説明

プロテーゼ修復用繊維

【課題】解剖学的弱体化又は欠損の修復・補強を目的とした、特に軟組織及び筋壁の開口部の修復に移植可能なプロテーゼを提供する。
【解決手段】プロテーゼは、略三角形形状をした本体及び本体基部から外側に延在する2つの尾部を有した修復用繊維を含む。略ハート形の構成を備えた修復用繊維を提供するように、尾部は丸みを帯びている。開口部は、本体基部に沿って食道等の管状構造を受容する2つの尾部の間に提供される。プロテーゼは、組織成長を可能にするように構築・配置され、組織及び器官への浸食並びに組織及び器官との癒着形成の影響を受けやすい繊維層を含む。プロテーゼの1つ以上の領域は、組織及び器官への浸食や組織及び器官との癒着形成を阻止するように構成し得る。プロテーゼは、尾部に付着し、開口部の一部を覆っている端バリアを含み得る。端バリアの一部は、管状構造を開口部の端部から分離するために、開口部内へ折り畳むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、移植可能なプロテーゼに関するものであり、より具体的には、軟組織の修復および再構成に使用するためのプロテーゼ修復用繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の詳細
組織および筋壁ヘルニアなどの解剖学的欠損を修復および補強するための種々のプロテーゼ修復用材料が提案されている。例えば、生来の開口部または食道は、横隔膜中の「裂孔」を通って延在するが、裂孔ヘルニアにおいては、それが拡大し、胃が裂孔から胸郭腔へと通るようになる。
【0003】
裂孔ヘルニアの代表的な外科的治療として、脚形成を挙げることができ、これは、食道周囲の横隔膜脚を締めることによる裂孔ヘルニアのサイズ減少化に関与する。裂孔ヘルニアの外科的治療にプロテーゼ修復用繊維を使用することも公知である。一般的には、長方形の標準シートにおいて商品として入手できるバード・メッシュ(BARD MESH)などの外科用メッシュ繊維のシートを外科医によって、直方形または楕円形など、具体的患者の裂孔の修復に好適な形状へと注文形成された。一般に、外科医は、メッシュインプラントを裂孔ヘルニアの上方に配置した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
裂孔ヘルニア修復のための予備形成したプロテーゼを提供することが、本発明の特定の実施形態の一つの目的である。
【0005】
食道、胃および/または他の周囲の臓器などの術後の組織および器官に対する癒着ならびに組織および器官の浸食の発生を減少させる、裂孔ヘルニアなどの組織欠損修復用プロテーゼを提供することが、本発明のある実施形態の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
発明の概要
本発明の例示的一実施形態において、管状構造の周囲の組織または筋壁の欠損を修復するために、移植可能なプロテーゼが提供される。前記移植可能なプロテーゼは、移植可能な生物学的適合性材料の修復用繊維を含む。前記修復用繊維は、管状構造を受容するために構成されている開口部を有する。前記修復用繊維は、本体部分および本体部分から延在している第1と第2の尾部を含む。前記本体部分は、第1部分と第2部分を有する基部のある略三角形に構成される。第1の尾部は、前記基部の第1部分から延在し、第2の尾部は前記基部の第2の部分から延在している。前記開口部は、第1の尾部と第2の尾部との間の前記基部に沿って位置している。
【0007】
本発明の他の例示的実施形態において、管状構造の周囲の組織または筋壁の欠損を修復するために、移植可能なプロテーゼが提供される。前記移植可能なプロテーゼは、移植可能な生物学的適合性材料の修復用繊維を含む。前記修復用繊維は、外側外周の一部に沿って管状構造を受容するために構成されている開口部を有する略ハート形の外側外周部を有する。
【0008】
本発明のさらなる例示的実施形態において、管状構造の周囲の組織または筋壁の欠損を修復するために、プロテーゼ修復用繊維を提供する。前記プロテーゼ修復用繊維は、組織および器官との癒着形成ならびに組織および器官内への浸食の影響を受けやすい繊維層および前記繊維端との癒着形成を阻止するために構成されている端バリアを含む。前記繊維層は、管状構造を受容するように構成されている開口部を有する。前記修復用繊維は、本体部分および本体部分から延在している第1と第2の尾部を含み、前記開口部は、第1と第2の尾部の間の繊維端に沿って配置されている。前記端バリアは、第1の付着点で第1の尾部に、第2の付着点で第2の尾部に付着している。第1および第2の付着点は、開口部分を越えて互いに一列に整列している。端バリアの一部は、開口部の一部を覆い、第1の付着点と第2の付着点との間に延在している。
【0009】
本発明の他の目的および特徴は、添付の図面と関連させると以下の詳細な説明から明らかになろう。これらの図面はあくまでも例示を目的として意図されており、本発明を限定する定義として意図されてはいないことを理解すべきである。
【0010】
本発明の前述ならびに他の目的および利点は、下記の図面からより十分に理解されるであろう。ここで同様の引用文字は同様な特徴を示している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の例示的一実施形態によるプロテーゼ修復用繊維の平面図を表している。
【図2】図1のプロテーゼ修復用繊維の底面図を表している。
【図3】図1のプロテーゼ修復用繊維の切断線3−3に沿った断面図を表している。
【図4】本発明の他の例示的実施形態によるプロテーゼ修復用繊維の平面図を表している。
【図5】図4のプロテーゼ修復用繊維の底面図を表している。
【図6】図4のプロテーゼ修復用繊維の切断線6−6に沿った断面図を表している。
【図7】図6と同様のプロテーゼ修復用繊維の、プロテーゼ反転前の断面図を表している。
【図8】図4のプロテーゼ修復用繊維を製作する製造過程の略図を表している。
【図9】図4のプロテーゼ修復用繊維を製作する製造過程の略図を表している。
【図10】図4のプロテーゼ修復用繊維を製作する製造過程の略図を表している。
【図11】端バリアが、第1の折りたたみ線に沿って部分的に折りたたまれた図4のプロテーゼ修復用繊維の部分的平面図を表している。
【図12】図11のプロテーゼ修復用繊維の切断線12−12に沿った断面図を表している。
【図13】端バリアが、第2の折りたたみ線に沿って部分的に折りたたまれた図4のプロテーゼ修復用繊維の部分的平面図を表している。
【図14】図13のプロテーゼ修復用繊維の切断線14−14に沿った断面図を表している。
【図15】本発明の他の例示的実施形態によるプロテーゼ修復用繊維の部分的平面図を表している。
【図16】本発明のさらに他の例示的実施形態によるプロテーゼ修復用繊維の平面図を表している。
【図17】本発明の他の例示的実施形態によるプロテーゼ修復用繊維の平面図を表している。
【図18】図17のプロテーゼ修復用繊維の底面図を表している。
【図19】図17のプロテーゼ修復用繊維の切断線19−19に沿った断面図を表している。
【図20】食道に係った際の図17のプロテーゼ修復用繊維の耐浸食性端部の緩和効果を例示する略図を表している。
【図21】食道に係った際の図17のプロテーゼ修復用繊維の耐浸食性端部の緩和効果を例示する他の略図を表している。
【図22】本発明のさらなる例示的実施形態によるプロテーゼ修復用繊維の図19と同様な断面図を表している。
【図23】本発明の他の例示的実施形態による移植可能なプロテーゼを製作するための修復用繊維の平面図を表している。
【図24】図23の修復用繊維を折りたたむことによって形成される移植可能なプロテーゼの平面図を表している。
【図25】図24の移植可能なプロテーゼの切断線25−25に沿った断面図を表している。
【図26】食道に近位の腹腔内に移植された図17のプロテーゼ修復用繊維を例示する略図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例証的実施形態の説明
本発明は、解剖学的弱体化または欠損の修復または補強を目的とした、特に軟組織および筋壁の開口部の修復に好適な移植可能なプロテーゼに関する。理解を容易にするため、また本発明の範囲を限定することなく、本特許の扱うプロテーゼを、特に裂孔ヘルニアの修復に関連させて下記に説明する。しかし、前記プロテーゼは、それに限定されず、当業者には自明であるような他の解剖学的操作においても使用し得ることを理解すべきである。例えば、前記プロテーゼは、管状構造または他の突出物が修復および/または補強を要する組織筋肉または器官壁における開口部から延在しているか、またはそれを通っている場合に使用できる。
【0013】
前記プロテーゼは、前記プロテーゼに接触し得る食道または他の管状構造など隣接した組織または器官内への手術後浸食の発生を減少させるように構成し得る。組織および器官は、特に、横隔膜などの動的環境において、プロテーゼの繊維材料の平面を横断している組織および器官の近位に位置しているプロテーゼの修復用繊維の端部による浸食または摩損を特に受け易いと思われる。したがって、前記プロテーゼは、隣接した組織または各器官内への浸食の発生を減少させるために、修復用繊維の端部を緩衝する、あるいは、分離するために作用する1つ以上の耐浸食性端部を備え得る。
【0014】
耐浸食性の特徴を有するプロテーゼは、裂孔ヘルニア修復に特に好適であり得る。食道は、横隔膜における欠損の平面に近位の、一般に垂直な突出構造を呈する。横隔膜は、咳またはくしゃみの場合、突然の極めて激しい運動が生じて呼吸を助けるように動き、一方、食道は嚥下および吐出を助けるように動く。食道と横隔膜のこの非常に動的な環境により、欠損の修復用に植え込まれたプロテーゼによる食道の浸食可能性が増大する恐れがある。
【0015】
隣接した組織および器官内への浸食は、プロテーゼ修復用繊維の種々の要因および特徴によって影響を受け得る。例えば、より変形可能なプロテーゼ材料は、より硬い材料よりも隣接した組織および器官内への浸食が起こりにくい。同様に、浸食を減少させるために、より滑らかな、またはより摩損性でない材料が望ましいと思われる。より広い端部は、より広い表面積に亘って力を分散するのに役立ち、組織および器官の浸食を減少し得るように隣接した組織および器官に供された端部の表面積は、他の要因となり得る。前記修復用繊維の端部は、前記修復用繊維と隣接した組織および器官との間に緩和または緩衝効果を生み出すある程度の弾性またはスプリング様作用を備え得る。このように前記プロテーゼは、組織または器官の浸食を減少させる、または阻止するためにこれらの、または他の特徴または当業者には自明であるような特徴のいずれか1つ、または2つ以上の組合せによって構成し得る。
【0016】
