説明

プロセス制御装置およびプロセス制御方法

【課題】同一の箇所を複数台の機器で制御する場合の機器操作性、制御性および信頼性を向上させたプロセス制御装置を提供する。
【解決手段】プロセス制御装置1Aは、複数に並列接続された制御手段21A,22A,・・・,2nAを備え、同一箇所のプロセス量を制御するように構成されており、制御手段21A,22A,・・・,2nAは、主従選択要求に基づいて、プロセス量の制御を行う一の主制御手段21Aを選択し、その他残りを従制御手段22A,・・・,2nAとする主従選択手段81A,82A,・・・,8nAを備え、従制御手段22A,・・・,2nAは、主従選択手段81A,82A,・・・,8nAが選択した主制御手段21Aの出力を自己の出力として採用するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセス量を制御する装置および方法に係り、特に、同一の箇所を複数台の機器で制御する場合におけるプロセス量設定の操作性および制御性を向上させたプロセス制御装置およびプロセス制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数台の制御装置にて制御対象プロセス量を制御する技術は、例えば、特開平8−249057(特許文献1)に開示される。このような従来の制御装置を適用して、同一の箇所の制御対象プロセス量を制御する場合、制御装置毎に制御対象プロセス量を検知し、検知したプロセス量と設定されたプロセス量(プロセス量設定値)との比較を行い、制御対象となるプロセス量が要求を満たすような制御を制御装置毎に行う。
【特許文献1】特開平8−249057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来技術では、複数の制御装置の各々が同一のプロセス量設定値を持つためには、一の制御装置でプロセス量設定値を増減操作すると同時に他の制御装置のプロセス量設定値も手動にて増減操作しなければならず、操作性と制御性が良くないという課題がある。このような課題によって当該制御装置の運転員には負荷が過大となっている。
【0004】
本発明は、上述した課題を考慮してなされたものであり、同一の箇所を複数台の機器で制御する場合、プロセス量設定の操作性、制御性および信頼性を向上させ、運転員の負荷を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るプロセス制御装置は、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載したように、複数の制御手段を並列的に接続して備えており、同一箇所のプロセス量を制御するように構成されたプロセス制御装置において、前記制御手段は、前記複数の制御手段のうち、主従選択要求に基づいて、プロセス量の制御を行う一の主制御手段を選択し、その他残りを従制御手段とする主従選択手段を備え、前記従制御手段は、主従選択手段が主制御手段として選択した制御手段の出力を自己の出力として採用するように構成されたことを特徴とする。
【0006】
本発明に係るプロセス制御方法は、上述した課題を解決するため、特許請求の範囲に記載したように、並列的に接続された複数の制御手段によって同一箇所のプロセス量を制御するプロセス制御方法であって、前記複数の制御手段のうち、主従切換要求に基づいて、プロセス量の制御を行う一の主制御手段を選択するステップと、前記主状態選択ステップで主制御手段として選択されなかった残り全ての制御手段を従制御手段として選択するステップと、前記従状態選択ステップで選択された従制御手段が、前記主状態選択ステップで選択された制御手段の出力を自己の出力として採用するステップとを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、同一の箇所を複数台の機器で制御する場合において、プロセス量設定の操作を1台で行うと、他の機器でも操作を行った1台と同じプロセス量設定値を自動的に採用することができる。これにより、従来のプロセス制御装置およびプロセス制御方法に比べて、制御装置の制御性および信頼性を向上し、運転員の操作負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明に係るプロセス制御装置1について添付の図面を参照して説明する。
【0009】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプロセス制御装置1A(本発明に係るプロセス制御装置1の一実施例)の構成を概略的に示した概略図である。
【0010】
図1に示されるように、プロセス制御装置1Aは、同一箇所においてセンサ10から取得される制御対象プロセス量Pを制御する制御手段としてのn(nは2以上の任意の自然数)の制御部、すなわち、第1の制御部21A、第2の制御部22A、・・・および第nの制御部2nA(制御部21,22,・・・,2nの一実施例)を備える。各制御部21A,・・・,2nAは、並列的に接続されており、それぞれ操作端E1,・・・,Enへ操作指令を出力することで制御対象プロセス量Pを制御する。
