説明

プロトロンビン複合体濃縮物とFVIII濃縮物との相乗療法的使用

本発明の分野は、後天性出血、重度の外傷性、周術期または術後出血に伴う臨床状態の治療である。FVIIIおよび/またはvWFを含む薬剤と一緒のプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)の相乗的な凝固促進性を活用する新規な治療を提案する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、後天性出血、重度の外傷性、周術期または術後出血に関連する臨床状態の治療である。FVIIIおよび/またはvWFを含む薬剤と一緒のプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)の相乗的な凝固促進性を活用する新規な治療を提案する。
【背景技術】
【0002】
基礎をなす遺伝性疾患がない後天的な凝固障害の結果としての出血は、多種多様な臨床上のコンステレーションで起こる可能性がある。外傷、周術期または術後出血、もしくは抗凝固剤の過剰投与によって、凝固系が損傷される可能性がある。重症例では、凝固障害は、大量の血液損失を伴うため、代用液(volume replacement)および/または赤血球輸血によって治療することが必要である。凝固系の機能的な要素の希釈により、出血の危険性が高くなる。外科的な創傷縫口の他にも、患者の損なわれた止血能の回復が必須である(非特許文献1)。止血は、循環血液の損失を防ぐための複雑なシステムである。その主要な要素は、血漿凝固因子、および、循環血小板のプールである。傷害後の最初の事象は、血小板と、新たに露出した内皮下のコラーゲンとのそのGPIb受容体を介した結合である。この結合は、大型の多量体タンパク質であるフォン−ビルブランド因子(vWF)が介在する。vWFは、血小板のGPIb受容体のための結合部位(A1)を有し、A3ドメインは、コラーゲンへの結合に関与する(非特許文献2)。内皮下で露出した組織因子は循環するFVIIと結合し、現状では未知の様式で活性型FVIIaを形成するすることによって外因性の凝固系を活性化する(非特許文献3)。TF/FVIIa複合体は、X因子をFXaに活性化することによって、少量のトロンビンを形成する。この初期のトロンビンは傷害部位において血小板を活性化し、さらに補酵素FVおよびFVIIIもそれぞれFVaおよびFVIIIaに活性化する。続いてFXaは活性化された血小板に結合し、そこでそれはFIXa/FVIIIa複合体によってFXaに変換される。FXa/Va複合体に結合した血小板がプロトロンビンをトロンビンに変換し、トロンビンバーストを仲介する(非特許文献4)。希釈性凝固障害は、消費、希釈および損失によって引き起こされ、凝固の全ての側面:凝固カスケードの酵素およびプロ酵素、フィブリノーゲンならびに血小板に影響を与える(非特許文献5、6)。また赤血球も止血に寄与するため、ヘマトクリット値の減少によっても止血が損なわれる(非特許文献7、8)。さらにコロイドの使用も、フィブリン重合の減少をもたらすことが知られている(非特許文献9)。低体温症は、ヒト血漿において様々な温度で示されているように、凝固に悪影響を及ぼすことが示されている(非特許文献10)。非特許文献11は、前臨床試験において、低体温症はトロンビン生成の遅延を引き起こすことを実証している。アシドーシスと共に、低体温症および凝固障害が外傷の「致死的な試練」を引き起こし(非特許文献12)、影響を受けた患者において生命を脅かす凝固障害を発症させる(非特許文献13)。線溶系が活性化されると、フィブリノーゲンおよびフィブリンの消費により状態をさらに悪化させる可能性がある(非特許文献14)。
【0003】
止血バランスを回復させるためには、凝固因子、および赤血球および血小板のような細胞の要素を補充することが必須である(非特許文献15、16)。凝固障害を治療するために新鮮凍結血漿(FFP)が広範に使用されているが、それとは対照的に、公開された文献においてその有効性を示す証拠はほとんどない(総論として、非特許文献17を参照)。FFPの使用は、輸液関連急性肺傷害の発症を合併することがしばしばある(非特許文献18)。このような状況の中で、凍結血漿からの寒冷沈降物が広く用いられている。乏しい有効性および安全性の問題のために、希釈性凝固障害を克服するための新しい概念の模索が、未だに臨床的な課題である。
【0004】
本発明は、このような臨床的な状況におけるPCCの使用に基づく。PCCと様々な凝固因子との組み合わせは、以前に、例えばヒルジンのような様々な凝固防止剤に対する解毒薬として提案されてきた(特許文献1)。また、血友病Aインヒビター症患者を治療するための、場合によりその他の凝固因子と組み合わせた、II、V、Va、XおよびXa因子からなる群より選択される少なくとも2つの高度に精製された成分を含む医薬組成物が記載されている(特許文献2)。
【0005】
非活性型凝固因子FII、FVII、FIXおよびFXを含む上述のPCCと対照的に、その臨床的状況の中で、活性型PCCも使用されている。このような活性型PCCの例は、FEIBA(R)(イムノ−バクスター(Immuno−Baxter))、およびオートプレックス(Autoplex(R))(ハイランド(Hyland))である。これらの活性型PCCは、凝固因子FII、FVII、FIXおよびFXを活性型で含む。活性型PCCの使用は、性質的にプロトロンビンの副作用の固有の危険性を伴うため、非活性型PCCを使用することを好ましいものにしている。
【0006】