前記プロテーゼは、組織内部に深く、またはさらに組織を通って進入する可能性があり、および/または、組織がプロテーゼに癒着して身体や筋肉の動きによって繰り返し引き裂かれる可能性があるため、幾つかの場合においてインプラントへの癒着は望ましくないと考えられる。このような癒着および/またはその結果生じる食道または他の管状突出物などの管状構造周囲の瘢痕組織は、その構造の狭窄を導く恐れがある。
【0017】
下記に検討した実施形態は、組織浸透的な1つ以上の部分を有するインプラントを含むが、本発明はそれに限定されず、組織の成長用に配置されていないプロテーゼも考慮される。さらなる実施形態は、組織浸透的なあるいは、浸食および/または癒着に感受性の部分が浸食および/または癒着形成に対して抵抗性のあるインプラントを含む。特定の実施形態において、前記インプラントの一部または全部が組織の成長用に配置されるが、他の実施形態においては、前記インプラントの一部または全部が組織の成長に抵抗するように、あるいは、浸食および/または癒着の形成および隣接する組織または器官の狭窄に抵抗するように配置できる。組織の成長部分およびバリア部分の位置は、下記に検討するように前記インプラントの端部、前記インプラントの表面および/または前記インプラントの本体部分に沿って変化し得る。
【0018】
裂孔修復に関連した、本発明によるインプラントは、裂孔の拡大したまたは弱体化した部分を覆うために構成および配置された本体部分または脚形成において配置されるなど、ヘルニアの修復に使用される手術用縫合糸を含み得る。本体部分の一部または全部は組織浸透性であってもよく、組織の成長に対して不浸透性であってもよく、あるいは耐浸食性であってもよく、または組織浸透性領域と耐浸食性領域との組合せを含んでもよい。幾つかの実施形態において、前記プロテーゼは、浸食の発生および/または術後癒着の形成、または管状構造の狭窄を減少させるために配置し得る。前記インプラントは、プロテーゼ修復用材料の単層または複層から形成でき、プロテーゼ材料の層数は、前記インプラントの種々の部分において変化し得る。
【0019】
前記インプラントは、食道または他の管状構造を受容するために適合させた完全な、または部分的な開口部を有し得る。前記開口部は、前記インプラントの側面のいずれか一方、または組合せに沿って形成し得るか、または本体部分の内部に、または本体部分を通って供し得る。本特許明細書、ならびにそれに関連する任意の請求項の目的のために、食道または管状構造を受容するように適合させた「開口部」の特徴として、食道を完全に包囲するように構成されている完全開口部および食道を部分的にのみ包囲するように構成されている部分的開口部が挙げられるが、「完全」または「部分的」の限定する定義は用いない。前記開口部は、食道付近にインプラントを配置するように構成され、配置されている円形または任意の他の形状を有し得る。
【0020】
裂孔ヘルニア修復のため、前記プロテーゼは、1対の尾部を有する略三角形の形状の本体を含むことができ、前記尾部は、本体頂点の向かい側の本体基部から延在している。食道を受容するための開口部は、前記基部と尾部対との間に形成できる。より具体的には、前記インプラントは、脚の形状に適合する略ハート形または矢じり形の構成を有し得る。他の適用に対して、円形、卵形すなわち卵形(ovoid or egg shape)、C型、蝶結び形、蝶形、長方形、弓形および当業者には自明であるような他の形状を有し得る。前記インプラントは、前方端、後方端、中央面および横面によって画定されている。前記の面と端は、同一のまたは異なった長さおよび/または形状であり得る。面および端はいずれも、単一の直線端、曲線端、分枝または収束するセグメントおよび当業者には自明であるような他の形状を形成する端を含み得る。端から端へ、または面から面へ視たインプラントは、対称的形状であっても、または非対称的形状であってもよい。
【0021】
前記インプラントは、前後方向、中央横方向、または前後方向と中央横方向の組合せにおいて延在し得る。また、全方向において実質的に同じ長さを有するインプラントも考慮される。前記インプラントは、外科的操作の前に、または外科的操作時に外科医によって予め形状化してもよいし、または慣例的に形状化してもよい。同様に、前記インプラントは、スリットおよびキーホール開口部を有して予め配置してもよいし、またはこれらの特徴の1つまたは双方を外科医の形成に任せてもよい。
【0022】
前記インプラントは、移植前などの圧力のかかっていない状態かまたは自然状態においては、一般に平坦な、または平面的な形状を有してもよいし、または1つ以上の面上に凹面および/または凸面の形状を有して配置してもよいし、または複合的な三次元的形状を含んでもよい。ひもまたは他の部材を前記インプラントに通して、ひもの端を引いて、インプラントの外側へ伸ばすなどして操作し、プロテーゼを所望の形状に変形してもよい。前記インプラントは、このインプラントに係合している、あるいは接触していて、自然にまたはある力(例えば、熱)の適用時に、予め決められた形状にプロテーゼを形成させる金属薄片、ポリマーなどの部材に影響を与える形状を備え得る。
【0023】
前記インプラントは、腹腔鏡検査操作時に前記繊維を外科部位に適合させ、送達を容易にする外科医の操作を可能にするように十分に可撓性であってもよいし、または、修復装置の圧縮および/または拡張を制限するより硬直性の配置を有してもよい。特定の実施形態において、前記インプラントは、折り重ね、巻きによるなど、あるいは、腹腔鏡カニューレまたはトロカールの狭い管腔を通して送達できる細長い構成へと折りたたみ可能であってもよい。前記インプラントの可撓性は、インプラントが構成されている材料、部材に影響を与えている何らかの形状、インプラントの材料に適用された処置および縫合量またはインプラント本体における他の付属物の特徴などの多くの要因によって影響される。
【0024】
前記インプラントの一定部分は、例えば、本発明を限定はしないが、バリア材料をプロテーゼの選択的領域に適用することにより、また、インプラントの選択された多孔性領域の多孔性を低下させ、好ましくは、組織浸透に対して不浸透性にすることにより、また、当業者には自明であるような他の配置によって形成できるバリアを含み得る。前記バリアは、食道および/または腹部臓器を、摩損的または組織浸透的なインプラントの選択された部分から分離して、浸食、癒着、圧縮などに伴う食道、胃、肝臓および腸の外傷の発生を減少させるように配置し得る。
【0025】
例として、限定はしないが、食道および臓器をインプラントに対する浸食および/または癒着の可能な種々の箇所から分離するために考慮された本発明の配置では、開口端が、開口部を通る食道の一部から分離されるように、開口端バリアを有した開口端を配置できる。インプラントの第1の面または横隔膜が面しているインプラントの面上の開口部の周囲の周縁領域もまた、端バリアにより分離でき、開口部を通って延在し且つ開口部に隣接した食道のセグメントと、開口部の周縁部との間の予想される接触を制限できる。臓器に面することになるプロテーゼの第2の面の一部または全部は、面バリアを含んでもよい。面バリアは、実質的に第2の面全体を覆うように配置してもよい。プロテーゼの外縁部による中空臓器との癒着を防ぐために、プロテーゼの外端に、さらに外端バリアを配置してもよい。また、繊維層の外端に隣接して延在している第1の面の周縁部を分離するために、外端バリアを構成または延在させてもよい。種々のバリア部分の形状と大きさは、当業者には自明であるような変更を行うことができ、本発明は図に例示されたバリア部分の特定の形状に限定されない。
【0026】
図1〜3は、軟組織および筋壁の欠損、特にある組織、筋肉または器官壁の開口部から、またはそれらを通って延在している食道、または他の突出物などの管状構造の近位に位置している欠損を修復するためのプロテーゼ修復用繊維の一実施形態を例示している。前記プロテーゼ修復用繊維は、組織成長の増大を促進し、一方では、周囲の組織および器官内への術後浸食の発生を制限するように構成し得る。
【0027】
プロテーゼ20は、欠損の拡大した、または弱体化した部分または欠損を修復している縫合線を覆うように構成されている。前記プロテーゼは、横隔膜などの欠損領域に面するための第1の面26と、臓器に面するための第2の面28と、を有する。前記プロテーゼは、組織浸透性繊維22を含み得る。前記プロテーゼの1つ以上の領域は、前記繊維の選択された領域の、食道または他の管状構造などの隣接した組織および器官内への術後浸食の発生を制限するため、耐浸食性に構成できる。
【0028】
例示的実施形態において、プロテーゼ20は、基部136を有する三角形の本体部分134、および前記基部から前記基部の向かい側に位置する頂点146へと互いに収束する第1の側面138と第2の側面140を含む。第1の尾部142と第2の尾部144は、各々前記基部の第1のセグメントおよび第2のセグメントにおける本体部分から延在している。前記尾部142、144は示されるように、本体基部から延在する突出部を形成する丸みを帯びた形状を有し得る。この点で、プロテーゼ20は、脚の構成に近い略ハート形の構成を有する。
【0029】
裂孔ヘルニア修復用に前記プロテーゼを脚に取り付けた後、プロテーゼに生じた張力を分配するために、頂点146で交差している第1の側面138と第2の側面140ならびに尾部142、144は、下にある脚の形状に従うように構成し得る。この点で、前記側面と尾部は、脚および横隔膜内に存在している張力線に沿って力を分配するように構成される。
【0030】
裂孔ヘルニアに隣接した食道との長びく接触を避けるために、プロテーゼ20は、食道近位に位置するように構成されている開口部30を提供する。プロテーゼの外周端32における開口部30は、本体部分の基部および両側の尾部142、144によって限定される。
【0031】
幾つかの例において、軟組織および筋壁の欠損、特に裂孔ヘルニアを修復するために、プロテーゼ20は、組織成長を促進する材料から形成し得る。例示的一実施形態において、本体部分134および尾部142、144は、移植後のプロテーゼの宿主組織を確実にするために、十分な組織成長を可能にする複数の間隙または開口部を有する組織浸透性繊維22を含む。
【0032】
プロテーゼ20と隣接組織および器官との間の術後組織癒着の発生を制限するために、前記プロテーゼ20の1つ以上の選択領域を耐癒着性にできる。例えば、前記繊維を癒着の種々の箇所から分離するために考慮された本発明の配置は限定されないが、前記プロテーゼは、前記繊維の片面または両面上の面バリア、前記繊維の1つ以上の端部に沿った端バリア、および/または前記繊維の1つ以上の端部近位に位置した周縁バリアのうちの1つまたはそれらの組合わせを含み得る。種々のバリア部分の形状および寸法は、当業者には自明であるような修飾を行うことができ、また、本発明は、図に例示されたバリア部分の特定の形状に限定されない。
【0033】
