説明

プロテアーゼ処理により改良された乳およびその製造法

1つの面において、本発明は、乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、制限されたタンパク質分解法により、酸凝固抵抗性乳を製造する方法を提供する。他の面において、本発明は、乳中のカルシウムの吸収性を必要なレベルに増加させる方法を提供する。他の面において、本発明は、乳の粘度を必要なレベルに増加させる方法を提供する。それ以上の面において、本発明は、凝固させないで酸性化乳を製造する方法を提供する。本発明の方法は、乳を約40℃〜約90℃の温度に加熱し、そして有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる。本発明は、また、酸凝固抵抗性である乳、カルシウム吸収性が増加した乳、粘度が増加した乳、安定に酸性化された乳、および本発明の乳を使用して製造された製品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、酸凝固抵抗性とし、カルシウム吸収性を増加させ、そして官能特性を改良する、乳のプロテアーゼ処理に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
乳は酸性化すると凝固する。ヒトおよび他の哺乳動物が摂取した後、胃の酸性媒質との接触により、乳の酸性化は自然に起こる。乳が酸性化するとき、乳中のカゼインは凝集し、凝塊と呼ぶ大きい塊を形成する。凝塊は、栄養素を封鎖し、栄養素の摂取を妨害することによって、乳の栄養価を減少させる。例えば、凝塊中のカルシウムの封鎖は、乳中のカルシウム吸収の制限を引き起こす。
【0003】
こうして、栄養価が高い、特にカルシウム吸収がより高い乳および乳をベースとする製品が必要とされている。また、酸性食品、例えばフルーツジュースと混合できる、酸凝固抵抗性乳が必要とされている。さらに、乳、特に脱脂乳の官能特性を改良することが必要とされている。本発明は、これらの要求を扱う。
【発明の開示】
【0004】
発明の要約
1つの面において、本発明は、酸凝固抵抗性乳を製造する方法に関する。これらの方法は、乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、加熱した乳を酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる。本発明の方法において使用する乳は、任意の哺乳動物、例えば、アンテロープ、バイソン、雌牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、およびシカからのものであることができる。乳は全乳、再構成乳、濃縮乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳であることができる。ある態様において、乳は超高温処理乳である。
【0005】
1種または2種以上のプロテアーゼは、乳の官能特性に悪影響を与えないで酸凝固抵抗性乳を提供するために有効な任意のプロテアーゼであることができる。典型的なプロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、およびそれらの組み合わせを包含する。例えば、1種または2種以上のプロテアーゼは、アルカラーゼ (ALCALASE) 、エスペラーゼ (ESPERASE) 、ニュートラーゼ (NEUTRASE) 、プロタメックス (PROTAMEX) 、および膵臓トリプシンノボを含んでなることができる (すべてはNovozymes 、Franklinton、NC、USAから入手可能である) 。典型的には、乳を約40℃〜約90℃の温度において約5秒〜約12時間1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。
【0006】
ある態様において、1種または2種以上のプロテアーゼによる加熱した乳の処理は下記工程を含んでなる:(a) 乳を約55℃〜約70℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させ、そして (b) 乳を約75℃〜約90℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させる。例えば、加熱した乳を約1500 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼと接触させるか、あるいは約3000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させる。
【0007】
第2の面において、本発明は、乳中のカルシウムの吸収性を増加させる方法を提供する。この方法は、乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、加熱した乳をカルシウム吸収性の増加に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる。本発明の方法において使用する乳は、任意の哺乳動物、例えば、アンテロープ、バイソン、雌牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、およびシカからのものであることができる。乳は全乳、再構成乳、濃縮乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳であることができる。ある態様において、乳は超高温処理乳である。
【0008】
1種または2種以上のプロテアーゼは、乳の官能特性に悪影響を与えないで酸凝固抵抗性乳を提供するために有効な任意のプロテアーゼであることができる。典型的なプロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、およびそれらの組み合わせを包含する。典型的には、乳を約40℃〜約90℃の温度において約5秒〜約12時間1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。
【0009】
ある態様において、1種または2種以上のプロテアーゼによる加熱した乳の処理は下記工程を含んでなる:(a) 乳を約55℃〜約70℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させ、そして (b) 乳を約75℃〜約90℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させる。例えば、加熱した乳を約1500 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼと接触させるか、あるいは約3000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させる。
【0010】
ある態様において、これらの方法は、プロテアーゼ処理乳にカルシウム吸収増強剤を添加する工程をさらに含んでなる。典型的なカルシウム吸収増強剤は、カゼインホスホペプチド (CPP) 、カゼインホスホペプチドアナローグ、ラクトース、ラクトースアナローグ、ビタミンD、およびビタミンD関係化合物を包含する。こうして、これらの方法は乳にCPPを添加することを含むことができる。
ある態様において、プロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収性は、未処理乳のそれよりも少なくとも25%〜400%だけ増加される。ある態様において、プロテアーゼ処理乳へのカルシウム吸収増強剤の添加により、プロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収性は少なくとも50%だけ増加する。
【0011】
第3の面において、本発明は、乳の粘度を増加させる方法を提供する。これらの方法は、乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、乳の粘度を必要なレベルに増加させるために有効な条件下に、加熱した乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼと接触させる工程を含んでなる。本発明の方法において使用する乳は、任意の哺乳動物、例えば、アンテロープ、バイソン、雌牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、およびシカからのものであることができる。乳は全乳、再構成乳、濃縮乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳であることができる。ある態様において、乳は超高温処理乳である。