近年、意図的な血液損失と流体の補充によって作製した希釈性凝固障害モデルにおいて、PCCとフィブリノーゲンとの組み合わせが、有益であることが見出された(非特許文献19)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】EP0700684
【特許文献2】EP0796623
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Hardy,2006
【非特許文献2】Ruggeri,1993
【非特許文献3】Morrissey,2001
【非特許文献4】Monroe等,2002
【非特許文献5】Hiippala等,1995
【非特許文献6】Hiippala,1998
【非特許文献7】McLoughlin等,1996
【非特許文献8】Sheiner,2005
【非特許文献9】Innerhofer等,2002
【非特許文献10】Rohrer,1992
【非特許文献11】Martini等(2005)
【非特許文献12】Mikhail,1999
【非特許文献13】Cosgriff等,1997
【非特許文献14】Vorweg等,2001
【非特許文献15】Spivey,2005
【非特許文献16】Spahn,2004
【非特許文献17】Stanworth,2004
【非特許文献18】TRALI,Bux,2005
【非特許文献19】Fries等,2006。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、後天的な凝固障害によって引き起こされる相当な罹患率および死亡率を考慮すると、高い臨床的な重要性と、このような臨床状態の治療の有効性をさらに高める強い動機が存在する。従って、本発明の目的は、後天的な凝固障害を治療するためのさらに改善された療法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、単離されたPCCと、単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む薬剤との組み合わせを用いた後天的な凝固障害の治療は、PCCまたはFVIIIとvWFとを含む製剤のいずれかを用いた治療と比較して、相乗的に大きく高められた有効性をもたらすことを発見した。単離されたPCCと組み合わせようとする製剤は、FVIIIおよび/またはvWFを含み、それに加えて、場合により止血に寄与するその他の成分を含んでいてもよい。本発明の一実施態様は、単離されたPCCと、実質的にFVIIIおよびvWFからなる薬剤との組み合わせである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】血液損失(分割血液抜き取り、およびヒドロキシエチルスターチ(HES)での補充による、低体温症の正常血圧のブタを用いた希釈性凝固障害の動物モデル)を用いて、提案した治療の有効性を調査した。脾臓に切り込みを入れることにより外傷を誘発させ、血液損失を測定した。ベリプレックス(Beriplex)P/N(R)、およびヘリキセート(Helixate(R))またはヒューメート(Humate)P(R)のいずれかを用いた補充療法を行った。ベリプレックスP/N(R)は、ビタミンK依存性凝固因子II、VII、IXおよびXを含むプロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)である(Schulman,2007)。加えてベリプレックスP/N(R)は、プロテインCおよびプロテインSを含む。ヘリキセート(R)は、活性成分として組換えFVIIIからなる。ヒューメートP(R)は、実質的にFVIIIおよびvWFからなる製品である)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「単離された」は、本発明の意味において、個々の凝固因子または凝固因子の混合物が、ヒト血漿から、または組換え生産される場合は培地から精製されていることを意味する。精製した、とは、本発明の意味において、元々個々の凝固因子または凝固因子の混合物が得られた溶液と比較して、該凝固因子または凝固因子の混合物の含まれるタンパク質総量1mgあたりの生物活性がより高くなる、または該凝固因子または凝固因子の混合物の最後に患者に投与される液体1mlあたりの生物活性がより高くなる任意のタイプの精製を意味する。
【0013】
「同時の使用」は、本発明の意味において、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物を混合した後、患者に混合物として投与することを意味する。
【0014】
「別々の使用」は、本発明の意味において、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物が、同時に投与されるか、またはそれぞれ交互に投与されることを意味し、ここにおいて該投与の順番は重要ではない。
【0015】
「連続的な使用」は、本発明の意味において、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物が、別々に投与されることを意味し、ここにおいて、該投与の順番は重要ではなく、さらに、両方の投与間の時間間隔は、最大で2日、優先的には最大で1日、およびより優先的には最大で4時間である。
【0016】
提案した治療の有効性を調査するために、低体温症の正常血圧のブタにおける、分割した血液抜き取り、およびヒドロキシエチルスターチ(HES)での補充による希釈性凝固障害の動物モデルを用いた。脾臓に切り込みを入れることにより外傷を誘発させ、血液損失および止血までの時間を測定した。
