説明

プロテクター

【課題】ダストカバーの耐久性向上、信頼性向上を図ることができるプロテクターを提供すること。
【解決手段】ダストカバー1の周囲を覆うプロテクター4において、該プロテクター4が弾性体40を有し、該弾性体40がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とすることを特徴とするプロテクター4であり、該弾性体40がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、該弾性体40と固定部41が一体化手段により一体化されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車、二輪車、建設機械、農工機、産業機械などに用いられるダストカバーの周囲を覆うプロテクターに関し、詳しくはラフロードなどでダストカバーが破損するケースが多い用途に適用されるプロテクターに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの足回り部品として、シャシーを支える為にボールジョイントが数多く使用されている。ボールジョイントにはジョイントの動きを滑らかにする為にグリースが封入され、その飛散防止と外部からのゴミや埃、水などの進入を防ぐ為に通常、ダストカバーで覆われている。
【0003】
しかし、ダストカバーが破損し、封入グリースが外部に漏れ、ボールジョイント部にグリースがなくなると滑らかな動きがとれなくなるばかりでなく、焼きついて全く動かなくなることもある。そうなると自動車などは制御が効かなくなり、重大事故につながることもある。
【0004】
また同様にダストカバーが破損し、ゴミや埃、水などがボールジョイント部に浸入すると異物の存在や発生する錆などでやはりボールジョイントが滑らに動かなくなることがある。
【0005】
さらに、ダストカバーは、走行中の飛び石により頻繁に破損したり、また主にラフロードなどの走行では木の枝や、切り株に接触することで破損することもあった。
【0006】
かかる問題を解消するために、従来、ダストカバーを保護するプロテクターが使用されている。
【0007】
特許文献1〜3には、ダストカバーに組付けられた形のプロテクターが開示されているが、実際の作動の中で、プロテクターが脱落するおそれがあり、ダストカバーの動きが制約されたりしていた。
【0008】
また特許文献4には、ダストカバーの上半分あるいはそれに近い形状のプロテクターが開示されているが、下半分はダストカバーが露出しており、プロテクターの効果は十分でない欠点がある。
【0009】
さらに特許文献5、6には、ダストカバーに直接プロテクターを設けた技術が開示されている。
【0010】
また特許文献7〜9には、ダストカバーの周囲を覆うプロテクターが開示されている。
【特許文献1】特開昭62−147122号公報
【特許文献2】実開平2−18917号公報
【特許文献3】特開2004−251290号公報
【特許文献4】実開平7−41053号公報
【特許文献5】実開昭54−54769号公報
【特許文献6】実開昭57−203167号公報
【特許文献7】実開昭58−60022号公報
【特許文献8】登録実用新案第2562908号公報
【特許文献9】特表平2004−519641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかるに、特許文献5〜9には、プロテクターの材質について、特許文献7で硬質ゴム又は樹脂製としている程度で、他の文献は格別開示していない。
【0012】
しかし、特許文献7のように硬質ゴムや樹脂を用いた場合には、ダストカバーと接触した場合にダストカバーを破損させる問題がある。
【0013】
そこで、本発明は、ダストカバーの耐久性向上、信頼性向上を図ることができるプロテクターを提供することを課題とする。
【0014】
本発明の他の課題は、以下の記載によって明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の上記課題は、以下の各発明によって解決される。
【0016】
(請求項1)
ダストカバーの周囲を覆うプロテクターにおいて、該プロテクターが弾性体を有し、該弾性体がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とすることを特徴とするプロテクター。
【0017】
(請求項2)
ダストカバーの周囲を覆うプロテクターにおいて、該プロテクターが弾性体と固定部を有し、該弾性体がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、該弾性体と固定部が一体化手段により一体化されることを特徴とするプロテクター。
【0018】
(請求項3)
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが、
(A)エチレン/プロピレンゴム100重量部に対して、
(B)MFR(JIS K7210準拠230℃、2.16kg荷重)が、0.1〜100g/10分である結晶性ポリオレフィン樹脂10〜150重量部、