【0011】
各制御部21A,・・・,2nAには、主従関係があり、任意に1の制御部を主制御部として選択されると、その他の制御部は従制御部として自動的に選択される。例えば、プロセス制御装置1Aを運転する運転員が第1の制御部21Aで操作を行うことによって第1の制御部21Aを主制御部として選択すると、その他の制御部22A,・・・,2nAは従制御部となって主制御部21Aでの制御方針に従った制御を実行する。尚、図1に示される、各制御部21A,22A,・・・,2nAの構成は、実質的には同一の構成につき、第1の制御部21Aを例にその構成を説明する。
【0012】
第1の制御部21Aは、プロセス量設定増減指令入力器31と、プロセス量設定手段としてのプロセス量設定・切換器41と、差分演算器51と、乗算器61と、積分制御器71と、主従切換選択手段としての主従選択器81Aを備える。積分制御器71からの出力信号(操作指令)Dbは、操作端E1に送られる。
【0013】
プロセス量設定手段としてのプロセス量設定増減指令入力器31は、プロセス量の増減指令値の入力を受け付けて、入力されたプロセス量増減指令値を表す信号(以下、プロセス量増減指令値信号とする)Sa1を出力する。プロセス量設定増減指令入力器31から出力されたプロセス量増減指令値信号Sa1は、プロセス量・設定切換器41に入力される。
【0014】
プロセス量設定手段としてのプロセス量設定・切換器41は、現在のプロセス量に入力されたプロセス量増減指令値を加味したプロセス量を設定し当該プロセス量を表す信号(以下、プロセス量信号とする)Daを出力する機能を有する。また、プロセス量設定・切換器41は、主従選択器81Aから送られた主従状態を表す信号(以下、主従状態信号とする)Sb1に基づいて出力する信号を切り換える機能を有する。プロセス量設定・切換器41は、これらの機能を用いてプロセス量信号Daを他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nと後段の差分演算器51へ出力する。
【0015】
差分演算器51は、前段のプロセス量設定・切換器41から入力されるプロセス量信号Daが表すプロセス量とセンサ10から入力される取得制御対象プロセス量Pとの差分を計算する。そして、計算後のプロセス量を乗算器61へ出力する。乗算器61は、制御ゲインを乗算する機器である。乗算器61は、比例制御を行う機器であり、差分演算器51からの出力に対して事前設定された制御ゲインを乗算し、乗算結果を積分制御器71へ出力する。
【0016】
積分制御器71は、積分制御を行う機器であり、乗算器61からの入力に基づき操作指令を表す信号Dbを生成し操作端Enに対して出力する。
【0017】
主従選択器81Aは、プロセス制御装置1Aが備える各制御部21,22,・・・2nの主従を選択する機能(主従選択機能)を有する。運転員が増減させたいプロセス量を入力する操作をプロセス量設定増減指令入力器31から行う場合、運転員は入力操作を行う前に、主従選択器81Aを介してプロセス量設定増減指令入力器31が属する第1の制御部21を「主」に切り換える操作を行う。
【0018】
主従選択器81Aは、運転員の「主」への切り換える操作を受け付けると、主従選択機能を用いて、第1の制御部21を主制御部として選択する。そして、現在の選択状態、すなわち、「主」を選択した状態を示す信号Sb1をプロセス量設定・切換器41および他の主従選択器82A,・・・,8nAへ送信する。この時、主従選択器81Aから「主」を選択した状態を示す信号Sb1を受信した他の主従選択器82A,・・・,8nAは、選択状態を「従」に切り換えを行う。
【0019】
ここで、プロセス量設定・切換器41について、図2を引用し、より詳細な構成および作用を説明する。
【0020】
図2は、図1に示されるプロセス量設定・切換器41のより詳細な構成を概略的に表した概略図である。
【0021】
図2に示されるように、プロセス量設定・切換器41は、前段のプロセス量設定増減指令入力器31から入力された増減量を加味してプロセス量を設定するプロセス量設定部91と、主従選択器81A(図1を参照)から入力される主従の選択状態を表す信号Sb1に基づき、他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nから入力される複数の信号から1の信号を選択して出力する信号切換部92とを有する。
【0022】
プロセス量設定部91は、メモリ機能を有しており、現在のプロセス量の値を記憶している。プロセス量設定部91は、プロセス量設定増減指令入力器31からプロセス量増減指令値信号Sa1が入力されると、記憶しているプロセス量に信号Sa1が表す増減量を加減演算して得られたプロセス量を新たなプロセス量として記憶し、新たなプロセス量を信号切換部92へ出力する。