【0017】
ベリプレックス(Beriplex)P/N(R)、およびヘリキセート(Helixate(R))またはヒューメートP(Humate P(R))のいずれかを用いた補充療法を行った。ベリプレックスP/N(R)は、ビタミンK依存性凝固因子II、VII、IXおよびXを含むプロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)である(Schulman,2007)。加えてベリプレックスP/N(R)は、プロテインCおよびプロテインSを含む。ヘリキセート(R)は、活性成分として組換えFVIIIからなる。ヒューメートP(R)は、実質的にFVIIIおよびvWFからなる製品である。
【0018】
約60%の体積の循環血液を段階的に抜き取り、赤血球を補液することにより、希釈性凝固障害を誘発させた。循環する凝固因子の減少をモニターした。凝固系の機能を、トロンボエラストグラフィーおよびプロトロンビン時間(PT)によって検出した。血小板の機能を、凝集および付着によってモニターした。補充に関する研究は、以下の群で構成した:未処理のコントロール群(希釈性凝固障害なし)、治療を行わない希釈性凝固障害、PCC、PCC+フィブリノーゲン、PCC+vWF/FVIII、PCC+組換えFVIII、vWF/FVIII、組換えFVIIa、FIX/FX、およびPCC+vWF。脾臓傷害後の凝固系および出血の修復を測定した。
【0019】
凝固障害により、凝固因子の濃度がベースライン濃度の約30%に減少した。血小板数は約400,000から100,000/μlに減少し、加えて凝集および付着も劣化した。PCCは、失われたプロトロンビン因子(II、VII、IXおよびX)を補充し、凝固を改善することができた。脾臓傷害後、PCCは、希釈性のコントロールと比較して、止血までの時間を有意に短縮し、血液損失を減少させた。一方で、vWF/FVIII単独では実験結果は変化せず、加えてFIX、またはそれぞれのFVIIaを用いた治療も変化しなかった。それに対して、PCCと、FVIIIもしくはvWFのいずれか、またはvWF/FVIIIとの組み合わせは、止血までの時間と血液損失をほぼ正常な値まで有意に減少させた。これによれば、FVIIIおよび/またはvWFとPCCとの組み合わせは、PCCを単独で用いた単剤療法よりもかなり有効であり、相乗効果を示すことがわかる。
【0020】
加えて、vWF/FVIIIで治療した群では血小板の付着能力も有意に増加しており、これは、損なわれた血小板の機能も正常化する可能性があることを示す。
【0021】
近年、出血疾患において、プロトロンビン複合体の1つの成分、すなわち組換えFVIIaとして利用可能な活性型FVIIを補充する試みがなされてきた(総論に関して、Holcomb,2005を参照)。組換えFVIIaは活性化された血小板に直接結合し、それによりFXのFXaへの変換を開始させることができ、同時に、テナーゼ(FIXa/VIIIa)経路を迂回することができる。これが、第FVIII因子または第FIX因子に対するインヒビターを有する血友病AおよびB患者の治療における組換えFVIIaのよく知られた有効性の根拠となっている(Habermann等,2004)。血友病インヒビター症患者は十分なFXおよびプロトロンビンを有するが、重度の希釈性凝固障害を有する患者における状況は、異なるFXが決定的なレベル以下に減少する場合、組換えFVIIaの基質が不足することになる。PCCのような多成分からなる治療剤は、一般的な凝固因子が減少する状況において利点を提供することができる。PCCは、プロトロンビン複合体のタンパク質、因子II、VII、IXおよびXで補充された。この凝固系の最初のまっさきの働きは、確実にトロンビン生成を起こすことである。トロンビンは、凝固系において、複数の機能:すなわち、フィブリノーゲンからのフィブリンの形成、補因子VおよびVIIIの活性化、FXIIIの活性化、およびトロンビン受容体を介した血小板の活性化を有する。トロンビンの生成は、基質として、活性なセリンプロテアーゼとして活性型FXを含むプロトロンビナーゼ複合体からの十分なプロトロンビン(FII)が必要である。活性型FIXは、FVIIIと共にFXをFXaに変換するテナーゼ複合体の酵素である。プロトロンビン複合体の4種の酵素全てが、トロンビンを生成するのに絶対必要であると考えると都合がよい。我々のデータによれば、トロンビンバーストを開始させるために十分なプロトロンビン複合体因子を供給することが必須であること、およびPCCとFVIIIおよび/またはvWFとの組み合わせを含む組成物が、損なわれた凝固カスケードを効果的に再構成し、止血までの時間を有意に短縮することが示される。
【0022】
本発明は、組合わせると相乗効果を示す2種の薬剤組成物に関する。
【0023】
本発明において使用可能な単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む第一の薬剤組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む第二の薬剤組成物は、2種の独立した組成物として製造することができ、これらは、別々に販売することもできるし、または1つのキット中に別個の薬剤組成物として組み合わせることもできるし、または全ての成分の混合物として単一の薬剤組成物中に一緒に含まれるように製造することもできる。
【0024】
