチーズ類を配管中に所定の時間流しながら保持し、保持したプロセスチーズ類を冷却し、冷却したプロセスチーズ類を成型・充填してプロセスチーズ類製品として取得するプロセスチーズ類の製造方法において、保持している間の又は冷却した後のプロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を当該プロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、埋没させた振動子により検出した検出値が予め設定した目標値に近づくように加熱工程における撹拌手段の撹拌強度及び/又は容器内の背圧を調節し、もって前記保持している間の又は冷却した後のプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御しつつ製造することを特徴とするプロセスチーズ類の連続式製造方法を提供する。
本発明のプロセスチーズ類の連続式製造方法において、プロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を埋没させる際に、前記振動子を予め被覆部材によって被覆することによりプロセスチーズ類と直接接触しない状態にすることが好ましい。
また本発明は、プロセスチーズ類を加熱する加熱手段とプロセスチーズ類を任意の撹拌強度で調節可能に撹拌する撹拌手段とを有する加熱装置と、前記加熱装置の出口に先端が接続されるとともに途中に背圧弁が設けられた保持配管と、前記保持配管の末端に接続されるプロセスチーズ類の冷却手段と、前記冷却手段の出口に先端が接続され乳化済のプロセスチーズ類を搬出する搬出配管とを備えたプロセスチーズ類の連続式乳化装置において、前記保持配管又は搬出配管に振動子付きの振動式粘度計を設けるとともに前記振動子を当該保持配管内又は搬出配管内を流れるプロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、埋没させた振動子により検出された検出値を出力する出力線を表示手段、記録手段及び/又は印刷手段に結線したことを特徴とするプロセスチーズ類の連続式乳化装置を提供する。
本発明のプロセスチーズ類の連続式乳化装置において、前記振動子により検出された検出値が予め設定した目標値に近づくように撹拌手段の撹拌強度及び/又は背圧弁の開度を自動制御する制御装置を有することが好ましい。
また前記振動式粘度計の振動子は被覆部材により被覆した構成とするのが好ましい。さらにこの被覆部材はフッ素樹脂製であることが好ましい。
また本発明は、プロセスチーズ類の原料を混練する混練機と、前記プロセスチーズ類の連続式乳化装置と、連続式乳化装置の搬出配管を通して送られるプロセスチーズ類を成型・充填してプロセスチーズ類製品を作製する成型・充填装置とを備えたことを特徴とするプロセスチーズ類の連続式製造装置を提供する。
【図面の簡単な説明】
図1は、本発明に係るプロセスチーズ類の連続式製造装置の一実施形態を示す構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、図面を参照しつつ、本発明の好適な実施例について説明する。ただし、本発明は以下の各実施例に限定されるものではない。
図1は本発明に係るプロセスチーズ類の連続式製造装置1と連続式乳化装置2の一実施形態を示す図である。
この連続式製造装置1は、プロセスチーズ類の原料を混練するオーガスクリュー混練機11と、連続式乳化装置2と、連続式乳化装置2の搬出配管9を通して送られるプロセスチーズ類を成型・充填してプロセスチーズ類製品13を作製する成型・充填装置12とを備えた構成になっている。
前記連続式乳化装置2は、プロセスチーズ類を加熱撹拌する加熱装置5と、この加熱装置5の出口に先端が接続されるとともに途中に背圧弁6が設けられた保持配管7と、この保持配管7の末端に接続される冷却室8(冷却手段)と、この冷却室8の出口に先端が接続され、乳化済のプロセスチーズ類を搬出する搬出配管9と、この搬出配管9に設けられ、搬出配管9内を流れるプロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させた振動子によってプロセスチーズ類の粘度を測定する振動式粘度計10と、この振動式粘度計10の振動子により検出された検出値が予め設定した目標値に近づくように、前記加熱装置5の撹拌用のインバータ付モータ19の出力と背圧弁6の開度とを自動制御する制御装置36とを主要な構成要素として備えて構成されている。