耐癒着性領域は、本発明を限定はしないが、例えば、プロテーゼの選択的領域にバリア材料を適用することにより、インプラントの選択的多孔性領域の多孔性を低下させ、好ましくは、組織浸透に対して非浸透性にすることにより、および当業者には自明であるような他の配置により形成できる。前記耐癒着性バリアは、食道および/または腹部臓器を、組織浸透性インプラントの選択された部分から分離するために配置でき、術後の組織癒着の発生を減少させることができる。
【0034】
図1〜3の例示的実施形態において、プロテーゼは、実質的に繊維22の第2の面28(臓器に向いた面)全体を覆うように配されている面バリア118を含む。この様式で、前記面バリアは、前記繊維と、欠損部位の反対側に位置した中空臓器との間の癒着形成を阻止する。一実施形態において、前記面バリア118は、前記繊維に付着している耐癒着材料のシートを含む。
【0035】
また、前記プロテーゼは、隣接した組織および器官と繊維端の選択部分との間の癒着発生を減少させるために、繊維の外側外周端の少なくとも一部付近に延在している端バリア114も含む。例示的実施形態において、端バリアはプロテーゼの外側外周部全体付近に延在する。しかし、端バリア114は、プロテーゼの1つ以上の選択部分に供することができることを理解すべきである。
【0036】
端バリア114は、繊維22の外周セグメントを耐癒着性にすることにより形成できる。一実施形態において、端バリアは、繊維の外側外周を融解し、再凝固させるか、あるいは溶封することによって形成する。もっとも、端バリアは、当業者には自明な任意の好適な配置によって形成できることは、理解すべきである。例えば、繊維外周部を覆うために、あるいは外周部に沿って繊維を耐癒着性にするためにバリア材料が使用できる。好適な端バリアは、シー・アール・バード(C.R.Bard)に帰する米国特許出願第09/661,623号明細書に記載されており、これは参照として本明細書に組み込まれている。
【0037】
プロテーゼの外側外周端に近位の繊維周縁部を分離するために、周縁バリアもまた提供される。例示的実施形態において、周縁バリア116は、繊維層22の第1の面26に沿って外端から内部に延在し、配置時に外端32を折り返すか、あるいは術後に組織および器官に曝露させた際のプロテーゼに対する癒着形成の可能性を制限する。一実施形態において、周縁バリアは、前記繊維の外側周縁部分を融解し、再凝固させることによって形成する。しかし、上記の種々のバリア配置などの、当業者には自明であるような好適な分離配置を採用できる。
【0038】
プロテーゼによる組織、筋肉または器官の術後浸食の発生を制限するために、プロテーゼを耐浸食性にすることが望ましいと思われる。したがって、前記プロテーゼは、望ましくない浸食を阻止するために、組織浸透性繊維を分離するように構成され、配置されている1つ以上のバリアを含み得る。好適な耐浸食性および/または耐癒着性端バリアの例は、本明細書と同一日付出願のシー・アール・バード(C.R.Bard)に譲渡された標題「耐浸食性端部を有するプロテーゼ修復用繊維(Prosthetic Repair
【0039】
Fabric with Erosion Resistant Edge)」の米国特許出願明細書に記載されており、これは参照として本明細書に組み込まれている。
【0040】
前記プロテーゼは、前記インプラントの1つ以上の選択的領域にバリア材料を適用することにより、前記インプラントの選択的摩損的領域の摩損性を低下させることにより、また、当業者には自明であるような他の好適な配置により、耐浸食性にすることができる。例えば、耐浸食性領域を、前記インプラントの他の部分よりも、滑らかに柔軟に、幅広く、および/または変形可能にできる。前記プロテーゼは、食道および/または腹部臓器を前記インプラントの選択された部分から分離するように配置された耐浸食性バリアを含み得る。
【0041】
種々のバリアの形状、大きさおよび位置は、当業者には自明であるようなプロテーゼのための何らかの所望の耐癒着特性および/または耐浸食特性を達成するために選択できる。
【0042】
耐浸食性および耐癒着性バリアは、各々、先行技術の特定の不利な点を改善することに関している。しかし、周囲の組織および器官への浸食を減少させるために使用できる実際の材料および/またはバリア構成が組織浸透に抵抗するための限定された多孔性などの耐癒着特性もまた有することができる。したがって、任意のバリア領域が耐浸食性、耐癒着性、または耐浸食および耐癒着の双方であり得る。
【0043】
図4〜7に示された例示的一実施形態において、プロテーゼ21は、生体適合性の修復用繊維の本体を含む。前記本体は、第1の面26および第2の面28、ならびに第1の面26から第2の面28に延在する本体端部24を含む。第1の面は欠損に面するように構成され、第2の面は欠損と反対向きとなるように構成される。前記本体端部24は、プロテーゼとの接触による隣接組織または器官の浸食を阻止するように構成される。
【0044】
例示的実施形態において、修復用繊維本体は、耐浸食性端部を形成する様式で互いに付着している材料の第1層と第2層とを含む。図7に示されるように、第1層22は、第2層23を覆って配置され、少なくとも1つの縫合線47に沿って、それに付着しており、第2層23の第2の面28は、最初、第1層22の第1の面26に面している。層22、23は、当業者には自明の好適な方法を用いて、各層の外側外周部31の近位に付着できる。一実施形態において、層の外周端の内側に位置している縫合線47に沿って、層は互いに縫合され、インプラント21の外側外周部における延在または縫合許容域604を生み出す。
【0045】
層を互いに付着させたら、第1層22の第1の面26と第2層23の第2の面28が、互いに外側に向くように層を反転させるか、あるいは右外側に引張って、プロテーゼの第1の面26と第2の面28を形成する。次に第1層22の第2の面と、第2層23の第1の面とをその間に空洞606を形成させて向き合わせる。
【0046】
この様式で繊維層22、23の反転は、繊維層の外周部における縫合線47において間隙602を維持することによって創製される引き通し開口部600により促進する。一実施形態において、略10cm幅を有するプロテーゼに関して、前記間隙は長さが1.5インチから2インチである。しかしながら、当業者らは、他の間隙の長さが、プロテーゼ修復用繊維の種々のサイズ、種々の付着方法、種々の繊維可撓性、および繊維層の外周部31に沿った間隙の種々の位置に対して適切となり得ることを認識するであろう。他の実施形態において、間隙602は、繊維層22、23の1層に形成されるスリットなど、繊維自体に提供され得る。任意の好適な配置は、この様式でのプロテーゼの形成を促進するように実施し得ることが解されるべきである。
【0047】
図6に示されるように、インプラントが右外側に反転されると、各層の縫合許容域および外周端は、2層の繊維層22、23間にはさまれたプロテーゼの空洞606内に配置される。この様式で、縫合線47および繊維端は、隣接組織および器官から分離される。プロテーゼ修復用繊維21の外周部32は、耐浸食性増強のために隣接組織または器官に面する相対的に広い表面積を提供する平らな縫合端24により構成される。前記間隙は、所望ならば、プロテーゼの反転後、縫合などの付着方法により密封できる。
【0048】
例示的実施形態において、繊維の第1層22は、組織浸透性繊維層を含み、繊維の第2層23は、周囲組織および器官に対する耐癒着性のバリア材料を含む。この点において、繊維の第2層23は、中空臓器と繊維層22の第2の面との間の癒着発生を減少させる面バリア118である。
【0049】
バリアが繊維22の第2の面に対して必ずしも直接置かれないように、面バリア118に幾らかの量のたるみを設けることが望ましいと思われる。この様式で、面バリアは、繊維面に対して、しっかりと張られて引かれているのではなく、そのため、前記バリアは僅かに膨らんでおり、そのことでプロテーゼの組織成長を増進させることができる。一実施形態において、本体部分内に備わった面バリア118の一部は、織物に対してわずかに膨らむように構成される。
【0050】
幾つかの配置において、面バリア118と繊維層22との間の膨らみ量を、本質的に除去しないにしても制御することが望ましい場合がある。図4〜5に示されるように、面バリア118と繊維層22との間の分離は、本体部分の第1および第2の側面に伴う縫合線49の連続線によって制御でき、空洞をプロテーゼ本体内に制限する。さらに所望の場合は、断続的な付着点の任意の好適な配置を、当業者には自明であるような何らかの所望の膨らみ特性を達成するために選択できる。
【0051】
繊維層を縫合した後、インプラントは右側を外にして反転させるため、各層の縫合許容域および外周端は、2つの繊維層の間に挟まれたプロテーゼの空洞606の内側に配置する。間隙は、プロテーゼ反転後に縫合するなど、当業界に公知の付着法によって塞ぐことができる。この点により、縫合許容端は、隣接した組織および器官から分離され、プロテーゼ修復用繊維21の外側外周部32は、平らな縫合端24を提供する。そして、インプラント21の前記の平らな縫合端は、任意の隣接した組織または器官に面する表面積が、2つの材料層端の外側外周部31よりも広くなる。
【0052】
例示的実施形態において、プロテーゼの耐浸食性は、食道との接触を緩衝、または緩和するように働く、プロテーゼ21内部の空洞606によってさらに増強される。さらに、内部縫合許容域周囲の繊維層の折りたたみにより、端部24におけるプロテーゼ材料の弾性作用またはスプリング作用を増加させることができ、プロテーゼ21が患者に移植された後に耐浸食性端と接触し得る隣接組織または器官に対し緩衝または緩和効果を生み出す。
【0053】
食道をプロテーゼによる浸食と癒着からさらに保護するために、組織および器官との癒着に抵抗性の材料から端バリア608を形成する。前記バリア608は、プロテーゼの外周部に近位である繊維層の第1の面の周縁の一部に配置する。次にバリア608により、プロテーゼの端部24の周囲の耐癒着性バリアにわたって面バリア118に向かって滑らかなロールオーバが生じる。この点により、プロテーゼ21の外端32は、平らな縫合におけるバリア118、608によって耐癒着性および耐浸食性にされる。
【0054】
例示的実施形態において、端バリア608は、各尾部の外側外周付近に延在し、各尾部の輪郭をたどるように形状化された部分的環状円盤から形成される。バリア608は、繊維層と食道などの周囲組織および器官との間の癒着を阻止するために、プロテーゼの外周付近に望むように延在できるか、または切り捨てることができる。
【0055】
端バリア608を端部24付近に、および繊維層の周縁上部に正しく維持するために、繊維を外側外周部31においてバリア118に付着する前にバリア608を繊維層22の第1の面とバリアの第2の面118との間に挟むことができる。この点により、内側外周端610は、繊維層の第1の面の周縁に亘って延在し、バリア608の外側周囲は、繊維層22の外側外周部31および面バリア118に対して対称である。次に繊維22、端バリア608および面バリア118を好ましくは、上記で検討したとおり、縫合において間隙602を有する引き通し開口600を保持して、外周部31近位を縫合することにより付着する。