【0012】
1種または2種以上のプロテアーゼは、乳の官能特性に悪影響を与えないで酸凝固抵抗性乳を提供するために有効な任意のプロテアーゼであることができる。典型的なプロテアーゼは、アルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、およびそれらの組み合わせを包含する。典型的には、乳を約40℃〜約90℃の温度において約5秒〜約12時間1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。
【0013】
ある態様において、1種または2種以上のプロテアーゼによる加熱した乳の処理は下記工程を含んでなる:(a) 乳を約55℃〜約70℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させ、そして (b) 乳を約75℃〜約90℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させる。例えば、加熱した乳を約2000 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼと接触させるか、あるいは約5000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させる。
ある態様において、プロテアーゼ処理乳の粘度は、少なくとも約10%、例えば少なくとも約50%、例えば少なくとも約70%だけ増加させる。
【0014】
第4の面において、本発明は、凝固させないで酸性化乳を製造する方法を提供する。これらの方法は下記工程を含んでなる:(a) 乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に、乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼと接触させ、そして (b) 酸凝固抵抗性乳を酸性化剤と接触させて、凝固させないで酸性化乳を製造する。酸性化剤は、乳のpHを減少させる任意の物質であることができる。例えば、乳を酸と接触させるか、あるいは酸産生細菌とともに培養することができる。本発明の実施のために有効な、典型的な酸は、乳酸、クエン酸、塩酸、酒石酸、フマル酸、シトロリンゴ酸、コハク酸、およびアスパラギン酸を包含する。本発明の実施のために有効な、典型的な酸産生細菌は、乳酸産生細菌、例えば、ラクトバシリ (lactobacilli) である。ある態様において、酸性化乳のpHは約2〜約4である。
【0015】
第5の面において、本発明は、酸凝固抵抗性であり、かつ対照乳に類似するか、あるいはそれより改良された官能特性を有するプロテアーゼ処理乳を提供する。前述の本発明の方法を使用して、酸凝固抵抗性乳を製造することができる。ある態様において、少なくとも約5%の本発明の酸凝固抵抗性乳を含んでなる食物製品が提供される。
第6の面において、本発明は、乳が対照乳に類似するカルシウム含有率を有する、カルシウム吸収性が増加したプロテアーゼ処理乳を提供する。前述の本発明の方法を使用して、カルシウム吸収性が増加した乳を製造することができる。ある態様において、少なくとも約5%の本発明のカルシウム吸収性が増加した乳を含んでなる食物製品が提供される。
【0016】
本発明の第7の面において、本発明は、乳が対照乳と同様な脂肪含有率を有する、粘度が増加したプロテアーゼ処理乳を提供する。この乳は対照乳に類似するか、あるいはそれより改良された官能特性を有する。この粘度が増加した乳は、前述の本発明の方法を使用して製造することができる。ある態様において、少なくとも約5%の本発明の粘度が増加した乳を含んでなる食物製品が提供される。
第8の面において、本発明は、凝固させないで酸性化された乳を提供する。酸性化乳は、前述の本発明の方法を使用して製造することができる。ある態様において、少なくとも約5%の酸性化乳を含んでなる食物製品が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
好ましい態様の詳細な説明
哺乳動物の乳は、酸性化するとき、凝固する。胃中の酸性環境中に摂取後、乳の酸性化は自然に起こる。また、摂取前に、乳をフルーツジュースのような酸性食物製品と混合したとき、酸性化は起こる。乳の凝固は凝塊を形成するカゼインの凝集に関連し、そしてそれは乳の官能特性に悪影響を及ぼし、凝塊は栄養素を封鎖しかつ栄養素の摂取を妨害するので、望ましくない。
【0018】
第1の面において、本発明は、乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで酸凝固抵抗性乳を製造する方法に関する。これらの方法は、乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、加熱した乳を酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる。
本発明の方法において使用する乳は、任意の哺乳動物、例えば、雌牛、ヒツジ、ヤギ、バイソン、アンテロープ、シカおよびラクダからのものであることができる。生乳、または処理乳、例えば、低温殺菌乳、超高温 (UHT) 処理乳、または均質化乳、濃縮乳、または再構成乳を使用することができる。同様に、全乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳のすべては、本発明の方法において使用するために適当である。
【0019】
本発明のこの面の方法の第1工程において、乳を適当な温度に加熱する。一般に、適当な温度は、いっそう詳しく後述するように、選択した1種または2種以上のプロテアーゼの半減期および最適な温度に依存する。一般に、乳の加熱に適当な温度は約40℃〜90℃の温度である。例えば、適当な温度は約55℃〜約75℃、例えば62℃である。米国特許出願公開2002/0192333に記載されている酸凝固抵抗性乳を製造する初期のプロトコルにおいて、プロテアーゼを乳に添加した後、乳を適当な温度に加熱した。
【0020】
実施例1に記載されているように、試みの約60%において、このようなプロトコルは酸凝固抵抗性乳を製造した。こうして、異なる実験において製造されたプロテアーゼ処理乳の性質はかなり変動し、予測不可能であった。本発明によれば、乳を加熱した後、この乳を1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。この加熱工程は成功率を有意に増加させる。例えば、実施例2に記載するように、成功率は98%であることができる、すなわち、この方法に従い処理した乳試料の約98%は酸凝固抵抗性となる。
【0021】
本発明のこの面の方法の第2工程において、加熱した乳を1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。有効なプロテアーゼは、乳の官能特性に悪影響を与えないで、酸凝固抵抗性乳を提供するために有効な任意のプロテアーゼであることができる。プロテアーゼは精製したプロテアーゼであるか、あるいは組換え的に製造されたプロテアーゼであることができる。この方法において有効な典型的なプロテアーゼは下記のものを包含するが、これらに限定されない:アルカリ性プロテアーゼ (例えば、バシラス・サチリス (Bacillus subtilis) またはバシラス・リヘニフォルミス (Bacillus licheniformis) からのアルカリ性プロテアーゼ) 、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、パンクレアチン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、およびそれらの組み合わせ。
【0022】
例えば、1種または2種以上のプロテアーゼは下記のものを包含することができる:アルカラーゼ (ALCALASE) (2.4 LFG、Novozymes 、Franklinton、NC、USA) 、エスペラーゼ (ESPERASE) (FG型、Novozymes) 、ニュートラーゼ (NEUTRASE) (Novozymes) 、プロタメックス (PROTAMEX) (Novozymes) 、パンクレアチン (Sigma Chemical Co.、St. Louis、USA) 、および組換え膵臓トリプシン (PTN 6.0 S、無塩型、Novozymes) 。典型的には本発明の方法において使用するプロテアーゼは、合衆国連法規集 (U.S. Code of Federal Regulations) において規定されているように、一般に安全であると見なされる (GRAS) プロテアーゼである。