前記オーガスクリュー混練機11は、原料の投入口と混練物の搬出口を有する本体内に、モータ14により回転駆動するスクリューを設けてなり、モータ14を駆動させて投入口から各種のチーズ原料を所定量投入することにより、チーズ原料を混練しながら排出口に移送し、各チーズ原料が均一に分散された混練物を連続的に供給できるようになっている。その搬出口付近には圧力計15が設けられている。搬出口から取り出されるチーズ原料は、定量ポンプ16により連続式乳化装置2の加熱装置5内に供給される。この定量ポンプ16から加熱装置5までの管路には圧力計17,18が設けられている。
連続式乳化装置2の加熱装置5は、背圧弁6によって背圧をかけることにより内部を加圧可能な容器3と、この容器3内に回転可能に設けられた撹拌子4(撹拌手段)と、この撹拌子4を回転駆動させるインバータ付モータ19と、調節弁21と圧力計22とを有する蒸気供給配管を通して容器3内に蒸気を供給する蒸気源20とを備えて構成されている。容器3内に配置された撹拌子4を回転駆動させるインバータ付モータ19は、制御装置36に結線され、制御装置36からの出力信号によって撹拌子4の回転数を制御できるようになっている。
なお本発明において、プロセスチーズ類を加熱するために熱を供給する方法は如何なるものでもよい。一般に連続式乳化装置は、加熱の方法によって、直接式、間接式に大別される。直接式は、チーズに対して蒸気を吹き込んで加熱し、冷却室8において沸騰させて蒸気を抜くとともに冷却させる。間接式は、熱交換機を使用し、伝熱壁を介してチーズを加熱、冷却する。なお、この場合の熱交換機としては、プレート式熱交換機、チューブ式熱交換機、掻き取り式熱交換機、その他を例示することができる。本実施形態にあっては、連続式乳化装置2の加熱装置5として、プロセスチーズ類が入った容器3内に蒸気を吹き込んで直接加熱する方式を例示している。なお、図1にあっては、容器3については、前後の配管よりも径が大きいタンク形状の容器を図示しているが、このような容器3は、配管と同一の径、または配管よりも小さい径であってもよい。すなわち、単なる配管に蒸気を吹き込んで直接加熱する態様も、本発明の加熱装置5の範囲に包含される。
加熱装置5内で加熱、撹拌したプロセスチーズ類を冷却室8に送る保持配管7には、背圧弁6と、その上流側に温度計23,25および圧力計24とが設けられている。背圧弁6は、制御装置36からの信号によってその開度が調節され、これによって加熱装置5の容器3に加わる背圧を調節できるようになっている。
前記冷却室8は、保持配管7を通して送られるプロセスチーズ類を減圧雰囲気の室内に入れ、水分を蒸発せしめてプロセスチーズ類を冷却するフラッシュベッセルなどの沸騰蒸発式の冷却手段が採用されている。なお、加熱方式が間接式である場合は、冷却手段として熱交換機などが採用される。
冷却室8の底部には、冷却されたプロセスチーズ類を搬出するための搬出配管9の一端が接続されている。この搬出配管9には、温度計28と定量ポンプ27と振動式粘度計10とフィルタ35とが設けられている。また冷却室8の頂部には、冷却室8内を減圧雰囲気に保つ減圧排気系29が接続されている。この減圧排気系29は、吸引ポンプ34と、冷却室8の頂部と吸引ポンプ34とをつなぐ管路に設けられた圧力計26と、一端が空気源31と通じる圧力調整弁30と、冷却室8より排気された蒸気を凝縮するコンデンサー32とを備えて構成されている。コンデンサー32には冷却水供給管路33が接続されている。
