説明

プロトコルガイドイメージング手順

提案される方法と装置は、診断所見の可能な全選択肢を、取得若しくは観察される画像によってあらわされる特定臨床状況に適したものに制約することによって、医用画像によって示される診断所見を選択するタスクを単純化する。さらに、提案される方法と装置は、各々が取得される画像をあらわすビューのセットを含む所定検査プロトコルの概念を利用すること、及びそのビューに対して取得される各画像と関連する臨床状況を各ビューとともに含むことによって、画像を取得する人による明白な動作なしに、画像によってあらわされる臨床状況を利用可能にする。言い換えれば、提案される方法とシステムはビューのいずれか1つに臨床的に関連する診断所見のみを選択のために利用可能にすることを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は診断レポートの作成の医用イメージングプロトコルガイダンス及び関連するイメージングシステム挙動に関する。特に、本発明はプロトコルガイド診断のための方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
患者の診察は複雑で専門性の高い高価な医用イメージング装置にますます依存するようになっている。医用イメージング装置、別名"医用イメージングモダリティ"は、X線、超音波及びCTイメージングシステムを含む。
【0003】
現在のイメージングモダリティは解剖学的構造及び生理学的機能の高品質画像を提供することができる。例えば、血管超音波検査では、血管構造(解剖学)だけでなく、存在し得るプラーク沈着と、血流方向及び速度情報(生理学)を示す血管画像が取得され、これらは血管が閉塞しているかどうか、及びその程度、静脈弁が機能しているかどうか、及び他の重要な臨床情報を決定するために有用である。
【0004】
既存のイメージング装置を用いて、開業医は画像が取得される際になされる観察に関連する書面の若しくは頭の中のメモを画像取得中に取り得る。画像取得手順("検査")の終わりに、開業医は通常、画像検査中に発見された病状を委託医師に知らせる、複数の診断所見から成る診断レポートを作成する。これらの診断所見は検査中に取られる書面の若しくは頭の中のメモに基づき得るが、これは検査中に何が実際に観察されたかの曖昧な若しくは不正確な記憶であるかもしれず、各メモにつながる特定画像との関連性は失われる。
【0005】
代替的に、画像取得がなされた後に全取得画像の完全な再レビュー中に診断所見が作成され得るが、キャプチャ画像は検査中にオペレータによって見られる全画像の代表サンプルに過ぎないので、特定画像のキャプチャにつながるより広い背景は失われる可能性があり、精度の低い結果につながる。各場合において、メモ及び/又は画像をレビューし、診断レポートを用意するための個別プロセスステップが検査時間に加えられる。
【0006】
診断レポートを作成する開業医の負担を軽減するために、医学用語集基準で若しくはローカル生成コードセットで定義されるコード形式で所定の"診断所見"を保存するための医療データベースが作られている。こうした医療データベースは通常、心臓病患者などの特定の場合であっても、ほぼ数千程度の診断所見を有する。この情報が階層的に組織化される場合でも、所望のステートメントに"掘り下げる"際になされる必要がある多くの選択が依然として存在する。これは、所望の1つ若しくは複数のコードを見つけるために多数の利用可能な所見をくまなく検索するために必要な時間のために、画像取得中の診断レポートの作成を非実用的にする。診断レポートが画像取得後に作成されるときでも、レポート作成は開業医の貴重な時間を多く費やす。
【0007】
さらに、このプロセスは例えばそのステートメントの証拠を与える特定画像と診断所見との間のリンクを作る機会を提供しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、関連する医学的所見の記録を取るプロセスをサポートし高速化する手段、及びこのプロセスを現代のイメージングモダリティのスループット能力によりよく同調させることが、当該技術分野で必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明はこのジレンマに対処するために"取得プロトコル"の概念を活用する。一般用語において、取得プロトコルは特定タイプのイメージング検査が行われる方法の合意した計画である。より具体的には、装置用語においてプロトコルは医用イメージング検査を有する全ての必要な情報を集めるために実行されるステップの所定セットであり、これらのステップの実行はイメージング装置によってサポートされ実施される。
【0010】