【0023】
信号切換部92は、主従選択器81A(図1を参照)から入力される主従の選択状態を表す信号Sb1に基づき、他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nから入力される複数の信号から1の信号を選択して他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nおよび差分演算器51へプロセス量信号Daを出力する。
【0024】
受信した信号Sb1が主の状態を表している場合には、プロセス量設定部91からの入力を出力するように信号経路を切り換える。逆に、受信した信号Sb1が従の状態を表している場合には、入力された他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nの各入力のうち、他と比較して異なるプロセス量を表す入力信号を出力するように信号経路を切り換える。これは、主となった制御部のプロセス量設定・切換器から出力されたプロセス量信号Daは、運転員の増減指令を反映しているので、運転員の増減指令が反映されていない他のプロセス量信号が表すプロセス量とは異なるプロセス量を表す信号となっているためである。
【0025】
次に、図1に示されるように構成される制御部21A,22A,・・・,2nAを備えたプロセス制御装置1Aの作用について説明する。尚、以下の説明では、運転員が第1の制御部21Aを主制御部として選択してプロセス量Pの制御を行う場合を例に説明する。
【0026】
プロセス制御装置1Aにおいて、プロセス量Pの制御を行うにあたり運転員がプロセス量の増減を行いたい場合、まず、運転員は、操作を行う第1の制御部21Aを主制御部として選択する。より具体的には、主従選択器81Aを操作してプロセス量設定増減指令入力器31が属する第1の制御部21Aを「主」に切り換えて主従切換要求を入力する。この時、主従選択器81Aは、現在の選択状態を表す信号Sb1をプロセス量設定・切換器41および他の主従選択器82A,・・・,8nAへ送信する(主状態選択ステップ)。
【0027】
主従状態選択ステップに続いて、信号Sb1を受信した一方の他の主従選択器82A,・・・,8nAでは、自己の主従選択器82A,・・・,8nAを「従」に状態を切り換えて信号Sb2,・・・,Sbnをそれぞれプロセス量設定・切換器42,・・・,4nへ出力する(従状態選択ステップ)。
【0028】
主状態選択ステップに続いて、信号Sb1を受信した他方のプロセス量設定・切換器41は、受信した信号Sb1が主であるか従であるかに基づき、出力するプロセス量を切り換える。今回の例では信号Sb1は「主」を表しているので、プロセス量設定増減指令入力器31から入力された増減量を加味して設定したプロセス量Daを他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nおよび差分演算器51へ出力する(プロセス量設定ステップ)。
【0029】
一方、従状態選択ステップに続いて、プロセス量設定・切換器42,・・・,4nでは、「従」の状態を表す信号Sb2,・・・,Sbnを受信し、主の状態にある制御部21Aのプロセス量設定・切換器41から入力されたプロセス量信号Daを出力するように信号経路の切り換えが自動的に実行される(主制御プロセス量選択ステップ)。そして、主の状態にある第1の制御部21Aのプロセス量設定・切換器41からの入力信号Daを他のプロセス量設定・切換器および差分演算器51へ出力する(プロセス量設定ステップ)。
【0030】
プロセス量設定ステップ以降の処理ステップは、第1の制御部21Aにおいては、差分演算器51でプロセス量信号Daが表すプロセス量とセンサ10から入力される取得制御対象プロセス量Pとの差分演算して出力する差分演算ステップが実行され、乗算器61では入力に対して制御ゲインを乗算して出力する比例制御ステップが実行され、積分制御器71では入力を積分演算して出力する積分制御ステップが実行される。プロセス量設定ステップ以降、差分演算ステップ、比例制御ステップ、および積分制御ステップが実行された結果、第1の制御部21Aからは、操作指令Dbが出力される。
【0031】
このようなステップが実行されることで、複数台が同じ制御対象プロセス量Pの制御を開始した時には、常に主制御部(今回の例では第1の制御部21A)のプロセス量設定・切換器41からの出力信号Daが他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nからも出力されることになるので、最終的には各制御部21A,22A,・・・,2nAから出力されるいずれの操作指令Dbが常に同じになる。
【0032】