【0023】
一般に、プロテアーゼの使用量は、下に詳細に説明するように、因子、例えば、使用するプロテアーゼ源、処理条件、例えば時間、pH、および温度に従い変化する。再現可能な結果を保証するために、プロテアーゼを使用する前に、タンパク質分解活性のアッセイにより、一般に1種または2種以上のプロテアーゼの活性を目盛定めする。タンパク質分解活性を測定する任意の信頼性あるアッセイを使用することができる。典型的なアッセイは実施例1に記載されている。乳を処理するために使用するプロテアーゼは、可溶性であるか、あるいは固体マトリックス上に固定化することができる。
【0024】
乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件は、使用する1種または2種以上の特定のプロテアーゼに従い変化することがあるが、当業者はそれらを容易に決定することができる。例えば、有効な条件は、プロテアーゼ処理乳を酸凝固抵抗性および官能特性についてアッセイすることによって決定することができる。一般に、乳の酸凝固抵抗性を決定するために適当なアッセイは、実施例1に記載するように、酸性化剤の添加後、対照乳およびプロテアーゼ処理乳の流動状態を比較することである。こうして、酸凝固抵抗性乳は流動性に止まるが、対照乳は酸性化剤と接触後に凝固する。官能特性についてのアッセイは、この分野において標準的である。例えば、実施例3に記載するように、乳の官能特性は調査を実施することによって評価できる。
【0025】
また、乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで酸凝固抵抗性乳を製造するために有効な条件は、乳の加水分解度をアッセイすることによって決定できる。加水分解度は、ペプチド結合の切断百分率として定義される。一般に、酸凝固抵抗性乳の加水分解度は約0.9%〜約2.5%である。加水分解度を決定するアッセイは、この分野において標準的である。加水分解度を決定するために適当なアッセイは、実施例7に記載されている。こうして、当業者は乳の官能特性に影響を与えないで乳をタンパク質分解的に処理して、酸凝固抵抗性乳を製造するために適当な条件を容易に決定することができる。
【0026】
典型的には、乳のプロテアーゼ処理は、制御した時間の間適当な温度において、乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼと接触させることからなる。適当な温度は、選択した1種または2種以上のプロテアーゼがタンパク質分解的に活性である温度である。典型的には、適当な温度は、選択した1種または2種以上のプロテアーゼの最適温度および半減期、1種または2種以上のプロテアーゼの濃度、および処理時間の長さに依存する。この分野においてよく知られているように、プロテアーゼの最適温度および半減期は実験的に決定可能である。一般に、本発明の方法に従い製造されたプロテアーゼ処理乳は、たとえあるにしても、残留タンパク質分解活性をほとんど含有しない。こうして、乳を1種または2種以上の可溶性プロテアーゼで処理するために適当な温度は、典型的には、乳のプロテアーゼ処理間にプロテアーゼ処理に十分なタンパク質分解活性を提供し、そしてプロテアーゼ処理の終わりまでにプロテアーゼを不活性化する。
【0027】
ある態様において、乳を2以上の温度においてプロテアーゼと接触させる。乳を選択した1種または2種以上のプロテアーゼの最適温度またはその付近においてプロテアーゼと接触させ、その後、接触した乳の温度を1種または2種以上のプロテアーゼが不活性化される温度に上昇させる。温度の瞬間的増加は工業的条件下に達成することが困難であることがあり、そして加水分解は不活性化工程間に連続するであろう。したがって、ある態様において、プロテアーゼ処理を選択したプロテアーゼについて最適な温度より高い温度において実施することができ、これにより酵素は処理間に不活性化される。
【0028】
一般に、処理時間は1種または2種以上のプロテアーゼの濃度および使用する温度に従い変化する。例えば、処理時間はプロテアーゼ濃度を増加させるか、あるいは使用する温度を高くすることによって短縮できる。一般に、処理時間は約5秒〜約12時間、例えば約1分〜5時間、例えば5分〜15分である。
【0029】
本発明のこの面に従う典型的なプロテアーゼ処理は下記工程を含んでなる:(a) 乳を約58℃〜約67℃の温度に加熱し、(b) 加熱した乳を約1500 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼまたは約4000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させ、(c) 接触させた乳を約58℃〜約67℃の温度において約1分〜約15分間インキュベートし、そして (d) 接触させた乳の温度を約80℃〜約90℃の温度に約1分〜約15分間上昇させる。
【0030】
前述したように、タンパク質分解処理の終わりにおいて乳中に存在するタンパク質分解活性の残留量はもしあればわずかである。乳中の残留タンパク質分解活性を検出する方法は、この分野において標準的である。例えば、タンパク質加水分解における残留タンパク質分解活性は、カゼイン、N,N‐ジメチルカゼイン、およびゼラチンを含有するゲル中の孔の中に加水分解物の試料を添加することによって測定することができる。溶解した活性プロテアーゼはゲル中に拡散し、多少のタンパク質を加水分解し、カルシウムカゼイネートの沈殿のために円形ディスク形不透明ゾーンを形成する。不透明ゾーンの面積を、プロテアーゼの標準希釈物の結果と比較する。
【0031】
前述したように、プロテアーゼ処理間における可溶性プロテアーゼの遅い熱変性によるか、あるいはプロテアーゼ処理の終わりに向かって温度を上昇させることによって、タンパク質分解を停止させることができる。例えば、約85℃における約10分間のインキュベーション、または約95℃における約5分間のインキュベーションは、アルカラーゼまたはパンクレアチンを不活性化させるために有効である。また、多少の可溶性プロテアーゼは、乳の酸性化により不活性化することがある。例えば、アルカラーゼはpH 4またはそれ以下において不活性である。
【0032】
固体状支持体に取り付けられた不溶性プロテアーゼについて、プロテアーゼ処理乳から1種または2種以上のプロテアーゼを物理的に分離することによって、タンパク質分解を停止することができる。物理的分離は、濾過、沈降、遠心、磁気的分離、および他のこのような手順を包含する。例えば、固定化された酵素を拡張された表面支持体、例えばカートリッジに取り付ける場合、タンパク質分解は、乳がこのような拡張された表面と接触する間に起こり、そしてこの接触が妨害されるとき停止する。
【0033】
本発明の方法は乳を加工する連続流れ系と適合し、ここで加熱された乳は特定した長さの大きい直径のパイプ、例えばヨーグルト製造用低温殺菌装置に通してゆっくり流れる。その上、プロテアーゼ濃度または温度の調節により、インキュベーション期間を短縮することができる。したがって、本発明の方法は工業的大規模化に適合する。
【0034】
本発明のこの面の方法は酸凝固抵抗性乳を製造し、実施例8および9に記載するように、プロテアーゼ処理乳を酸性化剤、例えば、酸、酸産生細菌、またはフルーツジュースと混合することによって、この乳はpH約2までに安定に酸性化することができる。驚くべきことには、プロテアーゼ処理乳中のタンパク質の加水分解度は、実施例7に記載するように、かなり低い。重要なことには、酸凝固抵抗性乳を製造する方法は、実施例2および3に記載するように、乳の官能特性に悪影響を与えない。本発明に従い製造された酸凝固抵抗性乳は、流動性乳として即時の消費に適当である。選択的に、実施例8および9に記載するように、それを他の食物製品と混合することができる。例えば、それをフルーツジュースと混合して、乳−フルーツジュース混合物を製造することができる。
【0035】
第2の面において、本発明は、乳の栄養価を増加させる方法を提供する。例えば、本発明の方法は乳中のカルシウムのより高い吸収性を提供する。本明細書において使用するとき、用語「カルシウムの吸収性」は腸による吸収のためのカルシウムの利用可能性を意味する。カルシウムは多数の生理学的機能、例えば、神経伝達、筋肉収縮、および腺分泌のために重大である。さらに、カルシウムは骨の必須成分である。多数の研究により、食事のカルシウム摂取と疾患、例えば、骨粗しょう症、高血圧症、および結腸癌との間の因果関係が証明された。乳は食事のカルシウムの主要源の1つである。しかしながら、乳中のカルシウムのわずかに約30%が生物学的に利用可能であることが示された。
【0036】