(C)40℃における動粘度が300mm/s以上である非芳香族系軟化剤20〜150重量部、
(D)有機過酸化物0.1〜10重量部を含有し、
部分的に架橋されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプロテクター。
【0019】
(請求項4)
前記弾性体と固定部の一体化手段が、化学的に一体化する手段、又は物理的に一体化する手段から選択されることを特徴とする請求項2又は3記載のプロテクター。
【0020】
(請求項5)
前記化学的に一体化する手段が、接着剤を用いる手段又は熱融着による手段から選択されることを特徴とする請求項4記載のプロテクター。
【0021】
(請求項6)
前記化学的に一体化する手段が接着剤を用いる手段であり、該接着剤がポリプロピレンを主成分とすることを特徴とする請求項5記載のプロテクター。
【0022】
(請求項7)
前記化学的に一体化する手段が接着剤を用いる手段であり、該接着剤が不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンを主成分とすることを特徴とする請求項5記載のプロテクター。
【0023】
(請求項8)
前記化学的に一体化する手段が接着剤を用いる手段であり、該接着剤が不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンとオレフィン系ポリマーを主成分とし、その比率が混合液中の固形分となる不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンとオレフィン系ポリマーを100重量部としたとき、
無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンが80重量部以上であり、オレフィン系ポリマーが20重量部未満であることを特徴とする請求項7記載のプロテクター。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ダストカバーがプロテクターと接触してもダストカバーを磨耗したり、破損したりすることがなく、またダストカバーを飛び石、木の枝、切り株などから保護してダストカバーの耐久性を向上させることができ、その結果、信頼性向上を図ることができる。
【0025】
また本発明によれば、上記のようにダストカバーの耐久性向上、信頼性向上を図ることが可能となるばかりでなく、また弾性体と固定部が一体化手段により一体化されることによって、プロテクターが作動中に脱落することがなく、図4に示すような樹脂の成形による金具のインサートを行った後さらに弾性体で成形固定するのと比較して、製造工程の簡略化(製作容易化)、品質向上を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳述する。
【0027】
図1は本発明に係るプロテクターの適用例を示す半裁断面図、図2は前記プロテクターの平面図である。
【0028】
図において、1はダストカバーであり、ボールジョイント2を保護する被覆材である。ダストカバー1は非常に重要な保安部品であり、主にゴムや熱可塑性エラストマーから構成されている。具体的にはゴムとしては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、ウレタンゴム、水素化ニトリルゴムなどを用いることができ、熱可塑性エラストマーとしては、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどを用いることができる。
【0029】
3は例えばアームであり、前記ボールジョイント2を固定している。
【0030】
4はプロテクターであり、弾性体40と固定部41によって構成され、固定部41は図面上斜線部で示された領域に存在し、図示しない固定手段(例えばボルト・ナット)によって前記アーム3に固定される。固定部41には例えば金具などを用いることもできる。
【0031】
本発明において、ダストカバー1とプロテクター4は、図示のように離間させて配置することが好ましく、本発明の効果を良好に奏する上では、プロテクター4の先端部とダストカバー1の距離で一番短い離間距離はダストカバーの形状にもよるが、概ね一般に使用されるダストカバーでは3〜10mmの範囲が好ましい。
【0032】
プロテクター4は、ダストカバー1の周りを覆い、外部からの飛び石や木の枝及び切り株に直接ダストカバーが接触しないようにするとともに、ダストカバー1が揺動や摺動の動きをしてプロテクター4に接触した際に、ダストカバー1を摩耗させないような材質のものが好ましく、本発明では、弾性体40の材質としてリサイクル可能なポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる。
【0033】
本発明においては、熱可塑性エラストマーの中でも、比較的低硬度で、ゴムライクで、コスト的にも安くできるものが好ましく、具体的には、
(A)エチレン/プロピレンゴム100重量部に対して、