従って本発明は、後天性出血の治療方法において、同時に、別々に、または連続的に使用するための、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物に関する。
【0025】
本発明はさらに、後天的な凝固障害の治療において、同時に、別々に、または連続的に使用する薬剤を製造するための、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/またはvWFを含む組成物の使用に関する。
【0026】
本発明のさらなる形態は、後天的な凝固障害の治療において、同時に、別々に、または連続的に使用する組み合わされた薬剤を製造するための、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/またはvWFを含む組成物の使用である。本発明の組成物はいずれも、非活性型凝固因子を含む。
【0027】
本発明の好ましい実施態様において、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIは、ヒト血液から誘導されたプヒト血液ロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、または組換え発現された凝固因子から再構成したPCCであり、ここで該組換え発現された凝固因子FVII、FIX、FXおよびFVIIの、抗原の比率および活性は、血液から誘導されたPCCに相当する。
【0028】
プロトロンビン複合体濃縮物(PCC)は、本発明の意味において、凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIの組み合わせを含む。またPCCは、プロテインCおよびプロテインSを含んでいてもよい。
【0029】
本発明は、表1に掲記したような単離されたPCCの組成物を包含する。定義によれば、プロトロンビン複合体因子は、新鮮凍結血漿において1IU/mlで含まれ、従って、プロトロンビン複合体因子の濃度はPCC中で数倍に高濃度化されている。
【0030】
単離されたPCCは、本発明の意味において、それぞれ個々の凝固因子が液体中に存在するPCC組成物、または保存される場合、液体で凍結乾燥したPCC組成物を包含し、これらは、注射の前に再溶解させた後に、その血中濃度と比較して少なくとも2.5倍の濃度になる。
【0031】
【表1】

【0032】
機能的な凝固因子II(FII)は、トロンビン(FIIa)の不活性なプロ酵素の一つであるプロトロンビンの生物活性を示す。凝固カスケードの活性化後にプロトロンビンのトロンビンへの変換が起こるが、このトロンビンの凝固系における多様なの活性化機能としては、なかでも、フィブリノーゲンのフィブリンへの変換、第XIII凝固因子(FXIII)の活性型第XIII凝固因子(XIIIa)への活性化、FVおよびFVIIIのFVaおよびVIIIaへのの活性化、トロンビン受容体の部分的なタンパク質分解の後の血小板活性化が挙げられる。
【0033】
機能的な凝固因子IX(FIX)は、非不活型FIXの生物活性を示し、凝固活性化中に活性型FIXaに変換される。FIXaは、非不活型FXをその活性型FXaに切断するテナーゼ複合体の一つであるその補酵素FVIIIaとの複合体を形成する。
【0034】
機能的な第X凝固因子(FX)は、凝固が活性化した後に、非不活型FXの生物活性を示し、活性型FXaに変換される。FXaは、非不活型プロトロンビン(FII)を活性型トロンビン(FIIa)に切断プロトロンビナーゼ複合体の一つであるその補酵素FVaとの複合体を形成する。
【0035】
機能的な凝固因子FVII(FVII)は、非不活型FVIIの生物活性を示し、FVIIaへの凝固の活性化中に変換される。FVIIaは、組織因子と共に、非不活型FXを活性型FXaに変換する。加えてFVIIaは、非不活型FIXを活性型FIXaに変換することができる。
【0036】
機能的な凝固因子VIII(FVIII)は、補酵素FVIIIの生物活性を示し、凝固活性化中にFVIIIaに変換される。FVIIIaは、プロテアーゼFIXaの補酵素であり、FIXaと複合体を形成する。FVIIIa/FIXa複合体は、非不活型FXを切断して、活性型FXaを形成する。
【0037】
単離されたFVIIIは、本発明の意味において、FVIIIが液体中に存在するFVIII組成物、または保存される場合、液体中で凍結乾燥したFVIII組成物を包含し、これらは注射の前に再溶解させた後に、FVIIIの血中濃度と比較して少なくとも2.5倍高い濃度になる。
【0038】
機能的なフォン−ビルブランド因子(vWF)は、vWFの生物活性を示し、これは、傷害部位に血小板を誘導することに関与する複数の結合部位を有する大型の多量体タンパク質である。vWFは、そのA1ドメインを介して血小板に結合し、さらに、そのA3ドメインを用いて傷害部位においてコラーゲンと結合する。従って、vWFは、血小板の付着を仲介する。加えて、vWFのαIIb/β3受容体への結合により血小板凝集が誘導され、vWFは循環するFVIIIを安定化させる。
【0039】
単離されたvWFは、本発明の意味において、vWFが液体中に存在するvWF組成物、または保存される場合、液体中で凍結乾燥したvWF組成物を包含し、これらは、注射の前に再溶解させた後に、vWFの血中濃度と比較して少なくとも2.5倍高い濃度になる。
【0040】
上記で考察された凝固因子の活性は、L.Thomas:Clinical Laboratory Diagnostics,TH−Books,フランクフルト,1998,第17章に従って測定することができる。