プロトコルは取得される各画像の特性を定義し、ユーザが各画像の取得に備えて機器を適切に設定するのを助ける。特に、プロトコルはその下で各画像が取得される"臨床状況"を規定し得、これは走査される特定の解剖学及び/又は生理学、イメージングトランスデューサの位置及び方向、及び使用するイメージングモードを含むがこれらに限定されない。さらにプロトコルは、画像取得のための臨床状況、使用する追加イメージングマシン設定、画像上に表示されるテキスト及びグラフィックの注釈、なされるべき1つ以上の定量的測定、及び画像の取得に関連する他の情報について、ユーザへプロンプトを提供する。プロトコルの制御下で取得される複数の全画像は、開業医に診断レポートの形で診断結果を策定するために彼若しくは彼女が必要とする情報を提供する。
【0011】
プロトコルは実際の画像取得前に全検査タイプについて医療関係者によって前もって一度定義される。各プロトコルは一般に取得される特定タイプの検査に合わせられ、画像取得が特定イメージングモダリティの能力を最大限に利用することを可能にする。
【0012】
本発明はプロトコルガイドイメージング手順において取得される医用画像を処理する方法を提供することによって上記要求に対処する。方法は機械可読形式で取得画像ファイルによってあらわされる臨床状況をプロトコルにおいて識別するステップを有する。画像取得時、方法は次にプロトコルから取得画像ファイルへ臨床状況データをコピーするので、これ以降臨床状況が取得画像についてわかる。
【0013】
プロトコルは例えばマークアップ言語で各手順ステップすなわち"ビュー"を規定する。ビューは例えば座標パラメータによって、取られる画像によってあらわされる特定臨床状況を識別する。プロトコルにおける情報及び臨床状況データの全体は特に、各取得画像によってあらわされる臨床状況を定義する。
【0014】
そのように作られ、その中に臨床状況データをコピーしている医用画像ファイルは、その取得時にそのビットパターンによってあらわされる臨床状況についての記述的情報を持つため、"スマート"画像である。言い換えれば、スマート画像はそれがあらわす臨床状況について"知っている"。
【0015】
"スマート"画像を得るために取得画像ファイルに"臨床状況データをコピーする"ことは広義に解釈される。コピーはマーキング若しくは臨床状況データへの参照を単に加えることも含み得る。
【0016】
方法はこの臨床状況データを用いて、臨床状況に適した方法で画像レビュー及び処理挙動を調節するステップをさらに有する。方法は、プロトコルにおける臨床状況データを利用して、取得画像ファイルに対して実行されるその後の後処理ステップを迅速に処理することを可能にする。
【0017】
本発明の方法によって対処される後処理ステップは以下を含み得る:
監視している開業医の診断レポートを作成するために有用な適切な診断所見を、開業医による選択のために提供するステップ、
医学的所見を強調するために画像と統合するための利用可能な適切なグラフィック注釈マーカを作るステップ、
そこからオペレータが代表画像において実際に視覚化される構造をマークし得る、視覚化構造のチェックリストを開業医による選択のために提供するステップ、
取得画像によってあらわされる臨床状況を知ることが有益であり得る他の同様のシステム挙動をカスタマイズするステップ。
【0018】
一実施形態によれば方法は候補診断所見のデータベースをフィルタリングするステップを有する。フィルタリングは、画像ファイルにコピーされた臨床状況データを、保存された診断所見のインデックスにマッチさせることによる。1つ以上のマッチが検出されると、グラフィカルユーザインターフェースにおいて選択のためにユーザに提供されるものはマッチする診断所見のみである。このようにして潜在的に膨大な数の利用可能な診断所見に対する制限されたビューがもたらされる。
【0019】
ユーザが例えばグラフィカルユーザインターフェース上のマウスなどのポインタデバイスでクリックすることによってコマンドを出すと、マッチした診断所見を画像ファイルへリンクするさらなるステップが実行される。このように1つの画像と1つのマッチした診断所見を有するバンドルすなわち"タプル"が作られる。そのように作られたデータ構造は医学的レポートの作成だけでなく、その後の画像のオフラインレビューも容易にする。画像ファイルとマッチする診断所見との関連性は、画像をマッチする診断所見に効果的にリンクするために適切なパス若しくはリソースロケータによってもたらされ得る。
【0020】
イメージング手順後、検査は保管済み画像ファイルを適切なビューアで呼び出すことによって容易にレビューされることができる。画像ファイルのビュー及びクリックスルー時、又はその他の方法で指導医による要求時に、例えば各画像ファイルと一緒に画面上のポップアップに、マッチしたリンクされた診断所見が示される。
【0021】
選択された診断所見は、取得中、取得直後、若しくは後期に、医学的レポートにコンパイル若しくはアセンブルされ得る。
【0022】