(B)MFR(JIS K7210準拠230℃、2.16kg荷重)が、0.1〜100g/10分である結晶性ポリオレフィン樹脂10〜100重量部、
(C)40℃における動粘度が300mm/s以上である非芳香族系軟化剤20〜200重量部、
(D)有機過酸化物0.1〜10重量部を含有し、
部分的に架橋されたポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とするものである。
【0034】
ここで、「部分的に架橋された」というのは、エラストマー全体としてはA,B,C,Dを含有するが、混練工程で上記成分のうちのA成分とD成分とが架橋していることを指す。この場合、この架橋部分がゴム弾性を示し、これとその他の熱可塑性を呈する樹脂部分とが海島のミクロ構造を構成することにより、熱可塑性エラストマーとなる。
【0035】
以下に、上記の熱可塑性エラストマーについて成分ごとに説明する。
【0036】
(A成分)
エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合ゴムまたはエチレン/プロピレン2元共重合ゴムがあり、中でも好ましいのはエチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合ゴムである。エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合ゴムとしては、エチレン含有量が50〜80重量%、ヨウ素価は10〜25の範囲が好ましい。非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が用いられる。エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合ゴムは各種の市販EPDMを用いることができる。
【0037】
(B成分)
結晶性ポリオレフィン樹脂として好ましいのは、結晶性ポリプロピレン系樹脂が挙げられ、結晶性ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンを触媒存在下で重合して得られる熱可塑性樹脂で、アイソタクチック、シンジオタクチック構造などをとる結晶性高分子が用いられる。またこれらの結晶性高分子と少量のα−オレフィン(例えばエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル1−ペンテンなど)の共重合体を用いることもできる。
【0038】
中でも好ましいのは、MFR(JIS K7210準拠230℃、2.16kg荷重)が、0.1〜100g/10分で、結晶化度が20〜70%のものである。
【0039】
MFRが0.1g/10分より小さいと流動性が悪く、目的の成形性が得られない。また、100g/10分より大きいと十分な物性が得られない。
【0040】
結晶性ポリオレフィン樹脂の配合量は、エチレン/プロピレンゴム100重量部に対して、10〜100重量部の範囲が好ましく、より好ましくは20〜50重量部の範囲である。
【0041】
(C成分)
軟化剤としては、40℃における動粘度が300mm/s以上である非芳香族系軟化剤であれば、通常のゴムや熱可塑性エラストマーに使用されるものでよく、例えばプロセスオイル、潤滑油、パラフィン系オイルなどの石油系軟化剤、ひまし油、あまに油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油系軟化剤が挙げられる。
【0042】
軟化剤の配合量は、エチレン/プロピレンゴム100重量部に対して、20〜200重量部の範囲が好ましく、より好ましくは50〜150重量部の範囲である。
【0043】
(D成分)
架橋剤として用いる有機過酸化物としては、たとえば有機パーオキサイドが好ましく用いられ、有機パーオキサイドとしては、例えばジクミルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサンベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド、1,3−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)イソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、m−トレイルパーオキサイド、ジプロピオニルパーオキサイド等が挙げられる。
【0044】
有機過酸化物の配合量は、エチレン/プロピレンゴム100重量部当り0.1〜10重量部の範囲が好ましく、より好ましくは0.2〜10重量部の範囲であり、さらに好ましくは0.5〜8重量部の範囲である。
【0045】
(その他の成分)
本発明の弾性体には、通常ゴムや熱可塑性エラストマーに配合されているようなりん片状無機充填剤、粉末状固体充填剤、老化防止剤、その他各種の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加できる。
【0046】