【0041】
表2に、FVIIIおよびvWFを含む組み合わせ製剤の好ましい組成を示す:
【表2】

【0042】
【表3】

【0043】
前記薬剤組成物で用いられる凝固因子は、ヒト血漿または血清から得てもよいし、または組換えによって得てもよい。「凝固因子」は、本発明において用いられるように、天然型のヒト凝固因子のアミノ酸配列を有するタンパク質を含む。また、それによって生じたタンパク質が実質的に凝固因子活性を保持しているのであれば、わずかに修飾されたアミノ酸配列、例えばN末端のアミノ酸欠失または付加を含む修飾されたN末端を有する凝固因子も含まれる。また「凝固因子」は、上記の定義の範囲内で、個体ごとに存在し発生する可能性がある天然の対立遺伝子変異も含む。「凝固因子」は、上記の定義の範囲内で、このような凝固因子の変異体をさらに含む。このような変異体は、1個またはそれ以上のアミノ酸残基が野生型の配列と異なっている。このような差の例としては、Nおよび/またはC末端の1個またはそれ以上のアミノ酸残基(例えば、1〜10個のアミノ酸残基)がトランケーションされること、またはNおよび/またはC末端における1個またはそれ以上の余分な残基の付加、例えばN末端におけるメチオニン残基の付加が挙げられ、加えて、保存的アミノ酸置換もが挙げられ、すなわちこれは、例えば(1)小さいアミノ酸、(2)酸性アミノ酸、(3)極性アミノ酸、(4)塩基性アミノ酸、(5)疎水性アミノ酸、(6)芳香族アミノ酸のような類似の特徴を有するアミノ酸グループ内で行われる置換である。以下の表に、このような保存的置換の例を示す。
【0044】
【表4】

【0045】
本発明で用いられる「機能的な凝固因子」は、上述したように溶液中および/または細胞表面上のいずれかで生物活性を示す凝固因子の分子を含む。
【0046】
用語「組換え」は、例えば変異体が遺伝子工学技術によって宿主生物中で生産されることを意味する。
【0047】
本発明の宿主細胞は、ヒト凝固因子の生産方法で用いることができる。本方法は、以下を含む:
a)本発明の宿主細胞を、1つまたはそれ以上のヒト凝固因子が発現されるような条件下で培養すること;および
b)場合により、宿主細胞または培地から1つまたはそれ以上のヒト凝固因子を回収すること。
【0048】
グリコシル化またはその他の翻訳後修飾の程度および位置は、選択された宿主細胞、および宿主細胞の環境の性質に応じて様々であってよい。特定のアミノ酸配列について述べる場合、このような配列の翻訳後修飾も本願に包含される。
【0049】
適切な宿主細胞中での組換えタンパク質を高レベルで生産するには、上述の改変されたcDNAを、組換え発現ベクター中で適切な調節因子と共に効率的な転写単位に構築することが必要であり、このようなベクターは、当業者によく知られている方法に従って様々な発現系で増殖させることが可能である。効率的な転写調節因子の要素は、ウイルスを有する動物細胞(それらの天然の宿主として)から誘導してもよいし、または、動物細胞の染色体DNAから誘導してもよい。好ましくは、シミアンウイルス40、アデノウイルス、BKポリオーマウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、もしくはラウス肉腫ウイルスのロングターミナルリピートから誘導されたプロモーター−エンハンサーの組み合わせを用いてもよいし、またはベータ−アクチンもしくはGRP78のような動物細胞中で強く構成的に転写された遺伝子を含むプロモーター−エンハンサーの組み合わせを用いてもよい。cDNAからの安定な高レベルのmRNAの転写を達成するために、転写単位は、その3’近位の部分に、転写終結ポリアデニル化配列をコードするDNA領域を含むと予想される。好ましくは、この配列は、シミアンウイルス40初期転写領域、ウサギベータ−グロビン遺伝子、またはヒト組織プラスミノゲン活性化因子の遺伝子から誘導される。
【0050】
続いてcDNAは、凝固因子を発現させるのに適した宿主細胞系のゲノムに組み込まれる。好ましくは、この細胞系は、確実に正しいフォールディング、Gla−ドメイン合成、ジスルフィド結合形成、アスパラギン結合型糖付加、O−結合型グリコシル化、およびその他の翻訳後修飾、加えて培地への分泌を達成するために、脊椎動物起源の動物細胞系であり得る。その他の翻訳後修飾の例は、新しく生じたポリペプチド鎖の水酸化、およびタンパク質分解によるプロセシングである。用いることができる細胞系の例は、サルCOS細胞、マウスL細胞、マウスC127細胞、ハムスターBHK21細胞、ヒト胎児腎臓293細胞であり、優先的にはハムスターCHO細胞である。このような複合体の翻訳後修飾による組換えによって、凝固因子をヒト細胞系で発現することが好ましい。
【0051】
対応するcDNAをコードする組換え発現ベクターは、多種多様な方法で動物細胞系に導入することができる。例えば、組換え発現ベクターは、様々な動物ウイルスをベースとしたベクターから作製することができる。その例は、バキュロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、および好ましくは、ウシパピローマウイルスベースとしたベクターである。
【0052】