方法はまた、"進みながら対応診断レポートと一緒に走査する(scan together with a corresponding diagnostic report as you go)"パラダイムを生じることも可能にし、その中で開業医が所用画像の取得と診断レポートの作成の両方を同時に実行することを可能にする。従って高価な医用イメージング装置及び開業医の時間がより効率的に使用され得る。
【0023】
従って、本発明にかかる方法の重要な利点は、
1)取得中に作られる診断所見が忘れられない。
2)取得画像自体だけではなく、代表画像の取得前に全ての視覚化画像に対するオペレータの認識が診断所見の収集において考慮される。
3)所見は個別の(潜在的にエラーを起こしやすい)後処理ステップとして情報システムに入れられる必要がなく、それが生じるときに集められ得る。
4)上述の取得画像と関連診断所見との間のリンクは容易に作られる。
5)現在の走査後診断レビューと比較して、適切な診断ステートメントの"検索"に必要な時間は、同時の画像取得及び診断レポート作成が実用的である程度まで削減される。
【0024】
別の実施形態によれば、方法はさらに、適切な診断所見の数をさらに制約するためにフィルタリングステップを実行するときに少なくとも1つの取得画像ファイル対して取られる少なくとも1つの測定値を考慮することを可能にする。本発明のこの実施形態によれば、方法は取得された各測定値をその測定に対する値の正常範囲に対して比較して偏差値を得るステップをさらに有する。そして偏差値は、画像ファイルにコピーされた臨床状況データと、画像に対して取られた測定結果の1つ若しくは複数の偏差値の両方をマッチングすることによって、最も適切な所見を求めて診断所見データベースをフィルタリングするために使用される。
【0025】
従って方法は、開業医が画像ファイルにおいてあらわされる特定の臨床状況を考慮するようにより的を絞った方法で診断所見を選択することを可能にする。本発明の一態様によれば、比較するステップ、データベースをフィルタリングするステップ、選択された診断所見をコピーするステップは、画像が画面上に表示されている間に起こる。
【0026】
これらのステップはまた、各個々の画像ファイルに対してその取得直後に実行されてもよく、又は取得セッションの終了後に後期へ持ち越されてもよい。さらに、ステップは画像を取得した装置に対して、画像を取得した装置とは異なる装置に対して実行されてもよく、又は複数の個別装置に分配されてもよい。
【0027】
本発明のさらなる実施形態によれば、方法ステップは画像ファイルと関連する臨床状況とマッチする解剖学的注釈マーカを求めてデータベースをフィルタリングするステップをさらに有する。マッチが検出されると、ユーザインターフェースにおいて選択のために提供されるのはマッチするマーカのみである。これは、開業医が医療状況に関連する注釈マーカのみを与えられるので、検査手順のさらなる高速化をもたらす可能性があり、現在のシステムは通常、膨大な数の可能性がある注釈マーカを提供するため、スループットがさらに高められる。
【0028】
本発明はさらに、上記方法をコンピュータ可読媒体と一緒に実施する装置と、適切なシステム上で方法を実施するのに適したプログラム要素を提供する。言い換えれば、本発明はまた、本発明にかかる方法が適切なシステム上で実行され得るような、処理装置のためのコンピュータプログラムにも関する。コンピュータプログラムは好適にはデータプロセッサのワーキングメモリにロードされる。従ってデータプロセッサは本発明の方法を実行するように装備される。さらに、本発明はコンピュータプログラムが保存され得るCD‐ROMなどのコンピュータ可読媒体に関する。しかしながら、コンピュータプログラムはワールドワイドウェブのようなネットワーク上に存在してもよく、かかるネットワークからデータプロセッサのワーキングメモリにダウンロードされることができる。
【0029】
要するに、提案される方法と装置は、可能な全ての診断所見を特定の解剖学的データ("臨床状況")にとって適切なものへ制約することによって、上記の当該技術分野における問題を解決する。画像取得手順がプロトコルによってガイドされているので、各イメージングステップ("ビュー")に対する臨床状況がわかり、検査時のオペレータの関与なしに各取得画像に添付され得る。さらに言い換えれば、提案される方法とシステムはビューのうちのいずれかに臨床的に関連する診断所見のみを利用可能にすることを可能にする。
【0030】
イメージング後処理は、ステートメントの証拠を与える特定画像と診断所見との間のダイナミックリンクを容易に作る機会を与えることによって、さらに促進され得る。画像が取得されるときに診断所見の記録を取ることができることで、リンクが所見と一緒に保存されることを可能にし得る。そして所見と、それにリンクされた画像("タプル")は標準DICOM技術を用いて若しくは任意の他の手段によって保存され得る。
【0031】