プロセス制御装置1Aおよびプロセス制御装置1Aによって実行される制御方法によれば、主制御部(今回の例では第1の制御部21A)に設定されたプロセス量設定値の増減操作を行うことにより、複数の従制御部(今回の例では第1の制御部21A以外のその他の制御部22A,・・・,2nA)のプロセス量設定値も主制御部21Aのプロセス量設定値と同じ値に設定して制御を行うので、その他の制御部22A,・・・,2nAに対してプロセス量設定値を個別に設定する手間を省くことができ、運転員の負担を軽減できるとともに、操作性を向上させることができる。
【0033】
また、プロセス制御装置1Aにおいて、従の状態にある制御部(上述の例では制御部22A,・・・,2nA)のプロセス量設定・切換器(上述の例ではプロセス量設定・切換器42,・・・,4n)は、運転員が他のプロセス量設定増減指令入力器32,・・・,3nを操作してもその操作を受け付けないので、異なる運転員が異なる増減量で操作することによって生じ得る弊害を防止することができる。
【0034】
尚、プロセス量設定・切換器41は、他の全てのプロセス量設定・切換器42,・・・,4nから信号を受信し、他の全てのプロセス量設定・切換器42,・・・,4nへ設定したプロセス量を表す信号Daを送信しているが、入力元を他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nの中から1つ任意に設定し、出力先を他のプロセス量設定・切換器42,・・・,4nのうち入力先とは異なる1つを設定しても良い。
【0035】
また、主従選択器81A,82A,・・・8nおよびプロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3nのそれぞれとを対応させて、プロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3nの入力操作がされている場合には、主従状態の切換を防止する機能を主従選択器81A,82A,・・・8nAに付加しても良い。
【0036】
さらに、制御部21A,22A,・・・,2nAの内部構成は、一例であって、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化しても良い。例えば、微分制御器をさらに備えていたり、プロセス量設定増減指令入力器31と主従選択器81Aとを一体的に構成したり、プロセス量設定増減指令入力器31とプロセス量設定・切換器41とを一体的に構成したりしても良い。
【0037】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の第2の実施形態に係るプロセス制御装置1B(本発明に係るプロセス制御装置1の一実施例)の構成を概略的に示した概略図である。
【0038】
図3に示されるように、プロセス制御装置1Bは、図1に示されるプロセス制御装置1Aに対して、主従選択器81A,82A,・・・,8nAの代わりに、自動的に主従選択を行う自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBを備える点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBを中心に説明し、プロセス制御装置1Aの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0039】
図3によれば、プロセス制御装置1Bの自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBは、主従選択器81A,82A,・・・,8nAが有する機能に加え、プロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3nの入力操作を受け付けると、入力操作を受け付けたプロセス量設定・切換器41,42,・・・,4nから主状態切換要求を受け取り、自動的に自己の制御部21B,22B,・・・,2nBを「主」の状態に切り換える機能と、プロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3nの入力操作中は、主従状態の切り換えを防止する機能をさらに有する。
【0040】
プロセス制御装置1Bの作用について概説する。まず、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBは、最初にプロセス量制御を開始した制御部21B,22B,・・・,2nB、すなわち、主制御部がどれであるかを記憶する。例えば、第1の制御部21Bが主制御部であったとする。
【0041】
その後、例えば、第2の制御部22B等の従制御部が運転員の操作を受け付けると、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBは、プロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3nから運転員が他に入力操作を行っているか否かを確認し、他の制御部21B,・・・,2nBでの入力操作の完了を待って、自動主従選択器82Bは、「主」の状態を示すSb2信号を出力する。自動主従選択器82Bから「主」の状態を示すSb2信号を受信した他の自動主従選択器81B,・・・,8nBは、「従」の状態を示すSb1,・・・,Sbnを出力する。そして、第2の制御部22Bを主制御部とした制御が実行される。