また対応するDNAをコードする転写単位は、細胞中で優勢な選択マーカーとして機能する可能性があるその他の組換え遺伝子と共に動物細胞に導入することもでき、これは、組換えDNAがそれらのゲノムに統合された特定の細胞クローンの単離を容易にするためである。このタイプの優勢な選択マーカー遺伝子の例は、Tn5アミノ配糖体ホスホトランスフェラーゼ(ゲネチシン(G418)耐性を付与する)、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ(ハイグロマイシン耐性を付与する)、およびピューロマイシンアセチルトランスフェラーゼ(ピューロマイシン耐性を付与する)である。このような選択マーカーをコードする組換え発現ベクターは、望ましいタンパク質のcDNAをコードするものと同じベクターに存在していてもよいし、または別のベクターにコードされていてもよく、後者の場合、これらベクターは同時に導入されて宿主細胞のゲノムに統合され、異なる転写単位間に固い物理的な連結が生じることが多い。
【0053】
望ましいタンパク質のcDNAと共に用いることができるその他のタイプの選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)をコードする様々な転写単位をベースとするものである。このタイプの遺伝子を内因性dhfr活性が欠失した細胞、優先的にはCHO細胞(DUKX−B11、DG−44)に導入すると、これらはヌクレオシドが欠失した培地中で増殖が可能になると予想される。このような培地の例は、ヒポキサンチン、チミジンおよびグリシンを含まないハムF12(Ham’s F12)である。これらのdhfr遺伝子は、凝固因子のcDNA転写単位と同じベクターまたは異なるベクターのいずれかに連結させて上記のタイプのCHO細胞に導入することができ、このようにして組換えタンパク質を生産するdhfr陽性の細胞系を形成することができる。
【0054】
上記の細胞系を細胞毒性のdhfr阻害剤のメトトレキセートの存在下で増殖させると、メトトレキセート耐性の新しい細胞系が出現することになる。これらの細胞系は、連結されたdhfrおよび望ましいタンパク質の転写単位の数が増幅されたために、高速で組換えタンパク質を生産することが可能である。高濃度(1〜10000nM)のメトトレキセート中でこれらの細胞系を増殖させる場合、極めて高い速度で望ましいタンパク質を生産する新しい細胞系を得ることができる。
【0055】
上記の望ましいタンパク質を生産する細胞系は、懸濁培養中または様々な固体支持体上のいずれかでラージスケールで増殖することができる。これらの支持体の例は、デキストランまたはコラーゲンマトリックスをベースとしたマイクロキャリアー、または中空糸の形態の固体支持体、または様々なセラミック材料である。細胞懸濁培養中またはマイクロキャリアー上で増殖させる場合、上記の細胞系の培養は、バッチ培養、または長期間にわたり調整培地を連続生産する潅流培養のいずれかとして行うことができる。従って、本発明によれば、上記の細胞系は、望ましい組換えタンパク質を生産するための工業プロセスの開発によく適している。
【0056】
上記のタイプの分泌細胞の培地中に蓄積する組換えタンパク質は、様々な生化学およびクロマトグラフィー方法によって濃縮したり、精製したりすることができ、このような方法としては、細胞培地中で、望ましいタンパク質とその他の物質とのサイズ、電荷、疎水性、溶解性、特異的な親和性等の差を利用する方法が挙げられる。
【0057】
このような精製の例は、固体支持体に固定したモノクローナル抗体への組換えタンパク質の吸着である。脱離後、さらにタンパク質を上記の特性に基づく様々なクロマトグラフィー技術によって精製することができる。
【0058】
組換え法によって生産されたか、またはヒト血漿から得られたかどうかに関係なく、本発明の凝固因子は、60%以上の純度、より好ましくは80%以上の純度に精製することが好ましく、特に好ましくは、汚染高分子、特にその他のタンパク質および核酸に対して95%より高い純度を有し、さらに、感染性および発熱性の物質を含まない製薬的に純粋な状態である。
【0059】
本発明で説明されている凝固因子は、治療用途に応じた薬剤に製剤化することができる。精製したタンパク質は、一般的な生理学的に適合する水性緩衝溶液に溶解させてもよく、ここにおいて、薬剤を提供するために、水性緩衝溶液に場合により薬学的賦形剤が添加されていてもよい。
【0060】
このような製薬キャリアーおよび賦形剤、加えて適切な医薬製剤は当業界公知である(例えば、“Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins”,Frokjaer等,TaylorおよびFrancis(2000)、または、“Handbook of Pharmaceutical Excipients”,第3版,Kibbe等,Pharmaceutical Press(2000)を参照)。特に、本発明のポリペプチド変異体を含む薬剤組成物は、凍結乾燥した形態、または安定な可溶性の形態で製剤化されてもよい。このようなポリペプチド変異体は、様々な当業界既知の手法によって凍結乾燥させてもよい。凍結乾燥製剤は、使用前に、1種またはそれ以上の製薬上許容できる希釈剤(例えば滅菌注射用水、または滅菌生理食塩水)を添加することによって再溶解する。
【0061】
本組成物の製剤は、あらゆる製薬的に適切な投与手段によって個体に送達される。様々な送達システムが知られており、これらを用いて、あらゆる便利な経路によって本組成物を投与することができる。優先的には、本発明の組成物は、全身投与される。全身投与に使用するために、本発明の凝固因子は、従来の方法に従って、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、腹腔内、大脳内、肺内、鼻腔内、または経皮、または経膣)、または経腸(例えば、経口、または直腸)送達用に製剤化される。最も選択的な投与経路は、静脈内投与および皮下投与である。本製剤は、注入、またはボーラス注射によって連続的に投与することができる。いくつかの製剤は、遅延放出系を包含する。