従って本発明は"進みながらレポートする(report‐as‐you‐go)"技術のパラダイムを促進する。医学的レポートは画像取得手順中に事実上"オンザフライ"で作られる。レポートは様々なスキルレベルのオペレータによる"予備"レポートであるか、又は検査取得が署名権限を持つ医師によって実行されている場合は"最終"レポートであるかのいずれかであり得る。
【0032】
利用可能な全ての診断所見を重要な少数のものに制約することによって、検査取得中に予備若しくは最終レポートを作成することをより実用的にし、必要であれば、それら診断ステートメントの各々を、所見を代表する1つ以上の画像にリンクする、又は画像のうちの1つを、適用可能な診断所見のうちの1つ以上にリンクすることをより実用的にする。
【0033】
本発明の態様及び実施形態は異なる主題に関して記載されていることが留意されるべきである。特に、一部の実施形態は方法タイプクレームに関して記載され、一方他の実施形態は装置タイプクレームに関して記載されている。しかしながら、当業者は上記及び下記説明から、他に指定がない限り、1タイプの主題に属する特徴の任意の組み合わせに加えて、異なる主題に関連する特徴間、特に装置タイプクレームの特徴と方法タイプクレームの特徴との間の任意の組み合わせもまた、本願とともに開示されるとみなされることを推測するだろう。
【0034】
本発明の実施形態はほんの一例として以下の図面を参照して記載される。図面は略図であり縮尺通りでなく、同様の数字は図面にわたって同様の構造をあらわす。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】医用イメージングモダリティと通信する、本発明の一実施形態にかかる医用画像ファイルを処理するための装置を示す。
【図2】図1における装置の操作の略ブロック図を示す。
【図3】図1における装置の第2の実施形態にかかる操作の略ブロック図を示す。
【図4】図1における装置の第3の実施形態にかかる操作の略ブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明の一実施形態にかかる医用画像ファイルIMを処理するための装置APPを示す。
【0037】
装置APPはコンピュータCと通信する。コンピュータCは医用イメージングモダリティMMを制御する。イメージングモダリティは例えばX線若しくは超音波装置である。
【0038】
コンピュータCは図2に示すプロトコルPPを用いることによってイメージングモダリティMMにおけるイメージング手順を制御若しくはガイドする。
【0039】
プロトコルPPは各医用画像ファイルIMを取得するためにイメージングモダリティMMによって実行される複数のステップを定義する。このプロトコル制御若しくはガイドイメージング手順の完了時、取得画像ファイルIMは画像処理装置APPへ送られる。
【0040】
装置APPは取得画像ファイルIMを受信するための適切なインターフェースIMPを持つ。装置APPはプロセッサPとフィルタアルゴリズムFAを有する。図2でより詳細に説明される通り、プロセッサPは受信画像ファイルIMとプロトコルPPに基づいて"スマート"画像ファイルIMSを生成する。
【0041】
装置APPの操作はスマート画像ファイルIMSを診断所見データベースDSDBに保存された1つ以上の診断所見とマッチングすることを実行する。マッチングテンプレートはフィルタアルゴリズムFAを用いることによってリトリーブされる。
【0042】
装置APPは画像の臨床状況に最も関連する1つ以上の診断所見と関連するスマート画像ファイルIMSを出力する。そして最も関連する診断所見のセットを伴う画像は、表示画面D上で見るために送られ得る。コンピュータCはスマート画像IMSを見るために適切なビューアプログラムを実行する。画面Dはさらに、イメージングモダリティMMのオペレータ(例えば技師若しくは指導医)へ選択のためにマッチする最も関連する診断所見を提供するグラフィカルユーザインターフェースGUIを表示する。
【0043】
再度図2を参照して、装置APPの操作がより詳細に説明される。
【0044】
プロトコルPPは医用イメージング手順を構成するイメージングステップすなわち"ビュー"の所定セットである。各プロトコルビューはその下で画像が取得される条件を規定し、例えば名前及び/又は画像の臨床状況CCを規定するコード化概念、注釈テキストと身体マーカを含む画像のグラフィック及びテキストのラベリング、画像に対して実行される定量化若しくは測定、並びに、イメージングモード、イメージングタイプ及び他の制御設定を含む、イメージング装置MMに関連する制御画像設定を含む。言い換えれば、プロトコルにおける各ビューは検査される特定組織器官を、及び随意的には手順において各画像とともに得られる1つ以上の測定結果を規定する。
【0045】