前記搬出配管9に設けられた振動式粘度計10は、搬出配管9内にプロセスチーズ類と直接接触しない状態で埋没した振動子を有し、この振動子を介してプロセスチーズ類の粘度を測定可能なものが用いられる。この振動式粘度計10の基本構成及び測定原理等は、例えば前述した特公平5−20692号公報、特公平6−25729号公報、特公平8−30674号公報、特許第2622361号公報、および特許第3348162号公報に開示されている。ただし、このような振動式粘度計10を用いて、オンラインで溶融状態のプロセスチーズ類の粘度を直接測定しようとしても、振動子にプロセスチーズ類が付着してしまい、粘度の計測ができない。そこで本発明では、振動子をポリ四フッ化エチレンなどのフッ素樹脂で被覆して、プロセスチーズ類が振動子に直接接触することを防止し、これによって振動子に対するプロセスチーズ類の付着を防止し、粘度の測定を可能にした。
前記振動子をフッ素樹脂からなる被覆材で被覆する方法としては、振動子に対してフッ素樹脂の薄膜(被覆材)をコーティングする方法と、振動子をフッ素樹脂製の型枠(被覆材)に収納する方法とがある。前者の場合、簡便であるが、長期間使用しているうちにフッ素樹脂薄膜が剥離してしまう可能性があるため、耐久性の点では後者の方法が好ましい。
この振動式粘度計10では、原理的に密度×粘度の値が計測される。チーズの密度は、時間によって大幅に変動することがないので、この振動式粘度計10による測定は、プロセスチーズ類の粘度を測定しているに等しい。また、密度の値を別途オフラインで計測しておくか、別なオンラインの密度計によって計測し、粘度の正確な値を算出することも可能である。
前記制御装置36は、中央演算装置(CPU)、ハードディスクドライブなどの記憶装置、キーボードなどの入力手段、モニター等の表示手段などを備えたコンピュータとすることができる。この制御装置36には前記振動式粘度計10の出力線が結線され、また加熱装置5のインバータ付モータ19と、保持配管7の背圧弁6との一方または両方を制御するために、それらと制御装置36とが結線されている。振動粘度計10の出力は制御装置36に入力され、制御装置36に付設したモニター等の表示手段によりチェックできるようになっている。
前記成型・充填装置12は、製造するプロセスチーズ類製品13の大きさ(内容量)や形状、包装形態などに応じて、従来よりプロセスチーズ製造において用いられている各種の成型・充填装置を用いることができる。
なお、図1においては、振動式粘度計10を搬出配管9に設けた態様を例示しているが、振動式粘度計10は、保持配管7に設けてもよく、この場合でも全く同様にプロセスチーズ類の粘度を測定することが可能である。ただし、保持配管7は高温になるため、どちらかといえば、振動式粘度計10は、搬出配管9に設けることが好ましい。
次に、本発明に係るプロセスチーズ類の連続式乳化方法及び連続式製造方法を説明する。本発明に係るプロセスチーズ類の連続式乳化方法は、連続式製造方法の主要な工程であり、この連続式乳化方法は、所定背圧を付与した容器3内でプロセスチーズ類を加熱、撹拌して乳化する加熱工程と、加熱したプロセスチーズ類を保持配管7中に流しながら所定時間保持する保持工程と、保持したプロセスチーズ類を冷却する冷却工程とを連続的に行ってプロセスチーズ類を製造する方法である。また連続式製造方法は、前記連続式乳化方法の各工程に加え、プロセスチーズ類の原料を混練し、混練したプロセスチーズ類の原料を容器3に搬送する工程と、連続式乳化方法によって得られたプロセスチーズ類を成型・充填してプロセスチーズ類製品13として取得する工程とを含んでいる。本発明に係るプロセスチーズ類の連続式製造方法は、図1に示す連続式製造装置1によって好適に実施できる。
プロセスチーズ類の原料は、オーガスクリュー混練器11の投入口から投入され、このオーガスクリュー混練器11内で均一に分散される。この原料としては、従来よりプロセスチーズの製造において用いられる原料が使用でき、例えば、原料チーズ、水、再製チーズ、pH調整剤、脂肪原料、乳たんぱく質原料、香辛料、ナッツ類、調味食品、香料、着色料、保存料、安定剤、乳化剤などが挙げられる。原料チーズとしては、チェダーチーズ、ゴーダチーズ、エメンタールチーズなどの半硬質または硬質チーズ、クリームチーズ、ブルーチーズ、カマンベールチーズなどの軟質チーズなどの中から適宜選択し、必要に応じて複数種類を組み合わせて使用することができる。