【0042】
つまり、複数の制御部21B,22B,・・・,2nBが同一箇所のプロセス量制御を行っている最中に、プロセス量設定値を増減操作した場合には、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBがそれを検出し、他の制御部21B,・・・,2nBでの入力操作の完了を待って、増減操作された制御部21B,22B,・・・,2nBを主制御部に切り換え、増減操作直前まで主制御部であった制御部を従制御部に切り換えて制御を行うので、主従の関係を変更したとしてもバンプレスな切り換えが可能である。
【0043】
このようなプロセス制御装置1Bおよびプロセス制御装置1Bによって実行される制御方法によれば、プロセス制御装置1Aに比べ運転員がわざわざ主従状態を切換操作する手間を省略することができる。従って、運転員が1人等の少数の場合である場合に特に有効である。
【0044】
また、プロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3nの入力操作中は、主従状態の切り換えを防止する機能を有するので、複数の運転員が異なる制御部から同じタイミングで異なる操作を行おうとしても先の操作が開始されるとその操作が完了するまでは主従状態の切り換えを行わない。この結果、制御対象の制御状態が運転員の操作により不安定化することを防止することができる。さらに、運転員の操作状況を考慮して主従状態を自動的に切り換えるので、操作しようとしている制御部が主制御部なのか従制御部のどちらであったかに関わらずにプロセス量を制御することができ、運転員の操作性をさらに向上させることができる。
【0045】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の第3の実施形態に係るプロセス制御装置1C(本発明に係るプロセス制御装置1の一実施例)の構成を概略的に示した概略図である。
【0046】
図4に示されるように、プロセス制御装置1Cは、図3に示されるプロセス制御装置1Bに対して、主従強制切換器101,102,・・・,10nをさらに備える点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、主従強制切換器101,102,・・・,10nを中心に説明し、プロセス制御装置1Bの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0047】
図4によれば、プロセス制御装置1Cは、制御部21C,22C,・・・,2nCを備えており、各制御部21C,22C,・・・,2nCは、プロセス制御装置1Bが備えるプロセス量設定増減指令入力器31,32,・・・,3n、プロセス量設定・切換器41,42,・・・,4n、差分演算器51,52,・・・,5n、乗算器61,62,・・・,6n、積分制御器71,72,・・・,7nおよび自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBに加え、さらに、主従強制切換器101,102,・・・,10nをそれぞれ備える。
【0048】
図5は、プロセス制御装置1Cの主従強制切換器の一例である主従強制切換器101について、より詳細な構成を概略的に示した概略図である。
【0049】
主従強制切換器101は、自動主従選択器81Bの異常状態を検出する主従強制切換手段としての異常検出部111と、異常検出部111が検出した自動主従選択器81Bの異常状態を警報出力する自動主従選択異常警報出力手段としての異常警報出力部112と、自動主従選択器81Bに対する警報出力状態を解除する警報リセット手段としての警報リセット部113とを備える。
【0050】
異常検出部111は、自動主従選択器81Bの動作状態が通常通りの範疇にある(正常状態)か否か(異常状態)を検出する機能を有し、自動主従選択器81Bの動作状態が通常通りの範疇にない場合には動作状態が異常、すなわち、異常状態にあるとして異常状態を検出する。異常検出部111は、異常状態を検出すると、異常状態の検出を示す信号を異常警報出力部112に出力する。
【0051】
正常と異常の判定は、例えば、2秒間に3回以上主従の切換が行われた場合には異常と判定するといった具合に、所定時間における切換回数に閾値を設定し、閾値を超えた場合には異常と判定する。すなわち、自動主従選択器81Bの主従の切換頻度が所定の頻度を超えた場合には異常状態であると判定する。
【0052】