図2の左側はプロトコルPPの略図を示す。プロトコルPPは例えばXMLなどのマークアップ言語でコード化される複数のデータフィールドを持つ構造化ファイルである。
【0046】
プロトコルデータフィールドの各々は画像ファイルIMを取得するときにイメージングモダリティMMで実行されるイメージング手順のビュー(図2ではビュー1からn)を規定する。
【0047】
各ビュー‐データ‐フィールドは随意に、そのビューにおける取得画像IMから取られ得る測定データMEASDを規定するサブ‐データ‐フィールドを持つ。他のサブ‐データ‐フィールドは各ビューにおける取得画像IMに注釈をつけるために使用され得る注釈マーカについての情報を有する。注釈データANDはグラフィックサムネイルへの参照、例えば身体マーカとして適切なGIFファイルを有する。
【0048】
各ビュー‐データ‐フィールドは臨床状況データCCを有する1つ以上のサブ‐データ‐フィールドをさらに有する。例えば、臨床状況データCCは頸動脈などの解剖学的オブジェクトの一部を規定し、これは各ビューにおいて取得されるときに画像上にあらわされる。
【0049】
プロトコルPPにおけるビューに対応する画像が取得されると、プロセッサPは"スマート"画像ファイルIMSを得るために、ステップS5において選択されたビューから臨床状況をコピーし、ステップS10において取得医用画像とともに臨床状況を保存する。画像ファイルIMSはそれがあらわす臨床状況を"知っている"ため、スマートである。
【0050】
スマート画像IMSは独自仕様フォーマット若しくはDICOMなどの標準フォーマットで保存され得る。本発明によればプロトコルからの臨床状況データCCはスマート画像IMSにおいてこの目的専用に特別に用意されたデータフィールドにコピーされる。プロセッサPは臨床状況データCCをインコピーする前に取得画像IMファイルを拡張するためにメモリ空間を割り当てることを実行する。
【0051】
図2の右側に示す通り、スマート画像ファイルIMSは、実際の画像若しくはボリュームデータサンプルPX(別名ピクセル若しくはボクセル)、及びメタデータMDを保持するデータフィールドとコピーされた臨床状況データCCを保持する隣接データフィールドとを有するヘッダを有する。
【0052】
臨床状況CCは例えば、解剖学的オブジェクトのテキスト記述(図2の例では"総頸動脈")、取得画像によってあらわされる"解剖領域"、及び各ビューにおいて取得されている解剖領域の部分を規定する"領域修飾子"の3個の組をDICOMコード化形式で有する。臨床状況データCCはビューの1つ1つに、この場合はビュー1に特有である。
【0053】
そしてモダリティMMにおけるイメージング手順は"ビュー2"から"ビューn"へと他のビューを経て進み、各々はこれらのビューのいずれか1つと関連する異なる解剖学的データに対応し、そしてこの解剖学的データは、さらなるスマート画像ファイルのセットを得るために取得画像ファイルのうちの各1つにプロセッサPによって同様にコピーされる。
【0054】
要するに、そのように得られるスマート画像は、図3及び図4で説明される通り、後処理ステップがより効率的に実行されるように促進するためにプロトコルにおいてコード化された臨床状況データで効果的に"強化"されている。言い換えれば、本発明はダウンストリームワークフローを最適化して画像後処理を最適化するために、プロトコルから取られた臨床状況を取得画像に組み込む。
【0055】
図3は第2の実施形態にかかる操作と、取得スマート画像IMSを後処理するときに画像処理装置APPによって実行される対応する処理ステップを示す。
【0056】
図3における後処理ステップは診断所見データベースDSDBに保存された診断所見の適切なセットをリトリーブし、スマート画像ファイルIMSと関連付けるステップを含む。
【0057】
その結果装置はスマート画像IMSにコピーされた臨床状況データCCを使用する。フィルタアルゴリズムFAは、取得画像の臨床状況を、診断所見データベースDSDB内の各診断所見が適用される臨床状況の集合若しくは臨床状況のサブセットと比較するためにパターンマッチング技術を使用し、フィルタアルゴリズムFAによって画像の臨床状況にマッチするとみなされる診断所見のみを通過する、ソフトウェア若しくはハードウェアモジュールである。フィルタアルゴリズムFAは当業者に既知の任意の技術を用いて実装され得る。
【0058】
診断所見データベースDSDB内の記録は複数のこうしたマッチング可能なコード化識別子を有し、各々は診断ステートメント自体若しくはファイルパスのいずれかと関連し、そしてこれはマッチが検出されるとプロセッサPが対応するデータベース所見をリトリーブすることを可能にする。データベースDSDBは、臨床状況データCCの関連するコード化されたしるしにインデックスされた診断所見データベースDSDB内のコード化診断所見の"ライブラリ"を提供する。
【0059】