乳中の大きい画分は、カゼインによりコロイド状懸濁液中で安定化された、リン酸カルシウムミセルとして存在する。乳が凝固するとき、カゼインは凝集し、凝塊中にリン酸カルシウムミセルを捕捉する。カゼインリンタンパク質は、カゼインのタンパク質分解的消化により形成し、リン酸カルシウムの腸内沈殿を阻害し、カルシウム吸収を刺激することは知られている (Sato他、(1990) Biochem. Biophys. Acta 1077:413‐5;Guegen他、(2000) J. Am. Col. Nutr. 19:199S‐136S) 。しかしながら、このような乳のタンパク質分解的消化は、一般に、例えば、苦い味覚を付与するか、あるいは乳を凝固させることによって、乳の官能特性に悪影響を与える。
【0037】
本発明の方法は、乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで乳のカルシウムのより高い吸収性を提供する乳を製造する。これらの方法は、乳を約40℃〜約90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、乳中のカルシウムの吸収性の増加に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで加熱した乳を処理する工程を含んでなる。
【0038】
本発明のこの面において使用する乳は、前述したように、任意の哺乳動物からのものであることができる。同様に、生乳または処理乳、および脂肪含有率が異なる乳を使用することができる。
これらの方法の第1工程において、乳を適当な温度に加熱する。適当な温度は、酸凝固抵抗性乳を製造する方法について前述したように、決定することができる。第2工程において、酸凝固抵抗性乳を製造する方法について前述したように、加熱した乳を1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。
【0039】
乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで乳中のカルシウムの吸収性を増加させるために有効な条件は、酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件に類似するか、あるいはそれと重複することがある。しかしながら、下に詳細に説明するように、酸凝固抵抗性は本発明の方法に従いカルシウム吸収性を最大するためにはかならずしも十分でないことに注目することが重要である。乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで乳中のカルシウムの吸収性を増加させるために有効な条件は、使用する特定の1種または2種以上のプロテアーゼに従い変化することがあるが、当業者はこれらの条件を容易に決定することができる。例えば、乳のカルシウム吸収性およびプロテアーゼ処理乳の官能特性をアッセイすることによって、有効な条件を決定することができる。
【0040】
乳中のカルシウムの吸収性を決定する、多数の適当な方法が存在する (例えば、下記の文献を参照のこと:Guegen他、(2000) J. Am. Col. Nutr. 19:199S‐136S) 、例えば、実施例4および5に記載するように、追跡可能な量の放射性カルシウムが添加されている乳を摂取した後、マウスの腸により吸収された放射性カルシウムの相対量を比較する。また、乳中のカルシウムの吸収性はヒト被検者において、例えば、乳の摂取後、イオン化カルシウムの変化または尿カルシウムの変化を測定することによって試験することができる。
【0041】
こうして、当業者は乳をタンパク質分解的に処理してカルシウム吸収性を増強するために適当な条件を容易に決定することができる。前述したように、官能特性を評価することができる。また、乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで乳中のカルシウムの吸収性を増加させるために有効な条件は、前述したように、乳の加水分解度をアッセイすることによって決定することができる。一般に、カルシウム吸収性が増加した乳の加水分解度は、約0.5%〜約2.5%、例えば約0.7%〜約2.0%、例えば約0.9%〜約1.5%である。
【0042】
本発明のこの面に従う1つの典型的なプロテアーゼ処理は下記工程を含んでなる:(a) 乳を約58℃〜約67℃の温度に加熱し、(b) 加熱した乳を約1500 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼまたは約4000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させ、(c) 接触させた乳を約58℃〜約67℃の温度において約1分〜約15分間インキュベートし、そして (d) 接触させた乳の温度を約80℃〜約90℃の温度に約1分〜約15分間上昇させる。
【0043】
乳中のカルシウムの吸収性を増加させる方法は、乳にカルシウム吸収増強剤を添加することをさらに含んでなることができる。典型的なカルシウム吸収増強剤は、カゼインホスホペプチド、カゼインホスホペプチドアナローグ、ラクトース、ラクトースアナローグ、ビタミンD、およびビタミンD関係化合物、または他のカルシウム増強剤を含んでなる (例えば、下記の文献を参照のこと:Guegen他、(2000) J. Am. Col. Nutr. 19:199S‐136S) 。実施例5に記載するように、カルシウム吸収増強剤、例えばカゼインホスホペプチドをプロテアーゼ処理後に乳に添加することができる。選択的に、乳の追加のタンパク質分解法により、乳にカゼインホスホペプチドを添加することができる。前述したように、乳のタンパク質分解的消化により、カゼインリンタンパク質を製造することができる。
【0044】
ある態様において、本発明の方法に従い製造された乳中のカルシウムの吸収性は、実施例4に記載するように、対照乳のそれより少なくとも約2倍高い。ある態様において、プロテアーゼ処理乳にカゼインホスホペプチドを添加すると、実施例5に記載するように、乳中のカルシウムの吸収性は少なくとも約50%だけ増加する。こうして、本発明の方法に従い、乳を1種または2種以上の適当なプロテアーゼで処理し、必要に応じて1種または2種以上のカルシウム吸収増強剤を添加することによって、カルシウム吸収性の必要な増加レベルを達成することができる。
【0045】
第3の面において、本発明は、乳の官能特性を改良する方法を提供する。例えば、本発明は、乳の粘度を増加させる方法を提供する。本発明のこの面の方法は、乳を約40℃〜約90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、加熱した乳を乳の粘度の増加に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる。
【0046】
本発明のこの面において使用する乳は、前述したように、任意の哺乳動物からのものであることができる。同様に、生乳または処理乳、全乳、低脂肪乳、または脱脂乳のすべては、本発明のこの面の方法において使用するために適する。
これらの方法の第1工程において、乳を適当な温度に加熱する。適当な温度は、前述したように、決定することができる。第2工程において、酸凝固抵抗性乳を製造する方法について前述したように、加熱した乳を1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。
【0047】
乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで乳の粘度を必要なレベルに増加させるために有効な条件は、一般により高い濃度のプロテアーゼを使用する以外、酸凝固抵抗性乳を製造するために有効な条件に類似する。こうして、乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで乳の粘度を必要なレベルに増加させるために有効な条件は、使用する特定の1種または2種以上のプロテアーゼに従い変化することがあるが、プロテアーゼ処理乳の粘度および他の官能特性をアッセイすることによって容易に決定することができる。一般に、乳の粘度は、客観的アッセイ、例えば、実施例3に記載されている粘度計アッセイを使用して測定される。しかしながら、粘着性の増加について主観的アッセイを使用することもできる。
【0048】