また、異常検出部111は、異常状態を検出すると、自動主従選択器81Bに対して、強制的に「主」の状態に切り換える信号を出力する。この信号を自動主従選択器81Bが受信すると、「主」の状態に切り換わる。そして、警報リセットがかかるまで、主従の切換を禁止する。その後、後述する警報リセット部113から警報をリセットする信号(以下、警報リセット信号とする)を受け取ると、異常検出部111は、自動主従選択器81Bの状態自動切換禁止を解除する。
【0053】
異常警報出力部112は、異常検出部111が自動主従選択器81Bの異常状態を検出した場合に、自動主従選択器81Bの異常状態を運転員等に注意喚起するために警報を出力する。警報出力は、例えば、画像および音声の少なくとも一つを出力する。また、異常警報出力部112は、後述する警報リセット部113から警報をリセットする信号を受け取ると、警報出力を解除(終了)する。
【0054】
警報リセット部113は、警報をリセットする要求を受け付け、当該要求を受け付けると、自動主従選択器81Bに対する警報出力状態を解除する機能を有する。警報リセット部113は、警報をリセットする要求を受け付けると、警報リセット信号を異常検出部111および異常警報出力部112へ出力する。
【0055】
このようなプロセス制御装置1Cの作用について概説する。プロセス制御装置1Cにおいて、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBの自動切換動作が多発し主従切換の頻度が所定頻度異常になると、まず、異常検出部111は、異常状態を検出する(自動主従選択切換異常検知ステップ)。そして、異常検出部111は、異常状態の検出を示す信号を異常警報出力部112に出力するとともに(異常検知信号送信ステップ)、自動主従選択器81Bに対して、強制的に「主」の状態に切り換える信号を出力する(主従強制切換信号送信ステップ)。
【0056】
異常検知信号送信ステップに続いて、異常警報出力部112が、異常状態の検出を示す信号を受け取ると、異常警報出力部112は、自動主従選択器81Bの異常状態を警報出力して運転員等に注意喚起する(異常警報出力ステップ)。
【0057】
また、主従強制切換信号送信ステップに続いて、強制的に「主」の状態に切り換える信号を自動主従選択器81Bが受信すると、自動主従選択器81Bは、「主」の状態に切り換えて(主従強制切換ステップ)、警報リセットがかかるまで主従の切換を禁止する(主従切換ロックステップ)。
【0058】
異常警報出力ステップおよび主従切換ロックステップの後に、警報リセット部113が、警報をリセットする要求を受け付けると、警報リセット信号を異常検出部111および異常警報出力部112へ出力する(警報リセット送信ステップ)。警報リセット送信ステップに続いて、異常検出部111および異常警報出力部112が警報リセット信号を受け取ると、異常検出部111は、自動主従選択器81Bの自動主従切換禁止を解除する(主従切換ロック解除ステップ)とともに、異常警報出力部112は、警報出力を終了する(警報出力終了ステップ)。
【0059】
プロセス制御装置1Cおよびプロセス制御装置1Cによって実行される制御方法によれば、主従切換の頻度が所定頻度異常になると、強制的に切り換えを禁止するので、プロセス制御装置1Bに比べ、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBの余計な主従切換動作(繰り返しループ)が発生することに起因する制御性・操作性の低下を防止することができる。
【0060】
[第4の実施形態]
図6は、本発明の第4の実施形態に係るプロセス制御装置1D(本発明に係るプロセス制御装置1の一実施例)の構成を概略的に示した概略図である。
【0061】
図6に示されるように、プロセス制御装置1Dは、図1に示されるプロセス制御装置1Aに対して、センサ異常検出・切換器(以下、センサセレクタとする。)121,122,・・・,12nをさらに備える点で相違するが、その他の点では実質的な相違は無い。そこで、本実施形態では、センサセレクタ121,122,・・・,12nを中心に説明し、プロセス制御装置1Aの構成要素と実質的に相違しない構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0062】
図6によれば、プロセス制御装置1Dは、同一箇所において、例えば、制御部と同数の異なるセンサ11,12,・・・,1nから取得される制御対象プロセス量Pを、制御部21D,22D,・・・,2nDがそれぞれ取得するように構成される。
【0063】
図7は、プロセス制御装置1Dのセンサセレクタの一例であるセンサセレクタ121について、より詳細な構成を概略的に示した概略図である。
【0064】
センサセレクタ121は、センサ11がプロセス量を正常に取得していない異常状態検出するセンサ異常検出手段としてのセンサ異常検出部131と、センサ異常検出部131が異常を検出したか否かに応じて入力された信号の一を選択して出力する信号経路切換手段としての信号切換部132とを備える。
【0065】