【0056】
図4〜7の例示的実施形態に示されるように、端バリア608の内側外周端610を付着しないまま、繊維層22の第1の面に対して配置する。端バリア608は、端部をわたり織物層22の第1の面の一部の上へ伸長させる。この配置により、外周端32の外側周縁付近に正しくバリアを維持する幾らかの張力がバリア608に生じる。この点により、端バリア608の内側外周端610は、繊維に付着されないまま、バリア608と繊維層22との間の流体の流れを可能にして、捕捉された臓器液の潜在的ポケットの発生を減少させる。
【0057】
繊維層22の第1の面26に対するバリア608の配置を確実にするため、外側外周縫合線を、端バリア、繊維、および面バリアに付着する前に内側外周端610を繊維層22に予め付着できる。あるいは、プロテーゼ21を、限定はしないが、縫合、融合および接着など当業界に公知の方法により、右側を外に反転させてから内側外周端610を繊維層に付着できる。バリア608の内側周辺の付着により、第2層23も第1層22に付着でき、最小間隔を維持するか、または第2層23のひだ付けを制御する。
【0058】
例示的一実施形態において、図4〜7のインプラント21は、PTFEメッシュから形成された繊維層22、ePTFEから形成されたバリア層118、およびePTFEから形成された端バリアを含む。前記プロテーゼを形成するために、当業者には自明であるような任意の好適な材料を使用し得ることを認識すべきである。
【0059】
図8〜10は、図4〜7のプロテーゼを製作するための製造工程の一実施形態を例示している。図8に示されるように、PTFEメッシュの矩形シートは、ピン722でフレーム720に固定される。メッシュ繊維の第1の面26は、フレームから面を上にしている。図9に示されるように、次にePTFEのシート608をメッシュ繊維22上でフレームに固定する。ePTFEのシート608は、示されるように予め形状化されて、端バリア608の内側周囲610を形成する。図10に示されるように、次にバリア118の第2の面28を下にして、ePTFEの第2のシート118をePTFEバリア608の上部でフレームに固定する。
【0060】
フレーム720に固定したら、層を、ポリプロピレンまたはPTFE単繊維から形成された略4mmから6mm長さの縫合を用いて縫合線47により互いに付着する。図10に例示されているように、縫合線47は、プロテーゼ27の外周端32にとって望ましい輪郭をたどって、略1.5インチ長さを有する縫合内に間隙602を残す。縫合線47を、バリア608の内周囲部610の略5mm外側に配置する。次にプロテーゼを、縫合線47の略3mm外側の層を切断することによりフレーム720から取り外して、縫合許容域を形成する。
【0061】
フレームから取り外した後、バリア608は、略8mm幅を有するプロテーゼの尾部周囲に環状輪を形成し、そのうち3mmは、縫合許容域を形成する縫合線の外側にあり、略5mmは、バリア周縁部116を形成する繊維層の第1の面上にかぶせる。次に、プロテーゼ20は、間隙602を介して反転させ、図4および図6に示されるように空洞606の外側にバリア層118の第2の側面、繊維層の第1の側面、および端バリア608の内周囲部610を配置させる。次いで前記間隙は、空洞606の外側に縫合により閉じて縫合し得る。
【0062】
プロテーゼの反転後、例示的実施形態において、プロテーゼ本体の基部は略4インチの長さであり、第1および第2の側面は各々3.5インチの長さである。プロテーゼの頂点は、略0.19インチの曲率半径を有する。各尾部142、144は、プロテーゼの本体基部から略1.0インチ延在し、略0.81インチの曲率半径を有する。本体基部および各尾部によって限定された開口部は、略0.75インチの曲率半径を有する。
【0063】
繊維層22からの面バリア118の分離は、プロテーゼ本体134を通る連続縫合線49によって制限できる。例示的実施形態において、縫合線49は、第1および第2の側面の傾斜をたどり、プロテーゼ本体にV形の縫合線を形成する。前記縫合線の各側面は、略2.25インチの長さであり、プロテーゼの外側外周部32から略0.83インチの間隔が空けられている。
【0064】
周囲の組織および器官内へのプロテーゼの浸食および癒着を阻止するために、追加の、または代わりの耐浸食性バリアを提供できる。食道または他の管状構造などの組織または器官が、プロテーゼ平面内に例えば、繊維層の端部に垂直に力を適用させる場合、管状構造は、プロテーゼの外周端32に直接接触することを阻止することが望ましい。
【0065】
例示的実施形態において、前記プロテーゼは、2つの尾部142、144の間に位置している開口部30を有し、前記開口部の下端726は、本体部分の基部136により画定されている。食道または他の管状構造を開口端による接触から分離または緩衝するために、前記プロテーゼは、開口部上方および2つの尾部142、144の間に延在する舌状端バリア724を含む。図4〜5に示されるように、前記舌部の外側外周728は、各尾部142、144の外側外周に、各々第1および第2の支持点730、732において交差している。前記舌部は、開口部の向かい側に位置している第1の付着点734および第2の付着点736において、各尾部に付着している。各付着点は、開口部の下端と各尾部の外端または頂点750、752との間に位置している。付着点は示されているように、前記開口部の下端726と支持点730、732との間に各々位置している。
【0066】
舌部724は、前記基部から開口部30の上方に延在するように構成される。一実施形態において、前記舌部は前記開口部内の食道202の緩和作用をする可撓性または変形可能な材料から形成される。前記舌部は、食道によって作用する力に供された場合、開口部内へ、そして繊維の開口端上方から第2の面28へ向かって折りたたむように構成される。
【0067】
図4および図11〜12に示されるように、前記舌部の外側部分は、支持点730、732の間に延在している第1の折りたたみ線754に沿って折りたたむように構成される。第1の折りたたみ線754は、示されるように、開口部上方に棚760を形成している舌部の一部によって、開口部の下端726からの間隔が空けられている。この様式で舌部の棚は、繊維層の開口端から食道を緩衝する。
【0068】
舌部に対する力Fが増加するにつれて、舌部は、開口基部に向かって移動する折りたたみ線に沿って開口部内へさらに折りたたまれて落ち込み、開口部を覆っている棚760の長さを減少させる。図13〜14に示されるように、棚760を開口部の上方に維持するために、開口下部から離れて位置している第1の付着点734と第2の付着点736との間に延在している第2の折りたたみ線756に舌部が到達するまで、開口部内への舌部の落ち込みは続き得る。この様式で前記折りたたみ線は、第1の支持点730から第1の付着点734まで延在している第1の尾部142の一領域から、第2の支持点732から第2の付着点736まで延在している第2の尾部144の第2の領域まで延在し得る。
【0069】
前記舌部が、第2の折りたたみ線756に沿って、開口内へ折りたたまれて落ち込むと、舌部に対する任意の追加の力は、第1の付着点734および第2の付着点736を介して、尾部142、144に伝えられる。この様式で、棚760を第2の折りたたみ線756と開口部の下端726との間に維持するため、開口部内への舌部の落ち込みに抵抗するように尾部142、144とプロテーゼ本体は共に働いて、食道と開口下部との接触を緩衝する。
【0070】
開口部に沿ったプロテーゼの耐浸食性を増大させるため、前記舌部は、上述したようにプロテーゼ本体よりも滑らかで、柔軟でより変形しやすい材料から形成し得る。舌部の耐浸食性は、食道に対して広い表面積を提供することによっても増大し得る。この点から、前記舌部は、比較的大きな曲率半径を有して開口端上方に折りたたむように構成し得る。前記舌部は、弾性またはスプリング様作用を供する材料から形成し、前記舌部が開口部上方に折りたたまれて食道をさらに緩衝できる。
【0071】
また、前記舌部と食道との間の癒着発生を制限するために、舌部を耐癒着性にすることもできる。一実施形態において、舌部は、耐癒着性材料層から形成される。この様式でプロテーゼの耐浸食性と耐癒着性をさらに確実にするために、前記舌部を開口端バリアと接続して使用できる。
【0072】
例示的実施形態において、前記舌部は、開口部の外周におけるプロテーゼへの付着に好適な概して涙の形に構成される。前記舌部の側面738、740は、頂点742に収束し、開口部下端においてプロテーゼ本体の周縁部を覆う。舌部が開口部下端から外に向かって延在する際、舌部の側面は尾部側面を覆いたどる。プロテーゼが患者の腹腔内に移植された場合、舌部は、食道に面する広い湾曲した外端744を含む。前記湾曲端744は、支持点730、732においてプロテーゼの外側外周部に交差するように構成される。
【0073】
前記舌部の外端744は、隣接した管状構造の幅よりも広い幅を有するように構成し得る。4cmの食道では、舌部は1.5インチ超の幅を有し得る。しかし、プロテーゼの本体および尾部への組織成長の際に舌部が有し得る衝撃を制限するために、舌部は、2.5インチ未満の幅を有し得る。したがって、舌部は、略1.5インチから略2.5インチの範囲の幅を有して構成し得る。
【0074】
圧のかかっていない状態において、舌部724の本質的に平面的な延在を維持するために、舌部の長さと幅ならびに付着点734、736を選択して、舌部がそれ自身の重みで垂れ下がること、またはたるむことを制限できる。一実施形態において、舌部は、略2インチの最大長ならびに略2インチの幅を有する。もちろん、プロテーゼには、当業者には自明であるような任意の好適なサイズの舌部を使用できる。
【0075】
前記舌状端バリアは、任意の好適な付着方法を用いて繊維層に付着できる。上記のように、食道が、開口部において繊維端と接触することを阻止するために、付着点734、736は、開口部に亘る舌部の一部を保持する。一実施形態において、舌部は、舌部外周から略1/4インチ内側に隔てられた断続的縫合746によって、プロテーゼ本体に付着している。縫合の第1群は、舌部の第1の側面を第1の尾部142に付着して、繊維の外周端から僅かに窪んだ第1の付着点736を創製する。縫合の第2群は、舌部の第2の側面を第2の尾部144に付着して、やはり繊維の外周端からわずかに窪んだ第2の付着点736を創製する。縫合の第3群は、舌部の頂点742を、開口部下端に近位の繊維層の周縁部に付着する。舌部が開口部上方に延在し、かつプロテーゼ尾部の間に延在するように、舌部を付着するための代わりの付着方法および付着位置が適切であり得ることを当業者は認識するであろう。例えば、付着点734、736は舌部と各尾部との間の支持点730、732と一致させて配置できる。