混練された原料は、定量ポンプ16によって加熱装置5の容器3に送り、所定圧力を付与した容器3内で加熱溶融するとともに、容器3内の撹拌子4によって任意の撹拌強度で撹拌し乳化する。この加熱工程の条件は、原料チーズの種類、原料の配合割合、水分量などに応じて適宜設定され、通常は加熱温度が70〜140℃、容器内圧力(背圧)が0〜500kPa、撹拌子の回転数が300〜1,500rpmの範囲とされる。
容器3内で乳化されたプロセスチーズ類は、保持配管7を通して所定時間保持された後、減圧されている冷却室8に送られる。冷却室8において、プロセスチーズ類中の水分の一部が蒸発し、品温が低下する。保持配管7での保持時間は、通常2〜30秒程度とする。また冷却室8の圧力は通常0〜−70kPa程度とする。冷却室8の頂部から排出された水分は、コンデンサー32において凝縮させ、排出される。冷却室8の底部から取り出されたプロセスチーズ類は、定量ポンプ27を経て搬出配管9を通り、フィルタ35に送られる途中で振動式粘度計10の振動子の被覆材と接し、粘度が測定される。この振動式粘度計10の出力は制御装置36に送られる。
振動式粘度計10において粘度を測定した後、プロセスチーズ類はフィルタ35を通して成型・充填装置12に送られる。この成型・充填装置12において、プロセスチーズ類は、目的の形状、大きさ(内容量)に成型され、目的の包装形態に包装され、プロセスチーズ類製品13とされる。
なお、本発明の方法では、振動式粘度計10は、搬出配管9に設けてもよく、また保持配管7に設けてもよい。振動式粘度計10を搬出配管9設けた場合には、振動式粘度計10は、プロセスチーズ類が冷却室8によって冷却された後の(すなわち冷却工程を経た)粘度を測定することになる。また、振動式粘度計10を保持配管7に設けた場合には、振動式粘度計10は、プロセスチーズ類が冷却室8によって冷却される前、すなわち、プロセスチーズ類を保持している間の(保持工程における)粘度を測定することになる。
ただし、前記したように保持配管7は高温になるため、熱の影響を考慮すれば、本発明においては、振動式粘度計10を搬出配管9に設け、冷却室8によって冷却された後(すなわち冷却工程を経た後)におけるプロセスチーズ類に対して粘度を測定することが好ましい。
本発明の方法では、保持配管7内又は搬出配管9内にプロセスチーズ類と直接接触しない状態で埋没された振動子を有する振動式粘度計10を設け、保持配管7又は搬出配管9を通って送られるプロセスチーズ類の粘度をオンラインで正確に測定することができる。
振動式粘度計10の検出値は、制御装置36に送られ、この制御装置36に付設されたモニター等の表示手段で表示され、作業者が粘度変化をモニタリングすることができる。この検出値は、振動式粘度計10から送られる検出値を演算して算出されるプロセスチーズ類の粘度でもよいし、振動式粘度計10から送られる検出値(密度と粘度との積の値)でもよい。また検出値を目標値と比較する場合、前者の場合は目標値を粘度とし、後者の場合は密度×粘度の値を目標値として予め最適な目標値を求めておく。この目標値は制御装置36に付設されたハードディスクドライブなどの記録手段に変更可能に記録しておくことができる。また検出値は、この記録手段に記録しておくことができる他、制御装置36に接続されたプリンタ等の印刷手段により印刷することもできる。
そして前記検出値を目標値と比較し、この検出値が目標値と等しくなるように、加熱装置5のインバータ付モータ19の回転数の調節及び/又は背圧弁6の開度を調節し、プロセスチーズ類の粘度が目標値に近づくようにする。なお、「目標値に近づくように」とは、検出値を目標値と等しくすること以外に、二つの目標値を設定し、検出値がそれらの間に範囲に入るように制御する態様も包含される。