無機充填剤としては、例えばクレー、珪藻土、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、金属酸化物、マイカ、グラファイト、水酸化アルミニウムなどを用いることができる。
【0047】
粉末状固体充填剤としては、例えば各種の金属粉、ガラス粉、セラミックス粉、粒状あるいは粉末ポリマーなどを用いることができる。
【0048】
老化防止剤としては、例えば、アミンおよびその誘導体、イミダゾール類、フェノール類およびその誘導体、ワックス類などが用いられる。
【0049】
各種の添加剤としては、例えば安定剤、粘着付与剤、離型剤、顔料、難燃剤、滑剤等を添加することができる。
【0050】
また、摩耗性、成形性などの改良のため、少量の熱可塑性樹脂やゴムの添加も可能である。更に、強度、剛性の向上のため短繊維等を本発明の効果を損なわない範囲で添加することもできる。
【0051】
これらの配合物は、加熱混練機、例えば、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、プラベンダー、ニーダー、高剪断型ミキサーなどを用いて溶融・混練りし、さらに、有機パーオキサイドなどの架橋剤、架橋助剤などを添加し、これら必要な成分を同時に混合し、加熱溶融混練りすることにより、容易に製造することができる。
【0052】
また、高分子有機材料と軟化剤とを混練りした熱可塑性材料を予め用意し、この材料を、ここに用いたものと同種か若しくは種類の異なる一種以上の高分子有機材料に更に混ぜ合わせて製造することもできる。
【0053】
本発明において、弾性体の材質としては、硬度(JIS デュロメータA)30〜70度のポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。硬度(JIS デュロメータA)が30度未満では、柔らかすぎ、実質的な強度が不足し、本来の目的である外部からの飛び石や木の枝及び切り株に対してのダストカバーの保護効果が十分得られない。また硬度(JIS デュロメータA)が70度を越えると、ダストカバーが揺動や摺動の動きをして、この部品に接触した際に、ダストカバーを摩耗させてしまい好ましくない。硬度(JIS デュロメータA)30〜70度の範囲であれば、枝や飛び石が来たときに自身の変形により破損を免れる効果がある。
【0054】
本発明において、弾性体40と固定部41は、自動車などに組みつけられた後に固定部41と弾性体40が簡単に離脱しないように、化学的に一体化する手段、又は物理的に一体化する手段から選択される手段により一体化される。弾性体40と固定部41を一体化手段により一体化すると、製造工程が短縮できて好ましく、また別部材によって構成されるより、プロテクターの品質を向上できて好ましい。
【0055】
本発明において、一体化というのは、弾性体40と固定部41が一体化手段により一体化された後に通常の外的な要因によっては両者を物理的にあるいは機能的に分離が出来ない状態に至っていることを意味する。
【0056】
前記化学的に一体化する手段は、接着剤やプライマーなどを用いる手段又は熱融着による手段から選択されることが好ましい。物理的に一体化する手段としては、例えば物理的な嵌合手段などを用いることができる。
【0057】
前記化学的に一体化する手段として特定の接着剤を用いる場合、該接着剤はポリプロピレンを主成分とすることが好ましい。
【0058】
かかるポリプロピレンとしては、不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンを用いることが好ましく、さらにかかる変性ポリプロピレンにオレフィン系ポリマーを主成分とすることがより好ましい。
【0059】
前記接着剤が不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンとオレフィン系ポリマーを主成分とする場合、その比率は混合液中の固形分となる不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンとオレフィン系ポリマーを100重量部としたとき、無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンが80重量部以上であり、オレフィン系ポリマーが20重量部未満であることが好ましい。優れた塗布性と塗布厚みを形成できるからである。
【0060】
具体的には弾性体40と固定部41の間に接着剤を有して、弾性体が熱可塑性エラストマーコンパウンドからなり、接着剤が不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンが固体状態で分散されて、更にオレフィン系ポリマーが炭化水素系溶剤に分散されてなる熱融着型接着剤を塗布し、蒸発乾固した固定部をインサートしておき、射出成形することにより瞬時に一体化できる。
【0061】