本発明のこの面に従う1つの典型的なプロテアーゼ処理は下記工程を含んでなる:(a) 乳を約58℃〜約67℃の温度に加熱し、(b) 加熱した乳を約2200 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼまたは約5000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させ、(c) 接触させた乳を約58℃〜約67℃の温度において約1分〜約15分間インキュベートし、そして (d) 接触させた乳の温度を約80℃〜約90℃の温度に約1分〜約15分間上昇させる。
【0049】
本発明の方法は、プロテアーゼ処理のパラメーターに依存して官能特性、例えば、口当たり、きめ、粘度、および臭いが可変である乳を製造することができる。意味あることには、これはにがみを生成しないで、そうでなければ乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで達成できる。例えば、実施例6に記載するように、乳を増加する濃度のプロテアーゼと接触させると、粘度がますます高くなる乳が生成する。したがって、実施例6に記載するように、高い濃度のプロテアーゼを使用すると、乳の粘度はクリームのコンシステンシーに増加する。ある態様において、本発明の方法は、乳の粘度を少なくとも約5%〜約70%、例えば約15%〜約50%だけ増加させる。ある態様において、これらの方法は粘度を少なくとも約70%だけ増加させる。これらの乳の粘着性またはクリーム性の増加は、乳の脂肪含有率を付加しないで達成される。さらに、増粘した乳は酸凝固に対して抵抗性である。
【0050】
第4の面において、本発明は、凝固させないで酸性化乳を製造する方法を提供する。これらの方法は、下記工程を含んでなる:(a) 酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に、乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理し、そして (b) 酸凝固抵抗性乳を酸性化剤と接触させて、乳を凝固させないで酸性化乳を製造する。
本発明のこの面において使用する乳は、前述したように、任意の哺乳動物からのものであることができる。同様に、生乳または処理乳、および脂肪含有率が異なる乳を使用することができる。
【0051】
第1工程において、前述したように、酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に、乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する。第2工程において、酸凝固抵抗性乳を酸性化剤と接触させて、酸凝固に対して抵抗性である酸性化乳を製造する。ある態様において、実施例8に記載するように、酸性化剤は酸であることができる。本発明のこの面において使用するために適当である典型的な酸は、乳酸、クエン酸、塩酸、酒石酸、フマル酸、シトロリンゴ酸、コハク酸、およびアスパラギン酸を包含する。また、他の食用有機酸を使用することができる。
【0052】
また、プロテアーゼ処理乳をフルーツジュース、例えばフルーツジュースコンセントレート、または粉末状フルーツジュースで酸性化することができる。適当なフルーツジュースは下記のものを包含するが、これらに限定されない:オレンジジュース、レモンジュース、パイナップルジュース、ツルコケモモジュース、およびキーウィーフルーツジュース。さらにまたは選択的に、酸凝固抵抗性乳は酸産生細菌、例えば乳酸産生細菌の培養物の添加により酸性化することができる。
【0053】
本発明の方法は、実施例8に記載するように、pH約2〜5.5、例えばpH約3.5〜約4.5に酸性化された乳を製造する。酸性化乳は、凝固しないでまたは沈降しないで少なくとも約10日間安定である。
第5の面において、本発明は、酸凝固に対して抵抗性であり、かつ対照乳に類似するか、あるいはそれよりも改良された官能特性を有するプロテアーゼ処理乳を提供する。本明細書において使用するとき、用語「対照乳」は、本発明の方法に従い処理されていないが、それ以外はプロテアーゼ処理乳に類似する乳を意味する。酸凝固抵抗性乳は、前述の本発明の方法を使用して製造することができる。ある態様において、実施例9に記載するように、少なくとも約5%の本発明の酸凝固抵抗性乳を含んでなる食物製品が提供される。
【0054】
第6の面において、本発明は、カルシウム吸収性が増加し、かつ対照乳に類似するか、あるいはそれよりも改良された官能特性を有するプロテアーゼ処理乳を提供する。増加したレベルのカルシウム吸収性を提供する乳は、前述の本発明の方法を使用して製造することができる。ある態様において、プロテアーゼ処理乳は1種または2種以上のカルシウム吸収増強剤を含んでなることができる。ある態様において、実施例9に記載するように、少なくとも約5%の増加したレベルのカルシウム吸収性を提供する乳を含んでなる食物製品が提供される。
【0055】
第7の面において、本発明は、粘度が増加し、かつ対照乳と同様な脂肪含有率を有するプロテアーゼ処理乳を提供する。粘度が増加した乳は、前述の本発明の方法を使用して製造することができる。ある態様において、実施例9に記載するように、少なくとも約5%の粘度が増加した乳を含んでなる食物製品が提供される。
【0056】
第8の面において、本発明は、凝固させないで酸性化された乳を提供する。酸性化乳は、前述の本発明の方法を使用して製造することができる。ある態様において、実施例9に記載するように、少なくとも約5%の酸性化乳を含んでなる食物製品が提供される。
【実施例】
【0057】
本発明を実施するために現在意図する最良のモードを下記の実施例を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものと解釈すべきでない。
実施例1
乳の加熱前にアルカリ性プロテアーゼを乳に添加する、酸凝固抵抗性乳を製造する本発明の代表的方法を実施例1に記載する。
【0058】
次のようにアゾカゼインの加水分解に基づくアッセイを使用して、アルカリ性プロテアーゼ (ALCALASE、2.4 LFG、Novozymes 、Franklinton、NC、USA) の活性を規定した:0.3 mlの0.1 M Tris‐HCl/10 mM CaCl2、pH 8.0中の1%のアゾカゼイン (Sigma Chemical Co.、米国ミゾリー州セントルイス) を、等しい体積の同一緩衝液中のプロテアーゼと混合した。この混合物を20℃において30分間インキュベートし、その後0.6 mlの氷冷トリフルオロ酢酸の添加により反応を停止させた。この混合物を4℃において25分間インキュベートした後、試料を4℃においてエッペンドルフ遠心機中で6,000 rpmで8分間回転させた。上清の吸収を340 nmにおいて測定した。アッセイ条件下にA340を0.1増加させるプロテアーゼ活性の量として、1単位 (U) の活性を規定する。
【0059】
アルカラーゼで乳を処理するプロトコルは、米国特許出願公開2002/0192333に記載されているものに類似した。462 Uのアルカラーゼを、250 mlの低脂肪 (1.5%の脂肪) UHT乳に、激しく混合しながら添加した。乳とプロテアーゼとの混合物を水浴中で62℃に加熱し、62℃において10分間インキュベートした。容器を85℃の水浴に移すことによって、混合物を85℃に加熱し、その温度においてさらに10分間インキュベートし、その後この混合物を室温の流れる水中で冷却した。
【0060】
酸凝固抵抗性について試験するために、アリコートのプロテアーゼ処理乳と、プロテアーゼの非存在下に同一熱処理に付した対照乳を、1.5 mlのエッペンドルフ管中で1体積の酢酸/9体積の乳の比で、氷酢酸と混合した。室温において10分後、管を倒立させた。酸凝固抵抗性乳は流動性に止まったが、対照乳は剛性ペーストに凝固した。
このプロトコルを使用して、プロテアーゼ処理により、乳試料の約60%から酸凝固抵抗性乳を製造した。変動性は乳の脂肪含有率と相関しなかった。全脂肪乳または脱脂乳を使用して、同様な結果が得られた。プロテアーゼ処理乳は、対照乳と本質的に区別できない感覚的性質、例えば、味覚、口当たり、きめ、外観、臭い、および粘度を有した。
【0061】
実施例2
予熱した乳にアルカリ性プロテアーゼを乳に添加する、酸凝固抵抗性乳を製造する本発明の代表的方法を実施例2に記載する。
実施例1に記載されているアッセイを使用して、アルカラーゼの活性を規定した。薄壁ステンレス鋼製容器中の250 mlの低脂肪 (1.5%の脂肪) UHT乳を62℃に加熱した。462 Uのアルカラーゼを激しく混合しながら加熱した乳に添加し、そしてこの混合物を62℃において10分間インキュベートした。次いで、容器を85℃の水浴に移すことによって、この混合物を急速に85℃に加熱し、その温度においてさらに10分間インキュベートし、その後この混合物を室温の流れる水中で冷却した。
【0062】