そしてステップS20において、複数の可能な手段のいずれかによってグラフィカルユーザインターフェースGUI上に選択のために1つ以上のマッチする診断所見がリトリーブされ、提供される。グラフィカルユーザインターフェースGUIはスマート画像ファイルIMSのピクセル若しくはボクセルデータPXを表示するビューアのウインドウの横に、表示画面D上のウインドウ("ウィジェット")に表示される。代替的に、マッチする診断所見とピクセル若しくはボクセルデータはマスタウインドウの異なるペインに表示される。代替的に、ウインドウに表示されるものは診断所見自体ではなく、所見を示すボタンウィジェットとして配置されるアイコンである。これは各診断所見コード若しくは関連するコード意味テキストの最初の数語をアイコン上に表示することによってもよい。
【0060】
そしてオペレータはマウスなどのポインタデバイスを用いてマッチした診断所見を代表するアイコンのいずれか1つを選択し得る。こうしたユーザ"マウスクリック"に応答して、プロセッサPはステップS30において、ユーザが選択したマッチする診断所見を表示されたスマート画像ファイルIMSとバンドルし、画像ステートメント"タプル"を形成する上で操作可能である。バンドリングは連想配列などの適切なデータ構造としてメモリ内で画像‐所見をあらわすことによって実行される。連想配列において現在のスマート画像ファイルIMSは1つ以上のユーザ選択診断所見とリンク若しくは関連し、反対に、選択された診断所見の各々は1つ以上の画像と関連し得る。
【0061】
こうして作られるリンクは、インタラクティブに診断所見に対応する画像を見るために、又は証拠画像を診断所見と一緒に表示可能な若しくは印刷可能なレポートに組み込むために使用され得る。リンクされた全画像がレポート上に含まれるわけではない場合、ユーザは診断所見が選択されるときに特定画像が表示可能な若しくは印刷可能なレポート上にコピーされるべきかどうかを規定し得ることが留意される。代替的に、この指定は下記の通り全所見がレポートにフォーマットされるまで延期され得る。
【0062】
そして連想配列はPACSなどのリポジトリにさらなる処理のために保管され得る。これがなされ得るこうした手段の1つはSCOORDとして知られるDICOM構造化レポーティング"空間座標"を使用する。
【0063】
スマート画像ファイルのいずれか1つのビューアプログラムにおける表示のためのその後のリトリーブ時、その後のオフラインセッションにおける診断所見のレビューを容易にするために、関連する診断所見が画像ファイルIMSのピクセル若しくはボクセルデータの横に画面D上に表示され得る。言い換えれば、画像処理装置APPは指導医がステップS40において最終医学的レポートを作り始めるときに最も適切な診断所見の方へ指導医を迅速にガイドするように、オフラインレビューアプリケーションを促進する。
【0064】
スマート画像IMSのピクセル若しくはボクセルデータPXが画面D上に表示される間、ステップS15,S20及びS30がプロセッサPによって実行され得る。好適には、スマート画像ファイルIMFへの診断所見の関連性は表示画面上の現在の画像ファイルIMSを超音波検査技師が見ている間にもたらされる。
【0065】
グラフィカルユーザインターフェースGUIにおいて対応するアイコンをクリックして、超音波検査技師は、連想配列における1つ以上のスマート画像IMSと診断所見のうちの各々がステップS40において医学的レポートにアセンブルされるようにするコマンドを発し得る。
【0066】
ドキュメントの実際のアセンブリは適切なバックエンドダウンストリームソフトウェアツールによって作用され得る。例えば、バックエンドとしてワードプロセシングソフトウェアを用いて、医学的レポートをワードドキュメントとして作成するために、連想配列からスマート画像ファイルを、関連する診断所見と一緒にワードドキュメントにコピー‐ペーストする適切なマクロがコード化され得る。そのように得られる医学的レポートはPDFファイルに変換され得る。
【0067】
一実施形態によれば、S20において提供する前に、マッチする診断所見は適用性の程度を示す加重関数を用いてそれらの臨床解剖学的及び/又は生理学的関連性に基づいてランク付けされる。この場合グラフィカルユーザインターフェースは、関連性ランク付けされたマッチした所見の配列から最初のN診断所見のみを表示するようにグラフィカルユーザインターフェースGUIを構成する機能を提供する。そしてユーザインターフェースGUIは最高加重スコアによって順序付けられる関連する診断ステートメントを提示し、さらに例えば超音波検査技師によって望まれる他のデータを表示する。例えば、弁ジェットに関連する全選択は一緒に提示され得(狭窄の程度)、弁尖運動に関連する全選択は一緒に提示され得る(例えば脱出の程度)などである。
【0068】