【0076】
ある状況では、異なった折りたたみ線、舌部可撓性および/または保護面積を提供するために異なった形状および/またはサイズを有する舌状端バリアを使用することが望ましい場合がある。図15〜16に舌部の他の例示的な幾つかの実施形態を示してある。
【0077】
図15に示されているように、プロテーゼ25は、逆の涙滴形を有する舌状端バリア724を含み得る。前記涙の形の頂点は示されているように、食道に向かって配置され、幅広の端部744は、開口部下端に近位の繊維周縁部上方に配置される。この点により、支持点730、732および付着点734、736は、開口部下端方向へ移る。この様式で折りたたみ線もまた開口部方向へ移り、このため開口下部と食道との間の棚760によって生み出された緩衝区域が減少する。プロテーゼ外周部と舌部との間の支持点が移るため上記で検討したように、繊維外周端のさらなる部分を耐浸食性および/または耐癒着性端バリアによって覆うことができる。示されているように、少ない組織浸透性繊維が周囲の組織および器官に曝されるように、舌部は開口部近位の繊維周縁のより広い表面積を覆う。
【0078】
図16に示されるように、プロテーゼ27は、概して矩形の形状を有する舌状端バリア724を含み得る。舌部は、プロテーゼを植え込んだ際、開口部下端から延在して食道202近位に配置される丸みを帯びた端を含む。上記で検討した逆涙滴形と同様に、矩形の舌部724は、支持点730、732において、図4〜7の舌部より幅が狭い。このように、尾部142、144上の端バリア608は、外周端に沿って繊維開口部方向へ延在し得る。
【0079】
ある修復操作においては、他の形状を有する尾部を含むようにプロテーゼを構成することが望ましい場合もある。例えば、食道との接触を減少させるか、または避けるために、尾部は、さらに食道上方に延在し、および/または食道を完全にまたは部分的に包囲するように構成し得る。
【0080】
図17〜21に示された例示的一実施形態において、図1〜3のハート形インプラントの配置と同様に、プロテーゼはブーメラン形または矢じり形を有して構成される。プロテーゼ29は、拡大したまたは弱体化した裂孔などの欠損部を覆うように構成されている三角形の形状の本体部分134を含む。また、前記プロテーゼは、本体部分の基部136から、本体部分の側面傾斜を本質的にたどって延在する第1の尾部142および第2の尾部144を備える。各尾部の幅は、示されているように、本体の基部から尾部の外端の方向に減少する。この様式で、尾部142、144は、より広い開口部30を形成するために図1〜3の尾部よりも狭くなる。
【0081】
例示的実施形態において、前記プロテーゼは、組織浸透性繊維層22と、腹部臓器に面する繊維層の表面を覆う面バリア118と、を含む。端バリア114と周縁バリア116もまた、図1〜3に関して上記に考察されたものと同様にプロテーゼ上に備えられている。尾部間の開口端の1つ以上の領域は、耐浸食性および/または耐癒着性であるように構成されて、食道などの周囲の組織および器官に対する繊維の選択部分の術後浸食および/または術後癒着発生を制限できる。
【0082】
図17〜21に示された例示的実施形形態において、前記プロテーゼは、耐浸食性端バリア120を有し、耐浸食性端バリア120は、食道などの隣接組織または器官から繊維22の開口端54を分離すると共に緩衝するために、開口部30周囲の尾部端周辺に延在する。端バリア120は、本体部分の第1の面26から繊維端22上に延在し、次いで本体の第2の面28に向かって戻る。この様式で、開口部30に沿って繊維の第1の面と第2の面との間に延在する繊維端54は、前記端に隣接して通過する食道部分が繊維端から分離し直接接触しないように、耐浸食性端バリア114によって覆われている。また、この配置によって周縁バリア122を形成し、繊維22の周縁部分から食道を分離すると共に緩衝する。
【0083】
バリア120の部分は、示されるように、繊維端を越えて突出する第1の延在部700および第2の延在部702を形成するように、繊維端を越えて延在できる。一実施形態において、バリア120が、繊維端によって摩損から食道を緩衝するために繊維端に対し相対的に変形可能または動き得るように、バリア120は、繊維端よりも変形し得る材料から形成されている。
【0084】
例示的実施形態において、耐浸食性端バリア120は、繊維端に略垂直である方向で繊維端54から距離Dの間隔をおいて配置されている内面502を含んでいる。この配置により、端バリアの内面と繊維端との間に間隙またはポケット500が形成される。ポケット500は、移植片から食道を支えるか、または緩和するために緩衝効果またはスプリング様作用を提供する緩和空間を形成する。
【0085】
図20〜21は、隣接組織または器官に係る場合、プロテーゼの耐浸食性端120の緩和効果の数例を例示している。しかしながら、前記プロテーゼが、耐浸食性端を提供するために任意の好適な配置を使用できることを認識すべきである。
【0086】
図20に示されるように、端バリア120およびポケット500は、繊維端54に対し概して垂直方向で食道と移植片との間の力Fに応答して食道202を緩和または緩衝するように繊維端に向けて圧縮できる。この様式で、端バリアの第1および第2の延在部700、702もまた、耐浸食性を付加する目的で前記端と食道との間の力配分を高めるために、より大きな表面積を食道に提供するように互いにそれて湾曲できる。
【0087】
食道202に係る場合、図21に示されるように端バリア120は、圧縮されるのではなく、前記繊維端に相対して屈曲し得る。この様式で、前記端バリアは、繊維端と比較して、広い表面積を有する棚704を形成し、移植片と食道との間の摩損力をより大きな表面積上に配分し、浸食の可能性を減じることができる。また、端バリア120の構築または材料は、前記棚が繊維端54から食道を緩衝および緩和でき、次いで食道に係らなかった場合に本質的に平坦な位置に戻るように弾性作用またはスプリング様作用を提供できる。
【0088】
認識されるように、所望の量の耐浸食性を提供する様式で繊維端に相対して曲げ、屈曲させるように端バリア120を構成することが望ましいと考えらえる。繊維の剛性、バリア材料の剛性、バリア材料の弾性、およびバリア材料の重量などの種々の因子により、端バリアの特定の構成を達成できる。例えば、端バリア120の内面と繊維端54との間の距離は、3.0mmの大きさであり得る。一実施形態において、ポリプロピレンメッシュから形成された修復用繊維や、ePTFEから形成された端バリアに関して、この距離は、略1.0mmから略2.5mmまでの範囲である。他の実施形態において、ポリプロピレンよりも可撓性であるPTFEメッシュから作製された修復用繊維に関して、この距離は、略1.5mm未満である。もちろん、端バリアの内面と繊維端との間の間隔は、当業者に自明であるように任意の所望のレベルの耐浸食性を提供するために変えることができる。
【0089】
上記のとおり、バリア120はまた、端バリア120と食道との間の癒着を減じるために耐癒着特性を提供できる。前記端周囲の繊維の第1の面26(対面のない)の周縁部分は、周縁バリア122によって分離されている。同様に、前記端周囲の繊維の第2の面の周縁部分は、面バリア118によって分離されている。周縁バリアは、前記端に隣接して延在する食道のセグメントと前記端近位の繊維の周縁部分との間の予想される癒着を制限する。
【0090】
図17〜21の例示的実施形態において、開口部周縁バリア122は、開口部30周囲の周縁部分において、繊維22の第1の面26を覆っているバリア材料の部分環状輪を含む。周縁バリアの第1の延在部700は、示されるように、繊維の開口端54を越えて延在する。同様に、面バリア118の第2の延在部702は、周縁バリアに隣接して置かれるように繊維の開口端を越えて延在する。周縁バリア122は、食道から繊維の開口端を分離すると共に緩衝する耐浸食性端バリア120を形成するために、その間に繊維の介在層なしで面バリア118に直接付着される。周縁バリア122の外端および面バリア118における付着により、ポケット500により繊維端54から間隔が空けられている端バリアの内面502を形成する。この構成によってもまた端バリア120を耐癒着性にすることを認識すべきである。
【0091】
プロテーゼ20は、当業者に自明な任意の好適な配置を用いて形成された耐浸食性端を使用できる。図22に示された他の例示的実施形態において、耐浸食性端バリア120は、繊維の開口端54の周囲にゆるく包まれている別個の連続バリアカフ706を含む。この点で前記カフは、繊維の第1の面上の開口部周縁55から開口端54を横切って、前記開口端に隣接する面バリア118の一部分上へ連続的に延在する。このように、前記カフは、開口端を分離すると共に緩衝するために、繊維の第1の面上の周縁バリア122と、および耐浸食性端バリア120と、を提供するように構成される。上記の実施形態と同様、バリアカフをゆるく包むことにより、繊維端から食道または他の管状構造を緩衝し、または緩和するために繊維の開口端からカフの内面502の間隔をあける間隙またはポケット500を形成する。この実施形態もまた耐端癒着性にさせ得ることを理解すべきである。
【0092】
図17〜21に示された例示的実施形態において、開口端バリア120、開口部周縁バリア122および面バリア118は、連続的接続縫合によって繊維22に縫合される。1対の縫合線45、46は、示されるように、環状バリア層122および面バリア118の一部を繊維22に付着し、端バリア120を形成する。第1の縫合線45は、バリア層122、118の延在部分700、702を互いに直接付着して、繊維22の開口端54を食道から分離すると共に緩衝する開口端バリア120を形成する。第2の縫合線46は、開口部周縁バリア122の外側周辺52および面バリア118の対応する領域を繊維22に付着する。第3の縫合線47は、インプラントの外側外周32に沿って、面バリア118の外側境界線を繊維に付着する。層間の間隔またはひだ付けを制限または制御するために、繊維22の層と面バリア118との間に1つ以上の付着点49(示していない)を提供し得る。
【0093】
図17〜21に示された例示的実施形態において、プロテーゼ本体は、基部を有する等辺三角形を形成し、前記三角形の各辺は、略2.125インチの長さである。各尾部142、144は、本体基部を略1.125インチ越えて延在する。本体基部における各尾部の幅は略1インチであり、各尾部の先端または端750、752における幅は略0.375インチである。プロテーゼの外側外周部32において、面バリア118は概して繊維層と対称的である。
【0094】