この粘度の検出値を基にしたインバータ付モータ19の回転数の調節及び/又は背圧弁6の開度の調節は、制御装置36による自動制御方式が望ましい。自動制御する場合、制御装置36に入力された振動式粘度計の出力をもとに、演算により加熱装置5の撹拌子4の回転数を制御する。この場合、インバータ付モータ19の回転数を上げると(撹拌強度を強めると)、プロセスチーズ類は硬くなり、回転数を下げると(撹拌強度を弱めると)プロセスチーズ類は軟らかくなる。この撹拌子4の回転数の制御に代えて、またはそれと同時に、背圧弁6の開度を調整して容器3内の背圧を制御することによってプロセスチーズ類の固さを制御することも可能である。この場合、背圧を上げるとプロセスチーズ類は硬くなり、背圧を下げるとプロセスチーズ類は軟らかくなる。ただし、一般に背圧は殺菌温度に影響を与えるため、背圧を急激に上下させると殺菌温度の制御の観点からは外乱要因となり得る。このため、背圧の調節は、ゆっくりと行う必要がある。従って、この制御装置36による望ましい制御の態様は、振動式粘度計10の出力に応じて撹拌子4の回転数を制御し、それに加えて補助的に背圧の調節を行うことが望ましい。
本発明によれば、プロセスチーズ類を保持する配管又は搬出する配管に振動式粘度計10の振動子を当該プロセスチーズ類に直接接触させない状態で埋没配置したことによって、溶融チーズが振動子に付着して測定が妨げられることがなく、溶融チーズの粘度をオンラインで正確に計測できる。
また、溶融チーズの粘度をオンラインで正確に計測できるので、保持工程におけるプロセスチーズ類又は冷却工程を経たプロセスチーズ類の粘度をリアルタイムで検出し、製造条件を適切に調整することが可能となり、オフライン粘度測定の場合における時間遅れの問題を解消でき、プロセスチーズ類の粘度及び品質を安定化させることができる。
またオンラインで正確に計測された検出値が予め設定した目標値に近づくように撹拌子4の撹拌強度及び/又は容器3内の背圧を調節し、保持工程における又は冷却工程を経たプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御することで、常に目標値の粘度をもったプロセスチーズ類を製造でき、プロセスチーズ類の粘度及び品質をより安定化させることができる。
なお、前記の実施態様においては、蒸気をチーズに直接吹き込んで加熱する直接加熱式の乳化装置を例示しているが、これは、伝熱壁を介してチーズを加熱冷却する間接加熱式の乳化装置であっても、同様に実施可能である。すなわち、間接加熱式乳化装置の場合には加熱装置に直接式と同様に撹拌子が備えられているため、この撹拌子の回転数を制御すればよく、また加熱装置の下流側に設けられている弁によって背圧を調節すればよい。
以下、実施例および比較例を参照して本発明をより詳細に説明する。
【実施例】
図1に示す連続式製造装置を用いて、プロセスチーズの製造を実施した。
オーストラリア産チェダーチーズ57質量部、ニュージーランド産チェダーチーズ28質量部、リン酸ナトリウム2.1質量部、および添加水12.9質量部を混練機に投入し、各成分が均一になるように5〜10分間混練した。
混練した原料を加熱装置に送り、加熱温度85℃、背圧(初期目標値)75kPa、撹拌子回転数700rpmの条件で乳化した。
乳化したプロセスチーズは冷却室に送り、−50kPaの減圧雰囲気下、80℃に冷却した。その後、搬出配管でプロセスチーズを搬出する途中、振動式粘度計(CBCマテリアルズ社製、FMV80A−PST型)で粘度を測定した。ただし、振動式粘度計の振動子はポリ四フッ化エチレン(「テフロン」:登録商標)の型枠に収納したものを用いた。
この粘度計は捩れ振動式であるため、密度×粘度の値を測定して表示する。予備試験の結果、プロセスチーズの溶融後の目標値を2,300とした。振動式粘度計で測定される検出値が前記目標値に近づくように、撹拌子回転駆動用のインバータ付モータの回転数と、背圧弁の開度を自動制御した。初期設定は、このモータの回転数が700rpm、背圧が75kPaでスタートした。5分後、加熱装置が安定稼働状態になった後、自動制御を開始した。目標値と検出値が一致していない場合、制御はまず回転数を変更し、変更可能な範囲内で検出値が目標値にならない場合には、背圧の変更を行い、検出値が目標値になるように調節した。