【0062】
本発明の凝固因子は、治療上有効な用量で患者に投与され、ここにおいて治療上有効な用量は、耐え難い副作用を引き起こす用量に達することなく、望ましい作用を生じさせ、治療される状態または適応症の重症度または蔓延を予防したり、または減少させたりするのに十分な用量を意味する。正確な用量は、例えば適応症、製剤、投与様式のような多くの要因に依存し、それぞれ個々の適応症について臨床前試験および臨床試験で測定しなければならない。
【0063】
本発明の凝固因子は、出血を治療するのに用いることができ、このような出血としては、以下が挙げられる:
−単一の臓器や骨の損傷、または多発外傷のいずれかによる重度の出血を引き起こすあらゆるタイプの外傷(鈍的(blunt)または貫通)、
−外科手技中の出血、例えば周術期または術後の出血、
−心臓外科手術に起因する出血、例えば小児の心臓外科手術において体外循環および血液希釈を受けた患者、
−脳内出血、クモ膜下出血、硬膜下または硬膜外出血、
−血漿以外の代用液によって生じる血液損失および血液希釈に起因する出血(それにより、罹患した患者において凝固因子レベルの低下が起こる)、
−播種性血管内凝固(DIC)、および消費性凝固障害に起因する出血、
−血小板機能障害、減少および凝固障害、
−肝硬変、肝機能障害および劇症肝不全に起因する出血、
−肝臓病を有する患者における肝生検、
−肝臓およびその他の臓器の移植後の出血、
−胃静脈瘤からの出血、および消化性潰瘍の出血、
−婦人科の出血、例えば不正子宮出血(DUB)、早期胎盤剥離、
−低体重出生児における脳室内出血、
−分娩後出血、
−新生児の致死性の苦痛、
−やけどに伴う出血、
−アミロイド症に伴う出血、
−血小板障害に関連する造血幹細胞移植、
−悪性疾患に伴う出血、
−出血性ウイルス感染、
−膵臓炎に伴う出血。
【0064】
図1:血液損失(分割血液抜き取り、およびヒドロキシエチルスターチ(HES)での補充による、低体温症の正常血圧のブタを用いた希釈性凝固障害の動物モデル)を用いて、提案した治療の有効性を調査した。脾臓に切り込みを入れることにより外傷を誘発させ、血液損失を測定した。ベリプレックス(Beriplex)P/N(R)、およびヘリキセート(Helixate(R))またはヒューメート(Humate)P(R)のいずれかを用いた補充療法を行った。ベリプレックスP/N(R)は、ビタミンK依存性凝固因子II、VII、IXおよびXを含むプロトロンビン複合体濃縮製剤(PCC)である(Schulman,2007)。加えてベリプレックスP/N(R)は、プロテインCおよびプロテインSを含む。ヘリキセート(R)は、活性成分として組換えFVIIIからなる。ヒューメートP(R)は、実質的にFVIIIおよびvWFからなる製品である)を示す図である。
【実施例】
【0065】
実施例1:ブタの希釈性凝固障害および脾臓外傷モデル
ブタを一晩絶食させた(ただし水は自由に飲めるようにした)。動物に、2mg/kgのアザペロン(Azaperone,ストレスニル(Stresnil)/ヤンセン(Janssen))、15mg/kgのケタミン((Ketamin),ケタベト(Ketavet)/ファイザー(Pfitzer))、および0.02mg/kgの硫酸アトロピン(Atropinsulfate,B.Braun)の混合物を筋肉内に前投与した。10mg/kgのチオペンタールナトリウムを耳静脈を経由して麻酔を行った。ブタに挿管し、ヘイヤー(Heyer)のアクセス(Access)人工呼吸器を介して人工呼吸させた。イソフルラン(Isoflurane,フォーレン(Forene),アボット(Abbott))によって吸入麻酔を維持し、その濃度は麻酔状態に応じて1〜2%であった。
【0066】
血液サンプルを採集するために、頚動脈内に1.4×2.1mmのカテーテルを入れ、連続的な血圧測定のために、0.5×0.9mmのカテーテルを大腿動脈に置いた。血液抜き取り、ならびに赤血球、血漿増量剤および試験物質の投与のために、外頚静脈に1.4×2.1mmのカテーテルを導入した。乳酸リンゲルを静脈内投与(4mL/kg・h)することによって、基本的な流体必要量を達成した。体温を直腸検温器で測定した。
【0067】
循環ベースラインの血行動態を安定化させて30分後、凝固および血液学的なパラメーターを評価した(t=0)。その後、段階的に血液を抜き取ることにより低体温の正常血圧の希釈性凝固障害を誘発させた。赤血球の補液のために、血液を遠心分離し(800×g,10分間)、赤血球細胞を食塩水に再懸濁して、これを最初の体積とした。再懸濁後、赤血球を再度遠心分離し、最初の体積の半分で乳酸リンゲルに再懸濁し、動物に補液した。約65〜70%の動脈血抜き取り後、6%のヒドロキシエチルスターチ(HES,インフコール(Infukoll)6%,シュヴァルツ・ファーマ(Schwarz Pharma))を室温で静脈内に注入した。
【0068】
HESの注入後、血液サンプルを再度採取し(t=80分)、動物をそのまま40分間安定化させた。第三の血液サンプルを抜き取り(t=120分)、外科用メスの刃を用いて規格に沿った脾臓切開(長さ8cm,深さ1cm)を行った。
【0069】
腹部から血液を吸い出し、合計の血液損失と止血までの時間を測定した。脾臓切開の前に試験物質を短時間で注入した。
【0070】