環状形層バリア122は、略1cmの幅であり、2つの尾部142、144間の開口部の湾曲をたどっている。バリア122の略0.5cmが繊維開口部30の近位のメッシュ繊維物22を覆っており、繊維層の端部54を越えて略0.5cm延在し、バリア120の上面700を形成している。開口部における面バリアの端部もまた、繊維層の開口端54を越えて延在し、バリア122の外側周辺と対称的である。したがって、面バリア118の延在によって、バリア120の下面702が形成される。代わりの実施形態では、面700,702が繊維の開口部の端部54から略1.5cmまで延在する。
【0095】
外端およびバリア周縁114、116は、メッシュ繊維22の外側外周部32の端と周縁に沿って配置され、メッシュ繊維22の隙間または開口部を閉じるためのメッシュ繊維22の熱融合によって形成される。バリア外側周縁122は、略1/16から3/8インチの幅を有する。しかし、これらの寸法は単なる例示であり、プロテーゼ20に対し、任意の好適なサイズと形状が使用できることを理解すべきである。
【0096】
幾つかの例において、修復用繊維層をそれ自体の上に折りたたみ、プロテーゼの折りたたまれた部分に沿って緩和効果を提供する丸みを帯びた端を形成することによって、耐浸食性端部を得ることができる。図23〜25に示された例示的一実施形態において、それ自体の上に折りたたまれて三角形の本体800(図24)を生じる凧形または菱形の形状(図23)を有する修復用繊維22の層からプロテーゼ33が形成される。前記本体は、繊維の第1のコーナー810を、矢印Aによって示されるように、繊維層を亘って向かい側の繊維の第2のコーナー814に向かって折りたたむことにより形成される。耐浸食性端24が、示されるように、繊維層を亘って、概して向かい側の第3のコーナー812と第4のコーナー816との間に形成されるように、第1のコーナーは、第2のコーナーの近位に配置する。図25に示されるように、端部24は、耐浸食性増大のため隣接する組織または器官に面する比較的広い表面積を提供する。
【0097】
プロテーゼの折りたたまれた形状は、プロテーゼの折り目における張力、欠損部位における組織に対するプロテーゼの外周部付着、および/または周囲の組織および器官からの圧力によって保持できる。所望の場合は、第1のコーナー810を、当業者には自明の任意の好適な方法を用いて繊維層22に付着できる。例えば、前記コーナーを繊維層に縫い付けることができる。
【0098】
前記プロテーゼは、組織成長の可能な組織浸透性材料の層から形成できる。一実施形態において、プロテーゼはPTFEメッシュから形成されるが、当業者に自明であるような任意の好適な材料が使用できる。前記プロテーゼは、食道または他の管状構造などの隣接組織および器官との癒着および/または隣接組織および器官内への浸食を阻止するために、構成されている1つ以上のバリアを含み得る。上記の通り、前記修復用繊維は、繊維の一部付近に、または外側外周端全体に端バリア、および/または繊維層の面の1つ以上の領域に配置された面バリアを含み得る。当業者には自明であるような任意の好適なバリア配置が採用し得ることを理解すべきである。
【0099】
前記プロテーゼは、三角形の本体が概して、脚の形状に一致することから、裂孔ヘルニアを修復するために特に好適であり得る。折りたたみ端は、食道内への浸食の発生を減じる緩和または緩衝配置を提供するために食道に向けて配置し得る。しかしながら、前記プロテーゼが、特定の適用のために前記折りたたみ端によって提供される耐浸食性の増強から利益を得ることができる任意の所望の構成に繊維層を折りたたむことにより形成し得ることを認識すべきである。
【0100】
繊維22に1つ以上のバリアを接続するために様々の好適な縫合パターンが、上記の例示プロテーゼのいずれにも実施できることを理解すべきである。他の縫合パターンの例としては、限定はしないが、バリアと繊維との間の複数の断続的縫合または外周部32の輪郭に従って同心性を形成する連続縫合の単一線、外側外周部32からプロテーゼの中心への螺旋パターンが挙げられる。プロテーゼ内のポケット密封を避けるために縫合量および/または縫合位置を制限することが、ある一定の場合に望ましいことがある。断続縫合または連続縫合における間隙は、繊維層および/またはバリア材料により限界が定められた容量の液体の流入および流出を促進し得る。また、プロテーゼの可撓性を維持するために縫合量を制限することが望ましいと言える。当業者には自明であるような適切な生体適合性縫合糸材料を、バリアと組織浸透性材料とを一緒に付着させるために使用し得る。例えば、縫合糸としては、限定はしないが、ポリプロピレン単繊維またはePTFE紡績糸を挙げることができる。
【0101】
繊維に対するバリア材料の縫合ではなくてむしろ、当業者には自明であるような他の付着方法が使用できる。例えば、バリアおよび繊維は、任意の好適な仮付け法、ステープル打ち法、熱接着法、化学接着法および成型法を用いて付着できる。
【0102】
バリアの幾つかの実施形態を記載したが、当業者には自明であるような任意の好適な構成の1つ以上のバリアを前記プロテーゼに使用できる。例えば、組織成長を塞ぐために繊維を変えるか、または処理することにより、繊維をバリア材料、または繊維処理とバリア材料との任意の組合せで覆うことによって耐浸食性および/または耐癒着性バリアのいずれか1つまたは組み合わせて形成し得る。さらに、任意の1つ以上のバリア構造は、繊維層を処理すること、および処理された繊維をバリア層で覆うことの双方で形成し得る。
【0103】
前記プロテーゼは、繊維および/または他のバリアに予め付着されている1つ以上の耐浸食性および/または耐癒着性バリアを備え得る。あるいは、前記プロテーゼは、修復操作中に繊維および/または他のバリアに付着させるか、または隣接組織および/または器官により正しく保持されるように繊維22の所望の部分に単に覆うバリアを有する別々の部品のキットとして提供し得る。
【0104】
一実施形態において、組織浸透性層22は、組織成長を可能にする複数の間隙または開口を有し、移植後に宿主組織に対し、前記修復装置を統合する生物学的適合性、可撓性のプロテーゼ修復用繊維のシートから形成される。組織浸透性層および/またはバリア部分の縫合糸引き通し強さは、下部の解剖学的弱さを支持し、インプラント領域の動的環境に抵抗する上で十分でなければならない。裂孔ヘルニア修復の場合、呼吸、咳および嚥下時における食道付近の動的環境に適応するために、メッシュは1平方インチ当たり略2ポンドの縫合糸引き通し強さを有し、十分に可撓性であることが好ましい。代表的な材料は、シー・アール・バード社から入手できるバードメッシュ(BARD MESH)などの編み込みポリプロピレン単繊維メッシュである。ポリプロピレンメッシュは移植されると、メッシュ構造内への、およびその付近の急速な組織成長を促す。あるいは、欠損閉鎖において、組織補強に好適な他の外科的材料が利用でき、限定はしないが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)メッシュ、プロレン(PROLENE)、ソフト・ティッシュ・パッチ(SOFT TISSUE PATCH)(ミクロ細孔ePTFE)、サージプロ(SURGIPRO)、トレレックス(TRELEX)、アトリウム(ATRIUM)、メルセリン(MERSERINE)、非吸収性コラーゲンおよびポリエステルが挙げられる。ポリグラクチン(ビクリル(VICRYL))、ポリグリコール酸(デクソン(DEXON))および吸収性コラーゲンなどの吸収性材料もまた使用できる。インプラントの組織浸透性成分を形成するために、前記繊維は、織り込まれ、編み込まれ、成型または他に互いに係合させることのできる単繊維または複繊維から形成し得ることが考慮される。
【0105】
一実施形態において、1つ以上のバリアが、ダブリュー・エル・ゴア・アンド・アソシエーツ社(W.L.Gore & Associates,Inc.)から入手できるゴア・テックス(Gore−TEX)などの組織成長および癒着を妨げる孔径(μm未満)を有する膨張させたポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)のシートから形成できる。他の好適なバリア材料の代表的な非限定的見本としては、ダウ・コーニング社(Dow
【0106】
Corning Corporation)により供給されるシラスチック・アールエックス・メディカルグレード・シーティング(SILASTIC Rx Medical
【0107】
Grade Sheeting)(白金加工)などのシリコーンエラストマー、テフロン(TEFLON)メッシュ、ミクロ細孔ポリプロピレン敷布地(セルガード(CELGARD))、コラーゲン、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロースおよびグリコール酸ポリマーが挙げられる。自原性組織、異種組織および外因性組織もまた考慮され、例えば、心膜および小腸粘膜下組織が挙げられる。酸化、再生セルロース(インターシード(INTERCEED)(TC7))などの吸収性材料が幾つかの適用に使用できる。前記バリアは、癒着形成に対して一時的または永続的バリアを形成する任意の材料の配合物、混合物、またはヒドロゲルであり得る。
【0108】
上記に示したように、組織成長を促進させない面を形成するために、1つ以上のバリアを組織浸透性層の一部を処理または変化させることによって形成し得る。一実施形態において、前記繊維層の1つ以上の部分を、融解し、再凝固させて繊維のそれらの部分を耐癒着性にする。他の好適な技術としては、超音波、誘導、振動、赤外線/レーザ溶接などを挙げることができる。繊維孔は、組織成長を妨げるために、適合性材料で塞ぐことができる。プロテーゼの選択された部分を耐癒着性にするために、当業者には自明であるような任意の好適な方法が使用できることを理解すべきである。
【0109】
組織浸透性繊維のプロテーゼおよびバリア領域は、関心対象の解剖学的部位に順応させ、縫合またはステープル留めするために、外科医がインプラントの形状を操作することを可能にするように比較的平坦で十分にしなやかである。前記プロテーゼは、皮膚切開のためのトロカールまたは腹腔鏡カニューレによって、患者の腔に送達可能であることが好ましい。繊維22および任意のバリアを含むプロテーゼの形状とサイズは当業者には自明であるような外科的適用によって変化し得る。この点に関し、外科的操作時に、前記繊維および/または任意のバリアが、外科医によって、予備形状化、または形状化できることが考慮される。
【0110】
図26は、裂孔ヘルニアの修復またはGERDの治療におけるプロテーゼの代表的な適用を例示している。プロテーゼ29は、組織を接近させることなく欠損部位上に配置でき、実質的に張力のない様式で修復を達成し得る。あるいは、プロテーゼは、脚形成と関連して使用し、表面積上の組織浸透を有する縫合を増強でき、場合によっては再発ヘルニア形成となり得る脚に力が加えられる際の縫合糸引き抜けの可能性を緩和し得る。前記プロテーゼは、当業者には自明となり得る他の方法に好適な任意の様式において使用し得ることが解されるべきである。