かかる一体化に用いられる変性ポリプロピレンはポリプロピレンに不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフトされたものである。原料となるポリプロピレンはプロピレンの単独重合体のほかプロピレンと他のα−オレフィン、例えばエチレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、2−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテンなどを5重量%程度共重合したものであってもよい。
【0062】
またグラフトされる不飽和カルボン酸又はその無水物としては、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和モノカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、アリルコハク酸、メサコン酸、グルタコン酸、ナジツク酸、メチルナジツク酸、テトラヒドロフタール酸、メチルヘキサヒドロフタル酸などの不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水アリルコハク酸、無水グルタコン酸、無水ナジツク酸、無水メチルナジツク酸、無水テトラヒドロフタール酸、無水メチルテトラヒドロフタール酸などの不飽和ジカルボン酸無水物などが挙げられ、これらの2成分以上の混合成分が同時にグラフトされたものであっても差し支えない。
【0063】
これらの不飽和カルボン酸あるいはその酸無水物のうちでは、マレイン酸、無水マレイン酸、ナジツク酸又は無水ナジツク酸を使用することが好ましい。
【0064】
グラフトの方法としては公知の方法を採用することができ、たとえば前記ポリプロピレンと上記不飽和カルボン酸等を溶媒の存在下、または不存在下、ラジカル開始剤を添加して、または添加せずに、高温に加熱することによって行われる。
【0065】
変性ポリプロピレンの性状として好ましいのは、X線回折法(該変性ポリプロピレンを200℃、500MPa(50kg/cm)で5分間熱プレスし、更に500MPa(50kg/cm)で5分間冷間プレスして作製した1mm厚シートを使用)により測定した結晶化度が50%以上、好ましくは55%以上であり、不飽和カルボン酸等のグラフト量が0.1〜10重量%、好ましくは0.3〜3重量%の範囲にあり、かつ135℃におけるデカリン中における極限粘度〔η〕が0.3〜1.5dl/g、好ましくは0.5〜1.2dl/gの範囲にあるものである。
【0066】
結晶化度が50%より低いものを用いても、後述の分散粒子の結晶化度を70%以上にすることは困難である。またグラフト量が0.1重量%より少ないと金属類に対する接着性が劣るようになり、一方10重量%を越えると、ポリオレフィン類との接着に劣るようになる。また極限粘度〔η〕が0.3dl/gより小さいと、変性ポリプロピレンの凝集力が不足して接着力に欠けるようになり、一方1.5dl/gを越えると溶融時の流動性に欠けるため、平滑な塗膜又は接着層が得られにくくなる。
【0067】
本発明において、熱融着型接着剤を得る樹脂分散物は、前記変性ポリプロピレンを炭化水素系溶剤に固体状態で分散し、更にオレフィン系ポリマーを炭化水素系溶剤に溶解して得ることもできる。
【0068】
炭化水素系溶剤としては、変性ポリプロピレンを高温で溶解し、かつ常温で実質上溶解しないもので、沸点が120℃以上あるものであり、例えば、キシレン等の芳香族系炭化水素である。
【0069】
なお、本発明の効果を阻害しない範囲内で、塩素化炭化水素系溶剤や極性溶剤を混合して用いてもかまわない。分散状態にある変性ポリプロピレン粒子は一般に、また好ましくは球状であるが、必ずしも球状である必要はない。
【0070】
粒子の平均粒径は通常1〜20μ、好ましくは5〜15μである。また分散物中の変性ポリプロピレン粒子濃度(固形分濃度)は通常5〜40重量%である。
【0071】
本発明の樹脂分散物を常温下で蒸発乾固すると、変性ポリプロピレンの粒子粉体が得られる。該粉体に熱を加えることなく粉体のままX線回折法により測定した結晶化度は70%以上、好ましくは75〜85%の範囲にあることが必要である。
【0072】
該結晶化度が70%未満であるものは、粒子が炭化水素径溶剤中で膨潤あるいは溶解しやすくなり、その結果粒子が凝集しやすくなる。また該粒子の極限粘度〔η〕および該粒子を構成する変性ポリプロピレンの不飽和カルボン酸等の含有量は前記範囲にあることが必要であり、その理由も同一である。
【0073】
なお本発明の樹脂分散物中には、目的に反しない限り、顔料、充填剤、安定剤その他添加剤が含まれていてもよい。
【0074】
熱融着型接着剤を塗布する塗布方法としては、浸漬塗布、スプレー塗布、スクリーン印刷、刷毛塗り、スタンプ方式など必要に応じて最適な方法を選択する。
【0075】
以上詳述したような本発明による弾性体と固定部である金具の一体化手段によれば、図3に示すように、(A)の金具41を、(B)のように特定の接着処理を施し(例えば特定の接着剤を使用し)、(C)のように直接にポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とする弾性体40への一体成形が可能になる。