酸凝固抵抗性について試験するために、実施例1に記載されているアッセイを使用した。このプロトコルを使用して、プロテアーゼ処理により、乳試料の約98%から酸凝固抵抗性乳を製造した。わずかの乳試料は酸凝固に対して感受性であった。これらの試料は、プロテアーゼ処理前に、より強い熱処理、例えば、UHT乳の製造に使用した熱処理 (例えば、138℃において4秒) 後に酸凝固抵抗性を獲得した。
【0063】
全脂肪乳または脱脂乳を使用して、同様な結果が得られた。プロテアーゼ処理乳は、対照乳と本質的に区別できない感覚的性質、例えば、味覚、口当たり、きめ、外観、臭い、および粘度を有した。
【0064】
実施例3
パンクレアチンを使用して酸凝固抵抗性乳を製造する代表的方法を、この実施例により説明する。
実施例1に記載されているアッセイを使用して、パンクレアチン (Sigma Chemical Co.、米国ミゾリー州セントルイス) の活性を規定した。低脂肪UHT乳 (1.5%の脂肪) を約62℃に予熱し、そして4400 U/Lのパンクレアチンを攪拌しながら添加した。乳とプロテアーゼとの混合物を62℃において10分間インキュベートした。このインキュベーション期間後、温度を85℃に上昇させ、その温度においてさらに10分間インキュベートし、実施例2に記載するように、その後この混合物を室温の流れる水中で冷却した。
【0065】
酸凝固抵抗性について試験するために、実施例1に記載されているアッセイを使用した。このプロトコルを使用して、プロテアーゼ処理により、乳試料の約98%から酸凝固抵抗性乳を製造した。わずかの乳試料は酸凝固に対して感受性であった。これらの試料は、プロテアーゼ処理前に、より強い熱処理、例えば、UHT乳の製造に使用した熱処理 (例えば、138℃において4秒) 後に酸凝固抵抗性を獲得した。
全脂肪乳または脱脂乳を使用して、同様な結果が得られた。プロテアーゼ処理乳は、対照乳と本質的に区別できない感覚的性質、例えば、味覚、口当たり、きめ、外観、臭い、および粘度を有した。
【0066】
実施例4
この実施例において、乳をプロテアーゼで処理して、乳中のカルシウムの吸収性を増加させる方法を説明する。
実施例2および3に記載するように、UHT乳 (1.5%の脂肪) を2590 U/Lのアルカラーゼまたは4400 U/Lのパンクレアチンで処理した。2月齢のCF1雌マウスについて実施するアッセイを使用して、カルシウムの生物学的利用能を評価した。10 μlの [45Ca] 塩化カルシウム水溶液 (1 mCi/ml) を、500 μlの対照乳またはプロテアーゼ処理乳に添加した。試料を十分に混合し、1サイクルの凍結および融解に付して、放射性カルシウムと乳中に存在する種々のカルシウムプールとの平衡化を促進した。
【0067】
マウスを12〜72時間断食させ、その間水を自由に飲ませた。この期間後、マウスを個々のケージに入れ、50 μlの乳 (1 μCiの [45Ca] 塩化カルシウム) を与え、ここで乳をプラスチックのボックスの隅に配置して、ケージ中の乳のこぼれおよび不適当な分散を最小にした。マウスは通常3分以内に乳を捜し出し、乳を完全に飲んだ。1時間後、ジエチルエーテル蒸気に対する暴露により、マウスを麻酔し、殺した。マウスの尾を切除し、バイアルの中に入れ、秤量し、液体シンチレーションにより放射能を測定した。
【0068】
プロテアーゼ処理乳の投与は、対照乳の投与よりも高い放射能をマウスの尾において生じた。アルカラーゼ処理乳およびパンクレアチン処理乳中のカルシウムの吸収性は、対照乳よりも、それぞれ、約25%および400%だけ増加した。アルカラーゼ処理乳およびパンクレアチン処理乳の両方は、実施例1に記載されているアッセイにより測定して、酸凝固に対して抵抗性であった。
【0069】
実施例5
乳をプロテアーゼで処理し、プロテアーゼ処理乳にカルシウム吸収増強剤を添加することによって、乳中のカルシウムの吸収性を増加させる代表的方法をこの実施例に記載する。
【0070】
乳にカルシウム吸収増強剤、例えば、カゼインリンタンパク質 (CPP) 、ラクトース、およびビタミンD、または関係化合物を添加すると、カルシウム吸収が刺激されることが示された (Guegen他、(2000) J. Am. Col. Nutr. 19:199S‐136S) 。驚くべきことには、実施例4に記載されている方法に従い製造されたプロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収増加は、乳中のカゼインホスホペプチドに関連しなかった。こうして、CPPを添加するか、あるいはしないで、対照乳およびプロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収性を評価した。
【0071】
実施例4に記載するように、UHT乳 (1.5%の脂肪) をアルカラーゼで処理した。実施例4に記載されているアッセイを使用して、カルシウム吸収性を評価した。CPP源は、10 mg/Lのトリプシン処理により37℃において一夜十分に消化した再構成脱脂乳であった。10%のトリプシン処理乳を対照乳と、プロテアーゼ処理乳に添加した。
このアッセイの結果を表1に示す。実施例4に示すように、プロテアーゼ処理乳を投与すると、対照乳の投与よりも、マウスの尾中の放射能が高くなった。その上、アルカラーゼ処理乳中のカルシウム吸収の増強はCPPの添加によりさらに増加した。対照的に、対照乳へのCPPの添加はカルシウム吸収を増加しなかった。
【0072】
【表1】

【0073】
これらの結果により、プロテアーゼ処理はカルシウム吸収性を最大とするために十分ではないことが確証される。したがって、酸凝固抵抗性乳とカルシウム吸収を刺激する物質、例えばCPPとの組み合わせは、カルシウム吸収性を顕著に改良することができる。
【0074】
実施例6
乳をプロテアーゼで処理することによって乳の官能特性を改良する、本発明の代表的方法をこの実施例において説明する。
実施例2および3に記載されている方法を使用して、UHT乳 (1.5%の脂肪) を1850〜3700 U/Lのアルカラーゼまたは4000〜8000 U/Lのパンクレアチンで処理した。1850 U/Lのアルカラーゼで処理した乳は、実施例1および2に記載するように、対照乳と本質的に区別できない感覚的性質、例えば、味覚、口当たり、きめ、外観、臭い、および粘度を有した。増加する量のプロテアーゼを使用すると、乳の感覚的性質が改良された。例えば、増加した量のプロテアーゼを添加すると、乳がクリーム様になるような、増粘効果が生じ、これは、表2に示すように、オストワルド粘度計を使用する粘度の測定値に反映される。
【0075】
【表2】

【0076】
プロテアーゼ濃度を2220〜2960 U/Lのアルカラーゼに増加すると、酸凝固に対して抵抗性である、ますますクリーム様の、流動性乳が生じた。3700 U/Lのアルカラーゼを使用すると、クリームの脂肪含有率を含まない、クリームの粘着性およびきめを有し、耐酸凝固性である乳 (ミルク入りクレーム (creme au lait)) が生成した。
【0077】
プロテアーゼ処理は苦い味覚を生成しなかった。事実、感覚的性質の改良は味覚試験において容易に知覚された。例えば、16/18の経験をつんだユーザーは、2590 U/Lのアルカラーゼで処理した乳を対照乳より好んだ。
パンクレアチンを使用して、同様な結果が得られ、5000〜7000 U/Lのタンパク質濃度はますますクリーム様の乳を生成し、そして8000 U/Lのパンクレアチンはミルク入りクレームを生成した。
【0078】
実施例7
この実施例において、本発明の方法に従い処理した乳中のタンパク質の加水分解度を説明する。
実施例2および3に記載されている方法を使用して、UHT乳 (1.5%の脂肪) を1850〜3700 U/Lのアルカラーゼまたは4000〜8000 U/Lのパンクレアチンで処理した。トリニトロベンゼンスルホン酸 (TNBS) を使用して、プロテアーゼ処理乳の加水分解レベルを推定した。160℃において塩化水素蒸気を使用して、対照乳試料の完全な加水分解を12時間実施して、乳のアリコート中のペプチド結合を破壊し、完全な加水分解時に放出させることができる全アミノ基を評価した。このアッセイにおいて測定したプロテアーゼ触媒化加水分解度は、表3に示すように、予期せざる程に低かった。
【0079】
【表3】

【0080】
HCl処理により完全に加水分解された対照乳において測定した全アミノ基に関する、処理乳試料の各々においてTNBSで測定したアミノ基の百分率は、2.5%を超えなかった。パンクレアチン処理乳で、同様な結果が得られた。