密度×粘度の検出値が目標値よりも大きい場合には、過乳化の状態であり、回転数を下げることで検出値が小さくなり、適切な乳化が回復する。密度×粘度の検出値が目標値よりも小さい場合には、乳化不足で固形分の混合溶融が進んでいないため、回転数を上げて乳化を進行させる。この回転数の可変範囲は500から800rpmとした。この回転数の可変範囲で検出値が目標値にならない場合には、背圧の調節を行った。密度×粘度の検出値が目標値よりも大きい場合には、背圧が高くて硬い乳化溶融状態となっているため、圧力を下げて適切な乳化を回復させる。密度×粘度の検出値が目標値よりも小さい場合には、チーズ分の加熱にムラが発生して均一に進行していないため、乳化不足が発生しており、背圧を上げて均一加熱を進行させて検出値が目標値となるように制御した。この背圧の可変範囲は50kPaから100kPaとした。なお、背圧の値は、圧力計24によって測定されており、背圧の値はオンラインで制御装置36に入力される。
この自動制御を行いながらプロセスチーズを連続的に製造した結果、密度×粘度の検出値が2,300±100以内である、極めて安定した物性のプロセスチーズが製造できた。
比較例
振動式粘度計に代えて、差圧計測によって粘度を評価する方法を試験した。
図1に示す連続式製造装置において、冷却室の側壁に、縦方向に2個の孔を開け、この孔に内径10mmのパイプの両端を取り付け、縦方向にバイパスラインとポンプを設置した。このバイパスラインの二箇所に圧力計を取り付け、差圧を検出し、冷却室内部のチーズの粘性を評価した。
しかしながら、運転中の差圧の変動が大きく、差圧は一定した値を示すことがなく、チーズの粘性のモニタリング用には不向きであった。また、この差圧を自動制御に利用することも不可能であった。
【産業上の利用の可能性】
本発明によれば、プロセスチーズ類を保持する配管又は搬出する配管に振動式粘度計の振動子を直接接触しない状態で埋没配置したことによって、溶融チーズが振動子に付着して測定が妨げられることがなく、溶融チーズの粘度をオンラインで正確に計測できる。なお、直接接触しない状態の具体例としては、振動子とプロセスチーズ類とを、被覆部材を介して間接的に接触させる状態であることが好ましい。
また、溶融チーズの粘度をオンラインで正確に計測できるので、保持工程におけるプロセスチーズ類又は冷却工程を経たプロセスチーズ類の粘度をリアルタイムで検出し、製造条件を適切に調整することが可能となり、オフライン粘度測定の場合における時間遅れの問題を解消でき、プロセスチーズ類の粘度及び品質を安定化させることができる。
またオンラインで正確に計測された検出値が予め設定した目標値に近づくように撹拌子の撹拌強度及び/又は容器内の背圧を調節し、保持工程における又は冷却工程を経たプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御することで、常に目標値の粘度をもったプロセスチーズ類を製造でき、プロセスチーズ類の粘度及び品質をより安定化させることができる。
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定背圧を付与した容器内でプロセスチーズ類を加熱するとともに容器に付設した撹拌手段により任意の撹拌強度で撹拌して乳化する加熱工程と、加熱したプロセスチーズ類を配管中に流しながら所定時間保持する保持工程と、保持したプロセスチーズ類を冷却する冷却工程とを連続的に行うプロセスチーズ類の連続式乳化方法において、
保持工程におけるプロセスチーズ類又は冷却工程を経たプロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を当該プロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、埋没させた振動子により検出した検出値が予め設定した目標値に近づくように加熱工程における撹拌手段の撹拌強度及び/又は容器内の背圧を調節し、もって前記保持工程における又は冷却工程を経たプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御しつつ乳化処理することを特徴とするプロセスチーズ類の連続式乳化方法。