別の実施形態によれば、フィルタアルゴリズムFAによるステップS15'におけるフィルタリングは、スマート画像IMSにおける臨床状況データCCを考慮して、見られたスマート画像IMSへの統合に最も適したグラフィック注釈マーカを選択するためにも使用され得る。
【0069】
図4を参照して、プロセッサPの第3の実施形態にかかる操作が説明される。第3の実施形態に従って操作するとき、フィルタアルゴリズムFAは、臨床状況データCCに対してだけでなく、表示されたスマート画像IMSから技師若しくは医師によって事前に得られる測定データMEASDに対してもマッチングさせることによって、診断所見についてステップS15"においてフィルタリングしている。
【0070】
測定データMEASDは例として、スマート画像ファイルIMSにおけるピクセルデータPXによってあらわされる頸動脈に関する収縮期最大流速(この実施例の場合PSV=49cm/s)を含み得る。MEASDにおける測定データはプロトコルPPにおいて規定される。
【0071】
プロトコル指定測定データMEASDは自動的に、半自動的に、又は測定される画像内の部分をあらわす座標を指定するためにマウスを用いることによってオペレータによって、取得される。指定座標点での幾何学的計算は測定データMEASDに変換される。フィルタアルゴリズムFAはステップS12において測定データMEASDを参照データデータベースRDDBに保持される正常値と異常値に対して比較する。フィルタアルゴリズムFAは正常値と異常値に対する測定データMEASDの偏差値を出し、異常値は例えば'軽症'、'中等度'、若しくは'重症'などの異常度を含み得る。その後、フィルタアルゴリズムFAは診断所見を求めて診断所見データベースDSDBにおいて複合フィルタリング実行するために偏差値を返す。言い換えれば、フィルタアルゴリズムFAは臨床状況データのみに基づいてマッチするだけでなく、偏差値についてもマッチする。この実施形態によれば、データベースDSDBにおけるコード化された診断所見は、コード化された解剖学的データ識別子だけでなく、フィルタが複合フィルタリングを実行することができるように多数のデータとも関連する。
【0072】
フィルタアルゴリズムFAがこうした複合マッチを検出する場合、マッチした診断所見の関連性ランキングが作られ、マッチする診断所見の関連性ランク付けされた配列における最初のN所見が、超音波検査技師に選択のためにグラフィカルユーザインターフェースGUI上に提供される。この実施形態によれば、診断所見は測定された特性を持つ特定生体構造に合わせられる。
【0073】
本発明のさらなる実施形態によれば、フィルタアルゴリズムFAの操作は、プロトコルからの臨床状況データ及び画像に対してなされる測定の偏差値に加えて、例えば実行されている検査のタイプ、患者デモグラフィック(性別若しくは年齢など)、患者の病歴若しくは妊娠歴(例えば移植器官の拒絶反応を伴う所見は移植患者のみにおいて関連し、産科的所見は在胎期間に依存し得る)、事前に選択される診断ステートメント、若しくは前の診断レポートからのステートメントを含む、プロトコルPP以外のソースから得られる追加の適切にコード化された臨床状況データを含むことによって増強され得る。
【0074】
さらなる実施形態によれば、フィルタアルゴリズムFAは前のフィルタリングパラメータのいずれかの組み合わせに基づくフィルタ機能性フィルタリングを提供する。
【0075】
"有する"という語は他の要素若しくはステップを除外せず、不定冠詞"a"若しくは"an"は複数を除外しないことが留意されるべきである。また、異なる実施形態と関連して記載される要素は組み合されてもよい。クレーム内の参照符号はクレームの範囲を限定するものと解釈されてはならないこともまた留意されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロトコルガイドイメージング手順において取得される医用画像ファイルを処理する方法であって、
前記取得画像ファイルによってあらわされる解剖学的オブジェクトに関する臨床状況データを前記プロトコルにおいて識別するステップと、
前記プロトコルから、前記識別された臨床状況データを前記取得画像ファイルに添付するステップとを有する、方法。
【請求項2】
前記識別された臨床状況に基づいて挙動を制約するステップをさらに有し、該挙動は前記取得画像に関連する臨床結果の観察、注釈、処理、若しくはレポートに影響を及ぼす、関連するシステム機能性内で利用可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記画像ファイルに添付された前記臨床状況データにマッチする潜在的診断所見のセットを求めてデータベースにおいてフィルタリングするステップと、