【0076】
本発明のような構成を採用せず、即ち特定の接着剤を使用しない場合、図4に示すように、(A)の金具41を、(B)のように接着剤の都合により金具41に樹脂(PP)42を一度成形し(樹脂の成形による金具のインサートを行う)、これをさらに(C)のように弾性体40で成形固定する手法が考えられる。この手法では、金具インサート工程が増加するなどの問題があるが、本発明では上述のようにかかる工程が不要であり、弾性体としてポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いているので、上記一体化手段とも相俟って品質向上を可能にする。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0078】
実施例1−5
(サンプル構成)
表−1に示した構成中の各種サンプルは以下のものを用いた。
【0079】
<エチレン/プロピレン/非共役ジエン3元共重合ゴム>
サンプルA:EPDM〔三井化学(株)製、商品名:EPT3045〕
<結晶性ポリオレフィン樹脂>
サンプルB:ポリプロピレン系樹脂〔出光興産(株)製、商品名:J700GP〕
<軟化剤>
サンプルC:パラフィン系オイル〔出光興産(株)製、商品名:ダイアナプロセスオイルPW380〕
<有機過酸化物>
サンプルD:ジクミルパーオキサイド〔日本油脂(株)製、商品名:パークミルD〕
【0080】
(評価サンプル作成処方)
熱可塑性エラストマー組成物としては、表1に示した配合物を所定量計量し、二軸押出機[(株)神戸製鋼所製:ハイパーKTX46]にて、設定温度180〜210℃、回転速度150rpmの条件にて混合押出しを行ない得られた。
【0081】
本材料を射出成形機[川口鉄工(株)製:KM−80]を用い、設定温度180〜210℃、射出速度0.5秒、射出圧力100MPa、サイクルタイム30秒にてテストシート(150×150×2mm)成形し、硬度、耐破性試験に用いた。
【0082】
次に接着剤としては、所定量の無水マレイン酸変性ポリプロピレンとキシレンを攪拌機付きのオートクレーブに入れ、140℃に加熱して樹脂を完全に溶解した後、攪拌しながら冷却(30℃まで降温)し、乳白色の均一な分散物となった熱融着型接着剤を得る。そこに予め同様の方法で溶解したポリオレフィン溶液(分散物ではない)を所定量加えた。
【0083】
この接着剤の塗布性を評価するために岩田式カップ粘度計による流下時間を測定した。
【0084】
このようにして製造した接着剤をアルミ板に塗布・風乾した後、180℃にセットしたエアー・オーブン中で30秒間加熱した塗工板に短冊状(20mm×50mm×厚さ2mm)の各種熱可塑性エラストマーを180℃で5分間、0.5kg/cmの圧力をかけて熱接着した後、接着性を評価するため常温における剥離強度(せん断剥離)を測定した。
【0085】
また、同様にあらかじめ金具に各種接着剤を塗布し、その金具を、金型にインサートしておき、設定温度180〜210℃、射出速度0.5秒、射出圧力100MPa、サイクルタイム30秒で弾性体部を成形し、プロテクターの成形性評価を行なった。
【0086】
このプロテクターを取り付けたダストカバーの製品機能試験(室温揺動耐久試験)を行い、プロテクターの耐久性を評価した。
【0087】
(評価方法)
(1)硬度
厚さ2mmのテストシートを3枚重ね合せ、JIS K6253に準じて測定し、その結果を表1に示す。
【0088】
(2)耐破性
厚さ2mmのテストシートを1枚台座の上に置き、その上に円錐(先端R2、底面直径30mm、重量60g)状の治具を置き、円柱状の重り(500g)をその上に落下させたときに貫通亀裂が発生する高さで耐破性を試験し、以下の評価基準に従い判定し、その結果を表1に示す。
<評価基準>
重り高さが20mm以上:○
重り高さが20mm未満:×
【0089】
(3)塗布性
岩田式カップ粘度計において25℃のときの流下時間を測定し、以下の評価基準に従い判定し、その結果を表1に示す。
<評価基準>
20〜100秒:○
20秒未満あるいは100秒以上:×
20秒未満のときは固形分濃度が薄く、乾燥後所定量の接着剤厚みを得られず、接着力が不足する。また100秒以上のときは粘度が高すぎ、塗布量をコントロールしにくいという問題がある。
【0090】
(4)接着性
接着剤をアルミ板に塗和・風乾した後、180℃にセットしたエアー・オーブン中で30秒間加熱した塗工板に短冊状(20mm×50mm×厚さ2mm)の各種熱可塑性エラストマーを180℃で5分間、5MPa(0.5kg/cm)の圧力をかけて熱接着した後、常温における剥離強度(せん断剥離)を測定し、以下の評価基準に従い判定し、その結果を表1に示す。
<評価基準>
剥離強度2.0(kg/20mm)以上:○
剥離強度2.0(kg/20mm)未満:×
剥離強度2.0(kg/20mm)未満のときは、製品取り付け時など、固定部(金具部)が離脱し、目的の性能が得られない。
【0091】
(5)成形性