センサ異常検出部131は、センサ11がプロセス量を正常に取得している(正常状態)か、または、正常に取得していないか(異常状態)を検出する機能を有する。センサ異常検出部131は、正常または異常を示す信号(例えば、0,1)を信号切換部132へ出力する。
【0066】
信号切換部132は、センサ異常検出部131の正常/異常の検出結果に基づいて、信号経路を切り換える機能を有する。例えば、信号切換部132は、センサ異常検出部131がセンサ11の異常を検知しない(正常状態)場合、差分演算器51から入力された信号を出力する。一方、異常を検出した(異常状態)場合、入力された他のセンサセレクタ122,・・・12nのうち、事前に設定された何れか一つを出力する。このように、事前設定しておくことで、全てのセンサ11,12,・・・,1nが異常状態とならない限り、後段の乗算器61には正常な信号を送信することができる。
【0067】
このようなプロセス制御装置1Dの作用について概説する。まず、センサセレクタ121,122,・・・,12nのセンサ異常検出部131がセンサ11,12,・・・,1nの異常の有無を検出する(センサ異常検知ステップ)。センサ異常検知ステップに続いて、センサ異常検出部131は、センサ異常検知ステップでのセンサ11,12,・・・,1nの異常有無検出結果に基づき入力された信号の一を選択して出力する(出力信号切換ステップ)。
【0068】
プロセス制御装置1Dおよびプロセス制御装置1Dによって実行される制御方法によれば、センサセレクタ121,122,・・・,12nがセンサ11,12,・・・,1nの異常を検出すると、自己の制御部21D,22D,・・・,2nDの信号、すなわち、前段の差分演算器51,52,・・・,5nからの出力信号を使用せずに、他の制御部21D,22D,・・・,2nDから入力された信号を選択して使用するので、異常となったセンサから取得されたプロセス量を使用することによって操作指令Dbが異常な値となって制御性を乱す事態を回避することができる。従って、従来に比べてプロセス制御の制御性および信頼性を向上させることができる。
【0069】
尚、センサ11,12,・・・,1nの数量およびセンサセレクタ121,122,・・・,12nの数量は、基本的に同数であるが、プロセス量の取得経路を多重化する、あるいは、簡略化する等の事情により異なる場合もある。
【0070】
また、センサセレクタ121,122,・・・,12nは、それぞれ、自己以外のセンサセレクタの全てから入力があり、当該入力の一つを選択的に出力可能に構成されているが、入力元となるセンサセレクタは、自己以外の全てのセンサセレクタでなくても構わない。例えば、n=3の場合において、第1のセンサセレクタ121は、第2のセンサセレクタ122からの出力を受け取り、第2のセンサセレクタ122は、第3のセンサセレクタ123からの出力を受け取り、第3のセンサセレクタ123は、第1のセンサセレクタ121からの出力を受け取るように構成し、信号切換部132の構成を簡略化することもできる。
【0071】
[その他の実施形態]
本発明は、上記の実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化しても良い。また、上述した第1の実施形態から第4の実施形態を適宜組み合わせて適宜プロセス制御装置を構成することもできる。
【0072】
図8および図9は、本発明のその他の実施形態に係るプロセス制御装置1E,1F(本発明に係るプロセス制御装置1の一実施例)の構成を概略的に示した概略図である。
【0073】
例えば、図8に示されるように、図4に示したプロセス制御装置1Cにおいて、主従選択器81A,82A,・・・,8nAの代わりに、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBを適用したプロセス制御装置1Eを構成することや、図9に示されるように、図6に示したプロセス制御装置1Dにおいて、主従選択器81A,82A,・・・,8nAの代わりに、自動主従選択器81B,82B,・・・,8nBを適用したプロセス制御装置1Fを構成することもできる。
【0074】
また、単なる実施形態の組み合わせのみならず、上記の各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することもできる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても良いし、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプロセス制御装置の構成を示す概略図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るプロセス制御装置が備えるプロセス量設定・切換器のより詳細な構成を概略的に示した概略図。
【図3】本発明の第2の実施形態に係るプロセス制御装置の構成を示す概略図。