【請求項2】
プロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を埋没させる際に、前記振動子を予め被覆部材によって被覆することによりプロセスチーズ類と直接接触しない状態にする請求項1に記載のプロセスチーズ類の連続式乳化方法。
【請求項3】
プロセスチーズ類の原料を混練し、混練したプロセスチーズ類の原料を所定背圧が付与された容器に搬送し、容器にてプロセスチーズ類を加熱するとともに容器に付設した撹拌手段により任意の撹拌強度でプロセスチーズ類を撹拌乳化して加熱処理し、加熱処理したプロセスチーズ類を配管中に所定の時間流しながら保持し、保持したプロセスチーズ類を冷却し、冷却したプロセスチーズ類を成型・充填してプロセスチーズ類製品として取得するプロセスチーズ類の製造方法において、
保持している間の又は冷却した後のプロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を当該プロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、埋没させた振動子により検出した検出値が予め設定した目標値に近づくように加熱工程における撹拌手段の撹拌強度及び/又は容器内の背圧を調節し、もって前記保持している間の又は冷却した後のプロセスチーズ類の粘度が目標の粘度に近づくように自動制御しつつ製造することを特徴とするプロセスチーズ類の連続式製造方法。
【請求項4】
プロセスチーズ類に対して振動式粘度計の振動子を埋没させる際に、前記振動子を予め被覆部材によって被覆することによりプロセスチーズ類と直接接触しない状態にする請求項3に記載のプロセスチーズ類の連続式製造方法。
【請求項5】
プロセスチーズ類を加熱する加熱手段とプロセスチーズ類を任意の撹拌強度で調節可能に撹拌する撹拌手段とを有する加熱装置と、前記加熱装置の出口に先端が接続されるとともに途中に背圧弁が設けられた保持配管と、前記保持配管の末端に接続されるプロセスチーズ類の冷却手段と、前記冷却手段の出口に先端が接続され乳化済のプロセスチーズ類を搬出する搬出配管とを備えたプロセスチーズ類の連続式乳化装置において、
前記保持配管又は搬出配管に振動子付きの振動式粘度計を設けるとともに前記振動子を当該保持配管内又は搬出配管内を流れるプロセスチーズ類に直接接触しない状態で埋没させ、埋没させた振動子により検出された検出値を出力する出力線を表示手段、記録手段及び/又は印刷手段に結線したことを特徴とするプロセスチーズ類の連続式乳化装置。
【請求項6】
前記振動子により検出された検出値が予め設定した目標値に近づくように撹拌手段の撹拌強度及び/又は背圧弁の開度を自動制御する制御装置を有する請求項5に記載のプロセスチーズ類の連続式乳化装置。
【請求項7】
前記振動式粘度計の振動子が被覆部材により被覆された請求項5又は6に記載のプロセスチーズ類の連続式乳化装置。
【請求項8】
前記被覆部材がフッ素樹脂製である請求項7に記載のプロセスチーズ類の連続式乳化装置。
【請求項9】
プロセスチーズ類の原料を混練する混練機と、請求項5〜8のいずれかに記載のプロセスチーズ類の連続式乳化装置と、連続式乳化装置の搬出配管を通して送られるプロセスチーズ類を成型・充填してプロセスチーズ類製品を作製する成型・充填装置とを備えたことを特徴とするプロセスチーズ類の連続式製造装置。

【国際公開番号】WO2005/004617
【国際公開日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【発行日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−511553(P2005−511553)
【国際出願番号】PCT/JP2004/009869
【国際出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】