【0111】
本発明の種々の実施形態に関する前述の説明は、単にそれらの例示であることが意図されており、本発明の他の実施形態、変形および等価物は、本明細書に添付される特許請求の範囲に列挙される本発明の範囲内にあることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状構造の近傍における組織または筋壁の欠損を修復するための移植可能なプロテーゼであって、
移植可能で生体適合性材料の修復用繊維を備え、
前記修復用繊維は、前記管状構造を受容するように構成されている開口部を有し、
前記修復用繊維は、本体部分と、当該本体部分から延在している第1および第2の尾部と、を有し、
前記本体部分は、第1および第2のセグメントを有する基部により略三角形に構成され、
前記第1の尾部は、前記基部の前記第1のセグメントから延在し、
前記第2の尾部は、前記基部の前記第2のセグメントから延在し、
前記開口部は、前記第1の尾部と前記第2の尾部との間の前記基部に沿って配置されている、移植可能なプロテーゼ。
【請求項2】
前記修復用繊維は、組織および器官との癒着形成ならびに前記組織および前記器官内への浸食の影響を受けやすい、請求項1に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項3】
前記修復用繊維は、組織成長を可能にするように構築され且つ配置される複数の間隙を含む、請求項2に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項4】
修復用繊維は、PTFEメッシュおよびポリプロピレンメッシュの1つから形成されている、請求項2に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項5】
前記修復用繊維は、第1および第2の面を有し、
前記第1の面は、前記組織または筋壁の欠損に面するように構成され、
前記第2の面は、前記欠損と反対向きとなるように構成され、
当該移植可能なプロテーゼは、組織および器官との癒着形成を阻止する面バリアをさらに備え、
前記面バリアは、前記修復用繊維の前記第2の面の少なくとも一部に配置されている、請求項2に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項6】
前記面バリアは、実質的に前記修復用繊維の前記第2の面全体に配置されている、請求項5に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項7】
前記面バリアは、ePTFEから形成されている、請求項5に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項8】
前記修復用繊維が、第1および第2の面と、当該第1の面から当該第2の面に延在している繊維端と、を有し、
前記第1の面は、前記組織または筋壁の欠損に面するように構成され、
前記第2の面は、前記欠損と反対向きとなるように構成され、
当該移植可能なプロテーゼは、前記繊維端の少なくとも一部との癒着形成を阻止するように構成されている端バリアをさらに備えた、請求項2に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項9】
前記端バリアは、前記開口部近位の前記修復用繊維の前記第1の面の一部に配置され、
前記端バリアは、前記基部を越えて延在して前記第1の尾部と前記第2の尾部との間の前記開口部の一部を覆っている、請求項8に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項10】
前記端バリアは、前記開口部を横切って前記第1の尾部から前記第2の尾部まで延在している折りたたみ線に沿って前記開口部内に折りたたまれるように構成された外側部分を有し、
前記端バリアは、前記折りたたみ線と前記本体部分との間の前記開口部を覆っている棚部分をさらに有する、請求項9に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項11】
前記端バリアは、前記開口部を横切って前記第1の尾部から前記第2の尾部まで延在している湾曲した外端を有し、
前記外端は、第1の支持点で前記第1の尾部を覆っていると共に、第2の支持点で前記第2の尾部を覆っている、請求項10に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項12】
前記端バリアは、涙の形をした構成を有する、請求項11に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項13】
前記折りたたみ線は、前記第1の支持点から前記第2の支持点まで延在している、請求項11に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項14】
前記端バリアは、第1および第2の付着点においてそれぞれ前記第1の尾部および前記第2の尾部に付着し、
前記第1および第2の付着点は、前記第1および第2の支持点と前記基部との間に配置されている、請求項11に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項15】
前記折りたたみ線は、前記第1の付着点から前記第2の付着点まで延在している、請求項14に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項16】
前記折りたたみ線は、前記第1の支持点から前記第1の付着点まで延在している前記第1の尾部の領域から、前記第2の支持点から前記第2の付着点まで延在している前記第2の尾部の領域まで延在している、請求項14に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項17】
前記端バリアは、前記第1および第2の尾部のうち1つの前記繊維端の少なくとも一部の周囲に配置されている、請求項8に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項18】
前記端バリアは、前記第1および第2の尾部の各々の前記繊維端の少なくとも一部の周囲に配置されている、請求項17に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項19】
前記端バリアは、前記開口部の少なくとも一部の前記繊維端の周囲に配置されている、請求項8に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項20】
前記端バリアは、前記第1の面の一部から前記第2の面の一部までの前記繊維端の周囲を包むバリア層を有する、請求項19に記載の修復用織物プロテーゼ。
【請求項21】
前記端バリアは、前記繊維端に垂直方向に当該繊維端から間隔が空けられている内面を有し、
前記内面は、前記繊維端による前記組織および器官の浸食を阻止すると共に前記繊維端への癒着形成を阻止するために、当該端バリアの内面と前記繊維端との間の間隙を形成している、請求項20に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項22】
前記第1および第2尾部の各々の一部は、丸みを帯びた外周部を有する、請求項1に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項23】
前記第1および第2尾部の各々は、前記基部から間隔が空けられている外端を有し、
前記第1および第2尾部の各々は、前記基部から前記外端に向かう方向に減少する幅を有する、請求項1に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項24】
前記修復用繊維は、反転された縫い目に沿って互いに連結された第1層および第2層を有し、
前記縫い目は、前記第1層と前記第2層との間の内部に延在して、前記組織および器官の浸食を阻止する、請求項1に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項25】
前記修復用繊維は、食道裂孔近位に位置するように構築され且つ配置され、
前記開口部は、前記食道を受容するように構成されている、請求項1に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項26】
前記修復用繊維は、ハート形の構成を有する、請求項1に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項27】
管状構造の近傍における組織または筋壁の欠損を修復するための移植可能なプロテーゼであって、
移植可能で生体適合性材料の修復用繊維を備え、
前記修復用繊維は、略ハート形の外側外周部を有し、
前記外側外周部は、前記管状構造を受容するように構成され、当該外側外周部の一部に沿った開口部を有する、移植可能なプロテーゼ。
【請求項28】
前記修復用繊維は、組織および器官との癒着形成ならびに前記組織および器官内への浸食の影響を受けやすい、請求項27に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項29】
前記修復用繊維は、組織成長を可能にするように構築され且つ配置されている複数の間隙を含む、請求項28に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項30】
前記修復用繊維は、PTFEメッシュおよびポリプロピレンメッシュの1つから形成される、請求項28に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項31】
前記修復用繊維は、第1および第2の面を有し、
前記第1の面は、前記組織または筋壁の欠損に面するように構成され、
前記第2の面は、前記欠損と反対向きとなるように構成され、
当該移植可能なプロテーゼは、組織および器官との癒着形成を阻止する面バリアをさらに備え、
前記面バリアは、前記修復用繊維の前記第2の面の少なくとも一部に配置されている、請求項28に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項32】
前記面バリアは、実質的に前記修復用繊維の前記第2の面全体に配置されている、請求項31に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項33】
前記面バリアは、ePTFEから形成されている、請求項31に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項34】
前記修復用繊維は、第1および第2の面と、当該第1の面から当該第2の面に延在している繊維端と、を有し、
前記第1の面は、前記組織または筋壁の欠損に面するように構成され、
前記第2の面は、前記欠損と反対向きとなるように構成され、