【図4】本発明の第3の実施形態に係るプロセス制御装置の構成を示す概略図。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るプロセス制御装置が備える主従強制切換器のより詳細な構成を概略的に示した概略図。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るプロセス制御装置の構成を示す概略図。
【図7】本発明の第4の実施形態に係るプロセス制御装置が備えるセンサ異常検出・切換器のより詳細な構成を概略的に示した概略図。
【図8】本発明のその他の実施形態に係るプロセス制御装置の構成を示す概略図。
【図9】本発明のその他実施形態に係るプロセス制御装置の構成を示す概略図。
【符号の説明】
【0076】
1(1A,1B,1C,1D,1E,1F) プロセス制御装置
10,11,12,・・・,1n センサ
21,22,・・・,2n 制御部(制御手段)
31,32,・・・,3n プロセス量設定増減指令入力器
41,42,・・・,4n プロセス量設定・切換器(プロセス量設定手段)
51,52,・・・,5n 差分演算器
61,62,・・・,6n 乗算器
71,72,・・・,7n 積分制御器
81A,82A,・・・,8nA 主従選択器(主従切換選択手段)
81B,82B,・・・,8nB 自動主従選択器(自動主従切換選択手段)
91 プロセス量設定部
92 信号切換部
101,102,・・・,10n 強制主従切換器
111 異常検出部
112 異常警報出力部
113 警報リセット部
121,122,・・・,12n センサセレクタ
131 センサ異常検出部(センサ異常検出手段)
132 信号切換部(信号経路切換手段)
E1,E2,・・・,En 操作端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御手段を並列的に接続して備えており、同一箇所のプロセス量を制御するように構成されたプロセス制御装置において、
前記複数の制御手段のうち、主従選択要求に基づいて、プロセス量の制御を行う一の主制御手段を選択し、その他残りを従制御手段とする主従選択手段を備え、
前記従制御手段は、主従選択手段が主制御手段として選択した制御手段の出力を自己の出力として採用するように構成されたことを特徴とするプロセス制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、制御目標となるプロセス量を設定するプロセス量設定手段を備えており、前記主従選択手段は、前記プロセス量設定手段にプロセス量設定値の増減要求があると、前記プロセス量設定手段が属する制御手段を主制御手段に自動的に切り換える自動主従選択手段として構成されることを特徴とする請求項1記載のプロセス制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記自動主従選択手段の異常状態を検知した場合、前記自動主従選択手段の自動主従切換を禁止して、前記異常が検知された自動主従選択手段が属する制御手段を強制的に主制御手段に切り換える主従強制切換手段と、
前記異常状態を警報出力する自動主従選択異常警報出力手段と、
警報リセット要求を受け付けた場合、前記主従強制切換手段が禁止している自動主従切換および前記自動主従選択異常警報出力手段が出力している警報を解除する警報リセット手段とを備えることを特徴とする請求項2記載のプロセス制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、各々が異なるセンサからプロセス量を取得するとともに、他の制御手段から前記センサが取得したプロセス量を用いた演算処理後の出力を受け取るように構成されており、前記制御手段は、
自己の制御手段がプロセス量を取得するセンサの異常を検知するセンサ異常検知手段と、
前記センサ異常検知手段が前記センサの異常を検知した場合に、センサの異常が検知されていない何れか一の制御手段を選択して選択した一の制御手段からの入力を自己の制御手段の前記演算処理後の出力として採用する信号経路切換手段とを備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のプロセス制御装置。
【請求項5】
並列的に接続された複数の制御手段によって同一箇所のプロセス量を制御するプロセス制御方法であって、
前記複数の制御手段のうち、主従切換要求に基づいて、プロセス量の制御を行う一の主制御手段を選択するステップと、
前記主状態選択ステップで主制御手段として選択されなかった残り全ての制御手段を従制御手段として選択するステップと、
前記従状態選択ステップで選択された従制御手段が、前記主状態選択ステップで選択された制御手段の出力を自己の出力として採用するステップとを備えるプロセス制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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