これらの結果と一致して、タンパク質分布は対照乳とプロテアーゼ処理乳との間で有意な変化を示さなかった。12.5%および10%のポリアクリルアミドゲル中のドデシル硫酸ナトリウムの存在下にゲル電気泳動を実施し、次いでクーマッシーブルー染色を実施して、試料を分析した。これらの結果により、小程度の加水分解は、感覚的性質および酸凝固抵抗性の両方に関して、プロテアーゼ処理乳の特性に大きい効果を与えることができることが示される。
【0081】
実施例8
この実施例において、酸性化乳を製造する代表的方法を説明する。
実施例2および3に記載されているように、UHT乳 (1.5%の脂肪) をプロテアーゼで処理した。連続的に攪拌しながら、プロテアーゼ処理乳に乳酸 (85%) を約1.6% (v/v) に添加した。この方法により、pH 4の酸性化乳の安定な調製物が生成し、これは4℃において少なくとも10日間安定であった。乳酸の量を調節することによって、pH約3.5〜5.5の安定な酸性化乳の試料を製造した。
【0082】
また、他の酸性化剤、例えば、HClまたはフルーツ濃縮物を使用して、プロテアーゼ処理乳から安定な酸性化乳を製造した。フルーツジュース、例えば、粉末状オレンジジュースで酸性化されたプロテアーゼ処理乳は、乳から本質的に構成された、安定な、快い味覚の流体を生成した。酸性化乳のpHを2に近くまでして、凝固は生じなかった。酸性化乳は、凝固または沈降しないで、少なくとも10日間安定であった。対照的に、対照乳に粉末状オレンジジュースを添加すると、pH 4.6以下で凝固が生じた。
【0083】
実施例9
この実施例において、本発明のプロテアーゼ処理乳を含有する、典型的な食物製品を製造する方法を説明する。
ミルクカランエル (Milk Caran el):伝統的レシピを使用して、ミルクカラメルを作った。対照乳またはアルカラーゼ処理 (2590 U/L) 乳を、300 g/Lのスクロースおよび2.5%の重炭酸塩と混合した。これらの混合物をくつくつ音を立てる水浴中で攪拌しながら3時間加熱して、それらを褐色がかった色とし、それらの粘度をかなり増加させた。このミルクカラメルはきわめてすぐれた広がりを作り、対照乳およびアルカラーゼ処理乳の間に、味覚または他の感覚的性質の差は存在しなかった。
【0084】
飲めるヨーグルト:対照乳またはアルカラーゼ処理 (2590 U/L) 乳に10%の商用飲めるヨーグルトを接種し、これらの混合物を40℃において4時間インキュベートすることによって、飲めるヨーグルトを製造した。この時間に、pHは約4.5に低下した。プロテアーゼ処理乳および対照乳を使用して得られた結果は同様であった。
【0085】
クリームチーズ:ラブネ (labneh) として知られている製品のための伝統的中東レシピを使用して、クリームチーズを製造した。対照乳およびアルカラーゼ処理 (2590 U/L) 乳に、10%の商用固体状ヨーグルトを接種し、40℃において攪拌せずに4時間インキュベーションを実施した。次いで、培養物をチーズクロス上に収集し、液体を排出した。生ずる半固体状生成物は拡大容易なタイプのチーズであり、これに塩を加えることができ、必要に応じて、種々に香味づけすることができる。プロテアーゼ処理乳および対照乳を使用して得られた結果は同様であった。
【0086】
アイスクリーム:2体積の全卵、2.5体積のスクロース、7体積の対照乳またはアルカラーゼ処理 (2590 U/L) 乳、3体積のホイップクリーム、および必要に応じて、香味剤を混合することによって、アイスクリームを製造した。混合物を濃厚となるまで強くかき混ぜ、次いで約−20℃において凍結させた。
乳‐果物ジュース飲料:酸性化プロテアーゼ処理乳を使用して、安定な乳‐果物ジュース混合物を製造した。通常、消費前に、凍結フルーツジュースコンセントレートを3体積の水で希釈する。
【0087】
水の代わりに、凍結フルーツジュースコンセントレートを連続的に攪拌しながら3体積の対照乳または実施例8に記載するように製造した、乳酸でpH 4に酸性化したプロテアーゼ処理乳と混合して、乳‐果物ジュース混合物を形成した。対照乳を使用して調製した混合物は乳を凝固させたが、プロテアーゼ処理乳を使用して調製した混合物は少なくとも1ヶ月間安定であった。安定剤、例えば、ペクチンをプロテアーゼ処理乳との混合物に添加することは許容可能であったが、一般に不必要であった。
本発明の好ましい態様を例示しかつ説明したが、本発明の精神および範囲から逸脱しないで、種々の変化が可能であることが理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、加熱した乳を酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる、酸凝固抵抗性乳を製造する方法。
【請求項2】
前記乳がアンテロープ、バイソン、雌牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、およびシカから成る群から選択される動物からのものである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記乳が生乳、低温殺菌乳、または超高温処理乳である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記乳が全乳、再構成乳、濃縮乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳から成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1種または2種以上のプロテアーゼがアルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、アルカラーゼ、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、プロタメックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記乳を約40℃〜約90℃の温度において約5秒〜約12時間1種または2種以上のプロテアーゼで処理する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記加熱した乳の処理が下記工程を含んでなる請求項1に記載の方法:
(a) 前記乳を約55℃〜約70℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させ、そして
(b) 前記乳を約75℃〜約90℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させる。
【請求項8】
前記加熱した乳を約1500 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼと接触させる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記加熱した乳を約3000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させる、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記プロテアーゼ処理乳がpH約2まで酸凝固抵抗性である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
連続流れ系を使用して酸凝固抵抗性乳を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、加熱した乳をカルシウム吸収性の増加に有効な条件下に有効量の1種または2種以上のプロテアーゼで処理する工程を含んでなる、乳中のカルシウムの吸収性を増加させる方法。
【請求項13】
前記乳がアンテロープ、バイソン、雌牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、およびシカから成る群から選択される動物からのものである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記乳が生乳、低温殺菌乳、または超高温処理乳である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記乳が全乳、再構成乳、濃縮乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳から成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記1種または2種以上のプロテアーゼがアルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、アルカラーゼ、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、プロタメックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱した乳の処理が下記工程を含んでなる請求項12に記載の方法:
(a) 乳を約55℃〜約70℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させ、そして
(b) 乳を約75℃〜約90℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させる。
【請求項18】
前記乳を約1500 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼと接触させる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記乳を約3000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させる、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
連続流れ系を使用して乳中のカルシウムの吸収性を増加させる、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
前記プロテアーゼ処理乳にカルシウム吸収増強剤を添加する工程をさらに含んでなる、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
前記カルシウム吸収増強剤がカゼインホスホペプチド、カゼインホスホペプチドアナローグ、ラクトース、ラクトースアナローグ、ビタミンD、およびビタミンD関係化合物から成る群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記カルシウム吸収増強剤がカゼインホスホペプチドを含んでなる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
プロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収性が未処理乳のそれよりも少なくとも25%高い、請求項12に記載の方法。
【請求項25】
プロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収性が未処理乳のそれよりも少なくとも400%高い、請求項12に記載の方法。
【請求項26】
プロテアーゼ処理乳へのカルシウム吸収増強剤の添加により、プロテアーゼ処理乳中のカルシウムの吸収性が少なくとも約50%だけ増加する、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記乳を約40℃〜90℃の温度に加熱し、そして乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、乳の粘度を必要なレベルに増加させるために有効な条件下に、加熱した乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼと接触させる工程を含んでなる、乳の粘度を増加させる方法。
【請求項28】
前記乳がアンテロープ、バイソン、雌牛、ラクダ、ヒツジ、ヤギ、スイギュウ、およびシカから成る群から選択される動物からのものである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記乳が生乳、低温殺菌乳、または超高温処理乳である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記乳が全乳、再構成乳、濃縮乳、部分的脱脂乳、および脱脂乳から成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記1種または2種以上のプロテアーゼがアルカリ性プロテアーゼ、パンクレアチン、ブロメライン、パパイン、トリプシン、アスペルギルス (Aspergillus) 種からのプロテアーゼ、テトラヒメナ・テルモフィラ(Tetrahymena thermophila) が分泌するプロテアーゼ、アルカラーゼ、エスペラーゼ、ニュートラーゼ、プロタメックス、およびそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
前記加熱した乳の処理が下記工程を含んでなる請求項27に記載の方法:
(a) 乳を約55℃〜約70℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させ、そして
(b) 乳を約75℃〜約90℃の温度において約1分〜約15分間アルカラーゼまたはパンクレアチンと接触させる。
【請求項33】
前記乳を約2000 U/L〜約4000 U/Lのアルカラーゼと接触させる、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記乳を約5000 U/L〜約8000 U/Lのパンクレアチンと接触させる、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記プロテアーゼ処理乳の粘度を少なくとも約70%だけ増加させる、請求項27に記載の方法。
【請求項36】
連続流れ系を使用して乳の粘度を増加させる、請求項27に記載の方法。
【請求項37】
工程:
(a) 乳の官能特性にマイナスの影響を与えないで、酸凝固抵抗性乳の製造に有効な条件下に、乳を有効量の1種または2種以上のプロテアーゼと接触させ、そして
(b) 酸凝固抵抗性乳を酸性化剤と接触させて、凝固させないで酸性化乳を製造する、
を含んでなる、凝固させないで酸性化乳を製造する方法。
【請求項38】
前記酸性化剤が乳酸、クエン酸、塩酸、酒石酸、フマル酸、シトロリンゴ酸、コハク酸、およびアスパラギン酸から成る群から選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記酸性化剤が乳酸産生細菌である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記酸性化乳のpHが約2〜約4である、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
酸凝固抵抗性であり、かつ対照乳に類似するか、あるいはそれより改良された官能特性を有する乳。
【請求項42】
前記乳がpH約2〜4おいて凝固しない、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
少なくとも約5%の請求項41に記載の乳を含んでなる食物製品。
【請求項44】
酸凝固抵抗性乳と、フルーツジュースとを含んでなる、請求項43に記載の食物製品。
【請求項45】
乳が対照乳に類似するカルシウム含有率を有する、カルシウム吸収性が増加した乳。
【請求項46】
カルシウム吸収性が約25%〜約400%だけ増加した、請求項45に記載の乳。
【請求項47】
少なくとも約5%の請求項45に記載の乳を含んでなる食物製品。
【請求項48】
1種または2種以上のカルシウム吸収増強剤をさらに含んでなる、請求項45に記載の乳。
【請求項49】
カルシウム吸収性が少なくとも約50%だけさらに増加している、請求項48に記載の乳。
【請求項50】
少なくとも約5%の請求項48に記載の乳を含んでなる食物製品。
【請求項51】
乳が対照乳と同一の脂肪含有率を有する、粘度が増加した乳。
【請求項52】
乳の粘度が少なくとも約10%だけ増加している、請求項51に記載の乳。
【請求項53】
乳の粘度が少なくとも約70%だけ増加している、請求項51に記載の乳。
【請求項54】
少なくとも約5%の請求項51に記載の乳を含んでなる食物製品。
【請求項55】
酸凝固抵抗性である酸性化乳。
【請求項56】
乳がpH約2〜4において酸凝固抵抗性である、請求項55に記載の乳。
【請求項57】
少なくとも約5%の請求項55に記載の乳を含んでなる食物製品。

【公表番号】特表2006−515512(P2006−515512A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−500108(P2005−500108)
【出願日】平成15年5月5日(2003.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/014249
【国際公開番号】WO2004/030463
【国際公開日】平成16年4月15日(2004.4.15)
【出願人】(500586299)ノボザイムス アクティーゼルスカブ (164)
【出願人】(503260310)セーホーエル.ハンセン アクティーゼルスカブ (23)
【Fターム(参考)】