当該移植可能なプロテーゼは、前記繊維端の少なくとも一部との癒着形成を阻止する端バリアをさらに備えた、請求項27に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項35】
前記修復用繊維は、本体部分と、第1および第2のローブと、を有し、
前記第1のローブおよび第2のローブは、これらの間に配置されている前記開口部と共に前記本体部分から延在し、
前記端バリアは、前記開口部の近位の前記修復用繊維の前記第1の面の一部に配置され、
前記端バリアは、前記本体部分を越えて延在し、前記第1のローブと前記第2のローブとの間の前記開口部の一部を覆っている、請求項34に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項36】
前記端バリアは、前記第1のローブから前記第2のローブまで前記開口部を横切って延在する折りたたみ線に沿って前記開口部内に折りたたまれるように構成されている外側部分を有し、
前記端バリアは、前記折りたたみ線と前記本体部分との間の前記開口部を覆っている棚部分をさらに有する、請求項35に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項37】
前記端バリアは、前記第1のローブから前記第2のローブまでの前記開口部を横切って延在している湾曲した外端を有し、
前記外端は、第1の支持点で前記第1のローブを覆っていると共に、第2の支持点で前記第2のローブを覆っている、請求項36に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項38】
前記端バリアが、涙の形をした構成を有する、請求項37に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項39】
前記折りたたみ線は、前記第1の支持点から前記第2の支持点まで延在している、請求項37に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項40】
前記端バリアは、第1および第2の付着点においてそれぞれ前記第1のローブおよび前記第2のローブに付着し、
前記第1および第2の付着点は、前記第1および第2の支持点と前記本体部分との間に配置されている、請求項37に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項41】
前記折りたたみ線は、前記第1の付着点から前記第2の付着点まで延在している、請求項40に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項42】
前記折りたたみ線は、前記第1の支持点から前記第1の付着点まで延在している前記第1のローブの領域から、前記第2の支持点から前記第2の付着点に延在する前記第2のローブの領域まで延在している、請求項40に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項43】
前記端バリアは、前記第1および第2のローブのうち1つの前記繊維端の少なくとも一部の周囲に配置されている、請求項34に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項44】
前記端バリアは、前記第1および第2のローブの各々の繊維端の少なくとも一部の周囲に配置されている、請求項43に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項45】
前記端バリアは、前記開口部の前記繊維端の少なくとも一部の周囲に配置されている、請求項34に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項46】
前記修復用繊維は、反転された縫い目に沿って互いに連結された第1層および第2層を有し、
前記縫い目は、前記第1層と前記第2層との間の内部に延在して、前記組織および器官の浸食を阻止する、請求項27に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項47】
前記修復用繊維は、食道裂孔近位に位置するように構築され且つ配置され、
前記開口部は、前記食道を受容するように構成されている、請求項27に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項48】
管状構造の近傍における組織または筋壁の欠損を修復するためのプロテーゼ修復用繊維において、
組織および器官との癒着形成および前記組織および器官内への浸食の影響を受けやすい繊維層であって、前記管状構造を受容するように構成されている開口部を有する繊維層を備え、
前記修復用繊維は、本体部分と、前記本体部分から離れて延在している第1および第2の尾部と、を有し、
前記開口部は、前記第1の尾部と第2の尾部との間の前記本体の端部に沿って配置され、
当該プロテーゼ修復用繊維は、前記第1の尾部と前記第2の尾部との間の前記本体の前記端部により組織および器官の癒着形成を阻止するように構成された端バリアであって、第1の付着点で前記第1の尾部に付着されると共に第2の付着点で前記第2の尾部に付着された端バリアを備え、
前記第1および第2の付着点は、前記開口部のセグメントを横切って互いに整列され、
前記端バリアの一部は、前記開口部の一部を覆うと共に、前記第1の付着点と前記第2の付着点との間で延在している、プロテーゼ修復用繊維。
【請求項49】
前記端バリアは、前記第1の尾部から前記第2の尾部へ前記開口部を横切って延在する折りたたみ線に沿って前記開口部内に折りたたまれるように構成されている外側部分を有し、
前記端バリアは、前記折りたたみ線と前記本体部分との間の前記開口部を覆っている棚部分をさらに有する、請求項48に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項50】
前記端バリアは、前記第1の尾部から前記第2の尾部の前記開口部を横切って延在している湾曲した外端を有し、
前記外端は、第1の支持点で前記第1の尾部を覆っていると共に、第2の支持点で前記第2の尾部を覆っている、請求項49に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項51】
前記端バリアは、涙の形をした構成を有する、請求項50に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項52】
前記折りたたみ線は、前記第1の支持点から前記第2の支持点まで延在している、請求項50に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項53】
前記第1および第2の付着点は、前記第1および第2の支持点と前記本体部分との間に配置されている、請求項50に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項54】
前記折りたたみ線は、前記第1の付着点から前記第2の付着点まで延在している、請求項53に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項55】
前記折りたたみ線は、前記第1の支持点から前記第1の付着点まで延在する前記第1の尾部の領域から、前記第2の支持点から前記第2の付着点まで延在する前記第2の尾部の領域まで延在している、請求項53に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項56】
前記修復用繊維は、組織および器官との癒着形成ならびに組織および器官内への浸食の影響を受けやすい、請求項48に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項57】
前記修復用繊維は、組織成長を可能にするように構築され且つ配置されている複数の間隙を含む、請求項56に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項58】
前記修復用繊維は、PTFEメッシュおよびポリプロピレンメッシュの1つから形成されている、請求項56に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項59】
前記修復用繊維は、第1の面および第2の面を有し、
前記第1の面は、前記組織または筋壁の欠損に面するように構成され、
前記第2の面は、前記欠損と反対向きとなるように構成され、
当該移植可能なプロテーゼは、組織および器官との癒着形成を阻止する面バリアをさらに備え、
前記面バリアは、前記修復用繊維の前記第2の面の少なくとも一部に配置されている、請求項56に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項60】
前記面バリアは、実質的に前記修復用繊維の前記第2の面全体に配置されている、請求項59に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項61】
前記面バリアは、ePTFEから形成されている、請求項59に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項62】
前記第1および第2の尾部の各々は、丸みを帯びた外周部を有する、請求項48に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項63】
前記修復用繊維は、反転された縫い目に沿って互いに連結された第1層および第2層を有し、
前記縫い目は、前記第1層と前記第2層との間の内部に延在して、前記組織および器官の浸食を阻止する、請求項48に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項64】
前記修復用繊維は、食道裂孔近位に位置するように構築され且つ配置され、
前記開口部は、前記食道を受容するように構成されている、請求項48に記載の移植可能なプロテーゼ。
【請求項65】
前記修復用繊維は、ハート形の構成を有する、請求項48に記載の移植可能なプロテーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2010−5416(P2010−5416A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189372(P2009−189372)
【出願日】平成21年8月18日(2009.8.18)
【分割の表示】特願2004−502877(P2004−502877)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(591018693)シー・アール・バード・インコーポレーテッド (106)
【氏名又は名称原語表記】C R BARD INCORPORATED
【Fターム(参考)】