あらかじめ固定部(金具)に接着剤を塗布し、その金具を、金型にインサートしておき、設定温度180〜210℃、射出速度0.5秒、射出圧力100MPa、サイクルタイム30秒で弾性体部を成形し、プロテクターの成形性評価を行なった。製品の射出成形において、以下の評価基準に従い判定し、その結果を表1に示す。
<評価基準>
不具合なし:○
不具合あり:×
不具合とは、離型時に金具と一体化できない(剥れる)か、一体化しても部分的に剥れる部分がある状態。
【0092】
(6)製品耐久性
このプロテクターを取り付けたダストカバーの製品機能試験(室温揺動耐久試験)を行い、以下の評価基準に従い判定し、その結果を表1に示す。
<評価基準>
不具合なし:○
不具合あり:×
不具合とは、試験後の外観でダストカバーが摩耗もしくは破損している状態。この現象は試験中ダストカバーとプロテクターが擦れ合うことがあるために発生する。
【0093】
比較例1−5
実施例1において、サンプル構成あるいは配合比などを表1に示すように代えた以外は同様にして、評価し、その結果を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
実施例6−10及び比較例6−8
実施例1において、サンプル構成あるいは配合比などを表2に示すように代えた以外は同様にして、評価し、その結果を表2に示す。
【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明のプロテクターは、特にラフロードなどでダストカバーが破損するケースが多い用途に適用されるが、それ以外に、ダストカバーが取り付けられている自動車、二輪車、建設機械、農工機、産業機械などの各種用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係るプロテクターの適用例を示す半裁断面図
【図2】図1のプロテクターの平面図
【図3】本発明の弾性体と固定部の一体化手段の一例を示す説明図
【図4】従来例の弾性体と固定部の一体化手段を示す説明図
【符号の説明】
【0099】
1:ダストカバー
2:ボールジョイント
3:アーム
4:プロテクター
40:弾性体
41:固定部(金具)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダストカバーの周囲を覆うプロテクターにおいて、該プロテクターが弾性体を有し、該弾性体がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とすることを特徴とするプロテクター。
【請求項2】
ダストカバーの周囲を覆うプロテクターにおいて、該プロテクターが弾性体と固定部を有し、該弾性体がポリオレフィン系熱可塑性エラストマーを主成分とし、該弾性体と固定部が一体化手段により一体化されることを特徴とするプロテクター。
【請求項3】
前記ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが、
(A)エチレン/プロピレンゴム100重量部に対して、
(B)MFR(JIS K7210準拠230℃、2.16kg荷重)が、0.1〜100g/10分である結晶性ポリオレフィン樹脂10〜150重量部、
(C)40℃における動粘度が300mm/s以上である非芳香族系軟化剤20〜150重量部、
(D)有機過酸化物0.1〜10重量部を含有し、
部分的に架橋されていることを特徴とする請求項1又は2記載のプロテクター。
【請求項4】
前記弾性体と固定部の一体化手段が、化学的に一体化する手段、又は物理的に一体化する手段から選択されることを特徴とする請求項2又は3記載のプロテクター。
【請求項5】
前記化学的に一体化する手段が、接着剤を用いる手段又は熱融着による手段から選択されることを特徴とする請求項4記載のプロテクター。
【請求項6】
前記化学的に一体化する手段が接着剤を用いる手段であり、該接着剤がポリプロピレンを主成分とすることを特徴とする請求項5記載のプロテクター。
【請求項7】
前記化学的に一体化する手段が接着剤を用いる手段であり、該接着剤が不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンを主成分とすることを特徴とする請求項5記載のプロテクター。
【請求項8】
前記化学的に一体化する手段が接着剤を用いる手段であり、該接着剤が不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンとオレフィン系ポリマーを主成分とし、その比率が混合液中の固形分となる不飽和カルボン酸またはその無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンとオレフィン系ポリマーを100重量部としたとき、
無水物によって一部若しくは全部がグラフト変性された変性ポリプロピレンが80重量部以上であり、オレフィン系ポリマーが20重量部未満であることを特徴とする請求項7記載のプロテクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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