マッチが検出される場合、前記マッチする診断所見のみをユーザインターフェースにおいて選択のために提供するステップとをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記マッチする診断所見のセットから1つ以上の特定選択肢を前記画像ファイルと関連付け、1つ以上の画像‐所見タプルを形成するステップをさらに有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記画像‐所見タプルを医学的レポートへアセンブルするステップをさらに有する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記画像ファイル内の前記オブジェクトから取られる測定データを正常値と異常値に対して比較し、偏差値を分類するステップと、
前記画像ファイルに添付された前記臨床状況データと前記偏差値の分類の両方にマッチする診断所見のセットを求めてデータベースをフィルタリングするステップとをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記画像ファイルに添付された前記臨床状況データにマッチするテキスト及び/又はグラフィックの注釈を求めてデータベースにおいてフィルタリングするステップと、
マッチが検出される場合、前記マッチするテキスト及び/又はグラフィックの注釈のみをユーザインターフェースにおいて選択のために提供するステップとをさらに有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記取得画像ファイルが画面上に表示されている間に前記ステップのいずれか1つが実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
プロトコルガイドイメージング手順によって取得される医用画像ファイルを処理するための装置であって、
前記取得画像ファイルを受信するインターフェースと、
前記プロトコルにおいて前記取得画像ファイルによってあらわされる解剖学的オブジェクトに関連する臨床状況データを識別し、前記プロトコルから前記識別された臨床状況データを前記取得画像ファイルに添付する、プロセッサとを有する、装置。
【請求項10】
前記画像ファイルに添付された前記臨床状況データにマッチする潜在的診断所見のセットを求めてデータベースをフィルタリングするようにプログラムされるフィルタアルゴリズムと、
前記フィルタアルゴリズムによって検出される前記マッチする所見のみを選択のために提供するグラフィカルユーザインターフェースとをさらに有する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記グラフィカルユーザインターフェースがさらに、ユーザ入力に応答して、前記マッチする所見を前記画像ファイルと関連付け、保存されるのに適した画像‐所見タプルを形成する、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記フィルタアルゴリズムがさらに、コピーされた前記臨床状況データに対応する前記臨床状況に関連するグラフィック注釈マーカを求めてデータベースをフィルタリングするようにプログラムされ、そこからオペレータは前記画像ファイル上に表示するのに適した1つ以上のマーカを選択し得る、請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記画像ファイル内の前記オブジェクトから測定データを取るポインタデバイスをさらに有し、前記プロセッサがさらに、偏差値を得るために前記測定データを正常値に対して比較し、前記フィルタアルゴリズムがさらに、コピーされた解剖学的データと前記偏差値の両方にマッチするようにテキストテンプレートを求めてデータベースをフィルタリングするようにプログラムされる、請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記装置は前記取得画像ファイルが画面上に表示されている間に操作可能である、請求項9に記載の装置。
【請求項15】
コンピュータサーバ上で実行されるときに請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法を実行するようにコンピュータを制御する命令のセットを含むコンピュータプログラム要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−511762(P2013−511762A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539463(P2012−539463)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【国際出願番号】PCT/IB2010/055233
【国際公開番号】WO2011/064695
【国際公開日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】