希釈の手技を受けたブタは中等度の低体温症を示し、体温は38.5℃から36℃に低下した。血液抜き取り後血圧が低下したが、HESで補充した後にベースライン値に戻り、脾臓傷害が行われるまで一定レベルに維持した。脾臓傷害の前に、ヘマトクリットはそのベースライン値の60%に減少した。
【0071】
補充療法
補充療法には、以下の化合物を用いた。ベリプレックス(R)P/N(CSLベーリング(CSL Behring),マールブルグ,ドイツ)は、ウイルス不活化ヒトプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)である。これは、ヒト血漿凝固因子II、VII、IXおよびX、ならびにプロテインCおよびSを含む。ヒューメート(R)P(CSLベーリング)は、ヒト血漿凝固因子VIIIおよびフォン−ビルブランド因子(vWF)由来の複合体である。ヘモコンプレッタン(Haemocomplettan(R))(CSLベーリング,マールブルグ,ドイツ)は、ヒト血漿由来のフィブリノーゲン濃縮物である。ノボセブン(NovoSeven(R))(組換え因子VIIa)は、ノボノルディスク(NovoNordisk)から得た。ヘリキセート(R)(CSLベーリング)は、組換えFVIIIである。FIXPベーリング(CSLベーリング)は、ヒト血漿由来のFIXおよびFXを含む製剤である。vWFは、ヒト血漿から精製した。
【0072】
治療群は以下の通りである:1:正常なブタ(ネガティブコントロール、n=5)、2:希釈コントロール(治療なし)(n=16)、3:ベリプレックスP/N(R)35U/kg(IX因子単位)、4:ベリプレックスP/N(R)35U/kg+ヘモコンプレッタン(R)250mg/kg、5:ベリプレックスP/N(R)20〜35U/kg+ヒューメート(R)40U/kg(VIII因子単位)(n=14)、6:ヒューメート(R)40U/kg(n=5)、7:ノボセブン(R)180μg/kg(n=5)、8:ベリプレックス(R)P/N30U/kg+ヘリキセート(R)(組換えFVIII)40U/kg(n=3)、9:FIXP30U/kg(IX因子単位)(n=3)、10:ベリプレックス(R)P/N+ヒト血漿vWF90U/kg(vWF単位)(n=3)。
【0073】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
後天性出血の治療において、同時に、別々に、または連続的に使用するための、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物。
【請求項2】
単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIが、ヒト血液から誘導されたプロトロンビン複合体濃縮物(PCC)、または組換え発現された凝固因子から再構成されたPCCであり、ここで、該組換え発現された凝固因子FVII、FIX、FXおよびFVIIの、抗原の比率および活性は、ヒト血液から誘導されたPCCに相当する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
以下の治療において、同時に、別々に、または連続的に使用するための、請求項1または2に記載の組成物:
−外傷、
または
−外科手術中の出血、
または
−心臓に起因する出血、
または
−脳内出血、
または
−クモ膜下出血、
または
−硬膜下または硬膜外出血、
または
−罹患した患者において凝固因子レベルの低下に至らしめる血漿以外の代用液による血液損失および血液希釈に起因する出血、
または
−播種性血管内凝固(DIC)および消費性凝固障害に起因する出血、
または
−血小板減少症、
または
−血小板機能障害、
または
−肝硬変、肝機能障害および劇症肝不全に起因する出血、
または
−肝臓疾患を有する患者の肝生検に起因する出血、
または
−肝臓およびその他の臓器の移植後の出血、
または
−胃静脈瘤からの出血および消化性潰瘍の出血、
または
−婦人科の出血、
または
−低体重出生児における脳室内出血、
または
−分娩後出血、
または
−新生児の致死性の苦痛、
または
−やけどに伴う出血、
または
−アミロイド症に伴う出血、
または
−血小板障害に関連する造血幹細胞移植、
または
−悪性疾患に伴う出血、
または
−出血性ウイルス感染、
または
−膵臓炎に伴う出血。
【請求項4】
後天性出血の治療において、同時に、別々に、または連続的に使用する薬剤を製造するための、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物の使用。
【請求項5】
後天性出血の治療において、同時に、別々に、または連続的に使用する組み合わせ薬剤を製造するための、単離された凝固因子FII、FIX、FXおよびFVIIを含む組成物、および単離されたFVIIIおよび/または単離されたvWFを含む組成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−513349(P2010−513349A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−541862(P2009−541862)
【出願日】平成19年12月18日(2007.12.18)
【国際出願番号】PCT/EP2007/011099
【国際公開番号】WO2008/077529
【国際公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(597070264)ツェー・エス・エル・ベーリング・ゲー・エム・ベー・ハー (32)
【Fターム(参考)】